JP5725441B2 - 立方晶窒化硼素焼結体工具 - Google Patents

立方晶窒化硼素焼結体工具 Download PDF

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Description

本発明は、立方晶窒化硼素焼結体工具に関し、特に耐摩耗性および耐欠損性に優れる立方晶窒化硼素焼結体工具に関する。
材料の切削に際しては被削材料に適した切削工具および切削方法が選択される。切削加工において長寿命を達成するためには、いかに切削時の刃先温度を抑制できるかが重要であり、熱伝導率に優れる工具材料が重用されている。一般に、熱伝導率に優れるダイヤモンド焼結体や立方晶窒化硼素(「cBN」と記すこともある)焼結体などの超高圧焼結体工具を用いた切削加工においても、高速条件や、大切り込み、高送り条件での高能率条件では、刃先温度の上昇により、被削材との拡散や、酸化などの化学的な摩耗が発達する。このような工具摩耗を抑制する方策として、低速条件への変更、工具刃先の楔角の低減による切削抵抗抑制、またはクーラントの切削点への吐出による切削点の冷却などが行なわれている。
たとえば、難削材の切削加工におけるさらなる長寿命化の方策として、特許文献1には、刃先の少なくとも切削に関与する部分に熱伝導率100W/m・K以上の放熱性が高い超高圧焼結体材料を適用した切削工具の刃先を高圧クーラントで冷却しながら加工を行なうことにより、切削熱による刃先の温度上昇が抑える発明が開示されている。
一方、たとえばガラスやセラミックス、超硬、鉄系焼結合金難削材料などの脆性難削材の切削加工では、高速条件で切削を行なうことや、レーザーアシストにより被削材の切削点の温度を上昇させることにより、被削材を軟化、もしくは切り屑の生成メカニズムを脆性モードから延性モードへ変化させ、良好な加工面を達成させることが提案されている。
しかしながら、原理的には工具刃先が高温に曝され、かつ急冷もされることから刃具が劣化しやすく、チッピングや突発的な欠損が生じやすくなる。また工作機械にも、主軸回転数の制約や、高価なレーザー装置の設置が必要などの問題が生ずる。
cBN焼結体は、主にTiN、TiC、Co、およびAlを主成分とする結合材によりcBN粒子を結合させたものである。cBN粒子は、ダイヤモンドに次ぐ硬度および熱伝導率を有し、かつセラミックス材料よりも靱性に優れた材料である。このため、cBN粒子を80体積%以上含有するような高cBN含有率のcBN焼結体は、耐塑性変形性、耐欠損性等の特性が優れている。
このような特性を有する高cBN含有率のcBN焼結体を用いたcBN焼結体工具は、従来の超硬工具などの工具材料に比し、化学的な安定性が優れていること、鉄との親和性が低いこと、長寿命であること、材料的に高硬度であるため加工の能率が高いこと等の点で優れており高く評価されている。このような高性能のcBN焼結体工具は、Ni基系および鉄系の高硬度難削材の切削加工の用途、冷間鍛造用のパンチ用工具の塑性加工の用途等において従来から用いられる工具を置換してきた。
ここで、切削加工とは、被削材を局部的にせん断かつ破砕し、切屑を削り出しながら所望の寸法形状の品物を機械加工することをいい、塑性加工とは、加工物に力を加えて変形させて、所定の形状および寸法の製品に成形加工することをいう。ちなみに、塑性加工は、切屑が発生しないという点で切削加工とは異なる。
cBN焼結体工具は、上述のように優れた特性を有することから、切削加工および塑性加工のいずれの用途でも、突発的な欠損が生じにくいというメリットがあり、極めて好適に用いられる。
従来のcBN焼結体工具として、たとえば特許文献2および特許文献3は、cBN焼結体に含まれるAl等の金属、酸素等を不純物として捉え、当該不純物の混入を極力低減してcBN粒子の混合比率を高めることにより、cBN焼結体の硬度および靭性を向上させるという技術が開示されている(特許文献2および特許文献3)。
また、cBN焼結体工具は、高硬度、高靭性に加え、高熱伝導性を有することが高性能であると考えられ、通説とされてきた。この通説に倣い、特許文献4および特許文献5では、高純度のcBN粒子の熱伝導率が高いことを利用して、高純度のcBN粒子を高濃度に含むcBN焼結体を用いることにより、硬度および靭性に加え、熱伝導性をも向上させたcBN焼結体工具が提案されている。このようなcBN焼結体工具は、低延性の材料を塑性加工する場合にも、特に、鉄系焼結合金を切削加工する場合にも欠損が生じにくく、耐摩耗性にも優れるため、好適に使用される。
特開2009−045715号公報 特開平07−291732号公報 特開平10−158065号公報 特開2005−187260号公報 国際公開第2005/066381号パンフレット
しかし、高cBN含有率のcBN焼結体工具を、最近の低延性の特性を有する難削材料の切削加工に適用した場合、cBN焼結体が高熱伝導性を有するため、切削加工時に加工部で生じる摩擦熱がcBN焼結体側に拡散することとなり、高温を維持したまま切削加工を進めることができず、切削効率が著しく劣るという問題があった。
すなわち、cBN焼結体成分が80体積%以上の高cBN含有率焼結体は耐欠損性に優れているが、同時に70W/m・Kを超える高い熱伝導率を有するため、加工により生じる摩擦熱がcBN焼結体から逃げてしまう。このため、加工で生じる熱が被削材に十分に伝導しないことにより被削材が軟化しないため、工具に負荷がかかり、耐欠損性の高いcBN焼結体工具といえども、欠損が生じる。
特に、鉄系焼結合金の切削では、その低延性により、被削材の温度が不十分な切削環境においては、せん断がスムーズに進行せず、加工面にむしれが発生し、面粗度が悪化する問題がある。面粗度を向上させるために、切削速度を速める、すなわち被削材の温度を高めると、摩耗が急速に進展し満足のいく工具寿命が得られない。また、高温硬度に優れるNi基に代表される超耐熱合金をせん断切削加工する場合、被削材に相応の加工熱が流入した場合にも、高温硬度に優れる特性により、被削材が軟化しにくいため、cBN焼結体に欠損が生じやすい。
このようなcBN焼結体に生じる欠損は、cBN粒子自身の強度不足による破砕や、cBN粒子間の結合力不足によるcBN粒子の脱落の集積といった、機械的な損傷メカニズムを主要因とするものと推定される。
ところで、cBN焼結体工具は、塑性加工においてもさらなる高性能化が求められている。すなわち、塑性加工においては、加工物が高性能化していることに伴い、高硬度かつ低延性の特性を有する難加工材料を塑性加工する場合に冷間鍛造で加工すると、加工物に亀裂や割れ等の不良が発生しやすい。このことから、温間鍛造、熱間鍛造等のように加工物を400℃以上1000℃以下に加熱することにより、加工物の硬度を下げるとともに延性を高めた上で塑性加工する必要がある。しかし、温間鍛造、熱間鍛造等で塑性加工する場合、加工部で生じる摩擦熱により加工部の温度は冷間鋳造で加工するとき以上に高くなり、その高温による影響のため工具に負荷がかかり、結果として工具の寿命が極めて短いものとなっていた。
また、0.5質量%以上の炭素量を含有する鋼材料の塑性加工は、cBN焼結体の熱伝導率が高いことにより、加工熱がcBN焼結体工具に急速に流出し、加工物が急冷されることとなり、マルテンサイト組織や残留オーステナイトを有する脆性層が生成される。これにより加工物の材料強度および疲労強度が劣化しやすいという問題もある。
加工物の急冷を防ぐためにcBN含有率を80体積%未満にすると、熱伝導率が比較的低くなることにより、加工熱がcBN焼結体工具に流出されにくくなることから、加工物の急冷を抑制することができる。しかし、cBN粒子よりも強度および靭性に劣る結合相が相対的に多くなるため、cBN焼結体工具が早期に欠損する問題がある。
このようにcBN粒子の含有率を増減させるというアプローチでは、工具の硬度を高めることと工具の熱伝導性を低下させることとがトレードオフの関係にあり、両者を満足させることは困難であった。
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、立方晶窒化硼素焼結体の熱伝導性の低下と、工具の硬度の向上とを両立した立方晶窒化硼素焼結体工具を提供することである。
本発明者らは、上述の切削加工および塑性加工の用途における要求特性を解明した上で、材料開発を進めた。その結果、cBN焼結体の作製時に60体積%以上99体積%未満のcBN成分を含めた上で、結合相の成分にAl、Si、Ti、Zr等の微粒の金属間化合物を添加することにより、Al、Si、Ti、およびZrからなる群より選択される1種以上の元素と、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素とからなる化合物であって、その平均粒子径が100nm未満のものが熱伝導性を低下させる断熱相となることを見い出した。
加えて、上記の超微粒化合物の各成分は焼結性に劣るため、超高圧焼結時にcBN焼結体の一部に未焼結の領域が点在することになり、その結果、cBN焼結体の熱伝導率を低下させることができるとの知見が得られ、これらの知見に基づきさらに鋭意検討を重ねることによりついに本発明のcBN焼結体工具を完成した。
すなわち、本発明は、少なくとも工具作用点に立方晶窒化硼素焼結体を用いた立方晶窒化硼素焼結体工具であって、立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素と断熱相と結合相とを含有し、立方晶窒化硼素は、立方晶窒化硼素焼結体中に60体積%以上99体積%未満含まれ、断熱相は、Al、Si、Ti、およびZrからなる群より選択される1種以上の元素と、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素とからなる第1化合物を1種以上含み、該第1化合物は、立方晶窒化硼素焼結体中に1質量%以上20質量%以下含まれ、かつ100nm未満の平均粒子径を有し、立方晶窒化硼素焼結体は、70W/m・K以下の熱伝導率であることを特徴とする。
第1化合物は、50nm未満の平均粒子径を有することが好ましい。また、断熱相は、その一部として未焼結の領域を0.01体積%以上3体積%以下含むことが好ましい。
第1化合物は、Al、Si、Ti、およびZrからなる群より選択される1種以上の元素の窒化物、炭化物、および炭窒化物に対し、酸素および硼素のいずれか一方もしくは両方が0.1質量%以上10質量%以下固溶した化合物であることがより好ましい。
断熱相は、第1化合物に加え、Wおよび/またはReと、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素とからなる第2化合物を1種以上含み、該第2化合物は、立方晶窒化硼素焼結体中に0.1質量%以上2質量%以下含まれることが好ましい。
立方晶窒化硼素は、立方晶窒化硼素焼結体中に75体積%以上92体積%以下含まれることが好ましく、立方晶窒化硼素焼結体中に80体積%以上87体積%以下含まれることがより好ましい。
立方晶窒化硼素は、平均粒子径が1μm以下の立方晶窒化硼素粒子からなることが好ましく、立方晶窒化硼素焼結体は、60W/m・K以下の熱伝導率であることが好ましい。
工具作用点は、1μm以上20μm以下の面粗さRzであることが好ましく、工具作用点における立方晶窒化硼素焼結体の最低厚みは、2mm以上であることが好ましい。
立方晶窒化硼素焼結体と工具シャンク部とが防振耐熱板を介して固定されており、防振耐熱板は、酸化物からなり、かつ40W/m・K以下の熱伝導率を有し、その厚みは、0.3mm以上であることが好ましい。
立方晶窒化硼素焼結体と工具シャンク部とは、ネジ止め方式および/またはセルフグリップ方式により固定されることが好ましい。
本発明の立方晶窒化硼素焼結体工具は、上記の構成を有することにより、立方晶窒化硼素焼結体工具の熱伝導率の低下と硬度の向上とを両立し、以って耐摩耗性および耐欠損性に優れるという効果を有する。
以下、本発明の立方晶窒化硼素焼結体工具の各構成についてさらに説明する。
<立方晶窒化硼素焼結体工具>
本発明の立方晶窒化硼素焼結体工具は、少なくとも工具作用点にcBN焼結体を用いる構成を有する。具体的には、本発明のcBN焼結体工具は、工具シャンク部に防振耐熱板を介してcBN焼結体が固定されている構成を有することが好ましい。このような構成を有する本発明のcBN焼結体工具は、鉄系焼結合金や難削鋳鉄の機械加工において特に有効に用いることができる他、これら以外の一般的な金属の各種加工においても好適に用いることができる。ここで、「工具作用点」とは、cBN焼結体工具の表面のうちの加工物と接触する部分を意味する。なお、工具シャンク部および防振耐熱板については後述する。
本発明のcBN焼結体工具を切削加工の用途に用いる場合、たとえばドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用チップ、ガラス基板切断用切り駒、光ファイバーカッター等として極めて有用に用いることができる。
一方、本発明のcBN焼結体工具を塑性加工の用途に用いる場合、たとえばパンチプレス金型、ダイス用金型、摩擦圧接、摩擦攪拌接合用工具等として極めて有用に用いることができる。そして、塑性加工では、たとえばエンジン部品、HDD(ハードディスクドライブ)、HDDヘッド、キャプスタン、ウェハーチャック、半導体搬送用アーム、自動車駆動系部品、カメラ用ズームレンズシールリングの成型に用いられる。
<立方晶窒化硼素焼結体>
本発明のcBN焼結体は、立方晶窒化硼素と断熱相と結合相とを含有することが好ましい。このようにcBN焼結体が断熱相を含むことにより、cBN焼結体の熱伝導性を低下させることができ、その熱伝導率を70W/m・K以下とすることができる。このような低熱伝導率のcBN焼結体を用いたcBN焼結体工具により切削加工または塑性加工すると、加工時に生じる摩擦熱およびせん断熱がcBN焼結体工具に伝導するよりも加工物に伝導することとなる。これにより加工物が軟化しやすくなり、cBN焼結体工具の刃先にかかる負荷を低減し、以ってcBN焼結体工具に摩耗および欠損を発生しにくくすることができる。cBN焼結体の熱伝導率が60W/m・K以下であると、加工物の軟化を促進することができ、cBN焼結体工具に摩耗および欠損が生じにくくなるためより好ましく、さらに好ましくはcBN焼結体の熱伝導率が50W/m・K以下である。
このようにcBN焼結体の熱伝導率を低下させることにより、切削性能が向上するとともに、被削材の加工面の面粗度を改善することもできる。これは、被削材が軟化することにより、工具作用点における被削材のせん断をスムーズに進行することができ、以って加工面にむしれ等が生成されにくく、優れた加工面を得ることができるものと推定される。
ここで、工具作用点におけるcBN焼結体の最低厚みは、2mm以上であることが好ましく、より好ましくは3mm以上である。工具作用点におけるcBN焼結体の最低厚みが2mm未満の場合、その摩耗幅が2mmを超えたときに工具シャンク部で加工することになり極端に寿命が低下する。ここで「最低厚み」とは、cBN焼結体の最も薄い部分の厚みをいう。
工具作用点は、1μm以上20μm以下の面粗さRzであることが好ましい。Rzが1μm未満では、工具作用点における摩擦熱が発生しにくくなり、作用点での被削材の温度が十分に上がらないことにより、欠損が発生しやすくなる場合がある。一方、Rzが20μmを超えると、加工時に加工物の成分が刃先に溶着しやすくなり、加工物の面粗さが悪化する場合がある。工具寿命を向上し、かつ加工物の面粗さを良好にするという観点から、Rzは1.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、2μm以上5μm以下である。なお、本発明において、面粗さRzは、JIS B0601で定めされた10点平均粗さであり、表面粗さ測定機(SURFCOM 2800E(株式会社東京精密製))を用いて得られた測定値を採用する。
<立方晶窒化硼素>
本発明において、立方晶窒化硼素はcBN焼結体中に60体積%以上99体積%未満含まれることを特徴とする。ここで、cBN焼結体中のcBNが60体積%未満の場合、耐摩耗性が不足し、99体積%を超えると、相対的に結合相が少なくなり接合強度が低下する。耐摩耗性と接合強度のバランスから、cBNの含有率は75体積%以上92体積%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは80体積%以上87体積%以下である。
ここで、cBN焼結体は、cBN粒子と断熱相を構成する第1化合物の原料粉末と結合相を構成する原料粉末とを含んだ上で焼結することが好ましい。材料強度を高め、かつ熱伝導率を低下させる効果を強めるという観点から、cBN粒子の平均粒子径は小さいことがより好ましく、cBN粒子は、1μm以下の平均粒子径であることが好ましい。また、cBN焼結体の靭性を損なわないようにするという観点から、cBN粒子の平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましい。材料強度、熱伝導率、および靭性のバランスの観点からは、cBN粒子の平均粒子径が0.2μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。
<結合相>
本発明において、cBN焼結体に含まれる結合相は、cBN粒子同士を結合する作用を示すものであって、cBN焼結体の結合相として知られる従来公知の組成の結合相をいずれも採用することができる。結合相に用いられる組成としては、Ti、W、Co、Zr、およびCrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素と、Alとの化合物であることが好ましく、Ti、W、Co、Zr、およびCrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物、硼化物、炭窒化物、酸化物、またはこれらの相互固溶体の少なくとも一種とAlとの化合物であることがより好ましい。これにより鉄系焼結合金や鋳鉄の機械加工で、特に良好な耐摩耗性を得ることができる。特に、結合相に用いる材料としてCoを主成分とすることにより、cBN焼結体工具の耐欠損性を向上させることができる。
<断熱相>
本発明において、断熱相はcBN焼結体中に点在することにより、cBN焼結体の熱伝導率を低下させることができ、以って加工時に生じる熱がcBN焼結体工具に伝導しにくく加工物への伝導が促進される。このような断熱相は、焼結性に劣る材料からなり、具体的には、Al、Si、Ti、およびZrからなる群より選択される1種以上の元素と、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素とからなる第1化合物を1種以上含み、該第1化合物は、cBN焼結体中に1質量%以上20質量%以下含まれ、かつ100nm未満の平均粒子径を有するものである。第1化合物が1質量%未満であると、立方晶窒化硼素焼結体の熱伝導率を低下させる効果が十分に得られず、加工物への熱の伝導が促進されない。また、第1化合物が20質量%を超えると、焼結が不十分となり、立方晶窒化硼素焼結体の硬度が低下するという問題がある。また、第1化合物の平均粒子径が100nm以上であると、立方晶窒化硼素焼結体の熱伝導率が70W/m・Kを超えることになり、本発明の効果を得ることができない。立方晶窒化硼素焼結体の熱伝導率を低下させるという観点からは、第1化合物の平均粒子径が50nm未満であることが好ましい。
このような断熱相は、cBN焼結体中に未焼結の領域として第1化合物を含むことが好ましい。本発明における「未焼結の領域」とは、断熱相とcBN粒子との界面に形成される焼結によって生じる粒状、もしくは微細な層状の反応物が存在しない粒界・界面付近の領域、および該領域に接する粒子を含む領域をいう。このような未焼結の領域は、cBN焼結体に対し0.01体積%以上3体積%以下含まれることが好ましい。未焼結の領域が0.01体積%未満であると、断熱相としての効果を十分に得ることができないため好ましくなく、3体積%を超えると、cBN焼結体の強度が低下するため好ましくない。
なお、断熱相が未焼結の領域を含むことになる詳細のメカニズムは明らかになっていないが、おそらくcBN粒子と、第1化合物の原料粉末と、結合相を構成する原料粉末とを混合して超高圧焼結する際に、第1化合物の原料粉末の平均粒子径が結合相を構成する原料粉末の平均粒子径よりも小さいため、第1化合物の原料粉末への圧力が十分に伝達されずに、断熱相とその周囲の結合相およびcBN粒子との界面に微細な層状の未焼結の領域が形成されるものと推測される。
なおまた、本発明において、未焼結の領域は、エネルギー分散型X線分光装置(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)付の透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)、オージェ電子顕微鏡、または二次電子顕微鏡を用いて、断熱相とcBN成分との両方の元素を同時に検出する領域が本質的に存在しない粒界に接する粒子が占有する領域により確認することができる。また、cBN焼結体に占める未焼結の領域の体積%は、cBN焼結体を一の面で切断したときの切断面の面積に対し、未焼結の領域が占める面積の比率に基づいて算出する。
上記の第1化合物は、Al、Si、Ti、およびZrからなる群より選択される1種以上の元素の窒化物、炭化物、および炭窒化物に対し、酸素および硼素のいずれか一方もしくは両方が0.1質量%以上10質量%以下固溶した化合物であることが好ましく、0.2質量%以上7質量%以下固溶した化合物であることがより好ましく、さらに好ましくは1質量%以上3質量%以下固溶した化合物である。このような割合で酸素および硼素を含むことにより、cBN焼結体中に断熱相としての効果を有する未焼結の領域が形成されやすくなることから、耐欠損性を損なうことなく、cBN焼結体工具の断熱性を高めることができる。特に、第1化合物に硼素を含む場合、断熱相とcBN粒子との界面に形成される焼結によって生じる粒状、または微細な層状の反応物とは、第1化合物より高い濃度で硼素が検出される粒界・界面付近の領域のことである。
本発明のcBN焼結体は、上記の第1化合物の成分に加え、Wおよび/またはReと、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素とからなる第2化合物を1種以上含み、第2化合物は、cBN焼結体中に0.1質量%以上2質量%以下含まれることが好ましい。ここで、第2化合物は、cBN焼結体の組織中に不連続に配置されるものである。Wを含む原料としては、たとえばパラタングステン酸アンモニウム(5(NH42O・12WO3・5H2O)を挙げることができ、Reを含む材料としては、過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4)等を挙げることができる。
上記の第1化合物の原料粉末に加え、第2化合物の原料粉末(すなわちたとえば、5(NH42O・12WO3・5H2Oからなる粉末またはNH4ReO4からなる粉末)と、結合相を構成する原料粉末と、cBN粒子とを混合して超高圧焼結することにより、その超高圧焼結下で第2化合物の原料粉末に含まれるNH4および/またはH2Oが触媒として機能する。そして、この触媒の機能によりcBN粒子同士を直接結合させることができ、以ってcBN焼結体の強度を高めることができる。
しかも、このような第2化合物の原料粉末とともにcBN粒子を超高圧焼結することにより、cBN焼結体の組織中に、高温硬度および靭性に優れるW、Re、またはWとReとの合金、およびこれらの酸化物が不連続に配置することとなり、結果としてcBN焼結体の熱伝導率を低下させることができる。よって、このような第2化合物をcBN焼結体に含むことにより、cBN焼結体工具の耐摩耗性、耐熱性を低下させることなく、耐欠損性を向上させることができる。
<工具シャンク部>
本発明において、cBN焼結体が固定される工具シャンク部は、この種の工具シャンク部として知られる従来公知のものであればいずれのものであっても採用することができ、特に限定されない。このような工具シャンク部としては、たとえば超硬合金製またはステンレス製のものを好適に用いることができる。
ここで、上記のcBN焼結体と工具シャンク部とは、ネジ止め方式および/またはセルフグリップ方式により固定されることが好ましい。このような方式でcBN焼結体を固定することにより、cBN焼結体工具が摩耗して、その機能が損なわれた場合に、摩耗したcBN焼結体のみを交換することができる。これにより工具シャンク部を交換することなく繰り返し利用することができる。
<防振耐熱板>
本発明において、cBN焼結体と工具シャンク部との固定部分に防振耐熱板を介在させることが好ましい。防振耐熱板を介在させることにより、加工時にcBN焼結体に生じる振動が工具シャンク部に伝播するのを抑制することができる。すなわち、防振耐熱板を設けることにより、加工時に工具シャンク部にかかる振動の負荷を軽減することができる。
防振耐熱板は、40W/m・K以下の熱伝導率であることが好ましい。防振耐熱板が40W/m・K以下の熱伝導性を示すことにより、加工時に生じる摩擦熱が工具シャンク部に伝導しにくくなり、加工物に伝導させることができる。これにより加工物の軟化を促進することができ、以ってcBN焼結体工具の欠損を発生しにくくすることができる。このような防振耐熱板は、20W/m・K以下の熱伝導率であることがより好ましく、さらに好ましくは、5W/m・K以下の熱伝導率である。また、防振耐熱板は、酸化物からなるものを用いることにより、さらに熱伝導率を低下させることができる。
<cBN焼結体の製造方法>
本発明に用いられるcBN焼結体は、cBN粒子と断熱相を構成する原料粉末と結合相を構成する原料粉末とを超高圧装置に導入した上で、これらの粉末を超高圧焼結することにより得ることができる。このように断熱相を構成する原料粉末を含めた上で、超高圧焼結することにより、cBN焼結体の熱伝導率を低下させることができる。ここで、超高圧焼結の条件として、超高圧焼結時の圧力は、低圧力であることが好ましく、より具体的には2GPa以上7GPa以下であることが好ましい。超高圧焼結時の温度は、1100℃以上1800℃以下であることが好ましく、超高圧焼結の処理に要する時間は5分以上30分以下であることが好ましい。
また、上記の超高圧焼結以外の焼結方法として、低圧焼結してもよい。これにより断熱相を構成する原料粉末の焼結が完全に進行しにくくなるため、断熱相の一部として、意図的に未焼結の領域を点在させることができ、熱伝導を妨げる効果を得ることができる。ここで、低圧焼結としては、たとえばホットプレス法や放電プラズマ焼結法(SPS:Spark Plasma Sintering)を適用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
以下のようにして、cBN焼結体工具を作製した。まず、平均粒子径1.3μmのWC粉末と平均粒子径1.1μmのCo粉末と平均粒子径4μmのAl粉末とを質量比で、WC:Co:Al=25:68:7となるように混合し、真空中で1000℃、30分間熱処理した化合物を、φ4mmの超硬合金製ボールを用いて粉砕し結合相を構成する原料粉末を得た。
次に、断熱相を形成する第1化合物の成分として、平均粒子径0.85μmのAl粉末と平均粒子径0.7μmのZr粉末とを混ぜ合わせたものを窒素雰囲気中で1000℃、30分の間熱処理することにより化合物を作製した。その後、同化合物を粗粉砕した後に、φ0.6mmのジルコニア製メディアを用いて、流速0.2L/minのエタノールの溶媒中で、メディアと化合物とを微粉砕し、粉砕に用いたメディアを取り除くことにより、断熱相を構成する第1化合物の原料粉末を準備した。
そして、上記で得られた結合相を構成する原料粉末と断熱相を構成する第1化合物の原料粉末と平均粒子径0.9μmのcBN粉末とを焼結後のcBN含有率が60体積%になるように配合し、混合し乾燥させた。さらに、これらの粉末を超硬合金製支持板に積層してMo製カプセルに充填後、超高圧装置によって、圧力7GPa、温度1750℃で30分間焼結し、以下の表1に記した組成および熱伝導率を有するcBN焼結体を得た。また、X線回析を用いて結合相を構成する化合物の組成を求め、表1の「結合相」の欄中に示した。
上記で得られたcBN焼結体を所定の形状に切断し、防振耐熱板を介して工具シャンク部に固定することにより、cBN焼結体工具を作製した。このようにして作製されたcBN焼結体工具に対し、所定の工具形状に研削加工を施した。ここで、工具シャンク部としては超鋼合金製のものを用い、防振耐熱板としてはZrの酸化物からなり、その厚みが1mm以上であり、その熱伝導率は3W/m・Kであるものを用いた。
このようにして作製したcBN焼結体工具の工具作用点の表面粗さRzを表面粗さ測定機(SURFCOM 2800E(株式会社東京精密製))により測定したところ、cBN焼結体工具の工具作用点のRzは2.3μmであった。
<実施例2〜3>
実施例1のcBN焼結体工具に対し、cBN含有率が表1のように異なる他は実施例1と同様の方法により実施例2〜3のcBN焼結体工具を作製した。
<実施例4〜6>
実施例1のcBN焼結体工具に対し、cBN含有率および断熱相の組成が表1のように異なる他は実施例1と同様の方法により実施例4〜6のcBN焼結体工具を作製した。
たとえば、実施例4では、断熱相を形成する第1化合物の成分として、平均粒子径0.9μmのTi粉末と平均粒子径0.7μmのZr粉末とを混ぜ合わせたものを用いた。同様に、実施例5では、平均粒子径0.9μmのTi粉末と平均粒子径0.8μmのSi粉末とを混ぜ合わせたものを、断熱相の第1化合物の成分として用い、実施例6では、断熱相を形成する成分に、平均粒子径0.85μmのAl粉末と平均粒子径0.7μmのZr粉末とを第1化合物の成分として用い、平均粒子径0.6μmのパラタングステン酸アンモニウム(5(NH42O・12WO3・5H2O)粉末と平均粒子径0.8μmの過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4)粉末とを、第2化合物の原料粉末として用いた。
<実施例7〜8>
実施例1のcBN焼結体工具に対し、断熱相を構成する第1化合物の平均粒子径が表1のように異なる他は実施例1と同様の方法により実施例7〜8のcBN焼結体工具を作製した。
たとえば、実施例7では、φ0.3mmの径のジルコニア製メディアを使用して第1化合物の原料粉末を作製し、それを用いて30nmの平均粒子径の第1化合物を含むcBN焼結体工具を作製した。ここで、第1化合物の平均粒子径は、cBN焼結体を鏡面ラップし、それを電子顕微鏡で50000倍に拡大して断熱相の第1化合物の粒子径を10点測定した平均値を算出することにより得た。
また、実施例8では、φ1.0mmの径のジルコニア製メディアを使用して、第1化合物の原料粉末を作製し、それを用いて95nmの平均粒子径の第1化合物を含むcBN焼結体工具を作製した。
<実施例9>
実施例4のcBN焼結体工具に対し、焼結温度を異ならしめることにより、未焼結の領域の体積%が表1のように異なる他は実施例4と同様の方法により作製した。すなわち、焼結温度を1500℃に設定してcBN粉末と断熱相を構成する第1化合物の原料粉末と結合相を構成する原料粉末とを焼結することにより、
熱伝導率が60W/m・KのcBN焼結体を含むcBN焼結体工具を得た。
<実施例10〜11>
実施例4のcBN焼結体工具に対し、焼結時の圧力を異ならしめることにより、未焼結の領域の体積%が表1のように異なる他は実施例4と同様の方法により作製した。たとえば、実施例10では、焼結時の圧力を5.5GPaにした上で、cBN粉末と断熱相を構成する第1化合物の原料粉末と結合相を構成する原料粉末とを焼結することにより、cBN焼結体に対し0.01%の未焼結の領域を含むcBN焼結体工具を得た。
<実施例12>
実施例4のcBN焼結体工具に対し、超高圧焼結装置を用いる代わりに、放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)装置を用いることにより、cBN焼結体工具を作製した。具体的には、SPS装置内の温度を1500℃とし、焼結時の圧力を0.05GPaに調整した上で、cBN粉末と結合相を構成する原料粉末と断熱相を構成する第1化合物の原料粉末とを焼結することによりcBN焼結体を得た。なお、SPS装置を用いたcBN焼結体の作製方法を具体的に説明すると、cBN粉末と結合相を構成する原料粉末と断熱相を構成する第1化合物の原料粉末とを混合したものをグラファイト製焼結型に充填した上で、0.05GPaに加圧し、真空加熱条件で装置内の温度を1500℃として、30分以下の間、放電プラズマ焼結を行なうことにより行なった(たとえば特開2008−121046号公報の段落[0014]参照)。
このようにして得られたcBN焼結体を一の面で切断し、その断面に対しTEMを用いて10000倍で観察および分析をした。その結果、その断面の断面積の1.5%が未焼結であることを確認した。このことから、cBN焼結体中に1.5体積%の未焼結の領域を含むことが明らかとなった。
また、本実施例で得られたcBN焼結体をX線回析すると、一部の領域で六方晶となっていることが確認された。このことから、実施例12の立方晶窒化硼素焼結体は、六方晶窒化硼素(hBN:Hexagonal Boron Nitride)を一部含むことが明らかとなった。この
ようにhBNが生じた理由は、おそらく焼結時の焼結圧力が低いことにより、cBNからhBNに逆変換したことによるものと推定される。
<実施例13>
実施例4のcBN焼結体工具に対し、超高圧焼結装置を用いる代わりに、ホットプレス装置を用いることにより、cBN焼結体工具を作製した。具体的には、ホットプレス装置内の温度を1500℃とし、焼結時の圧力を0.03GPaに調整した上で、cBN粉末と結合相を構成する原料粉末と断熱相を構成する第1化合物の原料粉末とを焼結することによりcBN焼結体を得た。
このようにして得られたcBN焼結体を一の面で切断し、その断面に対しTEMを用いて10000倍で観察・分析したところ、その断面の断面積の3%が未焼結であることを確認した。このことから、cBN焼結体中に3体積%の未焼結の領域を含むことが明らかとなった。
また、本実施例で得られたcBN焼結体をX線回析すると、実施例12と同様に六方晶窒化ホウ素(hBN:Hexagonal Boron Nitride)を一部含むことが確認された。
このようにして作製された各実施例のcBN焼結体工具は、少なくとも工具作用点に立方晶窒化硼素焼結体を用いた立方晶窒化硼素焼結体工具であって、立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素と断熱相と結合相とを含有し、立方晶窒化硼素は、立方晶窒化硼素焼結体中に60体積%以上99体積%未満含まれ、断熱相は、Al、Si、Ti、およびZrからなる群より選択される1種以上の元素と、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素とからなる第1化合物を1種以上を1質量%以上20質量%以下含み、立方晶窒化硼素焼結体は、70W/m・K以下の熱伝導率のものである。
<比較例1〜2>
比較例1〜2の立方晶窒化硼素焼結体工具は、実施例1の立方晶窒化硼素焼結体工具に対して、cBN含有率、および結合相の組成が表1のように異なり、かつ断熱相を含まないことを除いては実施例1と同様の方法により作製した。なお、このようにして作製された立方晶窒化硼素焼結体に対し、結合相を構成する成分の平均粒子径を測定したところ、いずれも100nm以上であった。
<比較例3>
比較例3の立方晶窒化硼素焼結体工具は、実施例1の立方晶窒化硼素焼結体工具に対して、焼結後のcBN含有率を80体積%としたこと、およびφ3.5mmの径の超硬合金製メディアを使用することにより、200nmの平均粒子径の第1化合物の原料粉末を作製し、これを含むようにしたことを除いては、実施例1と同様の方法により作製した。
Figure 0005725441
ここで、表1の「cBN含有率」は、以下のようにして算出した。まず、各実施例および各比較例で作製されたcBN焼結体を鏡面研磨し(ただし研磨する厚みは50μm未満にとどめた)、任意の領域のcBN焼結体組織を電子顕微鏡にて10000倍で写真撮影したところ、黒色領域と灰色領域と白色領域が観察された。付属のEDXにより、黒色領域はcBN粒子、灰色領域と白色領域は結合相であることが確認された。さらに、灰色領域はCo化合物、Ti化合物、およびAl化合物であり、白色領域はW化合物であることも確認された。
次に、上記で撮影された10000倍の写真に対し画像処理ソフトを用いて2値化処理を施し、同写真のcBN粒子が占める領域(黒色領域)の合計面積を算出し、その写真中のcBN焼結体に占める黒色領域の割合の百分率を、体積%として表1の「cBN含有率」とした。
また、表1中の「熱伝導率」は、レーザーフラッシュ法により測定して得られたcBN焼結体の熱拡散率と、別の方法で算出されたcBN焼結体の比熱および密度とに基づいて算出した。
このようにして得られた各実施例および各比較例の立方晶窒化硼素焼結体を用いて、以下の工具形状を有するcBN焼結体工具を作製し、切削試験1、2および塑性試験1、2を実施した。その結果を表2〜5に示す。
<切削試験1>
実施例1〜6、および比較例1〜3について、工具型番がSNMA120430のcBN焼結体工具を作製し、以下の条件で切削試験を行なった。
被削材 :Ni基超耐熱合金インコネル718の外径加工
被削材硬度:Hv430
切削条件:切削速度 V=200m/min.
送り量 f=0.15mm/rev.
切り込み量 d=0.15mm
クーラント エマルジョン20倍希釈
Figure 0005725441
表2の「工具寿命に到達するまでの切削距離」には、摩耗幅が0.3mmを超えるまでに欠損が生じなかった場合にはcBN焼結体の摩耗幅が0.3mmを超えた時点の切削距離(km)を示し、摩耗幅が0.3mmを超えるまでに欠損が生じた場合には、その時点で切削試験を中断し、その時点までの切削距離(km)を示した。なお、切削距離の長さが長いものほど、工具寿命が長いことを示している。
また、表2中の「損傷形態」においては、切削試験後のcBN焼結体の摩耗幅が0.3mmを超えた場合に「正常摩耗」と記し、それまでに欠損が生じた場合に「境界欠損」と記した。
表2から明らかなように、実施例1〜6の本発明に係る立方晶窒化硼素焼結体工具は、比較例1〜3の立方晶窒化硼素焼結体工具に比し、工具寿命を長寿命化したものであることが明らかである。
実施例1〜6の中でも実施例3の立方晶窒化硼素焼結体工具は、cBN焼結体の熱伝導率が60W/m・K以下であり、かつcBN含有率が80体積%であるため、その立方晶窒化硼素焼結体工具の寿命が最も長くなっていると考えられる。これに対し、比較例1の立方晶窒化硼素焼結体工具は、cBN焼結体の熱伝導率が60W/m・K以下であり、熱伝導率は比較的低いが、cBN含有率が60体積%でありその体積%が低いため、その強度が低下することとなり、工具寿命が短くなったものと考えられる。
また、比較例2の立方晶窒化硼素焼結体工具は、cBN含有率が85体積%であるが、断熱相を含まないことによりcBN焼結体の熱伝導率が90W/m・Kと比較的高くなっている。このため切削加工時に生じる発熱が被削材に伝導しにくく、被削材を十分に軟化することができなかったために、境界欠損が早期に生じたものと推定される。また、比較例3の立方晶窒化硼素焼結体工具は、第1化合物の平均粒子径が100μm以上であったために、断熱相の効果を得ることができず、cBN焼結体の熱伝導率が比較的高く80W/m・K程度となっている。このため切削加工時に生じる発熱が被削材に伝導しにくく、被削材を十分に軟化することができずに、早期に境界欠損が生じたものと推定される。
<切削試験2>
実施例9〜13および比較例2において、工具型番がCNGA120408のcBN焼結体工具を作製し、以下の条件で切削試験を行なった。
被削材 :0.8C−2.0Cu−残Fe(JPMA記号:SMF4040)
被削材硬度:78HRB
切削条件:切削速度 V=200m/min.
送り量 f=0.1mm/rev.
切り込み量 ap=0.2mm
切削液あり
Figure 0005725441
また、表3中の「損傷形態」において、切削試験後のcBN焼結体の表面に目視で確認できる程度のチッピングが発生している場合に「微小チッピング」と記した。なお、その他の損傷形態は、切削試験1と同様の基準で判断した。
表3から明らかなように、実施例9〜13の本発明に係る立方晶窒化硼素焼結体工具は、比較例2の立方晶窒化硼素焼結体工具に比し、工具寿命を長寿命化したものであることが明らかである。
比較例2の立方晶窒化硼素焼結体工具の工具寿命が短くなった理由はおそらく、立方晶窒化硼素焼結体の熱伝導率が70W/m・Kよりも高いことにより、加工熱が工具側に相対的に多く流入することとなり、その結果、被削材の軟化を十分に促進することができずに、工具作用点における被削材のせん断がスムーズに進行しなくなり、加工初期から加工面にむしれが発生し、加工面の面粗度が悪化したことによるものと推察される。
<塑性試験1:パンチプレス>
実施例1、7、8、および比較例1〜3において、工具形状がφ10の円筒形状のcBN焼結体工具を作製し、以下の条件で塑性試験を行なった。
加工物 :SUS304
加工物の硬度:Hv180
加工物の厚み:2mm
塑性条件:押しぬき荷重2.5GPa
Figure 0005725441
表4の「パンチ回数」には、パンチ穴にバリが発生した時点までに加工物をパンチした回数を示した。なお、パンチ回数が多いほど、立方晶窒化硼素焼結体工具の硬度が向上しており、工具寿命が長くなっていることを示している。
表4から明らかなように、実施例1、7、および8の本発明に係る立方晶窒化硼素焼結体工具は、比較例1〜3の立方晶窒化硼素焼結体工具に比し、工具寿命を長寿命化したものであることが明らかである。このことから、立方晶窒化硼素焼結体工具の寿命が向上していることを確認した。
<塑性試験2:摩擦圧縮接合>
実施例1、7、8、および比較例1〜3において、直径12.7mmの円柱の中央部に、ネジ高さが3mmのM4の左ネジ形状の突起物を形成したcBN焼結体工具の底面に対し、厚み2mmのジルコニア製の防振耐熱板をロウ付けした特殊工具を作製し、以下の条件で塑性試験を行なった。
被接合材:高張力鋼を2枚重ねしたもの
被接合材の引張強度:590MPa
被接合物の厚み:1mm
接合条件:回転数 2500rpm
加圧力 10000N
Figure 0005725441
表5の「接合回数」には、cBN焼結体工具のネジ部が欠損するまでに、被接合材を接合した回数を示した。なお、接合回数が多いほど、工具寿命が長いことを示している。
表5から明らかなように、実施例1、7、および8の本発明に係る立方晶窒化硼素焼結体工具は、比較例1〜3の立方晶窒化硼素焼結体工具に比し、工具寿命を長寿命化したものであることが明らかである。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (10)

  1. 少なくとも工具作用点に立方晶窒化硼素焼結体を用いた立方晶窒化硼素焼結体工具であって、
    前記立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素と断熱相と結合相とを含有し、
    前記立方晶窒化硼素は、前記立方晶窒化硼素焼結体中に60体積%以上99体積%未満含まれ、
    前記断熱相は、Al、Si、Ti、およびZrからなる群より選択される1種以上の元素と、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素とからなる1種以上の第1化合物と、Wおよび/またはReと、N、C、O、およびBからなる群より選択される1種以上の元素とからなる1種以上の第2化合物とを含み、
    前記第1化合物は、前記立方晶窒化硼素焼結体中に1質量%以上20質量%以下含まれ、かつ100nm未満の平均粒子径を有し、
    前記第2化合物は、前記立方晶窒化硼素焼結体中に0.1質量%以上2質量%以下含まれ、
    前記立方晶窒化硼素焼結体は、70W/m・K以下の熱伝導率である、立方晶窒化硼素焼結体工具。
  2. 前記第1化合物は、50nm未満の平均粒子径を有する、請求項1に記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
  3. 前記断熱相は、その一部として未焼結の領域を前記立方晶窒化硼素焼結体に対して、0.01体積%以上3体積%以下含む、請求項1または2に記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
  4. 前記第1化合物は、Al、Si、Ti、およびZrからなる群より選択される1種以上の元素の窒化物、炭化物、および炭窒化物に対し、酸素および硼素のいずれか一方もしくは両方が0.1質量%以上10質量%以下固溶した化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
  5. 前記立方晶窒化硼素は、前記立方晶窒化硼素焼結体中に75体積%以上92体積%以下含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
  6. 前記立方晶窒化硼素は、前記立方晶窒化硼素焼結体中に80体積%以上87体積%以下含まれる、請求項1〜5のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
  7. 前記立方晶窒化硼素は、平均粒子径が1μm以下の立方晶窒化硼素粒子からなる、請求項1〜6のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
  8. 前記立方晶窒化硼素焼結体は、60W/m・K以下の熱伝導率である、請求項1〜7のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
  9. 前記工具作用点は、1μm以上20μm以下の面粗さRzである、請求項1〜8のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
  10. 前記工具作用点における前記立方晶窒化硼素焼結体の最低厚みは、2mm以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
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