JP3697893B2 - 硬質焼結体スローアウェイチップとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ダイヤモンド焼結体または立方晶窒化硼素を含有する焼結体が工具母材に接合されてなるスローアウェイチップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
微細なダイヤモンド粒子を鉄族金属等の結合材を用いて超高圧高温下で焼結して得られるダイヤモンド焼結体は、切削工具、伸線ダイス、ドリルビット耐摩工具の刃先材料として、従来の超硬合金に比べ格段に優れた耐摩耗性を有している。また、微細な立方晶窒化硼素を種々の結合材を用いて焼結した材料は、高硬度の鉄族金属や鋳鉄の切削に対して優れた性能を示す。
【0003】
従来の硬質焼結体スローアウェイチップは、まず硬質焼結体を多角形状の工具母材コーナー部分に、主にAgやCuからなるロウ材を介してロウ接し、続いて切れ刃となる硬質焼結体稜線部分を単独で、あるいは工具母材稜線と同時に研磨する事により、硬質焼結体稜線に切れ刃を有するスローアウェイチップが得られる。
【0004】
ここで、このロウ付け工程において、急速な加熱と冷却がこれら硬質焼結体中に加えられるために、条件によっては前記硬質焼結体と工具母材間の接合部分において、これら材料間の熱膨張差に起因するキレツやワレが発生する場合があった。特に活性ロウ材と呼ばれる、上記AgやCuの成分にTiやZrなどの活性金属を添加して、硬質焼結体との濡れ性を改善してロウ付け強度を高めたロウ材を使用した場合、条件によっては前記硬質焼結体部分にキレツ5やカケ5'が発生しやすい問題があった。
さらに、硬質焼結体稜線8と工具母材稜線7'の接合部分は、この部分での硬質焼結体の形状が鋭角になる場合が多く、工具切れ刃を形成する研磨工程においても、キレツやカケが発生しやすかった。
硬質焼結体中に上記に示されるキレツやカケが含まれたまま使用された場合、これらキレツやカケは接合部分における破壊の起点となり、接合強度の低下を招いたり、あるいは工具欠損の起点となるために、工具寿命の低下を招くなどの問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば特開平7−51906号公報では、ダイヤモンド焼結体あるいは立方晶窒化硼素焼結体と工具母材とを接合した切削工具において、工具母材のコーナー部縦壁側に位置する硬質焼結体の側面端部を欠落させることにより、研磨工程での欠けを防止することが開示されている。しかしながら、このような先行例では、実質的に硬質焼結体部分の切れ刃長さが短くなることに加え、実際に工具として使用した場合、切削条件によってはこの欠落部分に被削材が溜まったり、あるいはこの欠落部分を起点にカケやキレツが発生するなど、工具として使用する上で問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような先行技術における課題に鑑み、本発明は、ダイヤモンド焼結体または立方晶窒化硼素を含有する焼結体がカケやキレツを有することなく高強度に接合されてなる硬質焼結体スローアウェイチップを提供すること、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の一つの態様による硬質焼結体スローアウェイチップは、多角形状の工具母材コーナー部分に、ダイヤモンドまたは立方晶窒化硼素を20容量%以上含有する硬質焼結体が接合されており、当該コーナーを挟む2つの工具母材稜線各々が、硬質焼結体の稜線と同一直線上にて隣接する第1の稜線と、硬質焼結体の稜線より工具内接円側に位置している第2の稜線を有することを特徴とするものである。
また、もう一つの態様による硬質焼結体スローアウェイチップの製造方法は、多角形状の工具母材コーナー部分に、ダイヤモンドまたは立方晶窒化硼素を20容量%以上含有する硬質焼結体が接合されるスローアウェイチップにおいて、当該コーナーを挟む2つの工具母材稜線各々に、硬質焼結体に隣接する第1の稜線と、第1の稜線よりも工具内接円側に位置する第2の稜線を設け、前記硬質焼結体を工具母材コーナー部分に接合した後、硬質焼結体稜線と第1の工具母材稜線とを同時に研磨して、硬質焼結体に切れ刃を形成することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者はダイヤモンド焼結体または立方晶窒化硼素を含有する焼結体が、カケやキレツを有することなく接合されてなる硬質焼結体スローアウェイチップの研究を鋭意行った。
その結果、多角形状の工具母材コーナー部分に、ダイヤモンドまたは立方晶窒化硼素を20容量%以上含有する硬質焼結体が接合されるスローアウェイチップにおいて、当該コーナーを挟む2つの工具母材稜線各々に、硬質焼結体に隣接する第1の稜線と、第1の稜線よりも工具内接円側に位置する第2の稜線を設け、前記硬質焼結体を工具母材コーナー部分に接合した後、硬質焼結体稜線と第1の工具母材稜線とを同時に研磨して、硬質焼結体に切れ刃を形成することにより、カケやキレツを有することなく、高強度に接合されてなる硬質焼結体スローアウェイチップが作製されることを見いだした。
【0009】
第8図、第9図に従来のスローアウェイチップの製造工程を示す。硬質焼結体とロウ材、あるいは硬質焼結体と工具母材間に発生する熱膨張差や、鋭角を有する硬質焼結体の切れ刃先端形状などの原因によりカケやキレツが発生すると考えられ、このカケやキレツは、硬質焼結体稜線を起点として発生することが多い。このため、これらカケやキレツを除去するためには、硬質焼結体をロウ付け後、少なくとも硬質焼結体稜線8と工具母材稜線7'とが同時に研磨されるか、または上記カケやキレツが除去できるまで、硬質焼結体と工具母材を研磨する事が必要であった。
【0010】
ところが、硬度の高い硬質焼結体部分と、比較的硬度の低い超硬合金等より成る工具母材部分を同時に研磨する場合、大きな硬度差により砥石に目詰まりが発生しやすく、この同時研磨作業は労力の要する工程であった。特に、従来のスローアウェイチップでは、同時に研磨される工具母材稜線部分が非常に長いために、この研磨工程には多大の労力が必要であった。
【0011】
これに対して、第1図に示す本発明のスローアウェイチップでは、工具母材に隣接する第1の稜線6と、第1の稜線よりも工具内接円側に位置する第2の稜線7を設けているために、上記研磨工程において、第2の稜線部分を研磨することなく、稜線長さの短い第1の稜線部分のみが研磨されることになる。このため本発明のスローアウェイチップでは、多大な労力を要することなく硬質焼結体中のカケやキレツを除去することが可能となった。
【0012】
こうして作製される硬質焼結体スローアウェイチップは、多角形状の工具母材コーナー部分に、ダイヤモンドまたは立方晶窒化硼素を20容量%以上含有する硬質焼結体1が接合されており、当該コーナーを挟む2つの工具母材稜線各々が、硬質焼結体の稜線8と同一直線上にて隣接する第1の稜線6と、硬質焼結体の稜線8より工具内接円側に位置している第2の稜線7を有するものである。
【0013】
ここで、上述のように効率よく研磨を行うためには、工具母材第1の稜線部分6の長さは2.0mm以下であることが望ましい。また、工具母材第1の稜線部分の長さが0.1mm未満である場合には、ロウ付け時に硬質焼結体に発生したキレツが、この工具母材第1の稜線部分にも伝播し、硬質焼結体と共に第1の稜線部分が欠落してしまうことがある。このため、工具母材第1の稜線部分の長さは0.1〜2.0mmの範囲内にあれば好ましい。
【0014】
さらに、硬質焼結体稜線と工具母材に隣接する第1の稜線部分のみを研磨して、スローアウェイチップを得る場合、研磨終了時点における第1の稜線6と第2の稜線7は、実質的には少なくとも0.01mm以上の段差で接続されることになる。また、第1の稜線6と第2の稜線7が1mm以上の段差で接続されている場合には、硬質焼結体の飛び出し部分が大きくなり過ぎるために、スローアウェイチップのクランプ剛性が悪化して、使用中にビビリが発生するなど問題が発生しやすくなる。このため第1の稜線6と第2の稜線7は、0.01〜1.0mmの範囲内の段差で接続されることが好ましい。
【0015】
一方、工具母材にロウ接される硬質焼結体は、従来より広く用いられてきた、超硬合金に裏打ちされたダイヤモンドまたは立方晶窒化硼素を20容量%以上含有する焼結体が用いられる。しかし、上述のロウ付け工程において、急速な加熱と冷却がこれら複合焼結体中に加えられるために、条件によっては前記硬質焼結体1と工具母材4との接合界面において、これら材料間の熱膨張差に起因するキレツやカケが発生する場合がある。そこで、より信頼性の高い硬質焼結体スローアウェイチップを得るためには、前記硬質焼結体が、接合層を介して直接工具母材上に接合されていることが好ましい。
【0016】
このように工具母材上に硬質焼結体を接合する場合、あるいは超硬合金に裏打ちされた硬質焼結体を使用する場合においても、高強度に硬質焼結体を工具母材に接合させるためには、活性ロウ材と呼ばれる、AgやCuの成分にTiやZrなどの活性金属を添加して、硬質焼結体との濡れ性を改善してロウ付け強度を高めたロウ材を使用することが好ましい。
【0017】
中でも、ロウ材自身に耐熱性と剛性が必要となる用途では、0.5〜65重量%のTiまたはZrの1種または2種を含み、残部がCuと不可避不純物から成るロウ材を使用することが好ましい。
従来ロウ材の主成分としては、上記AgやCuが広く用いられてきたが、Agは弾性率が低く変形が大きい。このため、このようにロウ材自身に剛性を要求する用途には不向きであった。これに対してCuはAgに比べ弾性率が高いため、本目的における接合材料の成分としてはCuが好ましい。
加えて、IVa、Va、VIa族金属はAg、Cuなどに比べ強度が高く、また高温での強度・変形においても優れている。発明者らは、主成分であるCuにこれら金属が添加されたロウ材を使用する事により、接合強度および高温強度が大幅に優れる硬質焼結体スローアウェイチップが作製できることを見いだした。中でもTiおよびZrは、高温強度に加え、高い活性度を有しているために、CuにTiおよび/またはZrが添加されたロウ材を使用することにより、硬質焼結体上でのロウ材の濡れ性が向上し、硬質焼結体と工具母材との接合強度が大幅に向上することを見いだした。
【0018】
このとき、ロウ材中に含まれるTiまたはZrの1種または2種が0.5重量%未満であれば、接合強度や高温強度の向上効果が生じず、逆に60重量%を超えると、融点の上昇を招き、接合時の歪みやこれに起因するカケが発生しやすくなる。すなわち、ロウ材中のTiまたはZrの1種または2種の含有量は0.5〜65重量%の範囲内にあれば好ましい。
さらに、ロウ材中に含まれるTiの含有量が20〜30重量%であり、かつZrの含有量が20〜30重量%の範囲のロウ材を使用した場合、Ti−Zr−Cuの3元共晶による融点降下が顕著に現れ、より低融点で接合できるために好ましい。
【0019】
また、前記ろう材組成に加え、10〜30重量%の範囲でNiを含むろう材を使用した場合には、より耐熱性と耐腐食性が優れるため、この様な特性が必要なスローアウェイチップには最適である。この場合、Niの含有量が10%未満で有れば、Niを添加することによる高温強度の向上効果が現れず、また30重量%を超える場合には、融点の上昇を招き、接合時の焼結体のワレや歪みの原因となる。すなわち、ロウ材中のNiの含有量は10〜30重量%の範囲内にあれば好ましい。
【0020】
一方、耐熱性や剛性よりも、硬質焼結体中のキレツ防止や靱性が必要な用途では、比較的低融点でかつロウ付け時に発生する歪みが吸収できる、軟質金属からなるロウ材を使用する事が好ましい。このようなロウ材としては、0.5〜20重量%のTiまたはZrの1種または2種と、10〜40重量%のCu、残部がAgと不可避不純物から成るロウ材が最も好適である。
【0021】
ここでロウ材中に含まれるTiまたはZrの1種または2種が0.5重量%未満であれば、硬質焼結体上への濡れ性が悪化して、接合強度が低下する。逆に20重量%を超えると、硬質なTi化合物が析出しやすくなり、この用途で要求される靱性が得られなくなる。すなわち、ロウ材中のTiまたはZrの1種または2種の含有量は0.5〜20重量%の範囲内にあれば好ましい。さらに、ロウ材中に含まれるTiまたはZrの1種または2種の含有量が0.5〜20重量%Tiあり、かつCuの含有量が10〜40重量%の範囲であり、残部がAgである場合、これら成分による3元あるいは4元共晶による融点降下が顕著に現れ、より低融点で接合できるため、硬質焼結体に発生するキレツ防止に好ましい。
【0022】
ロウ材を、上述のような範囲の組成とすることにより、780℃〜1100℃と比較的低温でのロウ付けが可能となる。また、上述のロウ材を使用する場合、ロウ材中に含まれるTiあるはZrは酸素と結合しやすく酸化物を形成しやすい。この場合、ロウ材の濡れ性は著しく悪化するため、上述のロウ材を使用する場合には、酸素分圧の低い真空中、あるいはArなどの不活性ガス雰囲気中での作業が必要となる。
【0023】
ところで、上記のように接合強度に優れるロウ材を用いても、前記硬質焼結体が接合層を介して直接工具母材上に接合されている場合、ダイヤモンド焼結体または立方晶窒化硼素焼結体の厚みが0.25mm未満となると、工具刃先に発生した切削熱が、熱伝導率の高いダイヤモンド焼結体や立方晶窒化硼素焼結体を介して、大量に接合層部分に流れ込むために、接合層部分の温度が上昇し、接合強度の低下を招く。
このため、接合されるダイヤモンド焼結体または立方晶窒化硼素焼結体の厚みは、0.25mm以上必要である。また、ダイヤモンド焼結体または立方晶窒化硼素焼結体の厚みが1.5mmを超えると、切れ刃の研磨に要する労力が多大になるため、これらの硬質焼結体の厚みは1.5mm以下であることが望ましい。
【0024】
すなわち、硬質焼結体が接合層を介して直接工具母材上に接合されている場合、硬質焼結体層の厚みは0.25〜1.5mmの範囲内に有ることが望ましい。また、硬質焼結体が接合される工具母材としては、超硬合金、鋼、セラミックス等、切削抵抗に耐えうる強度有する材料で有ればどのような材料でも構わない。接合される硬質焼結体との熱膨張差や、材料強度等を考慮に入れた場合、超硬合金が最も好適である。
【0025】
【実施例】
(実施例1) 表1は工具母材第1の稜線の長さや、第1の稜線と第2の稜線との段差が、接合強度や切削性能、あるいは製造上の経済性について調べるために準備された種々のスローアウェイチップの例を示している。すなわち、表1におけるスローアウェイチップは、いずれの工具母材にも、硬質焼結体に隣接するよう設けられた第1の稜線と、これよりも工具内接円側に位置している第2の稜線とを有しているが、第1の稜線の長さや、2つの稜線の間の段差が、種々に変えられている。
【0026】
まずスローアウェイチップを作製するために、表1に示すような工具母材第1の稜線と第2の稜線を有する超硬合金製の工具母材を用意した。その後、25Ti−25Zr−50Cuの組成を有するロウ材を用い、超硬合金に裏打ちされた立方晶窒化硼素焼結体を多角形状の工具母材コーナー部分にロウ付けした。なおロウ付けは、1×10-4(torr)の真空雰囲気下で行われた。
【0027】
【表1】
【0028】
その後、立方晶窒化硼素焼結体稜線部分に切れ刃を形成するために、この焼結体の稜線部分のみを、あるいは工具母材第1の稜線部分とを同時に研磨を行った。この時の作業に要した時間と、キレツの残留状況を示した物が表2である。この場合、硬質焼結体先端部分には約0.2mm深さのキレツが発生していたために、片側の稜線で0.25mmの研削代が必要であった。
【0029】
【表2】
【0030】
その結果、試料2A、2B、2C、2D、2Eは、硬質焼結体と同時に多くの超硬部分を研削するために、砥石の目が詰まりやすく研削作業に多大の時間を要した。同様に工具母材第1の稜線部分が長い試料2I、2Mも、同様の理由により多くの作業時間が必要であった。
一方、工具母材第1の稜線長さが短い試料2F、2Jはロウ付け時に硬質焼結体に発生したキレツが、厚みの薄い工具母材第1の稜線部分にも及び、これを除去する事が不可能であった。
これに対して、試料2G、2H、2K、2Lは多大の労力を要することなく、ロウ付け時のキレツを除去することが可能であった。
これら4つの試料について、引き続き切削性能の評価を行うため、表3に示す条件にて切削試験が実施された。
【0031】
【表3】
被削材:長手方向に6つの溝を有する浸炭焼入材(SCM415)
被削材硬度:HRC62
被削材の周表面速度:200(m/min)
工具の切り込み深さ:0.5(mm)
工具の送り速さ:0.16(mm/rev)
切削時間:5(min)
【0032】
その結果、硬質焼結体の飛び出し量の大きい試料3K、3Lは、切削中にビビリが発生し、これが原因で硬質焼結体刃先部分に欠損が発生し、切削試験の続行が不可能であった。
これに対して、本発明例である試料3G、3Hは、切削中にビビリが発生することなく、安定した加工が可能であった。
【0033】
(実施例2) 表4は、主に接合層中のTiあるいはZrの含有量が、接合強度や工具性能に及ぼす影響を調べるために準備された種々の接合材の例を示している。すなわち、表4における接合材4A 〜 4Eは、いずれもCuを含むロウ材であるが、接合材中のTiおよびZrの含有量が種々に変えられている。
まず、接合材試料を作製するため、表4に記載される組成を有する接合材粉末を作製し、これを有機溶剤と混ぜ合わせることにより、ペースト状の接合剤4A〜4Eを得た。ついでこのロウ材を用いたスローアウェイチップの性能を評価するために、厚みが1.0mm立方晶窒化硼素焼結体を超硬合金製母材のコーナー部分にロウ付けし、その後研磨を行い評価用のスローアウェイチップを作製した。なお、ロウ付けはアルゴン雰囲気中で、表4に示す温度下で行われた。
その結果、試料4Eはロウ付け温度が高いためにロウ付け時に多数のキレツが発生し、評価サンプルを作製する事が不可能であった。
【0034】
【表4】
【0035】
一方、試料4A〜4Dは切削性能を評価するため、表5に示す条件下で評価が行われた。
【0036】
【表5】
被削材:長手方向に8つの溝を有する鋳鉄(FC250)
被削材の周表面速度:800(m/min)
工具の切り込み深さ:1.5(mm)
工具の送り速さ:0.25(mm/rev)
切削時間:15(min)
【0037】
その結果、接合強度の低い試料5Aは、切削初期に硬質焼結体ブランク部分が外れ、、切削試験の続行が不可能であった。これに対して、本発明例である試料5B、5C、5Dは、接合強度が高いために、厳しい切削条件にも関わらず、切削中に硬質焼結体ブランク部分が外れることなく、安定した加工が可能であった。
【0038】
(実施例3) 表6は、主にロウ材中の組成が、常温および高温での接合強度に及ぼす影響を調べるために準備された種々の接合材の例を示している。すなわち、表6における接合材6A〜6Dは、いずれ接合材中の組成が種々に変えられている。
まず、接合材試料を作製するため、実施例2と同様の方法により表6に記載される組成を有するロウ材6A〜6Dを得た。ついでこのロウ材を用いたスローアウェイチップの接合強度を評価するために、超硬合金に裏打ちされた立方晶窒化硼素焼結体を、超硬合金製母材のコーナー部分にロウ付けし、その後研磨を行い評価用のスローアウェイチップを作製した。なお、試料6B〜6Dは1×10-4(torr)の真空雰囲気でロウ付けが行われ、試料6Aは大気中にてロウ付けが行われた。
【0039】
【表6】
【0040】
その後、この硬質焼結体部分の接合強度を評価するために、硬質焼結体の側面部分に荷重を加えることにより、常温および高温雰囲気でのせん断荷重の測定を行った。この結果を表7に示す。
試料7Aはロウ材中にTiやZrなどの活性金属を含まないために、立方晶窒化硼素焼結体部分とロウ材との濡れ性が悪く、常温および高温において接合強度が低い結果となった。
これに対して、活性金属を含むロウ材で接合された試料7B〜7Dは、裏打ちされた超硬合金部分に加え、立方晶窒化硼素焼結体とロウ材との濡れ性が優れるために、高い接合強度を有していることが明らかとなった。特にTiおよびZr含有量の多い試料7Cと7Dは、高温においても高い接合強度を有しており、高い耐熱性を有していることが明らかとなった。
【0041】
【表7】
【0042】
(実施例4) 表8は、主に接合される硬質焼結体の厚みが、切削性能に及ぼす影響を調べるために準備されたダイヤモンド焼結体スローアウェイチップの例を示している。すなわち、表8におけるスローアウェイチップ8A〜8Dは、実施例1同様の方法により、表8に記載されたロウ材によりダイヤモンド焼結体が超硬合金製の工具母材上に接合され工具が作製された。この時、刃付け研磨終了後の工具母材第1の稜線の長さは1.0(mm)であり、第1の稜線と第2の稜線間の段差は0.3(mm)であった。
【0043】
【表8】
【0044】
表8のサンプルについて、切削評価が行った結果を表9に示す。
その結果、工具9Aはダイヤモンド焼結体の厚みが薄いために、刃先に発生した切削熱が大量に接合層部分に流入するために、接合層部分が軟化し接合強度の低下を招き、これが原因で切削中に工具欠損が発生した。これに対して、9B〜9Dはダイヤモンド焼結体の厚みが厚いために、刃先で発生した切削熱が分散・放熱されるために、接合層部分の軟化が発生せず、高い接合強度が維持され、安定した加工が可能であった。
ところが試料9Dは、表8に示すように研磨に要する時間が長く、このスローアウェイチップの作製には多大の労力が必要であった。従って、本発明の範囲内である9Bと9Cのみが、切削性能と経済性を両立できることが明らかとなった。
【0045】
【表9】
被削材:軸方向に沿って4つの溝を有するAl−18重量%Si丸棒
被削材の周表面速度:600(m/min)
バイトの切り込み深さ:1.5(mm)
バイトの送り速さ:0.2(mm/rev)
切削時間:10(min)
【0046】
【発明の効果】
本発明により、ダイヤモンド焼結体または立方晶窒化硼素を含有する焼結体がカケやキレツを有することなく、高強度に接合することができ、強度の高い硬質焼結体スローアウェイチップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明品の正面図である。
【図2】本発明品の側面図であって、硬質焼結体を接合層を介して工具母材上に接合されているものを示す。
【図3】本発明品の側面図であって、超硬合金に裏打ちされた硬質焼結体を接合層を介して工具母材上に接合されたものを示す。
【図4】本発明品の製造工程における研削前の状態を示す正面図である。
【図5】本発明品の研削後の状態を示す正面図である。
【図6】従来品を示す。
【図7】従来品を示す。
【図8】従来の製造工程における研削前の状態を示す。
【図9】従来の製造工程における研削後の状態を示す。
【符号の説明】
1、硬質焼結体
2、超硬合金
3、接合層
4、工具母材
5、キレツ
5'、カケ
6、工具母材の第1の稜線
7、工具母材の第2の稜線
7'、従来工具母材研削前の稜線
8、硬質焼結体の稜線
9、研削代
Claims (15)
- 多角形状の工具母材コーナー部分に、ダイヤモンドまたは立方晶窒化硼素を20容量%以上含有する硬質焼結体が接合されており、当該コーナーを挟む2つの工具母材稜線各々が、正面図において、硬質焼結体の稜線と同一直線上にて隣接する第1の稜線と、硬質焼結体の稜線より工具内接円側に位置している第2の稜線を有することを特徴とする、硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記第1の稜線の長さが0.1〜2.0mmの範囲内の長さであることを特徴とする、請求項1に記載の硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記第1の稜線と、第2の稜線が0.01〜1mmの範囲内の段差で接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記硬質焼結体が、接合層を介して直接工具母材上に接合されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記接合層が0.5〜65重量%のTiまたはZrの1種または2種を含み、残部がCuと不可避不純物から成ることを特徴とする請求項4に記載の硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記接合層が20〜30重量%のTiと、20〜30重量%のZrを含み、残部がCuと不可避不純物から成ることを特徴とする請求項4に記載の硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記接合層が10〜30重量%のNiをさらに含むことを特徴とする請求項5または6に記載の硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記接合層が0.5〜20重量%のTiまたはZrの1種または2種と、10〜40重量%のCu、残部がAgと不可避不純物から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記焼結体の厚みが0.25〜1.5mmであることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の硬質焼結体スローアウェイチップ。
- 前記工具母材が超硬合金からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硬質焼結体チップ。
- 多角形状の工具母材コーナー部分に、ダイヤモンドまたは立方晶窒化硼素を20容量%以上含有する硬質焼結体が接合層を介して接合されるスローアウェイチップにおいて、当該コーナーを挟む2つの工具母材稜線各々に、正面図において硬質焼結体に隣接する第1の稜線と、第1の稜線よりも工具内接円側に位置する第2の稜線を設け、前記硬質焼結体を工具母材コーナー部分に接合した後、硬質焼結体稜線と第1の工具母材稜線とを同時に研磨して、正面図においてコーナーを挟む 2 つの第一の工具母材稜線と硬質焼結体の稜線を同一直線上にて隣接させるように硬質焼結体に切れ刃を形成することを特徴とする、硬質焼結体スローアウェイチップの製造方法。
- 前記接合層が0.5〜65重量%のTiまたはZrの1種または2種を含み、残部がCuと不可避不純物から成るロウ材を用い、真空中または不活性ガス雰囲気中でロウ付けすることを特徴とする請求項11に記載の硬質焼結体スローアウェイチップの製造方法。
- 前記接合層が20〜30重量%のTiと、20〜30重量%のZrを含み、残部がCuと不可避不純物から成るロウ材を用い、真空中または不活性ガス雰囲気中でロウ付けすることを特徴とする請求項12に記載の硬質焼結体スローアウェイチップの製造方法。
- 前記接合層が10〜30重量%のNiをさらに含むことを特徴とする請求項12または13に記載の硬質焼結体スローアウェイチップの製造方法。
- 前記接合層が0.5〜20重量%のTiまたはZrの1種または2種と、10〜40重量%のCu、残部がAgと不可避不純物から成るロウ材を用い、真空中または不活性ガス雰囲気中でロウ付けすることを特徴とする請求項11に記載の硬質焼結体スローアウェイチップの製造方法。
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