JP4746310B2 - 金型 - Google Patents

金型

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Description

本発明は耐蝕性、耐摩耗性、耐欠損性に優れた金型用の超硬合金と金型に関する。特に、銅系金属との親和性が低く、銅系金属などの打ち抜きに好適な超硬合金に関する。
超硬合金は、(1)工具鋼やダイス鋼に比べて高硬度で摩耗し難い、(2)弾性変形や塑性変形しにくい、(3)放熱特性に優れる、(4)熱膨張率が小さい、といった多くの特徴を有し、高い精度が要求される金型の材料として高く評価されている。
超硬合金の金型の製作には、ワイヤー放電加工が広く利用される。その際、加工液として水が使用される場合があり、金型用の超硬合金には耐蝕性が求められる。その他、金型として利用されることから、超硬合金には、高い耐摩耗性や耐欠損性も要求される。
このような超硬合金の金型に関しては、特許文献1〜4に記載の技術が知られている。
特許文献1には、放電加工時の良好な耐蝕性と金型使用時の良好な耐摩耗性、耐欠損性を同時に満足する金型用超硬合金が開示されている。この技術では、Cr、Niの添加により耐蝕性を高めている。さらに、WC粒子は、平均粒径0.8〜3μmの範囲内において、微細粒子と粗大粒子を混合して使用し、それにより耐欠損性を高めている。
特許文献2には、水溶性潤滑材に対する優れた耐蝕性と耐チッピング性を同時に発揮する金型用超硬合金が開示されている。この技術では、(Co+Ni)に対するV、Crの添加量を限定することでVおよびCrの炭化物相を析出させて耐蝕性を高め、WCの平均粒径を0.7μm超6μm以下とすることにより耐チッピング性を高めている。
特許文献3には、銅または銅系合金の被加工材のスタンピング加工に用いられる金型の寿命を伸ばす超硬合金が開示されている。銅または銅系合金を被加工材とする場合、超硬合金中のCoと銅の親和性が高いため、打ち抜き加工時に発生する摩擦により超硬合金と銅または銅系合金との間で相互拡散が生じる。その結果、超硬合金の硬度に影響を与えるWCをつなぎとめる結合相の作用が脆弱になり、WC粒子が超硬合金から脱落してしまう。そこで、この技術ではNi-Coを結合相とし、銅との親和性の低いNiの含有量を特定して、銅と結合相の反応を最小限に抑制している。さらには、0.5μm以下の微細なWC粒子を用いることで均一微細組織として応力集中を緩和し、WC粒子が超硬合金から脱落することを抑制している。
特許文献4には、耐衝撃性、耐摩耗性および抗折力に優れ、特に打ち抜き型に適した超硬合金製金型用部品が開示されている。この技術ではWCの平均粒径を2.5〜4.5μmとすることにより耐衝撃性と耐摩耗性を確保している。さらに粒径1μm未満の微粒WC粒子の含有量を制限することで耐衝撃性を保持し、粒径6μmを越える粗粒WC粒子の含有量を制限することで抗折力を保持している。
特開2003-155538号公報 特開平8-337837号公報 特開平6-287675号公報 特開平11-124649号公報
しかし、上記のいずれの超硬合金も、耐蝕性、耐摩耗性、耐欠損性を兼備することに関し、なお不十分である。
従来の金型の製作は、機械加工やワイヤー放電加工により超硬合金を加工した後、最終の仕上げとして高度の技量を持った熟練者による手仕上げに依存している。一方で、最近のワイヤー放電加工の急速な高精度化や、金型ユーザからの納期の短縮要請などにより、加工面への仕上げとなる研削や磨きを省略する製造技術が求められている。しかし、このような手仕上げによる研削や研磨を省略してもなお十分な耐蝕性、耐摩耗性、耐欠損性を有する超硬合金は得られていない。
例えば、特許文献1、2および4に記載の技術は、いずれも0.7μm超の大きい粒径のWCを使用している。超硬合金のWCの粒径が大きいと、耐欠損性(耐チッピング性)および耐衝撃性は向上するが、耐摩耗性に劣る。特に、被加工材との反応による摩耗を起こし易く、精密金型などの角部をシャープに維持しにくいという課題もある。
一方、特許文献3に記載の技術は、NiやCr、Vなどを添加することによって、銅または銅系合金をスタンピング加工するときの銅と結合相の相互拡散を抑制している。しかし、WC粒子として粒径が0.5μm以下の微細なものを用いており、耐摩耗性には優れるが、耐欠損性が十分ではない。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その主目的は、耐摩耗性と耐蝕性が高く、さらにワイヤー放電加工した際、その加工面の耐欠損性にも優れる金型用の超硬合金を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、耐摩耗性、耐蝕性、耐欠損性に優れる金型を提供することにある。
本発明は、結合相にCr、V、Moを所定量添加すると共に、硬質相に所定の微細粒子と粗大粒子を混合して用いることで上記の目的を達成する。
本発明者らは、新しい要請にマッチした超硬合金を開発すべく、従来の超硬合金の問題点を調査した結果、以下の知見を得た。
(1)従来の超硬合金では、ワイヤー放電加工切断面に一定厚さの変質層がある。
(2)変質層は、(A)電気化学的な腐食による腐食層、(B)微細なクラック(亀裂)を含む脆化層、(C)カットワイヤーに含まれる銅が超硬合金に拡散して形成される拡散層が主なものである。
(3)変質層における微細なクラックは、金型の使用に伴い次第に進展してチッピングの原因となる。
(4)金型で銅系の材料を打ち抜き加工などすると、銅と結合相であるCoが相互に拡散して、硬質相であるWCが脱落し易くなる。
以上の知見に基づいて、耐摩耗性と耐欠損性を両立すると共に、変質層の生成を極力抑えることを狙いとして種々の検討を行った結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明金型用の超硬合金は、結合相と硬質相と不可避不純物とからなる超硬合金である。結合相は、超硬合金に対して6〜20重量%(以下%と記す)のCoと、Coの総量に対して3〜15%のCrと、2.5〜5.0%のVと、1.0〜5.0%のMoとからなる。そして、硬質相は、微細粒子と粗大粒子のWCで構成され、平均粒径が0.3〜0.6μmの微細粒子が硬質相の60〜90%、平均粒径が0.8〜2.5μmの粗大粒子が硬質相の10〜40%であることを特徴とする。
結合相にCr、V、Moを所定量添加することで、耐蝕性、硬質相粒子の粒成長抑制、被加工材との反応抑制を実現し、さらに硬質相に所定の微細粒子と粗大粒子を混合して用いることで、耐摩耗性と耐欠損性とを両立させることができる。
本発明合金の結合相には、6〜20重量%のCoを用いる。Co量が6%未満では抗折力および破壊靭性値が低下するため好ましくない。一方、20%より多くなると硬度が低下し、このため耐摩耗性が低下する。この結合相量により、抗折力、破壊靭性値、耐摩耗性及び耐蝕性のバランスをとることができる。
Crは耐蝕性を高める効果があり、Coの総量に対して3%未満では十分な耐蝕性が得られない。一方、15%より多くなると抗折力が低下し、耐欠損性が劣るため好ましくない。また、Crを添加すると、ワイヤー放電加工液で使用される酸性加工液に対する耐蝕性の向上が期待できる。Crのより好ましい含有量は、Coの総量に対して5〜12%である。これにより、耐蝕性と抗折力、耐欠損性がより好ましい範囲となる。
Vは、WCの粒成長を抑制する働きがある。そのため、微細粒子の硬質相が焼結時に粒成長して粗大な粒子になることを抑制できる。Co総量に対して2.5%未満であればWCの粒成長抑制効果が得られない。一方、5.0%より多くなるとVを含有する炭化物相が析出することによる抗折力の低下が起こるため好ましくない。Vのより好ましい含有量はCo総量に対して3〜4%である。これにより、WCの粒成長抑制効果と抗折力のバランスが取れたより好ましい範囲となる。
MoはCuに対する濡れ性が低く、適量含有することで被加工材との反応を抑制することができる。Moは、銅の拡散を抑制する働きがあり、Coの総量に対し1.0%未満であれば被加工物との反応抑制効果が得られない。一方、5.0%より多くなると抗折力の低下が起こるため好ましくない。Moのより好ましい含有量は、Coの総量に対して1.5〜3.0%である。これにより、Cuとの反応性を抑制し、抗折力もより好ましい範囲となる。
一方、硬質相は、WC粒子として、微細粒子と粗大粒子の両方を用いる。微細粒子を用いることで、超硬合金の耐摩耗性を向上させ、粗大粒子を用いることで超硬合金における亀裂の進展に対する抵抗性を高めて、耐欠損性および靭性を改善することができる。特に、本発明超硬合金をワイヤー放電加工して金型を作製した場合、加工面に微細な亀裂が発生するが、金型使用時に、粗大粒子が微細な亀裂の進展を抑制することができる。
この亀裂抑制のメカニズムは次のように推定される。図1は超硬合金における亀裂の進展状態を示す説明図である。この図において、超硬合金はWCの微細粒子1、粗大粒子2および結合相3からなっている。亀裂の形態としては、結合相の中のみを進展していく結合相内亀裂4、WC粒子と結合相の中を進展していくWC内亀裂5、結合相とWCの界面を通る結合相-WC粒界亀裂6に分類することができる。WCの粒径が小さいときは、亀裂が結合相-WC粒界を進展したり、WC粒子を迂回したりして通り抜ける。そのため、結合相内亀裂4、WC内亀裂5、結合相-WC粒界亀裂6のいずれの亀裂も生じやすい。これに対して、WCの粒径が大きいと、進展しようとする結合相内亀裂4や結合相-WC粒界亀裂6が粗大なWC粒子に突き当たり、しかもWC内亀裂5が生じない程度にWC粒子が大きいため、亀裂の進展が止められる。その結果、耐欠損性が向上できると考えられる。
上述した耐摩耗性と耐欠損性を両立するには、具体的には、平均粒径が0.3〜0.6μmの微細粒子が硬質相の60〜90%、平均粒径が0.8〜2.5μmの粗大粒子が硬質相の10〜40%含まれる硬質相を用いる。
このような微細粒子は、超硬合金の耐摩耗性の改善と強度向上に寄与する。また、粒子間隔を狭くして結合相の厚みを小さくできるため、被加工材と結合相の相互拡散を抑制することもできる。さらに、粒径が小さいため、金型に加工した際、金型のエッジをよりシャープに加工することができる。
微細粒子の平均粒径が0.3μmより小さければ破壊靭性値が低下するため金型製作時に亀裂が進展しやすく、また金型使用時の耐チッピング性にも劣るために好ましくない。逆に0.6μmより大きくなると硬度が低下するため耐摩耗性に劣る。
一方、粗大粒子は金型製作時および金型使用時の亀裂の進展防止に寄与する。粗大粒子の粒径が0.8μmより小さければ破壊靭性値が低くなり、十分な亀裂進展防止効果が得られない。逆に、2.5μmより大きければ、硬度低下のため耐摩耗性に劣り、また粒子間の隙間が大きくなることにより結合相の厚みが大きくなるため被加工物との反応抑制効果が得られない。さらに、金型製作時、特に精密加工する際に金型先端のシャープエッジ加工が難しくなり精密な寸法精度が得られない。
上述した微細粒子と粗大粒子の構成比率は、微細粒子が90%より多く粗大粒子が10%より少なくなれば、破壊靭性値が低下し、耐亀裂進展抑制効果が得られないことや、耐チッピング性が劣るため好ましくない。一方、微細粒子が60%より少なく粗大粒子が40%よりも多ければ、硬度が低下し、耐摩耗性が得られないため好ましくない。
以下、本発明のさらに好ましい範囲について詳細に説明する。
本発明超硬合金は結合相のCoの一部をNiに置換してもよい。そのNiの含有量はCo量と等しくなる量までである。NiはCoより耐蝕性の高い元素であり、耐蝕性が高くなる。その上、NiはCrとの相性がよく、Crをより多く固溶させるには、Niを上記の規定量含有させることが有効である。Crも前記したとおり耐蝕性を高める働きがあるが、Crを添加することで特に酸に対する耐蝕性が高くなる。CoとNiの総量に対して、NiがCoの量より多くなれば抗折力が低下するため好ましくない。
Coの一部をNiに置換した場合、Cr、V、Moの含有量の基準となる「Coの総量」も「CoとNiの総量」に置換する。つまり、Cr、V、Moは、CoとNiの総量に対して、各々3〜15%、2.5〜5.0%、1.0〜5.0%含有させればよい。
より好ましい硬質相の粒径と構成比率は、平均粒径が0.4〜0.6μmの微細粒子が硬質相の70〜85%とし、平均粒径が1.0〜2.0μmの粗大粒子を硬質相の15〜30%とすることである。この構成により、粗大粒子と微細粒子を混合した効果がよりよく現れるからである。
一方、より好ましい結合相量は超硬合金に対して8〜14%である。より優れた耐摩耗性と耐欠損性を併せ持つ超硬合金とすることができる。
また、本発明金型は、上記の本発明超硬合金からなり、ワイヤー放電加工により仕上げ加工されてなることを特徴とする。金型を作製する際、ワイヤー放電加工が利用されることは既に述べたが、本発明超硬合金は耐蝕性、耐摩耗性、耐欠損性にバランスよく優れるため、ワイヤー放電加工により仕上げ加工された金型として利用される。
特に、本発明超硬合金で構成された金型は、ワイヤー放電加工により仕上げ加工したそのままで金型として使用できる。本発明超硬合金は、耐蝕性や亀裂の進展抑制特性に優れているため、変質層をミクロンオーダーに薄くできる。従って、従来は熟練者などが手作業で行っていたワイヤー放電加工液による腐食層の除去作業、ワイヤー放電加工による微細な亀裂を含む脆化層の除去作業を行うことなく金型として利用することができる。
この金型の好適な加工対象としては、銅または銅合金が考えられる。より具体的には、本発明合金でタイバーカットパンチを構成し、半導体素子のリード加工に利用することが挙げられる。本発明合金は、銅との耐反応性に優れるため、銅あるいは銅合金を加工する金型に用いても、結合相が銅と反応して変質層を形成することを抑制でき、長寿命の金型として利用することができる。
本発明超硬合金は、次の効果を奏することができる。
(1)Cr、V、Moを適量添加することで、主として耐蝕性、粒成長抑制および被加工材との反応抑制を実現することができる。
(2)硬質相に所定の微細粒子と粗大粒子を混合して用いることで、耐摩耗性と耐欠損性とを両立させることができる。
また、本発明金型は次の効果を奏することができる。
(1)本発明超硬合金を用いたことで、耐蝕性、耐摩耗性、耐欠損性をバランスよく具えた金型とすることができる。
(2)被加工材との反応性が低い結合相と、微細粒子を含有した硬質相とを用いることで、角部がシャープに加工された金型とすることができる。
(3)変質層が極めて僅かしかなため、ワイヤー放電加工したままで金型として利用することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
各種の平均粒径を持つWC粉末および平均粒径1.3μmのCo粉末、平均粒径3μmのNi粉末、平均粒径7μmのCr粉末、平均粒径1.6μmのVC粉末および平均粒径0.9μmのMo粉末を準備した。これらの粉末を表1に示す組成になるように秤量し、これを超硬合金製ボールと共にアトライターに仕込み、混合と粉砕を行って原料粉末を調整した。表1において、CoとNiの欄はCoとNiが出発原料に占める割合を重量%で示したものである。また、Cr、VおよびMoの含有量は「Co+Ni」に対する重量%で示している。Niを含んでいない場合は、Coに対する割合で示している。なおここで、VC粉末で添加したものの一部が金属成分VとしてCo+Niに固溶し添加の効果を発揮するので、表1ではV/(Co+Ni)の値で含有量を示した。
Figure 0004746310
調整した原料粉末を加圧成形して粉末成形体を作製し、これを真空中で1400℃、1時間保持することにより焼結した。さらに98MPaのアルゴンガス中で、1320℃、1時間保持してHIP処理し、試料番号1-1〜1-5の本発明と2-1〜2-7の比較例を得た。得られた焼結体を研削して、12.5×12.5×4mmに仕上げた。
得られた焼結体の硬度と、抗折力および破壊靭性値および酸による腐食層厚みを測定し、その結果を表2に示した。この中で腐食層を以下のようにして測定した。焼結体の12.5×12.5mm面をダイヤモンドペースト#3000によりラッピング加工し、PH3.5の溶液に浸漬し60℃で36時間浸漬したもの(表2の「PH3.5])、およびPH5.5の液に浸漬し40℃で59時間保持したもの(表2の「PH5.5」)を作製した。ワイヤー放電加工に用いられる加工液には、PHが3.5〜5.5の酸性の強いものも使用されているので、上記の条件で耐蝕性を調べた。このようにして得られた試料の12.5×12.5mmのラッピング面からの腐食層の厚みを測定した。具体的には、ラッピング面に一定の角度を持つ面で切断し、その切断面をラッピングして腐食層の厚みを顕微鏡で測定した。
また、表2の抗折力測定用の試験片は、焼結体の各側面を研削した4×5×25mmの大きさとした。図2は、抗折力の測定方法を説明する正面図である。支持丸棒13を所定間隔に設置し、その上に抗折試験片10を置く。次に、抗折試験片10の上に配置された押さえ具14により抗折試験片10が破壊されるまで圧力をかけて抗折力を測定した。なお、図2において11はワイヤー放電加工面、12は研削面を示すが、この実施例では11、12共に研削面である。硬度と破壊靭性値は従来の公知の方法で測定した。
Figure 0004746310
平均粒径が0.5μmのWC粉末で適量のCrとVを添加した試料番号1-1〜1-5、2-6は、硬度と抗折力は高い水準を保つ。しかしながら、PH3.5の腐食層の厚みを見ると、本発明の試料番号1-1〜1-5は4.5〜8.3μmと薄く、耐蝕性が高いのに対し、試料番号2-6は、PH5.5までは本発明の試料と遜色がないが、PH3.5になると耐蝕性に劣ることが明確に判明した。
次に、ワイヤー放電加工の条件と、変質層の厚さとの関係を調べた。実施例1の試料番号1-3、2-3および2-6と同じ条件で、4×5×25mmの複数の全面研削された試料を準備した。次に、後述する図3に示す方法でワイヤー放電加工により5×25mmの面を10μm以上加工して、研削面の影響を取り除き、ワイヤー放電加工だけの影響を表面に残した。
図3は、ワイヤー放電加工による加工方法の説明図である。抗折試験片10の右上角部を原点とし抗折試験片の水平、垂直出しを行い、-X軸方向を抗折試験片の長手方向、-Y軸方向を厚み方向とした。放電加工用ワイヤー20は、原点の右上、すなわち、座標上のX=0.5mm、Y=0.01mmにZ軸方向にセットした。抗折試験片10とワイヤー20を相対的に-X軸方向に移動させて抗折試験片を全長にわたりワイヤー放電加工し、次に-Y軸方向に移動させて試料を切り込む位置まで移動して、X軸方向に移動させてワイヤー放電加工した。このような工程を繰り返して、抗折試験片の表面から研削の効果を除去し、ワイヤー放電加工の影響のみ残した。
上記のワイヤー放電加工は、表3に記載されている4つの条件で加工した。ワイヤー放電加工の条件は、複雑なので表4において、加工された被削材の面粗さで加工条件を示した。詳細には、加工条件1は微細仕上げ加工用FS3電源を用い、加工条件2は仕上げを細かくするFM電源を使用した。加工条件3、4は微細加工可能なFS4電源を用い、加工条件4では加工条件3より印加電圧を小さくして、さらに微細仕上げとなる条件で加工した。
Figure 0004746310
次に、ワイヤー放電加工による変質層の厚みを、以下に示す方法で測定した。まず、全面研削された試料の抗折力を測定する。次に、試料の5×25mmの面の1つをワイヤー放電加工し、その面を一定厚さづつ研削し、そのたびに図2に示す方法で抗折力を測定した。このとき、ワイヤー放電加工面を下側にして、加工面の影響が強度に反映されるようにして測定した。そして、図4に示すグラフを作成し、全面研削された試料の抗折力と同等の抗折力が得られたときの研削量を算出して表3に記載した。
図4は、横軸に研削量、縦軸に抗折力を示すグラフであり、全面研削試料の抗折力30が点線で記載されている。そして、ワイヤー放電加工された面を研削して変質層を取り除いたときの抗折力31を測定してグラフに書き込む。この作業を繰り返し、全面研削試料の抗折力30と同じ抗折力になったとき、変質層を完全に除去できたと判断し、これを変質層の厚さとした。図4に示すグラフの場合は、変質層の厚さは約6μmということができる。
表3の加工条件3、4から明らかなように、本発明の超硬合金を表面粗さが1μm以下になるような加工条件でワイヤー放電加工すると、表面変質層の厚さが1μm前後になる。この程度の厚さに変質層の厚さを抑えられると、ワイヤー放電加工した面を研削することなくそのまま金型面として使用できる。しかしながら、従来の超硬合金は、例え面粗さが小さくなる条件でワイヤー放電加工しても、変質層の厚さが2μmより小さくならない。従って、ワイヤー放電加工面を仕上げ面とすることができない。
実施例1の試料番号1-3、2-3および2-6と同じ材料を用いて、樹脂封止したリードフレームのタイバーカット用パンチを製作した。このときのパンチ先端部は加工液として水を使用し、ワイヤー放電加工した。ワイヤー放電加工したままの金型により、樹脂封止したリードフレームを10万ショット、100万ショットしたときのパンチの摩耗量を測定し、表4に示した。なお、リードフレームは、銅を99%以上含有する銅合金であった。
Figure 0004746310
試料番号2-3のものは、摩耗が激しく100万ショットできなかった。試料番号2-3の硬質相は粗大粒子のみで、微細なWC粒子を含んでいない。このために耐摩耗性に劣り、被加工材との反応による摩耗を起こし易いから100万ショットまでの寿命がなかったと考えられる。試料番号2-6の硬質相は、逆に微細な粒子のみで粗大粒子を含んでいないので、耐摩耗性は高いが耐チッピング性に劣るので20μmの摩耗となった。本発明の試料番号1-3は、100万ショットでも10μmの摩耗量しかなく、耐摩耗性に優れたものであった。
次に、銅と超硬合金の親和性を調べた。具体的には、純度99.9%の銅板を、研磨した超硬合金で挟んだ試料を2個製作した。これをそれぞれ、空気中では900℃、30分保持、真空中では900℃、10時間保持して、銅の超硬合金の中への拡散を調べた。次に、試料を取り出し、超硬合金を切断し、その断面を研磨して超硬合金の結合相と銅が反応して形成された拡散層の厚みを測定した。この測定は、断面のSEM観察にて行った。測定結果を表5に示す。
Figure 0004746310
本発明の試料1-1の拡散層は、大気中でも真空中でも、比較例である試料番号2-6よりはるかに薄いことが分かる。従って、本発明の超硬合金は銅との反応性が低く、カットワイヤーとの親和性も低いと言える。
本発明超硬合金は、耐チッピング性が高く、耐摩耗性も高いので、通常の金型のほかに機械部品、銅系合金のスタンピング加工用金型の用途が期待される。特に、耐蝕性が求められる部品、放電加工によって仕上げ加工される金型部品、機械部品などに好適に使用できる。
本発明の超硬合金は、亀裂が進展しにくい構造であることを説明する模式断面図である。 抗折力の測定方法を説明する正面図である。 ワイヤー放電加工による加工方法の説明図である。 研削量と抗折力との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 WCの微細粒子 2 WCの粗大粒子
3 結合相 4 結合相内亀裂
5 WC内亀裂 6 結合相ーWC粒界亀裂
10 抗折試験片 11 ワイヤー放電加工面
12 研削面 13 支持丸棒
14 押さえ具
20 ワイヤー
30 全面研削試料の抗折力
31 変質層を取り除いたときの抗折力

Claims (5)

  1. 結合相と硬質相と不可避不純物とからなる超硬合金で構成される金型であって、
    前記結合相は、
    超硬合金に対して6〜20重量%(以下%と記す)のCoと、
    Coの総量に対して、3〜15%のCrと、2.5〜5.0%のVと、1.0〜5.0%のMoとからなり、
    前記硬質相は、
    微細粒子と粗大粒子のWCで構成され、
    平均粒径が0.3〜0.6μmの微細粒子が硬質相の60〜90%、平均粒径が0.8〜2.5μmの粗大粒子が硬質相の10〜40%であり、
    銅または銅合金を被加工材とすることを特徴とする金型。
  2. 前記結合相のCoの一部がNiに置換され、
    そのNiの含有量はCo量と等しくなる量までであり、
    Cr、V、Moは、CoとNiの総量に対して、各々3〜15%、2.5〜5.0%、1.0〜5.0%含有されることを特徴とする請求項1に記載の金型。
  3. 前記硬質相は、平均粒径が0.4〜0.6μmの微細粒子が硬質相の70〜85%、平均粒径が1.0〜2.0μmの粗大粒子が硬質相の15〜30%であることを特徴とする請求項1または2に記載の金型。
  4. 前記結合相量は超硬合金に対して8〜14%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金型。
  5. ワイヤー放電加工により仕上げ加工されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金型。
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