JP2014093982A - バッター用粉末油脂とそれを用いたバッター液の製造方法、油ちょう加工用食品の製造方法および油ちょう食品の製造方法 - Google Patents

バッター用粉末油脂とそれを用いたバッター液の製造方法、油ちょう加工用食品の製造方法および油ちょう食品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】分散性が良く、これを配合したバッター液の経時的な粘度変化が小さく、バッター液の経時的な粘度変化や油ちょう食品製造後の時間経過によって油ちょう食品のサクさのある脆い食感が失われることを抑制できるバッター用粉末油脂とそれを用いたバッター液の製造方法および油ちょう食品の製造方法を提供する。
【解決手段】食用油脂、粉末化基材、および乳化剤としてプロピレングリコール飽和脂肪酸エステルを含有し、実質的に親水性乳化剤を含有せず、分散液中の油滴のメディアン径が0.3〜2μmの範囲内であることを特徴としている。
【選択図】なし

Description

本発明は、油ちょう食品の工業的な製造などに使用されるバッター用粉末油脂とそれを用いたバッター液の製造方法、油ちょう加工用食品の製造方法および油ちょう食品の製造方法に関する。
コロッケ、エビフライ、トンカツなどの油ちょう食品は、家庭では一般に、食品基材に小麦粉を付着させ、次に卵液を付着させ、パン粉を付着させて、油ちょうして作製される。
これらの油ちょう食品は、工業的規模でも製造されている。工業的には、卵液に代えて、小麦粉などの穀粉や他の原料を水に分散させたバッター液を用いて製造されている(特許文献1〜5)。
バッター液は、油ちょう後の具材との結着性を向上し、衣の破裂や剥離を防止し、サクさのある食感、歯切れのある食感などを与える。油ちょう食品は時間が経つと、食品基材の水分が衣に移行し、サクサクとした食感が失われるので、バッター液にはサクさがあり、かつ細かく割れるような脆い食感を経時的に維持することも求められている。
また、従来のバッター液は、経時的に粘度が変化し、増粘したり粘度が低下したりすることが多い。このように経時的に粘度が変化すると、サクさのある脆い食感に悪影響を与えるなど、安定した油ちょう食品を供給できなくなる。
バッター液の経時的な増粘は、バッター液が小麦粉などの穀粉を主成分としていることに起因しており、小麦粉中のタンパク質の水和による影響が大きい。粘度が高いとバッター液が食品基材に付着し過ぎるため、油ちょう食品の食感が硬くなったり、油ちょう時間が長く生産性が悪くなったりする。
一方バッター液の粘度が低過ぎると、食品基材に衣が均一に付着せず、あるいは付着量が少なくなり、油ちょう後には食品基材から水分が衣に移行するため、サクサクとした食感が得られなくなる。
バッター液の粘度が経時的に一定であると、経時的な食感の変化の少ない、油ちょう食品が得られるが、従来のバッター液では必ずしもこれを満足するものが得られていなかった。
従来、バッター液の粘度安定性や食感を改善する技術として、乳化剤を使用する技術や(特許文献1)、加工澱粉を使用する技術(特許文献2)などが提案されている。
しかしながら、従来技術では粘度を安定化させることや細かく割れるような脆い食感を得ることを目的とするような検討はされていない。
また、バッター液には原料として油脂を添加する場合があり(特許文献3〜5)、油脂は、乳化剤との油脂組成物や(特許文献3,4)、粉末油脂(特許文献5)として配合される。
しかしながら、乳化剤との油脂組成物は、バッター液とした場合の分散性が悪く、均一に分散しないため、サクさのある脆い食感を得ることはできない。
粉末油脂を用いた特許文献5は、増粘剤の微粉末を付着させた粉末油脂を用いて、増粘剤の溶解性を向上させ、粘度を付与する技術が提案されているが、乳化剤や油滴サイズに基づく検討はされていない。
一般に粉末油脂は、全脂型とO/W型がある。全脂型は、高融点油脂を噴霧冷却や冷却粉砕して粉末化することによって製造される。O/W型は、油脂、水、および被覆材(キャリア)としての粉末化基材を混合して乳化しO/Wエマルジョン得た後、O/Wエマルジョンを噴霧乾燥させ粉末化することによって製造される。
粉末油脂として特許文献6には、(A)食用油脂および/または油溶性乳化剤と、(B)親水性乳化剤と、(C)糖類および/または澱粉分解物とを含有するO/Wエマルジョンを噴霧乾燥することにより、水に乳化分散して得られる液の粒度分布のメディアン径が5〜120μmの小麦加工食品や澱粉加工食品の改質剤を製造することが提案されている。
特開2002−207号公報 特開平6−133714号公報 特開2002−291434号公報 特開2001−86930号公報 特開2002−291433号公報 特開2000−316504号公報
しかしながら、特許文献6にはバッター液の用途についての具体的な開示はなく、これを添加したバッター液の製造例や、バッター液に添加した場合の具体的な検証はなされていない。そしてこの技術は親水性乳化剤を必須成分とするものであるが、親水性乳化剤を使用するとO/W乳化物を粉末化する際に、水が飛び難く、粉体が吸湿しやすく、ケーキングが起こりやすくなり、粉体との混合性や、水への分散性が低下する。そのため、バッター液として用いる場合のハンドリング性が悪くなり、また油ちょう時にも水分が飛び難くなり、サクさのある脆い食感を得にくくなる。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、水への分散性が良く、これを配合したバッター液の経時的な粘度変化が小さく、バッター液の経時的な粘度変化や油ちょう食品製造後の時間経過によって油ちょう食品のサクさのある脆い食感が失われることを抑制できるバッター用粉末油脂とそれを用いたバッター液の製造方法、油ちょう加工用食品の製造方法および油ちょう食品の製造方法を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明のバッター用粉末油脂は、食用油脂、粉末化基材、および乳化剤としてプロピレングリコール飽和脂肪酸エステルを含有し、実質的に親水性乳化剤を含有せず、分散液中の油滴のメディアン径が0.3〜2μmの範囲内であることを特徴としている。
このバッター用粉末油脂において、プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ステアリン酸およびベヘン酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
このバッター用粉末油脂において、プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ステアリン酸およびベヘン酸であり、ステアリン酸とベヘン酸との質量比が1:1〜1:4の範囲内であることが好ましい。
本発明のバッター液の製造方法は、穀粉、前記のバッター用粉末油脂、および水を混合する工程を含む。
本発明の油ちょう加工用食品の製造方法は、前記の方法により製造されたバッター液で食品基材を処理する工程を含む。
本発明の油ちょう食品の製造方法は、前記の方法により製造された油ちょう加工用食品を油ちょうする工程を含む。
本発明によれば、粉末油脂の水への分散性が良く、これを配合したバッター液の経時的な粘度変化が小さく、バッター液の経時的な粘度変化や油ちょう食品製造後の時間経過によって油ちょう食品のサクさのある脆い食感が失われることを抑制できる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
(バッター用粉末油脂)
本発明のバッター用粉末油脂は、食用油脂、粉末化基材、および乳化剤としてプロピレングリコール飽和脂肪酸エステルを含有する。
食用油脂は、食用に供することのできる油脂であれば特に限定されないが、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、胡麻油、パーム油、やし油、パーム核油、カカオ脂等の植物性油脂や、牛脂、豚脂、魚油、乳脂等の動物性油脂などが挙げられる、また原料に応じて硬化、分別、エステル交換等を行ったものを用いることができる。また、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、経時的な食感の維持の点を考慮すると融点が45℃以下の油脂が好ましい。
粉末化基材は、被覆材として機能し、乾燥後の本発明のバッター用粉末油脂は、食用油脂が粉末化基材で覆われた(カプセル化した)形状となっている。
粉末化基材としては、特に限定されないが、例えば、単糖類、少糖類等の糖類、澱粉分解物、乳タンパク質などを用いることができる。具体的には、例えば、水飴(コーンシロップ)、デキストリンなどの賦形剤や、カゼインNa等の乳タンパク質、加工澱粉等の糖類などの乳化・賦形剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
乳化剤であるプロピレングリコール飽和脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸残基の炭素数が4〜24の飽和脂肪酸のモノエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルは、食用油脂を乳化するとともに、最終食品への機能性を付与する。すなわち本発明のバッター用粉末油脂は、乳化剤としてプロピレングリコール飽和脂肪酸エステルを用いることにより、バッター液の粘度の経時変化を低減し、バッター液の経時的な粘度変化や油ちょう食品製造後の時間経過によって油ちょう食品のサクさのある脆い食感が失われることを抑制できる。
特に、プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ステアリン酸およびベヘン酸であることが好ましい。ステアリン酸とベヘン酸との質量比は1:1〜1:4の範囲内がより好ましい。これらを併用すると、バッター液の粘度の経時変化を特に低減し、油ちょう食品のサクさのある脆い食感が特に向上する。
本発明のバッター用粉末油脂は、実質的に親水性乳化剤を含有しない。親水性乳化剤を使用すると粉体が吸湿しやすく、ケーキングが起こりやすくなり、水への分散性が低下する。そのため、バッター液として用いる場合のハンドリング性が悪くなり、生産効率が低下したり、また油ちょうした際にも水が飛び難く、サクさのある脆い食感を得にくくなる。
ここで親水性乳化剤は、例えば、HLBが11以上のショ糖脂肪酸エステル、HLBが10以上のソルビタン脂肪酸エステル、HLBが10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
なお「実質的に親水性乳化剤を含有しない」とは、前記のような親水性乳化剤の量が乳化剤全量に対して5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0質量%であることを意味する。
本発明のバッター用粉末油脂は、乳化剤として、プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルの他に、親油性乳化剤を添加することができる。親油性乳化剤としては、例えば、HLBが10以下のモノグリセライドや有機酸モノグリセライドなどのグリセリン脂肪酸エステル、HLBが11未満のショ糖脂肪酸エステル、HLBが8未満のソルビタン脂肪酸エステル、HLBが8未満のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。中でもグリセリン脂肪酸エステル、レシチンを用いることにより、粉末油脂を水に再溶解したときの乳化安定性が向上する。そのためバッター液での経時的な油滴の合一がなく、バッター液が長期におかれた場合でも食感の良好な油ちょう食品を得ることができる。
本発明のバッター用粉末油脂の乳化剤(ここでは粉末化基材の乳化・賦形剤を除く)としては、プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルが55質量%以上を占め、好ましくは60質量%以上を占め、より好ましくは65質量%以上を占める。
本発明のバッター用粉末油脂における食用油脂(A)、粉末化基材(B)、および乳化剤(C)の配合比は、質量比でA:B:C=10〜90:10〜90:1〜30の範囲内が好ましく、30〜80:15〜60:5〜20の範囲内がより好ましい。この範囲内であると、食用油脂の含有量が十分で、また後述のような微細なメディアン径の油滴を得ることができ、粉末化基材により被膜を形成することもできる。
本発明のバッター用粉末油脂には、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記の成分以外の他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、特に限定されないが、例えば、油脂の劣化を抑制する酸化防止剤や、香料、色素などが挙げられる。
本発明のバッター用粉末油脂は、例えば、食用油脂、粉末化基材、乳化剤のプロピレングリコール飽和脂肪酸エステル、水、および必要に応じて他の成分を配合してO/W(水中油滴型)エマルジョンに乳化後、O/Wエマルジョンを乾燥させ粉末化することによって製造することができる。次に、本発明のバッター用粉末油脂の製造方法の一例を説明する。
乳化工程では、前記の各原料を乳化機の撹拌槽に投入して撹拌混合した後、圧力式ホモジナイザーで油滴サイズを微細化する。
原料の配合比は、特に限定されないが、例えば、食用油脂、粉末化基材、乳化剤を前記のような配合範囲とし、これらの合計量100質量部に対して水50〜200質量部の範囲内にすることができる。
配合手順は、特に限定されないが、例えば、粉末化基材を水に室温で分散後、加熱下に攪拌して完全に溶解させた後、ホモミキサーで攪拌しながら、食用油脂に乳化剤を加熱溶解させたものを滴下して乳化することができる。
得られた乳化液は、圧力式ホモジナイザーに供給することによって油滴サイズが微細化される。例えば、市販の圧力式ホモジナイザーを用いて、150kg/cm2の程度の圧力をかけて均質化し、油滴サイズを微細化することができる。
次に、油滴サイズを微細化した乳化液を高圧ポンプで噴霧乾燥機の入口に供給し、高温熱風を吹き込み、噴霧乾燥機の槽内に上方から噴霧する。噴霧乾燥された粉末は槽内底部に堆積される。噴霧乾燥機としては、例えば、アトマイザー方式やノズル方式で噴霧するスプレードライヤーを用いることができる。
次に、噴霧乾燥された粉末を噴霧乾燥機の槽内から取り出した後、振動流動槽などを搬送しながら冷風で冷却することによって、本発明のバッター用粉末油脂を製造することができる。なお、適宜のときに加熱殺菌工程などを設けることもできる。
本発明のバッター用粉末油脂は、食用油脂がカプセル化されているため、べとつきがなく、計量などもしやすい。また他の粉体類とも容易に混合することができ、ケーキングや油染みを生じないため、混合量の制約がない。そして微細な食用油脂が粉末化基材によりカプセル化されているため、直接空気に接する面積が少なく、油脂の劣化が遅くなり保存性にも優れている。
このような本発明のバッター用粉末油脂はO/Wの乳化物を乾燥したものであり、水に添加すると元のO/Wエマルジョンとなり、微細な食用油脂の油滴が再分散した状態となる。
本発明のバッター用粉末油脂は、分散液中の油滴のメディアン径が0.3〜2μmの範囲内であり、より好ましくは0.5〜1.5μmの範囲内である。
ここで、油滴のメディアン径は、次のいずれかの方法で測定することができ、本発明のバッター用粉末油脂は、少なくともいずれか一方の方法で測定されたメディアン径が、前記の範囲内にある。
第1に、粉末油脂を水に分散させて、水分散液中の油滴の粒度分布をレーザー回折散乱法によって測定し、粒度分布からメディアン径を算出する。
第2に、粉末油脂を原料に用いてバッター液を調製したものについて、そのバッター液中の粉末油脂由来の油滴の粒度分布をレーザー回折散乱法によって測定し、粒度分布からメディアン径を算出する。
このメディアン径は、島津製作所製SALD−2100湿式レーザー回折装置などの粒度分布測定装置により体積基準として測定することができる。
油滴のメディアン径が前記の範囲内であると、本発明のバッター用粉末油脂の配合では、バッター液として水に溶いたときの分散性が非常に良く、速やかに均一に分散するため、バッター液中の澱粉粒などの穀粉粒を覆い、油ちょう食品のサクさのある脆い食感を得ることができる。さらに、小麦タンパク質は水和により経時的に粘度が上昇する要因となるが、微細な油滴が穀粉粒を覆い、タンパク質であるグリアジンおよびグルテニンと水によるグルテンの生成を阻害し、バッター液の経時的な粘度上昇を抑制する。一方、油滴のメディアン径が2μmを超えると、バッター液として水に溶いたときに油滴が大きく不安定なため、経時的に合一しやすく、油滴が穀粉粒などの穀粉粒を充分に覆うことが難しくなり、経時的に安定な粘度を得ることができず、油ちょう食品のサクさのある脆い食感を維持することができない。油滴のメディアン径が0.3μm未満であると、製造性に影響する場合がある。
(バッター液の製造方法)
本発明のバッター用粉末油脂を用いて、穀粉、本発明のバッター用粉末油脂、および水を混合して流動状のバッター液を製造することができる。
本発明のバッター用粉末油脂は混合した際に配合中の水に接すると粉末化基材が溶解し、油滴が前記のような微細なサイズになる。油滴は撹拌等により液中全体に分散する。油ちょう食品の製造のための各工程により微細な油滴が食品へ作用し、さらに油滴中の乳化剤等が機能を発揮する。
穀粉としては、特に限定されないが、例えば、小麦粉、米粉などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、小麦粉が好ましい。
小麦粉としては、薄力粉、中力粉、強力粉などを目的に応じて使用できる。小麦粉のグルテンは食品基材から染み出した水分と反応し経時劣化を引き起こすため、油ちょう用にはグルテン含有量の少ない小麦粉、例えば薄力粉などを用いることが好ましい。
バッター液における本発明のバッター用粉末油脂の配合量は、特に限定されないが、穀粉100質量部に対して1〜45質量部の範囲内が好ましい。バッター用粉末油脂の配合量が多過ぎると、食品基材への結着性が低下したり、均一な衣の形成ができなかったり、油ちょう時に色つきが早くなり、時間で油ちょう終点を判断する場合は、色が濃くなり過ぎたり、色で油ちょう終点を判断する場合は、食品基材によっては中心部まで加熱されなくなる可能性が生じたり、衣が油っぽくなる場合がある。バッター用粉末油脂の配合量が少な過ぎると、サクさのある脆い食感を得ることができなくなる場合がある。
バッター液に用いる水は通常の水であればよく、その配合量は、特に限定されず、食品基材、粉末油脂の配合量により、適宜に調整し添加することができる。
バッター液には、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記の成分以外の他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、特に限定されないが、例えば、澱粉、加工澱粉、増粘多糖類、大豆蛋白、小麦蛋白、保存料、調味料、起泡剤、着色料、香料、卵黄、卵白、食物繊維などが挙げられる。
バッター液は、例えば、穀粉等の粉体成分と本発明のバッター用粉末油脂とを混ぜ合わせた後、水を添加して撹拌することにより製造することができる。より具体的には、例えば、ミキサーを用いてこれらを1〜10分間程度撹拌することにより、バッター液を製造することができる。
このようにして製造されたバッター液は、油ちょう後の具材との結着性を向上し、衣の剥離を防止し、サクさのある食感、歯切れのある食感などを与え、食品基材の水分が衣に移行することを抑制してサクさのある脆い食感を維持することができる。
そして本発明のバッター用粉末油脂を用いたバッター液は、経時的な粘度変化が少ない。そのため、パン粉などの衣を均一に付着させることができ、油ちょう食品の重量のバラツキが少なく、安定な油ちょう食品を提供することができる。
(油ちょう加工用食品、油ちょう食品の製造方法)
油ちょう用加工食品は、前記のバッター液で食品基材を処理することによって製造される。
具体的には、食品基材(具材や素材)に、バッター液を付着させることにより、油ちょう用加工食品が得られる。また、この油ちょう用加工食品を、常法により油ちょうすることにより、油ちょう食品が得られる。
このような油ちょう用加工食品としては、例えば、バッター液と、衣とを、食品基材に付着させて得られる、油ちょう処理前のコロッケ、トンカツ、エビフライ、魚介類フライ等のフライ類、バッター液で直接に衣層を形成する、油ちょう処理前の天ぷら類や唐揚げ類などが挙げられる。
食品用基材は、油ちょう食品に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、肉類、魚介類、野菜類、乳製品、これらの加工食品などが挙げられる。
例えば、油ちょう処理前の油ちょう用加工食品としてコロッケを製造する場合、ジャガイモ、タマネギ等の野菜類と、牛肉、豚肉等の肉類とを混ぜ合わせ、成形して得られた具材である食品基材の表面に、バッター液を均一に付着させ、次いでパン粉などの衣を付着させることにより得ることができる。また、具材に一次パン粉を均一に付着させた後に、バッター液を付着させ、次いで二次パン粉を付着させてもよい。
食品基材にバッター液を付着させる方法としては、目的とする油ちょう食品に適用される通常の付着方法を用いることができる。例えば、バッター液中に食品基材を浸漬させる方法、バッター液を塗布する方法、バッター液と食品基材とを混合する方法などにより行うことができる。また、油ちょう食品としてフライ類を製造する場合には、バッター液を付着させた後、常法によりパン粉などの衣をさらに付着させることができる。
上記の例ではコロッケの場合を説明したが、食品基材をエビ、豚肉、魚介類等に代えることにより、油ちょう処理前の油ちょう用加工食品として、エビフライ、トンカツ、魚介フライなどを製造することができる。
このようにして製造された油ちょう用加工食品は、直後に油ちょう処理を加え、油ちょう食品としてもよく、冷凍または冷蔵保存し、その後に油ちょう処理を加えて油ちょう食品としてもよい。
冷凍または冷蔵の方法は特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば冷凍保存の場合、フリーザーなどの適宜の凍結方法を用いて油ちょう用加工食品を凍結した後に、−18℃以下で保存することができる。
油ちょう食品は、例えば、製造直後の油ちょう用加工食品、あるいは製造後に冷凍または冷蔵保存された油ちょう用加工食品を、140〜200℃の食用油脂中で60〜600秒間油ちょう加熱することにより製造することができる。
このようにして製造された油ちょう食品は、すぐに食卓に供されてもよく、常温で保存された後に食卓に供されてもよく、あるいは冷凍または冷蔵保存し、その後マイクロ波調理等の二次調理を施した後に食卓に供されてもよい。
このような本発明のバッター用粉末油脂を用いた油ちょう食品は、時間が経過した場合にも、油ちょう食品特有のサクさがあり、かつ細かく割れるような脆い食感を維持することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1に示す配合量は質量%を示す。
実施例1〜11と比較例1では次の手順により粉末油脂を作製した。菜種油を70℃に調温後、乳化剤、酸化防止剤を添加し油相を調製した。水を60℃に調温後、カゼインナトリウム、コーンシロップを添加し、水相を調製した。
水相を60℃に維持し、水相をホモミキサーで攪拌しながら油相の全量を添加し、O/W型に乳化させた。これにより、表1の全配合100質量部に対し、50質量部の水が入った乳化物を得た。
その後、得られた乳化液を圧力式ホモジナイザーを用いて150kg/cm2の圧力で処理し、均質化した。
この均質化した乳化液を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより粉末化して粉末油脂を得た(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。なお、表1はスプレードライ後の粉末油脂の配合組成を示している。これらの粉末油脂は、バッター液の原料に用いた。
比較例2では、菜種油を70℃に調温後、乳化剤のプロピレングリコールモノベヘン酸エステルとプロピレングリコールモノステアリン酸エステルを添加して油脂組成物を得た。この油脂組成物は、バッター液の原料に用いた。
比較例3では、70℃で溶解した菜種極度硬化油をクーリングドラムに塗布し、冷却することによって粉末油脂を得た。この粉末油脂は、バッター液の原料に用いた。
比較例4では、標準的なバッターリングの例として、油脂を配合せずに小麦粉と水のみ配合して後述のバッター液を作製した。
実施例1〜11および比較例1〜4について、次の測定および評価を行った。
[冷水分散性]
氷水を作製し、水温を0℃付近に調整した。実施例1〜11と比較例1、3の粉末油脂、および比較例2の油脂組成物3gを量りとり、水27gを添加して撹拌した。撹拌5分後の油脂の分離状態を目視し、次の基準により評価した。
○:分離なし
×:分離あり
[油滴のメディアン径]
実施例1〜11と比較例1、3の粉末油脂および比較例2の油脂組成物について、(1)水溶液中と(2)バッター液中のそれぞれについて油滴のメディアン径を測定した。
(1) 粉末油脂を水に再分散したときの油滴のメディアン径
粉末油脂の10質量%水溶液の油滴のメディアン径を、島津製作所製 SALD−2100湿式レーザー回折装置により測定して粒度分布より求めた。
(2) 粉末油脂を用いてバッター液としたときの油滴のメディアン径
小麦粉100質量部、油脂(粉末油脂、油脂組成物)30質量部、水140質量部を混合してバッター液を作製した。
小麦粉を沈殿させるために、遠心分離機にて20℃、3000rpmで10分間遠心処理を行い、上清を得た。上清の溶液を島津製作所製:SALD−2100湿式レーザー回折装置により測定してバッター液中の油滴のメディアン径を粒度分布より求めた。
[粘度変化の測定]
次の手順でバッター液を作製した。実施例1〜11と比較例1〜3では、薄力粉100質量部と粉末油脂または油脂組成物10質量部とを混ぜ合わせた後、冷水140質量部を加え、ミキシングした。比較例4では、粉末油脂または油脂組成物を添加せずに薄力粉100質量部のみ用いて、これに冷水140質量部を加え、ミキシングした。
ミキシングは、撹拌機((株)FMI社製「Kitchen Aid」)をスピード「6」で30秒撹拌した後、底を掻き取り、さらにスピード「6」で5分撹拌することにより行った。
作製したバッター液を常温(20℃)で各時間静置し粘度を測定した。粘度測定は、B型粘度計((株)日本計器社製)を用いて回転速度12rpm、温度10〜15℃の条件で行った。
バッター液作製直後の粘度(V0)、作製から1時間後の粘度(V1h)、作製から2時間後の粘度(V2h)、作製から3時間後の粘度(V3h)を測定し、時間経過による粘度変化倍数y(V1h/V0、V2h/V0、V3h/V0)を求めた。次に時間xと粘度変化倍数yとの最小二乗法により近似値直線をとりこの傾きを求め、粘度経時変化とした。この粘度経時変化(傾き)はゼロに近いほど望ましく、後述のように標準的なバッターリングの例である小麦粉と水のみ配合した比較例4のバッター液を基準として考慮すると0.10〜−0.10の範囲内であることが望ましい。
[フライテスト]
表1に示す配合でフライしたコロッケを作製した。ジャガイモをマッシュし、イモ種を作製した。前記の「粘度変化の測定」と同じ配合組成のバッター液を用いて、イモ種にバッター液を付け、さらにパン粉を付けた。これを170〜175℃の菜種油にてフライした。コロッケを5つ入れ、1分30秒でひっくり返し、その後ちょうど良いキツネ色になるまで3分加熱してコロッケを得た。
官能試験の訓練を受けたパネラー10人により、フライ直後とフライ2時間後のコロッケの食感を次の基準により評価した。パネラー10人の平均値を官能評価とした。
評価基準
5:歯切れ良く細かく割れる。
4:やや硬いか、あるいは軟らかく、且つ、割れ方も少々粗い。
3:硬いか、あるいは軟らかく、且つ、大きめに割れる。
2:かなり硬く、引きが強いか、あるいはかなり軟らかく、ネチャ付きを感じる。
1:硬過ぎて衣の食感を独立して感じるか、あるいは軟らか過ぎてネチャつく。
なお、この評価では、サクさ感のある脆い食感を目的として行い、5の評価が最も良く、以下順に1を最も悪いとする5段階で評価を行った。
実施例1〜11と比較例1〜4の測定および評価の結果を配合と共に表1に示す。
Figure 2014093982
表1より、実施例1〜11の粉末油脂は全て分散性が非常に良好であった。そして油滴のメディアン径は、(1)水溶液中と(2)バッター液中のいずれも0.3〜2μmの範囲内、特に0.5〜1.5μmの範囲内であった。
実施例1〜11の粉末油脂は、標準的なバッターリングの例として比較基準となる小麦粉と水のみ配合した比較例4では粘度経時変化が0.14と粘度経時変化は大きかったのに対し、バッター液の粘度経時変化が−0.10〜0.10の範囲に入り、粘度経時変化がいずれも小さいことが分かる。よって−0.1〜0.1の範囲内が良好である基準となる。さらにプロピレングリコール飽和脂肪酸エステルのステアリン酸とベヘン酸を1:1〜1:4の質量比で併用した実施例1〜5は−0.05〜0.05の範囲内であり特に粘度経時変化が小さかった。
食感は、実施例1〜11ではいずれも官能評価の平均値がフライ直後とフライ2時間後のいずれも3点を超え、特に、ステアリン酸とベヘン酸の配合以外は同一配合とした実施例1〜8のうち、ステアリン酸とベヘン酸を1:1〜1:4の質量比で併用した実施例1〜5は官能評価の平均値がフライ直後とフライ2時間後のいずれも4点を超え良好であった。
このように、実施例1〜11は、フライ後に時間が経過した場合にもサクサクとした食感を維持することができた。
これに対して粉末油脂の乳化剤として不飽和脂肪酸を用いた比較例1は、メディアン径は小さく分散性は良好であったが、粘度経時変化が負の方向に大きくなる傾向が見られ、食感は実施例1〜11に比べて低下した。
油脂組成物を用いた比較例2は、油滴の径が大きく、分散性が悪く、粘度経時変化が負の方向に大きくなる傾向が見られた。食感は実施例1〜11に比べて低下し、粉末油脂の乳化剤として不飽和脂肪酸を用いた比較例1に比べても食感は低下した。
乳化剤を配合せずに粉末油脂を作製した比較例3は、分散性が悪く、粘度経時変化が負の方向に大きくなる傾向が見られた。食感は実施例1〜11に比べて低下し、粉末油脂の乳化剤として不飽和脂肪酸を用いた比較例1に比べても食感は低下した。
標準的なバッターリングの例として小麦粉と水のみ配合した比較例4は、粘度経時変化が正の方向に大きくなる傾向が見られ、食感は最も低いものであった。

Claims (6)

  1. 食用油脂、粉末化基材、および乳化剤としてプロピレングリコール飽和脂肪酸エステルを含有し、実質的に親水性乳化剤を含有せず、分散液中の油滴のメディアン径が0.3〜2μmの範囲内であるバッター用粉末油脂。
  2. プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ステアリン酸およびベヘン酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のバッター用粉末油脂。
  3. プロピレングリコール飽和脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ステアリン酸およびベヘン酸であり、ステアリン酸とベヘン酸との質量比が1:1〜1:4の範囲内である請求項2に記載のバッター用粉末油脂。
  4. 穀粉、請求項1から3のいずれかに記載のバッター用粉末油脂、および水を混合する工程を含むバッター液の製造方法。
  5. 請求項4に記載の方法により製造されたバッター液で食品基材を処理する工程を含む油ちょう加工用食品の製造方法。
  6. 請求項5に記載の方法により製造された油ちょう加工用食品を油ちょうする工程を含む油ちょう食品の製造方法。
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