JP2014093343A - 固体撮像素子及びそれを用いた測距装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固体撮像素子の複数の画素のうちの少なくとも一部の画素100において、複数の光電変換部111、112を設け、光電変換部よりも光の入射側に導波路101を形成する。光電変換部111、112と導波路101の間に、導波路のコア102を形成する媒質の屈折率よりも低い屈折率の媒質からなる層105を設ける。
【選択図】図1
Description
(実施形態1)
<撮像素子の構成>
図1は、実施形態1における固体撮像素子の一部に配置された測距画素100の概略図である。測距画素100は、光の入射側より、導波路101、基板110を有している。基板110は、検出する波長帯域で吸収を有するSiなどの材料であり、Bイオン打ち込みなどで、内部の少なくとも一部の領域に、光を電荷に変換する光電変換部111、112が形成される。基板110には図示しない電極や配線部が設けられており、光電変換部111、112で発生した電荷は配線によって信号処理回路に転送される。図1の構造を上から見た形状は、例えば、正方形や円であり、2つの光電変換部111、112の形状は正方形や円を2分する中心線の両側の長方形や半円である。
まず、本発明の固体撮像素子を用いた測距の原理について図2を用いて説明する。カメラレンズなどの結像光学系の射出瞳120上で、異なる位置を通った光束は、測距画素100に対し異なる角度で入射する光束となる。異なる角度で入射した光束は、導波路101への入射角に応じ、異なった導波モードに変換されて導波路101を伝搬する。導波モードは、導波路の持つ複数の固有モードの和で表される。固有モードは、導波路の形状と屈折率によって一意に決定される。導波路に入射した光束は、複数の固有モードと結合し、伝播する。入射角によって、導波モードを構成する固有モードの割合は異なり、それによって、各導波モードが有する波数ベクトルが異なる。一般に、高次のモードほど伝搬方向とは垂直な方向の波数成分が大きく、導波路内を斜めにジグザグに伝搬する。
次に、コア102よりも屈折率の低い層105を設けたことによって測距精度が向上する理由について述べる。図3は、光束121、122の入射角度が大きい場合の、導波路101中の光の伝搬の様子を示す。光束121の入射角度が大きい場合、光束121は導波路101の入射端において位相が揃っていない状態で入射するため、1次の固有モード131に加えて、より高次の固有モード133にも結合する。前述したように、固有モード131に結合した光は、導波路101内を真っすぐ伝搬する。そして、導波路101の射出端において、光電変換部111側の領域151から真っすぐ層105に入る。一方、高次の固有モード133に結合した光は導波路内をジグザグに伝搬し、導波路101の射出端において、光電変換部111側の領域151と光電変換部112側の領域152から斜めに層105に入る。高次の固有モード133に結合した光のうち、領域151から射出される光を光141、領域152から射出される光を142と呼ぶ。
図4に測距画素100の導波路101を伝播し、光電変換部111及び光電変換部112に入射する光量の、入射角度依存性を示す。横軸は入射光(図2の光束121のようにx軸の正方向に傾いて入射した光を想定している)の入射角度、縦軸は光電変換部111、112に入射する光量を示している。実線は層105を設けた場合、破線は層105を設けなかった場合を示している。図4より、層105を設けたことで、特に大きな角度で入射した光束に対して、光電変換部112に入射する光量が減少していることが分かる。即ち、光電変換部111に選択的に入射する光の割合が増加している。これは、高次の固有モード133に結合した光が、層105によって光電変換部112に入射しないためである。同様の理由で、図2の光束122のようにx軸の負方向に傾いて入射した光を想定する場合は、光電変換部111に入射する光量が減少して光電変換部112に選択的に入射する光の割合が増加する。
層105において光142が光電変換部112に入射されることを防ぐために、層105の厚みは厚い方が好ましい。図5−1と図5−2は、光電変換部112に入射する光量の、層105に対する膜厚依存性を示す。図5−1より、層105の厚みが40nm以上であれば、光束121の入射角が比較的大きい時の光電変換部112へ入射する光量が低減できるため、高精度な測距が可能となる。図5−2より、光束121の入射角度が比較的小さい時でも、層105の厚みが120nm以上であれば、光電変換部112へ入射する光量が低減できるため、更に好ましい。ここでも、同様の理由で、図2のようにx軸の負方向に傾いて入射した光を想定する場合は、光電変換部111に入射する光量が減少して光電変換部112に選択的に入射する光の割合が増加する。また、層105は、複数の媒質から形成されている多層構造であっても良い。層105が多層構造の場合、層105全体の平均屈折率がコア102の平均屈折率よりも低ければ良い。
測距画素100を複数配置する場合、層105は、固体撮像素子の周辺部に位置する測距画素100にのみ設けても良い。なぜなら、固体撮像素子の中央部よりも周辺部の方が測距画素100に入射する光束の入射角が大きいため、層105による測距精度向上の効果が大きいためである。同様の理由で、中央部に位置する測距画素よりも、周辺部に位置する測距画素の層105の厚みを厚くしても良い。ただし、後述する製造方法の観点からは、層105の厚みは全ての測距画素で同じである方が好ましい。
測距画素100を固体撮像素子の全画素として配置すれば、固体撮像素子の全領域の測距が可能となる。測距画素に含まれる光電変換部111、112で取得した信号を積算し、撮像画像の画像信号として利用することができる。各測距画素100を離散的に配置し、その間に撮像用画素を設けてもよい。この時、撮像用画素で取得した信号を用いて、近接する測距画素の画像信号を生成しても良い。複数の測距画素のうち、一部の測距画素を、図1に示す測距画素の構造をz軸周りに90度回転し、射出瞳をy軸方向に分割して測距を行う画素にしても良い。射出瞳をx軸方向に分割した画素では、x軸方向にコントラストを有する被写体の測距が可能となり、射出瞳をy軸方向に分割した画素では、y軸方向にコントラストを有する被写体の測距が可能となる。
また、図1に示す測距画素では、散乱部104を導波路中に設けたが、散乱部104を設けなくても良い。但し、散乱部104を設けた方が画素分離部113に入射する光を減らすことができるため、好ましい。なお、導波路のコア102は、入射端に向かって径が広がるテーパ形状を有していることが望ましい。コア102をテーパ形状にすると、画素に入射した光束を、導波路のコア102に効率良く導くことができるため、三つの点から好ましい。一つ目は、光電変換部111、112に射出される光量が多くなり、像のSN比が向上する。二つ目は、画素間のクラッド103に、配線(不図示)を設ける空間を確保することができる。三つ目は、光が伝播する領域を画素の特定領域に限定し、隣接する画素に光が漏れて生じるクロストークを軽減することができる。
続いて、固体撮像素子中の測距画素100の製造方法について図7を用いて説明する。まず、図7(a)のように、基板110(シリコン)に、光電変換部を形成する部分以外を覆うレジストをフォトリソグラフィによって作製し、イオン注入によって光電変換部111、112を作製する。アッシングでレジストを除去した後、図7(b)のように、基板上に、層105(SiO2)、後に散乱部104となる部分(SiO2)をスパッタなどによって成膜する。続いて、図7(c)のように、散乱部104を、フォトリソグラフィとドライエッチによって作製する。そして、アッシングでレジストを除去する。その後、導波路や配線を形成するプロセスは、上記特許文献1などに記載の公知の手法を用いればよい。導波路のコア102は、層105や散乱部104を形成するSiO2よりも屈折率の大きいSiNを用いればよい。
図8に、本発明の固体撮像素子を用いた測距装置190を示した。測距装置190は、被写体の像を固体撮像素子上に結像する光学系191、制御用のCPU192、測距画素100を有する固体撮像素子193、配線194、信号処理部195を有する。光電変換部111及び光電変換部112で取得した信号を配線194によって転送し、各々の像の出力信号を信号処理部195で比較することで被写体の距離情報を取得して、測距を行っている。以上の構成要素に加え、固体撮像素子で得られる画像を表示する表示装置、シャッター機構、システム制御部の動作用の定数、変数、各種プログラムなどを記憶するメモリ等を備えれば、図8の装置はカメラなどの撮像装置として捉えることもできる。こうしたカメラでは、測距装置の固体撮像素子193により、光学系で結像された被写体像を取得することもできる。
<散乱部が低屈折率膜の中>
図9は、実施形態2における固体撮像素子の一部に配置された測距画素200の概略図である。測距画素200は、実施形態1における測距画素100に対し、散乱部204が層105中に位置していることが異なる。更に、散乱部204を形成する材料は、層105中で、散乱部204の周囲を形成する材料よりも屈折率が低い。例えば、コア102をSiNで、クラッド及び層105のうち散乱部204以外の部分をSiONで、散乱部204をSiO2で形成すればよい。
散乱部204を層105中に設けたことで、測距精度の向上に加えて感度が向上するため、更に好ましい。その理由について説明する。導波路101中に散乱部を設けた場合、散乱部の脇ではコア102の幅が狭くなる。そのため、導波路101を伝搬する光が狭い領域に閉じ込められ、導波路101の射出端では回折によって拡がり、層105に入射する。よって、光電変換部111や光電変換部112に入射する光量が減ってしまう。一方、層105中に散乱部204を設けた場合、コア102の幅は広いままである。そのため、導波路101の射出端での回折はあまり生じず、光は層105に真っすぐ入射する。層105に入射した光は散乱部204によって回折を生じるが、導波路101中の散乱部の影響に比べて小さい。以下に理由を述べる。
図10に測距画素200において、光電変換部111と光電変換部112に入射する光量の和(感度に相当)を示した。横軸は入射光の入射角度、縦軸は光電変換部に入射する光量を示している。実線は本実施形態の測距画素200、点線は実施形態1に記載の測距画素100、破線は図4にも比較例として示した層105を設けていない場合である。図10より、散乱部204を層105中に設けたことで、散乱部104を導波路101中に設けた場合に比べ、入射光量が増大していることが分かる。測距画素200の感度は、比較例として示した層105を設けていない場合とほぼ同等であり、特に、入射角が小さい時は測距画素200の方が高い。これは、前述したように層105中に散乱部204を設けた方が、導波路101中に散乱部を設けた場合に比べ、回折による光の拡がりが小さいためである。
散乱部の幅は、狭いと画素分離部113に入射する光を十分に散乱できず、広いと光電変換部111、112に入射する光を減衰させてしまう。好ましくは、検出する波長の0.1倍から2倍程度であることが好ましい。散乱部の高さは、十分な散乱強度を稼ぐために、検出する波長の0.1倍以上であることが好ましい。なお、散乱部204は必ずしも層105に完全に包含されている必要はなく、図11のように層105と導波路101に跨っていても良い。すなわち、散乱部204の少なくとも一部が層105の中に含まれていればよい。散乱部204の下部は基板110に近い方が、感度が向上するため好ましい。なぜなら、散乱部204が基板110に近い方が、回折が生じる場所が基板110の上面に近いため、光が回折によって拡がる前に基板に入射するためである。
特に、散乱部204を層105の最下部に設ける場合、以下に述べるセルフアラインの製造方法を用いることで、散乱部204と画素分離部113の位置ずれを防止できる。散乱部204が画素分離部113の位置ずれが少ないほど、画素分離部113に入射する光を低減できるため、好ましい。
Claims (16)
- 複数の画素のうちの少なくとも一部の画素において、複数の光電変換部を設け、該光電変換部よりも光の入射側に導波路を形成した固体撮像素子であって、
前記光電変換部と前記導波路の間に、該導波路のコアを形成する媒質の屈折率よりも低い屈折率の媒質からなる層を設けたことを特徴とする固体撮像素子。 - 前記層の厚みは40nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の固体撮像素子。
- 前記層の厚みは120nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の固体撮像素子。
- 当該固体撮像素子の中央部に位置する画素よりも、当該固体撮像素子の周辺部に位置する画素の方が、前記層の厚みが厚くなっていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
- 前記複数の光電変換部の間に位置する画素分離部の上に、周囲の媒質よりも屈折率が低い媒質からなる散乱部が設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
- 前記散乱部の少なくとも一部が前記層の中に含まれることを特徴とする、請求項5に記載の固体撮像素子。
- 前記散乱部が前記層に包含されていることを特徴とする、請求項5に記載の固体撮像素子。
- 前記散乱部と前記画素分離部の間の距離が20nm以下であることを特徴とする、請求項6または7に記載の固体撮像素子。
- 当該固体撮像素子の中央部に位置する画素よりも、当該固体撮像素子の周辺部に位置する画素の方が、前記散乱部の大きさが大きいことを特徴とする、請求項5から8のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
- 前記層の中において、前記光電変換部よりも外側の部分に対応する部分に光吸収部が形成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
- 当該固体撮像素子の中央部に位置する画素よりも、当該固体撮像素子の周辺部に位置する画素の方が、前記光吸収部の大きさが大きいことを特徴とする、請求項10に記載の固体撮像素子。
- 請求項1から11のいずれか1項に記載の固体撮像素子と、
被写体の像を前記固体撮像素子上に結像する光学系と、
を有する測距装置であって、
前記画素の複数の光電変換部からの複数の出力信号を用いて被写体の距離情報を取得することを特徴とする測距装置。 - 請求項12に記載の測距装置を有することを特徴とする撮像装置。
- 請求項12に記載の測距装置を有することを特徴とするカメラ。
- 前記測距装置の固体撮像素子により、前記光学系で結像された被写体像を取得することを特徴とする請求項14に記載のカメラ。
- 請求項5から11のいずれか1項に記載の固体撮像素子の製造方法であって、
基板の上に第1の材料からなる層を成膜する工程と、
第1の材料の一部を除去する除去工程と、
前記除去工程によって作製された開口部にイオン注入によって光電変換部を形成する注入工程と、
前記開口部を、前記第1の材料よりも屈折率の大きな第2の材料で埋め込む埋め込み工程と、
を有し、
前記除去工程の後に残った、前記第2の材料で周囲を囲まれた前記第1の材料の部分が、前記散乱部となることを特徴とする製造方法。
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