JP2014091686A - アズキ由来骨代謝調節剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アズキ(Vigna angularis)を熱水で煮熟し生じた煮汁から上清を分離し、上清を合成吸着剤に吸着させた後、吸着後の合成吸着剤に10%〜40%エタノール水溶液を添加して溶出して得たアズキ由来抽出物を有効成分とし、当該アズキ由来抽出物は骨芽細胞への分化を促進し、かつ、破骨細胞への分化を抑制することを特徴とするアズキ由来骨代謝調節剤である。
【選択図】図1
Description
原料となるアズキ(Vigna angularis)に北海道産の小豆を用いた。開放型の蒸煮釜にアズキを投入し、水から加熱して45分間煮熟した。煮上がって軟らかくなったアズキとその煮汁と分けた。煮汁を室温付近(約20℃)になるまで冷ました後、9000rpm、10分間の遠心分離をした。遠心分離より得た上清1kgに芳香族系合成吸着剤(三菱化学株式会社製 逆相吸着剤「DIAION HP−20」)300gを加えて4℃で12時間攪拌した。合成吸着剤とそれ以外の液に分けた後、合成吸着剤を蒸留水により洗浄し、さらに40%エタノール水溶液(v/v)により数回溶出を行った。
4種類の抽出濃度の異なるアズキ煮汁由来の抽出物を調製後、骨代謝調節剤としての骨芽細胞への分化促進、並びに破骨細胞への分化抑制の作用機序を確認することにより、アズキ煮汁由来の抽出物の薬効性を確認した。以下、検証実験を述べる。
実験に使用したマウス頭蓋冠由来MC3T3−E1細胞(骨芽細胞様細胞)は、須藤ら(J.Cell Biol.,vol96,191−198(1983))により樹立された細胞である。MC3T3−E1細胞は、骨芽細胞のモデルとして次述のアルカリホスファターゼ活性(以下、ALP活性)や石灰化の変化を比較的明瞭に示すことから選択した。
骨芽細胞が分化して骨細胞に変化する際、同細胞内では石灰化を阻害するピロリン酸を分解するアルカリホスファターゼ(ALP;Alkaline Phosphatase)の発現が高まる。そこで、アルカリホスファターゼの活性を指標として利用することができる。
培養細胞内の石灰化の評価に際しアリザリンレッドS染色法を用いた。MC3T3−E1細胞について、骨芽細胞分化培地(ODM)を使用せず(ODM(−))、骨芽細胞分化培地(ODM)を使用(Control,ODM(+))、細胞分化培地(ODM)にEtEx.40を10μg/mL添加(ODM(+)+EtEx.40,10μg/mL)、細胞分化培地(ODM)にEtEx.40を20μg/mL添加(ODM(+)+EtEx.40,20μg/mL)の4種類の培地条件の下で21日間培養した。培養後、細胞を氷冷したPBS(−)で2回洗浄して培地成分を除去し、適量のエタノールを添加して15分間静置し細胞を固定した。その後、エタノールを除き蒸留水で細胞を洗浄してアリザリンレッドS水溶液を添加し染色した。
図3の上段(ALP)は培地成分とALP活性発現の様子を示した顕微鏡写真(倍率40倍)である。図3の下段(Alizarin RedS)は培地成分とアリザリンレッドS染色の様子を示した顕微鏡写真(倍率40倍)である。いずれの写真も最左列のODM(−)では薄い色であり発現、発色は少ない。左から右にODM(+)、EtEx.40の濃度順に色が濃くなった。すなわち、ALP活性及び細胞内の石灰化はアズキ抽出物EtEx.40の存在により高まり、さらにその濃度に依存して上昇することを確認した。
図4は骨芽細胞内において骨細胞へ分化する際に関係する転写因子、遺伝子、タンパク質発現等を概略した模式図である。骨芽細胞のBMPレセプターにBMP−2(リガンド)が結合後、細胞内のR−Smad、TAK1等のシグナル伝達を介して核内にて、「Runx2」(Runt−related transcription factor 2)、「OSX」(Osterix)、「Dlx5」(distal−less homeobox 5)等に代表される転写因子の発現量が高まり、核内移行してプロモーター領域に付着して転写が促進する。そこで、前記の転写因子の発現とアズキ由来抽出物EtEx.40の関係を検証した。
はじめに、アズキ由来抽出物EtEx.40の有無と転写因子であるRunx2、OSX、及びDlx5の各タンパク質と、内在性コントロールとしてのβ−actinの発現をウエスタンブロットにて確認した。図5は骨芽細胞分化培地(ODM)を使用して培養し、EtEx.40なし(−)とEtEx.40(20μg/mL)あり(+)の相違とした。図示から把握できるように、バンドは幾分濃く、太くなったことから、Runx2等の転写因子量の増大を示唆する。タンパク質の標識用一次抗体にSantacruz Biotechnology社製のRunx2、OSX、及びDlx5、SIGMA社製のβ−actinを使用した。
各転写因子の発現を定量的に把握するため、リアルタイムPCR法(定量Real Time−PCR法)を使用した。Runx2、OSX、及びDlx5のタンパク質へ翻訳する際に生じるmRNA量から最終的に発現するタンパク質の量の多少を推定することができる。
図4の概略模式図に示すとおり、OSX(Osterix)発現に関与する経路として、次の2種類が考えられている。BMPレセプターにBMP−2が結合後、R−Smadのリン酸化を介してRunx2等が発現する経路と、TAK1(TGF−β−activated kinase 1)を介してP38 MAP kinaseがリン酸化し最終的にOSX(Osterix)が発現する経路である。
破骨細胞は造血系幹細胞に由来し、複数の細胞が融合した多核細胞である。破骨細胞は酸性加水分解酵素の骨型酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRACP:Tartrate−resistant Acid Phosphate(以下、骨型酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼについてはTRACPと称する。))をその細胞質に含む。破骨細胞が骨に吸収する際にTRACPは細胞質から漏出することから破骨細胞数やその骨吸収活性の直接の指標となるマーカーとして多用される。従って、TRACP活性は破骨細胞への分化程度の指標となり、TRACP活性が低ければ骨破壊は抑制され、結果的に骨粗鬆症の抑制につながる。
マウス前駆破骨細胞様細胞のRAW264.7細胞を5.0×104cells/mLの密度として、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むDulbecco’s Modified Eagle Medium培地(DMEM培地)に懸濁し、24時間培養した。この培養後、同DMEM培地により段階的に希釈して24ウェルプレートに播種するとともに、本発明のアズキ由来抽出物EtEx.40について、無投与(control)、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mL、50μg/mLの順に濃度を高めて投与し、さらに2時間事前培養した。
TRACP染色を目的として、RAW264.7細胞をsRANKL(100ng/mL)及びM−CSF(10ng/mL)を含み、アズキ由来抽出物EtEx.40の有無並びに10μg/mLまたは20μg/mLの濃度別に、DMEM培地を用い前述の培養条件に従って培養した。TRACP染色に際し、染色キット(タカラバイオ株式会社製,TRACP&ALP double staining kit)を使用した。
図11の概略模式図に示すとおり、破骨細胞表面のRANKにRANKL(sRANKL)が結合すると、同細胞内ではTRAF6(TNF receptor associated factor 6)を起点にJNK、ERK、c−Fos、NF−κB等のシグナル伝達物質を介し、c−Jun及びc−Fosからヘテロ二量体タンパク質の転写因子であるAP−1(activator protein 1)が形成される。NF−κBはNFATc1(cytoplasmic 1 protein nuclear factor of activated T−cell)を誘導する。NFATc1にAP−1が結合することにより、NFATc1はさらに増加する。AP−1及びNFATc1はその他の核内移行シグナルを伴い核内へ移行し、プロモーター領域上に付着して新たな転写発現を増進する。最終的にTRACPやカテプシンKの産生、受容体OSCARの発現等につながり、破骨細胞への分化を増進する。この結果、破骨細胞による骨代謝(骨破壊)が促進する。
骨芽細胞並びに破骨細胞の前段階の細胞に対するアズキ由来抽出物の作用を勘案すると、同一の抽出物でありながら、双方の細胞への作用を明らかにした。前駆骨芽細胞に対してはその分化を促進することから骨芽細胞への分化と石灰化が明らかとなった。すなわち、骨量増加に貢献する。同時に、前駆破骨細胞に対してはその分化を抑制することから骨破壊を軽減する。このように、本発明のアズキ由来抽出物EtEx.40は、骨破壊を抑えながら骨形成を進めるという骨代謝調節剤に求められる性能を好適に具備する。
本発明のアズキ煮汁に由来の抽出物は骨代謝調節剤として有効に作用し骨粗鬆症等の予防、治療に効果的であると考えられる。そこで、本発明のアズキ由来抽出物EtEx.40を含有する薬剤を試作した。左欄に組成、右欄に配合割合(重量パーセント表記)を開示する。むろん、剤型、配合量等は適宜である。
セルロース 30.00
ステアリン酸カルシウム 2.50
二酸化ケイ素 1.50
デンプン粉末 49.40
乳糖 10.00
アズキ由来抽出物 6.60
(合計) 100.00
乳糖 50.00
アズキ由来抽出物 50.00
(合計) 100.00
上記の成分を公知のカプセル内に封入する。
本発明のアズキ由来抽出物EtEx.40は、古来よりヒトが常食しているアズキの煮汁に由来するため、食品に配合して食事から有効成分を摂取することが望ましいといえる。そこで、当該アズキ由来抽出物(骨代謝調節剤)を個々の食品に配合して、実際に調理、製造した。以下に、食品・飲料の名称、そのレシピ(組成):左欄、及び配合割合(重量パーセント表記):右欄を開示する。列記の食品、飲料は例示である。本発明のアズキ煮汁に由来の抽出物(骨代謝調節剤)の添加対象は、当然これら以外の食品、飲料にも広げることができる。また、配合割合も開示の量に限定されることはなく、必要により加減できる。
寒天 0.40
水 45.35
砂糖 27.00
生あん 27.00
食塩 0.10
アズキ由来抽出物 0.15
(合計) 100.00
寒天 0.65
水 24.00
砂糖 24.00
生あん 48.00
水あめ 3.20
アズキ由来抽出物 0.15
(合計) 100.00
アズキ 31.00
砂糖 35.80
食塩 0.05
水 33.00
アズキ由来抽出物 0.15
(合計) 100.00
薄力粉 20.20
上白糖 17.00
全卵 17.50
はちみつ 2.50
重曹 0.20
水 12.45
アズキ由来抽出物 0.15
小倉あん 30.00
(合計) 100.00
生あん 31.00
粉ゼラチン 1.40
生クリーム 14.20
卵白 10.50
砂糖 4.30
水 38.45
アズキ由来抽出物 0.15
(合計) 100.00
卵黄 11.00
グラニュー糖 17.80
牛乳 53.20
生クリーム 17.80
バニラ香料 0.05
アズキ由来抽出物 0.15
(合計) 100.00
水あめ 45.00
砂糖 54.75
アズキ由来抽出物 0.15
(合計) 100.00
水あめ 34.50
砂糖 19.70
小麦粉 4.85
無糖練乳 34.60
食塩 0.20
ショートニング 5.90
アズキ由来抽出物 0.25
(合計) 100.00
牛乳 58.90
卵 24.00
砂糖 17.00
アズキ由来抽出物 0.10
(合計) 100.00
コーヒー(液体) 82.90
砂糖 8.30
粉ゼラチン 1.40
コーヒーリキュール 0.30
水 7.00
アズキ由来抽出物 0.10
(合計) 100.00
グラニュー糖 39.00
水 51.85
ゼラチン 6.80
クエン酸 0.50
フルーツ香料 1.60
アズキ由来抽出物 0.25
(合計) 100.00
牛乳 47.40
生クリーム 19.00
卵黄 12.60
砂糖 19.00
ゼラチン 1.90
アズキ由来抽出物 0.10
(合計) 100.00
水あめ 46.30
砂糖 50.90
ゼラチン 2.70
アズキ由来抽出物 0.10
(合計) 100.00
全卵 34.30
卵黄 3.80
砂糖 34.30
はちみつ 4.80
米飴 1.90
薄力粉 18.00
水 2.80
アズキ由来抽出物 0.10
(合計) 100.00
卵 19.70
砂糖 13.40
牛乳 23.40
ベーキングパウダー 1.80
薄力粉 36.00
バター 5.40
食塩 0.15
バニラ香料 0.05
アズキ由来抽出物 0.10
(合計) 100.00
マーガリン 12.20
ショートニング 12.20
砂糖 18.40
全卵 8.20
薄力粉 44.80
強力粉 4.10
アズキ由来抽出物 0.10
(合計) 100.00
フルーツ果汁 50.00
果糖ブドウ糖液糖 10.00
クエン酸 0.30
フルーツ香料 0.20
水 39.25
アズキ由来抽出物 0.25
(合計) 100.00
果糖ブドウ糖液糖 11.00
クエン酸 0.20
クエン酸ナトリウム 0.05
フルーツ香料 0.20
炭酸水 88.45
アズキ由来抽出物 0.10
(合計) 100.00
Claims (5)
- アズキを熱水で煮熟し生じた煮汁から上清を分離し、前記上清を合成吸着剤に吸着させた後、前記吸着後の合成吸着剤にエタノール水溶液を添加して溶出して得たアズキ由来抽出物を有効成分とすることを特徴とするアズキ由来骨代謝調節剤。
- 前記エタノール水溶液が10%〜40%エタノール水溶液である請求項1に記載のアズキ由来骨代謝調節剤。
- 前記アズキ由来抽出物が、骨芽細胞への分化を促進し、かつ、破骨細胞への分化を抑制する請求項1または2に記載のアズキ由来骨代謝調節剤。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアズキ由来骨代謝調節剤を含有してなる骨粗鬆症の予防剤または治療剤。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアズキ由来骨代謝調節剤を含有してなる食品。
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