JP2014080657A - アルミニウム管の接合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】両端部にストレート部とフレア部のいずれかを備える複数のアルミニウム管を用い、隣接する一方のストレート部と他方のフレア部とを嵌合し、両者の間にAl−Si系ろう材を配置してろう付したアルミニウム管の接合体であって、少なくともストレート部を備えるアルミニウム管が、Mn:0.8〜1.3%、Cu:0.4〜0.8%を含有するAl合金の心材の外表面に、Zn:0.5〜1.5%を含有するAl−Zn犠牲層をクラッドしたアルミニウムクラッド管であり、接合部のストレート部においてAl−Si系ろう材がAl−Zn犠牲層を浸食した半球状の凝固組織からなる溶融拡散部が形成され、溶融拡散部の厚さがAl−Zn犠牲層のクラッド厚さの0.5〜2.0倍であるアルミニウム管の接合体。
【選択図】図1
Description
本発明者らは、Al−Zn犠牲層を設けたアルミニウム管をろう付によって接合した場合に、接合部においてAl−Zn犠牲層が優先腐食して貫通漏れに至る現象についてそのメカニズムを検討した。ここで、アルミニウム管とは、純アルミニウムからなる管とアルミニウム合金からなる管の両方をいうものとする。具体的には図1に示すように、端部をフレア加工にて拡管した一方のアルミニウムクラッド管のフレア部1に他方のアルミニウムクラッド管のストレート部2を挿入し、ろう付方法としてトーチろう材5を用いたトーチろう付法を採用して両管を接合する場合について検討した。ここで、フレア部1の外表面及びストレート部2の外表面に形成された層3は、Al−Zn犠牲層を表わす。
両端部にストレート部2又は一端部にストレート部2を備える複数のアルミニウム管を用いて、これらを接合するものである。一例として図4に示すように、一方の端部をフレア部1とし他方の端部をストレート部2としたアルミニウム管を複数用いて、第1のアルミニウム管のストレート部2を第2のアルミニウム管のフレア部1に嵌合させ、次いで、第2のアルミニウム管のストレート部2を第3のアルミニウム管のフレア部1に嵌合させる。これを順次繰り返して、複数のアルミニウム管の全てについてストレート部2をフレア部1に嵌合させて嵌合体を作製する。そして、嵌合部分を順次又は一挙にトーチろう付等のろう付によって接合して接合体とするものである(第一の形態)。なお、二本のアルミニウム管を接合する場合には、第1のアルミニウム管のストレート部2を第2のアルミニウム管のフレア部1に嵌合させ、嵌合部分をトーチろう付等のろう付によって接合して接合体とする。
次に接合部の形態について説明する。
図4に示すように、ストレート部2の外表面にAl−Zn犠牲層3が設けられているアルミニウムクラッド管が用いられる。フレア部1にストレート部2を嵌合し、Al−Si系合金ろう材5を用いてろう付加熱を行なう。加熱によりろう材5が溶融して液相になり、ストレート部2の外表面において溶融ろうと接触するAl−Zn犠牲層3も溶融する。溶融ろうが溶融したAl−Zn犠牲層3を放射状に侵食する一方で、溶融したAl−Zn犠牲層3の成分は溶融ろう中に拡散する。ろう付加熱が不十分な場合には、このような侵食は十分に進行せず厚いAl−Zn犠牲層3がフィレット下部に残存し、接合部における耐食性の十分な向上が図れない。本発明では、上述の溶融ろうによるAl−Zn犠牲層3の侵食部分を「溶融拡散部(51)」という。
半球状の凝固組織を有する溶融拡散部51と接する内管4のストレート部2の最薄部におけるZn濃度は、0.7%以下とするのが好ましい。このZn濃度が0.7%を超えると、この部分の内管4において優先腐食が発生して早期に貫通する。ここで、「内管の最薄部」とは、接合部の管長手方向に沿った断面において、内管厚さが最小値を示す箇所をいうものとする。溶融拡散部51は多くの半球状部分からなり、これらが集合して全体としても複合した半球状を成している。従って、このような溶融拡散部51に接する内管4のストレート部2の面は、溶融拡散部51の半球状に相補的な形状を成し、その厚さは不均一となる。ストレート部2の最薄部におけるZn濃度は、0.5%以下とするのがさらに好ましい。
本発明で用いるストレート部を備えるアルミニウム管は、所定組成のアルミニウム心材に所定組成のAl−Zn犠牲層をクラッドしたアルミニウム合金のクラッド管である。
心材には、Mn:0.8〜1.3%、Cu:0.4〜0.8%を含有し残部Al及び不可避不純物からなるAl合金が用いられる。
Mnは、3000系合金において強度を向上させる主要な添加元素である。Al中に固溶し、一部は析出して強度を付与する効果を奏する。Mn添加量が0.8%未満では強度が不十分となる。一方、1.3%を超えると、強度向上効果が飽和する上、粗大な金属間化合物の形成量が多くなり製造工程において割れなどの不具合が発生する。従って、Mn添加量は0.8〜1.3%の範囲とする。好ましいMn添加量は、1.0〜1.2%である。
CuはAl中に固溶して強度を更に向上させる効果を有するにもかかわらず、加工性を阻害しない元素である。また、Cuは孔食電位を貴にする働きを有し、Zn拡散層とZnが拡散していない管中央部との孔食電位差を大きくし、犠牲防食作用を高めることができる。Cu添加量が0.4%未満では強度が不十分であり機械的拡管による溝潰れを防止できず、更に孔食電位の貴化が不十分となって十分な犠牲防食作用が得られない。Cu添加量が0.8%を超えると、押出性や抽伸性などの加工性、ならびに、耐食性に劣る。従って、Cu添加量は0.4〜0.8%の範囲とする。好ましいCu添加量は、0.55〜0.75%である。
本発明に用いるストレート部を備えるアルミニウム合金のクラッド管は、Al−Zn合金を犠牲層として心材にクラッドし、これを抽伸加工することによって得られる。犠牲層は、心材よりも孔食電位が卑であるため犠牲防食作用によって心材を防食し、管材の耐久寿命を向上させることができる。犠牲層には、Zn:0.5〜1.5%を含有し残部Al及び不可避不純物からなるAl合金が用いられる。
Znは犠牲層の電位を下げて犠牲陽極として作用するようにし、これにより耐食性を向上させる。Zn添加量が0.5%未満では心材との電位差が不十分で犠牲防食効果の向上が図れない。一方、Zn添加量が1.5%を超えると、接合部でZnが濃縮し接合部の耐食性が劣化する。従って、Zn添加量は0.5〜1.5%の範囲とする。Znの好ましい添加量は、0.7〜1.0%である。
本発明において、ろう付に用いるろう材の合金組成については特に限定されるものではないが、Si:9〜14%を含有するAl−Si系合金が好適に用いられる。これらのろう材を用いてろう付加熱を行なうと、ろう材とAl-Zn犠牲層におけるZnの濃度勾配によって、高濃度側のAl-Zn犠牲層から低濃度側のろう材側にZnが拡散する。ろう材にZnが添加されている場合には、Al−Zn犠牲層とろう材におけるZnの濃度勾配が小さいため、ろう付の際にろう材側へのZnの拡散が抑制されるが、1.0%以下であればろう材中にZnが含まれていてもよい。しかしながら、ろう材中におけるZn添加量が1.0%を超えると、Al−Zn犠牲層とろう材におけるZnの濃度勾配が小さ過ぎて、ろう付の際にろう材側へのZnの拡散が大きく抑制される。その結果、拡散せずにAl-Zn犠牲層に残存するZnが多量となり、内管の耐食性が悪化する場合がある。
以下に、本発明で用いるアルミニウム合金クラッド管の製造方法について説明するが、これに限定されるものではない。ここでは、Al−Zn犠牲層をクラッド層に用いたアルミニウム合金クラッド管の製造方法について説明する。
ろう付け加熱は、固相線温度以上で加熱をする。固相線温度未満の加熱では、ろう材に液相が生成されないためろう付できない。さらに、ろう材の溶融とAl−Zn犠牲層への侵食のいずれも固相線温度よりも高いほど起こりやすい。ここでの固相線温度とは、ろう材にZnが拡散したAl−Si−Zn合金のものをさし、例えばAl−12%Si−1%Znの固相線温度は、575℃である。
フィレットの溶融拡散状況及び接合長さを確認することによって、接合状態を判断した。接合試験片を樹脂埋めして研磨した後に、金属顕微鏡で接合部断面を観察した。10個の試験片の全てにおいて、溶融拡散部が半球状の凝固組織のものを「○」(合格)、10個の試験片の少なくとも一つにおいて、半球状の凝固組織ではなくAl−Zn犠牲層が残存しているものを「×」(不合格)とした。また、接合部断面の金属顕微鏡観察により、最大溶融拡散部厚さを測定して平均値を求め、Al−Zn犠牲層のクラッド厚さに対する最大溶融拡散部厚さ(上記平均値)の比を求めた。更に、ろう付接合性評価として接合長さ(フィレット長さ)を測定した。管長手方向のフィレットの長さが1mm以上を○、1mm未満、0.5mm以上を△、0.5mm未満を×とした。○と△を合格とし、×を不合格とした。結果を表7、8に示す。
大気曝露環境を模擬したASTM G85に準じたSWAATを1500時間行った。評価方法は、試験後に光学顕微鏡観察により、例えばフィレットに接していない内管ストレート部などの非接合部の最大孔食深さを測定し、10個の試験片の全てにおいて2000時間で貫通しておらず、かつ、最大孔食深さが80μm以下のものを「○」(合格)とし、10個の試験片の全てにおいて1500時間で貫通していないが、最大孔食深さが80μmを超えるものを「△」(合格)とし、10個の試験片の少なくとも一つにおいて貫通しているものを「×」(不合格)とした。結果を表7、8に示す。なお、最大孔食深さは、10個の試験片の平均値である。
大気曝露環境を模擬したASTM G85に準じたSWAATを1500時間行った。評価方法は、試験後に接合試験片の耐圧試験を行い、さらに接合部の断面観察を行なった。耐圧試験によるリーク漏れが生じているもの、及び/又は、断面観察により接合部の内管ストレート部が腐食で貫通しているものが、10個の試験片に一つでもある場合を「×」とした。10個の試験片の全てが、耐圧試験でリーク漏れがなく、かつ、断面観察により接合部の内管ストレート部が貫通しておらず腐食部分が厚さの半分以上である場合を「△」、10個の試験片の全てが、耐圧試験でリーク漏れがなく、かつ、断面観察により接合部の内管ストレート部が貫通しておらず腐食部分が厚さの1/4以上、半分未満である場合を「○」、10個の試験片の全てが、耐圧試験でリーク漏れがなく、かつ、断面観察により接合部の内管ストレート部が貫通しておらず腐食部分が厚さの1/4未満である場合を「◎」とした。◎、○および△を合格とし、×を不合格とした。
(a)〜(c)の試験の評価により、全ての評価が「◎」と「○」からなるものを総合評価が「◎」とし、全ての評価が「○」からなるものを総合評価が「○」、全ての評価が「◎」と「○」からなると共に一つ以上「△」があるものを総合評価が「△」、一つ以上「×」があるものを総合評価が「×」とした。総合評価が「◎」、「○」及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
なお、溶融拡散部と接するストレート部の最薄部におけるZn濃度及びストレート部の最薄部と接するフィレットのZn濃度についても、表7、8に併せて示した。
比較例2では、Al−Zn犠牲層のZn濃度が高いため接合部に高濃度のZnが残存し、接合部の耐食性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例3では、心材のMn濃度が低いために犠牲防食作用が劣り、非接合部の耐食性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例4では、心材のMn濃度が高いために腐食速度が速くなり、非接合部の耐食性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例5では、心材のCu濃度が低いために犠牲防食作用が劣り、非接合部の耐食性が不合格となった。また、ろう付中の保持時間が短いため、溶融拡散部の厚さが薄くなり、凝固組織、接合長さ及び接合部の耐食性が不合格となった。その結果、総合評価が不合格となった。
比較例6では、心材のCu濃度が高いために腐食速度が速くなり、非接合部の耐食性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例7では、加熱時間が短いために溶融拡散部の厚さが薄くなった。その結果、接合部に高濃度のZnが残存して接合部の耐食性が不合格となり、凝固組織と接合長さも不合格となり、総合評価が不合格となった。
比較例8では、加熱時間が長いために溶融拡散部の厚さが厚くなった。その結果、接合部の耐食性が不合格となり、総合評価が不合格となった。
2・・・ストレート部
3・・Al−Zn犠牲層、クラッド層
31・・・Al−Zn犠牲層、クラッド層
32・・・Al−Zn犠牲層、クラッド層
4・・・内管
5・・・トーチろう材、ろう材フィレット
51・・・溶融拡散部
6・・・接合部
Claims (2)
- 両端部にストレート部及びフレア部のいずれかを備える複数のアルミニウム管を用い、隣接する一方のアルミニウム管のストレート部と他方のアルミニウム管のフレア部とを嵌合し、前記ストレート部とフレア部との間にAl−Si系ろう材を配置してろう付したアルミニウム管の接合体であって、少なくとも前記ストレート部を備えるアルミニウム管が、Mn:0.8〜1.3mass%、Cu:0.4〜0.8mass%を含有し残部Al及び不可避不純物からなるAl合金の心材の外表面に、Zn:0.5〜1.5mass%を含有し残部Al及び不可避不純物からなるAl−Zn犠牲層をクラッドしたアルミニウムクラッド管であり、接合部のストレート部においてAl−Si系ろう材がAl−Zn犠牲層を浸食した半球状の凝固組織からなる溶融拡散部が形成され、当該溶融拡散部の最大厚さがAl−Zn犠牲層のクラッド厚さの0.5〜2.0倍であることを特徴とするアルミニウム管の接合体。
- 前記溶融拡散部と接するストレート部の最薄部におけるZn濃度が、0.7mass%以下である、請求項1に記載のアルミニウム管の接合体。
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