JP2014080488A - 熱可塑性エラストマー組成物および該組成物からなる成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】オレフィン系ゴム(I)、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンまたはイソプレンおよびブタジエンの混合物に由来する構造単位を含有し、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000である水添ブロック共重合体(II)、前記(I)以外のポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)をオレフィン系ゴム(I):水添ブロック共重合体(II)=90:10〜10:90(質量比)の割合で含有し、かつオレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)を10〜200質量部、軟化剤(IV)を10〜300質量部の割合で含有する、熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、成形加工性、柔軟性、制振性、高温での圧縮永久歪みおよび軟化剤の保持性に優れ、押出し成形によっても平滑な表面を有する成形体を得ることのできる熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
〔1〕オレフィン系ゴム(I)、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンまたはイソプレンおよびブタジエンの混合物に由来する構造単位を含有し、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000である水添ブロック共重合体(II)、前記(I)以外のポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)をオレフィン系ゴム(I):水添ブロック共重合体(II)=90:10〜10:90(質量比)の割合で含有し、かつオレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)を10〜200質量部、軟化剤(IV)を10〜300質量部の割合で含有する、熱可塑性エラストマー組成物;
〔2〕前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)とオレフィン系ゴム(I)が架橋されてなる、上記〔1〕の熱可塑性エラストマー組成物;
〔3〕前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)が、イソプレンに由来する構造単位からなる、上記〔1〕の熱可塑性エラストマー組成物;
〔4〕前記水添ブロック共重合体(II)の嵩密度が0.10〜0.40g/mlの粉末である、上記〔1〕の熱可塑性エラストマー組成物;
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体;
に関する。
本発明で用いるオレフィン系ゴム(I)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの1種以上との共重合体ゴム(以下、「エチレン/α−オレフィン共重合体ゴム」ということがある)及びこれらの架橋物、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの1種以上と非共役ポリエンの1種以上との共重合体ゴム(以下、「エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴム」ということがある)及びこれらの架橋物、またはエチレン/α−オレフィン共重合体ゴムの架橋物とエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムの架橋物を併用したものである。
中でも、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエンの架橋物であることが、高温での歪み回復性がより良好になる点から好ましい。
なお、本明細書でいう「ムーニー粘度(ML1+4,100℃)」とは、JIS K6300に記載の方法で測定した粘度をいう。
本発明で用いる水添ブロック共重合体(II)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンまたはイソプレンおよびブタジエンの混合物に由来する構造単位からなり、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000である。
なお、本明細書では、イソプレンに由来する構造単位における3,4−結合単位およびブタジエンに由来する構造単位における1,2−結合単位を「ビニル結合単位」と称し、その合計量を「ビニル結合含有量」と称する。
なお、重合体ブロック(B)における不飽和二重結合の水素添加率は、重合体ブロック(B)における不飽和二重結合の含有量を、水素添加の前後において、後述する実施例に記載されたヨウ素価測定から求めることができる。
また、水添ブロック共重合体(II)が重合体ブロック(A)を2個以上または重合体ブロック(B)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロック(A)およびそれぞれの重合体ブロック(B)は互いに同じ構成のブロックであっても異なる構成のブロックであってもよい。例えば、〔A−B−A〕で表されるトリブロック構造における2個の重合体ブロック(A)は、それらを構成する芳香族ビニル化合物の種類が、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
また、水添ブロック共重合体(II)の全体のピークトップ分子量(Mp)は、水素添加後の状態で250,000〜500,000であり、310,000〜500,000であることがより好ましい。水添ブロック共重合体(a)のMpが上記の範囲内であると、嵩密度が0.10〜0.40g/mlの範囲の粉末の水添ブロック共重合体(II)が容易に得られる。なお、本明細書でいうMpは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算で求めた値である。
水添ブロック共重合体(II)の製造方法は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などの重合方法が挙げられる。アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として用いて、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物(イソプレン、またはイソプレンとブタジエンの混合物)を逐次重合させ、所望の分子構造および分子量を有するブロック共重合体を製造した後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合を停止させることによりブロック共重合体を製造することができる。そして得られたブロック共重合体を好ましくは単離せずに引き続き不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加反応を行うことにより、水添ブロック共重合体(II)を得ることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)を、オレフィン系ゴム(I):水添ブロック共重合体(II)(質量比)=90:10〜50:50、好ましくは80:20〜60:40にした場合、成形加工性、柔軟性、高温で長期にわたって歪みを加えた後の歪み回復性に優れる熱可塑性エラストマー組成物および成形体をより経済的なコストで得ることができる。
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂(III)とは、前記したオレフィン系ゴム(I)以外の公知のポリオレフィン系樹脂を指し、例えばエチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリブテン−1およびポリ4−メチルペンテン−1などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を好ましく用いることができる。中でも、成形加工性に優れるという観点から、エチレン系重合体およびプロピレン系重合体の一方または両方が好ましく、プロピレン系共重合体がより好ましい。
プロピレン系重合体としては、例えばプロピレン単独重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。中でも、プロピレン単独重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびエチレン・プロピレンブロック共重合体の1種または2種以上が成形加工性の点からより好ましく用いられる。
本発明で用いる軟化剤(IV)としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル;ミネラルオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;ポリブテン;低分子量ポリイソブチレン;液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体などの液状ポリジエンおよびその水添物などが挙げられる。中でも、水添ブロック共重合体(II)との相容性の観点から、パラフィン系プロセスオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィンが好ましい。
オレフィン系ゴム(I)および水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量が10質量部未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の熱可塑性が不十分となり、成形加工性などが劣る。一方、200質量部を超えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性が不足する。熱可塑性エラストマー組成物および成形体の成形加工性、柔軟性がより良好になる点から本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、オレフィン系ゴム(I)および水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)を12〜150質量部の割合で含有することが好ましく、14〜100質量部の割合で含有することがより好ましい。
架橋剤(V)としては、例えばラジカル発生剤、硫黄または硫黄化合物等が挙げられる。
ラジカル発生剤としては、例えばジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられ、これらは1種類を単独で、または2種以上を併用してもよい。中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシドが反応性の点から好ましく用いられる。
これらのラジカル発生剤を用いる場合は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)合計100質量部に対して、0.01〜15質量部、好ましくは0.05〜10質量部の範囲内で使用される。
架橋助剤(VI)としては、例えばトリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートなどの多官能性単量体;塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレン、クロルスルホン化ポリエチレンが挙げられる。
架橋促進剤(VII)としては、例えば、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール類;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルアルデヒド−アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン−アセトアルデヒド反応物などのアルデヒド−アミン系反応物ないしはアルデヒド−アンモニア系反応物;2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン類;チオカルバニリド、ジエチルウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレアなどのチオウレア類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムモノないしポリスルフィド類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのチオカルバミン酸塩類;ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩類;亜鉛華などが挙げられる。これらの架橋促進剤(VII)は1種類を単独で、または2種以上併用してもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、以下の方法により、含有するオレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)の部分が架橋されていてもよい。
架橋方法としては、オレフィン系ゴム(I)及び水添ブロック共重合体(II)に、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)を適宜添加して混練する方法(方法1)、樹脂架橋法(方法2)、キノイド架橋法(方法3)、活性エネルギー線等を用いる方法(方法4)などが挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、オレフィン系ゴム(I)及び水添ブロック共重合体(II)に、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)を適宜添加して混練することで容易にオレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)を架橋できる。
例えば、有機過酸化物等の架橋剤(V)と共に、必要に応じて、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートなどの多官能性単量体などの架橋助剤(VI)、ベンゾチアジルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド系化合物などの架橋促進剤(VII)を用いてもよい。架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)を用いる場合、その添加量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)合計100質量部に対して、それぞれ、0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部である。
かかる方法で架橋を行う場合、例えば、該熱可塑性エラストマー組成物、ラジカル発生剤、および必要に応じ他の熱可塑性樹脂を加熱下で溶融混練する方法などが挙げられる。加熱温度は好ましくは140〜230℃であり、溶融混練は、押出機、ニーダー、ロール、プラストグラフなどの装置でバッチ式または連続式で行うことができる。かかる溶融混練工程により架橋反応が進行する。
かかる方法で架橋を行う場合、架橋剤(V)、架橋促進剤(VII)等をロール、バンバリーミキサーなどのミキサー類を用いて、好ましくは50〜250℃の範囲、より好ましくは80〜200℃の範囲で混練後、好ましくは60℃以上で、より好ましくは90〜250℃の範囲で通常1分〜2時間、より好ましくは5分〜1時間維持することによって架橋を形成することができる。なお、架橋促進剤(VII)を併用する場合、その添加量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部である。
樹脂架橋による架橋方法では、架橋剤(V)としてアルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂などのフェノール系樹脂を用い、架橋助剤(VI)として塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレン、クロルスルホン化ポリエチレンなどを用いる。
かかる方法で架橋を行う場合、架橋剤(V)としてのフェノール樹脂の添加量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)合計100質量部に対して1〜30質量部の範囲が好ましく、5〜20質量部の範囲がより好ましい。架橋助剤(VI)の添加量は、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜5質量部の範囲がより好ましい。架橋温度については、100〜250℃の範囲であるのが好ましく、より好ましくは130〜220℃である。樹脂架橋を行う場合は、架橋促進剤(VII)を併用するのが極めて好ましい。
キノイド架橋による架橋方法では、架橋剤(V)としてp−キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせなどを用いる。
かかる方法で架橋を行う場合、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)合計100質量部に対して、キノンオキシム類を好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部の範囲で添加し、酸化鉛類を好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部の範囲で添加する。架橋温度については、90〜250℃の範囲であるのが好ましく、より好ましくは110〜220℃である。キノイド架橋を行う場合は、架橋促進剤(VII)を併用するのが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性重合体を含有できる。他の熱可塑性重合体としては、例えばポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴムなどのスチレン系エラストマーおよびその水素添加物またはその変性物;天然ゴム;液状ポリイソプレンゴムおよびその水素添加物または変性物;クロロプレンゴム;アクリルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
なお、他の熱可塑性重合体の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、力学物性が損なわれない範囲で用いればよく、他の熱可塑性重合体を添加する前の熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して200質量部以下であることが好ましい。
また、上記充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、カーボン繊維などが挙げられる。
また、オレフィン系ゴム(I)、ポリオレフィン系樹脂(III)、軟化剤(IV)および必要に応じて架橋剤(V)を混合した後、水添ブロック共重合体(II)あるいは水添ブロック共重合体(II)と軟化剤(IV)を添加して、その混合物を溶融条件下に動的架橋する方法が、オレフィン系ゴム(I)を架橋すると同時に各成分を均一に混合できる点から好ましい。
ここで、本明細書における「溶融条件下に動的架橋する」とは、溶融状態にした前記混合物に混練によって剪断応力をかけながら架橋することを意味する。
、各成分を均一に混合し得る溶融混練装置のいずれもが使用でき、例えば単軸押出機、二
軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。中でも、混練中の剪断力が大きく連続運転が可能な二軸押出機を使用するのが好ましい。
水素添加後のブロック共重合体(II)をCDCl3に溶解して1H−NMRスペクトルを測定(装置:JNM−Lambda 500(日本電子(株)製、測定温度:50℃)し、スチレンに由来するピーク強度から重合体ブロック(A)の含有量を算出した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、水素添加前の重合体ブロック(A)と水素添加後の水添ブロック共重合体(II)において、ポリスチレン換算のピークトップ分子量(Mp)を求めた。
機器:東ソー株式会社製 ゲルパーミエーションクロマトグラフ「HLC−8020」
カラム:G4000HXL×2本 (東ソー株式会社製)
溶離液:テトロヒドロフラン、流量:1ml/分
注入量:150μl
濃度:5mg/10ml(ブロック共重合体/テトロヒドロフラン)、
カラム温度:40℃
検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
検出方法:示差屈折率(RI)
水素添加前後におけるブロック共重合体のヨウ素価を測定し、その測定値により水添ブロック共重合体(II)の水素添加率(%)を算出した。
水素添加率(%)={1−(水素添加後のブロック共重合体のヨウ素価/水素添加前のブロック共重合体のヨウ素価)}×100
水素添加前のブロック共重合体をCDCl3に溶解して1H−NMRスペクトルを測定(装置:JNM−Lambda 500(日本電子(株)製、測定温度:50℃)し、イソプレン、ブタジエン、またはイソプレンとブタジエンの混合物由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン構造単位における3,4−結合単位および1,2−結合単位、ブタジエン構造単位における1,2−結合単位、またイソプレンとブタジエンの混合物の場合にはそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比からビニル結合含有量(3,4−結合単位と1,2−結合単位の含有量の合計)を算出した。
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、射出成形機(「IS−55EPN」、東芝機械株式会社製)により200℃で射出成形して、縦110mm、横110mm、厚み2mmのシート状試験片を作製し、JIS K 6253に準拠し、該射出成形シートを3枚重ねて厚み6mmの硬度を測定した。硬度計はタイプAデュロメータを用い、測定値は瞬間の数値を記録した。タイプA硬度が好ましくは95以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは85以下であると、得られる成形体は柔軟性に優れる。
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、圧縮成形機により200℃、3分間圧縮成形し、直径29.0±0.5mm、厚さ12.5±0.5mmの円柱状試験片を作製した。この試験片を用い、JIS K 6255に準拠して、リュプケ式反発弾性試験機によって25℃の反発弾性率を測定した。反発弾性率の値が小さいほど制振性に優れる。反発弾性率は、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは53以下である。反発弾性率が前記範囲内であることにより、得られる成形体は制振性に優れる。
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、圧縮成形機により200℃、3分間圧縮成形し、直径13.0±0.5mm、厚さ6.3±0.3mmの円柱状試験片を作製した。この円柱状試験片を用い、JIS K 6262に準拠し、70℃、120℃の2点の温度それぞれにおける、25%圧縮変形を22時間保った後の圧縮永久歪みを測定した。この値が小さいほど高温での圧縮永久歪みに優れる。好ましくは70℃、120℃の両条件下で55%以下、より好ましくは70℃、100℃、120℃の両条件下で50%以下、さらに好ましくは70℃、120℃の両条件下で45%以下である。圧縮永久歪みが前記範囲内であることにより、得られる成形体が高温での圧縮永久歪みに優れる。
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、射出成形機(「IS−55EPN」、東芝機械株式会社製)により200℃で射出成形して、縦110mm、横110mm、厚み2mmのシート状試験片を作製し、箱型乾燥機(「PO−50」、株式会社松井製作所製)中に50℃で10日間静置した後、試験片の表面のオイルブリードの有無を目視にて確認した。軟化剤(IV)がシート表面にブリードアウトしておらず手で触ったときにヌメリがない場合を良好(○)、軟化剤(IV)がシート表面にブリードアウトしていて手で触ったときにヌメリがある場合を不良(×)として評価した。
○:軟化剤のブリードなし。
×:軟化剤のブリードあり。
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を、幅30mm×厚さ2.2mmのスリットダイを出口部分に取り付けた40φ単軸押出機を用いて、180℃温度条件下で押出成形してリボン状成形体を得て、その成形体の表面性を、表面粗さ測定機((株)小坂研究所製 サーフコーダーSE1700α)を用いて、評価長さ4mm、測定速度0.1mm/秒で測定した場合の表面の凹凸の最大値と最小値の差から下記基準により評価した。
○:20μm未満 表面が滑らかである
△:20μm以上30μm未満 表面が荒れている
×:30μm以上 表面がザラザラしている
(水添ブロック共重合体(II)−1の製造)
乾燥した窒素で置換された耐圧容器に、スチレン1.84kgおよび溶媒としてシクロヘキサン55.8kgを仕込んだ。この溶液に、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)45mlを加え、60℃で1時間重合させた。次いで、この反応混合物にルイス塩基としてテトラヒドロフラン305gを加えた後、イソプレン8.57kgを加えて2時間重合を行い、さらにスチレン1.84kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。分析用にごく少量をサンプリングした後、該反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で5時間、水添反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去した後、濾液を再び80℃に加温し、これを110℃の熱水に100kg/時間の速度で供給した。また同時に1MPaのスチームを50kg/時間の速度で供給し、反応容器内温度110±2℃でスチームストリッピングを行った。得られたスラリーを圧縮水絞機により45%にまで脱水し、120℃のプレートドライヤーで加熱乾燥して、含水率0.1質量%の粉末状のポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、水添ブロック共重合体(II)−1と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(II)−1の水素添加率は97.2%であり、重合体ブロック(A)含有量は29.4質量%、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は37,500、水添ブロック共重合体(II)−1のピークトップ分子量(Mp)は315,000、重合体ブロック(B)のビニル結合含有量は55.2%、嵩密度は0.22g/mlであった。
(水添ブロック共重合体(II)−2の製造)
製造例1において、溶媒としてシクロヘキサンを55.8kg、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)59ml、ルイス塩基としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン99g、重合させるモノマーとしてスチレン1.84kg、ブタジエン8.57kg、スチレン1.84kgを逐次添加して重合させた以外は製造例1と同様の方法で重合反応、水添反応、脱触媒および乾燥を行い、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物を得た(以下、水添ブロック共重合体(II)−2と称する)。得られた水添ブロック共重合体(II)−2の水素添加率は98.8%であり、重合体ブロック(A)含有量は29.3質量%、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は28,500、水添ブロック共重合体(II)−2のピークトップ分子量(Mp)は309,000、重合体ブロック(B)のビニル結合含有量は73.2%、嵩密度は0.20g/mlであった。
(水添ブロック共重合体(II)−3の製造)
製造例1において、溶媒としてシクロヘキサンを55.8kg、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)53ml、ルイス塩基を加えず、重合させるモノマーとしてスチレン1.59kg、イソプレンとブタジエンの混合物[イソプレン/ブタジエン=55/45(モル比)]7.44kg、スチレン1.59kgを逐次添加して重合させた以外は製造例1と同様の方法で重合反応、水添反応、脱触媒および乾燥を行い、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物を得た(以下、水添ブロック共重合体(II)−3と称する)。得られた水添ブロック共重合体(II)−3の水素添加率は98.9%であり、重合体ブロック(A)含有量は29.4質量%、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は27,500、水添ブロック共重合体(II)−3のピークトップ分子量(Mp)は303,000、重合体ブロック(B)のビニル結合含有量は8.1%、嵩密度は0.22g/mlであった。
(水添ブロック共重合体(II)−4の製造)
製造例1において、溶媒としてシクロヘキサンを55.8kg、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)26ml、ルイス塩基を加えず、重合させるモノマーとしてスチレン1.25kg、イソプレンとブタジエンの混合物[イソプレン/ブタジエン=55/45(モル比))]5.83kg、スチレン1.25kgを逐次添加して重合させた以外は製造例1と同様の方法で重合反応、水添反応、脱触媒および乾燥を行い、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物を得た(以下、水添ブロック共重合体(II)−4と称する)。得られた水添ブロック共重合体(II)−4の水素添加率は98.7%であり、重合体ブロック(A)含有量は29.4質量%、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は45,800、水添ブロック共重合体(II)−4のピークトップ分子量(Mp)は495,000、重合体ブロック(B)のビニル結合含有量は7.4%、嵩密度は0.23g/mlであった。
(水添ブロック共重合体(II)−5の製造)
製造例1において、溶媒としてシクロヘキサンを55.8kg、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%、シクロヘキサン溶液)65ml、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン312g、重合させるモノマーとしてスチレン2.02kg、イソプレン9.90kg、スチレン2.02kgを逐次添加して重合させた以外は製造例1と同様の方法で重合反応、水添反応、脱触媒および乾燥を行い、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物を得た(以下、水添ブロック共重合体(a)−5と称する)。得られた水添ブロック共重合体(II)−5の水素添加率は97.0%であり、重合体ブロック(A)含有量は28.5質量%、重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は26,000、水添ブロック共重合体(II)−5のピークトップ分子量(Mp)は225,000、重合体ブロック(B)のビニル結合含有量は58.2%、嵩密度は0.44g/mlであった。
オレフィン系ゴム(I):
オレフィン系エラストマー(エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴム)[JSR(株)製「JSR EP37F」;ヨウ素価8、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)100]
水添ブロック共重合体(II):
上記製造例1〜5で得られた水添ブロック共重合体
ポリオレフィン系樹脂(III):
ホモポリプロピレン、(株)プライムポリマー製 E111G〔MFR0.5g/10分(230℃、21.2N荷重)〕
軟化剤(IV):
パラフィン系プロセスオイル[出光興産(株)製「PW−90」]
架橋剤(V)−1:
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン[日本油脂(株)製「パーヘキサ25B−40」]
架橋剤(V)−2:
アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体[田岡化学工業(株)製「タッキロール201」]
架橋助剤(VI):
トリアリルイソシアヌレート/シリカ=40/60[日本化成(株)製「TAIC WH−60」]
架橋促進剤(VII):
酸化亜鉛二種[堺化学工業(株)製]
(分割添加による熱可塑性エラストマー組成物の製造)
表2および表3に示す配合において、(i)オレフィン系ゴム(I)、ポリオレフィン系樹脂(III)、軟化剤(IV)の50質量%、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)と、(ii)水添ブロック共重合体(II)と軟化剤(IV)の50質量%をそれぞれ予備混合した後、二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−35B」;シリンダー5)を用いて、シリンダー温度210℃およびスクリュー回転数200rpmの条件下で、上記(i)の組成物をホッパーに供給し、上記(ii)の組成物を押出機の中間(シリンダー3)から供給して、溶融混練してストランド状に押出し、次いで二軸押出機に接続したペレタイザーにより切断して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットをそれぞれ製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、各試験片をそれぞれ作製し、前記方法により硬度、反発弾性率、圧縮永久歪み、軟化剤の保持性、押出成形性(表面性)を測定した結果を、表2および表3に示した。
(一括添加による熱可塑性エラストマー組成物の製造)
各成分を、表2および表3に示す配合で予備混合した後、二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−35B」;シリンダー5)のホッパーに一括供給して、シリンダー温度210℃およびスクリュー回転数200rpmの条件下に溶融混練し、ストランド状に押出し、次いで二軸押出機に接続したペレタイザーにより切断して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットをそれぞれ製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、各試験片をそれぞれ作製し、前記方法により硬度、反発弾性率、圧縮永久歪み、軟化剤の保持性、押出成形性(表面性)を測定した結果を、表2および表3に示した。
Claims (5)
- オレフィン系ゴム(I)、
芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンまたはイソプレンおよびブタジエンの混合物に由来する構造単位を含有し、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000である水添ブロック共重合体(II)、
前記(I)以外のポリオレフィン系樹脂(III)
および軟化剤(IV)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)をオレフィン系ゴム(I):水添ブロック共重合体(II)=90:10〜10:90(質量比)の割合で含有し、
かつオレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)を10〜200質量部、軟化剤(IV)を10〜300質量部の割合で含有する、熱可塑性エラストマー組成物。 - 前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)とオレフィン系ゴム(I)が架橋されてなる、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)が、イソプレンに由来する構造単位からなる、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(II)の嵩密度が0.10〜0.40g/mlの粉末である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体。
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