JP2018154681A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
成分(A):ポリプロピレン系樹脂
成分(B):エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム
成分(C):ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックと、イソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックとを有するブロック共重合体及び/またはその水添物
成分(A1):融解ピーク温度が157℃以上175℃以下であるプロピレン系重合体
成分(A2):融解ピーク温度が100℃以上157℃未満であるプロピレン系ランダム共重合体
成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物及び成形体は、その優れた圧縮永久歪(へたり性)及び耐寒性(耐低温脆化性)と成形加工性から、自動車用シール材、建材用シール材として有用であり、特に自動車用グラスランチャンネルとして有用である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、少なくとも下記成分(A)〜(C)と架橋剤とを溶融混練してなるものである。
成分(A):ポリプロピレン系樹脂
成分(B):エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム
成分(C):ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックと、イソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックとを有するブロック共重合体及び/またはその水添物
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、得られる成形体が圧縮永久歪(へたり性)と耐寒性(耐低温脆化性)に優れ、成形加工性も良好であるという効果を奏する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物がこのような効果を奏する理由の詳細は定かではないが、成分(C)が、ゴム弾性の発現成分である成分(B)を取り込みながら分散体を形成する(ゴム分散体の核として働く)ことで、成分(A)のポリプロピレン相との明確なゴムドメイン相を形成し、圧縮永久歪(へたり性)が向上したと考えている。これは、成分(B)と成分(C)が互いに側鎖に反応基を持つことができ、それらが架橋して結びついたためであると推測している。また、成分(B)と成分(C)が上記のように分散し、分散不良による性能の低下がないため、配合全体におけるゴム成分(特に低温での弾性を示す成分(B))の割合を高くすることができ、耐寒性(耐低温脆化性)も良好なものとすることができると考えられる。
更に、上述したような架橋反応が進行することで流動性が過度に大きくならず、優れた成形加工性が得られると考えられる。
前述の特許文献2のように、従来、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムとビニル芳香族化合物を主体とするブロック共重合体ゴムを同時に用いて、得られる成形体の柔軟性や制振性を向上させる方法は一般に良く知られているが、架橋システムを利用し、その相乗効果によって永久圧縮歪(へたり性)と耐寒性(耐低温脆化性)の性能を満足させ、更に成形加工性も良好なものとする技術は、本発明によって初めて確立されたものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(A)は、好ましくは下記成分(A1)及び成分(A2)を含むポリプロピレン系樹脂であり、これらを含むものであれば、その他のポリプロピレン系樹脂を含むものであってもよい。なお、本発明において、「ポリプロピレン系樹脂」とはプロピレン単位の含有量が50質量%以上であるものを意味する。本発明において、成分(A)は主に押出成形性に寄与する。
成分(A1):融解ピーク温度が157℃以上175℃以下であるプロピレン系重合体
成分(A2):融解ピーク温度が100℃以上157℃未満であるプロピレン系ランダム共重合体
即ち、示差走査熱量計(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて、以下の工程(1)〜(3)を順に実施してポリプロピレン系樹脂の融解挙動を測定する。
各工程において横軸に時間、縦軸に融解熱量をプロットして融解曲線を取得し、工程(3)において観測されるピークのピークトップを融解ピーク温度とする。
工程(1):試料5mgを室温から100℃/分の速度で40℃から200℃まで昇温し、昇温終了後、3分間保持する。
工程(2):200℃から10℃/分の速度で40℃まで降温し、降温終了後、3分間保持する。
工程(3):40℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)はエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(ただし、成分(A)に該当するものを除く。)である。成分(B)は本発明の熱可塑性エラストマーに柔軟性を付与する成分である。
成分(B)はこれらの非共役ジエン単位の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、成分(A)の使用量は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し、成形性の観点から、下限は、通常40質量部以上であり、42質量部以上であることが好ましく、44質量部%以上であることがより好ましい。一方、上限は、通常70質量部以下であり、68質量部以下であることが好ましく、66質量部以下であることがより好ましい。
成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対し、成形性の観点から、下限は、通常30質量部以上であり、32質量部以上であることが好ましく、34質量部以上であることがより好ましい。一方、上限は、通常60質量部以下であり、58質量部以下であることが好ましく、56質量部以下であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(C)は、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロック(以下、「ブロックP」と称す場合がある。)と、イソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(以下、「ブロックQ」と称す場合がある。)とを有するブロック共重合体及び/またはその水添物(水添ブロック共重合体)である。
(P−Q)n (2)
(式中PはブロックPを、QはブロックQをそれぞれ表し、mは1〜5の整数を表し、nは2〜5の整数を表す)
また、成分(C)が、ゴム弾性の発現成分である成分(B)を取り込みながら分散体を形成する上で、成分(B)は、成分(C)よりも少量成分であることが好ましく、例えば、成分(B)は成分(C)に対して、1/5〜4/5の質量比で用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、成形性を向上させる観点から、更に下記成分(D)を原料として用いることが好ましい。
成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、架橋剤(以下「成分(E)」と称す場合がある。)の存在下で動的熱処理を行うことにより、成分(B)および成分(C)の少なくとも一部を架橋して得られる。この動的熱処理により、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム弾性が良好なものとなる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造には、成分(A)〜(E)以外に本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を原料として用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前述の通り、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び必要に応じて用いられる成分(D)、その他の成分等を所定量含有する組成物を架橋剤である成分(E)の存在下で動的熱処理して得られるものである。
2.6<NQ/R3<22.6 (1)
3.0<NQ/R3<20.0 (2)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K7210の規格に準拠した方法で測定温度230℃、測定荷重49Nで測定したメルトフローレート(MFR)が0.10g/10分以上であることが成形性の観点から好ましく、より好ましくは0.15g/10分以上であり、更に好ましくは0.20g/10分以上である。また、成形性の観点から、メルトフローレート(MFR)は、1g/10分以下であることが好ましく、0.95g/10分以下であることがより好ましく、0.90g/10分以下であることが更に好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、通常、熱可塑性エラストマー組成物に用いられる成形方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形等の各種成形方法により、成形体とすることができ、これらの中でも射出成形、押出成形が好適である。また、これらの成形を行った後に積層成形、熱成形等の二次加工を行った成形体とすることもできる。特に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は押出成形性に優れ、成形した際の目ヤニの発生や異物が低減されたものであるため、押出成形、特に異形押出成形に好適である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物よりなる成形体は以上に挙げたものの中でも自動車用シール材、建材用シール材として好適であり、自動車用シール材、特に自動車用グラスランチャンネルとして好適である。
以下の実施例及び比較例で使用した原材料は以下の通りである。
<A1−1>
プロピレン単独重合体(融解ピーク温度:165℃、プロピレン単位含有量:100質量%)/日本ポリプロ株式会社製 ノバテック(登録商標)PP FY6
プロピレン・エチレンランダム共重合体(融解ピーク温度:138℃、プロピレン単位含有量:98質量%)/日本ポリプロ株式会社製 ノバテック(登録商標)PP FW4B
<B−1>
エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(ムーニー粘度(ML1+4、125℃):61、密度(JIS K7112):0.87g/cm3、MFR(JIS K7210、230℃、49N):6g/10分、エチレン単位含有量:65.9質量%、エチリデンノルボルネン単位含有量:4.6質量%)/三井化学株式会社製 JSR EPT3092PM
<B−2>
エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(ムーニー粘度(ML1+4、125℃):64、密度(JIS K7112):0.86g/cm3、MFR(JIS K7210、230℃、98N):0.4g/10分、エチレン単位含有量:67質量%、エチリデンノルボルネン単位含有量:4.5質量%)/JSR株式会社製 JSR EP505EC
<C−1>
スチレン・イソプレン・スチレン非水添ブロック共重合体(前記式(1)の構造を有する。スチレン(ブロックP)含有量:20質量%、数平均分子量:90000)/株式会社クラレ製 ハイブラー5127
<c−1>
スチレン・ブタジエン・スチレン非水添ブロック共重合体(前記式(1)の構造を有する。スチレン(ブロックP)含量:60質量%、数平均分子量:200000)/旭化成ケミカルズ株式会社製 S1605
<D−1>
パラフィン系ゴム用軟化剤(40℃の動粘度:95.5cSt、流動点:−15℃、引火点:272℃)/出光興産株式会社製 ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW90
<E−1>
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物/化薬アクゾ株式会社製 カヤヘキサAD40C
<E−2>
ジビニルベンゼン60質量%とエチルビニルベンゼン40質量%の混合物/和光純薬工業社製 ジビニルベンゼン
<F−1>
フェノール系酸化防止剤/BASFジャパン社製 イルガノックス(登録商標)1010
以下の実施例及び比較例における熱可塑性エラストマー組成物の評価方法は以下の通りである。
JIS K6253に準拠(JIS−A)して、試験片に針を押し付けてから15秒後の値を測定した。
硬度デュロAは35〜95、特に40〜98の範囲であることが好ましい。
圧縮永久歪(へたり性)の測定値CSから下記基準で評価した。
◎:CS 45%未満
○:CS 45%以上51%未満
△:CS 51%以上55%未満
×:CS 55%以上
JIS K7216 の脆化温度試験法を参考にした手順で行う。
JIS K7216では、脆化試験機を用いてシート試験片に一定エネルギーの衝撃を与え、全試料片の50%が脆性破壊したときの温度を求めるが、本発明においては、−40℃において、衝撃後に全試料片の何%が破断せずに残ったかを未破断率として表し、以下の基準で耐寒性を評価した。
◎:未破断率 100%
○:未破断率 60%以上100%未満
△:未破断率 20%以上60%未満
×:未破断率 0%以上 20%未満
JIS K7210に準拠して、230℃、測定荷重49Nで測定した。
MFRの値から、成形性を下記基準で評価した。
○:MFR 1g(/10分)未満
△:MFR 3g(/10分)以上4g(/10分)未満
×:MFR 4g(/10分)以上
<実施例1>
(A1−1)20質量部、(A2−1)6質量部、(B−1)17質量部、(C−1)40質量部、(D−1)17質量部、(E−1)0.75質量部(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物)、(E−2)0.75質量部(ジビニルベンゼン60質量%とエチルビニルベンゼン40質量%の混合物)、(F−1)0.1質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドして混合物を得た。この混合物を、2個の原料供給口を有する同方向二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30α」、L/D=46、シリンダーブロック数:13)の供給部へ合計15kg/hの速度で投入し、110〜180℃の範囲で昇温させ溶融混練を行い、ペレット化して熱可塑性エラストマー組成物を製造した。
得られた熱可塑性エラストマー組成物の評価結果を表−1に示す。
表−1に示したように配合組成を変更した以外は実施例1と同様にして実施し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、実施例1と同様の評価を実施した結果を表−1に示す。
表−1に示す通り、実施例1〜9は「圧縮永久歪み(へたり性)」、「耐寒性(耐低温脆化性)」、「成形加工性(流動性)」の評価において優れる。
また、比較例2は実施例5で使用している成分(C)の(C−1)を、成分(B)の(B−1)と成分(D)の(D−1)に振り分けた(成分(C)を除いたことによる影響を確認した)例であるが、「成形加工性(流動性)」の評価が劣っている。
比較例3は、実施例5の成分(B)の(B−1)全量を、成分(C)である(C−1)に振り分けた例であるが、「耐寒性(耐低温脆化性)」、「成形加工性(流動性)」の評価が劣っている。
Claims (10)
- 少なくとも下記成分(A)〜(C)と架橋剤とを溶融混練してなる熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):ポリプロピレン系樹脂
成分(B):エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム
成分(C):ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックと、イソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックとを有するブロック共重合体及び/またはその水添物 - 成分(B)がエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 成分(C)が非水添ブロック共重合体である、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対する架橋剤の割合が、0.05質量部以上10質量部以下である、請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 成分(A)が下記成分(A1)及び成分(A2)を含むポリプロピレン系樹脂である、請求項1ないし4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A1):融解ピーク温度が157℃以上175℃以下であるプロピレン系重合体
成分(A2):融解ピーク温度が100℃以上157℃未満であるプロピレン系ランダム共重合体 - 成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対する成分(A)の割合が40〜70質量部で、成分(B)の割合が30〜60質量部である、請求項1ないし5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 更に下記成分(D)を原料として用い、かつその割合が成分(B)100質量部に対して40〜320質量部である、請求項1ないし6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤 - 請求項1ないし7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体。
- 自動車用部材である、請求項8に記載の成形体。
- 自動車用グラスランチャンネルである、請求項9に記載の成形体。
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