JP2014077640A - 転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】転動体を保持器の内径側に押し付けた状態での転動体外接間距離の計測を、簡単化して短時間で行うことができる転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法を提供する。
【解決手段】保持器5に形成されるポケット50内に保持した玉4の外周面とポケット50の内周面との間に存在するポケット隙間の大きさを検査する方法であって、ポケット50と周方向の同じ位置に貫通する貫通孔60が形成される弾性部材6を使用し、玉4をポケット50内に保持した状態で、弾性部材6により玉4を保持器5の内径側に押し付けて固定する固定工程と、保持器5の軸心C1を挟んで対向する一対の玉4の最大外径である玉外接間距離D1を計測する計測工程と、計測した玉外接間距離D1からポケット隙間の大きさを求めて、その大きさが所定の範囲内にあるか判定する判定工程と、を順に行う。
【選択図】図6
【解決手段】保持器5に形成されるポケット50内に保持した玉4の外周面とポケット50の内周面との間に存在するポケット隙間の大きさを検査する方法であって、ポケット50と周方向の同じ位置に貫通する貫通孔60が形成される弾性部材6を使用し、玉4をポケット50内に保持した状態で、弾性部材6により玉4を保持器5の内径側に押し付けて固定する固定工程と、保持器5の軸心C1を挟んで対向する一対の玉4の最大外径である玉外接間距離D1を計測する計測工程と、計測した玉外接間距離D1からポケット隙間の大きさを求めて、その大きさが所定の範囲内にあるか判定する判定工程と、を順に行う。
【選択図】図6
Description
本発明は、転がり軸受を構成する保持器に設けた複数のポケット内に転動自在に保持した転動体の外周面とポケットの内周面との間に存在するポケット隙間を検査する方法に関する。
例えば、回転軸を支持する転がり軸受は、回転軸に外嵌される内輪と、内輪と同軸に配置される外輪と、内外輪間の環状空間に周方向に配置される複数の転動体と、転動体を転動自在に保持する保持器とを備える。この保持器は、ポリアミドなどの滑りやすい樹脂を射出成形してなり、転動体を保持するポケットを有して転動体案内式にて構成される。転動体は、ポケットに径方向外方から入れ、転動体の外周面とポケットの内周面との間に僅かなポケット隙間を設けてポケット内に転動自在に保持される。
上記の転がり軸受は、円滑に潤滑して低トルクにて回転するために、ポケット隙間の大きさを適正にする必要がある。ポケット隙間の大きさが小さ過ぎると、転動体の外周面とポケットの内周面との間に潤滑剤を十分に取り込めなくなり、回転トルクが大きくなったり、転動体や保持器が異常に磨耗したりする。一方、ポケット隙間の大きさが大き過ぎると、高速回転域などにおいて、保持器が振動したり、保持器音と呼ばれる異常音が発生したりする。
そこで、保持器を射出成形するための金型を新規に製作したときに、新規金型により射出成形した保持器の初品検査を行う。この初品検査の一つとして、次のような検査を行う。保持器のポケットに転動体を入れ、転動体を保持器の内径側に押し付けた状態において、保持器の軸心を挟んで対向する一対の転動体の最大外径である転動体外接間距離を計測する。その計測結果からポケット隙間の大きさを求めて、その大きさが所定の範囲内にあるか検査する。転動体外接間距離を計測するために転動体を保持器の内径側に押し付ける方法としては、転動体及びポケットを粘土で固定する粘土固定方式や、保持器の軸心に電磁石を配置して鉄などの材料からなる磁性体の転動体を引き寄せる電磁石方式などがある。(例えば、特許文献1を参照)
しかしながら、上述した転動体を保持器の内径側に押し付ける方法では、粘土固定方式は、手作業により粘土で固定するため大変面倒であり、その作業時間が長くなる。また、電磁石方式は、大掛かりな構成となるため高コスト化し、その準備時間が長くなる。そこで、転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法は、転動体を保持器の内径側に押し付けた状態での転動体外接間距離の計測を、簡単化して短時間で行うことが課題となっていた。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、転動体を保持器の内径側に押し付けた状態での転動体外接間距離の計測を、簡単化して短時間で行うことができる転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法の構成上の特徴は、転がり軸受用保持器の径方向に貫通する孔により形成される複数のポケット内に転動自在に保持した転動体の外周面と前記ポケットの内周面との間に存在するポケット隙間の大きさを検査する方法であって、円筒状の弾性体からなり、前記転がり軸受用保持器の外径面に装着したときに、前記ポケットと周方向の同じ位置に径方向に貫通する貫通孔が形成される弾性部材を使用し、前記転動体を前記ポケット内に保持した状態で、前記弾性部材により前記転動体を前記転がり軸受用保持器の内径側に押し付けて固定し、且つ、この固定した状態においては前記転動体が前記貫通孔を貫通して前記転動体の最外径端が前記弾性部材の外径面より径方向外方に突出してなる固定工程と、前記転がり軸受用保持器の軸心を挟んで対向する一対の前記転動体の最大外径である転動体外接間距離を計測する計測工程と、計測した前記転動体外接間距離から前記ポケット隙間の大きさを求めて、その大きさが所定の範囲内にあるか判定する判定工程と、を順に行うことである。
請求項1の転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法によれば、ポケット内に保持される転動体の位置に貫通孔が重なるように弾性部材を装着することにより、転動体を転がり軸受用保持器の内径側に押し付けて固定した状態を簡単に作り出すことができるので、この状態における転動体外接間距離の計測を、簡単化して短時間で行うことができる。
本発明によれば、転動体を保持器の内径側に押し付けた状態での転動体外接間距離の計測を、簡単化して短時間で行うことができる転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法を提供できる。
以下、本発明の転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態である保持器5(転がり軸受用保持器)を構成品とする転がり軸受1の軸方向の断面図である。図2は、図1に示す保持器組立品CAのA-A断面図である。図1及び図2を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態である保持器5(転がり軸受用保持器)を構成品とする転がり軸受1の軸方向の断面図である。図2は、図1に示す保持器組立品CAのA-A断面図である。図1及び図2を参照しつつ説明する。
転がり軸受1は、固定された外輪2と、外輪2に対して回転自在に回転する内輪3と、内外輪間の環状空間に周方向に配置される複数の玉4(転動体)と、玉4を転動自在に保持する環状の保持器5とを備える。保持器5は、ポリアミドなどの滑りやすい樹脂を射出成形してなり、径方向に貫通する孔により形成されるポケット50を有し、玉案内式にて構成される。玉4は、軸受鋼からなり、ポケット50に径方向外方から入れ、玉4の外周面とポケット50の内周面との間に所定のポケット隙間Sを設けて転動自在に保持される。
保持器5は、射出成形するための金型を新規に製作したときに、新規金型により射出成形した保持器5の初品検査を行う。この初品検査の一つとして、ポケット隙間Sの大きさが所定の範囲内にあるか検査する。しかし、この検査は、玉4が球形状であるためポケット隙間Sを計測するのが難しく、また、多大な時間を要する。そこで、代わりの検査方法として、保持器5のポケット50に玉4を入れ、玉4を保持器5の内径側に押し付けた状態である保持器組立品CAにおいて、軸心C1を挟んで対向する一対の玉4の最大外径である玉外接間距離D1(転動体外接間距離)を計測する。その計測結果からポケット隙間の大きさを求めて、その大きさが所定の範囲内にあるか判定することにより検査している。
図3は、本発明の一実施形態である保持器5のポケット隙間Sを計測する構成を示す側面図である。図3を参照しつつ説明する。
保持器5のポケット隙間S(図1に示す)を計測する工具顕微鏡7は、床に設置される本体70と、本体70の上面に設けられて非計測物を載置するテーブル71と、本体70の後部から垂直方向(鉛直方向)に設けられる壁72と、壁72の上部に設けられて非計測物の位置を光学的に計測する光学レンズ73とを備える。テーブル71は、本図における左右方向であるX軸、及びX軸に直交して本図における前後方向であるY軸方向に移動可能とされ、また、水平方向に回転可能なR軸をさらに有する。光学レンズ73は、X軸及びY軸に直交して本図における上下方向であるZ軸方向に移動可能とされる。
保持器5のポケット隙間S(図1に示す)を計測する工具顕微鏡7は、床に設置される本体70と、本体70の上面に設けられて非計測物を載置するテーブル71と、本体70の後部から垂直方向(鉛直方向)に設けられる壁72と、壁72の上部に設けられて非計測物の位置を光学的に計測する光学レンズ73とを備える。テーブル71は、本図における左右方向であるX軸、及びX軸に直交して本図における前後方向であるY軸方向に移動可能とされ、また、水平方向に回転可能なR軸をさらに有する。光学レンズ73は、X軸及びY軸に直交して本図における上下方向であるZ軸方向に移動可能とされる。
保持器組立品CAは、その外径面に後述する弾性部材6を装着した状態で、軸心の方向をZ軸としてテーブル71に載置して、玉外接間距離D1(図2に示す)が計測される。
次に、保持器5のポケット隙間Sを検査する方法について図4〜図7を参照しつつ説明する。
図4は、本発明の一実施形態である保持器5のポケット隙間Sを検査するフローチャートである。図5は、図3に示す保持器組立品CAを周方向から見た図である。図6は、図5に示す保持器組立品CAのB-B断面図である。図7は、図6の要部拡大図である。
図4は、本発明の一実施形態である保持器5のポケット隙間Sを検査するフローチャートである。図5は、図3に示す保持器組立品CAを周方向から見た図である。図6は、図5に示す保持器組立品CAのB-B断面図である。図7は、図6の要部拡大図である。
まず、保持器5の外径面に弾性部材6を装着する(図4のステップS1)。弾性部材6は、円筒状であって合成ゴムなどの弾性体からなり、周方向にポケット50と同数の径方向に貫通する貫通孔60が形成される。弾性部材6は、ポケット50の位置に貫通孔60が重なるように装着される。
次に、弾性部材6を径方向外方に少し引っ張り、弾性部材6とポケット50との間に玉4を1個装着する。同様に、順に玉4を全てのポケット50に装着する(図4のステップS2)。ポケット50内に装着された玉4は、弾性部材6が弾性変形することにより保持器5の内径側に押し付けて固定される。玉4は、貫通孔60を貫通して玉4の最外径端P1が弾性部材6の外径面より径方向外方に突出して保持される。これにより、図5及び図6に示す保持器組立品CAが形成される。ステップS1,S2が、本発明の固定工程に対応する。
次に、保持器組立品CAを工具顕微鏡7(図3に示す)のテーブル71に軸心の方向をZ軸として載置する。そして、テーブル71をX,Y,R軸方向に移動し、且つ、光学レンズ73をZ軸方向に移動することにより、図6に示す玉外接間距離D1を計測する(図4のステップS3)。このようにして、保持器組立品CAは、軸心C1を挟んで対向する一対の玉4の最大外径、即ち、最外径端P1と最外径端P2との間の距離である玉外接間距離D1が計測される。続いて、隣の玉4が軸心C1を挟んで対向する一対の玉4の玉外接間距離D1が計測され、すべての一対の玉4の玉外接間距離D1が計測される。ここで、工具顕微鏡7による計測は、玉4の外径側の端面である、例えば最外径端P1を光学レンズ73にて観察することにより行われる。ステップS3が、本発明の計測工程に対応する。
次に、玉4の直径、保持器5の直径、及びポケット50の形状を基にして、計測したすべての一対の玉4の玉外接間距離D1から、すべてのポケット隙間S(図7に示す)の大きさを求める(図4のステップS4)。
次に、求めたすべてのポケット隙間Sの大きさが、所定の範囲内にあるか判定する(図4のステップS5)。判定の結果、すべてのポケット隙間Sの大きさが、所定の範囲内にあれば本検査に合格となる。このようにして、保持器5のポケット隙間Sが検査される。ステップS4,S5が、本発明の判定工程に対応する。
本実施形態の保持器5のポケット隙間Sを検査する方法によれば、ポケット50内に保持される玉4の位置に貫通孔60が重なるように弾性部材6を装着することにより、玉4を保持器5の内径側に押し付けて固定した状態を簡単に作り出すことができるので、この状態における玉外接間距離D1の計測を、簡単化して短時間で行うことができる。
なお、本発明は本実施形態に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、転動体が玉4としたが、それに限るものではなく、例えば、円筒ころの構成に適用しても良い。
本実施形態では、転動体が玉4としたが、それに限るものではなく、例えば、円筒ころの構成に適用しても良い。
また、本実施形態では、玉4が磁性体の軸受鋼としたが、それに限るものではなく、本測定方法は磁気を利用するものではないので、例えば、玉が非磁性体のセラミックなどからなる構成に適用しても良い。
また、本実施形態では、保持器5が非磁性体の樹脂としたが、それに限るものではなく、本測定方法は磁気の影響を受けないので、例えば、保持器が磁性体の軸受鋼などからなる構成に適用しても良い。
また、本実施形態では、計測手段が光学レンズ73を備える工具顕微鏡7としたが、それに限るものではなく、例えば、カメラを利用した計測器やレーザを利用した計測器などの構成に適用しても良い。
1:転がり軸受、 2:外輪、 3:内輪、 4:玉(転動体)、 5:保持器(転がり軸受用保持器)、 6:弾性部材、 7:工具顕微鏡、 50:ポケット、 60:貫通孔、 70:本体、 71:テーブル、 72:壁、 73:光学レンズ部、 C1:軸心、 CA:保持器組立品、 D1:玉外接間距離(転動体外接間距離)、 P1,P2:最外径端、 S:ポケット隙間
Claims (1)
- 転がり軸受用保持器の径方向に貫通する孔により形成される複数のポケット内に転動自在に保持した転動体の外周面と前記ポケットの内周面との間に存在するポケット隙間の大きさを検査する方法であって、
円筒状の弾性体からなり、前記転がり軸受用保持器の外径面に装着したときに、前記ポケットと周方向の同じ位置に径方向に貫通する貫通孔が形成される弾性部材を使用し、
前記転動体を前記ポケット内に保持した状態で、前記弾性部材により前記転動体を前記転がり軸受用保持器の内径側に押し付けて固定し、且つ、この固定した状態においては前記転動体が前記貫通孔を貫通して前記転動体の最外径端が前記弾性部材の外径面より径方向外方に突出してなる固定工程と、
前記転がり軸受用保持器の軸心を挟んで対向する一対の前記転動体の最大外径である転動体外接間距離を計測する計測工程と、
計測した前記転動体外接間距離から前記ポケット隙間の大きさを求めて、その大きさが所定の範囲内にあるか判定する判定工程と、を順に行うことを特徴とする転がり軸受用保持器のポケット隙間を検査する方法。
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