JP2014073089A - 薬剤揮散体 - Google Patents
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【解決手段】常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を含有する繊維状物からなる立体状メッシュを有する立体構造体1からなる薬剤揮散体において、この立体構造体1の空隙率を70〜99%とする。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献1には、撚った糸で作製したネット状物に防虫剤成分を含浸させたものを複数枚用いた薬剤揮散体が開示されている。
また、特許文献2には、樹脂成形体の表面に複数本の溝を300μm以下の間隔で形成し、害虫防除活性成分のベタツキを防止した害虫防除用成形体が開示されている。
(1)常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を含有する繊維状物からなる立体状メッシュを有する立体構造体からなる薬剤揮散体において、この立体構造体の空隙率が70〜99%であることを特徴とする薬剤揮散体。
(2)前記繊維状物は、樹脂フィラメントからなり、この樹脂フィラメントの断面形状は、楕円形状又は多角形状であり、この樹脂フィラメントを断面に切断し、その重心を通る径のうち、最も短い径を最短径とするとき、その最短径が0.3〜3.0mmであることを特徴とする(1)に記載の薬剤揮散体。
(3)前記樹脂フィラメントは、前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を樹脂担体に混練した後、成形したものであることを特徴とする(2)に記載の薬剤揮散体。
(4)前記繊維状物は、樹脂フィラメントを撚り合わせ、前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を含浸させたものであることを特徴とする(2)に記載の薬剤揮散体。
前記の常温揮散性ピレスロイド系防虫成分としては、常温において空気中に揮散する性質を有し、25℃における蒸気圧が0.001Pa以上0.1Pa以下程度であるものが好ましい。具体的には、揮散性能と安全性等の点から、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、及びエムペントリンの少なくとも1種があげられる。なお、これらの防虫成分については、各種の光学異性体または幾何異性体が存在するが、単独、混合物であれ、いずれの異性体類も使用することができる。
上記繊維状物は、繊維状に構成されたものをいい、長繊維(フィラメント)そのものや、長繊維や短繊維を撚り合わせて繊維状としたもの等があげられる。この発明においては、長繊維(フィラメント)を用いるのがよく、特に材料として後述する樹脂担体を含有する樹脂組成物を用いて成形して得られる樹脂製の長繊維(樹脂フィラメント)を用いると、耐久性が高くなり好ましい。
樹脂組成物は、樹脂担体に、必要に応じて微粉末担体、及び他の樹脂担体を混練したものである。なお、この樹脂組成物は、一旦、ペレットに成形された後、上記の成形を行うことが効率上好ましい。
樹脂担体としては、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を練り込むか、又は含浸させるかによって幾分異なる。即ち、前者の場合、担体の内部に混入された防虫成分が徐々に表面にブリードして揮散することができるものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、あるいはこれらにカルボン酸エステル等の単量体を重合させて成形したものを挙げることができる。ここでカルボン酸エステル等の単量体は、前記防虫成分の樹脂担体表面からの揮散をコントロールするのに効果的なものであり、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル等が挙げられる。
また、前記のエチレン−ビニルアセテート共重合体のメルトマスフローレイト(MFR)は、5g/10min以上、50g/10min以下であると好ましい。MFRが小さすぎるとブリード調整剤としての効果が期待できなくなり、MFRが大きすぎると樹脂ペレットの物性に与える影響が無視できなくなってしまう恐れがある。
立体状メッシュを構成した樹脂担体の表面に防虫成分を担持させ揮散に供するのであるが、かかる樹脂に上記したポリオレフィン系樹脂やスチレン系熱可塑性エラストマー、あるいはレーヨン等の樹脂を混紡して樹脂担体を改質し、防虫成分の揮散性を調整することもできる。
以下、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を練り込むタイプの薬剤揮散体について詳述する。
本発明で用いる前記の微粉末担体は、樹脂ペレット内に常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を担持するために添加する成分である。例えば、いわゆるホワイトカーボンとよばれる微結晶シリカや微粉末ケイ酸、珪藻土、ゼオライト類、粘度鉱物、木粉等が挙げられる。
更に、前記樹脂組成物の重量調整や物性の調整のために、前記のエチレン−ビニルアセテート共重合体等の樹脂担体の他に、他の樹脂担体を混練させてもよい。他の樹脂担体として、ポリオレフィン系樹脂やスチレン系樹脂を含有してもよい。このポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などがあげられるが、エチレン−ビニルアセテート共重合体やエチレン−メタクリル酸メチル共重合体との親和性から、ポリエチレンが好ましく、成形性の点で特に低密度ポリエチレン、具体的には分岐低密度ポリエチレン(LDPE)、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
前記樹脂担体の配合量は、前記樹脂組成物全体に対して、10質量%以上含有すると好ましく、20質量%以上であるとより好ましい。10質量%未満では、過度なブリードを抑制する効果が不十分になってしまう。一方、上限は90質量%以下であると好ましく、60質量%以下であるとより好ましい。多すぎると、前記樹脂組成物のペレットをマスターバッチとして用い、前記他の樹脂担体と混練して得られた樹脂成形体においてもブリードを抑制しすぎてしまい、本来の目的である常温揮散性ピレスロイド系防虫成分の揮散による防虫効果が過度に低減される恐れを有するためである。本発明によれば、10質量%以上90質量%以下のエチレン−ビニルアセテート共重合体及び/又はエチレン−メタクリル酸メチル共重合体と混練させることにより、得られる樹脂ペレットのブリードを適度な範囲で調整することが可能となる。
上記樹脂組成物は、前記樹脂担体を加熱し、ここに前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分、必要に応じて、微粉末担体や、加熱した他の樹脂担体を混練することにより得られる。そして、これをペレット化して冷却することによりペレットを得ることができる。
ところで、上記の他の樹脂担体は、前記の通り、前記樹脂組成物のペレットの製造段階に含有させてもよく、また、この他の樹脂担体を含有させずに前記樹脂組成物のペレットを成形し、次いで、このペレットを前記他の樹脂担体を用いて希釈し、混練・成形することにより、前記薬剤揮散体を得てもよい。
前記の樹脂組成物からなるペレットは、成形されて薬剤揮散体とする。また、前記の通り、前記の防虫成分含有樹脂ペレットに前記他の樹脂担体が含有されていない場合は、前記防虫成分含有樹脂ペレットを前記他の樹脂担体を用いて希釈し、混練・成形して薬剤揮散体としてもよい。
なお、周縁部は、立体構造体の強度、形状、外部容器等との関係で、適宜決定される。
前記立体構造体1の空隙率、すなわち、この立体構造体1の内容積に対する空間部分の含有割合が、70%以上がよい。70%より少ないと、メッシュ内部の空気の流れが必要以上に妨げられ、メッシュ表面の薬剤の揮散と拡散性が低下するという問題点を有する場合がある。一方、空隙率の上限は、99%が好ましい。99%より多いと、立体状メッシュ構造を維持するための強度が不足するという問題点を有する場合がある。
本発明は、樹脂担体中のブリード性の最適化と、屋外での使用に際し防虫成分が光の影響を受け難い形状を実現することを目的とする。これらの目的を達成するため、前記樹脂フィラメントを断面に切断し、その重心を通る径のうち、最も長い径を最長径(a)、最も短い径を最短径(b)とするとき、最短径(b)が次の条件を満たすことが必要となる。なお、「径」とは、図形の差し渡しの長さのことをいう。
ところで、本発明の薬剤揮散体には、前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分に加えて、特に使用の初期段階における香りの付与と防虫効果の補強を目的として、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分に加えて、飛翔害虫忌避香料組成物を含有することができる。
CH3−COO−R1 (I)
(式中、R1は炭素数が6〜12のアルコール残基を示す。)
R2−CH2−COO−CH2−CH=CH2 (II)
(式中、R2は炭素数が4〜7のアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、又はフェノキシ基を示す。)
前記薬剤揮散体の樹脂担体に担持される前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分の含有量は、使用する防虫成分の種類、使用環境、使用条件などによって変動することから、特に限定されるものではない。しかしながら、防虫効果に必要な防虫成分量を確保し、また防虫成分を練り込んだ後の成形を容易にするため、さらに樹脂担体の表面に防虫成分が過剰にブリードしてベタツキを起こすことを防止するために、0.5〜20質量%の範囲にすることが好ましい。
本発明の薬剤揮散体は、前述したとおり、特に使用の初期段階における香りの付与と防虫効果の補強を目的として、前記飛翔害虫忌避香料組成物を含有することができるが、加えて、より長期間にわたり芳香を持続させうる持続性香料成分、例えば、ガラクソリド、ムスクケトン、エチレンブラシレート、メチルアトラレート等を必要に応じて配合しても構わない。
本発明において、薬剤揮散体は、収納容器に収納されて使用される。この薬剤揮散体を収納するプラスチック容器としては、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を安定的に揮散できるものであれば、特に形状や大きさには限定されないが、揮散効率の点から、開口部の容器に占める比率(開口率)が、容器の全表面積に対し10〜50%の範囲となるようにすることが好ましい。
本発明の薬剤揮散体は、一般的に収納容器に収納後、薬剤非透過性フィルム袋に収容されて市販され、使用時に開袋して用いられる。もちろん、薬剤揮散体のみを薬剤非透過性フィルム袋に収容して市販し、使用時に袋から取り出された薬剤揮散体を収納容器に装填するようにしてもよい。ここで、薬剤非透過性フィルム袋の材質としては、ポリエステル(PET、PBTなど)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアクリルニトリルなどがあげられ、その肉厚は可撓性を損なわない範囲で決定される。なお、ヒートシール性を付与するために、これら薬剤非透過性フィルムの内面をポリエチレンやポリプロピレンフィルム等でラミネートすることもできる。
本発明によって調製される薬剤揮散体は、使用直後からおよそ200日間までのその設計仕様に応じた所定期間にわたり、リビングや和室、玄関などの室内、倉庫、飲食店、工場や作業場内部やその出入り口、鶏舎、豚舎等の畜舎、犬小屋、ウサギ小屋等のペット小屋やその周辺、浄化槽やマンホールの内部、キャンプなどにおけるテント内部やその出入り口、バーベキュー、釣り、ガーデニング等の野外活動場所やその周辺などで、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、ブユ、ユスリカ類、ハエ類、チョウバエ類、イガ類等に対して優れた防虫効果を奏する。また、室内と室外を隔てる窓やベランダ等の場所で、例えばそのフック部をカーテンレール等に引っ掛けたり、物干し竿に吊るして使用すれば、屋外から屋内へのこれら害虫の侵入を効果的に防ぐこともでき、極めて実用的である。
本発明の薬剤揮散体は、前記の構成を有することにより、品質上安定して製造することができる。
まず、使用した薬剤、及び性能の評価方法について説明する。
・メトフルトリン(住友化学(株)製:エミネンス)
・トランスフルトリン(住友化学(株)製:バイオスリン)
・プロフルトリン(住友化学(株)製:フェアリテール)
・微結晶シリカ(EVONIK社製:カープレックス#80、ホワイトカーボン、平均粒子径:15μm、以降「シリカ」と記す。)
・エチレン−ビニルアセテート共重合体(東ソー(株)製:ウルトラセン710、エチレン:酢酸ビニル単位比=72:28、以降「EVA」と記す。)
・低密度ポリエチレン(旭化成(株)製:サンテックLDM6520、以降「LDPE−A」と記す。)
・低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製:ノバテックLDLJ802、以降「LDPE−B」と記す。)
・ポリエチレンテレフタレート((株)ベルポリエステルプロダクツ製:ベルペットIP121B、以降「PET」と称す。)
得られた薬剤揮散体を、25℃の室内で、約1m/秒の風を当て、揮散開始後25日目と30日目の立体構造メッシュ中に含まれる有効成分量をガスクロマトグラフィーによりそれぞれ測定し、1日当りの薬剤揮散量を算出した。
<樹脂ペレットの製造方法>
50℃に加温したメトフルトリン10重量部をシリカ6重量部に担持させた後、これにEVA40重量部、及びLDPE−A44重量部を、(株)テクノベル製:二軸押出し成形機を用いて、120〜140℃で混練・押出成形し、直径3mm、長さ5mmのメトフルトリン含有樹脂ペレットを製造した。
前記メトフルトリン含有樹脂ペレット100重量部とLDPE−B300重量部(着色剤ペレット10重量部を含む)を120〜140℃で混練後、インジェクション成形機に投入し、図1に示す立体構造体からなる薬剤揮散体(10g)を得た。
この立体構造体を構成する矩形波状体11及び補強材12の樹脂フィラメントの断面形状は、1.3mm×1.3mmの正方形で、最短径(b)が1.0mm、最長径(a)/最短径(b)の比率は1.4であった。なお、薬剤揮散体全体の大きさを、150mm×80mm×10mmとした。そして、空隙率は97%であった。
得られた薬剤揮散体を用いて、上記の方法に基づいて、揮散性薬剤の揮散量ならびに揮散時間を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示す常温揮散性ピレスロイド系防虫成分及びその量を用い、樹脂フィラメントの最短径(b)、立体構造体の大きさ及び空隙率を表1に記載の通りにした以外は、実施例1と同様にして、薬剤揮散体を製造した。
得られた薬剤揮散体を用いて、上記の方法に基づいて、揮散性薬剤の揮散量ならびに揮散時間を測定した。その結果を表1に示す。
薬剤含浸体としてPET加工糸を用いてプレーン組織を両面に編成し、この両面を撚り合わせたフィラメントで繋ぎ、厚さ3mmの立体構造編地を作製した。この立体構造体を構成するフィラメント断面の最短径は0.3mmで、立体構造体全体の大きさを150mm×80mmとした。なお、空隙率は81%であった。
メトフルトリン0.25gをアセトン0.25gに溶解した薬液を前記立体構造体に保持させた。得られた薬剤揮散体を用い、上記の方法に基づいて揮散性薬剤の揮散量ならびに揮散時間を測定したところ、平均揮散量は3.4mg/日で、揮散時間は60日であった。
11 矩形波状体
11a 第1頂部
11b 第2頂部
12 補強材
a 最長径
b 最短径
Claims (4)
- 常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を含有する繊維状物からなる立体状メッシュを有する立体構造体からなる薬剤揮散体において、
この立体構造体の空隙率が70〜99%であることを特徴とする薬剤揮散体。 - 前記繊維状物は、樹脂フィラメントからなり、
この樹脂フィラメントの断面形状は、楕円形状又は多角形状であり、
この樹脂フィラメントを断面に切断し、その重心を通る径のうち、最も短い径を最短径とするとき、
その最短径が0.3〜3.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散体。 - 前記樹脂フィラメントは、前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を樹脂担体に混練した後、成形したものであることを特徴とする請求項2に記載の薬剤揮散体。
- 前記繊維状物は、樹脂フィラメントを撚り合わせ、前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を含浸させたものであることを特徴とする請求項2に記載の薬剤揮散体。
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