JP5977073B2 - 飛翔害虫忌避香料組成物を用いた飛翔害虫忌避製品 - Google Patents
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Description
そこで、忌避成分として揮散性の天然精油やその組成成分を用いる試みがいくつか提案されている。例えば、シトロネラ油やその主成分であるシトロネラールが蚊に対して忌避効果を示すことはよく知られており、アメリカではシトロネラ油を有効成分として含有するキャンドルが市販された。しかしながら、キャンドルの熱を利用してシトロネラールを放散させる方法はシトロネラールの揮散効率が悪く、実用的な忌避効果を奏しえない。
また、特開2003−201203号公報(特許文献2)は、害虫忌避成分(A)として、シトロネラールと、ターピネオール、メントール、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、カンフェン等から選ばれる1種又は2種以上とを含み、害虫忌避成分(A)中におけるシトロネラールの含有量が2〜10質量%である害虫忌避剤揮散組成物を開示している。しかしながら、これらの忌避剤は、天然産志向と安全性への配慮を謳っているものの、その忌避効果は長続きせず必ずしも満足のいくものではない。
更に、特開昭61−289002号公報(特許文献3)には、「グリコールエーテル類を有効成分とする節足動物類、軟体動物類並びに爬虫類用忌避剤」が提案され、グリコールエーテル類がゴキブリやダニ類に優れた忌避効果を示す旨記載されているが、その効果は到底十分とは言い難く、しかも飛翔害虫に対する効果は何ら言及されていない。
このように、現在のところ、飛翔害虫忌避効果、更にはこれに加えて芳香の持続性向上を目指した有用な飛翔害虫忌避香料組成物、及びこれを用いた飛翔害虫忌避製品は未だ知られていない。
飛翔害虫忌避成分として、
(a)p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート及びベンジルアセテートから選ばれる1種又は2種以上の香料成分と、
(b)テルピネオール、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、メントール、チモール及びp−メンタン−3,8−ジオールから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を含有し、
更に、前記飛翔害虫忌避成分の揮散後の忌避効果持続成分として、
ジプロピレングリコール及び/又はヘキシレングリコールを配合し、
更に、(a)の(b)に対する配合比率が、0.1〜1.0倍量である飛翔害虫忌避香料組成物を担持体に含有させ、
この担持体から飛翔害虫忌避香料を空間に揮散させて飛翔害虫に対する忌避効果を奏し得るようになしたことを特徴とする飛翔害虫忌避製品。
CH3−COO−R (I)
(式中、Rは炭素数が6〜12のアルコール残基を示す。)で表される酢酸エステル化合物、具体的には、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、及びイソボルニルアセテート等があげられる。
しかるに、本発明者らは、当該グリコール及び/又はグリコールエーテルが溶剤としてのみならず、前記飛翔害虫忌避香料に対して特異的に忌避効果の持続作用を奏し、芳香性の飛翔害虫忌避香料を用いた場合には初期の香調をも持続させ得ることを初めて知見したものである。
なお、グリコール及び/又はグリコールエーテルの飛翔害虫忌避香料に対する配合比率は、0.2〜10倍程度が適当である。
飛翔害虫忌避製品には、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて他の機能性成分を配合してもよく、例えば、殺虫成分や、消臭成分、除菌・抗菌成分等があげられる。殺虫成分としては、常温揮散性ピレスロイド系のエムペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等があげられるが、本発明の趣旨に照らし、配合するとしても極力微量に留めるのが好ましい。消臭成分としては、イネ科、ツバキ科、イチョウ科、モクセイ科、クワ科、ミカン科、キントラノオ科、カキノキ科の中から選ばれる植物抽出物が代表的である。また、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド等を添加してリラックス効果を付与することもできる。
あるいは、飛翔害虫忌避香料組成物を、例えば、マイクロカプセル化したり、サイクロデキストリン化して当該香料組成物の安定化を図ったり、飛翔害虫忌避香料の揮散性を調節することも可能である。
液状製剤の調製に用いる溶剤としては、例えば、水、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ノルマルパラフィンやイソパラフィン等の炭化水素系溶剤等があげられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤を例示することができる。
ここで担持体としては、紙、織布、不織布等の基布、ビスコパール等の多孔質有機成形体、セラミックス等の無機担持体、プラスチック樹脂フィルムや成形体、あるいはシリコーンゴム等があげられるがこれらに限定されない。
プラスチック樹脂フィルムや成形体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、スチレン系ジブロックポリマー、スチレン系トリブロックポリマー等を例示できる。
用いる担持体の種類やその仕様は飛翔害虫忌避香料の揮散性能等を考慮して適宜決定すればよい。
また、本発明の飛翔害虫忌避香料組成物は揮散性のため、プラスチック樹脂フィルムや成形体、あるいはシリコーンゴム等にこれを担持させるにあたっては、必要ならば炭化水素系溶剤と共に樹脂やシリコーンゴムを加熱溶融させた後、できるだけ温度を下げた状態で忌避香料組成物を混和するのが好ましい。
この飛翔害虫忌避香料組成物の30mgを、リング状のシリコーンゴム(1.6g)に溶融含有させ、リストバンド形態の本発明の飛翔害虫忌避製品を得た。
このリストバンドを腕に巻いて外出したところ、8〜12時間にわたり、蚊やコバエ等の飛翔害虫に煩わされることがなく実用的な忌避効果が確認された。また、身体の周囲空間には初期香調のままの芳香が漂い、快適な爽やかさを満喫できた。
[持続性評価試験]
上記飛翔害虫忌避香料と各忌避効果持続成分70mgを含む供試薬剤のアセトン溶液0.5mLを直径15cmの濾紙に含浸後風乾して各供試薬剤処理濾紙を調製した。
プラスチック製円筒(内径20cm、高さ43cm)を設置し、その中に各供試薬剤処理濾紙を置いた。円筒の上に、12メッシュの金網で上下を仕切り供試アカイエカ成虫20匹を放った第二の円筒(内径20cm、高さ20cm)を載せ、更にその上に第三の円筒(内径20cm、高さ43cm)を載せた。時間の経過に伴いノックダウンした供試虫数を数え、KT50値(供試虫数の半数がノックダウンするまでの時間)を求めた。なお、各供試薬剤の持続性を評価するため、供試薬剤処理濾紙の風乾直後のもの(表1中の0h)と、供試薬剤処理濾紙を風乾後別室で4時間揮散させたもの(表1中の4h)の2種類を供した。
試験室内(約6m3)に、蓋をしていないオープン状態のプラスチックカップ(約1L)を2個併設した。片方のプラスチックカップ内にショウジョウバエ誘引源と供試飛翔害虫忌避製品を入れ(処理区)、他方のプラスチックカップ内にはショウジョウバエ誘引源のみを入れた(コントロール区)。4時間後、室内にショウジョウバエ成虫を約100匹を放ち、両区プラスチックカップ内への侵入虫を計数し、次式に従って忌避率を算出した。
忌避率=[(コントロール区の侵入虫数−処理区の侵入虫数)/コントロール区の侵入虫数×100
これに対し、忌避効果持続成分を配合しない比較9や、グリコール及び/又はグリコールエーテル系の忌避効果持続成分を配合しても20℃における蒸気圧が0.2〜20Paの範囲を外れる比較10及び比較11は、忌避効果の持続性が著しく低かった。
従って、飛翔害虫忌避香料と特定の忌避効果持続成分を組合わせた本発明の飛翔害虫忌避製品が高い実用性を有することは明らかである。
スチレン系トリブロックポリマー(Kraton G1650)22部とイソパラフィン炭化水素(アイソパーL)68部を70〜80℃に加温して溶解混合後、これに前記飛翔害虫忌避香料組成物10部を添加混合した。成形容器で固化させて、直径5cm、厚さ0.8cmの板状ゲル体(飛翔害虫忌避香料組成物として700mgを含有)の飛翔害虫忌避製品を得た。
この板状ゲル体を窓ガラスに設置したところ、15〜20日にわたり、蚊やチョウバエ、ユスリカ等が窓ガラスの周囲に近づくことはなかった。
時計バンドの一部に前記忌避香料担持体の収納部を設け、その上面は通気性材質で形成した。この収納部に忌避香料担持体1枚を挿入し、時計バンドを腕に巻いて外出したところ、8〜12時間にわたり、蚊やコバエ等の飛翔害虫に煩わされることがなかった。また、本製品の場合、忌避香料担持体が直接皮膚に触れることがなく、安全性への配慮の面でも好ましかった。
Claims (1)
- 飛翔害虫忌避成分として、
(a)p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート及びベンジルアセテートから選ばれる1種又は2種以上の香料成分と、
(b)テルピネオール、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、メントール、チモール及びp−メンタン−3,8−ジオールから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を含有し、
更に、前記飛翔害虫忌避成分の揮散後の忌避効果持続成分として、
ジプロピレングリコール及び/又はヘキシレングリコールを配合し、
更に、(a)の(b)に対する配合比率が、0.1〜1.0倍量である飛翔害虫忌避香料組成物を担持体に含有させ、
この担持体から飛翔害虫忌避香料を空間に揮散させて飛翔害虫に対する忌避効果を奏し得るようになしたことを特徴とする飛翔害虫忌避製品。
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