JP2014072099A - 端子、端子構造体および端子付きガラス - Google Patents

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敦彦 山田
Nobuki Iwai
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Abstract

【課題】電線等の接続が容易であり、かつ、導体との間の適正な電気的接続状態を維持し得る導体表面取付型の端子を提供する。
【解決手段】端子10は、導体表面200に接着して取り付けられる基部22と、基部22の左右両端部から延在し、基部22の下方に配置された第一電気接点46を有する第一接触子44と、基部22に設けられ、基部22を導体表面200に接着するための接着剤80が充填される開口28と、基部22の後端部から上方に延在する腕部42と、腕部42の上端部42aから基部22の上方において延在し、腕部42の上端部よりも上方に位置する第二電気接点48を有する第二接触子44とを備える。
【選択図】図2A

Description

本発明は、導体の表面に直接取り付けられる端子、その端子を有する端子構造体および端子付きガラスに関する。
従来より、導体を有する表面に取り付けられて同表面に形成した導体に電気接続される表面取付型の端子が知られている。この種の端子は、接着剤により対象物(例えば、プリント基板等)の表面に取り付けられ、端子の電気接点と対象物表面の導体とが主として接着剤の接着作用の下で相互に接続される。
例えば特許文献1は、表面に導体が形成された基板に端子を取り付けるための端子取り付け構造を開示する。特許文献1には、「端子3は、2つの固定部31と、2つの固定部の一方から他方に向けて略平行に延在する複数の弾性部32と、基板1に対して凸となるように弾性部32に設けられ、導体2に電気的に接続された基板接触部33とを備える。固定部31は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ4等の接合手段によって基板1に固着される。また端子3の基板接触部33は、弾性部32の弾性変位による反発力で導電体2に接触している状態で、接着剤5によって基板1に接着されている。」、「端子303は、固定部331と、固定部331から異なる方向(図示例では互いに反対方向)に延びる複数の弾性部332と、基板301に対して凸となるように弾性部332に設けられ、導体302に電気的に接続された基板接触部333とを備える。固定部331は略平板形状に形成され、その基板側表面が両面接着テープ304等の接合手段によって基板301に固着される。また固定部331は、端子303の基板接触部333が弾性部332の弾性変位による反発力で導体302に接触している状態で、接着剤305によって基板301に接着されている。」と記載されている。
また特許文献2は、表面に銀プリントが施されたガラスに対して端子が接着されてなる端子付きガラスを開示する。特許文献2には、「端子14は、2枚の厚さの異なる板により構成され、下面が接着層16に接着される基部17(例えば厚さ0.4mm)と、この基部17から立上げられ雌型端子部18から車内のテレビ等に接続される端子部19(例えば厚さ0.8mm)とからなる。」、「基部17は、両端に銀プリント12に向かって曲げられる弧状の曲げ部21、21を有する。また、接着層16は、端子14の長手方向に沿って図面左から第1の両面テープ22、接着剤23、第2の両面テープ24が配置されることにより構成される。26、26は、端子14の曲げ部21、21が銀プリント12の上面に接触される接点である。即ち、端子14は複数の接点26、26で銀プリント12の上面に接触されている。」と記載されている。
特開2009−105036号公報 特開2010−211924号公報
このように接着剤の接着作用の下で導体表面に取り付けられる導体表面取付型の端子においては、導体表面の反対側に設けられる電気接点への外部からの電線の接続が容易であり、かつ、電気接点を介して端子に外力が作用した場合であっても、端子と導体との間で適正な電気的接続状態を維持し得ることが望まれる。
本発明の一態様は、導体表面に取り付ける端子であって、互いに直交する第1方向および第2方向に延在し、導体表面に接着して取り付けられる基部と、基部の第1方向の端部から延在し、基部の下方に配置された第一電気接点を有する第一接触子と、基部に設けられ、基部を導体表面に接着するための接着剤が充填される開口と、基部の第2方向の端部から上方に延在する腕部と、腕部の上端部から基部の上方において延在し、腕部の上端部よりも上方に位置する第二電気接点を有する第二接触子と、を備える。
また、本発明の別の態様は、導体表面に取り付けられる上記端子と、開口に充填され、基部を導体表面に接着する接着剤と、を備える端子構造体である。
さらに、本発明の別の態様は、ガラスの表面に取り付けられる上記端子と、開口に充填され、基部をガラスの表面に接着する接着剤と、を備える端子付きガラスである。
本発明によれば、端子の第二接触子が腕部の上端部から基部の上方において延在し、腕部の上端部よりも上方に第二電気接点が位置するので、第二電気接点への電線等の接続が容易であり、かつ、第二電気接点を介して端子を引き剥がすような外力が作用した場合であっても、端子と導体との間の適正な電気的接続状態を維持できる。
本発明の第一の実施形態に係る端子構造体の全体構成を示す外観斜視図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子の全体構成を示す外観斜視図であり、端子を斜め前方から見た図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子の全体構成を示す外観斜視図であり、端子を斜め後方から見た図である。 図1のIII−III線断面図である。 図3のIVA−IVA線断面図である。 図3のIVB−IVB線断面図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子の第二接触子にコネクタを接続する手順を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子の第二接触子にコネクタを接続する手順を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子の導体表面への取付手順を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子の導体表面への取付手順を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子の導体表面への取付手順を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子の導体表面への取付手順を説明する図である。 本発明の第一の実施形態に係る端子に作用する応力分布を示す図である。 図7Aの比較例を示す図である。 本発明の第二の実施形態に係る端子の要部構成を示す断面図である。 本発明の第二の実施形態に係る端子の第二接触子にコネクタを接続する手順を説明する図である。 本発明の第二の実施形態に係る端子の第二接触子にコネクタを接続する手順を説明する図である。 本発明の第三の実施形態に係る端子の要部構成を示す断面である。 本発明の第三の実施形態に係る端子による効果を説明する図である。 図2Aの変形例を示す図である。 本発明の実施形態に係る端子が取り付けられるリアガラスを示す図である。 図10の変形例を示す図である。
−第一の実施形態−
以下、図1〜図7Bを参照して本発明の第一の実施形態を説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る端子構造体1を示す外観斜視図である。なお、以下では、図示のように互いに直交する3方向をそれぞれ前後方向(長さ方向)、左右方向(幅方向)および上下方向(上下方向)と定義し、この定義に従い各部の構成を説明するが、これらの方向は、説明をわかりやすくするために便宜上定めたものにすぎない。図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る端子構造体1は、端子10と、導体表面200に端子10を接着する接着剤80と、導体表面200に端子10を仮止めするための両面接着テープ60とを備える。
図2A、図2Bは、本発明の第一の実施形態に係る端子10の全体構成を示す外観斜視図であり、それぞれ端子10を斜め上方および斜め下方から見た図である。図3は、図1の端子構造体1をIII−III線に沿って切断した縦断面図であり、図4A、図4Bは、それぞれ図3のIVA−IVA線、IVB-IVB線に沿って切断した横断面図である。
図2A,図2Bおよび図3に示すように、端子10は、第一の部分10Aと第二の部分10Bとに大別される。第一の部分10Aは、導体表面200に取り付けられる基部22と、第一電気接点26を有する第一接触子24とを含み、全体が左右対称形状を呈する。第二の部分10Bは、基部22から上方に延在する腕部42と、第二電気接点48を有する第二接触子44とを含み、全体が左右対称形状を呈する。
基部22は、上面22aおよび下面22bと、前端部22cおよび後端部22dと、左端部22eおよび右端部22fとを有する略矩形の平板状要素であり、全体が前後方向および左右方向に延在している。基部22は、中央部21と中央部21の左右両側の側部23とを含む。基部22の側部23には、接着剤80が充填される開口28が設けられている。基部22の下面22bには両面接着テープ60が接着され、基部22は、接着剤80と両面接着テープ60とを介して、導体表面200に接着して取り付けられる。なお、両面接着テープ60は、主に基部22の仮止め用として機能する。
側部23には、開口28の周囲にフランジ部27が形成されている。フランジ部27は、開口28よりも前側の第1フランジ部27aと、開口28よりも後側の第2フランジ部27bと、開口28よりも左右中央側(中央部21側)の第3フランジ部27cと、開口28よりも左右外側(第一接触子24側)の第4フランジ部27dとを有する。各フランジ部27a,27b,27c,27dは、開口28の外側において中央部21と同一平面上に形成されている。第3フランジ部27cの一部は開口28の内側に突出し、その突出部の前後両側に、それぞれ切り欠き27eが設けられている。第4フランジ部27dも一部が開口28の内側に突出し、その突出部は下方に折り曲げられ、折り曲げ部27fが形成されている。
開口28は、フランジ部27の内側に供給された固化前の液状の接着剤が粘度に応じて自由に端子底部に流通できるような形状及び寸法を有する。フランジ部27には、開口28を通って固化した接着剤80の少なくとも一部が係合し、接着剤80はフランジ部27を介して所定位置に係止される。
側部23の前端面および後端面にはそれぞれアーム部23aが突設されている。各アーム部23aには、それぞれ側壁29が連設され、アーム部23aを下方に折り曲げた状態で、開口28の下方の前側および後側にそれぞれ側壁29が立設される。側壁29は、流動性を有する接着剤80の流出防止機能を有する。すなわち、側壁29を設けることで、開口28に流動性を有する接着剤を供給する際に、接着剤を端子10の下面22bと導体表面200との間に留め、接着剤が端子10の下面22bより外側に過剰に流出することを防止できる。フランジ部27の折り曲げ部27fと両面接着テープ60も、接着剤80の流出防止機能を有する。
以上のように基部22は、接着剤80により導体表面200に固定され、導体表面200に形成された導体100に対し、第一接触子24の第一電気接点26を適正位置に位置決め固定する基礎部分として機能する。基部22は、全体として、その素材、形状、寸法等に依存して決まる適度な弾性を有することができる。
第一接触子24は、基部22の左右両端部22e,22fからそれぞれ左右方向に延在し、末端25が自由端となる片持ち梁状要素であり、第一電気接点26を有する。第一接触子24は、末端25の近傍で曲折して基部22の第1面22aから突出する方向(下方)へ延びるとともに中間で反転して反対方向(上方)へ延びる略U字形状を有し、この反転領域の外側膨出面が、第一電気接点26として機能する。したがって、各々の第一接触子24は、基部22の第1面22aから突出した位置、すなわち基部22の下方に配置される複数(図では3個)の第一電気接点26を有する。第一接触子24は、その素材、形状、寸法等に依存して決まる適度な弾性を有することができる。
腕部42は、基部22の中央部21の後端部22から略垂直に上方に延設されている。腕部42は、基部22と基部22の上方に配置される第二接触子44とを接続するための接続部として機能する。
図4Bに示すように、第二接触子44は、腕部42の上端部42aから、上端部42aを通り基部22の上面22aに平行な仮想平面PLに対し所定角度θ1で前方かつ斜め上方に延設されている。所定角度θ1は、0°より大きくかつ90°より小さい角度であり、例えば15°以上45°以下とすることが好ましい。図では、θ1を30°としている。
第二接触子44は、略矩形の中央部21の上方に、より具体的には中央部21の左右方向中央かつ前後方向中央位置の鉛直上方に第二電気接点48を有する。図では、第二接触子44に貫通孔48aが設けられている。貫通孔48aには、外部の電線(図示せず)を取り外し自在に接続することができ、この場合には、第二接触子44と外部の電線との接続部(例えば貫通孔48aの周縁部)が第二電気接点48を構成する。第二電気接点48に外部の電線を接続することにより、端子10を介して、外部の電線から導体表面200の導体100に所望の電流を供給することができる。
第二接触子44には、コネクタを接続することもできる。図5A、図5Bは、それぞれコネクタ30を接続する手順の一例を示す図(図5の矢視V図)である。図5Aに示すように、コネクタ30は第二接触子44と嵌合する嵌合部30aを有しており、端子10の斜め上方から矢印Aに示すように第二接触子44に沿って嵌合部30aが挿入される。これにより図5Bに示すように、コネクタ30を介して外部の電線30bが端子10に接続され、第一電気接点26を介して導体100に電流を供給することができる。このとき、第二接触子44のうち、嵌合部30aとの接続部が第二電気接点48を構成する。第二接触子44は斜め上方を向いているので、端子10が導体表面200に取り付けられた状態における第二接触子44へのコネクタ30の挿脱が容易である。
以上のように構成された端子10のうち、第一の部分10Aは、基部22と第一接触子24とが互いに同一の電気導伝性材料から一体に形成される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料をプレス工程により所定形状に打ち抜きかつ折曲することで、基部22と第一の接触子24とを一体に形成できる。第二部分10Bも同様に、腕部42と第二接触子44とが互いに同一の電気導伝性材料から一体に形成される。例えば、所定厚みの1枚の板金材料をプレス工程により所定形状に打ち抜きかつ折曲することで、腕部42と第二接触子44とを一体に形成できる。
なお、第一の部分10Aと第二の部分10Bとを、一体に形成することもできる。例えば、所定厚みの1枚の板金材料をプレス工程により所定形状に打ち抜きかつ折曲することで、第一の部分10Aと第二の部分10Bとを一体に形成することができる。第一の部分10Aを第一部品とし、第二の部分10Bを第二部品とし、両者の外周を重ね合わせて連結して端子10を形成することもできる。例えば、第一の部分10Aと第二の部分10Bを別々の部品としてプレス工程により所定形状に加工し、その後これらの部品を相互にかしめる等して一体化し、端子10を形成することもできる。
端子10の寸法の一例を挙げると、端子10の左右方向の全長は5〜60mm程度、前後方向の全長は3〜20mm程度、上下方向の全長は5〜30mm程度であり、開口28の大きさ(面積)は2〜50mm程度である。
次に、端子10を導体表面200に取り付けて端子構造体1を製造する手順について説明する。図6A〜図6Dは、端子10の取付手順の一例を示す図である。なお、図6A〜図6Dは、図1のIII-III線断面に対応する。
(1)まず、図6Aに示すように、端子10の基部22の中央部21の下面22bに、リリース紙65が付着した両面接着テープ60を貼付する。両面接着テープ60としては、例えば、住友スリーエム株式会社より入手可能なVHB(商標)アクリルフォーム構造用接合テープY4920のような、中間の柔軟な基材層とその両側の粘着剤層との3層構造を有するものを使用できる。この種の両面接着テープ60は、柔軟な基材層の応力分散作用により、両面接着テープ60の面方向に加わるせん断力に抗し、かつ環境温度の変動による端子10の寸法変化を吸収して、端子10の基部22を導体表面200に固定することができる。
(2)次に、図6Bに示すように、両面接着テープ60からリリース紙65を剥離し、両面接着テープ60の接着面60aを露出する。
(3)次に、図6Cに示すように、第一接触子24の複数(例えば、3個)の第一電気接点26を、導体表面200を有する対象物(例えば、プリント基板等)の導体100に対応した位置及び姿勢に配置し、端子10の基部22を両面接着テープ60により導体表面200に接着する。このとき、基部22に適当な押圧力を加えることにより、基部22及び第一接触子24の少なくとも一方を弾性的に撓ませて、個々の第一電気接点26を一様な接触圧力Pで導体100に接触させる。押圧力は、両面接着テープ60の粘着剤層に所要の接着力を発揮させるに十分な大きさであり、接触圧力Pを確保できるように、基部22と第一接触子24の形状寸法、及び両面接着テープ60の厚み等が予め設定されている。
なお、両面接着テープ60は、端子10を導体表面200に恒久的に固定するためのものではなく、接着剤80が固化するまでの間の仮止め機能を発揮できればよい。予め基部の下面22bに両面接着テープ60を貼付するようにしたが、この代わりに、導体表面200における端子10が接着される部位に予め両面接着テープ60を貼付し、その両面接着テープ60に基部20の下面22bを接着するようにしてもよい。
(4)次に、図6Dに示すように、導体表面200を端子10の重力方向下側に配置して、端子10の一対の開口28の各々に、液状の接着剤80を供給する。液状の接着剤80は、その粘度や対象物の導体表面200に対する濡れ性等の特性に依存して、基部22の下面22bと導体表面200との間を流動する。このとき、基部22の下面と導体表面200との間の空間における接着剤80の流動は、フランジ部27と側壁29(図2B)とにより制限される。これにより、液状の接着剤80は、導体表面200に接した状態でフランジ部27と側壁29とで実質的に保持され、摩擦力や表面張力の作用下で開口28の下方領域に留まる。この場合、基部22の下面22bに貼付された両面接着テープ60の左右端面も、接着剤80に対する流動制限機能を発揮する。
このように接着剤80は、フランジ部27と側壁29の形状に応じて流動が制限されるため、これらフランジ部27と側壁29の形状を適宜設定することにより、固化前の接着剤80の流動方向を制限し、接着剤80を所望の形状に固化させることができる。以上のように、基部22の開口28に所定量の接着剤80が供給されると、接着剤80は、摩擦力や表面張力によりフランジ部27に均一に接触しながら、最終的にフランジ部27の上面に乗り上げて、開口28が少なくとも部分的に埋められる。
開口28を少なくとも部分的に埋めた形態で接着剤80が固化すると、図6Dに示すように、フランジ部27の少なくとも一部が固化後の接着剤80に係合する。すなわち、フランジ部27は、固化後の接着剤80に埋め込まれて固定され、接着剤80はフランジ部27との係合により所定位置に係止される。接着剤80は、フランジ部27に接触して固化することで、端子10との十分な接触面積を確保することができ、端子10を導体表面200に強固に固定することができる。
接着剤80が固化した状態では、接着剤80と導体表面200との接着力及び両面接着テープ60による補助的な接着力により、第一接触子24が弾性的に撓んだ状態に維持される。その結果、個々の第一電気接点26とこれに対応する導体表面200の導体100との間に所望の接触圧力Pが作用し続け、環境温度の変動や導体表面200の振動等に拘わらず、第一電気接点26と導体100との適正な接続状態を長時間に渡り安定して維持できる。
(5)以上で、端子10が導体表面200に取り付けられ、端子構造体1の製造が完了する。その後、端子10の第二接触子44の第二電気接点48に電線が取り付けられ、あるいは、図5Bに示すようにコネクタ30が挿入され、端子10を介して導体100に所望の電流が供給される。
以上のように構成された端子構造体1の導体表面200への取付強度について説明する。図7Aは、端子10の第二電気接点48に、導体表面200に対し垂直方向すなわち上方に引張力Fを加えた場合における端子構造体1の左右方向中央部底面1a(両面接着テープ60の下面60a)と導体表面200との間に作用する引き剥がし方向の応力(引き剥がし応力f)の分布を模式的に示す図である。図7Bは、図7Aの比較例であり、腕部42が鉛直上方に延設され、腕部42に第二電気接点48が形成されている。図7A,図7Bでは、導体表面200との接着部位のうち、前端部、前後方向中央部、および後端部の引き剥がし応力fを、それぞれf1、f2、f3で表す。以下では、端子10の各部分が十分な強度を有するものとして説明する。
図7A示すように、基部22の中央部上方の第二電気接点48に上方への引張力Fが作用すると、引剥がし応力fは、端子構造体1の底面1a全体にほぼ均一に生じる。このため、各部に作用する引き剥がし応力fは互いに等しくなり、端子構造体1は、導体表面200から引き剥がされにくい。
一方、図7Bに示すように、基部22の後端部上方の第二電気接点48に上方への引張力Fが作用すると、引剥がし応力fは前端部から後端部へいくに従い徐々に大きくなる(f1>f2>f3)。このため、端子構造体1の底面1aは、後端部において導体表面200から引き剥がされやすい。端子構造体1の後端部が導体表面200から引き剥がされると、端子構造体1の底面1aと導体表面200との接触面積が減少するため、端子構造体1は、より引き剥がされやすくなる。
本実施形態では、端子構造体1に液状の接着剤80を用いたが、接着剤80として好ましくは、硬化又は固化することで対象物の導体表面200に端子10を強固に固定した状態に保持する接着力を発揮できるものであって、化学的に架橋反応が起こり、緻密な3次元網目を形成する樹脂タイプのものが用いられる。このような樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、光硬化型アクリル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド、シアノアクリレート、尿素樹脂等の、室温硬化型又は熱硬化型樹脂が挙げられる。接着剤80として、エポキシ系樹脂のような室温硬化型樹脂を使用した場合は、熱を加えずに常温で作業できるので、端子10や導体表面200が熱による影響を受けない点で好ましい。紫外線硬化樹脂や熱可塑性樹脂等の、他の樹脂タイプのものを接着剤80に用いることもできる。なお、本明細書では、狭義の硬化及び固化を「固化」と総称する。
本実施形態では、両面接着テープ60を用いて基部22を導体表面200に固定することにより、端子10を導体表面200に仮止めした。この構成によれば、両面接着テープ60により基部22を導体表面200に固定すると同時に、個々の第一電気接点26とこれに対応する導体100との間の接触圧力Pを確保でき、かつ接触圧力Pを長時間に渡って維持できる。したがって、例えば、接着剤80として室温硬化型樹脂のような固化までに時間を要する樹脂を使用した場合においても、接着剤80が固化するまで待機する必要がなく、スムーズに次工程に移行できる。なお、両面接着テープ60の代わりに、他の接着剤や治具等を用いて端子10を導体表面200に仮止めすることもできる。
両面接着テープ60等の仮止め部材を、電気絶縁性を有する材料によって構成することもできる。この構成によれば、導体表面200の導体100から電気的に独立した他の導体(図示せず)が存在する場合に、この他の導体の上に、電気絶縁性を有する仮止め部材を介して端子10の基部22を配置することができる。したがって、例えば多数の導体100が導体表面200に高密度に配置されている場合であっても、導体表面200に端子10を容易に取り付けることができる。電気絶縁性の両面接着テープ60としては、汎用の安価なものを利用できる。端子10と導体100以外の導体との絶縁を考慮する必要がない場合には、導電性の仮止め部材を使用することができる。この構成によれば、例えば、導電性の仮止め部材を介して端子10を導体100の他の部分に接続することができるので、端子10と導体100との間の導通経路を増加させて、接続信頼性を向上させることができる。
本実施形態では、端子10の基部22に導体表面200に向かう押圧力を加えることにより、第一接触子24の複数の第一電気接点26を一様な接触圧力Pで導体100に接触させた。この構成によれば、第一接触子24における外側膨出面からなる第一電気接点26の形状と相乗して、第一電気接点26と導体100との間に比較的高い接触圧力Pを生じさせることができる。したがって、導体100と第一電気接点26とが接圧下で摺動するいわゆるワイピング作用を発生させることなく、第一電気接点26や導体100の表面に形成される酸化膜を突き破って、第一電気接点26と導体100との間の安定した電気的接続を確保することができる。
本実施形態の端子10は、基部22の左右方向両端部に一対の第一接触子24を備え、これら第一接触子24がそれぞれ複数の第一電気接点26を有するものとした。この構成によれば、第一電気接点26を有する個々の第一接触子24が互いに独立して弾性変形することができる。したがって、例えば導体表面200が曲面形状である場合であっても、各々の第一電気接点26を所要の接触圧力Pの下で、対応する導体100に安定して接触させることができる。また、各第一接触子24が櫛刃状の複数(図では3個)の第一電気接点26を有するので、各々の第一電気接点26を流れる電流が減少し、発熱を抑えることができる。これにより、第一電気接点26の放熱効果を向上させることができる。
本実施形態では、基部22に設けた開口28に液状の接着剤80を供給し、固化した接着剤80により基部22を導体表面200に固定するようにした。この構成によれば、第一接触子24を導体表面200の導体100に直接接合する必要がない。このため、例えば、環境温度の変動により端子10の寸法が変化したときに、第一電気接点26が、導体100の表面に沿って適正な接触状態を維持しながら摺動できる。したがって、端子10に寸法変化が生じた場合であっても、端子10や導体表面200に不所望な応力が作用することを防止することができ、端子10と導体100との間の安定した電気接続状態を維持できる。
第1の実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係る端子10は、前後左右方向に延在し、導体表面200に接着して取り付けられる基部22と、基部22の左右両端部から延在し、基部22の下方に配置された第一電気接点26を有する第一接触子24と、基部22に設けられ、基部22を導体表面200に接着するための接着剤80が充填される開口28と、基部22の後端部から上方に延在する腕部42と、腕部42の上端部42a(図4B)から前方、すなわち基部22の上方において延在し、腕部42の上端部42aよりも上方に位置する第二電気接点48を有する第二接触子44とを備える。
これにより、例えば第二接触子44が基部22に平行な仮想平面PL(図4B)に沿って延在するときよりも、第二電気接点48が導体表面200から離れて位置する。このため、端子10を導体表面200に取り付けた後に、第二接触子44に外部からの電線を容易に接続することができる。また、基部22の上方に第二電気接点48が配置されるため、腕部42の鉛直上方に第二電気接点48が配置される場合(図7B)に比べ、第二電気接点48に引張力F(図7A)が作用した場合に、端子10と導体100との間で適正な電気接続状態を維持できる。
(2)第二電気接点48は、基部22の前後方向および左右方向の中央部上方に設けられるので、端子10の底面10aにおける引き剥がし応力fが均一に分布し、垂直方向の引張力Fに抗して端子10を安定的に導体表面200上に固定することができる。
(3)第二接触子44を、腕部42の上端部から所定角度θ1で斜め上方に延設するようにしたので、第二接触子44にコネクタ30(図5A)を容易に挿入することができる。
(4)端子10の開口28に接着剤80を充填し、端子10の基部22を導体表面200に接着するようにしたので、第二電気接点48への外部の電線の接続が容易であり、かつ、導体表面200への取付強度が高い端子構造体1を構成することができる。
(5)端子10を両面接着テープ60によって導体表面200に装着するようにしたので、端子10を仮止めして第一電気接点26を所定の接触圧力Pで導体100に接触させた状態で、接着剤80を固化することができ、端子構造体1の製造が容易である。
−第二の実施形態−
図8〜図9Bを参照して本発明の第二の実施形態を説明する。以下では、第一の実施形態との相違点を主に説明する。第二の実施形態が第一の実施形態と異なるのは、腕部42と第二接触子44とを有する端子10の第二の部分10Bの構成である。
図8は、第二の実施形態に係る端子10および端子構造体1の要部構成を示す断面図である。なお、図8は、第一の実施形態の図4Bに対応する図であり、図4Bと同一の箇所には同一の符号を付している。図8に示すように、腕部42は、基部22の前後両端部22c,22dからそれぞれ上方に延在する一対の腕部42A,42Bを有し、第二接触子44は、一対の腕部42A,42Bの上端部42aからそれぞれ延在する一対の第二接触子44A,44Bを有する。なお、腕部42A,42Bと第二接触子44A,44Bの幅(左右方向長さ)は、第一の実施形態の腕部42および第二接触子44の幅とそれぞれ同一である。
前側の第二接触子44Aは、腕部42Aの上端部42aから後方に延在した後、基部22の前後方向中央部上方において上方に向けて折り曲げられている。後側の第二接触子44Bは、腕部42Bの上端部42aから前方に延在した後、基部22の前後方向中央部上方において上方に向けて折り曲げられている。第二接触子44Aの後面は第二接触子44Bの前面に当接し、この接続部49において、各第二接触子44A,44Bにはそれぞれ貫通孔48aが開口され、貫通孔48aにより第二電気接点48が構成されている。なお、溶接等により、第二接触子44A,44Bを当接部で接合するようにしてもよい。
第二の実施形態に係る端子10の第二電気接点48には、外部からの電線やコネクタが接続される。図9A,図9Bは、それぞれコネクタ30を接続する手順の一例を示す図である。図9Aに示すように、コネクタ30の嵌合部30aは、端子10の上方から矢印Aに示すように第二接触子44に沿って挿入される。これにより図9Bに示すように、コネクタ30を介して外部の電線30bが端子10に接続される。
第二の実施形態においては、端子10の第二接触子44が上方を向いているので、第一の実施形態に比べ、コネクタ30の挿入が一層容易である。また、第二電気接点48は、一対の腕部42A,42Bから延在する一対の第二接触子44A,44Bに形成されるので、第二電気接点48に上方への引張力Fが作用した場合に、その引張力Fは一対の腕部42A,42Bに均等に分散される。このため、端子構造体1の底面1aと導体表面200との間の引き剥がし応力fが、より均一に分布することとなり、端子10を導体表面200上に強固に固定することができる。
−第三の実施形態−
図10,図11を参照して本発明の第三の実施形態を説明する。以下では、第一の実施形態との相違点を主に説明する。第三の実施形態が第一の実施形態と異なるのは、端子10の第二の部分10Bの構成、とくに腕部42の構成である。
図10は、第三の実施形態に係る端子10および端子構造体1の要部構成を示す断面図である。なお、図10は、第一の実施形態の図4Bに対応する図であり、図4Bと同一の箇所には同一の符号を付している。図10に示すように、腕部42は、基部22の後端部22dから基部22側に斜め上方に傾斜して延設されている。腕部42と基部22の上面22aとのなす角度θ2は、0°より大きく90°より小さい角度であり、45°以上75°以下の範囲内に設定することが好ましい。図では、θ2は60°である。図10には、腕部42が傾斜していない端子10を比較例として点線で示している。
第二の実施形態の端子10は、腕部42を前方に傾斜させたことにより、腕部42の上端部42aが前方に移動している。これにより、腕部42の上端部42aから第二電気接点48までの前後方向の距離、すなわち第二電気接点48に作用する上方への引張力Fに対するモーメントアームLM1が、腕部42が傾斜しない場合(点線)のモーメントアームLM2よりも短くなる。モーメントアームが短いと、腕部42の上端部42aを支点にした引張力Fによる回転トルク(=モーメントアーム×引張力)が軽減され、端子10の変形を抑制できる。
これに対し、モーメントアームが長いと回転トルクが大きくなり、端子10が変形しやすい。端子10が変形すると、図11に示すように、仮想平面PLと第二接触子44との間のなす角θ1が大きくなり、引張力Fが作用する位置が後方にずれる。その結果、端子構造体1の端面1aと導体表面200との間の引き剥がし応力fが、端子10の後部側において大きくなり、端子10が引き剥がされやすくなる。
(変形例)
図12は、本発明の端子10の一変形例を示す斜視図である。なお、図2Aと同一の箇所には同一の符号を付している。図12では、接着剤80が充填される左右一対の開口28が円形状であり、開口28の周囲に全周にわたってフランジ部27が形成されている。これにより、接着剤80が開口28の全周にわたって均一にフランジ部27に係合し、端子10の取付強度を高めることができる。この場合、開口28の径が小さすぎると、接着剤80の強度が弱く、接着剤80自体が破損するおそれがある。そこで、開口28の直径は2mm以上であることが好ましい。なお、開口28の形状は矩形状、円形状以外であってもよい。
上記各実施形態の端子10は、例えば自動車のリアガラスに取り付けることができる。図13は、自動車のリアガラス50(端子付きガラス)の内表面を示す正面図である。図13に示すように、リアガラス50には、曇り止め用の電熱線51が配設されている。電熱線51は、例えばガラス板に導電性ペーストを所定パターンで印刷することにより形成される。電熱線51は左右両端部の導体部52に接続され、導体部52にそれぞれ端子10が接着され、端子付きガラスとされている。端子10の第二電気接点48には、例えばコネクタを介して不図示の電源ケーブルが接続されている。これにより端子10を介して電熱線51を電流が流れ、電熱線51が発熱する。
このような端子付きガラスにおいては、半田を用いることなく、接着剤80により端子10を安定的にリアガラス50に取り付けることができる。また、第二接触子44はリアガラス50から離れる方向に傾斜して設けられるため、第二電気接点58への電源ケーブルの接続が容易である。上記各実施形態の端子10は、プリント配線板等の基板に表面実装することもできる。また、アルミニウムや導電性セラミックスのような、半田による接合が困難な導体表面に対しても、端子10を容易かつ確実に接続することができる。
なお、上記実施形態では、各部の構成を説明するにあたり、前後方向(第2方向)、左右方向(第1方向)および上下方向を定めたが、端子10の実際の取付状態がこれらの方向に限定されるものではない。上記第一および第三の実施形態では、端子10の第二接触子44を腕部42の上端部42aから基部22側に斜め上方に延設し、腕部42の上端部42aよりも上方に第二電気接点48を設けた。また、上記第二の実施形態では、一対の腕部42A,42Bの上端部42aから一対の第二接触子44A,44Bを上方に延設し、腕部42の上端部よりも上方に第二電気接点48を設けた。このように腕部42の上端部42aよりも上方に第二電気接点48を設けるのであれば、腕部42および第二接触子44の構成は上述したものに限定されない。
上記実施形態では、端子10の基部22の左右両端部に第一接触子24を設けたが、左右いずれか一方のみに第一接触子24を設けるようにしてもよい。上記実施形態では、両面接着テープ60によって端子10を導体表面200に接着するようにしたが、両面接着テープを省略することもできる。上記第三の実施形態(図10)では、腕部42を基部22側に傾斜させるとともに、第二接触子44も基部22側に傾斜させるようにしたが、モーメントアームを短くして引張力Fに対する強度を高める点からすれば、図14に示すように腕部42のみを基部22側に傾斜させ、第二接触子44を基部22の上面22aに対して平行に設けるようにしてもよい。上記実施形態では、端子10を左右対称形状となるように構成したが、端子10は左右非対称であってもよい。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態および変形例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。すなわち、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能である。
1 端子構造体
10 端子
22 基部
24 第一接触子
26 第一電気接点
28 開口
42,42A,42B 腕部
44,44A,44B 第二接触子
48 第二電気接点
49 接続部
50 リアガラス
60 両面接着テープ
80 接着剤
200 導体

Claims (10)

  1. 導体表面に取り付ける端子であって、
    互いに直交する第1方向および第2方向に延在し、前記導体表面に接着して取り付けられる基部と、
    前記基部の前記第1方向の端部から延在し、前記基部の下方に配置された第一電気接点を有する第一接触子と、
    前記基部に設けられ、前記基部を前記導体表面に接着するための接着剤が充填される開口と、
    前記基部の前記第2方向の端部から上方に延在する腕部と、
    前記腕部の上端部から前記基部の上方において延在し、前記腕部の上端部よりも上方に位置する第二電気接点を有する第二接触子と、を備える端子。
  2. 前記第二接触子は、前記腕部の上端部から斜め上方に延設されている請求項1に記載の端子。
  3. 前記腕部は、前記基部の前記第2方向の両端部からそれぞれ上方に延在する一対の腕部を有し、
    前記第二接触子は、前記一対の腕部の上端部からそれぞれ延在する一対の第二接触子であって、前記基部の上方において互いに接続される一対の第二接触子を有し、
    前記第二電気接点は、前記一対の第二接触子が互いに接続する接続部に設けられている請求項1または2に記載の端子。
  4. 前記腕部は、前記基部の前記第2方向の端部から前記基部側に斜め上方に延設されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子。
  5. 前記開口は、略円形である請求項1〜4のいずれか1項に記載の端子。
  6. 前記開口の直径は、2mm以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の端子。
  7. 導体表面に取り付けられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の端子と、
    前記開口に充填され、前記基部を前記導体表面に接着する接着剤と、を備える端子構造体。
  8. 前記端子は、両面接着テープによって前記導体表面に装着されている請求項7に記載の端子構造体。
  9. ガラスの表面に取り付けられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の端子と、
    前記開口に充填され、前記基部を前記ガラスの表面に接着する接着剤と、を備える端子付きガラス。
  10. 前記端子は、両面接着テープによって前記ガラスの表面に装着されている請求項9に記載の端子付きガラス。
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