JP2014071288A - スクリーン - Google Patents

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Abstract

【課題】映像を明るく表示することができるとともにコントラストも向上させることができ、いずれの側からも反対側の視認性に優れるスクリーンを提供する。
【解決手段】映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示するスクリーンであって、透光性を有するシート状の基材層と、基材層の一方の面に形成され、光を散乱する光散乱層と、を備え、光散乱層は、基材層の一方の面に沿って複数並べて配置され、光を透過する光透過部と、複数の光透過部間に配置され、光を散乱する光散乱部と、を有し、光散乱部は、スクリーンのスクリーン面を鉛直とする姿勢としたとき、観察者側となる半分及び下半分の少なくとも一方が、他方側半分よりも光を散乱させる材料の分散濃度が大きくなるように構成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、映写機から投射された映像光を視認可能に表示するスクリーンに関する。
通常、映写機から投射された映像光を視認可能に表示するスクリーンは、反射型、透過型を問わず映写機から投射された映像光を表示することを目的としており、観察者からみてスクリーンの反対側(背面側)を観察することができない。透過型のスクリーンでは背面から投射された映像光を観察者側(正面側)に透過することにより映像を表示するので背面側からの光を透過することは可能である。しかしながらこのような透過型のスクリーンでは、映像光の視野角を広げること等を目的として表面に凹凸が設けられたり、光拡散層が設けられており、光の透過は可能であるが背面側の様子を観察することはできない。
特許文献1には、このような透過型のスクリーンに対して複数の孔を開ける等して透視性を有する部分を形成し、スクリーンの背景を視認することができる技術が開示されている。
また、特許文献2には、光を透過可能な単位プリズム形状と、複数の単位プリズム形状の間に配置される光吸収部と、裏面側に設けられて映像光を反射するとともに裏面からの光を透過可能な反射透過層と、が具備された半透過型反射スクリーンが開示されている。これによれば、単位プリズム形状を透過した映像光を反射透過層で反射させて観察者側に提供することによりスクリーンとして機能するとともに、プリズム形状を通して背面側の様子を観察することができるとされている。
特開2006−133636号公報 特開2006−243693号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている構成のスクリーンでは、外光も映像光と同様に拡散してしまうためコントラストが低下する問題があった。これに対して特許文献2に開示されているような構成のスクリーンでは、光吸収部が具備されているので外光を吸収することができ、コントラストを向上させることは可能であるが、本来観察者側に提供されるべき光も多く吸収してしまい、表示させるべき映像光や背面側の様子を観察する際に明るさが不足するという問題があった。
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、映像を明るく表示することができるとともにコントラストも向上させることができ、いずれの側からも反対側の視認性に優れるスクリーンを提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示するスクリーンであって、透光性を有するシート状の基材層と、基材層の一方の面に形成され、光を散乱する光散乱層と、を備え、光散乱層は、基材層の一方の面に沿って複数並べて配置され、光を透過する光透過部と、複数の光透過部間に配置され、光を散乱する光散乱部と、を有し、光散乱部は、スクリーンのスクリーン面を鉛直とする姿勢としたとき、観察者側となる半分及び下半分の少なくとも一方が、他方側半分よりも光を散乱させる材料の分散濃度が大きくなるように構成されている、スクリーンである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスクリーンにおいて、光透過部は所定の断面を有して一方向に延びる形状を有し、光散乱部は複数の光透過部間に配置されることにより所定の断面を有して光透過部と同じ方向に延びる形状を備えており、光散乱部はその延びる方向に直交する断面において、光散乱層の厚さ方向の一方側半分と他方側半分とで観察者側に配置されるべき一方側半分に含まれる光を散乱させる材料の分散濃度が、背面側となる他方側半分の分散濃度よりも大きくなるように構成されている。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のスクリーンにおいて、光透過部は所定の断面を有して一方向に延びる形状を有し、光散乱部は複数の光透過部間に配置されることにより所定の断面を有して光透過部と同じ方向に延びる形状を備えており、光散乱部はその延びる方向に直交する断面において、スクリーンのスクリーン面を鉛直とする姿勢としたとき、光散乱層の層面に沿った方向の一方側半分と他方側半分とで下側となる前記一方側半分に含まれる光を散乱させる材料の分散濃度が、上側となる他方側半分の分散濃度よりも大きくなるように構成されている。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーンにおいて、光散乱部の光を散乱させる材料は白色又は銀色の顔料であり、散乱反射により光を散乱する。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーンにおいて、光散乱部には透明の樹脂と、該透明の樹脂とは屈折率が異なる粒子状の光散乱剤と、が充填され、光を散乱させる材料は粒子状の光散乱剤であり、光散乱部中を光が透過することにより光を散乱する。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のスクリーンにおいて、光透過部は光を散乱させることなく透過する材料により構成されている。
ここに「光を散乱させることなく透過する」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、材料中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載のスクリーンにおいて、少なくとも一方の最表面にはさらにハードコート性、防汚性、帯電防止、及び撥水性のうち少なくとも1つの機能を備えた層が積層されている。
本発明によれば、映像を明るく表示することができるとともに、外光の影響を減らすことができ、コントラストを向上させることができる。従って映像光や背面側の視認性にも優れたスクリーンとなる。
第一実施形態にかかるスクリーン100を説明する斜視図である。 スクリーン100の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 光散乱層を拡大して示した図である。 光散乱層の製造過程の一場面を表した図である。 変形例であるスクリーン100’の光散乱層を拡大して示した図である。 第二実施形態にかかるスクリーン200を説明する斜視図である。 スクリーン200の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第三実施形態にかかるスクリーン300を説明する斜視図である。 スクリーン300の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第四実施形態にかかるスクリーン400を説明する斜視図である。 スクリーン400の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 実施例における装置の配置を説明する図である。 実施例における装置の配置を説明する他の図である。
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明は当該実施形態に限定されるものではない。また、以下に示す各図では、分かりやすさのため形状を誇張して記載することがあり、見やすさのため繰り返しとなる符号は省略することがある。
[反射スクリーン]
<固定型反射スクリーン>
図1は第一実施形態にかかるスクリーン100の斜視図であり、映写機10と併せて示した。本実施形態のスクリーン100は、反射型のスクリーンのうち、常設されるタイプのもの(固定型反射スクリーン)である。従ってスクリーン100は図1からわかるようにAで表した観察者の側が正面となり、正面側に映写機10が設置され、これとは反対側(背面側物体Bが存在する側)が背面側となる。
図2は、スクリーン100を設置した姿勢(すなわち、スクリーン面を鉛直に立てた姿勢)において図1にII−IIで示した線に沿った鉛直方向におけるスクリーン100の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
スクリーン100は、背面側からパネル111、該パネル111に貼合された積層体112を備えている。そして積層体112は、背面側から接着層113、光散乱層114、基材層117、接着層118、ハードコート層119を備えている。以下、スクリーン100を構成するこれらの構成要素について説明する。図2では、図2の紙面左が背面側、紙面右が正面側(観察者側)、紙面上方が天、紙面下方が地となる。
パネル111は、ガラスパネルや樹脂パネル等、透光性を有する板状のパネルである。従って、パネル111を構成する部材としては公知の板ガラスや樹脂パネルを用いることができる。これにより固定型のスクリーンとして安定した設置が可能となる。
接着層113は、パネル111に積層体112を接着するための層である。接着層113を構成する材料としては、パネル111に積層体112を接着できるものであれば特に限定されず、公知の粘着剤、接着剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。接着層113を構成する材料としては、例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物とを組み合わせた粘着剤を挙げることができる。ただし、接着層113を構成する材料は、スクリーン100の性質上、透光性、耐候性に優れることが好ましい。
接着層113の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層113が薄過ぎるとパネル111と積層体112との密着性が低下する虞がある。また、接着層113が厚過ぎると接着層113の厚さを均一にすることが困難になる。
光散乱層114は光透過部115及び光散乱部116を有し、図2に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する。すなわち、図2に表れる断面を有して光透過部115及び光散乱部116がスクリーン面に沿った一方向に延びるように配置されるとともに、該一方向とは異なる方向のスクリーン面に沿って複数の光透過部115が配列されている。そして光散乱部116は光透過部115の間に配置されている。図3には光散乱層114の一部を拡大した図を示した。
光透過部115は、光を散乱させることなく透過する部位であり、光透過部115のうち基材層117側の面とその反対側面(接着層113側の面)とは平行に形成されている。これによって、後に説明するようにスクリーン100を通して背面側の景色が見やすくなる。ここに「光を散乱させることなく透過する」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、材料中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
光透過部115を構成する材料としては、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
光散乱部116は、隣り合う2つの光透過部115間に形成される部位である。すなわち、上記したように光透過部115はシート面に沿った方向に所定の間隔で並列され、光透過部115間には、台形断面を有する凹部が形成されている。本実施形態における凹部は、パネル111側(背面側)に長い下底、基材層117側(正面側)に短い上底を有する台形状の断面を有した溝であり、ここに光散乱部116を構成する材料が充填されることにより光散乱部116が形成されている。従って光散乱部116も凹部に沿った台形断面を具備している。
光散乱部116は、ここに照射された光を散乱反射することができるように構成された層である。そのため、光散乱部116には光を散乱反射するための材料が充填されている。そのための材料は特に限定されることはないが、例としては、白色顔料や銀色顔料等の光散乱剤を混ぜた硬化性樹脂が挙げられる。白色顔料は、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。銀色顔料としては、例えば、アルミニウム、クロムなどの金属が挙げられる。これにより効率よく光を散乱反射させることができる。また、硬化性樹脂は光透過部115を構成する材料と同様のものを用いることができる。
また、光散乱部116を透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料で構成してもよい。透明なバインダー樹脂としては光透過部115と同様なものを用いることができる。一方、当該透明な散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、ガンツ化成株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、散乱剤は中空粒子にすることも可能である。
なお、光散乱部116の屈折率は光透過部115の屈折率と同じであることが好ましい。これにより光透過部115と光散乱部116との界面における屈折、及びこれによる波長分散を防止することができ、画面に観察される虹状のムラ(模様)の発生を抑制できる。ここで屈折率が同じであるとは、界面における一方と他方とを構成する材料間で屈折率差が0以上0.14以下であることを意味する。
上記のように光散乱部116は光を散乱反射させることができるように構成されている一方、光散乱部116は1つの光散乱部116内で光拡散性能が部位によって異なるように構成されている。具体的には次の通りである。
本実施形態では図2、図3からわかるようにスクリーン100の厚さ方向において、クスリーンとして用いられた姿勢で観察者側となる部位116aよりも、背面側となる部位116bの方が光を散乱させる程度が低くなるように構成されている。すなわち本実施形態では、光散乱部116の長手方向に直交する断面において、スクリーンの厚さ方向で一方側となる半分よりも他方側となる半分の方が光散乱性能が低くなるように構成されている。
そのための具体的な手段例としては、光散乱部116の当該断面において、光を散乱させる材料の分布濃度を不均一にすることを挙げることができ、本実施形態では、例えば部位116bには上記した光散乱剤を含有させない、又は光散乱剤の分散濃度を部位116aに対して低くすることを挙げることができる。その他、部位116aと部位116bとを明確に分けることなく、光散乱層116の観察者側から背面側に向けて連続的、又は段階的に光散乱剤の濃度分布を減らしてもよい。このときの光散乱剤の一方側半分の光散乱剤の分散濃度と他方側半分の光散乱剤の分散濃度との濃度差は、5質量%以上が好ましく、さらに好ましくは10質量%以上である。
このように、光散乱部116を構成することにより後で詳しく説明するように、外光を背面側に透過させる量を増加させることができる。
光散乱部116の台形断面のうち脚部を構成する斜辺の、スクリーン面法線に対する角度θ(図3参照)は、0°以上20°以下であることが好ましい。スクリーン面法線に対する角度θが0°未満(本実施形態でθが負であるとは、図2、3に表れる断面において、光散乱部116の基材層117側の底の幅よりパネル111側の底の幅が短い形状となることを意味する。)になるように光散乱部116を形成するとすれば、光散乱層114を形成する際に用いる金型の作製が困難になり、金型を作製したとしてもこれにより成形した材料の離型性が悪くなる。一方、θが大き過ぎると2つの光透過部115間に形成される凹部の開口幅に対する凹部の深さのアスペクト比を大きくすることが困難となり、光散乱層114による所望の効果が低減する虞がある。
ただし、光透過部及び光散乱部の形状は図2に例示した形態に限定されない。光透過部は基材層側(観察者側)の面とその反対側(背面側)の面とが平行に形成されていることが好ましい。従って、図2、3に表れる断面に相当する断面において、光透過部及び光散乱部は長方形(θ=0°のとき)であってもよく、上記光散乱部の台形の脚部に相当する部分が曲線状(当該曲線の接線が各部において上記θと同じ条件であることが好ましい。)や折れ線状(折れ線を構成する各線が上記θと同じ条件であることが好ましい。)であってもよい。
また、散乱反射をさせ易くするという観点から光散乱部116と光透過部115との界面のうち観察者側の部位(部位116a)を微小な凹凸が無数に形成された面であるマット面としてもよい。
光散乱部116が並列されるピッチは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。光散乱部116のピッチが狭すぎると、光散乱層114による後述の効果である外光の透過機能が低減する虞があるとともに、微細形状になるので加工が困難になる。一方、光散乱部116のピッチが広すぎると、金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。また回折現象により波長が分散して進行してに虹状のムラを生じることがあることから、ピッチは100μm以上が好ましく、さらに好ましくはランダムである。
光散乱部116の断面のうち、パネル111側(背面側)の幅は特に限定されないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。この幅が狭すぎると微細形状になるので加工が困難になる。一方、この幅が広すぎると金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。
光散乱層114の厚さは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。光散乱層114が薄過ぎると光散乱部116の高さ(厚さ方向大きさ)が不足して所望の光学的効果が低減してしまったり、光散乱部116の加工自体が困難になったりする虞がある。一方、光散乱層114が厚過ぎると逆に光散乱部116が高くなりすぎ、そのための金型の製造、及び金型からの材料の離型性が低下し、生産性が悪くなる虞がある。
図2に戻り、基材層117について説明する。基材層117は、光散乱層114を形成するための基材となる層である。
従って基材層117は、透光性を有するとともに光散乱層114の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層117を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
基材層117の厚さは特に限定されないが、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層117の厚さがこの範囲を外れると、加工性に問題を生じる虞がある。例えば、基材層117が薄過ぎればしわが生じやすくなる。また、基材層117が厚過ぎれば、スクリーン100を製造する工程のうち中間工程において巻き取りが困難になる。
ここで基材層114の屈折率は光散乱層114の光透過部115の屈折率とと同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が偏向されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。
接着層118は、ハードコート層119を基材層117の面のうち光散乱層114とは反対側の面に貼り付けるための層である。接着層118に用いられる材料は特に限定されることはないが、上記の目的を有し、透光性を備えていれば各種材料を用いることができる。これには例えば公知の粘着剤、接着剤、紫外線硬化樹脂、電離放射線硬化樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物を組み合わせた粘着剤を挙げることができる。
接着層118の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層118が薄過ぎるとハードコート層119と光散乱層114との密着性が低下する虞がある。また、接着層118が厚過ぎると接着層118の厚さを均一にすることが困難になる。
ハードコート層119は、表面保護を目的として、スクリーン100のうちパネル111とは反対側の最表面に設けられる層である。ハードコート層119は透明な樹脂層として形成することができ、擦り傷、表面汚染に対する耐性の観点から、硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層として形成することが好ましい。
具体的には電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等が挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー乃至は(メタ)アクリル酸エステルプレポリマーなどからなる。さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
また、ハードコート層119には、耐汚染性向上の機能を追加してもよい。これは例えばシリコーン系化合物、フッ素系化合物などを添加することにより可能となる。さらにその他の機能として帯電防止性向上、撥水性向上の機能を有するものとしてもよい。
帯電防止性向上のために用いることができる材料としては、電子伝導タイプではPEDOT−PSS(PEDOT(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene);3,4−エチレンジオキシチオフェンポリマー)とPSS(poly(styrenesulfonate);スチレンスルホン酸ポリマー)とを共存)などが挙げられ、イオン導電タイプではリチウム塩系材料等が挙げられる。
また、撥水性向上のために用いることができる材料としては、フッ素系化合物等が挙げられる。
以上説明した構成を具備するスクリーン100は例えば次のように製造することができる。
スクリーン100は、パネル111に積層体112を貼合することによって製造することができる。積層体112は、例えば次のように作製することが可能である。
積層体112のうち、光散乱層114は金型ロールを用いる方法により形成する。すなわち、円筒状であるロールの外周面に光散乱層114の光透過部115の形状に対応した複数の溝が設けられた金型ロールを準備する。そして金型ロールとこれに対向するように配置されたニップロールとの間に、基材層117となる基材を挿入する。このとき基材の一方の面には接着層118が予め形成されていることが好ましい。その際には、接着層118が他にくっついてしまわないように、接着層118の表面のうち基材と反対側の表面には剥離シートが付けられている。そして、基材のうち接着層118が配置されていない側の面と金型ロールとの間に光透過部115を構成する組成物を供給しながら金型ロール及びニップロールを回転させる。これにより金型ロールの表面に形成された溝内に光透過部115を構成する組成物が充填され、該組成物が金型ロールのの表面形状に沿ったものとなる。
ここで、光透過部115を構成する組成物としては、上記したものが好ましいが、さらに具体的には次の通りである。すなわち、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)を配合した光硬化型樹脂組成物を用いることができる。
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤(I1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン化合物(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部116の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金型ロールと基材との間に挟まれ、ここに充填された光透過部115を構成する組成物に対し、基材側から光照射装置により光を照射する。これにより、光透過部115を構成する組成物を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロールにより金型ロールから基材層117及び基材層117上に並列された光透過部115を離型する。
次に、複数の光透過部115間に形成された凹部に光散乱部116を形成する。図4にその過程の一場面を表した。初めに上記した光散乱部116の部位116aを構成する組成物120(電離放射線硬化性樹脂やその他公知の硬化性樹脂に、上記した光を反射して散乱する材料を所定の濃度で分散させた組成物)を光透過部115間の凹部115aに過剰に供給する。次いで、ブレード121により光透過部115の上面をスキージして余分な組成物を掻きとって除去するとともに、凹部115a内に組成物を充填する。このときブレード121が光透過部115を押圧する力を調整し、光透過部115を弾性変形させることにより凹部115a内に充填された組成物120の一部を掻き出すことができる。これにより凹部115aの深さ方向において充填されるべき組成物120の量を調整することができ部位116aを適切に形成することが可能となる。
このようにして充填された組成物120に対して適切な硬化方法を適用して硬化性樹脂を硬化させる。これにより部位116aが形成される。
次に形成された部位116aの上から光透過部115間の凹部115aに対して部位116bを構成する組成物を過剰に供給し、その後は上記と同様にして凹部115a内に部位116bを形成することができる。これにより光散乱性能が異なる部位を1つの光散乱部116内に形成することが可能である。
以上により光散乱層114が形成される。
接着層118にハードコート層119を積層する。なお、接着層118が紫外線硬化樹脂、光硬化性樹脂等からなる場合には、積層後に紫外線又は光を照射して硬化させればよい。
また、光散乱層114のうち基材層117とは反対側には接着層113を積層する。
以上のように作製した積層体112を接着層113によりパネル111に貼合することでスクリーン100を製造することができる。
スクリーン100には上記した各層のいずれかに、他の機能を付加させるための構成を備えてもよい。これには例えば、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、又は近赤外線吸収剤を添加し、紫外線吸収機能、熱線吸収機能、又は近赤外線吸収機能を備えさせることが挙げられる。
近赤外線吸収機能は、近赤外線吸収剤(近赤外線吸収色素)を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。近赤外線吸収色素としては、800nm以上1100nm以下の波長領域の光を吸収するものを用いることが好ましい。該波長領域の近赤外線の透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。一方で、近赤外線吸収色素は可視光領域、即ち、380nm以上780nm以下の波長領域で、十分な透過率を有することが好ましい。
紫外線吸収機能は、以下に例示する紫外線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、全てBASFジャパン株式会社製)や、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN 1577 ED、BASFジャパン株式会社製)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(CHIMASSORB 81、CHIMASSORB 81 FL、全てBASFジャパン株式会社製)、ベンゾエート系紫外線吸収剤(TINUVIN 120、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
熱線吸収機能は、以下に例示する熱線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。熱線吸収剤としては、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)又はスズドープ酸化インジウム(ITO)、フタロシアニン化合物等の金属酸化物超微粒子などが挙げられる。
次に、スクリーン100を図1のようにして設置したときの作用について説明する。図2に模式的な光路例を示した。なお当該光路例は概念的に示したものであり、屈折、反射の程度等を厳密に表したものではない。以下同様である。
映写機10(図1参照)から投射された映像光L101は、ハードコート層119、及び接着層118を透過して光散乱層114の光散乱部116に到達する。より詳しくは映像光L101は光散乱部116のうち部位116aに到達する。光散乱部116の部位116aに到達した映像光L101は、光散乱部116によって散乱反射される。そして、散乱反射された光の一部が映写機10側、すなわち観察者側に向きが変えられる。そしてスクリーン100から出射して観察者に映像として提供される。
スクリーン100によれば、光散乱部116に達した映像光が吸収されることなく散乱反射されて観察者に出射されるので、明るい映像光を提供することができる。すなわち、映写機10からの映像光を効率よく観察者側に反射させて出射することが可能である。
一方、スクリーン100の背面側からスクリーン100を通過して観察者に達する光はL102による。すなわち、背面側からの光L102は光散乱部116に達することなくスクリーン100を透過して観察者に観察される。従って、基材層117の面(パネル111の面)に対して平行な面である光透過部115の基材層117側の面及びその反対側の面を介して背面側からの光が観察者に提供されるので、明確に明るくスクリーン100の背面側を観察することができる。
さらに、観察者側の上方からスクリーン100に照射される外光L103は、ハードコート層119、及び接着層118を透過して光散乱層114の光散乱部116に到達する。より詳しくは外光L103は光散乱部116のうち部位116bに到達する。しかしながら部位116bは光を散乱する機能が抑えられている又は散乱する機能を有していないことから、外光L103は背面側に抜ける。従って外光L103は観察者側に到達することがなく映像光に影響を及ぼさないことからコントラスを向上させることができる。
特に近年においては映写機10がいわゆる単焦点型で構成されることが多く、このときには、スクリーン100に近付けて映像光を照射するため、L101の角度がスクリーン100の面の法線に対して大きくなる傾向にある。この場合、映像光は光散乱部116のうち観察者側の半分のいずれかに到達することが多い。
一方、観察者側からの外光は天井からの電灯光、窓ガラスからの太陽光等が多く、斜め上方からや、映像光に比べて水平に近い角度からスクリーン100に照射される成分が多い。従って、外光は光散乱部116のうち背面側の半分のいずれかに到達することが少なくない。
従って、スクリーン100によれば映像光を効果的に観察者側に提供するとともに外光は背面側に透過させ映像光に影響を与えないようにすることが可能となる。これによりコントラストが向上する。
さらにスクリーン100はコントラストを向上させるための手段として光を吸収させる部位を設けていないので、映像光や背面からの透過光を吸収してしまうことがなく明るい映像光及び明るい背面側の景色を提供すること可能となる。
例えばこのようなスクリーン100を、これまでオフィス等で用いられていたスクリーンの代わりにする等、従来のスクリーン用途に用いることができる。これに加えその他にも、ガラス張りで店内を視認できる店舗のショーウィンドウのガラスにスクリーン100を適用し、スクリーン100に効果的な映像を投射すれば、映像と店内とをいずれも視認することができ、ディスプレイ効果を向上させることができる。
図5はスクリーン100の変形例であるスクリーン100’のうち、光散乱層114’にのみ注目し拡大して示した図である。スクリーン100’は、スクリーン100の光散乱層114のうち光散乱部116の代わりに光散乱部116’が適用された点でスクリーン100と異なる。他の部分はスクリーン100と同様である。従ってここでは、光散乱部116’についてのみ説明し、他の部位については同じ符号を用いるとともに説明を省略する。
本実施形態でも光散乱部116’は光を散乱反射させることができるように構成されている一方、光散乱部116’は光散乱性能が部位によって異なるように構成されている。具体的には次の通りである。
本実施形態では図5からわかるようにスクリーン100’の厚さ方向断面において、クスリーンとして用いられた姿勢で下部となる部位116’aよりも、上部となる部位116’bの方が光を散乱させる程度が低くなるように構成されている。すなわち本実施形態では、光散乱部116’の長手方向に直交する断面において、スクリーン面に沿った方向で一方側となる半分よりも他方側となる半分の方が光散乱性能が低くなるように構成されている。
そのための具体的な手段例としては、光散乱部116’の当該断面において、光を散乱させる材料の分布濃度を不均一にすることを挙げることができ、本実施形態では、例えば部位116’bには上記した光散乱剤を含有させない、又は光散乱剤の分散濃度を部位116’aに対して低くすることを挙げることができる。その他、部位116’aと部位116’bとを明確に分けることなく、連続的、又は段階的に光散乱剤の分散濃度を減らしてもよい。
このように、構成することにより例えば次のように作用する。図5に光路例を示した。
本実施形態によればスクリーン100’の下方から照射される映像光L201は、光散乱の性能が高められた部位116’aに達し、ここで反射して散乱するので、散乱光の一部が観察者側に偏向される。これにより観察者に明るい映像光を提供することができる。
一方、観察者側からの外光は天井からの電灯光、窓ガラスからの太陽光等が多く、上方からスクリーン100’に照射される成分が多い。従って、外光は光散乱部116のうち部位116’bのいずれかに到達することが少なくない。そして当該外光は部位116’bから背面側に抜ける。
従って、スクリーン100’によっても映像光を効果的に観察者側に提供するとともに外光は背面側に透過させ映像光に影響を与えないようにすることが可能となる。これによりコントラストが向上する。
さらにスクリーン100’もコントラストを向上させるための手段として光を吸収させる部位を設けていないので、映像光や背面からの透過光を吸収してしまうことがなく明るい映像光及び明るい背面側の景色を提供すること可能となる。
<ロール型反射スクリーン>
図6は第二実施形態にかかるスクリーン200の斜視図であり、映写機10と併せて示した。本実施形態のスクリーン200は、反射型のスクリーンのうち、巻回及び展開が可能であるタイプのもの(ロール型反射スクリーン)である。従ってスクリーン200は図6からわかるように、展開した姿勢でAで表した観察者の側が正面となり、正面側に映写機10が設置され、これとは反対側(背面側物体Bが存在する側)が背面側となる。
一方、スクリーン200は使用しないときにはロール状に巻回して収納することが可能である。
図7は、スクリーン200を展開して設置した姿勢(スクリーン面を鉛直に立てた姿勢)において図6にVII−VIIで示した線に沿った鉛直方向におけるスクリーン200の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
スクリーン200は、保護層211、該保護層211に貼合された積層体112を備えている。そして、積層体112は、接着層113、光散乱層114、基材層117、接着層118、及びハードコート層119を備えている。
図7からわかるように、スクリーン200の層構成はスクリーン100のパネル111の代わりに保護層211を適用した構成である。保護層211は、基材層117と対になり、光散乱層114を挟むように配置される層であり、基材層117と併せて光散乱層114を保護する機能を有する。保護層211はこのような機能を有するものであれば、その材料は特に限定されることはないが、例えば上記した基材層117と同様の材料により構成することができる。
スクリーン200の構成によれば、可撓性が備えられるので巻回及び展開可能なロール型反射スクリーンとすることができる。また、スクリーン200を構成する各層は当該パネル111を保護層211としたこと以外はスクリーン100と同様であり、同様の効果を奏するスクリーンとすることができる。
なお、スクリーン200でも、上記スクリーン100’で説明した形態で光散乱部116’を構成してもよい。
[透過スクリーン]
<固定型透過スクリーン>
図8は第三実施形態にかかるスクリーン300の斜視図であり、映写機20と併せて示した。本実施形態のスクリーン300は、透過型のスクリーンのうち、常設されるタイプのもの(固定型透過スクリーン)である。従ってスクリーン300は図8からわかるようにAで表した観察者の側が正面側となり、これとは反対側である背面側に映写機20が設置される。
図9は、スクリーン300を設置した姿勢(スクリーン面を鉛直に立てた姿勢)において図8にIX−IXで示した線に沿った鉛直方向におけるスクリーン300の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
スクリーン300は、背面側からパネル111、及び該パネル111に貼合された積層体312を備えている。そして、積層体312は、背面側から接着層113、光散乱層314、基材層117、接着層118、及びハードコート層119を備えている。
従って、スクリーン300は上記説明したスクリーン100の光散乱層114の代わりに光散乱層314を適用した点で異なる。さらに詳しくは、スクリーン100の光散乱層114の光散乱部116に代えて光散乱部316を適用した点が異なる。従ってここでは光散乱部316について説明する。
光散乱部316は、ここに照射された光を散乱させつつ透過することができるように構成されている。そのため、光散乱部316には光を透過しつつ散乱させるための材料が充填されている。そのための材料は特に限定されることはないが、材料の例としては、透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料が好ましい。透明なバインダー樹脂としては光透過部115と同様なものを用いることができる。
一方、当該透明な散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、ガンツ化成株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、散乱剤は中空粒子にすることも可能である。これにより効率よく光を透過散乱することができる。
なお、光散乱部316の屈折率は光透過部115の屈折率と同じであることが好ましい。これにより光透過部115と光散乱部316との界面における屈折、及びこれによる波長分散を防止することができ、画面に観察される虹状のムラ(模様)の発生を抑制できる。
上記のように光散乱部316は光を透過しつつ散乱させることができるように構成されている一方、光散乱部316は光散乱性能が部位によって異なるように構成されている。具体的には次の通りである。
本実施形態では図9からわかるようにスクリーン300の厚さ方向において、クスリーンとして用いられた姿勢で観察者側となる部位316aよりも、背面側となる部位316bの方が光を透過散乱させる程度が低くなるように構成されている。すなわち本実施形態では、光散乱部316の長手方向に直交する断面において、スクリーンの厚さ方向で一方側となる半分よりも他方側となる半分の方が光の透過散乱性能が低くなるように構成されている。
そのための具体的な手段例としては、光散乱部316の当該断面において、光を透過散乱させる材料の分布濃度を不均一にすることを挙げることができ、本実施形態では、例えば部位316bには上記した透明な散乱剤を含有させない、又は透明な散乱剤の分散濃度を部位316aに対して低くすることを挙げることができる。その他、部位316aと部位316bとを明確に分けることなく、光散乱層316の観察者側から背面側に向けて連続的、又は段階的に透明な散乱剤の分散濃度を低くしてもよい。
光散乱部316のその他の構成は光散乱部116と同様である。
また、スクリーン300の製造方法についても、光散乱部316に充填すべき材料を上記のものに変更するのみでスクリーン100と同様の方法を適用することが可能である。
次に、スクリーン300を図8のようにして設置したときの作用について説明する。図9に模式的な光路例を示した。
映写機20(図8参照)から投射された映像光L301は、パネル111、及び接着層113を透過して光散乱層314の光散乱部316に到達する。より詳しくは映像光L301は光散乱部316のうち、透過散乱性能が高い部位316aに達する。部位316aに到達した映像光L301は、部位316aの作用により透過散乱される。そして、散乱された光は、スクリーン300から出射して観察者に映像として提供される。
一方、映写機20(図8参照)から投射された映像光L302は、パネル111、及び接着層113を透過して光散乱層314の光散乱部316に到達する。より詳しくは映像光L302は光散乱部316のうち、最初は透過散乱性能が低い、又は光散乱性を有しない部位316bに達する。従って映像光L302は部位316bを透過する。しかしながら、図9からもわかるように映像光L302は次に隣接する光散乱部316の部位316aに達し、映像光L301と同様に観察者に映像光を提供することができる。
このようにスクリーン300によれば効率よく映像を観察者に提供することが可能である。
スクリーン300の背面側からスクリーン300を通過して観察者に達する光はL303による。すなわち、背面側からの光L303は光散乱部316に達することなくスクリーン300を透過して観察者に観察される。従って、基材層117の面(パネル111の面)に対して平行な面である光透過部115の基材層117側の面及びその反対側の面を介して背面側からの光が観察者に提供されるので、明確に明るくスクリーン300の背面側を観察することができる。
さらに、観察者側の上方からスクリーン300に照射される外光L304は、ハードコート層119、及び接着層118を透過して光散乱層314の光散乱部316に到達する。より詳しくは外光L304は光散乱部316のうち部位316bに到達する。部位316bは光を透過散乱する機能が抑えられている又は透過散乱する機能を有していないことから、外光L304は背面側に抜ける。従って外光L304は観察者側に到達することがなく映像光に影響を及ぼさないことからコントラスを向上させることができる。
従って、スクリーン300によれば映像光を効果的に観察者側に提供するとともに外光は背面側に透過させ映像光に影響を与えないようにすることが可能となる。これによりコントラストが向上する。
さらにスクリーン300はコントラストを向上させるための手段として光を吸収させる部位を設けていないので、映像光や背面からの透過光を吸収してしまうことがなく明るい映像光及び明るい背面側の景色を提供すること可能となる。
<ロール型透過スクリーン>
図10は第四実施形態にかかるスクリーン400の斜視図であり、映写機20と併せて示した。本実施形態のスクリーン400は、透過型のスクリーンのうち、巻回及び展開が可能であるタイプのもの(ロール型透過スクリーン)である。従ってスクリーン400は図10からわかるように、展開した姿勢でAで表した観察者の側が正面側となり、スクリーン400を挟んでこれとは反対側である背面側に映写機20が設置される。
一方、スクリーン400は使用しないときにはロール状に巻回して収納することが可能である。
図11は、スクリーン400を展開して設置した姿勢(スクリーン面を鉛直に立てた姿勢)において図10にXI−XIで示した線に沿った鉛直方向におけるスクリーン400の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
スクリーン400は、保護層211、該保護層211に貼合された積層体312を備えている。そして、積層体312は、接着層113、光散乱層314、基材層117、接着層118、及びハードコート層119を備えている。
図11からわかるように、スクリーン400の層構成はスクリーン300のパネル111の代わりに保護層211を適用した構成である。保護層211は、上記した通りである。
スクリーン400の構成によれば、可撓性が備えられるので巻回及び展開可能なロール型透過スクリーンとすることができる。また、スクリーン400を構成する各層は当該パネル111を保護層211としたこと以外はスクリーン300と同様であり、同様の効果を奏するスクリーンとすることができる。
なお、スクリーン300、400でも、上記スクリーン100’で説明した光散乱部116’に相当する透過散乱性能の分布を有する構成としてもよい。
実施例では、光散乱部における光散乱剤の濃度分布を変えてスクリーンを作製し、コントラストを評価した。光散乱部以外の層については全て構成を同じとし、当該光散乱部以外の層は図2に示した例によるものとした。
(参照例)
参照例として、光散乱部に略均一に光散乱剤を分散した。用いたバインダーは光透過部と同じとし、屈折率は1.540である。また、光散乱剤は平均粒子径が3.5μmの透明粒子であり、屈折率1.590とした。バインダーに対する光散乱剤の分散濃度は20質量%とした。
(実施例1)
実施例1として、図2の例に基づいて、厚さ方向の一方と他方とで光散乱剤の濃度が異なるスクリーンとした。すなわち光散乱部のうち、観察者側の半分の光散乱剤の濃度を16.6質量%、背面側の半分の光散乱剤の濃度を0質量%とした。ここに用いたバインダー及び光散乱剤の材料は参照例と同様である。
(比較例1)
比較例1として、実施例1に対して、厚さ方向において光散乱剤の濃度分布を反対にしたスクリーンを作製した。すなわち光散乱部のうち、観察者側の半分の光散乱剤の濃度を0質量%、背面側の半分の光散乱剤の濃度を16.6質量%とした。ここに用いたバインダー及び光散乱剤の材料は参照例と同様である。
(実施例2)
実施例2として、図5の例に基づいて、上下方向の一方と他方とで光散乱剤の濃度が異なるスクリーンとした。すなわち光散乱部のうち、下側の半分の光散乱剤の濃度を16.6質量%、上側の半分の光散乱剤の濃度を0質量%とした。ここに用いたバインダー及び光散乱剤の材料は参照例と同様である。
(比較例2)
比較例2として、実施例2に対して、上下方向において光散乱剤の濃度分布を反対にしたスクリーンを作製した。すなわち光散乱部のうち、下側の半分の光散乱剤の濃度を0質量%、上側の半分の光散乱剤の濃度を16.6質量%とした。ここに用いたバインダー及び光散乱剤の材料は参照例と同様である。
評価は明所白輝度、及び明所黒輝度をそれぞれ測定し、その比をコントラストとした。以下に測定方法について説明する。
図12には、上記各スクリーンを反射スクリーンとして用いたときの装置の配置を示した。図12からわかるように2000mm離隔して立設された2つの黒板間において、一方の黒板から1000mm間隔を有し、中心高さが床面から800mmとなるようにスクリーンを設置した。このとき室内の明るさは外光により550lxであった。
映写機(三洋化成株式会社製、PDG−DWL2500J)はその出光部が床面からの高さ500mm、スクリーン面からの水平距離が500mmとなる位置に設置し、スクリーンの中央に向けて光を投射できるように調整した。
輝度計(ミノルタ株式会社製、LS−110)はスクリーンの映写機側の中央正面で、黒板の位置で測定ができるように設置した。
明所白輝度は映写機にて白色光を投射したときの輝度、明所黒輝度は映写機から光を投射していないときの輝度をそれぞれ測定した。コントラストは明所白輝度と明所黒輝度との比で算出した。
図13には、上記各スクリーンを透過スクリーンとして用いたときの装置の配置を示した。図13からわかるように、上記反射スクリーンとして用いたときの配置に対して、映写機の位置をスクリーンを挟んで対称となるように配置した。
明所白輝度は映写機にて白色光を投射したときの輝度、明所黒輝度は映写機から光を投射していないときの輝度をそれぞれ測定した。コントラストは明所白輝度と明所黒輝度との比で算出した。
結果を表1に示す。ここでは参照例を基準とし、明所白輝度は高いときを「○」、低いときを「×」とし、明所黒輝度は低いときを「○」、高いときを「×」とし、コントラストは高いときを「○」、低い時を「×」とした。参照例と概ね同じときには「△」で表した。また表1において「反射」は図12のように反射スクリーンとして用いたときの結果、「透過」は図13のように透過スクリーンとして用いたときの結果である。
Figure 2014071288
表1からもわかるように、実施例では、反射スクリーンとして用いた場合、及び透過スクリーンとして用いた場合のいずれにおいても、参照例や比較例よりコントラストが向上し、スクリーン性能(映像光の明るさ)を表す明所白輝度も向上している。
10 映写機
20 映写機
100 スクリーン
111 パネル
112 積層体
113 接着層
114 光散乱層
115 光透過部
116 光散乱部
117 基材層
118 接着層
119 ハードコート層
200 スクリーン
211 保護層
300 スクリーン
314 光散乱層
315 光透過部
316 光散乱部
400 スクリーン

Claims (7)

  1. 映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示するスクリーンであって、
    透光性を有するシート状の基材層と、
    前記基材層の一方の面に形成され、光を散乱する光散乱層と、を備え、
    前記光散乱層は、
    前記基材層の一方の面に沿って複数並べて配置され、光を透過する光透過部と、
    複数の前記光透過部間に配置され、光を散乱する光散乱部と、を有し、
    前記光散乱部は、前記スクリーンのスクリーン面を鉛直とする姿勢としたとき、前記観察者側となる半分及び下半分の少なくとも一方が、他方側半分よりも光を散乱させる材料の分散濃度が大きくなるように構成されている、スクリーン。
  2. 前記光透過部は所定の断面を有して一方向に延びる形状を有し、前記光散乱部は複数の前記光透過部間に配置されることにより所定の断面を有して前記光透過部と同じ方向に延びる形状を備えており、
    前記光散乱部はその延びる方向に直交する断面において、前記光散乱層の厚さ方向の一方側半分と他方側半分とで前記観察者側に配置されるべき一方側半分に含まれる前記光を散乱させる材料の分散濃度が、背面側となる前記他方側半分の分散濃度よりも大きくなるように構成されている請求項1に記載のスクリーン。
  3. 前記光透過部は所定の断面を有して一方向に延びる形状を有し、前記光散乱部は複数の前記光透過部間に配置されることにより所定の断面を有して前記光透過部と同じ方向に延びる形状を備えており、
    前記光散乱部はその延びる方向に直交する断面において、前記スクリーンのスクリーン面を鉛直とする姿勢としたとき、前記光散乱層の層面に沿った方向の一方側半分と他方側半分とで下側となる前記一方側半分に含まれる前記光を散乱させる材料の分散濃度が、上側となる前記他方側半分の分散濃度よりも大きくなるように構成されている請求項1に記載のスクリーン。
  4. 前記光散乱部の前記光を散乱させる材料は白色又は銀色の顔料であり、散乱反射により光を散乱する請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーン。
  5. 前記光散乱部には透明の樹脂と、該透明の樹脂とは屈折率が異なる粒子状の光散乱剤と、が充填され、前記光を散乱させる材料は前記粒子状の光散乱剤であり、前記光散乱部中を光が透過することにより光を散乱する請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーン。
  6. 前記光透過部は光を散乱させることなく透過する材料により構成されている請求項1〜5のいずれかに記載のスクリーン。
  7. 少なくとも一方の最表面にはさらにハードコート性、防汚性、帯電防止、及び撥水性のうち少なくとも1つの機能を備えた層が積層されている請求項1〜6のいずれかに記載のスクリーン。
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