JP2014070953A - 温度センサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの表面にTiAlNのサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部6と、薄膜サーミスタ部の上に複数の櫛部7aを有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極7と、一対の櫛型電極に接続され絶縁性フィルムの表面にパターン形成された一対のパターン電極8とを備え、一対のパターン電極の端部に、実装時にはんだ材で接着される端子部8aが設けられ、端子部が、櫛部の延在方向に対して直交する方向に延在していると共にこの延在方向における薄膜サーミスタ部の幅以上に長い。
【選択図】図1
Description
近年、樹脂フィルム上にサーミスタ材料を形成したフィルム型サーミスタセンサの開発が検討されており、フィルムに直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれている。すなわち、フィルムを用いることで、フレキシブルなサーミスタセンサが得られることが期待される。さらに、0.1mm程度の厚さを持つ非常に薄いサーミスタセンサの開発が望まれているが、従来はアルミナ等のセラミックス材料を用いた基板材料がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、フィルムを用いることで非常に薄いサーミスタセンサが得られることが期待される。
従来、TiAlNからなる窒化物系サーミスタを形成した温度センサでは、フィルム上にTiAlNからなるサーミスタ材料層と電極とを積層して形成する場合、サーミスタ材料層上にAu等の電極層を成膜し、複数の櫛部を有した櫛型にパターニングしている。しかし、このサーミスタ材料層は、曲率半径が大きく緩やかに曲げられた場合には、クラックが生じ難く抵抗値等の電気特性に変化がないが、曲率半径が小さくきつく曲げた場合に、クラックが発生し易くなり、抵抗値等が大きく変化して電気特性の信頼性が低くなってしまう。特に、フィルムを櫛部の延在方向に直交する方向に小さい曲率半径できつく曲げた場合、櫛部の延在方向に曲げた場合に比べて櫛型電極とサーミスタ材料層との応力差により、電極エッジ付近にクラックが発生し易くなり、電気特性の信頼性が低下してしまう不都合があった。
また、様々な曲率や形状を有する被測定対象に対して高精度な温度測定を行なう場合、熱抵抗を低減させるために、温度センサを被測定対象に密着させる必要がある。そこで、様々な温度センサの構造に対応するための効率的でかつ製造上最適な方法として、可能な範囲でサイズの小さいサーミスタ素子を作製して、被測定対象に最適化されたフレキシブル基板に実装する方法が考えられる。また、サーミスタ素子をフレキシブル基板に実装するときの電気的接続方法は、はんだ材を使用することが高い信頼性が得られて好ましい。
さらに、実装方向を考えず、上記櫛部の延在方向において曲率半径を小さく曲げることを想定して、フレキシブル基板にサーミスタ素子を実装したとしても、意図しない方向(櫛部の延在方向に直交する方向)に曲がった場合、やはり電気特性の信頼性が下がってしまう問題がある。
また、樹脂材料で構成されるフィルムは、一般的に耐熱温度が150℃以下と低く、比較的耐熱温度の高い材料として知られるポリイミドでも200℃程度の耐熱性しかないため、サーミスタ材料の形成工程において熱処理が加わる場合は、適用が困難であった。上記従来の酸化物サーミスタ材料では、所望のサーミスタ特性を実現するために600℃以上の焼成が必要であり、フィルムに直接成膜したフィルム型サーミスタセンサを実現できないという問題点があった。そのため、非焼成で直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれているが、上記特許文献3に記載のサーミスタ材料でも、所望のサーミスタ特性を得るために、必要に応じて、得られた薄膜を350〜600℃で熱処理する必要があった。また、このサーミスタ材料では、Ta−Al−N系材料の実施例において、B定数:500〜3000K程度の材料が得られているが、耐熱性に関する記述がなく、窒化物系材料の熱的信頼性が不明であった。
すなわち、この温度センサでは、一対の端子部を除いて少なくとも薄膜サーミスタ部の表面に保護膜が形成されているので、絶縁性フィルムの表面側を実装面としてフレキシブル基板等の基板に実装すると、フレキシブル基板等の基板と薄膜サーミスタ部との間に保護膜が介在して埋め込まれた状態となることで、保護膜を介して基板から温度センサへ熱が伝わり、熱伝導性が向上してさらに高精度な温度測定が可能になる。
すなわち、この温度センサでは、一対の端子部が、薄膜サーミスタ部を挟んで絶縁性フィルムの両端に配されているので、薄膜サーミスタ部の両側で補強されることで、バランス良く安定した剛性が得られる。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.95を超えると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の正しい化学量論比は、N/(Ti+Al+N)=0.5であることに起因する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、端子部が、櫛部の延在方向に対して直交する方向に延在していると共にこの延在方向における薄膜サーミスタ部の幅以上に長いので、屈曲に弱い方向である櫛部の延在方向に直交する方向に、導電性接着材で接着される端子部が延在して薄膜サーミスタ部が補強されて剛性が確保されることで、曲げが抑制されて電気特性の信頼性が向上する。
さらに、薄膜サーミスタ部を、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である材料とすることで、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性が得られる。
したがって、本発明の温度センサによれば、導電性接着材による実装後でも、曲げに対してクラックが生じ難く、フレキシブルで凹凸が少なく、電子機器の基板等の隙間、非接触給電装置やバッテリー等の狭い隙間に挿入して設置することや、曲面に設置することも可能になる。
上記温度センサ1は、絶縁性フィルム5と、該絶縁性フィルム5の表面にTiAlNのサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部6と、薄膜サーミスタ部6の上に複数の櫛部7aを有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極7と、一対の櫛型電極7に接続され絶縁性フィルム5の表面にパターン形成された一対のパターン電極8とを備えている。
上記一対の端子部8aを除いて少なくとも薄膜サーミスタ部6の表面には、保護膜9が形成されている。また、一対の端子部8aは、薄膜サーミスタ部6を挟んで絶縁性フィルム5の両端に配されている。したがって、保護膜9は、両端の一対の端子部8a間において薄膜サーミスタ部6、櫛型電極7及びパターン電極8を覆って絶縁性フィルム5の表面に形成されている。
上記薄膜サーミスタ部6は、TiAlNのサーミスタ材料で形成されている。特に、薄膜サーミスタ部6は、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である。
一対の櫛型電極7は、互いに対向状態に配されて交互に櫛部7aが並んだ櫛型パターンとされている。
上記保護膜9は、絶縁性樹脂膜等であり、例えば厚さ20μmのポリイミド膜が採用される。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x、y、z)(原子%)は、A(15、35、50),B(2.5、47.5、50),C(3、57、40),D(18、42、40)である。
なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで決定する。
本実施形態の温度センサ1の製造方法は、絶縁性フィルム5上に薄膜サーミスタ部6をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程と、互いに対向した一対の櫛型電極7を薄膜サーミスタ部6上に配して絶縁性フィルム5上に一対のパターン電極8をパターン形成する電極形成工程とを有している。
この際、一対の櫛型電極7は、幅30μm、間隔30μmの6対の櫛部7aにて形成した。
なお、複数の温度センサ1を同時に作製する場合、絶縁性フィルム5の大判シートに複数の薄膜サーミスタ部6、櫛型電極7、パターン電極8及び保護膜9を上述のように形成した後に、大判シートから各温度センサ1に切断する。
このようにして、例えばサイズを1.0×0.5mmとし、厚さを0.06mmとした薄いフィルム型サーミスタセンサの温度センサ1が得られる。
また、一対の引き出し線2の他端部は、温度センサ実装用のランド部とされ、クリームはんだのはんだ材Hが端子部8aに対応した帯状に形成される。
このようにすると、はんだ材Hが収縮して接合することで、保護膜9がフレキシブル基板3に密着し、熱抵抗を減らして感度を上げることができる。
また、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
さらに、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸を強く配向させることで、a軸配向が強い場合に比べて高いB定数が得られる。
また、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、0.67Pa未満に設定することで、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向している金属窒化物材料の膜を形成することができる。
また、従来アルミナ等のセラミックスを用いた基板材料がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、本発明においてはフィルムを用いることができるので、上記のように、例えば厚さ0.1mmの非常に薄いフィルム型サーミスタセンサを得ることができる。
上記実施形態に基づいて作製した温度センサに対して、薄膜サーミスタ部を半径6mm(R3mm)の曲率で凹と凸とに交互に100回ずつ屈曲試験を行い、試験の前後で電気抵抗の測定を行なった。その結果、屈曲に弱い方向として、櫛部の長手方向に対して垂直方向に曲率半径が小さくなるように上記屈曲試験を行なったところ、電気抵抗が10%以上上昇したが、櫛部の長手方向(延在方向)に対して平行方向に曲率半径が小さくなるように上記屈曲試験を行なったところ、電気抵抗の上昇が見られなかった。このため、櫛型電極の櫛部の長手方向に対して垂直方向に上記屈曲試験を行なったときに電極の剥がれ又は薄膜サーミスタ部のクラックが発生したと予想される。
本発明のサーミスタ材料層(薄膜サーミスタ部6)の評価を行う実施例及び比較例として、図8に示す膜評価用素子121を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のTi−Al合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ500nmの表1に示す様々な組成比で形成された金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部6を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:5×10−6Pa、スパッタガス圧:0.1〜1Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を10〜100%と変えて作製した。
なお、比較としてTixAlyNzの組成比が本発明の範囲外であって結晶系が異なる比較例についても同様に作製して評価を行った。
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部6について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表1に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部6について、4端子法にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子121の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表1に示す。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部6を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。一部のサンプルについては、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で測定した。
なお、表1に示す比較例1,2は、上述したように結晶相がウルツ鉱型相でもNaCl型相でもなく、本試験においては同定できなかった。また、これらの比較例は、XRDのピーク幅が非常に広いことから、非常に結晶性の劣る材料であった。これは、電気特性により金属的振舞いに近いことから、窒化不足の金属相になっていると考えられる。
なお、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型相の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
また、a軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図12に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.83(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(002)よりも(100)の強度が非常に強くなっている。
表2及び図14に示すように、Al/(Ti+Al)比がほぼ同じ比率のものに対し、基板面に垂直方向の配向度の強い結晶軸がc軸である材料(実施例5,7,8,9)とa軸である材料(実施例19,20,21)とがある。
次に、薄膜サーミスタ部6の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に成膜された実施例(Al/(Ti+Al)=0.84,ウルツ鉱型、六方晶、c軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部6における断面SEM写真を、図15に示す。また、別の実施例(Al/(Ti+Al)=0.83,ウルツ鉱型六方晶、a軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部6における断面SEM写真を、図16に示す。
これら実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
表1に示す実施例及び比較例において、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果を表3に示す。なお、比較として従来のTa−Al−N系材料による比較例も同様に評価した。
これらの結果からわかるように、Al濃度及び窒素濃度は異なるものの、Ta−Al−N系である比較例と同じB定数で比較したとき、耐熱試験前後における電気特性変化でみたときの耐熱性は、Ti−Al−N系のほうが優れている。なお、実施例5,8はc軸配向が強い材料であり、実施例21,24はa軸配向が強い材料である。両者を比較すると、c軸配向が強い実施例の方がa軸配向が強い実施例に比べて僅かに耐熱性が向上している。
例えば、上記実施形態では、導電性接着材としてはんだ材を採用したが、他の合金製の接合材や導電性の樹脂材料などを採用しても構わない。この導電性接着材としては、接着時に絶縁性フィルムよりも硬質な材料であることが好ましい。
Claims (4)
- 絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルムの表面にTiAlNのサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部と、
前記薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極と、
前記一対の櫛型電極に接続され前記絶縁性フィルムの表面にパターン形成された一対のパターン電極とを備え、
前記一対のパターン電極の端部に、実装時に導電性接着材で接着される端子部が設けられ、
前記端子部が、前記櫛部の延在方向に対して直交する方向に延在していると共にこの延在方向における前記薄膜サーミスタ部の幅以上に長いことを特徴とする温度センサ。 - 請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記一対の端子部を除いて少なくとも前記薄膜サーミスタ部の表面に保護膜が形成されていることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記一対の端子部が、前記薄膜サーミスタ部を挟んで前記絶縁性フィルムの両端に配されていることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサにおいて、
前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする温度センサ。
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