JP2014070205A - インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インクの吐出安定性及び得られる画像の耐マーカー性が高いインクを提供する。
【解決手段】熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させ、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクである。自己分散有機顔料及びポリウレタン樹脂を含有し、自己分散有機顔料の表面電荷量が0.5μmol/m2以上1.5μmol/m2以下であり、ポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネートに由来するユニット、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニット、及び酸基を有するジオールに由来するユニットを有するとともに、ポリウレタン樹脂の酸価が40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、様々な記録媒体に画像を記録することが可能な記録方法である。このため、インクジェット記録方法に用いるインクとして、写真画像を記録することを主目的としたインクや、普通紙にビジネス文書を記録することを主目的としたインクが数多く提案されている。
近年では、ビジネス分野でのインクジェット記録方法のニーズが向上しており、耐マーカー性に優れた画像を記録可能なインクが求められている。そして、従来のブラックインクだけでなく、色材として有機顔料を用いたカラーインクについても数多く提案されている。また、ビジネス分野に用いられるインクジェット記録装置では、生産性向上の観点から記録速度の高速化も要求されている。
上述のような市場の要望に対し、特に普通紙において高い発色性を得ることができるインクとして、自己分散有機顔料を用いたインクが提案されている(特許文献1)。また、ビジネス用途の普通紙文書で求められる耐マーカー性を向上させる目的で、種々のポリウレタン樹脂を添加した顔料インクが検討されている(特許文献2及び3)。
特表2000−513396号公報 特表2005−515289号公報 特開2008−179657号公報
近年要求されている記録速度の高速化について、本発明者らは詳細な検討を行った。具体的には、特許文献1〜3で開示された各インクを調製するとともに、高速記録のためにキャリッジの移動速度が2倍となるように改造したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP3100」(キヤノン製))を使用して以下に示す検討を行った。尚、色材としては自己分散有機顔料を用いた。
まず、上記インクジェット記録装置を使用して、19cm×26cmのベタ画像と、幅0.5mmの罫線を約1cm間隔の格子とした画像を、それぞれ普通紙に10枚ずつ記録した。得られた画像を目視したところ、特許文献1〜3に記載されたインクを用いて高速記録を行うと、記録物にスジが見られたり、罫線の画像が歪んだりする現象が確認され、インクの吐出安定性が低下した。さらに、特許文献3に記載されたインクについては、用いるポリウレタン樹脂が紙面上で過剰に剛直化してしまうことにより、得られる画像の耐マーカー性が十分でないことも確認された。
したがって、本発明の目的は、インクの吐出安定性及び得られる画像の耐マーカー性が高いインクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させ、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクであって、自己分散有機顔料及びポリウレタン樹脂を含有し、前記自己分散有機顔料の表面電荷量が0.5μmol/m2以上1.5μmol/m2以下であり、前記ポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネートに由来するユニット、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニット、及び酸基を有するジオールに由来するユニットを有するとともに、前記ポリウレタン樹脂の酸価が40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることを特徴とするインクが提供される。
本発明によれば、インクの吐出安定性及び得られる画像の耐マーカー性が高いインクを提供することができる。また、本発明によれば、このインクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。まず、従来のインクを用いて高速記録を行った場合に、インクの吐出安定性が低下するメカニズムについて詳細に検討を行った。このメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。
(高速記録時にインクの吐出安定性が低下するメカニズム)
(1)自己分散有機顔料を含有するが、ポリウレタン樹脂を含有しないインクの場合
まず、色材として自己分散有機顔料を含有するが、ポリウレタン樹脂を含有しないインクについて検討を行った。このインクを用いて高速記録を行うと、以下に示すような現象が生じていると推測される。従来よりも高速で記録する場合、インクの吐出頻度上昇に伴い、記録ヘッドのヒーターボードの温度が上昇しやすくなる。その結果、低速で記録する場合と比較して、ヒーターボードの近傍に存在するインクに含有される自己分散有機顔料には多量の熱が与えられることになる。
一般的に、有機顔料は、無機顔料(例えば、カーボンブラック)に比べて分解温度が低い。有機顔料の分解温度は色材種により差はあるが、ヒーターボード表面の瞬間的に達する最高温度に近いと推測される。すなわち、高速記録を行うと、有機顔料の分解温度に近い温度の熱が加えられるため、自己分散有機顔料を色材として用いたインクでは、自己分散有機顔料が分解していると推測される。
さらに、分解した後の自己分散有機顔料の粒子表面にも親水性基が存在していると考えられる。しかし、熱分解に伴って顔料粒子の比表面積が飛躍的に増大するため、熱分解後の自己分散有機顔料の粒子表面には、分散安定性を保つのに必要な量の親水性基が存在していない。このため、粒子表面に親水性基が存在しない部分、すなわち、顔料の疎水部が増大し、分散安定性を保つことが困難になる。このような状態になると、分解した顔料はインク中に安定に存在することができずにヒーターボード上に堆積し、正常なインクの吐出を妨げてしまうと考えられる。尚、表面電荷量0.3μmol/m2の自己分散有機顔料と、表面電荷量2.5μmol/m2の自己分散有機顔料のいずれを用いた場合であっても、ヒーターボード上に堆積物を生じ、吐出安定性が低下することを確認した。
(2)自己分散有機顔料及び酸価が40mgKOH/g未満のポリウレタン樹脂を含有するインクの場合
次に、色材として自己分散有機顔料を含有し、更に、特許文献2及び3に記載の、酸価が40mgKOH/g未満のポリウレタン樹脂(例えば、酸価が30mgKOH/gのポリウレタン樹脂)を含有するインクについて検討を行った。(1)の場合と同様に、高速記録を行うと自己分散有機顔料の熱分解が生じるが、(2)の場合は、分解した顔料の疎水部にポリウレタン樹脂が吸着すると推測される。しかし、酸価が40mgKOH/g未満のポリウレタン樹脂は、分解した顔料の疎水部に吸着はするが、酸価が低すぎるために分散安定性を向上させるほどではなく、やはりヒーターボード上に堆積物が生ずる。さらに、ポリウレタン樹脂の酸価が低すぎることに起因して、顔料の分解物表面に吸着したポリウレタン樹脂を介して顔料の分解物同士がより強固に付着してしまい、ヒーターボード上により多くの堆積物を生じさせると推測される。尚、表面電荷量0.3μmol/m2の自己分散有機顔料と、表面電荷量2.5μmol/m2の自己分散有機顔料のいずれを用いた場合であっても、ヒーターボード上に堆積物を生じ、吐出安定性が低下することを確認した。
さらなる詳細な検討の結果、本発明者らは、高速記録を行った場合であっても吐出安定性の高いインクを得るための要件を見出した。すなわち、自己分散有機顔料の表面電荷量、特定構造のポリウレタン樹脂、及び特定の酸価のポリウレタン樹脂を組み合わせることが必須であるとの認識に至った。以下、特定要件を組み合わせることにより、高速記録を行った場合であっても、インクの吐出安定性が得られる理由について述べる。
(吐出安定性が低下しないメカニズム)
本発明者らは詳細な検討の結果、以下に示す(i)〜(iii)の要件を満たす場合に、高速記録を行った場合であっても、インクの吐出安定性が得られることを確認した。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
(i)自己分散有機顔料の表面電荷量が0.5μmol/m2以上1.5μmol/m2以下である。
(ii)酸価が40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下のポリウレタン樹脂を含有する。
(iii)ポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネートに由来するユニット、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニット、及び酸基を有するジオール(以下、酸基含有ジオールともいう)に由来するユニットを含む。
まず、表面電荷量が上記数値範囲である自己分散有機顔料は、粒子表面に、親水性基が存在していない、疎水部をある程度有する。この疎水部とポリウレタン樹脂は疎水的に相互作用し、ポリウレタン樹脂は顔料の粒子表面に吸着する。そして、更に、ポリウレタン樹脂の酸価が40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることで、上記の疎水的な相互作用に加えて、ポリウレタン樹脂の親水部である酸基含有ジオールに由来するユニットによる親水的な相互作用が作用すると考えられる。尚、ポリウレタン樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であると、前述のように吐出安定性が低下する。一方、ポリウレタン樹脂の酸価が140mgKOH/g超であると、得られる画像の耐マーカー性が不十分であることが分かった。その理由については後述する。
上述のように、ポリウレタン樹脂の酸価が40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であると、インク中で顔料の粒子表面にポリウレタン樹脂が吸着し、自己分散有機顔料の分散安定性が向上する。次に、このような状態のインクを用いて高速記録を行った場合について説明する。
上述の通り、高速記録する場合、ヘッドからのインクの吐出頻度上昇に伴い、インクに熱エネルギーを与えるヒーターボードの温度が上昇し、ヒーターボード表面では有機顔料の分解温度付近まで瞬間的に温度が上昇する。その結果、有機顔料は分解されていると考えられる。しかし、分解された有機顔料の粒子表面には親水性基が存在しているとともに、所定の酸価のポリウレタン樹脂が吸着していると考えられる。この吸着したポリウレタン樹脂によって分解された有機顔料の分散が安定化するため、ヒーターボード上に堆積物が存在しにくくなり、高速記録を行った場合であっても、インクの吐出安定性が得られると考えられる。
(自己分散有機顔料の表面電荷量)
次に、自己分散有機顔料の表面電荷量について説明する。本発明のインクには、その表面電荷量が0.5μmol/m2以上1.5μmol/m2以下の自己分散有機顔料を使用する。自己分散有機顔料の表面電荷量が0.5μmol/m2未満であると、親水性基が少ないため、顔料の分散安定性が低下する。高速記録を行った際に生ずる顔料分解物には親水性基の結合量が非常に少なくなるので、ポリウレタン樹脂が吸着したとしても、分解された有機顔料の分散が安定化できず、インクの吐出安定性が低下する。
一方、表面電荷量が1.5μmol/m2を超える自己分散有機顔料は、顔料の粒子表面に、親水性基が多く存在し、上述した疎水部が少ないと推測される。このような自己分散有機顔料を含有するインクにポリウレタン樹脂を添加しても、ポリウレタン樹脂は顔料の粒子表面と相互作用を起こしにくく、その表面に吸着しにくいと推測される。このようなインクを用いて高速記録を行うと、熱分解した有機顔料の分散が安定化できず、インクの吐出安定性が低下すると推測される。
また、本発明者らは表面電荷量が1.5μmol/m2を超える自己分散有機顔料を用いたインクに対し、酸価が異なる複数のポリウレタン樹脂をそれぞれ添加して同様の検討を行った。しかし、いずれのインクを用いた場合であっても、得られる画像にスジやカスレが生じ、インクの吐出安定性が低かった。
(ポリウレタン樹脂の構造)
次に、本発明のインクに含有されるポリウレタン樹脂の構造と吐出安定性との関係について詳細に説明する。本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートに由来するユニット、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニット、及び酸基を有するジオールに由来するユニットを必須の構成としている。このような構造のポリウレタン樹脂を用いることで、高速記録した場合であっても吐出安定性が維持される理由を、本発明者らは以下のように推測している。
ポリウレタン樹脂を構成するユニットのうち、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニットは、その構造に由来する柔軟性と、ポリオール部分に由来する親水性とを併せ持っている。本発明においては、酸基を有しないポリエーテルポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(1,2−ブチレングリコール)、及びポリ(1,3−ブチレングリコール)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらのポリエーテルポリオールを用いると、ポリウレタン樹脂の強度及び柔軟性が増し、親水性がさらに高くなる。また、酸基を有するジオールに由来するユニットも、そのヒドロキシル基に由来して親水性を有している。ポリウレタン樹脂中に存在する上記二つの親水性を有する部分が、自己分散有機顔料の表面に存在する親水性基に対して、以下に示すような相互作用を起こしていると推測される。
本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂は、柔軟性を有するポリオール部分が、顔料の粒子表面の親水性基に対して、効率的に親水性相互作用を示すと考えられる。加えて、ポリウレタン樹脂中には、親水性相互作用が可能な部位、すなわち、酸基を有するジオールに由来するユニットも存在している。このため、上記の親水性相互作用は強まっていると推測される。また、本発明者らの検討によって、酸基を有しないポリエーテルポリオールとしてポリプロピレングリコールを用いると、ポリウレタン樹脂の水溶性が向上し、インクの吐出安定性がさらに向上することが確認された。つまり、ポリウレタン樹脂の構造に由来する柔軟性と親水性をコントロールすることにより、顔料に対して効果的に相互作用を起こさせることが可能となると考えられる。一方、ポリウレタン樹脂中のポリイソシアネートに由来するユニットは疎水性を有する。このため、ポリイソシアネートに由来するユニットは、ポリウレタン樹脂全体の柔軟性によって、顔料の疎水性の粒子表面に効率的に吸着することが可能であると考えられる。
このように、ポリウレタン樹脂の親水性と疎水性をコントロールすることにより、顔料の粒子表面に効率的にポリウレタン樹脂を吸着させることが可能となる。その結果、高速記録時に多くの熱が加えられて自己分散有機顔料が分解した場合であっても、顔料分解物の表面にはポリウレタン樹脂と顔料由来の親水性基の双方が存在することになる。このため、顔料分解物の分散安定性を高めることができると考えられる。上記のようなメカニズムにより、特定のポリウレタン樹脂を用いることで、ヒーターボード上への顔料分解物の堆積を抑制し、インクの吐出安定性が維持されると本発明者らは推測している。本発明のインクにおけるポリウレタン樹脂の含有量は、自己分散有機顔料の含有量に対して、質量比率で、0.05倍以上2.0倍以下であることが好ましい。上記比率が0.05倍以上であると、画像の耐マーカー性の向上に特に有効である。また、上記比率が2.0倍以下とすると、顔料分解物の分散安定性が向上し、インクの吐出安定性がより効果的に向上することが確認できた。
さらに、本発明者らは、ポリウレタン樹脂以外の水溶性樹脂についても検討を行った。具体的には、ポリウレタン樹脂の代わりに水溶性アクリル樹脂を添加した場合について検討を行った。水溶性アクリル樹脂としては、スチレン、アクリル酸、及びメタクリル酸などのモノマーをランダム重合したものを使用した。使用した水溶性アクリル樹脂の酸価は、約160mgKOH/gであった。その結果、ポリウレタン樹脂を用いた場合と異なり、高速記録を行った際に画像にカスレや罫線のヨレが確認された。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
水溶性アクリル樹脂の疎水部は、相互作用により顔料の疎水性の粒子表面に吸着すると考えられる。しかし、水溶性アクリル樹脂と、本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂とでは、顔料表面の親水性基との相互作用のしやすさに差があると考えられる。すなわち、水溶性アクリル樹脂の親水部と顔料表面の親水性基との相互作用は、ポリウレタン樹脂の親水部と顔料表面の親水性基との相互作用よりも小さいため、顔料表面に対する水溶性アクリル樹脂の吸着力の方が弱いと考えられる。その結果、顔料分解物に対する水溶性アクリル樹脂の量が少なくなってしまい、顔料分解物の分散安定性を維持することが不可能となり、ヒーターボード上に顔料分解物が堆積してしまうと推測される。
(使用する顔料がカーボンブラックの場合)
本発明者らは、顔料種の違いについてさらに詳細な検討を行った。具体的には、有機顔料からなる自己分散有機顔料を自己分散カーボンブラックに置き換えて高速記録を行った。自己分散カーボンブラックとしては、商品名「Cab−O−Jet300」(Cabot製)を用いた。また、この自己分散カーボンブラックの表面電荷量は0.5μmol/m2であった。
上記検討を行ったところ、自己分散カーボンブラックとポリウレタン樹脂とを組み合わせた場合において、吐出安定性が低下し、画像にカスレや罫線のヨレが発生してしまうことが確認された。この現象について本発明者らは以下のように推測している。一般に、カーボンブラックは高温下でも安定であり、その分解温度は有機顔料に比べて非常に高いことが知られている。このため、自己分散カーボンブラックに対し、ヒーターから多量の熱が加えられた場合、以下の様な現象が起こっていると推測できる。自己分散カーボンブラックは、その耐熱性の高さから、ヒーターから多量の熱が加えられた場合であっても、カーボンブラック自体は分解しないと予測される。しかし、表面に処理された親水性基の耐熱性はカーボンブラック自体と比較して低い。このため、ヒーターからの熱によって親水性基が分解し、自己分散カーボンブラックの分散安定性は低下してしまうと考えられる。
本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂は、自己分散カーボンブラックに対しても上述のように疎水的相互作用及び親水的相互作用を及ぼすと考えられる。しかし、高速記録を行った場合に生ずるカーボンブラックの分散安定性の低下に対して、分散安定性を維持するレベルには及ばないと考えられる。さらに、分散安定性を失ったカーボンブラック同士が、顔料表面に吸着したポリウレタン樹脂を介して凝集体を形成することにより、ヒーターボード上への堆積が加速されると推測される。このように、高速記録時に生ずるカーボンブラックの分散安定性の低下、及びポリウレタン樹脂による凝集体の形成により、カーボンブラック自体がヒーターボード上に堆積してしまうと推測される。
(ポリウレタン樹脂の構造)
鋭意検討の結果、ポリウレタン樹脂を構成する化合物の種類が、画像の耐マーカー性を向上させるのに大きく影響していることを本発明者らは見出した。詳細を以下に示す。
一般的なポリウレタン樹脂は、(1)ポリイソシアネート、短鎖のジオール、及び鎖延長剤などで構成されるハードセグメントと、(2)ポリオールなどで構成されるソフトセグメントの2つのセグメントを有する。ハードセグメントが主として強度に寄与し、ソフトセグメントが主として柔軟性に寄与している。両セグメントがミクロ相分離構造をとることで、ポリウレタン樹脂膜は強度と柔軟性を併せ持った高い弾性を発現することができる。そして、このような膜特性が、画像の耐マーカー性の発現と密接に関連している。
親水性が高いポリウレタン樹脂を得るには、ポリウレタン樹脂の酸価を高めることが一般的である。ポリウレタン樹脂の酸価は、ポリウレタン樹脂中の酸基を有する化合物に由来するユニットの量におおよそ依存する。したがって、ポリウレタン樹脂の酸価を高めるには、ポリウレタン樹脂を合成する際に用いる酸基を有する化合物の使用量を増やす必要がある。ポリウレタン樹脂を合成する際に用いることが可能な酸基を有する化合物としては、一般的に(a)酸基を有するポリオール、及び(b)酸基を有するジオールを挙げることができる。
(a)酸基を有するポリオールとしては、例えば、カルボン酸変性ポリカプロラクトンジオールのような酸変性ポリオールを挙げることができる。しかし、酸基を有する化合物として酸基を有するポリオールのみを用いて合成したポリウレタン樹脂を用いると、画像の耐マーカー性が著しく低下してしまうことが分かった。この現象は、酸価が高い場合だけでなく、酸価が低い場合(酸基を有するポリオールの使用量が少ない場合)であっても同様に発生した。これは、酸基を有するポリオールを用いて合成したポリウレタン樹脂のソフトセグメント中には酸基が存在するために、強度と柔軟性のバランスが崩れてしまうからであると考えられる。以上より、酸基を有する化合物として酸基を有するポリオールのみを用いて合成したポリウレタン樹脂をインクに使用しても、画像の耐マーカー性は向上しないことが分かった。
一方、(b)酸基を有するジオールとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基を分子内に有するジオールを挙げることができる。酸基を有するジオールは、炭素数が10未満の短鎖ジオールであることが好ましい。酸基を有する短鎖ジオールとしては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸を挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」とも記す)及びジメチロールブタン酸(以下、「DMBA」とも記す)の少なくともいずれかを用いることが好ましい。ポリウレタン樹脂の酸価を高めるために、DMPAやDMBAの使用量を増加させるに伴い、系内のヒドロキシル基も多くなる。このため、DMPAやDMBAと同様にヒドロキシル基を持ちイソシアネートと反応する、ポリオール成分の使用量は、DMPAやDMBAの使用量の増加に伴い相対的に減少させる必要がある。その結果、ソフトセグメントが減少し柔軟性が低下するため、ポリウレタン樹脂膜は非常に剛直になり、得られる画像の耐マーカー性が低くなる傾向にある。すなわち、DMPAやDMBAを用いて酸価を高めたポリウレタン樹脂をインクに使用すると、画像の耐マーカー性が低くなることが分かった。
以上の検討結果から、本発明者らは、酸価が高い(親水性が高い)ポリウレタン樹脂を用いた場合に生ずる画像の耐マーカー性の低下は、ポリウレタン樹脂の構造と大きく関連していることを見出した。そして、酸価の高低のみに着目してポリウレタン樹脂の親疎水性を変化させるのではなく、ハードセグメントとソフトセグメントという2つのセグメント構造に着目してポリウレタン樹脂を設計する必要があることを見出した。
本発明者らが種々のポリウレタン樹脂について検討を行ったところ、以下に示す(1)及び(2)の要件を満たすポリウレタン樹脂を用いることが、吐出安定性だけでなく、画像の耐マーカー性を向上させるのに重要であるとの結論に至った。この理由を以下に説明する。
(1)酸基含有ジオールに由来するユニットを有する。
(2)酸価が40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下である。
一般的に、ポリウレタン樹脂を合成する際には、ポリオールとして、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが用いられる。なかでも、ポリエーテルポリオールを用いると、非常に柔軟性の高いポリウレタン樹脂を得ることができる。このため、酸基を有しないポリエーテルポリオールで構成されるソフトセグメントを有するポリウレタン樹脂は、前述のソフトセグメントの減少による柔軟性の低下が生じにくい。したがって、ある程度酸価を高めても、柔軟性が十分に維持されたポリウレタン樹脂とすることができる。本発明者らが検討したところ、ポリウレタン樹脂の酸価が140mgKOH/g以下であれば、ポリウレタン樹脂の柔軟性が十分に維持され、高い耐マーカー性が維持された画像を記録可能となることが分かった。
以上のように、ポリウレタン樹脂の各構成が相乗的に効果を及ぼし合うことによって、本発明の効果を達成することが可能となる。尚、インク中に含有されるポリウレタン樹脂の好適な含有量については後述する。
本発明者らは、有機顔料からなる自己分散有機顔料の表面電荷量、ポリウレタン樹脂の酸価、及びポリウレタン樹脂の構造を規定することで、従来では想定できないレベルの効果が得られること見出し、本発明を完成させるに至った。ポリウレタン樹脂中の柔軟性を発現する酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニットと、酸基含有ジオールに由来するユニットの両方が、有機顔料の表面に存在する親水性基と相互作用する。これにより、顔料表面に親水性基とポリウレタン樹脂が共存して、顔料の分散安定性を飛躍的に高める効果を示す。また、ポリウレタン樹脂の酸価を特定の範囲とすることで、ポリイソシアネートに由来するユニットの疎水性と、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニット及び酸基含有ジオールに由来するユニットの親水性とのバランスを良好な状態としている。その結果、ヒーターボード上に堆積物を生じさせることなく、高速記録時のインクの吐出安定性が高くなると考えている。
[インク]
本発明のインクは、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させ、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクである。以下、本発明のインクを構成する各成分について説明する。
<自己分散有機顔料>
自己分散有機顔料としては、少なくとも1種の親水性基が有機顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合している自己分散有機顔料を用いる。尚、インク中の親水性基は、その一部が解離していてもよく、全てが解離していてもよい。上記原子団の分子量が1,000以下の場合、本発明の課題が発生しやすいため、本発明の効果がより発揮されるため好ましい。
顔料の粒子表面に導入される親水性基としては、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32などを挙げることができる。尚、式中「M」は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを示す。式中「M」がリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属であると、アンモニウム又は有機アンモニウムである場合と比較して、インクの吐出安定性が良好となるために好ましい。上記親水性基は、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(−R−)を介して結合していてもよい。他の原子団(−R−)としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基、アミド基、スルホン基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基を挙げることができる。また、これらの基を組み合せた基などを挙げることができる。また、有機顔料としては、従来、インクに用いられてきたものを何れも用いることができる。具体的には、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料などが挙げられる。
本発明のインクに用いる自己分散有機顔料の表面電荷量は、0.5μmol/m2以上1.5μmol/m2以下である。尚、本発明において、顔料の表面電荷量はコロイド滴定により求める。後述する実施例においては、流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した電位差自動滴定装置(AT−510;京都電子工業製)を用い、電位差を利用したコロイド滴定により、顔料分散液中の顔料の表面電荷量を測定した。この際、滴定試薬としてメチルグリコールキトサンを用いた。尚、インクから適切な方法により抽出した顔料を用いて表面電荷量の測定を行うことも勿論可能である。また、必要に応じて、インク中の顔料の含有量を水で調整してもよい。
また、本発明において、インクに含まれる顔料が自己分散顔料であるか否かを検証する方法は以下の通りである。具体的には、インクに過剰量の酸を添加した後、遠心分離し沈殿物を採取する。顔料分散液の場合は、顔料分散液に過剰量の酸を添加した後、沈殿物を採取する。採取した沈殿物を、シャーレに取り水を流し込み、撹拌し再分散させる。1日放置後に、シャーレに沈殿物が生じず、顔料が分散していれば自己分散タイプの顔料であると判断する。
<ポリウレタン樹脂>
本発明のインクに含有されるポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートに由来するユニット、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニット、及び酸基含有ジオールに由来するユニットを有する。以下、ポリウレタン樹脂の詳細について説明する。
(ポリイソシアネート)
本発明における「ポリイソシアネート」とは、2以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどを挙げることができる。ポリウレタン樹脂に占める、ポリイソシアネートに由来するユニットの割合(質量%)は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどを挙げることができる。脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどを挙げることができる。芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートなどを挙げることができる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。これらのポリイソシアネートは、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。本発明においては、上記ポリイソシアネートの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが好ましい。また、ヘキサメチレンジイソシアネートとその他のポリイソシアネートを併用することがさらに好ましい。この理由は以下の通りである。
ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」とも記す)は、直鎖構造を有するとともに立体障害が小さく、分子の対称性が高い。このため、HDIを用いてポリウレタン樹脂を合成する際には、ウレタン結合由来の水素結合によりHDI分子同士が集合しやすい。このため、HDIを用いて合成したポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートに由来するユニットを含むハードセグメントがより局在化している。その結果、連続したソフトセグメント中にハードセグメントが存在する海島構造のミクロ相分離となりやすく、ポリウレタン樹脂の柔軟性が非常に高くなる。一方、分子内に分岐構造や環構造を有するようなHDI以外のポリイソシアネートは立体障害が大きく、分子同士が水素結合しにくい。しかし、環構造同士の相互作用や疎水性相互作用によりハードセグメントが多く存在することになるため、ポリウレタン樹脂の強度が非常に高くなる。したがって、HDIとその他のポリイソシアネートを併用することで、HDI由来の柔軟性と、その他のポリイソシアネート由来の強度とを備えたポリウレタン樹脂を得ることができる。このため、より高いレベルの耐マーカー性を有する画像を記録可能なインクを得ることができる。
(酸基を有しないポリエーテルポリオール)
酸基を有しないポリエーテルポリオールは、GPCにより得られるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、450以上4,000以下であることが好ましい。酸基を有しないポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が450未満であると、ポリウレタン樹脂の柔軟性が強度に対して弱くなる場合がある。一方、酸基を有しないポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)が4,000を超えると、ポリウレタン樹脂の強度が柔軟性に対して弱くなる場合がある。何れの場合も、ポリウレタン樹脂の強度と柔軟性のバランスが崩れることで、画像の耐マーカー性が低下してしまう。また、ポリウレタン樹脂に占める、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニットの割合(質量%)は、0.1質量%以上80.0質量%以下であることが好ましい。尚、酸基を有しないポリエーテルポリオールとともに、ポリエーテルポリオール以外の酸基を有しないポリオールを用いてポリウレタン樹脂を合成してもよい。この場合は、ポリウレタン樹脂中の全ての酸基を有しないポリオールに由来するユニットに占める、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニットの割合(mol%)が、80mol%以上100mol%以下であることが好ましい。尚、ひまし油変性ポリオールは、インクの吐出安定性の観点から、用いないことが好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリアルキレングリコール、及びアルキレンオキサイドと2価アルコール又は3価以上の多価アルコールとの付加重合物を挙げることができる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(1,2−ブチレングリコール)、ポリ(1,3−ブチレングリコール)、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体などを挙げることができる。2価アルコールとしては、例えば、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4−ジヒドロキシフェニルメタンなどを挙げることができる。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなどを挙げることができる。上記のポリエーテルポリオールは、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
本発明においては、酸基を有しないポリエーテルポリオールが、(i)ポリエチレングリコール、(ii)ポリプロピレングリコール、(iii)ポリ(1,2−ブチレングリコール)、及び(iv)ポリ(1,3−ブチレングリコール)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。ポリウレタン樹脂中のポリエーテルポリオールに由来するユニット全量に占める、上記(i)〜(iv)のそれぞれに由来するユニットの合計の割合(mol%)は、80mol%以上100mol%以下であることが好ましい。また、酸基を有しないポリエーテルポリオールが、ポリプロピレングリコールであることがさらに好ましい。また、ポリウレタン樹脂に占める、ポリオールに由来するユニットの割合(質量%)は、5.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
(酸基を有するジオール)
本発明において、「酸基を有するジオール」とは、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基を有するジオールを意味する。本発明において、酸基を有するジオールは、炭素数が10未満であることが好ましい。酸基を有するジオールは、Li、Na、Kなどのアルカリ金属塩や、アンモニウム塩、ジメチルアミンなどの有機アミン塩などの形態で存在してもよい。本発明において、酸基を有するジオールとしては、ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸を用いることが好ましい。これらの酸基を有するジオールは、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。ポリウレタン樹脂に占める、酸基含有ジオールに由来するユニットの割合(質量%)は、5.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。
(鎖延長剤)
本発明においては、ポリウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよい。鎖延長剤は、ウレタンプレポリマーのポリイソシアネートユニットのうち、ウレタン結合を形成しなかった残存イソシアネート基と反応する化合物である。本発明においては、ポリウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合とのmol比率が、85.0/15.0以上100.0/0以下となることが好ましい。ポリウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合とのmol比率が上記範囲を満足するように、適宜鎖延長剤を用いることが好ましい。鎖延長剤としては、例えば、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ジメチロールウレア及びその誘導体、ジメチロールエチルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールエチルアミン、ジブタノールメチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキシレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジンなどの多価アミン化合物、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどを挙げることができる。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを挙げることができる。これらの鎖延長剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
(架橋剤)
本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂は、架橋剤によって架橋されていてもよい。ポリウレタン樹脂を架橋する方法としては、上述したポリイソシアネート、ポリオール、又は鎖延長剤として、3官能以上の化合物を架橋剤として用いる方法が挙げられる。
架橋されたポリウレタン樹脂は、上述したポリウレタン樹脂のミクロ相分離構造のうち、ハードセグメントがより多く存在することになる。これは、例えば、3官能の架橋剤を用いた場合、1つの架橋剤に対して、ウレタン結合が3つ形成されるためである。その結果、強度が非常に強くなる。さらに、近傍に存在するウレタン結合が多くなるため、ウレタン結合間の水素結合が多くなる。その結果、ハードセグメントがより密に集合した形で存在することになるため、海島構造のミクロ相分離となりやすく、ポリウレタン樹脂の柔軟性も高く維持することができる。したがって、架橋されたポリウレタン樹脂は、強度が非常に高く、さらに柔軟性も有するので、画像の耐マーカー性がより向上する。
架橋剤として用いることができる3官能以上の化合物としては、3官能以上のポリイソシアネート、3官能以上のポリオール、及び3官能以上の鎖延長剤を挙げることができる。架橋されたポリウレタン樹脂は、これらの化合物の少なくとも1種を用いてポリウレタン樹脂を合成することによって得られる。3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、ビューレット型ポリイソシアネートなどを挙げることができる。3官能以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ポリオキシプロピレントリオール、上記のポリエーテルポリオールにグリコールを付加した化合物などを挙げることができる。3官能以上の鎖延長剤としては、例えば、トリメチロールメラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどを挙げることができる。これらの架橋剤のなかでも、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びポリオキシプロピレントリオールからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
(ポリウレタン樹脂の特性)
本発明のインク中のポリウレタン樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、画像の耐マーカー性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、10.0質量%を超えると、ポリウレタン樹脂特有の柔軟性の影響から記録ヘッドのノズル内部経路にポリウレタン樹脂が付着してしまう場合があり、インク滴の吐出が不安定になることがある。尚、インクには、本発明の効果を損なわない限り、上記ポリウレタン樹脂以外の樹脂をさらに含有させてもよい。
本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂のGPCにより得られるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、30,000以上150,000以下であることが好ましい。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)が30,000未満であると、ポリウレタン樹脂の強度が低くなり、画像の耐マーカー性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)が150,000を超えると、インクの粘度が上昇しやすく、インクの吐出安定性の向上効果が十分に得られない場合がある。
また、本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂の酸価は、40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下である必要があるが、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることが好ましい。尚、本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂の酸価は、酸基を有するジオールに由来するユニットの量で調整することが可能である。
(ポリウレタン樹脂の合成方法)
本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂は、一般的に用いられている方法によって合成することができる。例えば、以下の方法によってポリウレタン樹脂を合成することができる。先ず、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリエーテルポリオール、及び酸基含有ジオールを、イソシアネート基が過剰になるような当量比で、沸点が100℃以下の有機溶剤の存在下又は非存在下で反応させる。これにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る。次いで、中和剤を用いてウレタンプレポリマーの酸基を中和する。そして、架橋剤を含有する水に酸基を中和したウレタンプレポリマーを投入して反応させる。その後、系内に有機溶剤を含有する場合は有機溶媒を除去することで、ポリウレタン樹脂を得ることができる。
(ポリウレタン樹脂の分析方法)
インクに含有されるポリウレタン樹脂の組成、分子量、及び酸価については、遠心分離したインクの沈降物と上澄み液を調べることで解析することができる。また、顔料は有機溶剤に不溶であるため、溶剤抽出によってポリウレタン樹脂を分離することもできる。さらに、インクの状態でも各解析を行うことはできるが、抽出したポリウレタン樹脂を用いれば解析精度がより高まる。具体的には、インクを80,000rpmで遠心分離して得られた上澄み液を塩酸などで酸析した後、乾燥させることによってポリウレタン樹脂を分離することができる。
(1)ポリウレタン樹脂の組成
乾燥させた酸析物(ポリウレタン樹脂)を重水素化ジメチルスルホキシド(重DMSO)に溶解し、プロトン核磁気共鳴法(1H−NMR)により分析する。あるいは、乾燥させた酸析物(ポリウレタン樹脂)を熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析する。得られたNMRチャートの化学シフトや、熱分解ガスクロマトグラフィーの分析結果から、ポリイソシアネート、酸基を有しないポリエーテルポリオール、及び酸基含有ジオールのそれぞれの種類を確認することができる。また、NMRチャートの化学シフトのピーク積算値の比から、それぞれの組成比を算出することができる。
(2)ポリウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合のmol比率の測定方法
ポリウレタン樹脂中のウレタン結合とウレア結合のmol比率については、以下に示す方法により測定することができる。先ず、重DMSOに溶解させたポリウレタン樹脂の酸析物をカーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)で分析する。次いで、得られたNMRチャートにおける、ウレタン結合とウレア結合のそれぞれのピークの積算値の比から、ウレタン結合とウレア結合のmol比率を求めることができる。ただし、ウレタン結合とウレア結合のピークの位置は、使用するポリウレタン樹脂の原料となる化合物(ポリイソシアネート、酸基を有しないポリエーテルポリオール、酸基含有ジオール)の種類によって変化する。したがって、ポリウレタン樹脂の原料となる化合物を用いた場合におけるウレタン結合とウレア結合のピークの位置を調べる必要がある。その方法を以下に示す。
先ず、ポリウレタン樹脂の原料となる化合物(ポリイソシアネート、酸基を有しないポリエーテルポリオール、酸基含有ジオール)をそれぞれ用意する。次に、(i)ポリイソシアネートと酸基を有しないポリエーテルポリオールの反応物、(ii)ポリイソシアネートと酸基含有ジオールの反応物、及び(iii)ポリイソシアネートと水の反応物、をそれぞれ合成する。そして、これらの反応物を乾燥させたものをそれぞれ重DMSOに溶解し、13C−NMRを測定する。(i)及び(ii)の結果から、それぞれの反応物のウレタン結合に由来するピークの位置を確認することができる。また、(iii)の結果から、ウレア結合に由来するピークの位置を確認することができる。例えば、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを用いた場合は、ウレタン結合のピークは155ppm付近、ウレア結合のピークは158ppm付近に現れる。
(3)ポリウレタン樹脂の酸価の測定方法
ポリウレタン樹脂の全体の酸価は、滴定法により測定することができる。後述する実施例では、ポリウレタン樹脂をTHFに溶解し、電位差自動滴定装置(商品名「AT−510」、京都電子工業製)を使用して、水酸化カリウムエタノール滴定液により電位差滴定することで酸価を測定した。
(4)ポリウレタン樹脂の重量平均分子量の測定方法
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、GPCにより測定する。本発明におけるGPCの測定条件は以下の通りである。
・装置:商品名「Alliance GPC 2695」(Waters製)
・カラム:商品名「Shodex KF−806M」の4連カラム(昭和電工製)
・移動相:THF(特級)
・流速:1.0mL/min
・オーブン温度:40.0℃
・試料溶液の注入量:0.1mL
・検出器:RI(屈折率)
・ポリスチレン標準試料:商品名「PS−1」及び「PS−2」(いずれもPolymer Laboratories製、分子量:7,500,000、2,560,000、841,700、377,400、320,000、210,500、148,000、96,000、59,500、50,400、28,500、20,650、10,850、5,460、2,930、1,300、580の17種)
(5)酸基を有しないポリエーテルポリオールの数平均分子量の測定方法
重DMSOに溶解させたポリウレタン樹脂を13C−NMRにより測定し、酸基を有しないポリエーテルポリオールの繰り返し数を算出する。算出した繰り返し数から、酸基を有しないポリエーテルポリオールの数平均分子量を算出することができる。
<HLB値14.5以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル>
ヒーターボード上の有機顔料分解物の堆積をより効果的に抑制するためには、グリフィン法によるHLB値が14.5以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルをインクにさらに含有させることが好ましい。このような効果が得られるメカニズムを本発明者らは以下のように推測している。
本発明のインクに用いるポリウレタン樹脂は、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニットと、酸基含有ジオールに由来するユニットとを含む親水部を有する。このポリウレタン樹脂の親水部と、HLB値14.5以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルの親水性基であるエチレンオキサイド基が相互作用し、ポリウレタン樹脂にポリオキシエチレンアルキルエーテルが吸着する。これは、水素結合性の相互作用と推測される。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイド基は柔軟性を有しているため、より効率的にポリウレタン樹脂と相互作用可能であると推測される。したがって、ポリウレタン樹脂のみを含有するインクよりも、ポリウレタン樹脂とポリオキシエチレンアルキルエーテルの両方を含有するインクの方が、それらの相互作用によって顔料分解物の分散安定性が高まると考えられる。その結果、顔料分解物のヒーターボード上への堆積をより効率的に抑制することができると推察される。
尚、HLB値の上限は後述する通り20.0であり、本発明のインクに使用可能なポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB値の上限も20.0である。尚、グリフィン法によるHLB値については後述する。また、堆積物抑制作用をより効果的に得るためには、ポリウレタン樹脂とポリオキシエチレンアルキルエーテルを以下の比率で用いることが好ましい。すなわち、インク中のポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量(質量%)は、インクに含有するポリウレタン樹脂の含有量(質量%)に対し、0.5倍以上2.0倍以下であることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量を上記の比率内とすることで、ポリウレタン樹脂とポリオキシエチレンアルキルエーテルが効果的に相互作用し、顔料分解物の分散安定性が高まる。このため、堆積物抑制効果がより向上すると推測される。また、ポリウレタン樹脂とポリオキシエチレンアルキルエーテルが相互作用した場合であっても、記録される画像の耐マーカー性については何ら変化が生じないことも確認された。
次に、グリフィン法について説明する。グリフィン法によるHLB値は、界面活性剤の親水性基の式量と、界面活性剤の分子量とから、下記式(1)により算出される。HLB値は、界面活性剤(化合物)の親水性や親油性の程度を、0.0から20.0の範囲で示すものである。HLB値が低いほど化合物の親油性(疎水性)が高いことを示す。一方、HLB値が高いほど化合物の親水性が高いことを示す。
Figure 2014070205
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、R−O−(CH2CH2O)nHで表される構造を有する。尚、式中、Rは炭化水素基を示し、nは整数を示す。疎水性基であるRで表される炭化水素基としては、例えば、セチル基、ラウリル基、パルミトレイル基、オレイル基、リノレイル基、ミリストレイル基などを挙げることができる。本発明においては、HLB値14.5以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル又はポリオキシエチレンセチルエーテルを用いることが好ましい。また、上記式中のnで表される、親水性基であるエチレンオキサイド基の数は、Rの種類とHLB値との関係から決定すればよい。本発明においては、nが10以上であることが好ましく、15以上であることがさらに好ましく、40以上であることが特に好ましい。また、nは100以下であることが好ましく、80以下であることがさらに好ましく、60以下であることが特に好ましい。
<水性媒体>
本発明のインクには、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、従来、インクジェット用のインクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、炭素数1乃至4のアルキルアルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、エーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリコール類、アルキレン基の炭素原子数が2乃至6のアルキレングリコール類、多価アルコール類、アルキルエーテルアセテート類、多価アルコールのアルキルエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。尚、25℃におけるインクの粘度は6mPa・s以下であることが好ましい。インクの粘度は、例えば水性媒体の構成や含有量を変更することにより調整することができる。25℃におけるインクの粘度が6mPa・sより大きいと、インクの吐出安定性の向上効果が十分に得られない場合がある。
<アクリル樹脂>
本発明のインクには、ポリウレタン樹脂以外の樹脂としてアクリル樹脂を含有させてもよい。本発明において、「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマーとして用いた重合体である。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を示すものとする。本発明においては、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他のモノマーの共重合体であってもよい。(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合するその他のモノマーとしては、公知のものを何れも使用することができる。中でも、スチレン、α−メチルスチレン、フェニル酢酸ビニル、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのアリール基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物が好ましい。またアクリル樹脂が共重合体の場合は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。本発明においては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びスチレンの共重合体を用いることがより好ましい。
本発明において、アクリル樹脂のGPCにより得られるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3,000以上10,000以下であることが好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量は、上記ポリウレタン樹脂の酸価と同様の方法で測定した。アクリル樹脂の含有量(質量%)は、インクの全質量を基準として、0.5質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。更には、1.0質量%以上2.4質量%以下であることがより好ましい。また、インク中の全ての樹脂の含有量の合計(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。また、インク中のアクリル樹脂の含有量(質量%)が、ポリウレタン樹脂のインク全質量を基準とした含有量(質量%)に対して、質量比率で0.5倍以上2.0倍以下であることが好ましい。
<その他の添加剤>
本発明のインクには、上記の成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体など、常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、本発明のインクには、必要に応じて、上記ポリウレタン樹脂以外の樹脂、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
[インクカートリッジ]
本発明のインクカートリッジは、インクと、インクを収容するインク収容部とを備え、インク収容部に収容されたインクが、上記で説明した本発明のインクであることを特徴とするものである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものを挙げることができる。または、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量の全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部であるインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させ、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、使用するインクが、上記で説明した本発明のインクであることを特徴とする。尚、本発明における「記録」には、光沢紙や普通紙などの記録媒体に対して記録する態様以外にも、ガラス、プラスチック、フィルムなどの非吸液性の基材に対して記録する態様も含まれる。中でも、普通紙に対して本発明のインクを用いて記録する場合に、特に本発明の効果が発揮されるため好ましい。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。また、以下の実施例の記載において、「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限りいずれも質量基準である。尚、明細書及び表中の略称は以下の通りである。
IPDI:イソホロンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
MDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
PPG:ポリプロピレングリコール
PEG:ポリエチレングリコール
PC:ポリカーボネートジオール
PES:ポリエステルポリオール
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
DMBA:ジメチロールブタン酸
EDA:エチレンジアミン
PR122:ピグメントレッド122
PB15:3:ピグメントブルー15:3
C.B.:カーボンブラック
<ポリウレタン(PU)樹脂分散液の調製>
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流管を備えた4つ口フラスコに、ポリイソシアネート(A部及びB部)、ポリオール(C部)、酸基を有するジオール(D部)、及びメチルエチルケトン(300部)を仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間反応させた。その後、架橋剤(E部)を添加し80℃で反応させた。反応後、40℃まで冷却してイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら水酸化カリウム水溶液を添加した。得られた溶液を加熱及び減圧してメチルエチルケトンを留去し、樹脂の含有量が20%であり、樹脂の重量平均分子量が30,000以上150,000以下であるポリウレタン樹脂分散液PU−1〜12を得た。ポリウレタン(PU)樹脂分散液の調製条件と材料物性を表1に示す。
Figure 2014070205
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
特許文献1に記載の方法を参考にして以下に示すようにして顔料分散液を調製した。
水5.5gに濃塩酸5gを溶かして調製した希塩酸に、p−アミノ安息香酸1.1gを5℃で加えた。これをアイスバスで冷却しながら撹拌することにより常に10℃以下に保持した状態で、5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.2gを溶かして得た亜硝酸ナトリウム水溶液をさらに加えた。15分間撹拌後、比表面積が130m2/gのピグメントレッド122を6g、混合した状態のままさらに加えた。その後、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーを限外ろ過した後、商品名「東洋濾紙No.2」(アドバンティス製)で濾過した。顔料粒子を十分に水洗してから110℃のオーブンで乾燥させ、ピグメントレッド122の表面に−C63−(COONa)2基を導入した自己分散有機顔料Aを得た。得られた自己分散有機顔料Aに水を加えて、顔料の含有量10%の顔料分散液1を調製した。調製した顔料分散液1に含有される自己分散有機顔料Aの表面電荷量を測定したところ、1.0μmol/m2であった。表面電荷の測定方法を以下に示す。
京都電子工業製の電位差自動滴定装置(商品名「AT−510」)、及び流動電位滴定ユニット(商品名「PCD−500」)を使用し、メチレングリコールキトサンを滴定試薬として用いる電位差滴定により、自己分散有機顔料の表面電荷を測定した。
(顔料分散液2、3、6及び7)
p−アミノ安息香酸及び亜硝酸ナトリウムの量を適宜変更したこと以外は、上記顔料分散液1を調製した場合と同様な手順により、顔料の含有量10%の顔料分散液2、3、6、及び7を調製した。顔料分散液2に含有される自己分散有機顔料の表面電荷量は0.5μmol/m2であった。顔料分散液3に含有される自己分散有機顔料の表面電荷量は1.5μmol/m2であった。顔料分散液6に含有される自己分散有機顔料の表面電荷量は0.4μmol/m2であった。また、顔料分散液7に含有される自己分散有機顔料の表面電荷量は1.6μmol/m2であった。
(顔料分散液4)
比表面積が90m2/gのピグメントブルー15:3を用いたこと以外は、上記顔料分散液1を調製した場合と同様な手順により、表面電荷量が1.0μmol/m2の自己分散有機顔料を含有する、顔料の含有量10%の顔料分散液4を得た。
(顔料分散液5)
p−アミノ安息香酸及びp−アミノベンゼンスルホン酸の量を1.2g、並びに亜硝酸ナトリウムの量を2.0gとしたこと以外は、上記顔料分散液1を調製した場合と同様な手順により、顔料の含有量10%の顔料分散液5を調製した。顔料分散液5に含有される自己分散有機顔料の表面電荷量は0.5μmol/m2であった。
(顔料分散液8)
カーボンブラックの表面に親水性基が結合した自己分散カーボンブラックとして市販されている、商品名「Cab−O−Jet300」(Cabot製)(表面電荷量が、0.5μmol/m2)を用意した。これを水で希釈して十分撹拌し、顔料の含有量10%の顔料分散液8を得た。
(顔料分散液9)
比表面積が130m2/gのピグメントレッド122を300g、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン45g、及び蒸留水900gを反応器に入れ、温度55℃、回転数300rpmで20分間撹拌した。その後、25%亜硝酸ナトリウム水溶液40gを15分間かけて滴下し、さらに蒸留水50gを加えて、60℃で2時間反応させて反応物を得た。得られた反応物を蒸留水で希釈しながら取り出し、固形分含有量が15.0%となるように調整した。遠心分離処理及び精製処理を行って不純物を除去し、分散液(1)を得た。分散液(1)中のピグメントレッド122は、その表面にアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホンの官能基が結合した状態であった。得られた分散液(1)中のピグメントレッド122に結合した官能基のmol数は、プローブ式ナトリウム電極を使用して、ピグメントレッド122に結合した官能基のカウンターイオンであるナトリウムイオン濃度を測定することにより求めた。
強力に撹拌しながら室温に保ったペンタエチレンヘキサミン溶液中に、1時間かけて分散液(1)を滴下して混合物を得た。尚、ペンタエチレンヘキサミンの量(mol)は、先に測定したナトリウムイオンのmol数の1〜10倍とした。また、ペンタエチレンヘキサミン溶液の量は、分散液(1)と同量とした。得られた混合物を18乃至48時間撹拌した後、精製処理し、固形分含有量10.0%の分散液(2)を得た。得られた分散液(2)中のピグメントレッド122は、その表面にペンタエチレンヘキサミンが結合した状態であった。
重量平均分子量が8,000、酸価が140mgKOH/g、及び多分散度Mw/Mn(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)が1.5であるスチレン−アクリル酸共重合体190gを秤量した。このスチレン−アクリル酸共重合体に、蒸留水1,800gと、樹脂を中和するのに必要な水酸化カリウムとを加えて撹拌することで、スチレン−アクリル酸共重合体水溶液を調製した。次に、調製したスチレン−アクリル酸共重合体水溶液を撹拌しながら、分散液(2)500gを滴下して混合物を得た。得られた混合物を蒸発皿に移し、150℃で15時間加熱して乾燥させた後、得られた乾燥物を室温となるまで冷却した。得られた乾燥物をpH9.0の水酸化カリウム水溶液に加え、分散機を用いて分散させた。撹拌下で1.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを10乃至11に調整した。その後、脱塩処理及び精製処理を行って不純物及び粗大粒子を除去し、樹脂結合型有機顔料(ピグメントレッド122)が水中に分散された状態の顔料分散液9を得た。得られた顔料分散液9における樹脂結合型有機顔料の含有量(顔料と樹脂の合計の含有量)は10%であり、pHは10.1であった。
(顔料分散液10)
酸価が200mgKOH/g、及び重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を、10%水酸化カリウム水溶液を用いて中和した。そして、比表面積が130m2/gであるピグメントレッド122 10部、中和したスチレン−アクリル酸共重合体(固形分)20部、及び水70部を混合した。サンドグラインダーを用いて得られた混合物を1時間分散した後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行った。上記の方法により、有機顔料(ピグメントレッド122)が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液10を得た。得られた顔料分散液10の顔料の含有量は10%であり、樹脂の含有量は20%であり、pHは10.0であった。
<インクの調製>
(実施例1〜20、比較例1〜6、及び参考例1〜5)
上記で得た顔料分散液及びPU樹脂分散液を表2に示す組合せで下記の各成分と混合し、十分撹拌して分散させた。その後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、実施例1〜20、比較例1〜6、及び参考例1〜5の各インクを調製した。
・顔料分散液(顔料の含有量10%) 30.0%
・PU樹脂分散液(樹脂の含有量20%) 表2参照
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(詳細後述) 表2参照
・グリセリン 7.0%
・2−ピロリドン 5.0%
・テトラエチレングリコール 5.0%
・界面活性剤(商品名「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル製)
0.5%
・イオン交換水 残部
尚、イオン交換水の残部は、インクを構成する全成分の合計が100.0%となる量である。また、実施例14と参考例1のみ下記成分を添加樹脂として添加した。
・アクリル樹脂(商品名「Joncryl683」、BASF製、固形分20%)
6.0%
アクリル樹脂は、水酸化カリウムによって中和した水溶液の状態で用いた。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、日光ケミカルズ製の下記製品(グリフィン法によるHLB値)を用いた。さらに、インクに含まれる、顔料固形分とポリウレタン樹脂固形との質量比を表2に示す。
・ポリオキシエチレンセチルエーテルであるNIKKOL BC15(HLB値 14.6)
・ポリオキシエチレンセチルエーテルであるNIKKOL BC20(HLB値 15.7)
・ポリオキシエチレンオレイルエーテルであるNIKKOL BO15(HLB値 14.2)
・ポリオキシエチレンオレイルエーテルであるNIKKOL BO50(HLB値 17.8)
(比較例7)
特許文献2(特表2005−515289号公報)の実施例1の記載を参考とし、以下に示す方法に従って比較例7のインクを調製した。自己分散カーボンブラック6.5部、ポリウレタン樹脂1.6部、グリセリン9.5部、エチレングリコール6部、商品名「サーフィノール465」(エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ製)0.8部、及び水75.6部を混合した。これにより、比較例7のインクを調製した。尚、自己分散カーボンブラックは、国際公開第01/94476号の記載に従って製造されたオゾン酸化により表面処理されたものを用いた。また、ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂分散液(商品名「ヒブリドゥール580」)0.1部と、ポリウレタン樹脂分散液(商品名「メイス85−302−1」)1.5部とを併用した。尚、「ヒブリドゥール580」は、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ製のポリウレタン樹脂分散液の商品名である。また、「メイス85−302−1」は、メイス・アドヘッシブ・アンド・コーティングス製のポリウレタン樹脂分散液の商品名である。
(比較例8)
特許文献3(特開2008−179657号公報)の実施例1の記載を参考とし、以下に示す方法に従って比較例8のインクを調製した。4つ口フラスコに、商品名「プラクセル205BA」(ダイセル化学工業製)95g、トリメチロールプロパン11g、メチルエチルケトン120g、及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン0.54gを投入した。尚、4つ口フラスコには、温度計、撹拌機、窒素導入管、及び冷却管を設置している。また、「プラクセル205BA」は、ジメチロールブタン酸をラクトン変性したカルボン酸変性ポリカプロラクトンジオールの商品名である。30分間撹拌後、イソホロンジイソシアネート74gをさらに投入し、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。その後、70℃に昇温して4時間反応を行った。反応後、室温まで冷却し、濃度が60%であるウレタンプレポリマー溶液を得た。さらに、50%水酸化カリウム水溶液17.1g及びイオン交換水350gを投入し、ウレタンプレポリマー溶液250gとともに室温で30分間撹拌した。窒素雰囲気下で80℃に昇温後、2時間鎖延長反応を行った。反応後、ロータリーエバポレーターとアスピレーターを用いてメチルエチルケトンと一部の水を除去した後、回収量が429gになるようにイオン交換水を添加し、ポリウレタン濃度35%のポリウレタン樹脂分散液(A)を得た。得られたポリウレタン樹脂分散液(A)に含まれるポリウレタン樹脂の酸価は70mgKOH/g、重量平均分子量は47,000であった。
カーボンブラック(商品名「MA−100」、三菱化学製)3kgを水10kgに混合した後、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度12%)4.5kgに投入した。100〜105℃で10時間撹拌した後、得られた生成物をろ過した。乾燥して得たウェット結晶を水で洗浄した後、80℃で乾燥し、酸化処理カーボンブラック2.5kgを得た。得られた酸化処理カーボンブラックとイオン交換水を混合してスラリーを調製した。ポリメチルメタクリレート透析モジュール(商品名「フィルトライザーB3−20A」、東レ製)を使用して調製したスラリーを透析した。その後、乾燥して、酸化処理カーボンブラック中のナトリウムイオンと塩素イオンを除去して、酸化処理カーボンブラック透析物を得た。得られた酸化処理カーボンブラック透析物120g、トリエチレングリコールモノブチルエーテル180g、及びイオン交換水700gを混合し、ホモディスパーを用いて撹拌してスラリーを調製した。調製したスラリーを入れたビーカーと、循環式ビーズミル分散機(商品名「ダイノーミルKDL−A」、ウイリー・エ・バッコーフェン製)とをチューブでつないだ。メディアとして直径0.3mmのジルコニアビーズを使用し、1,600rpmで分散処理を3時間継続して水性ブラック顔料分散液を得た。得られた水性ブラック顔料分散液41.7gに、50%水酸化カリウム水溶液0.7g、イオン交換水0.5g、及びポリウレタン樹脂分散液(A)7.1gを加え、水性ブラック顔料分散液を得た。尚、得られた水性ブラック顔料分散液の顔料の含有量は10%、ポリウレタン樹脂の含有量は5%であった。次いで、得られた水性ブラック顔料分散液17.5gに、イオン交換水25.8g、グリセリン3.5g、2−ピロリドン1.7g、及びエチレングリコール1.5gを加え、比較例8のインクを調製した。
Figure 2014070205
<評価>
下記の各評価は、インクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP3100」、キヤノン製)をキャリッジの移動速度が40inch/秒となるように改造した改造機を用いて行った。記録条件は、温度:23℃、相対湿度:55%、1滴あたりの吐出量:28ng(±10%以内)とした。また、上記インクジェット記録装置では、解像度600dpi×600dpiで1/600インチ×1/600インチの単位領域に約28ngのインクを1滴付与する条件で記録された画像を、記録デューティが100%であると定義するものである。
(吐出安定性)
上記で得られた各インクをインクカートリッジに充填し、上記インクジェット記録装置に装着した。そして、PPC用紙GF−500(キヤノン製)に、4ドットで形成された縦罫線の画像を記録した(吐出試験前の画像)。そして、19cm×26cmのベタ画像(記録デューティ100%の画像)を、10枚記録した後、4ドットで形成された縦罫線の画像を記録した(1回目の吐出試験後の画像)。更に、同様の吐出試験を行った後、4ドットで形成された縦罫線の画像を記録した(2回目の吐出試験後の画像)。1回目の吐出試験前後の画像、2回目の吐出試験前後の画像について、それぞれパーソナル画像品質評価システムPersonalIAS(Quality Engineering Associates製)を用いて、縦罫線のラジェットネス値を測定した。更に、縦罫線の画像を目視で確認することで、インクの吐出安定性を評価した。尚、吐出試験前後での縦罫線のラジェットネス値の差が小さい程、インクの吐出安定性が高いと評価する。インクの吐出安定性の評価基準は下記の通りである。尚、インクの吐出安定性の評価においては、下記の評価基準において、1及び2が許容できるレベルとし、3〜5は許容できないレベルとした。また、評価結果を表3に示す。
1:吐出試験前後でラジェットネス値の差が2未満であり、縦罫線の画像に全く変化がなかった。
2:吐出試験前後でラジェットネス値の差が2以上4未満であり、縦罫線の画像の変化は確認できる程ではなかった。
3:吐出試験前後でラジェットネス値の差が4以上6未満であり、縦罫線の画像に僅かな変化が見られた。
4:吐出試験前後でラジェットネス値の差が6以上であり、縦罫線の画像に明らかな変化が見られた。
5:吐出試験の際のベタ画像に白スジやカスレが見られた。
(画像の耐マーカー性)
上記で得られた各インクをインクカートリッジに充填し、上記インクジェット記録装置に装着した。そして、PPC用紙(商品名「GF−500」、キヤノン製)に対して、太さ1/10インチの縦罫線を記録した。得られた記録物上の縦罫線部に黄色ラインマーカー(商品名「OPTEX2」、ゼブラ製)を用いてマーキングした後、直ちに記録物上の白地部にマーキングし、マーカーのペン先の汚染及び白地部のマーキングの汚れを確認した。尚、この操作を記録してから5分後及び1日後にそれぞれ行った。耐マーカー性の評価基準を以下に示す。尚、画像の耐マーカー性の評価においては、下記の評価基準において、1〜3が許容できるレベルとし、4及び5は許容できないレベルとした。また、評価結果を表3に示す。
1:5分後及び1日後のいずれにおいても、マーカーのペン先は汚染されておらず、白地部へマーキングしても汚れが発生しなかった。
2:5分後においてマーカーのペン先が汚染されていたが、白地部へマーキングしても汚れがほとんど発生しなかった。さらに、1日後においてはマーカーのペン先は汚染されておらず、白地部へマーキングしても汚れが発生しなかった。
3:5分後及び1日後のいずれにおいても、マーカーのペン先が汚染されていたが、白地部へマーキングしても汚れがほとんど発生しなかった。
4:5分後においてマーカーのペン先が汚染されていたが、白地部へマーキングしても汚れが目立たないレベルであった。さらに、1日後においてマーカーのペン先が汚染されていたが、白地部へマーキングしても汚れがほとんど発生しなかった。
5:5分後及び1日後のいずれにおいても、マーカーのペン先が汚染されており、かつ、白地部へマーキングすると汚れが発生した。
Figure 2014070205

Claims (7)

  1. 熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させ、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクであって、
    自己分散有機顔料及びポリウレタン樹脂を含有し、
    前記自己分散有機顔料の表面電荷量が0.5μmol/m2以上1.5μmol/m2以下であり、
    前記ポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネートに由来するユニット、酸基を有しないポリエーテルポリオールに由来するユニット、及び酸基を有するジオールに由来するユニットを有するとともに、前記ポリウレタン樹脂の酸価が40mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることを特徴とするインク。
  2. 前記ポリウレタン樹脂の含有量が、前記自己分散有機顔料の含有量に対して、質量比率で、0.05倍以上2.0倍以下である請求項1に記載のインク。
  3. 前記酸基を有しないポリエーテルポリオールが、ポリプロピレングリコールを含む請求項1又は2に記載のインク。
  4. グリフィン法によるHLB値が14.5以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテルをさらに含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
  5. 前記ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク。
  6. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  7. 熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させ、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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