以下、本発明の水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、(A)以外の被膜形成性樹脂(B)及び架橋剤(C)を含有する。各成分の含有量としては、ポリエステル樹脂(A)、被膜形成性樹脂(B)及び架橋剤(C)の固形分総量を基準として、ポリエステル樹脂(A)の含有量は10〜70質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。被膜形成性樹脂(B)の含有量は10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。架橋剤(C)の含有量は3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
ポリエステル樹脂(A)
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられ、中でも炭素数4以上の脂肪族多塩基酸を用いることが好ましく、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸を用いることがより好ましい。上記脂肪族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂(A)に用いる多塩基酸としては、得られるベース塗膜へのポリイソシアネート化合物の染み込み性に優れる観点から、全酸成分を基準として、脂肪族多塩基酸を15〜100モル%の範囲内で含有する事が好ましく、30〜85モル%の範囲内で含有する事がより好ましい。また、得られる塗膜の平滑性、鮮鋭性、耐水性に優れる観点から、全多塩基酸成分を基準として、芳香族多塩基酸を15〜85モル%の範囲内で含有する事が好ましく、30〜85モル%の範囲内で含有する事がより好ましい。
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明のポリエステル樹脂(A)に用いる多価アルコールとしては、得られる塗膜へのポリイソシアネート化合物の染み込み性に優れる観点から、炭素数4以上、好ましくは4〜12、さらに好ましくは4〜10の直鎖アルキレン基を有する脂肪族多価アルコールを好適に使用することができる。該炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族多価アルコールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。また、炭素数4以上の直鎖アルキレン基を有する脂肪族多価アルコールの含有量としては、全アルコール成分を基準として、50〜100モル%の範囲内で含有する事が好ましく、70〜100モル%の範囲内で含有する事がより好ましい。
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することも出来る。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂(A)は、クリヤー塗膜からのポリイソシアネート化合物の染み込み性の観点から、水酸基価が10mgKOH/g未満であることが好ましく、5mgKOH/g未満であることがより好ましく、1mgKOH/g未満であることが特に好ましい。
また、ポリエステル樹脂(A)が、更にカルボキシル基を有する場合は、水性塗料組成物柱中の安定性及び/又は複層塗膜の耐水性の観点から、酸価が30mgKOH/g以下であるのが好ましく、3〜27mgKOH/gであるのがより好ましく、5〜25mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、複層塗膜の塗膜物性や耐水性などの観点から、8,000以上であるのが好ましく、9,001〜30,000であるのがより好ましく、10,001〜25,000であるのがさらに好ましく、10,501〜20,000であるのがさらに特に好ましい。
なお、本明細書において、酸価及び水酸基価は、JIS−K1557(2007)に準拠して求めた値である。また、数平均分子量又は重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
ポリエステル樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、ポリエステル樹脂を製造することができる。
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて又は連続的に添加してもよい。また、まず水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させることでハーフエステル化せしめ、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂としてもよい。逆に、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
また、特開2011−184629に記載の方法により、通常の方法で合成した末端水酸基のポリエステル樹脂に対し、分子内に酸無水基を2つ以上持つ化合物を開環付加することで、樹脂の3次元化を極力起こさずにポリエステル樹脂を高分子量化せしめることもできる。
ここで用いられる分子内に酸無水基を2つ以上持つ化合物としては、例えば無水ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物や1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1、2−c]フラン−1,3−ジオン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’−ベンゾフェンンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いる事ができる。また、必要に応じて、無水基を分子中に1個有する無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸や無水トリメリット酸を酸量と分子量の調整のために適時用いることが出来る。なかでも入手の容易さ、純度、コストなどの観点から無水ピロメリット酸を好適に用いることが出来る。
また、特開平4−318012に記載の方法により、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物などの多官能イソシアネート化合物を用いて、ポリエステル樹脂の水酸基と反応させ、ポリエステル樹脂を高分子量化せしめることもできる。
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
また、前記ポリエステル樹脂(A)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、油脂、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。油脂としては、これらの脂肪酸の脂肪酸油を挙げることができる。上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上混合して使用することができる。
本発明のポリエステル樹脂(A)は、必要に応じて、有機溶媒を、それ自体既知の方法により含有する事ができる。有機溶媒の含有量は、環境面への配慮から、ポリエステル樹脂の樹脂固形分を基準として、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
また、本発明のポリエステル樹脂(A)は、分子中のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することにより、水溶化又は水分散化することができる。該塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。該塩基性化合物は水溶性であることが好ましい。
上記塩基性化合物で中和したポリエステル樹脂を攪拌しながら水を徐々に添加することで、ポリエステル樹脂水分散液又はポリエステル樹脂水溶液を得ることができる。
水性塗料組成物の粘度を抑え、固形分濃度を上げる観点から、上記ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂水分散液(A’)であることが好ましい。該ポリエステル樹脂水分散液(A’)の平均粒子径は、250nm以下が好ましく、50〜200nmがより好ましい。
なお、本明細書において、ポリエステル樹脂水分散液(A’)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
また、水を添加して転相乳化せしめる時のポリエステル樹脂水分散液(A’)の転相温度としては、40〜95℃が好ましく、45〜95℃がより好ましく、50〜95℃が特に好ましい。転相乳化時の温度が低いと樹脂水分散液の粘度が上がり、均一な分散が出来ない場合がある。
被膜形成性樹脂(B)
本発明の水性塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(C)以外の樹脂成分として、被膜形成性樹脂(B)を含有することを特徴とする。
上記被膜形成性樹脂(B)の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、上記ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂とは、例えば、水酸基価が10mgKOH/g以上、酸価が30mgKOH/g以上、又は数平均分子量が8,000未満のポリエステル樹脂のことである。
上記被膜形成性樹脂(B)としては、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性等の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(B1)及び水酸基含有ポリウレタン樹脂(B2)を含有する事が好ましく、水酸基含有アクリル樹脂(B1)を含有する事がより好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(B1)
上記水酸基含有アクリル樹脂(B1)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法等の方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、下記モノマー(i)〜(xix)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独で又は2種以上で組み合わせて使用することができる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvi)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xviii)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
上記水酸基含有アクリル樹脂(B1)を製造する際の前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、0.5〜50質量%が好ましく、1.0〜40質量%がより好ましく、1.5〜30質量%がさらに好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂(B1)は、形成される複層塗膜の耐水性等の観点及び/又はクリヤー塗膜からのポリイソシアネート化合物の染み込み性等の観点から、水酸基価が、1〜150mgKOH/gであることが好ましく、5〜100mgKOH/gであることがより好ましく、10〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。また、塗料の貯蔵安定性ならびに形成される複層塗膜の鮮映性及び耐水性等の観点から、酸価が、55mgKOH/g以下であることが好ましく、3〜50mgKOH/gであることがより好ましく、5〜45mgKOH/gであることがさらに好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂(B1)は、クリヤー塗膜からのポリイソシアネート化合物の染み込み性等の観点から、樹脂のガラス転移点温度が、30℃以下であることが好ましく、−50〜20℃であることがより好ましく、−40〜10℃であることがさらに好ましい。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(B1)は、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の向上の観点から、少なくともその一種として、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’)を含有することが好ましい。
上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’)は、例えば、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法等の方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’)は、形成される複層塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が、1〜150mgKOH/gであることが好ましく、5〜100mgKOH/gであることがより好ましく、10〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。
また、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’)は、塗料の貯蔵安定性、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の向上の観点から、酸価が、55mgKOH/g以下であることが好ましく、3〜50mgKOH/gであることがより好ましく、5〜45mgKOH/gであることがさらに好ましい。
また、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’)は、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性の観点から、コア・シェルの構造を有するコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)であることが好ましい。
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)としては、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体(I)であるコア部と、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体(II)であるシェル部とからなるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂を好適に使用することができる。また、コア部及び/又はシェル部に水酸基含有重合性不飽和モノマーを共重合せしめることで、水酸基含有アクリル樹脂として架橋剤(C)と架橋することができる。
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(I)に架橋構造を付与する機能を有する。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、コア部共重合体(I)を構成するモノマー合計質量を基準として、20質量%以下であるのが好ましく、0.1〜10質量%であるのがより好ましく、0.2〜7質量%であるのがさらに好ましい。
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーは、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な重合性不飽和モノマーである。
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、例えば、前記水酸基含有アクリル樹脂(B1)の説明において記載した、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして例示した重合性不飽和モノマーのうち、前記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーであるモノマー(i)〜(xi)、(xiii)〜(xix)等が挙げられる。これらのモノマーは、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)に要求される性能に応じて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、形成される塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、上記重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーが、少なくともその一種として疎水性重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
本明細書において、上記疎水性重合性不飽和モノマーは、炭素数が4以上、好ましくは6〜18の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマーを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性等の観点から、上記疎水性重合性不飽和モノマーとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーを好適に使用することができる。
コア部共重合体(I)用モノマーとして上記疎水性重合性不飽和モノマーを使用する場合、該疎水性重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性等に優れる観点から、コア部共重合体(I)を構成するモノマー合計質量を基準として、5〜90質量%の範囲内であるのが好ましく、20〜85質量%の範囲内であるのが更に好ましく、40〜75質量%の範囲内であるのが更に特に好ましい。
シェル部共重合体(II)は、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合成分とする。
上記シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いられるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの具体例は、前記コア部共重合体(I)用モノマーとして例示したものと同じである。すなわち前記水酸基含有アクリル樹脂(B1)の説明において、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして例示した重合性不飽和モノマーのうち、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(x)が挙げられる。該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。シェル部に上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを共重合することにより、得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の水性媒体中における安定性を確保することができる。
上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合の使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、0.1〜30質量%であるのが好ましく、2〜25質量%であるのがより好ましく、3〜19質量%であるのがさらに好ましい。
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーは、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーであるが、中でも、少なくとも1種の水酸基含有重合性不飽和モノマーを用いる事が好ましい。該水酸基含有重合性不飽和モノマーは、得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)に、クリヤーから染み込んだポリイソシアネート化合物及び/又は架橋剤(C)と架橋反応する水酸基を適度に導入せしめることによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、該コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、シェル部共重合体(II)を構成するモノマー合計質量を基準として、1〜40質量%であるのが好ましく、4〜25質量%であるのがより好ましい。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマー以外のその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いるその他の重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の光輝性向上の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーを使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)における、共重合体(I)/共重合体(II)の割合は、形成される塗膜の鮮映性及び光輝性が向上する観点から、固形分質量比で5/95〜95/5が好ましく、50/50〜85/15がより好ましく、60/40〜80/20がさらに好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)は、得られる塗膜の耐チッピング性及び耐水性等に優れる観点から、水酸基価が、1〜150mgKOH/gであることが好ましく、5〜100mgKOH/gであることがより好ましく、10〜50mgKOH/gであることがさらに好ましい。また、塗料の貯蔵安定性、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の向上の観点から、酸価が、55mgKOH/g以下であることが好ましく、3〜50mgKOH/gであることがより好ましく、5〜45mgKOH/gであることがさらに好ましい。
上記コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)は、クリヤー塗膜からのポリイソシアネート化合物の染み込み性等の観点から、樹脂のガラス転移点温度が、30℃以下であることが好ましく、−50〜20℃であることがより好ましく、−40〜10℃であることがさらに好ましい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー20質量%以下、及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー80質量%以上からなるモノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを得た後、このエマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー1〜40質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー0.1〜30質量%、及びその他の重合性不飽和モノマー30〜98.9質量%からなるモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合させてシェル部共重合体(II)を調製することによって得ることができる。
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、界面活性剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好適である。該アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性界面活性剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性界面活性剤を使用することもできる。これらのうち、反応性アニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
上記反応性アニオン性界面活性剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのうち、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が、得られる塗膜の耐水性に優れるため、好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王社製)等を挙げることができる。
また、上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がより好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製)、「ラテムルPD−104」(商品名、花王社製)、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製)等を挙げることができる。
上記界面活性剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−アミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)は、上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって、得ることができる。
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、界面活性剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(I)をコア部とし、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー混合物の共重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
また、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)は、上記コア部共重合体(I)を得る工程とシェル部共重合体(II)を得る工程の間に、他の樹脂層を形成せしめる重合性不飽和モノマー(1種または2種以上の混合物)を供給して乳化重合を行なう工程を追加することによって、3層またはそれ以上の層からなる水分散性水酸基含有アクリル樹脂としてもよい。
なお、本発明において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の「シェル部」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア部」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型構造」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。
上記コア/シェル型構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成せしめるのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよい。また、上記コア/シェル型構造における多層構造の概念は、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)においてコア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
かくして得られるコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)は、一般に10〜1,000nm程度、特に30〜500nm程度、さらに特に50〜200nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該水分散性アクリル樹脂が有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジブチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、トリブチルアミン、アンモニア水等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、これらの中和剤は、中和後の該コア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)の水分散液のpHが6.5〜9.0となるような量で用いることが望ましい。
水酸基含有ポリウレタン樹脂(B2)
本発明の水性塗料組成物が、前記被膜形成性樹脂(B)として水酸基含有ポリウレタン樹脂(B2)を含有する場合、該水酸基含有ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールから選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物とを反応させてなるものを挙げることができる。
具体的には、例えば、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物ならびにジメチロールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤、停止剤等を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径が0.001〜3μmの自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。
架橋剤(C)
本発明の架橋剤(C)は、前記ポリエステル樹脂(A)及び/又は被膜形成性樹脂(B)中の水酸基と反応して水性塗料組成物を架橋し得る化合物である。本発明の水性塗料組成物は、架橋剤(C)として、少なくとも1種の、特定の構造を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)を含有する。その他の架橋剤(C)としては、例えば、アミノ樹脂、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)以外のブロックポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物などを好適に使用できる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる塗膜の耐水性及び貯蔵性の観点から、必須成分である特定の構造を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)以外では、ブロックポリイソシアネート化合物(CA)及び/又はアミノ樹脂(CM)が好ましい。
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)
本発明の水性塗料組成物で用いられる架橋剤(C)は、少なくとも1種の、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)を含有する。該活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(I)中、R
1、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(II)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(III)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は前記と同じであり、R
6は、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)である。
上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の合成方法として、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基に、活性メチレン化合物(cb2)を反応させて活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)を得た後、得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)と2級アルコール(cb4)とを反応させることによって得る方法、活性メチレン化合物(cb2)及び2級アルコール(cb4)の反応物とポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基とを反応させることによって得る方法等があるが、前者の方法が特に好ましい。
ポリイソシアネート化合物(cb1)
ポリイソシアネート化合物(cb1)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、前記ポリイソシアネート化合物(cb1)としては、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の加熱時の黄変が発生しにくいことから、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましい。なかでも形成される塗膜の柔軟性向上の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びその誘導体がさらに好ましい。
また、前記ポリイソシアネート化合物(cb1)としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等を使用することができる。
また、前記ポリイソシアネート化合物(cb1)としては、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの重合体、又は該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとの共重合体を使用してもよい。
上記ポリイソシアネート化合物(cb1)は、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の反応性及び該活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)と他の塗料成分との相溶性の観点から、数平均分子量が300〜20,000の範囲内であることが好ましく、400〜8,000の範囲内であることがより好ましく、500〜2,000の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記ポリイソシアネート化合物(cb1)は、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の反応性及び該活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)と他の塗料成分との相溶性の観点から、1分子中の平均イソシアネート官能基数が2〜100の範囲内であることが好ましい。下限としては、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の反応性を高める観点から3がより好ましい。上限としては、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の製造時にゲル化を防ぐ観点から20がより好ましい。
活性メチレン化合物(cb2)
上記ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基をブロック化する活性メチレン化合物(cb2)としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)、マロン酸メチルイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルイソブチル、マロン酸エチルイソブチル、マロン酸メチルsec−ブチル、マロン酸エチルsec−ブチル、マロン酸ジフェニル及びマロン酸ジベンジル等のマロン酸ジエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル及びアセト酢酸ベンジル等のアセト酢酸エステル、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル及びイソブチリル酢酸ベンジル等のイソブチリル酢酸エステル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。
なかでも、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、活性メチレン化合物(cb2)が、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、マロン酸ジイソプロピル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。なかでも、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性ならびに得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の反応性及び水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、マロン酸ジイソプロピルであることがさらに好ましい。
活性メチレン化合物(cb2)によるイソシアネート基のブロック化反応は、必要に応じて反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、例えば金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等の塩基性化合物が良い。これらのうち、オニウム塩としてはアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩が好適である。該反応触媒の使用量は、通常、ポリイソシアネート化合物(cb1)及び活性メチレン化合物(cb2)の合計固形分質量を基準として、10〜10,000ppmの範囲内であることが好ましく、20〜5,000ppmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記活性メチレン化合物(cb2)によるイソシアネート基のブロック化反応は、0〜150℃で行うことができ、溶媒を用いても良い。この場合、溶媒としては非プロトン性溶剤が好ましく、特に、エステル、エーテル、N−アルキルアミド、ケトン等が好ましい。反応が目的どおり進行したならば酸成分を添加することで、触媒である塩基性化合物を中和し、反応を停止させてもよい。
活性メチレン化合物(cb2)によるイソシアネート基のブロック化反応において、活性メチレン化合物(cb2)の使用量は、特には限定されないが、ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基1モルに対して0.1〜3モル、好ましくは0.2〜2モル用いることが好適である。また、ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基と反応しなかった活性メチレン化合物は、ブロック化反応終了後に除去することができる。
また、上記活性メチレン化合物(cb2)以外に、例えば、アルコール系、フェノール系、オキシム系、アミン系、酸アミド系、イミダゾール系、ピリジン系、メルカプタン系等のブロック剤を併用してもよい。
また、上記ポリイソシアネート化合物(cb1)中の一部のイソシアネート基は、活性水素含有化合物と反応させても良い。該ポリイソシアネート化合物(cb1)中の一部のイソシアネート基と活性水素含有化合物とを反応させることにより、例えば、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の貯蔵安定性の向上、該活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)と他の塗料成分との相溶性の調整及び形成される塗膜の柔軟性向上等を図ることができる。
ポリイソシアネート化合物(cb1)中の一部のイソシアネート基と、上記活性水素含有化合物とを反応させる場合、該ポリイソシアネート化合物(cb1)、前記活性メチレン化合物(cb2)及び該活性水素含有化合物の反応の順序は、特に限定されない。具体的には、ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基の一部を活性メチレン化合物(cb2)でブロックした後、残りのイソシアネート基に活性水素含有化合物を反応させる方法、ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基の一部に活性水素含有化合物を反応させた後、残りのイソシアネート基を活性メチレン化合物(cb2)でブロックする方法ならびにポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基に活性メチレン化合物(cb2)及び活性水素含有化合物を同時に反応させる方法等が挙げられる。
上記活性水素含有化合物としては、例えば、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
上記水酸基含有化合物としては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。なお、本明細書において、「ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体を意味し、ブロック共重合体とランダム共重合体のいずれも含むものとする。
なかでも、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の高粘度化を抑制する観点から、上記水酸基含有化合物は、1価のアルコールであることが好ましい。該1価のアルコールとしては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
また、前記アミノ基含有化合物としては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジラウリルアミン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリオキシプロピレン−α,ω−ジアミン(市販品としては、例えば、ハンツマン社製の「ジェファーミンD−400」等が挙げられる)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
なかでも、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の高粘度化を抑制する観点から、上記アミノ基含有化合物は、1価のアミンであることが好ましい。該1価のアミンとしては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジラウリルアミン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
ポリイソシアネート化合物(cb1)中の一部のイソシアネート基と、上記活性水素含有化合物を反応させる場合、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、及び耐水性の観点から、ポリイソシアネート化合物(cb1)と活性水素含有化合物との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が、0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、水性塗料組成物の硬化性及び形成される複層塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、水性塗料組成物の貯蔵安定性ならびに形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
また、上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)は、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性ならびに形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、親水基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB’)であることが好ましい。
上記親水基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB’)は、例えば、前記活性水素含有化合物として、親水基を有する活性水素含有化合物を使用することによって、得ることができる。
上記親水基を有する活性水素含有化合物としては、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、カチオン性の親水基を有する活性水素含有化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基を前記活性メチレン化合物(cb2)によってブロック化する反応が阻害されにくいため、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物を使用することが好ましい。
上記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。上記ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン(オキシプロピレン)基等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物が好ましい。
上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の耐水性等の観点から、3個以上、好ましくは5〜100個、より好ましくは8〜45個の連続したオキシエチレン基を有することが好適である。
また、上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、連続したオキシエチレン基以外に、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含有してもよい。該オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物における、オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率は、水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、50〜100モル%の範囲内であることが好ましい。オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率が20モル%未満になると、親水性の付与が十分でなくなり、水性塗料組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。
また、前記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物は、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の耐水性の観点から、数平均分子量が200〜2,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量の下限としては、水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、300がより好ましく、400がさらに好ましい。上限としては、形成される複層塗膜の耐水性の観点から、1,500がより好ましく、1,200がさらに好ましい。
前記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシエチレン)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシプロピレン)、ω−メトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ω−エトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)などのω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノエチルエーテル等のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシプロピレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
また、上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「ユニオックスM−400」、「ユニオックスM−550」、「ユニオックスM−1000」、「ユニオックスM−2000」等が挙げられる。また、前記ポリエチレングリコールの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「PEG#200」、「PEG#300」、「PEG#400」、「PEG#600」、「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#1540」、「PEG#2000」等が挙げられる。
前記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物、スルホン酸基を有する活性水素含有化合物、リン酸基を有する活性水素含有化合物及びこれらの中和塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)と他の塗料成分との相溶性の観点から、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。
上記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物中の酸基の一部または全部は、前記ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基を前記活性メチレン化合物(cb2)によってブロック化する反応が阻害されにくくなるため、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。
上記アニオン性基を有する活性水素含有化合物中の酸基の中和は、該アニオン性基を有する活性水素含有化合物と上記ポリイソシアネート化合物(cb1)との反応前に行ってもよく、反応後に行ってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;金属アルコキシド;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性化合物の使用量としては、アニオン性基を有する活性水素含有化合物中のアニオン性基に対して通常0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の範囲内とすることができる。
前記カルボキシル基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸及びクエン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸及び2,2−ジメチロール吉草酸等のジヒドロキシカルボン酸、これらジヒドロキシカルボン酸のラクトン開環付加物、グリシン、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン、アルギニン等を挙げることができる。
前記スルホン酸基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、2−アミノ−1−エタンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
前記リン酸基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート、ヒドロキシアルキルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸等を挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物(cb1)中の一部のイソシアネート基と、上記親水基を有する活性水素含有化合物を反応させる場合、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、ポリイソシアネート化合物(cb1)と親水基を有する活性水素含有化合物との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、水性塗料組成物の硬化性及び形成される複層塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、水性塗料組成物の貯蔵安定性ならびに形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
また、前記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)は、界面活性剤と予め混合することにより水分散性を付与することもできる。この場合、塗料の安定性の観点から、該界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)は、前記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(cb1)及び活性メチレン化合物(cb2)を反応させることにより、ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基の一部又は全部が、活性メチレン化合物(cb2)でブロック化された化合物である。
なかでも、上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)が、下記一般式(IV)
〔式(IV)中、R
1は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)及び下記一般式(V)
〔式(V)中、R
6及びR
7は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)の少なくとも一方であることが好ましい。
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)は、前記一般式(IV)で示されるブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体である。
なかでも、該活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体の原料の一つである前記活性メチレン化合物(cb2)として、比較的容易に製造できる活性メチレン化合物を使用できる点から、R1が、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、水性塗料組成物の貯蔵安定性、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点からイソプロピル基であることがさらに好ましい。
上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(cb1)と、炭素数1〜12の炭化水素基を有するマロン酸ジアルキルとを反応させることによって得ることができる。
上記マロン酸ジアルキルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチルが好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピルがより好ましく、マロン酸ジイソプロピルがさらに好ましい。
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)は、前記一般式(V)で示されるブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体である。
なかでも、該活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記活性メチレン化合物(cb2)として、比較的容易に製造できる活性メチレン化合物を使用できる点から、R6及びR7が、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、水生塗料組成物の貯蔵安定性、複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点からイソプロピル基であることがさらに好ましい。
上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(cb1)と炭素数1〜12の炭化水素基を有するアセト酢酸エステルとを反応させたり、ポリイソシアネート化合物(cb1)と炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させたりすることによって得ることができる。なかでも、前記ポリイソシアネート化合物(cb1)と、炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させて得ることが好ましい。
上記イソブチリル酢酸エステルとしては、例えば、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル、イソブチリル酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル及びイソブチリル酢酸イソプロピルが好ましい。
また、前記アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル、アセト酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセト酢酸イソプロピルが好ましい。
また、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(cb1)、活性メチレン化合物(cb2)及び前記活性水素含有化合物を反応させることによって得られる化合物であってもよい。具体的には、例えば、上記活性水素含有化合物として、前記ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を使用することにより、ポリイソシアネート化合物(cb1)中のイソシアネート基の一部が活性メチレン化合物(cb2)によってブロックされ、他のイソシアネート基の一部又は全部がポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物と反応した活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物とすることができる。
2級アルコール(cb4)
本発明において、前記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)は、例えば、上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)と、下記一般式(VI)で示される2級アルコール(cb4)
〔式(VI)中、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
とを反応させることによって、得ることができる。
2級アルコール(cb4)は、上記一般式(VI)で示される化合物である。なかでも、前記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)と上記2級アルコール(cb4)との反応性を高める観点から、R2はメチル基であることが好ましい。また、R3、R4及びR5は、それぞれ炭素数が多いと、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の極性が低下し、他の塗料成分との相溶性が低下する場合があるため、R3は炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、R4及びR5はメチル基であることが好ましい。
上記2級アルコール(cb4)としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)及び上記2級アルコール(cb4)の反応後に、未反応の2級アルコール(cb4)の一部又は全部を蒸留除去する際に、該2級アルコール(cb4)の除去が比較的容易であることから、比較的低い沸点を有する4−メチル−2−ペンタノールがより好ましい。
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)は、具体的には、例えば、前記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)の説明において記載した下記一般式(IV)
〔式(IV)中、R
1は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)及び上記2級アルコール(cb4)を反応させることによって得ることができる。
この場合、上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)中のブロックイソシアネート基におけるR1の少なくとも一方が、下記一般式(VII)
〔式(VII)中、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
また、この場合、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(I)中、R
1、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
ここで、式(I)中、R
1は炭素数1〜8の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜4の炭化水素基がさらに好ましく、炭素数2〜3の炭化水素基がさらに特に好ましい。
又は下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(II)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は前記と同じ。〕
を有する。
上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)及び2級アルコール(cb4)の反応は、例えば、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)中のブロックイソシアネート基におけるR1の少なくとも一方を、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)中のR1の少なくとも一方に由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(I)又は(II)で示されるブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)を得る方法が好ましい。
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは45〜125℃、より好ましくは75〜95℃の温度で、必要に応じて減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎると活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−1)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の分解劣化が激しくなり、硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
また、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)は、前記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)の説明において記載した下記一般式(V)
〔式(V)中、R6及びR7は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)と、前記2級アルコール(cb4)とを反応させることによって得ることができる。
この場合、上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)中のブロックイソシアネート基におけるR7は、下記一般式(VII)
〔式(VII)中、R2、R4及びR5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、R3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
この場合、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)は、下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
〔式(III)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は前記と同じであり、R
6は、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
を有する。
前記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)及び2級アルコール(cb4)の反応は、例えば、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)中のブロックイソシアネート基におけるR7を、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)中のR7に由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)を得る方法が好ましい。
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、必要に応じて減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎると活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3−2)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の分解劣化が激しくなり硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
また、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の製造における、前記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)及び2級アルコール(cb4)の配合割合は、得られる活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の反応性および製造効率の観点から、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)の固形分100質量部を基準として、2級アルコール(cb4)が5〜500質量部の範囲内であることが好ましく、10〜200質量部の範囲内であることがさらに好ましい。5質量部未満では、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)及び2級アルコール(cb4)の反応速度が遅すぎる場合がある。また、500質量部を超えると生成する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の濃度が低くなりすぎ製造効率が低下する場合がある。
また、上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)及び2級アルコール(cb4)の反応においては、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の分子量を調整するために、該活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物中間体(cb3)及び2級アルコール(cb4)に、前記多官能水酸基含有化合物を加えてから前記除去操作を行ってもよい。
上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の数平均分子量は、他の塗料成分との相溶性、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性等の観点から、600〜30,000の範囲内であることが好ましい。上記数平均分子量の上限は、他の塗料成分との相溶性ならびに形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、10,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。また、下限は、形成される複層塗膜の耐水性及び耐チッピング性の観点から、900がより好ましく、1,000がさらに好ましい。
上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)を含有する水性塗料組成物を用いて形成した複層塗膜は、平滑性、鮮映性及び耐水性が良好であり、低温(70℃以上120℃未満)での硬化性にも優れる。平滑性及び鮮映性が良好な理由としては、上記活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)が、特定の分岐構造の炭化水素基を有するため、水性プライマー塗料組成物を塗装した未硬化のプライマー塗膜上に該水性塗料組成物(水性ベース塗料組成物)を塗装した場合、両塗膜間の混層が抑制されるためだと推察される。また、親水基を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB’)が場合によっては特に貯蔵安定性が高いため、長期貯蔵後でも硬化性及び耐水性が良好となる。
本発明の水性塗料組成物において、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)の配合割合は、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性等の観点から、ポリエステル樹脂(A)、被膜形成性樹脂(B)及び架橋剤(C)の固形分総量を基準として、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
ブロックポリイソシアネート化合物(CA)
前記ブロックポリイソシアネート化合物(CA)は、前述の特定の構造を有する活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)以外のブロックポリイソシアネート化合物であり、特に限定されず、通常のポリイソシアネート化合物及びブロック剤を用いて合成することができる。
上記ポリイソシアネート化合物(CA)は、下記のようなジイソシアネートを主原料として得られる。
ジイソシアネートは、脂肪族、脂環族及び/又は芳香族ジイソシアネートである。脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4〜30のものが挙げられ、脂環族ジイソシアネートとしては、炭素数8〜30のものが好ましく、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられ、芳香族ジイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ポリフェニルメタンジイソシアネ−ト(以下、ポリメリックMDIという)などを挙げることが出来る。なかでも、耐候性及び/又は工業的入手の容易さから、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートが好ましく、これらは単独で使用しても、併用しても良い。
上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2〜20個程度有し、例えば、ビウレット結合、尿素結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレタン結合、アロファネート結合、オキサジアジントリオン結合等を形成することにより製造されたジイソシアネートの1〜20量体のモノマー又はオリゴマーである。
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックするために使用されるブロック剤は公知のものを使用することができ、例えば、活性メチレン系、フェノール系、アルコール系、メルカプタン系、酸アミド系、イミド系、アミン系、イミダゾール系、尿素系、カルバミン酸塩系、イミン系、オキシム系、亜硫酸塩系の化合物などを好適に使用することができる。尚、上記活性メチレン系ブロック剤は、前述の活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物(CB)で用いられる特定の構造を有する活性メチレン系ブロック剤以外のブロック剤である。
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(CA)は、水性塗料組成物の貯蔵安定性及び硬化性ならびに形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
上記親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物は、例えば、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、カチオン性の親水基を有する活性水素含有化合物等の親水基を有する活性水素含有化合物を使用することで得ることができる。上記親水基を有する活性水素含有化合物としては、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物が好ましく、なかでも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールがより好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
上記ブロックポリイソシアネート化合物(CA)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アミノ樹脂(CM)
前記アミノ樹脂(CM)としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
アミノ樹脂(CM)としては、メラミン樹脂(CM’)が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましい。
また、上記メラミン樹脂は、得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、重量平均分子量が400〜6,000であるのが好ましく、500〜4,000であるのがより好ましく、600〜3,000であるのがさらに好ましい。
メラミン樹脂(CM’)としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
水性塗料組成物の組成及び調製方法
本発明の水性塗料組成物は、さらに、顔料を含有することが好ましい。該顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、機能性顔料等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができるが、着色顔料及び光輝性顔料の少なくとも一方を含有することが好ましい。
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
本発明の水性塗料組成物が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜200質量部、特に5〜160質量部、さらに特に10〜130質量部の範囲内であることが好適である。
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムがあるが、いずれも使用できる。上記光輝性顔料はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の水性塗料組成物が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることができる。
本発明の水性塗料組成物は、通常、水性媒体として脱イオン水を用いるが、形成塗膜の平滑性、鮮映性及び耐ワキ性向上等の観点から、さらに、疎水性溶媒を含有することが好ましい。
上記疎水性溶媒としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒であるのが望ましい。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の水性塗料組成物が、疎水性溶媒を含有する場合、その含有量は、樹脂固形分100質量部を基準として、一般に2〜100質量部、特に5〜80質量部、さらに特に8〜60質量部の範囲内であることが好ましい。
また、本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を含有することができる。
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等が挙げられる。これらの増粘剤は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記ポリアクリル酸系増粘剤としては、市販品を使用することができ、市販品の商品名として、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOL ASE−60」、「ACRYSOL TT−615」、「ACRYSOL RM−5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。上記会合型増粘剤としては、市販品を使用することができ、市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOL RM−8W」、「ACRYSOL RM−825」、「ACRYSOL RM−2020NPR」、「ACRYSOL RM−12W」、「ACRYSOL SCT−275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。上記ポリアマイド系増粘剤としては、楠本化成社製の「AQ−630」、「AQ−870」(以上、商品名)等が挙げられる。
本発明の水性塗料組成物が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の含有量は、樹脂固形分100質量部を基準として、通常0.01〜15質量部、特に0.05〜10質量部、さらに特に0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
本発明の水性塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A)、被膜形成性樹脂(B)及び硬化剤(C)、ならびに、必要に応じて、顔料、疎水性溶媒及びその他の塗料用添加剤を、それ自体既知の方法により、水性媒体中で、混合、分散することによって調製することができる。また、水性媒体としては、脱イオン水以外に親水性有機溶媒を使用することができる。親水性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等を挙げることができる。
本発明の水性塗料組成物は、一般に10〜60質量%、好ましくは15〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲内の固形分濃度を有することができる。
本明細書において、塗料、樹脂等の「固形分」は110℃で1時間乾燥させた後に残存する不揮発性成分を意味する。例えば、塗料の固形分は、110℃で1時間乾燥させた後に残存する、塗料に含有される基体樹脂、硬化剤、顔料等の不揮発性成分を意味する。このため、塗料の固形分濃度は、アルミ箔カップ等の耐熱容器に塗料を量り取り、容器底面に該塗料を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する塗料成分の質量を秤量して、乾燥前の塗料の全質量に対する乾燥後に残存する塗料成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
本発明の複層塗膜形成方法
本発明の水性塗料組成物を水性ベース塗料(Y)として用いた複層塗膜形成方法は、3コート1ベーク方式で複層塗膜を形成せしめる方法I、または4コート1ベーク方式で複層塗膜を形成せしめる方法IIのいずれかで好適に用いることができる。
方法I
本発明の第一の複層塗膜形成方法(方法I)は、自動車車体、自動車部品等の被塗物上に、プライマー塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜を、3コート1ベーク方式で形成せしめる場合に、好適に用いることができる。
この場合の複層塗膜の形成は、下記工程1−1〜1−4に従って行うことができる。
下記の工程1−1〜1−4:
工程1−1:被塗物に、プライマー塗料(X)を塗装してプライマー塗膜を形成せしめる工程、
工程1−2:上記の未硬化のプライマー塗膜上に、水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成せしめる工程、
工程1−3:上記の未硬化のベース塗膜上に、ポリイソシアネート化合物含有のクリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、ならびに
工程1−4:上記の未硬化のプライマー塗膜、未硬化のベース塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を順次行う工程において、上記水性ベース塗料(Y)が本発明の水性塗料組成物である複層塗膜形成方法。
工程1−1
本発明の第一の複層塗膜形成方法(方法I)においては、まず、被塗物上に、プライマー塗料(X)が塗装される。
被塗物
本発明の複層塗膜形成方法において、上記プライマー塗料組成物(X)を塗装できる被塗物は、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
塗膜が形成された被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体であってもよい。
被塗物は、上記プラスチック材料やそれから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、必要に応じて、表面処理を行ったものであってもよい。また、プラスチック材料と金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
プライマー塗料(X)
本発明の複層塗膜形成方法において使用されるプライマー塗料(X)は、公知の中塗り塗料又はプラスチック用プライマー塗料を使用することができる。具体的には、例えば、被膜形成性樹脂、架橋剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、導電性顔料及び溶媒を含有する塗料組成物を好適に使用でき、さらに、該プライマー塗料(X)は必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、可塑剤、付着付与剤、相溶化剤、消泡剤、粘性調整剤、防錆剤、表面調整剤等の塗料添加剤を適宜含有せしめることができる。
被膜形成性樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、水酸基を含有していることが望ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記プライマー塗料(X)は、架橋剤を配合することによって架橋せしめてもよく、架橋剤を配合せず実質的に未架橋でもよい。また、架橋剤を含有する場合、例えば、前記ブロックポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂等を含有せしめた1液型プライマー塗料でも良く、塗装前にポリイソシアネート化合物等の架橋剤を混合せしめた2液型プライマー塗料でも良いが、1液型プライマー塗料が好ましく、ブロックポリイソシアネート化合物含有の1液型プライマー塗料がさらに好ましい。
また、上層のベース塗膜やクリヤー塗膜に含有される架橋剤の染み込みによりプライマー塗膜を架橋せしめることが好ましい。架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を好適に使用することができるが、クリヤー塗膜にポリイソシアネート化合物を含有せしめ、下層への染み込みによりベース塗膜及びプライマー塗膜を硬化せしめることがより好ましい。
上記プライマー塗料としては、有機溶剤型塗料、水性塗料のいずれを用いてもよいが、水性塗料を用いるのが好ましい。
また、被塗物がプラスチック材料で、かつ上記プライマ−塗膜の上層に静電印加方式で水性ベース塗料(Y)を塗装する場合、プライマー塗料として、導電プライマー塗料を用いる事が好ましい。導電プライマー塗料とは、水性ベース塗料(Y)の塗装時に、プライマー塗膜の表面電気抵抗値が109Ω/cm2未満であることを特徴とする塗料であり、塗膜に導電性を付与するために、導電カーボン、金属、導電性金属酸化物などの導電性フィラーを含有せしめることが好ましい。
上記プライマー塗料(X)の塗装は、公知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。
尚、上記表面電気抵抗値は、電気抵抗測定機(商品名「MODEL150」、TREK社製)を用いて測定できる。
工程1−2
以上に述べた工程1−1で形成されるプライマー塗膜上には、次いで、本発明の水性塗料組成物である水性ベース塗料(Y)が塗装される。
上記プライマー塗膜は、水性ベース塗料(Y)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備乾燥)、エアブロー等を行うことができる。なお、本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
上記プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60℃以上80℃未満が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
プライマー塗膜は、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の向上ならびにワキの抑制の観点から、水性ベース塗料(Y)を塗装する前に、必要に応じて、上記プレヒート、エアブロー等を行なうことにより、塗膜の固形分含有率が通常60〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
ここで、塗膜の固形分含有率は以下の方法により測定することができる:
まず、被塗物上にプライマー塗料(X)を塗装すると同時に、予め質量(W1)を測定しておいたアルミホイル上にもプライマー塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、プレヒート等がされた該アルミホイルを水性ベース塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W2)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W3)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W3−W1)/(W2−W1)}×100
水性ベース塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらのうち、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。
工程1−3
本発明の第一の複層塗膜形成方法(方法I)においては、上記工程1−2で形成されるベース塗膜上に、クリヤー塗料(Z)が塗装される。
ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、ベース塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備乾燥)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60℃以上〜80℃未満が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
ベース塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、必要に応じて、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が通常60〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
クリヤー塗料(Z)としては、自動車車体、自動車部品又は家庭電気製品等の塗装用として、それ自体既知の水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有するクリヤー塗料を使用することができる。
また、上記クリヤー塗料(Z)は、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有していれば、一液型塗料であってもよいし、多液型塗料であってもよいが、ポリイソシアネート化合物を塗装前に混合する二液型クリヤー塗料がより好ましい。
上記水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物との混合比は、ポリイソシアネート化合物の染み込み性及び複層塗膜の硬化性などの観点から、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート当量/水酸基含有樹脂の水酸基当量の比が1.0〜2.0、好ましくは1.1〜1.5の量で配合する。ポリイソシアネート化合物のイソシアネート当量/水酸基含有樹脂の水酸基当量の比が1.0より小さいと架橋性が不十分になり、2.0より大きいと熱による黄変が生じやすくなる。
また、上記クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに、体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、粘性調整剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
クリヤー塗料(Z)は、水性ベース塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができる。また、クリヤー塗料を塗装する時の複層塗膜の表面電気抵抗値が109Ω/cm2未満であれば、静電印加方式で塗装することができる。
また、クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件(例えば、40〜80℃の温度で1〜60分間)でプレヒート(予備加熱)又はエアブロー等を行うことができる。
工程1−4
本発明の第一の複層塗膜形成方法(方法I)においては、以上に述べた工程1−1〜1−3で形成される未硬化のプライマー塗膜、未硬化のベース塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜が同時に加熱硬化せしめられる。
上記プライマー塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により、行うことができる。
加熱温度は、省エネルギー及び/又は基材の耐熱性の観点から、70℃〜120℃が好ましく、70〜110℃がより好ましく、80〜100℃がさらに好ましい。
また、加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。この加熱により、プライマー塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜の3層からなる複層塗膜を同時に硬化させることできる。
方法Iにおいて、プライマー塗料(X)の塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常3〜40μm、特に5〜30μm、さらに特に7〜20μmの範囲内が好ましい。また、水性ベース塗料(Y)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、通常3〜50μm、特に5〜35μm、さらに特に10〜25μmの範囲内が好ましい。また、クリヤー塗料(Z)の塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常10〜80μm、特に15〜60μm、さらに特に20〜45μmの範囲内が好ましい。
方法II
本発明の第二の複層塗膜形成方法(方法II)は、被塗物上に、プライマー塗膜、ベース塗膜、第二ベース塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜を4コート1ベーク方式で形成せしめる場合に、好適に用いることができる。また、本発明の第二の複層塗膜形成方法(方法II)は、特に、ベース塗膜に白色ベース、第二ベース塗膜に干渉性顔料ベースを用いたホワイトパール塗色の複層塗膜を形成せしめる場合に、好適に用いることができる。
この場合の複層塗膜の形成は、下記工程2−1〜2−5に従って行うことができる。
下記の工程2−1〜2−5:
工程2−1:被塗物に、プライマー塗料(X)を塗装してプライマー塗膜を形成せしめる工程、
工程2−2:上記の未硬化のプライマー塗膜上に、水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成せしめる工程、
工程2−3:上記の未硬化のプライマー塗膜及び未硬化のベース塗膜上に、水性第二ベース塗料(Y2)を塗装して第二ベース塗膜を形成せしめる工程、
工程2−4:上記の未硬化のプライマー塗膜、未硬化のベース塗膜及び未硬化の第二ベース塗膜上にポリイソシアネート化合物含有のクリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、ならびに
工程2−5:上記の未硬化のプライマー塗膜、未硬化のベース塗膜、未硬化の第二ベース塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程、
を順次行う工程において、上記水性ベース塗料(Y)が本発明の水性塗料組成物である複層塗膜形成方法。
工程2−1
本発明の第二の複層塗膜形成方法(方法II)においては、まず、上記第一の複層塗膜形成方法(方法I)で記した自動車車体、自動車部品等の被塗物上に、前記工程1−1で記したプライマー塗料(X)が塗装される。形成する複層塗膜の塗色がホワイトパール塗色である場合、素地色を隠蔽する観点から、プライマー塗膜のL値が60以上であることが好ましく、70以上であることが更に好ましく、80以上であることが更に特に好ましい。
尚、L値はCIE等色関数における値であり、L値が大きいほど白いことを表す。
また、L値は、ミノルタ社製色彩色差計CR−200を用いてL値を測定した値である。
工程2−2
上記工程2−1で形成されるプライマー塗料(X)のプライマー塗膜上には、次いで、前記工程1−2で記した、本発明の水性塗料組成物である水性ベース塗料(Y)が塗装される。
形成する複層塗膜の塗色がホワイトパール塗色である場合、水性ベース塗料(Y)は、高白色度を有するものであることが適しており、白色顔料の含有量としては、塗料中の樹脂固形分100質量部に対して50〜200質量部、特に80〜150質量部の範囲内であることが好ましい。使用する白色顔料としては、例えば、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンなど)、鉛白、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポンなどが挙げることができるが、耐薬品性、意匠性の面から酸化チタンが好ましい。平均粒子径としては、約0.05〜2.0μm、特に0.1〜1.0μm程度であるルチル型の酸化チタンが最も好適である。
さらに必要に応じて白色顔料以外の着色顔料、体質顔料、機能性顔料などを適宜使用することができる。
工程2−3
上記工程2−2で形成される水性ベース塗料(Y)のベース塗膜上には、次いで、水性第二ベース塗料(Y2)が塗装される。該水性第二ベース塗料(Y2)としては、それ自体既知の水性塗料組成物を好適に使用する事ができるが、本発明の水性塗料組成物を使用する事がより好ましい。該水性第二ベース塗料(Y2)に含有せしめる顔料としては、前述の光輝性顔料が好ましく、中でも干渉性顔料がより好ましい。上記干渉性顔料としては、例えば、雲母、酸化チタンや酸化鉄などの金属酸化物で表面被覆した雲母、酸化チタンで表面被覆したグラファイトなどが挙げられる。
上記光輝性顔料(干渉性顔料)の含有量としては、塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、1〜30質量部、特に5〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
また、白色度を大きく低下させない範囲でその他の顔料、例えば、酸化チタン、カ−ボンブラック、亜鉛華、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの無機又は有機系の着色顔料、体質顔料並びに/若しくは機能性顔料などを好適に使用できる。これらは単独で、もしくは2種以上併用することができる。
水性第二ベース塗料(Y2)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらのうち、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。
工程2−4
上記工程2−3で形成される水性第二ベース塗料(Y2)の第二ベース塗膜上には、次いで、前記工程1−3で記したポリイソシアネート化合物含有のクリヤー塗料(Z)が塗装される。
また、クリヤー塗料組成物(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件(例えば、40〜80℃の温度で1〜60分間)でプレヒート(予備加熱)又はエアブロー等を行うことができる。
工程2−5
以上に述べた工程2−1〜2−4で形成される未硬化のプライマー塗膜、未硬化のベース塗膜、未硬化の第二ベース塗膜、未硬化のクリヤー塗膜が同時に加熱硬化せしめられる。
上記複層塗膜の加熱硬化は、前記工程1−4で記した方法により、行うことができる。
上記方法IIにおいて、プライマー塗料(X)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、通常3〜40μm、特に5〜30μm、さらに特に7〜20μmの範囲内が好ましい。
水性ベース塗料(Y)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、下地の色を隠蔽する必要があることから、通常3〜50μm、特に10〜40μm、さらに特に15〜35μmの範囲内が好ましい。
水性第二ベース塗料(Y2)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、通常1〜30μm、特に3〜20μm、さらに特に5〜10μmの範囲内が好ましい。
クリヤー塗料(Z)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、通常10〜80μm、特に15〜60μm、さらに特に20〜45μmの範囲内が好ましい。
本発明の水性塗料組成物が比較的低温の硬化温度(70〜120℃)でも良好な塗膜性能(付着性・耐水性など)が得られる理由としては、複層塗膜のベース塗膜に本発明の水性塗料組成物を用いた場合、ベース塗膜のTgが比較的低く、かつ低水酸基価のポリエステル樹脂(A)を含有しているため、クリヤー塗膜に含有するポリイソシアネート化合物が下層のベース塗膜やプライマー塗膜に染み込み易く、各塗膜の硬化性を向上させていると考えられる。ポリエステルの水酸基価を下げることによってベース塗膜の架橋不足が生じ得るが、ポリエステルを高分子量化させ、かつ塗料組成物として貯蔵性及び低温硬化性の良好な活性メチレン型ブロック化ポリイソシアネート化合物(CB)及び被膜形成性樹脂(C)を含有せしめることで、これを補うことが出来る。上記被膜形成性樹脂(B)に関しては、内部を架橋しているコア・シェル型水分散性水酸基含有アクリル樹脂(B1’’)を用いることで更に塗膜性能は良好となる。
従って、本発明の水性塗料組成物を用いれば、隠蔽性確保のためベース塗膜(白色塗膜)を厚膜(25μm以上)で塗装し、その上層にさらにもう1層塗装する4C1B工程のホワイトパール塗色の場合であっても、クリヤー塗膜から下層のベース塗膜及びプライマー塗膜にポリイソシアネート化合物が充分に染み込み、塗膜性能が良好な複層塗膜を得る事ができる。
また、クリヤー塗膜に含有するポリイソシアネート化合物が下層の塗膜へ均一に染み込む事で、硬化速度のムラがなくなり、仕上がり肌(平滑性・鮮映性)が向上すると考えられる。
上記理由により、本発明の水性塗料組成物は、第二の複層塗膜形成方法(方法II)を用いて塗装する場合、最も大きな効果を得る事ができ、好適に使用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
水酸基含有アクリル樹脂(B1−1)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル60部及びイソブチルアルコール15部を加え、窒素気流中で110℃に加温した。110℃に達したらスチレン10部、メチルメタクリレート48部、n−ブチルアクリレート26部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アクリル酸6部及びアゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を3時間かけて滴下した。添加終了後110℃で30分間熟成し、アゾビスイソブチロニトリル1部とエチレングリコールモノブチルエーテル15部の混合物を1時間を要して滴下した。さらに110℃で1時間熟成を行った後に冷却し、ジメチルアミノエタノールで当量中和し、脱イオン水を加えて水酸基含有アクリル樹脂(B1−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の固形分は50%であった。
水酸基含有ポリエステル樹脂(PE)の製造
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈し、固形分濃度70%である水酸基含有ポリエステル樹脂(PE)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。
顔料分散液(P−1)の製造
製造例3
撹拌混合容器に、製造例2で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(PE)42.9部(固形分30部)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型酸化チタン)112部、「ケッチェンブラックEC600J」(商品名 、ライオン社製、導電性カーボン)8部及び脱イオン水137.1部を入れ、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P−1)を得た。
プライマー塗料組成物(X)の製造
製造例4
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(B1−1)30部(固形分15部)、「タケラックWS5000」50部(固形分15部)(商品名、三井武田ケミカル社製、ポリウレタンディスパージョン、シラノール基含有の自己架橋型、固形分30%)、「スーパークロンE−403」133.3部(固形分40部)(商品名、日本製紙社製、塩素化ポリプロピレンの水分散品、樹脂の塩素含有率15%、固形分30%)及び製造例3で得た顔料分散液(P−1)300部を均一に混合し、更に、「ACRYSOL ASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分濃度45%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒のプライマー塗料組成物(X−1)を得た。
ポリエステル樹脂水分散液(A)の製造
製造例5
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、1,4−ブタンジオール173.6部、1,6−ヘキサンジオール227.6部、アジピン酸135.2部、ドデカン二酸346.0部、イソフタル酸224.1部を仕込み、攪拌しながら160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で縮合水を除去しながら縮合反応させた。酸価が1.0未満になったことを確認して170℃まで冷却し、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、無水トリメリット酸29.6部を加え、170℃で30分間反応させた。次いで、95℃まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを100部添加した。その後、撹拌しながらジメチルエタノールアミンを20部添加し、さらに脱イオン水を徐々に加え、温度が40℃以下にならないように温度を維持しながら水分散を行い、固形分30.0質量%に調整した。さらにジメチルエタノールアミンを加えてpH調整を行い、pH8.0、酸価18mgKOH/g、水酸基価0.9mgKOH/g、数平均分子量10,500のポリエステル樹脂水分散液(A−1)を得た。
尚、酸価及び水酸基価は、JIS−K1557(2007)に準拠して測定を行った。
製造例6〜12
下記表1に示す配合とする以外、製造例5と同様にして合成し、ポリエステル樹脂水分散液(A−2)〜(A−8)を得た。
表1に、ポリエステル樹脂水分散液(A−1)〜(A−8)の原料組成(部)、酸価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)及び数平均分子量(Mn)を示す。
尚、表1中の略号は、それぞれ下記の意味を有する。
14BG:1,4−ブタンジオール、
16HD:1,6−ヘキサンジオール、
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール、
NPG:ネオペンチルグリコール、
TMP:トリメチロールプロパン、
AD:アジピン酸、
DDA:ドデカン二酸、
tPA:テレフタル酸、
iPA:イソフタル酸、
HHPA:1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、
TMA:無水トリメリット酸。
水酸基含有アクリル樹脂水分散液(B1)の製造
製造例13
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水120部及び「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA社製、乳化剤、有効成分25%)0.8部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの5%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液2.5部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行った。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液3.8部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリル樹脂粒子水分散液(B1−2)を得た。得られたアクリル樹脂粒子は、酸価17mgKOH/g、水酸基価23mgKOH/g、ガラス転移点温度−20℃であった。
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水54部、「アデカリアソープSR−1025」3.1部、アリルメタクリレート1部、スチレン5部、n−ブチルアクリレート44部、メチルメタクリレート7部及びエチルアクリレート20部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水50部、「アデカリアソープSR−1025」1.8部、6%過硫酸アンモニウム水溶液0.04部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.3部、メタクリル酸2.6部、n−ブチルアクリレート4部、メチルメタクリレート3.1部及びエチルアクリレート8部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
製造例14〜16
下記表2に示す配合とする以外、製造例13と同様にして合成し、水酸基含有アクリル樹脂水分散液(B1−3)〜(B1−5)を得た。
表2に、水酸基含有アクリル樹脂水分散液(B1−2)〜(B1−5)の原料組成(部)、固形分(%)、酸価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)及びガラス転移点温度(℃)を示す。
尚、表2中の略号は、それぞれ下記の意味を有する。
AMA:アリルメタクリレート、
St:スチレン、
nBA:n−ブチルメタクリレート、
MMA:メチルメタクリレート、
EA:エチルアクリレート、
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
MAAc:メタクリル酸。
活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB)の製造
製造例17
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル365部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−1)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが183部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−1)の固形分濃度は約60%であった。
製造例18
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部、マロン酸ジイソプロピル330部及びアセト酢酸イソプロピル27部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.08モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−2)1390部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが173部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−2)の固形分濃度は約60%であった。
製造例19
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部、マロン酸ジエチル280部及びイソブチリル酢酸エチル30部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.08モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−3)1350部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが133部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−3)の固形分濃度は約60%であった。
製造例20
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル360部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに5−メチル−2−ヘキサノール990部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、5−メチル−2−ヘキサノール120部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−4)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが180部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−4)の固形分濃度は約60%であった。
製造例21
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「デュラネートTPA−100」450部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル360部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに6−メチルー2−ヘプタノール1110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で6時間かけて溶剤を留去し、さらに、6−メチル−2−ヘプタノール120部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−5)1430部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが170部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−5)の固形分濃度は約60%であった。
製造例22
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」360部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約550)60部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル252部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.12モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール683部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−6)1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが95部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−6)の固形分濃度は約60%であった。
製造例23
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これにn−ブタノールを630部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、n−ブタノールを90部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−7)1270部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが100部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−7)の固形分濃度は約60%であった。
製造例24
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これに2−ブタノールを630部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、2−ブタノールを90部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−8)1250部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが70部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−8)の固形分濃度は約60%であった。
製造例25
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これに2−エチル−1−ヘキサノールを1110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で6時間かけて溶剤を留去し、さらに、2−エチル−1−ヘキサノールを120部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−9)1410部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが130部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−9)の固形分濃度は約60%であった。
製造例26
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これにプロピレングリコールモノプロピルエーテルを1000部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを120部を加えて、活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−10)1380部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが125部含まれていた。得られた活性メチレン型ブロックポリイソシアネート化合物溶液(CB−10)の固形分濃度は約60%であった。
光輝性顔料分散液(M)の製造
製造例27
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部、2−エチル−1−ヘキサノール34.8部、リン酸基含有樹脂溶液(B1−6)(注1)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(M−1)を得た。
製造例28
攪拌混合容器内において、シルバーホワイトマイカ「Iriodin103」(商品名、メルクジャパン社製、平均粒径22.2μm)11部、2−エチル−1−ヘキサノール34.8部、リン酸基含有樹脂溶液(B1−6)(注1)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(M−2)を得た。
(注1)リン酸基含有アクリル樹脂溶液(B1−6):温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(注2)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有アクリル樹脂溶液(B1−6)を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注2)リン酸基含有重合性不飽和モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性不飽和モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
顔料分散液(P−2)の製造
製造例29
撹拌混合容器に、製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(B1−1)40部(固形分20部)、チタン白「CR−93」(商品名、石原産業社製、ルチル型酸化チタン)120部、脱イオン水140部を入れ、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P−2)を得た。
水性ベース塗料組成物(Y)及び水性第二ベース塗料組成物(Y2)の製造
実施例1
製造例5で得たポリエステル樹脂水分散液(A−1)116.7部(固形分35部)、製造例13で得た水酸基含有アクリル樹脂水分散液(B1−2)66.7部(固形分20部)、水酸基含有ポリウレタン樹脂溶液 「ユーコートUX−5210」(商品名、ポリカーボネ−ト系水性ポリウレタン樹脂、三洋化成工業社製、固形分32%)15.6部(固形分5部)、製造例17で得たブロックポリイソシアネート化合物(CB−1)16.7部(固形分10部)、メラミン樹脂溶液「サイメル325」(商品名、メチル化メラミン樹脂、日本サイテック社製、固形分80%)12.5部(固形分10部)、製造例29で得た顔料分散液(P−2)300部(チタン白120部、水酸基含有アクリル樹脂固形分20部)及び2−エチル−1−ヘキサノール10部を均一に混合し、更に、「ACRYSOL ASE−60」、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分濃度25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性ベース塗料組成物(Y−1)を得た。
実施例2〜18、比較例1〜11
下記表3に示す配合とする以外は、実施例1と同様にして、水性ベース塗料組成物(Y−2)〜(Y−27)、並びに水性第二ベース塗料組成物(Y2−1)及び(Y2−2)を得た。
尚、下記表3中の配合量は全て固形分での値である。
実施例19
脱脂処理をしたポリプロピレン板(PP板)に、製造例4で得たプライマー塗料組成物(X−1)を、硬化膜厚10μmとなるようにエアスプレー塗装し、プライマー塗膜を形成した。3分間放置後、60℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化のプライマー塗膜上に実施例1で得た水性ベース塗料組成物(Y−1)を、硬化膜厚25μmとなるように静電式回転霧化塗装機を用いて塗装し、ベース塗膜を形成した。5分間放置後、60℃で5分間プレヒートを行なった後、該未硬化のベース塗膜上に、実施例18で得た水性第二ベース塗料組成物(Y2−1)を、硬化膜厚7μmとなるように静電式回転霧化塗装機を用いて塗装し、第二ベース塗膜を形成した。5分間放置後、60℃で5分間プレヒートを行なった後、該未硬化の第二ベース塗膜上に、クリヤー塗料として、「ソフレックス#520クリヤー」(関西ペイント社製、商品名、ポリイソシアネート化合物含有2液アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚が30μmとなるように静電式回転霧化塗装機を用いて塗装し、クリヤー塗膜を形成した。7分間放置した後、80℃で30分間加熱して、上記プライマー塗膜、ベース塗膜、第二ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させ、試験板を作製した。
実施例20〜39及び比較例12〜19
下記表4に示す塗料組成物、硬化膜厚及び/又は焼付温度に変更する以外は、実施例19と同様にして、試験板を作製した。
実施例40
脱脂処理をしたポリプロピレン板(PP板)に、製造例4で得たプライマー塗料組成物(X−1)を、硬化膜厚10μmとなるようにエアスプレー塗装し、プライマー塗膜を形成した。3分間放置後、60℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化のプライマー塗膜上に実施例17で得た水性ベース塗料組成物(Y−17)を、硬化膜厚25μmとなるように静電式回転霧化塗装機を用いて塗装し、ベース塗膜を形成した。5分間放置後、60℃で5分間プレヒートを行なった後、該未硬化のベース塗膜上に、クリヤー塗料として、「クリヤー塗料(Z−1)」を硬化膜厚が30μmとなるように静電式回転霧化塗装機を用いて塗装し、クリヤー塗膜を形成した。7分間放置した後、80℃で30分間加熱して、上記プライマー塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させ、試験板を作製した。
実施例41及び比較例20〜21
下記表4に示す塗料組成物又は硬化膜厚に変更する以外は、実施例40と同様にして試験板を作製した。
評価試験
上記実施例19〜41及び比較例12〜21で得られた各試験板を用いて、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表4に示す。
(試験方法)
平滑性:試験板について、「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWc値を用いて評価した。Wc値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
鮮映性:試験板について、「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWa値を用いて評価した。Wa値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
耐水付着性:試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない。
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている。
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する。
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。