JP2017095533A - ブロックポリイソシアネート組成物、熱硬化性組成物、及び硬化物 - Google Patents

ブロックポリイソシアネート組成物、熱硬化性組成物、及び硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】低温硬化性と、主剤との相溶性、及び、少なくとも主剤と配合した後の貯蔵安定性に優れたブロックポリイソシアネート組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選択される一種又は二種以上のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートが有するイソシアネート基の少なくとも一部が、マロン酸ジエステルを含有するブロック剤でブロックされているブロックポリイソシアネートと1価アルコール化合物とを含有するブロックポリイソシアネート組成物であって、当該ブロックポリイソシアネート組成物はイソシアネート基が当該マロン酸ジエステルのエノール体でブロックされた構造である所定のブロックイソシアネート構造を少なくとも含み、該ブロックポリイソシアネート組成物において該ブロックイソシアネート構造の総量に対する所定の該ブロックイソシアネート構造のモル比が0.50以上0.95未満である、ブロックポリイソシアネート組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、熱硬化性組成物、及び硬化物に関する。
脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートからなるポリイソシアネートは、無黄変型であり、耐候性や耐薬品性、可撓性に優れた硬化剤であることが知られている。
また、上記ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック剤により封鎖させたブロックポリイソシアネートは、主剤である活性水素化合物と混合しても常温では反応せず、加熱することにより該活性水素化合物との反応が進行する。このため、あらかじめ主剤と硬化剤を混合した状態で貯蔵することが可能である。イソシアネート基を封鎖するブロック剤としては、例えば、オキシム系、アルコール系、フェノール系、及びアミン系のブロック剤があり、種々のポリイソシアネートとこれらのブロック剤との組み合わせが提案されている。
さらに、環境保全や省資源の観点から、加熱のためのエネルギー量削減を狙いとして、低温硬化性を有するブロックポリイソシアネート組成物が報告されている。このようなブロックポリイソシアネート組成物としては、例えば、特許文献1〜4の活性メチレン系ブロックポリイソシアネートが挙げられる。
特開平8−225630号公報 特開平9−255915号公報 特表2001−521956号公報 特表2006−335954号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載されるブロックポリイソシアネート組成物は、主剤である多価活性水素化合物の種類によっては、主剤との相溶性に優れない。また、特許文献3に記載されるブロックポリイソシアネート組成物は、その結晶性が高いことに起因して、その単独での貯蔵安定性及び主剤との相溶性に問題を有している。さらに、特許文献4に記載されるブロックポリイソシアネート組成物は、主剤と配合した後の貯蔵安定性に優れない。
そこで、本発明は、低温硬化性と、主剤との相溶性(以下、単に「相溶性」ともいう。)、及び、少なくとも主剤と配合した後の貯蔵安定性(以下、単に「貯蔵安定性」ともいう。)に優れたブロックポリイソシアネート組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記従来技術の課題を解決するため鋭意検討を進めた結果、特定のブロック剤でブロックされているブロックポリイソシアネートと、1価アルコール化合物とを含有し、特定のエノール体でブロックされた構造を少なくとも含むブロックポリイソシアネート組成物が、低温硬化性、相溶性、及び貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選択される一種又は二種以上のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートが有するイソシアネート基の少なくとも一部が、マロン酸ジエステルを含有するブロック剤でブロックされているブロックポリイソシアネートと、1価アルコール化合物と、を含有するブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロックポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基が前記マロン酸ジエステルのエノール体でブロックされた構造であり、かつ下記式(1)で表される、ブロックイソシアネート構造を少なくとも含み、
前記ブロックポリイソシアネート組成物において、前記ブロックイソシアネート構造の総量に対する、前記式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が炭素数4以上8以下のアルキル基を示す前記ブロックイソシアネート構造のモル比が、0.50以上0.95未満である、ブロックポリイソシアネート組成物。
(式(1)中、R1及びR2は、各々独立に炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
[2]
前記ブロックポリイソシアネート組成物は、前記式(1)における前記R1及び前記R2の少なくとも一方が、エチル基を示す前記ブロックイソシアネート構造を含む、[1]に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[3]
前記ブロック剤は、アセト酢酸エステル化合物をさらに含有する、[1]又は[2]に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[4]
前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの前記脂肪族ジイソシアネートを含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価活性水素化合物と、を含有する、熱硬化性組成物。
[6]
[5]に記載の熱硬化性組成物を硬化させることで得られる、硬化物。
本発明に係るブロックポリイソシアネート組成物によれば、低温硬化性、相溶性、及び貯蔵安定性に優れる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
〔ブロックポリイソシアネート組成物〕
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選択される一種又は二種以上のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートが有するイソシアネート基の少なくとも一部が、マロン酸ジエステルを含有するブロック剤でブロックされているブロックポリイソシアネートと、1価アルコール化合物と、を含有する。上記ブロックポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基がマロン酸ジエステルのエノール体でブロックされた構造であり、かつ下記式(1)で表されるブロックイソシアネート構造を少なくとも含む。また、上記ブロックポリイソシアネート組成物において、上記ブロックイソシアネート構造の総量に対する、式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が炭素数4以上8以下のアルキル基を示す上記ブロックイソシアネート構造のモル比が、0.50以上0.95未満である。
式(1)中、R1及びR2は、各々独立に炭素数1〜8のアルキル基を示す。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、後述するポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基がマロン酸ジエステルのエノール体でブロックされた構造であり、かつ式(1)で表されるブロックイソシアネート構造を少なくとも含む。このようなブロックイソシアネート構造を含むブロックポリイソシアネート組成物を得るためには、例えば、後述するポリイソシアネートをマロン酸ジエステルでブロックした後に、さらに1価アルコール化合物と反応させればよい。また、ブロックポリイソシアネートは、当該ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の一部が当該マロン酸ジエステルを含有するブロック剤でブロックされている。すなわち、ブロックイソシアネート構造は、後述するマロン酸ジエステルでブロックされたままの構造と、さらに1価アルコール化合物と反応した後の構造とを含み得る。
さらに、ブロックポリイソシアネート組成物は、式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方がエチル基を示すブロックイソシアネート構造を含むことが、低温硬化性の観点から好ましい。式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方がエチル基を示すブロックイソシアネート構造を含むブロックポリイソシアネート組成物を得るためには、例えば、後述するマロン酸ジエステルとしてマロン酸ジエチルを用いればよい。
ブロックポリイソシアネート組成物において、式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が炭素数4以上8以下のアルキル基を示すブロックイソシアネート構造のモル比が、該ブロックイソシアネート構造の総量に対して、0.50以上0.95未満であり、好ましくは0.60以上0.93以下であり、より好ましくは0.65以上0.91以下であり、さらに好ましくは0.70以上0.90以下である。上記モル比がこのような範囲にあることにより、硬化性及び相溶性が向上する。モル比は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
ブロックポリイソシアネート組成物の有効イソシアネート基含有率(以下、「有効NCO基含有率」という。)は、好ましくは3.0質量%以上22質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以上18質量%以下である。有効NCO基含有率がこのような範囲にあることにより、低温安定性と貯蔵安定性が両立する傾向にある。有効NCO基含有率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
<ポリイソシアネート>
本実施形態のポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選択される一種又は二種以上のジイソシアネートから得られ、該ジイソシアネートの2量体以上からなる多量体である。
本実施形態において「脂肪族ジイソシアネート」とは、分子中にイソシアネート基を除くと、鎖状脂肪族炭化水素を有し、芳香族炭化水素を有しない化合物をいう。脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」ともいう。)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートが挙げられる。このような脂肪族ジイソシアネートを用いることにより、得られるポリイソシアネートが低粘度となる傾向にあるのでより好ましい。
本実施形態において「脂環族ジイソシアネート」とは、分子中に芳香族性を有しない環状脂肪族炭化水素を有する化合物をいう。脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、及び1,4−シクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。
上述した脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートの中でも、HDI、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、及び水添ジフェニルメタンジイソシアネートが工業的に入手し易いため好ましく、HDIがより好ましい。HDIを用いることにより、ポリイソシアネート組成物から得られる塗膜の耐候性及び柔軟性がより優れる傾向にある。
脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用することもできる。
ポリイソシアネートの粘度は、25℃で好ましくは50mPa・s以上2,000,000mPa・s以下であり、より好ましくは3,000mPa・s以上50,000mPa・s以下である。粘度がこのような範囲にあることにより、十分な硬化性と良好な塗膜外観が得られるとなる傾向にある。粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(以下、「NCO基含有率」という。)は、好ましくは10質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは13質量%以上24質量%以下である。NCO基含有率がこのような範囲にあることにより、良好な硬化性が得られる傾向にある。NCO基含有率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、ビウレット基(結合)、尿素基(結合)、イソシアヌレート基(結合)、ウレトジオン基(結合)、ウレタン基(結合)、アロファネート基(結合)、オキサジアジントリオン基、及びイミノオキサジアジンジオン基からなる群より選択される一種又は二種以上の基(結合)を有するポリイソシアネートが挙げられる。
ビウレット結合を有するポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、水、t−ブタノール又は尿素等のいわゆるビウレット化剤とジイソシアネートとを、(ビウレット化剤)/(ジイソシアネートのイソシアネート基)のモル比が約1/2〜約1/100となる条件で反応させた後、未反応のジイソシアネートを除去することで得ることができる。これらの技術に関しては、例えば、特開昭53−106797号公報、特開昭55−11452号公報、及び特開昭59−95259号公報に開示されている。
尿素結合を有するポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、イソシアネート基を有する化合物と水又はアミン基を有する化合物から形成され得る。ポリイソシアネート中の尿素結合の含有量は少ないことが好ましい。これにより、得られるポリイソシアネートが凝集しにくくなる傾向にある。
イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、触媒等によりジイソシアネートのイソシアヌレート化反応を行い、転化率が約5〜約80質量%になったときに反応を停止し、未反応のジイソシアネートを除去することで得ることができる。この際に使用するイソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、具体的には、一般に塩基性を有するものが好ましく、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムの、ハイドロオキサイド、若しくは酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩;トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムの、ハイドロオキサイド、若しくは酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩;酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の、錫、亜鉛、鉛等のアルカリ金属塩;ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート;ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物;マンニッヒ塩基類;第3級アミン類とエポキシ化合物との併用;例えばトリブチルホスフィン等の燐系化合物等がある。これら触媒の使用量は、原料である、ジイソシアネート、及び必要に応じて添加するアルコールポリオールの質量に対して、10ppm〜1%の範囲から選択されることが好ましい。イソシアヌレート化反応を終了するときは、例えば、イソシアヌレート化反応触媒を中和する方法、及びリン酸、酸性リン酸エステル等の酸性物質の添加、熱分解、化学分解により不活性化する方法が挙げられる。
ウレトジオン結合を有するポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、ジイソシアネート及びウレトジオン化反応触媒を用いることで得ることができる。ウレトジオン化反応触媒としては、特に限定されないが、具体的には、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、トリス−(ジメチルアミノ)−ホスフィン等のトリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロヘキシル−ジ−n−ヘキシルホスフィン等のシクロアルキルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。これらの化合物はアロファネート化反応触媒にもなり得る。また、これらの化合物の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進し、ウレトジオン2量体等のウレトジオン基含有ポリイソシアネートに加えて、イソシアヌレート3量体等のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを生成することができる。また、ウレトジオン化反応触媒を用いなくとも、ウレトジオン2量体は加熱により得ることもできる。本実施形態のウレトジオン2量体等のウレトジオン基含有ポリイソシアネートは、加熱で製造することが、貯蔵安定性の点でより好ましい。
ウレタン結合を有するポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、水酸基を有する化合物とジイソシアネートとを、水酸基とイソシアネート基との当量比(水酸基/イソシアネート基)を約1/2〜約1/100で反応させた後、未反応のジイソシアネートモノマーを除去することで得ることができる。反応温度は、反応速度と副反応の抑制、着色防止の点で、好ましくは20〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、さらに好ましくは60〜120℃である。また、反応時間は、反応温度と同様の点で、好ましくは10分〜24時間であり、より好ましくは15分〜15時間であり、さらに好ましくは20分〜10時間である。ウレタン化反応は、無触媒で、又はスズ系触媒、アミン系触媒等の触媒の存在下で行うことができる。
アロファネート基を有するポリイソシアネートは、アルコールの水酸基とイソシアネート基を有する化合物から形成される。アロファネート基を生成するためには、アロファネート化反応触媒を用いることが好ましい。アロファネート化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩が挙げられ、具体的には、2−エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物;2−エチルヘキサン酸鉛等の有機鉛化合物;2−エチルヘキサン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;2−エチルヘキサン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物;2−エチルヘキサン酸ジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物;2−エチルヘキサン酸ジルコニル等の有機ジルコニル化合物が挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。また、上記のイソシアヌレート化反応触媒をアロファネート化反応触媒として使用することもできる。イソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行う場合には、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートも生成し得る。アロファネート化反応触媒として、イソシアヌレート化反応触媒を用い、アロファネート化反応と、イソシアヌレート化反応とを同時に行うことが経済的であり、生産上より好ましい。
上記アルコールから誘導されるアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は、粘度及び硬化性の観点から、1.0%以上50%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0%以上40%以下、さらに好ましくは1.0%以上30%以下である。アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は、1HNMRにより測定することができる。
上記アルコールの添加量は、アルコールの水酸基とジイソシアネートのイソシアネート基との当量比で1/1000以上1/10以下が好ましく、より好ましくは1/1000以上1/100以下である。1/1000以上とすることで、アロファネート基平均数が多くなる傾向にあり、生成したブロックポリイソシアネート組成物をより低粘度化する傾向にあるため好ましい。また、1/10以下とすることで、イソシアネート基平均数が多くなる傾向にあり硬化性に優れるため好ましい。
イミノオキサジアジンジオン結合を有するポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、ジイソシアネート及び特定の触媒等を用いて得ることができる。これに関する技術としては、例えば特開2004−534870号公報に開示されている。
上述した結合の中でも、耐候性、耐熱性、硬化性、及び相溶性の観点から、ビウレット基、イソシアヌレート基、ウレタン基、又はアロファネート基を含んだポリイソシアネートが好ましい。
<ブロック剤>
本実施形態のブロック剤は、マロン酸ジエステル化合物を含有する。また、ブロック剤は、アセト酢酸エステル化合物をさらに含有することが好ましい。
マロン酸ジエステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチルエステル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸ジフェニル、及びマロン酸ジベンジルが挙げられる。その中でも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチルエステル、マロン酸ジn−ヘキシル、及びマロン酸ジ2−エチルヘキシルが好ましく、より好ましくは、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、及びマロン酸メチルt−ブチルエステルであり、さらに好ましくは、マロン酸ジメチル、及びマロン酸ジエチルであり、さらにより好ましくは、マロン酸ジエチルである。これらのマロン酸ジエステル化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
マロン酸ジエステル化合物は、低温硬化性の点で、ポリイソシアネートのイソシアネート基に対して好ましくは50当量%以上、より好ましくは60当量%以上、さらに好ましくは80当量以上が用いられる。
アセト酢酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ブチル、及びアセト酢酸フェニルが挙げられ、これらのアセト酢酸エステル化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
アセト酢酸エステル化合物は、低温硬化性及び黄変性抑制の観点から、ポリイソシアネートのイソシアネート基に対して50当量%以下が好ましく用いられる。より好ましくは40当量%以下、さらに好ましくは20当量%以下である。
ブロックポリイソシアネートを形成するために、マロン酸ジエステル化合物及びアセト酢酸エステル化合物以外に、他のブロック剤を併用してもよい。ブロック剤中のマロン酸ジエステル化合物の比率は、ブロック剤の総量に対して、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70モル%以上である。
他のブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、マロン酸ジエステル以外の活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、及びピラゾール系化合物が挙げられる。
<1価アルコール化合物>
本実施形態の1価アルコール化合物とは、本実施形態のブロックポリイソシアネートにおいて、未反応のイソシアネート基と反応することができる化合物、及び/又はブロックポリイソシアネートの構造中における末端のアルキルエステル残基とエステル交換反応することができる化合物である。これにより、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の結晶化を抑制することができる。
1価アルコール化合物の炭素数は、貯蔵安定性及び相溶性、並びに結晶性の抑制の観点から、3以上10以下が好ましく、4以上9以下がより好ましく、4以上8以下がさらに好ましい。また、溶剤の飛散しやすさ及び低温硬化性の観点から、沸点が200℃以下が好ましく、80℃以上180℃以下がより好ましく、90℃以上160℃以下がさらに好ましい。
上記のような炭素数及び/又は沸点を有する1価アルコール化合物としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール(1−ブタノール)、iso−ブタノール(イソブタノール)、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、フェノール、及びベンジルアルコールが挙げられ、これらの一種又は二種以上を選択して用いることができる。
1価アルコール化合物の添加量は、特に限定されないが、ブロックされたイソシアネート基に対して、10当量%以上500当量%以下が好ましく、より好ましくは20当量%以上400当量%以下、さらに好ましくは30当量%以上300当量%以下である。
1価アルコール化合物をブロックポリイソシアネート組成物に含むことで、貯蔵安定性及び相溶性が向上する。詳細な要因は明らかではないが、1価アルコール化合物が、未反応のイソシアネート基と反応する、又はブロックポリイソシアネートの構造中における末端のアルキルエステル残基とエステル交換反応することにより、ブロックポリイソシアネートの構造上の対称性、ポリイソシアネートの配列性等を崩すことができることに起因して、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物が結晶化しにくくなると推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。
〔ブロックポリイソシアネート組成物の製造方法〕
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートとブロック剤との反応を行う工程により得られる。該反応には、好ましくは触媒が用いられる。触媒としては、特に限定されないが、塩基性化合物が好ましい。塩基性化合物としては、例えば、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチララート、ナトリウムフェノラート、カリウムメチラート等の金属アルコラート、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、その酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩;酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩;上記アルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩;ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
触媒の添加量は、ポリイソシアネートに対して0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上3.0質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下である。ポリイソシアネートと活性メチレン系化合物との反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。ポリイソシアネートと活性メチレン系化合物との反応は、副反応の抑制及び反応効率の観点から、−20℃以上150℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは0℃以上100℃以下である。
本実施形態において、ブロックポリイソシアネートを、炭素数4以上のアルキル基を有する1価アルコール化合物の存在下で加熱することにより、エステル交換反応を促進し、貯蔵安定性が向上する傾向にある。さらに、上記エステル交換反応により脱離したアルコールを、同時に加熱除去することにより、上述した式(1)におけるR1及びR2のうち、炭素数4以上のアルキル基の占める割合を本実施形態の範囲に調整することができ、貯蔵安定性及び相溶性が向上する傾向にある。
上記エステル交換反応を促進させるための加熱条件は、上述した式(1)におけるR1及びR2のエステル交換が起こる条件であればよく、所望の温度、時間にて調整可能である。ただし、好ましい加熱温度は、−20℃以上150℃以下であり、より好ましくは50℃以上100℃以下である。また、好ましい加熱時間は、0.2時間以上8時間以下であり、より好ましくは0.5時間以上5時間以下である。
上記の工程で製造したブロックポリイソシアネート組成物は、低温硬化性、貯蔵安定性、及び相溶性を両立することができる。
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、目的及び用途に応じて、各種有機溶剤を添加することができる。添加する有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤;トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、メシチレン、アニソール、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、クロロベンゼン等の芳香族系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶剤;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;モルフォリン等のアミン系溶剤;及びそれらの混合物が挙げられる。
ブロックポリイソシアネート組成物に、ジイソシアネートの2量体以上からなる、別のブロックポリイソシアネートを、任意の割合で添加してもよい。その際、結合しているブロック剤は、上記反応を行う工程により得られる生成物と同じものでも異なる構造のものでもよい。
また、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、目的及び用途に応じて、硬化促進触媒や酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、レベリング剤、可塑剤、レオロジーコントロール剤、界面活性剤等の各種添加剤を含有することができる。
上記硬化促進触媒としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジネオデカノエート、ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ等のスズ系化合物;2−エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛化合物;2−エチルヘキサン酸チタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトナート)等のチタン化合物;2−エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト等のコバルト化合物;2−エチルヘキサン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等のビスマス化合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、2−エチルヘキサン酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル等のジルコニウム化合物;アミン化合物が挙げられる。
上記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、及びイオウ系化合物が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、及びベンゾフェノン系化合物が挙げられる。
上記光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、及びベンゾエート系化合物が挙げられる。
上記顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インディゴ、キナクリドン、パールマイカ、及びアルミニウムが挙げられる。
上記レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンオイルが挙げられる。
上記可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル類、リン酸系化合物、及びポリエステル系化合物が挙げられる。
上記レオロジーコントロール剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、尿素化合物、及びマイクロゲルが挙げられる。
上記界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。
本実施形態に係るポリイソシアネート組成物及びブロックポリイソシアネート組成物において、上述したその他の添加剤の含有量は、0質量%以上80質量%以下であることが好ましく、0質量%以上70質量%以下であることが好ましく、0質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
〔熱硬化性組成物、硬化物〕
本実施形態の熱硬化性組成物は、上述したブロックポリイソシアネート組成物と、多価活性水素化合物とを含有する。また、本実施形態の硬化物は、上記熱硬化性組成物を硬化させることで得られる。
熱硬化性組成物は、ブロックポリイソシアネート組成物を主剤として、多価活性水素化合物と混合することで得られる。硬化物は、本実施形態の熱硬化性組成物は、加熱することによって、上述したポリイソシアネート組成物と上述したマロン酸ジエステルやアセト酢酸ジエステルとの反応物と、多価活性水素化合物中の活性水素とがエステル交換反応し、得ることができる。
〔多価活性水素化合物〕
本実施形態の多価活性水素化合物とは、分子内に活性水素が2つ以上結合している化合物である。活性水素化合物の例としては、特に限定されないが、例えば、ポリオール、ポリアミン、アルカノールアミン、及びポリチオールが挙げられるが、ポリオールが好ましい。
上記ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、及びエポキシ樹脂が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、及びポリカプロラクトン類が挙げられる。ポリエステルポリオールは、特に限定されないが、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる。上記二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸のカルボン酸からなる群より選ばれる一種又は二種以上の二塩基酸が挙げられる。また、上記多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及びグリセリンからなる群より選ばれる一種又は二種以上の多価アルコールが挙げられる。また、上記ポリカプロラクトン類は、特に限定されないが、例えば、多価アルコールを用いたε−カプロラクトンの開環重合により得られる。
上記アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物;アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒を使用して、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類;エチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;上記ポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
上記ポリオレフィンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、及び水素添加ポリイソプレンが挙げられる。
上記フッ素ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば特開昭57−34107号公報、特開昭61−275311号公報で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体が挙げられる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート等の低分子カーボネート化合物と、上述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオールと、を縮重合して得られるものが挙げられる。
上記ポリウレタンポリオールは、常法により、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得ることができる。
エポキシ樹脂としては、1分子にエポキシ基を2個以上有する樹脂であれば特に制限はなく、それ自体既知のものを使用することができる。エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールにエポクロルヒドリンを付加させて得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを付加させて得られるノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。該エポキシ樹脂は、必要に応じて水分散化して使用することができる。
上で列挙したポリオールの中でも、アクリルポリオール、及びポリエステルポリオールが好ましい。
上記ポリオールの水酸基価は、架橋密度や硬化物の機械的物性の点で、樹脂あたり10mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂あたりの水酸基価が10mgKOH/樹脂g以上であることによって、架橋密度が減少することを抑制し、本実施形態の目的とする物性を十分に達成することができる傾向にある。一方、樹脂あたりの水酸基価が300mgKOH/樹脂g以下であることによって、架橋密度が過度に増大することを抑制し、塗膜の機械的物性を高度に維持することができる傾向にある。上記水酸基価は、滴定法により求めることができる。
本実施形態の硬化性組成物において、ブロック化されたイソシアネート基と活性水素基とのモル比(イソシアネート基:活性水素基)は、10:1〜1:10に設定されることが好ましい。
本実施形態の硬化性組成物は、メラミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の他の硬化剤をさらに含むことができる。
メラミン系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、完全アルキルエーテル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、及び一部にイミノ基を有するイミノ基型メラミン樹脂が挙げられる。
メラミン系硬化剤を硬化剤として併用する場合には、酸性化合物をさらに添加することが有効である。酸性化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸、スルホン酸、酸性リン酸エステル、及び亜リン酸エステルが挙げられる。
カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、マレイン酸、及びデカンジカルボン酸が挙げられる。
スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びジノニルナフタレンジスルホン酸が挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジラウリルホスフェート、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、及びモノオクチルホスフェートが挙げられる。
亜リン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、モノエチルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、及びモノラウリルホスファイトが挙げられる。
エポキシ系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、及びルイス酸錯体が挙げられる。
〔用途〕
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、塗料組成物、粘着剤組成物、接着剤組成物、注型剤組成物等の硬化性組成物;繊維処理剤等の各種表面処理剤組成物;各種エラストマー組成物;発泡体組成物等の架橋剤;改質剤;添加剤として使用されうる。
本実施形態のポリイソシアネート及びブロックポリイソシアネート組成物を含有する塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装等により、各種素材に、プライマー又は中塗り、上塗りとして好適に使用される。また、この塗料組成物は、さらに防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装、プラスチック塗装等に、美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、密着性等を付与するために好適に用いられる。
本実施形態のポリイソシアネート及びブロックポリイソシアネート組成物を含有する粘着剤組成物、接着剤組成物の使用分野としては、自動車、建材、家電、木工、及び太陽電池用の積層体が挙げられる。その中でも、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の家電の液晶ディスプレイ用等の光学部材は、各種機能を発現するため、各種被着体のフィルム及びプレートを積層させる必要がある。各種被着体のフィルム及びプレート間に用いる材料は、十分な粘着性、あるいは接着性が要求されることから、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物を含有する粘着剤組成物、接着剤組成物の使用例として好ましい。
本実施形態のポリイソシアネート及びブロックポリイソシアネート組成物を含有する硬化性組成物等が用いられうる被着体としては、特に限定されないが、例えば、ガラス;アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレスのような各種金属;木材、紙、モルタル、石材のような多孔質部材;フッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装等がされた部材;シリコーン系硬化物、変性シリコーン系硬化物、ウレタン系硬化物等のシーリング材硬化物;塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム等のゴム類;天然皮革、人工皮革等の皮革類;植物系繊維、動物系繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の繊維類;不織布、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン等の樹脂類のフィルム及びプレート;紫外線硬化型アクリル樹脂層、印刷インキ、UVインキ等のインキ類が挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。まず、下記に各物性及び評価の測定方法及び評価基準について述べる。なお、以下で物の量又は割合を示す「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準の値を意味するものとする。
(物性1)ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(NCO基含有率)
合成例で得られたポリイソシアネートを試料として、イソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって、NCO基含有率を求めた。
(物性2)ポリイソシアネートの粘度
合成例で得られたポリイソシアネートを試料として、E型粘度計(株式会社トキメック社製)で測定し、ローターは標準ローター(1°34’×R24)を用い、25℃における粘度を測定した。当該標準ローターの回転数は以下の通りとした。
100r.p.m. (128mPa・s未満の場合)
50r.p.m. (128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20r.p.m. (256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10r.p.m. (640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5r.p.m. (1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
(物性3)ブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO基含有率
実施例及び比較例で得られた各ブロックポリイソシアネート組成物を試料として、有効NCO基含有率を(物性1)NCO基含有率から、下記の計算式を用いて算出した。
有効NCO基含有率(有姿、質量%)=ポリイソシアネートのNCO基含有率(質量%)×(ポリイソシアネートの仕込み量(g)/(ポリイソシアネートの仕込み量(g)+ブロック剤の仕込み量(g)))×固形分(質量%)/100
(物性4)ブロックイソシアネート構造のモル比
実施例及び比較例で得られた各ブロックポリイソシアネート組成物を試料として、マロン酸ジエチルに結合した末端アルキル基のいずれかが炭素数4以上8以下のアルキル基であるブロックイソシアネート構造のモル比(以下、「モル比M」と示す。)を次のように求めた。BrukerBiospin社製「Avance600」(商品名)を用いた1H−NMRの測定により、下記の通りモル比Mを求めた。具体的な測定条件は以下の通りであった。
装置:BrukerBiospin社製「Avance600」(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:256回
試料濃度:5.0質量%
ケミカルシフト基準:テトラメチルシランを0ppmとした。
ブロックポリイソシアネート組成物の1H−NMRを測定し、マロン酸ジエステルのエノール体のOH基のプロトン(16.4〜16.6ppm)に起因するピーク面積から、モル分率Mを、下記式より算出した。
モル比M=a/b
a:末端アルキル基の少なくとも一方が炭素数4以上8以下のアルキル基である、上記プロトンのピーク面積
b:上記プロトンの全ピーク面積
(合成例1)ポリイソシアネート
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI1000gを仕込み、撹拌下反応器内温度を60℃に保持した。その後、イソシアヌレート化反応触媒としてテトラメチルアンモニウムアセテート(2−ブタノール5.0質量%溶液)2.1g添加し、反応を行った。4時間後、反応液の屈折率測定により反応終点を確認し、燐酸(85質量%水溶液)0.2gを添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸留装置を用いて未反応のHDIを除去し、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを得た。得られたポリイソシアネートは、25℃における粘度が2500mPa・s、NCO基含有率が22.2質量%であった。
(実施例1)ブロックポリイソシアネート組成物A
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、合成例1で得られたポリイソシアネートを100部、酢酸ブチル41.7部を仕込み、マロン酸ジエチル53.3部、アセト酢酸エチル28.9部、28%ナトリウムメチラート溶液0.8部の混合物を室温で添加し、80℃で2時間反応を続けた。その後、1−ブタノール74.6部を添加し、窒素をフローさせながら、80℃、3時間撹拌し、樹脂分60%のブロックポリイソシアネート組成物Aを得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物Aの有効NCO基含有率及びモル比Mを表1に示す。
(実施例2)ブロックポリイソシアネート組成物B
実施例1と同様の装置にて、合成例1で得られたポリイソシアネートを100部、酢酸ブチル42.3部を仕込み、マロン酸ジエチル71.1部、アセト酢酸エチル14.5部、28%ナトリウムメチラート溶液0.8部の混合物を室温で添加し、80℃で2時間反応を続けた。その後、1−ブタノール76。0部を添加し、窒素をフローさせながら、80℃、3時間撹拌した。樹脂分60%のブロックポリイソシアネート組成物Bを得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物Bの有効NCO基含有率及びモル比Mを表1に示す。
(実施例3)ブロックポリイソシアネート組成物C
実施例1と同様の装置にて、合成例1で得られたポリイソシアネートを100部、酢酸ブチル43.0部を仕込み、マロン酸ジエチル88.9部、28%ナトリウムメチラート溶液0.8部の混合物を室温で添加し、80℃で2時間反応を続けた。その後、1−ブタノール75.3部を添加し、窒素をフローさせながら、80℃、3時間撹拌した。樹脂分60%のブロックポリイソシアネート組成物Cを得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物Cの有効NCO基含有率及びモル比Mを表1に示す。
(実施例4)ブロックポリイソシアネート組成物D
実施例1と同様の装置にて、合成例1で得られたポリイソシアネートを100部、酢酸ブチル42.3部を仕込み、マロン酸ジエチル71.1部、アセト酢酸エチル14.5部、28%ナトリウムメチラート溶液0.8部の混合物を室温で添加し、80℃で2時間反応を続けた。その後、1−ブタノール76.0部を添加し、窒素をフローさせながら、80℃、1時間撹拌した。樹脂分60%のブロックポリイソシアネート組成物Dを得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物Dの有効NCO基含有率及びモル比Mを表1に示す。
(実施例5)ブロックポリイソシアネート組成物E
実施例1と同様の装置にて、合成例1で得られたポリイソシアネートを100部、酢酸ブチル42.3部を仕込み、マロン酸ジイソプロピル94.0部、アセト酢酸エチル7.2部、28%ナトリウムメチラート溶液0.8部の混合物を室温で添加し、50℃で2時間反応を続けた。その後、イソブタノール82.2部を添加し、窒素をフローさせながら、80℃、3時間撹拌した。樹脂分60%のブロックポリイソシアネート組成物Eを得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物Eの有効NCO基含有率及びモル比Mを表1に示す。
(比較例1)ブロックポリイソシアネート組成物F
実施例1と同様の装置にて、合成例1で得られたポリイソシアネートを100部、酢酸ブチル42.3部を仕込み、マロン酸ジイソプロピル94.0部、アセト酢酸エチル7.2部、28%ナトリウムメチラート溶液0.8部の混合物を室温で添加し、50℃で2時間反応を続けた。その後、イソブタノール82.2部を添加し、窒素雰囲気下(フローなし)、50℃、2時間撹拌した。樹脂分60%のブロックポリイソシアネート組成物Fを得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物Fの有効NCO基含有率及びモル比Mを表1に示す。
(比較例2)ブロックポリイソシアネート組成物G
撹拌機、温度計、還流冷却管、及び滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、合成例1で得られたポリイソシアネートを100部、酢酸ブチル42.3部を仕込み、マロン酸ジエチル71.1部、アセト酢酸エチル14.5部、28%ナトリウムメチラート溶液0.8部の混合物を室温で添加し、80℃で2時間反応を続けた。その後、1−ブタノール76.0部を添加し、窒素雰囲気下(フローなし)で80℃、1時間撹拌した。樹脂分60%のブロックポリイソシアネート組成物Gを得た。得られたブロックポリイソシアネート組成物Gの有効NCO基含有率及びモル比Mを表1に示す。
(比較例3)ブロックポリイソシアネート組成物H
実施例1と同様の装置にて、合成例1で得られたポリイソシアネートを100部、酢酸ブチル49.1部を仕込み、マロン酸ジブチル120.0部、28%ナトリウムメチラート溶液0.8部の混合物を室温で添加し、80℃で2時間反応を続けた。その後、1−ブタノール89.7部を添加した。樹脂分60%のブロックポリイソシアネート組成物Fを得た。得られたブロックポリイソシアネートの有効NCO基含有率及びモル比率Mを表1に示す。
(評価1)硬化性
合成例2〜8で得られたポリイソシアネート組成物A〜Gと、Setalux1152(アクリルポリオール、Nuplex Resins社製、水酸基価70.4mgKOH/g(有姿)、固形分51質量%)を、NCO/OH=1.0になるように配合し、酢酸ブチルで固形分50%に希釈した。得られた塗料組成物を、PP板に、樹脂膜厚80μmになるようにアプリケーター塗装した。温度23℃にて30分間乾燥し、100℃にて30分間焼き付けた後、塗膜を板から剥がした。アセトン内に23℃、24時間浸漬した際の残膜率(ゲル分率)を測定し、下記評価基準により硬化性を評価した。
(評価基準)
○:ゲル分率が90質量%以上
×:ゲル分率が90%未満
(評価2)相溶性
(評価1)硬化性と同様の方法にて調整した塗料組成物を、ガラス板に樹脂膜厚80μmになるようにアプリケーター塗装した後の透明性を目視にて確認し、下記評価基準により相溶性を評価した。
(評価基準)
○:白濁なし
×:白濁あり
(評価3)貯蔵安定性
(硬化性)と同様の方法にて調製した塗料組成物を、50℃、1週間貯蔵した前後の(物性2)と同様の方法により粘度を測定し、下記評価基準により貯蔵安定性を評価した。
(評価基準)
○:初期の10倍未満
△:初期の10倍以上30倍未満
×:初期の30倍以上
合成例2〜8で得られたブロックポリイソシアネート組成物A〜Gに対して、(評価1)硬化性、(評価2)相溶性、(評価3)貯蔵安定性の各評価を行った結果を表1に示す。
本発明に係るブロックポリイソシアネート組成物は、ブロック剤で生成された特定の末端アルキル基を特定の比率で含有するため、低温硬化性、貯蔵安定性、及び相溶性に優れている。従って、塗料や接着剤、粘着剤、インキ、シーリング剤、注型剤、封止剤、表面改質剤、コーティング剤等として、優れた性能を発揮する。

Claims (6)

  1. 脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選択される一種又は二種以上のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートが有するイソシアネート基の少なくとも一部が、マロン酸ジエステルを含有するブロック剤でブロックされているブロックポリイソシアネートと、1価アルコール化合物と、を含有するブロックポリイソシアネート組成物であって、
    前記ブロックポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基が前記マロン酸ジエステルのエノール体でブロックされた構造であり、かつ下記式(1)で表される、ブロックイソシアネート構造を少なくとも含み、
    前記ブロックポリイソシアネート組成物において、前記ブロックイソシアネート構造の総量に対する、前記式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方が炭素数4以上8以下のアルキル基を示す前記ブロックイソシアネート構造のモル比が、0.50以上0.95未満である、ブロックポリイソシアネート組成物。
    (式(1)中、R1及びR2は、各々独立に炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
  2. 前記ブロックポリイソシアネート組成物は、前記式(1)における前記R1及び前記R2の少なくとも一方が、エチル基を示す前記ブロックイソシアネート構造を含む、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
  3. 前記ブロック剤は、アセト酢酸エステル化合物をさらに含有する、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
  4. 前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの前記脂肪族ジイソシアネートを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価活性水素化合物と、を含有する、熱硬化性組成物。
  6. 請求項5に記載の熱硬化性組成物を硬化させることで得られる、硬化物。
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