JP2014070085A - 熱可塑性ポリイミド、金属張積層体、回路基板、その使用方法、金属張積層体の製造方法及び回路基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温とオイル成分に繰り返しさらされる使用環境でも、金属層と樹脂層との接着力が低下しにくい金属張積層体及び回路基板を提供する。
【解決手段】 熱可塑性ポリイミドは、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応によって得られるポリアミド酸を熱処理し、イミド化して得られる。原料の芳香族ジアミンは、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有し、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合の量が、ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にある。熱可塑性ポリイミドを用いて作製した回路基板は、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合が硫黄化合物をトラップすることにより、硫黄化合物を含有する150℃のオイル中に浸漬し、1000時間以上経過後も、配線層と基材との間での高い接着力を維持できる。
【選択図】なし
【解決手段】 熱可塑性ポリイミドは、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応によって得られるポリアミド酸を熱処理し、イミド化して得られる。原料の芳香族ジアミンは、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有し、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合の量が、ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にある。熱可塑性ポリイミドを用いて作製した回路基板は、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合が硫黄化合物をトラップすることにより、硫黄化合物を含有する150℃のオイル中に浸漬し、1000時間以上経過後も、配線層と基材との間での高い接着力を維持できる。
【選択図】なし
Description
本発明は、フレキシブルプリント配線板等の製造に利用可能な熱可塑性ポリイミド、それを用いる金属張積層体、回路基板、その使用方法、金属張積層体の製造方法及び回路基板の製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、携帯電話等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
自動車においても軽量化を図る観点から、様々な部位、例えば自動車のエンジン周辺(具体的には、エンジン、吸気マニホールド、オルタネーター、ラジエーターなど)や、ギアボックス、トランスミッションなどにおいて、FPCの使用が増加している。
FPCの基材となる絶縁樹脂には、ポリイミドエステルやポリイミドが多く用いられているが、使用量としては耐熱性のあるポリイミドが圧倒的に多い。一方、導電材には、導電性に優れていることから一般に銅箔が用いられている。FPC材料として、例えば特許文献1では、カールの発生を抑えるため、導体と接するボトム層及び導体と反対側のトップ層の中間に線膨張係数が30×10−6(1/℃)以下の低熱膨脹性ポリイミドからなるベース層が配置され、ボトム層とトップ層がベース層よりも高熱膨脹性の熱可塑性ポリイミドからなるフレキシブルプリント配線用基板が提案されている。
また、例えば特許文献2では、湿度環境の変化に対して寸法変化が少ない積層体として、ポリイミド層の少なくとも1層が、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニルを20モル%以上含有するジアミノ化合物をテトラカルボン酸化合物と反応させて得られ、線湿度膨張係数が20×10−6/%RH以下である低湿度膨張性ポリイミド層を有するものが提案されている。
自動車用FPCは、繰り返し高温環境に曝されることに加え、オイル(例えば、エンジンオイル、トランスミッション用オイルなど)に接触する機会が多いという特徴を有している。ところが、FPCは繰り返しオイルに曝される間に、樹脂基材と配線層との接着性が低下し、配線層が剥離しやすくなるという問題があった。従って、自動車用FPCに使用される銅張積層体(CCL)などの金属張積層体には、一般的な電気・電子機器に必要とされる特性に加え、高温環境・オイル付着環境でも、金属層と樹脂基材との間で高い接着性を維持できることが求められる。
従って、本発明の目的は、高温とオイル成分に繰り返し曝される使用環境でも、金属層との接着力が低下しにくい樹脂素材を提供することである。
上記のとおり、FPCなどの回路基板が高温環境及びオイル付着環境に繰り返し置かれると、配線層と樹脂基材との接着力が低下する。この接着力低下の機構について調べたところ、オイル中に含まれている硫黄成分が原因であることが推定された。具体的には、オイル由来の硫黄化合物が、例えば銅配線とポリイミド基材との界面に浸入し、そこで銅と硫黄化合物が反応して脆弱な硫化銅層を形成する。この脆弱層内で凝集破壊が起こるため、銅とポリイミド基材間の接着力が低下する。このような機構で生じる接着力の低下(耐油性の低下)について、さらに検討を行ったところ、耐油性を低下させる主な劣化原因化合物は、オイル中に含まれる硫黄化合物の中でも、銅との反応性が非常に高いチオール化合物であると推定された。そこで、本発明では、チオール化合物と銅との反応を抑制するために、ポリイミド中に、チオール化合物に対してアクセプターとして機能するラジカル重合性の不飽和結合を存在させることによって、ポリイミド中を移動するチオール化合物をブロックし、耐オイル性を向上させ得ることを見出した。
すなわち、本発明の熱可塑性ポリイミドは、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応によって得られるポリアミド酸を熱処理し、イミド化して得られるものである。この熱可塑性ポリイミドにおいて、前記芳香族ジアミンは、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有し、前記炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にある。
本発明の金属張積層体は、金属層と、該金属層に接する熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、を有するものである。この金属張積層体は、前記熱可塑性ポリイミド層が、上記熱可塑性ポリイミドで形成されている。
本発明の回路基板は、熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、該熱可塑性ポリイミド層上に形成された配線層と、を有するものである。この回路基板は、前記熱可塑性ポリイミド層が、上記熱可塑性ポリイミドで形成されている。
本発明の回路基板の使用方法は、上記回路基板を、硫黄含有有機化合物を含有するオイル中で使用する。
本発明の金属張積層体の製造方法は、金属層と、該金属層に接する熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、を有する金属張積層体の製造方法であって、
炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記ラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程と、
前記金属層となる金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を熱処理してイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程と、
を備えている。
炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記ラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程と、
前記金属層となる金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を熱処理してイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程と、
を備えている。
本発明の回路基板の製造方法は、熱可塑性ポリイミドを含む絶縁層と、該熱可塑性ポリイミド層上に形成された配線層と、を有する回路基板の製造方法であって、
炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記ラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程と、
金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を熱処理してイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程と、
前記金属箔をパターニングして前記配線層を形成する工程と、
を備えている。
炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記ラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程と、
金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を熱処理してイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程と、
前記金属箔をパターニングして前記配線層を形成する工程と、
を備えている。
本発明の熱可塑性ポリイミドを用いることにより、繰り返し高温環境及びオイル付着環境に置かれても、金属層と樹脂層との接着力が低下しない金属張積層体や回路基板を形成することができる。また、本発明の熱可塑性ポリイミドを用いることにより、回路基板の信頼性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[熱可塑性ポリイミド]
本実施の形態の熱可塑性ポリイミドは、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応によって得られるポリアミド酸を熱処理し、イミド化して得られる熱可塑性ポリイミドである。ここで、芳香族ジアミンは、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有し、ラジカル重合性の不飽和結合の量が、ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内である。
本実施の形態の熱可塑性ポリイミドは、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応によって得られるポリアミド酸を熱処理し、イミド化して得られる熱可塑性ポリイミドである。ここで、芳香族ジアミンは、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有し、ラジカル重合性の不飽和結合の量が、ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内である。
本実施の形態の熱可塑性ポリイミドを用いて作製した金属張積層体及び回路基板は、後記実施例に示したように、硫黄化合物を含有する150℃のオイル中に浸漬し、1000時間以上経過後も、金属層と樹脂層との間での高い接着力を維持することができる。このように、本実施の形態において、熱可塑性ポリイミド中のラジカル重合性の不飽和結合は、硫黄化合物を捕捉するトラップ手段として作用するものである。
本実施の形態の熱可塑性ポリイミドを構成するポリイミドとしては、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド等の構造中にイミド基を有するポリマーからなる耐熱性樹脂を挙げることができる。
本実施の形態の熱可塑性ポリイミドに使用される前駆体としては、一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミド酸が好ましい。一般式(1)において、Ar1は式(2)、式(3)又は式(4)で表される2価の芳香族基を示し、Ar2は式(5)又は式(6)で表される4価の芳香族基を示し、R1は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示すが、R1のうち少なくとも一つは炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有しており、V及びWは独立に単結合又は炭素数1〜15の2価の炭化水素基、O、S、CO、SO2若しくはCONHから選ばれる2価の基を示し、m1は独立に0〜4の整数を示し、pは構成単位の存在モル比を示し、0.1〜1.0の値である。
上記一般式(1)において、Ar1はジアミンの残基ということができ、Ar2は酸無水物の残基ということができるので、好ましい熱可塑性ポリイミドをジアミンと酸無水物により説明する。しかし、熱可塑性ポリイミドは、ここで説明するジアミンと酸無水物から得られるものに限定されることはない。
本実施の形態に熱可塑性ポリイミドは、原料のジアミンに芳香族ジアミンを用いることによって、優れた耐熱性を有するものとなる。熱可塑性ポリイミドに炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を導入するためジアミンとして、好ましくは、下記一般式(7)で表される芳香族ジアミンを例示できる。
(式中、Xは単結合、CH2、C(CH3)2及びSO2から選択されるいずれかを示し、R2、R3は炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する1価の有機基を示す。)
式(7)において、R2、R3はラジカル重合性の不飽和結合を有する1価の有機基を示すが、(メタ)アクリル基、ビニル基又はアリル基を末端又は側鎖に有する1価の有機基が好ましく、より好ましくはCH=CH−R4−で表される基がよい。ここで、R4は直結合、炭素数1〜4の範囲内のアルキレン基を示すが、R4が直結合(つまり、式(7)中のR2、R3はビニル基)であることが反応性の点では好ましい。そのような式(7)の化合物の具体例としては、2,2’−ジビニル−4,4’‐ジアミノ−ビフェニル等が挙げられる。
また、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有するジアミン以外の芳香族ジアミンとして、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。
熱可塑性ポリイミドの形成に好適に用いられる酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物が挙げられる。
上記ジアミンおよび酸無水物は、それぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することもできる。また、上記以外のジアミン及び酸無水物を併用することもできる。
熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸において、式(1)で表される構造単位は、単独重合体中に存在しても、共重合体の構造単位として存在してもよい。構造単位を複数有する共重合体である場合は、ブロック共重合体として存在しても、ランダム共重合体として存在してもよい。式(1)で表される構造単位は複数であるが、1種であっても2種以上であってもよい。有利には、式(1)で表される構造単位を主成分とすることであり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上含む前駆体であることがよい。
また、ポリアミド酸は、重量1g当たりに存在する炭素数2〜6のラジカル重合性の不飽和結合の量が0.096mmol〜3mmolの範囲内であることが好ましく、0.15mmol〜2mmolの範囲内であることがより好ましい。ポリアミド酸の重量1g当たりに存在する炭素数2〜6のラジカル重合性の不飽和結合の量が0.096mmol未満では、硫黄化合物をトラップする効果が十分に得られない場合があり、3mmolを超えると、該不飽和結合どうしの重合反応が生じやすくなり、オイル成分由来の硫黄化合物をトラップする効果が低下する場合がある。
ポリアミド酸の合成は、上記酸無水物とジアミンを溶媒中で反応させることにより行うことができる。使用する溶媒については、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、n−メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。ポリアミド酸の合成は、酸無水物とジアミンのモル比(酸無水物のモル数/ジアミンのモル数)を1より大きくすることが好ましい。酸無水物を過剰に仕込むことによって、ポリアミド酸がアミン末端を持たない構造とすることが可能になり、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合との反応性を抑制することができる。
合成されたポリアミド酸は、ポリアミド酸溶液として使用される。通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、前駆体であるポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れる溶液化も容易である。
<熱可塑性ポリイミドの調製>
熱可塑性ポリイミドは、ポリアミド酸をイミド化(硬化)することによって調製される。イミド化の方法は、特に制限されず、例えば、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。
熱可塑性ポリイミドは、ポリアミド酸をイミド化(硬化)することによって調製される。イミド化の方法は、特に制限されず、例えば、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。
熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の重量平均分子量は、求核剤として作用し得るアミン末端を少なくしてラジカル重合性の不飽和結合との反応を抑制する観点から、10,000以上であることが好ましく、50,000〜300,000の範囲内がより好ましく、50,000〜150,000の範囲内が最も好ましい。また、重量平均分子量を10,000以上とすることによって、分子鎖の運動性を低下させ、アミン末端の求核性を低下させる効果も期待できる。
<樹脂組成物>
本実施の形態の樹脂組成物は、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有するポリアミド酸と溶媒との混合物である。ここで溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、n-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。
本実施の形態の樹脂組成物は、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有するポリアミド酸と溶媒との混合物である。ここで溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、n-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上併用して使用することもできる。
[金属張積層体及び回路基板]
本実施の形態の金属張積層体は、金属層と、該金属層に接する熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、を有し、熱可塑性ポリイミド層が、上記熱可塑性ポリイミドで形成されている。金属張積層体の具体例としては、例えば銅張積層体(CCL)などを挙げることができる。また、本実施の形態の回路基板は、熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、該熱可塑性ポリイミド層上に形成された配線層と、を有し、熱可塑性ポリイミド層が、上記熱可塑性ポリイミドで形成されている。
本実施の形態の金属張積層体は、金属層と、該金属層に接する熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、を有し、熱可塑性ポリイミド層が、上記熱可塑性ポリイミドで形成されている。金属張積層体の具体例としては、例えば銅張積層体(CCL)などを挙げることができる。また、本実施の形態の回路基板は、熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、該熱可塑性ポリイミド層上に形成された配線層と、を有し、熱可塑性ポリイミド層が、上記熱可塑性ポリイミドで形成されている。
本実施の形態の金属張積層体及び回路基板における金属層や配線層の材質としては、特に制限はないが、例えば銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。
本実施の形態の金属張積層体及び回路基板は、後記実施例に示したように、硫黄含有有機化合物を含有する150℃のオイル中に浸漬し、例えば1000時間以上経過後も、金属層と樹脂層との間で高い接着力を維持することができる。本実施の形態において、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合は、硫黄含有有機化合物を捕捉するトラップ手段として作用するものである。
[回路基板の使用方法]
本実施の形態の回路基板の使用方法は、上記回路基板を、硫黄含有有機化合物を含有するオイル中で使用する。ここで、硫黄含有有機化合物を含有するオイルとしては、例えばエンジンオイル、トランスミッションオイルなどを挙げることができる。また、硫黄含有有機化合物としては、例えば、ベンゾチアゾールなどのチオール化合物を挙げることができる。上記オイル中における本実施の形態の回路基板の使用温度は、例えば常温から200℃程度である。
本実施の形態の回路基板の使用方法は、上記回路基板を、硫黄含有有機化合物を含有するオイル中で使用する。ここで、硫黄含有有機化合物を含有するオイルとしては、例えばエンジンオイル、トランスミッションオイルなどを挙げることができる。また、硫黄含有有機化合物としては、例えば、ベンゾチアゾールなどのチオール化合物を挙げることができる。上記オイル中における本実施の形態の回路基板の使用温度は、例えば常温から200℃程度である。
[金属張積層体及び回路基板の製造方法]
本実施の形態において、熱可塑性ポリイミドを使用する以外、回路基板を作成する方法は問われない。例えば、熱可塑性ポリイミド層と金属層で構成される金属張積層体を用意し、この金属層をエッチングして配線を形成する方法(サブトラクティブ法)でもよい。また、熱可塑性ポリイミド層上にシード層を形成した後、レジストをパターン形成し、さらに金属をパターンメッキすることにより配線形成を行う方法(セミアディティブ法)でもよい。
本実施の形態において、熱可塑性ポリイミドを使用する以外、回路基板を作成する方法は問われない。例えば、熱可塑性ポリイミド層と金属層で構成される金属張積層体を用意し、この金属層をエッチングして配線を形成する方法(サブトラクティブ法)でもよい。また、熱可塑性ポリイミド層上にシード層を形成した後、レジストをパターン形成し、さらに金属をパターンメッキすることにより配線形成を行う方法(セミアディティブ法)でもよい。
サブトラクティブ法に用いる金属張積層体は、例えば熱可塑性ポリイミドによって構成されるポリイミドフィルムを用意し、これに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、例えばメッキによって金属層を形成して金属張積層体を調製してもよい。また、熱可塑性ポリイミドによって構成されるポリイミドフィルムを用意し、これに金属箔を熱圧着などの方法でラミネートして金属張積層体を形成してもよい。さらに、金属箔の上に炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有するポリアミド酸を含有する塗布液をキャストし、乾燥して塗布膜とした後、熱処理してイミド化することによって熱可塑性ポリイミド層を形成し金属張積層体を調製してもよい。
以下、代表的にキャスト法とサブトラクティブ法との組み合わせの場合を例に挙げて本実施の形態の回路基板の製造方法について、具体的に説明する。
まず、金属張積層体の製造は、以下の工程(1)〜(3)を含むことができる。
(1)炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記ラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程。
(2)前記金属層となる金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程。
(3)前記塗布膜を熱処理してイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程。
また、回路基板の製造は、上記(1)〜(3)の工程に加え、さらに、以下の工程(4)を含むことができる。
(4)金属張積層体の金属箔をパターニングして配線層を形成する工程。
(1)炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記ラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程。
(2)前記金属層となる金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程。
(3)前記塗布膜を熱処理してイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程。
また、回路基板の製造は、上記(1)〜(3)の工程に加え、さらに、以下の工程(4)を含むことができる。
(4)金属張積層体の金属箔をパターニングして配線層を形成する工程。
(1)炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合の量が、ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程:
この工程は、上記のとおり、原料の芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を適宜の溶媒中で反応させることにより行われる。
この工程は、上記のとおり、原料の芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を適宜の溶媒中で反応させることにより行われる。
(2)金属層となる金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程:
金属箔は、カットシート状、ロール状のもの、又はエンドレスベルト状などの形状で使用できる。生産性を得るためには、ロール状又はエンドレスベルト状の形態とし、連続生産可能な形式とすることが効率的である。さらに、回路基板における配線パターン精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、銅箔は長尺に形成されたロール状のものが好ましい。
金属箔は、カットシート状、ロール状のもの、又はエンドレスベルト状などの形状で使用できる。生産性を得るためには、ロール状又はエンドレスベルト状の形態とし、連続生産可能な形式とすることが効率的である。さらに、回路基板における配線パターン精度の改善効果をより大きく発現させる観点から、銅箔は長尺に形成されたロール状のものが好ましい。
塗布膜を形成する方法は、ポリアミド酸の樹脂溶液を金属箔の上に直接塗布するか、又は金属箔に支持されたポリイミド層の上に塗布した後に乾燥することで形成できる。塗布する方法は特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
熱可塑性ポリイミド層は、単層でもよいし、複数層からなるものでもよい。熱可塑性ポリイミド層を複数層とする場合、異なる構成成分からなる前駆体の層の上に他の前駆体を順次塗布して形成することができる。前駆体の層が3層以上からなる場合、同一の構成の前駆体を2回以上使用してもよい。層構造が簡単である2層又は単層、特に単層は、工業的に有利に得ることができるので好ましい。また、前駆体の層の厚み(乾燥後)は、3〜100μmの範囲内、好ましくは3〜50μmの範囲内にあることがよい。炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有するポリアミド酸の樹脂溶液を塗布する本実施の形態の方法では、塗布膜の厚みを自由に調節することが可能である。
熱可塑性ポリイミド層を複数層とする場合、金属層に接するポリイミド層が熱可塑性ポリイミド層となるように前駆体の層を形成することが好ましい。熱可塑性ポリイミドを用いることで、金属層との密着性を向上させることができる。このような熱可塑性ポリイミドは、ガラス転移温度(Tg)が350℃以下であるものが好ましく、より好ましくは200〜320℃である。
また、単層又は複数層の前駆体の層を一旦イミド化して単層又は複数層のポリイミド層とした後に、更にその上に前駆体の層を形成することも可能である。
(3)前記塗布膜を熱処理してポリアミド酸をイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程:
イミド化の方法は、特に制限されず、例えば、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。金属層の酸化を抑制するため、低酸素雰囲気下での熱処理が好ましく、具体的には、窒素又は希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、水素などの還元ガス雰囲気下、あるいは真空中で行うことが好ましい。熱処理により、塗布膜中のポリアミド酸がイミド化し、熱可塑性ポリイミドが形成される。この際、塗布膜中に含まれる炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合の大部分は熱可塑性ポリイミド中に移行する。このようにして、熱可塑性ポリイミド層(単層又は複数層)と金属層とを有する金属張積層体を製造することができる。
イミド化の方法は、特に制限されず、例えば、80〜400℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間加熱するといった熱処理が好適に採用される。金属層の酸化を抑制するため、低酸素雰囲気下での熱処理が好ましく、具体的には、窒素又は希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、水素などの還元ガス雰囲気下、あるいは真空中で行うことが好ましい。熱処理により、塗布膜中のポリアミド酸がイミド化し、熱可塑性ポリイミドが形成される。この際、塗布膜中に含まれる炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合の大部分は熱可塑性ポリイミド中に移行する。このようにして、熱可塑性ポリイミド層(単層又は複数層)と金属層とを有する金属張積層体を製造することができる。
(4)得られた金属張積層体の金属箔をパターニングして配線層を形成する工程:
本工程では、金属層を所定形状にエッチングすることによってパターン形成し、配線層に加工することによって回路基板を得る。エッチングは、例えばフォトリソグラフィー技術などを利用する任意の方法で行うことができる。
本工程では、金属層を所定形状にエッチングすることによってパターン形成し、配線層に加工することによって回路基板を得る。エッチングは、例えばフォトリソグラフィー技術などを利用する任意の方法で行うことができる。
なお、以上の説明では、本実施の形態の回路基板の製造方法の特徴的工程のみを説明した。すなわち、回路基板を製造する際に、通常行われる上記以外の工程、例えば前工程でのスルーホール加工や、後工程の端子メッキ、外形加工などの工程は、常法に従い行うことができる。
以上のように、本実施の形態の熱可塑性ポリイミドにより、繰り返し高温環境及びオイル付着環境に置かれても、金属層と樹脂基材との接着力が低下しない金属張積層体を形成することができる。また、本実施の形態の熱可塑性ポリイミドを用いることにより、回路基板の信頼性を向上させることができる。本実施の形態の回路基板は、例えば、自動車のエンジン、吸気マニホールド、オルタネーター、ラジエーターや、ギアボックス、トランスミッションなどのオイルが付着しやすい高温環境で使用される機器において、FPC等の用途で好ましく利用できるが、オイルが付着しない環境で使用される機器に適用することも可能である。なお、硫黄化合物を含有するオイルとしては、例えばエンジンオイル、トランスミッションオイルなどを挙げることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[接着強度の測定]
接着強度は、幅10mm、長さ100mmに切り出した評価サンプルを、引張試験機(東洋精機株式会社製、ストログラフ−M1)を用いて、180°方向に50mm/分の速度で、銅箔とポリイミド間を引き剥がす時の力を接着強度とした。
接着強度は、幅10mm、長さ100mmに切り出した評価サンプルを、引張試験機(東洋精機株式会社製、ストログラフ−M1)を用いて、180°方向に50mm/分の速度で、銅箔とポリイミド間を引き剥がす時の力を接着強度とした。
[硫黄濃度の測定]
硫黄濃度(以下「S濃度」と記すことがある)は、評価サンプルの銅とポリイミド間を引き剥がした後の銅箔側の剥離面のエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)分析により、得た。
硫黄濃度(以下「S濃度」と記すことがある)は、評価サンプルの銅とポリイミド間を引き剥がした後の銅箔側の剥離面のエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)分析により、得た。
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
BAPP:2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン
VAB:2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル
m−TB:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
TPE−R:1,3’−ビスアミノフェノキシベンゼン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
BAPP:2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン
VAB:2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル
m−TB:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
TPE−R:1,3’−ビスアミノフェノキシベンゼン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
合成例1 窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコに15.67gのBAPP(0.0382モル)、0.47gのビニル基を有するVAB(0.0020モル)、100gのDMAcを装入し、室温で攪拌して溶解させた。次に8.27gのPMDA(0.0379モル)及び0.59gのBPDA(0.00199モル)を添加し、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを得た。
合成例2〜5
表1に示す原料組成とした他は、合成例1と同様にしてポリアミド酸溶液b、c、d、eを調製した。
表1に示す原料組成とした他は、合成例1と同様にしてポリアミド酸溶液b、c、d、eを調製した。
実施例1
銅箔上に合成例1で重合したポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した後、その上に合成例5で得られたポリアミド酸溶液eを硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。更に、その上に合成例4で得たポリアミド酸溶液dを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。この後、130℃、145℃、160℃、210℃、280℃、320℃、360℃で各1〜15分段階的な熱処理を行って、銅箔上に3層のポリイミド層からなる配線基板用積層体1を作製した。銅箔上のポリイミド層の厚みは、銅箔側から順に2μm/21μm/2μmである。次に、配線基板用積層体1を10cm×3cmにカットした後、銅箔ポリイミドが9cm×2cmとなるように銅箔をエッチングし、銅側に10cm×3cmのカバーレイ(新日鐵化学株式会社製、商品名;エスパネックスSPC)を熱圧着して評価サンプル1を作製した。評価サンプル1の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度1)は1.3kN/mであった。
銅箔上に合成例1で重合したポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した後、その上に合成例5で得られたポリアミド酸溶液eを硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。更に、その上に合成例4で得たポリアミド酸溶液dを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。この後、130℃、145℃、160℃、210℃、280℃、320℃、360℃で各1〜15分段階的な熱処理を行って、銅箔上に3層のポリイミド層からなる配線基板用積層体1を作製した。銅箔上のポリイミド層の厚みは、銅箔側から順に2μm/21μm/2μmである。次に、配線基板用積層体1を10cm×3cmにカットした後、銅箔ポリイミドが9cm×2cmとなるように銅箔をエッチングし、銅側に10cm×3cmのカバーレイ(新日鐵化学株式会社製、商品名;エスパネックスSPC)を熱圧着して評価サンプル1を作製した。評価サンプル1の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度1)は1.3kN/mであった。
次に評価サンプル1に対し、オーブンでマツダ社製オートマチックトランスミッション用オイル(商品名;ATF M−III)中、150℃、250時間熱処理を行った。熱処理後の銅箔とPI間の接着強度(接着強度2)を測定したところ、0.30kN/mであった。このときの銅箔側の剥離面のS濃度は5%であった。そして、150℃、1,000時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度3)を測定したところ、0.05kN/mであった。結果を表2に示す。
実施例2
銅箔上に合成例2で重合したポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布したこと以外、実施例1と同様の方法で配線基板用積層体2を得た後、評価サンプル2を得た。評価サンプル2の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度1)は1.3kN/mであった。また、マツダ社製オートマチックトランスミッション用オイル(商品名;ATF M−III)中、150℃、250時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度2)は0.76kN/mであった。このときの銅箔側の剥離面のS濃度は1%であった。そして、150℃、1,000時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度3)を測定したところ、0.18kN/mであった。結果を表2に示す。
銅箔上に合成例2で重合したポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布したこと以外、実施例1と同様の方法で配線基板用積層体2を得た後、評価サンプル2を得た。評価サンプル2の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度1)は1.3kN/mであった。また、マツダ社製オートマチックトランスミッション用オイル(商品名;ATF M−III)中、150℃、250時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度2)は0.76kN/mであった。このときの銅箔側の剥離面のS濃度は1%であった。そして、150℃、1,000時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度3)を測定したところ、0.18kN/mであった。結果を表2に示す。
実施例3
銅箔上に合成例3で重合したポリアミド酸溶液cを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布したこと以外、実施例1と同様の方法で配線基板用積層体3を得た後、評価サンプル3を得た。評価サンプル3の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度1)は1.3kN/mであった。また、マツダ社製オートマチックトランスミッション用オイル(商品名;ATF M−III)中、150℃、250時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度2)は0.55kN/mであった。このときの銅箔側の剥離面のS濃度は5%であった。そして、150℃、1,000時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度3)を測定したところ、0.05kN/mであった。結果を表2に示す。
銅箔上に合成例3で重合したポリアミド酸溶液cを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布したこと以外、実施例1と同様の方法で配線基板用積層体3を得た後、評価サンプル3を得た。評価サンプル3の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度1)は1.3kN/mであった。また、マツダ社製オートマチックトランスミッション用オイル(商品名;ATF M−III)中、150℃、250時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度2)は0.55kN/mであった。このときの銅箔側の剥離面のS濃度は5%であった。そして、150℃、1,000時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度3)を測定したところ、0.05kN/mであった。結果を表2に示す。
比較例1
銅箔上に合成例4で重合したポリアミド酸溶液dを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した次に、その上に合成例1で得られたポリアミド酸溶液eを硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液dを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。この後、130℃、145℃、160℃、210℃、280℃、320℃、360℃で各1〜15分段階的な熱処理を行って、銅箔上に3層のポリイミド層からなる配線基板用積層体4を作成した。そして、実施例1と同様に配線基板用積層体4を得た後、評価サンプル4を得た。評価サンプル4の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度1)は1.3kN/mであった。また、マツダ社製オートマチックトランスミッション用オイル(商品名;ATF M−III)中、150℃、250時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度2)は0.12kN/mであった。このときの銅箔側の剥離面のS濃度は7%であった。そして、150℃、1,000時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度3)を測定したところ、0kN/mであった。結果を表2に示す。
銅箔上に合成例4で重合したポリアミド酸溶液dを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した次に、その上に合成例1で得られたポリアミド酸溶液eを硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液dを硬化後の厚みが2μmとなるように塗布し、125℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。この後、130℃、145℃、160℃、210℃、280℃、320℃、360℃で各1〜15分段階的な熱処理を行って、銅箔上に3層のポリイミド層からなる配線基板用積層体4を作成した。そして、実施例1と同様に配線基板用積層体4を得た後、評価サンプル4を得た。評価サンプル4の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度1)は1.3kN/mであった。また、マツダ社製オートマチックトランスミッション用オイル(商品名;ATF M−III)中、150℃、250時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度2)は0.12kN/mであった。このときの銅箔側の剥離面のS濃度は7%であった。そして、150℃、1,000時間熱処理後の銅箔とポリイミド間の接着強度(接着強度3)を測定したところ、0kN/mであった。結果を表2に示す。
炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有するポリイミド基材を用いた実施例1〜3では、150℃のオイル中での長期耐油性試験の結果、オイル中に250時間浸漬した時点での接着強度2が、ラジカル重合性の不飽和結合を有しないポリイミド基材を用いたサンプル(比較例1)と比較して、約2倍以上の0.3〜0.76kN/mを示した。そして、実施例1〜3では、剥離面の銅箔側の硫黄成分量が1〜5%であり、比較例1の7%よりも低減できた。さらに、150℃のオイル中に1,000時間浸漬後の接着強度3は、比較例1が接着強度を失った(0kN/m)のに対し、実施例1〜3では、0.05〜0.18kN/mの接着強度を保持し、ラジカル重合性の不飽和結合による耐油性の向上が見られた。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。例えば、上記実施の形態では、本発明のポリイミドの用途として、FPCなどの回路基板の基材を例に挙げたが、上記以外の用途、例えば回路基板の配線層を覆うカバーレイフィルム本体やカバーレイフィルム用の接着剤層、テープオートメーティッドボンディング(TAB)、チップサイズパッケージ(CSP)等における接着用樹脂などにも利用できる。
Claims (6)
- 芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応によって得られるポリアミド酸を熱処理し、イミド化して得られる熱可塑性ポリイミドであって、
前記芳香族ジアミンは、炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有し、
前記炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にある熱可塑性ポリイミド。 - 金属層と、該金属層に接する熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、を有する金属張積層体であって、
前記熱可塑性ポリイミド層が、請求項1に記載の熱可塑性ポリイミドで形成されている金属張積層体。 - 熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、該熱可塑性ポリイミド層上に形成された配線層と、を有する回路基板であって、
前記熱可塑性ポリイミド層が、請求項1に記載の熱可塑性ポリイミドで形成されている回路基板。 - 請求項3に記載の回路基板を、硫黄含有有機化合物を含有するオイル中で使用する回路基板の使用方法。
- 金属層と、該金属層に接する熱可塑性ポリイミド層を含む絶縁層と、を有する金属張積層体の製造方法であって、
炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記ラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程と、
前記金属層となる金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を熱処理してイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程と、
を備える金属張積層体の製造方法。 - 熱可塑性ポリイミドを含む絶縁層と、該熱可塑性ポリイミド層上に形成された配線層と、を有する回路基板の製造方法であって、
炭素数2〜6の範囲内のラジカル重合性の不飽和結合を有する芳香族ジアミンを含有する芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、前記ラジカル重合性の不飽和結合の量が、前記ポリアミド酸の1g当たり0.096mmol〜3mmolの範囲内にあるポリアミド酸の樹脂溶液を得る工程と、
金属箔上に、前記樹脂溶液を塗布し、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を熱処理してイミド化し、熱可塑性ポリイミド層を形成する工程と、
前記金属箔をパターニングして前記配線層を形成する工程と、
を備える回路基板の製造方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2014156621A1 (ja) * | 2013-03-25 | 2017-02-16 | 住友電気工業株式会社 | フレキシブルプリント配線板用基板及びその製造方法、並びにそれを用いたフレキシブルプリント配線板 |
CN112601656A (zh) * | 2018-09-28 | 2021-04-02 | 日铁化学材料株式会社 | 覆金属层叠板的制造方法及电路基板的制造方法 |
-
2012
- 2012-09-27 JP JP2012214747A patent/JP2014070085A/ja active Pending
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