JP2014069312A - インクジェット記録装置および記録ヘッドの温度制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】記録ヘッドの温度制御において、記録ヘッドを構成する複数のチップ間で温度差が生じない、速やかな温度制御を可能とする。
【解決手段】温度T_inkが24.5℃以下の場合、上流チップに対して12[W]の加熱を行い、目標温度に達すると、保温のための6[W]の加熱を行う。これに対し、検出する温度が同じでも、下流チップに対しては20[W]の加熱を行い、目標温度に達すると、保温のため10[W]の加熱を行う。このように、記録ヘッドのベースプレート内のインク循環路の熱特性の影響が現れる、インク循環路の出口側のインク温度を考慮することにより、インク循環路の熱特性に応じて、チップごとの加熱量を適切なものとできる。これにより、複数のチップ間で温度差が生じない、速やかな温度制御が可能となる。
【選択図】図6
【解決手段】温度T_inkが24.5℃以下の場合、上流チップに対して12[W]の加熱を行い、目標温度に達すると、保温のための6[W]の加熱を行う。これに対し、検出する温度が同じでも、下流チップに対しては20[W]の加熱を行い、目標温度に達すると、保温のため10[W]の加熱を行う。このように、記録ヘッドのベースプレート内のインク循環路の熱特性の影響が現れる、インク循環路の出口側のインク温度を考慮することにより、インク循環路の熱特性に応じて、チップごとの加熱量を適切なものとできる。これにより、複数のチップ間で温度差が生じない、速やかな温度制御が可能となる。
【選択図】図6
Description
本発明は、インクジェット記録装置および記録ヘッドの温度制御方法に関し、詳しくは、インクを吐出するためのノズルが設けられたチップを複数配列して構成される記録ヘッドにおけるインク温度を制御する技術に関するものである。
ノズル列を配したチップを複数配列して構成される、長尺の記録ヘッドは記録媒体に対する1回の走査で記録する範囲を大きくすることができることから、記録速度の速い記録を行うことを可能とするものである。一般には、いわゆるフルラインタイプの記録ヘッドとして知られており、ビジネスユースや産業向けのインクジェット記録装置において多く用いられている。
この種の記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置における記録ヘッドの温度制御として、特許文献1に記載されたものが知られている。すなわち、インクタンクから記録ヘッドへインクを供給する供給路が設けられた系において、記録ヘッドの温度と記録ヘッドに供給されるインクの温度との差と、画像に記録に用いるインク量と、に基づいて、加熱制御を行うものである。これにより、記録ヘッドの温度を一定の範囲内に制御でき、結果として、記録画像の色変動を抑制することが可能となる。そして、特許文献1には、複数のノズルチップを配列した記録ヘッドにおいて、チップごとに上述した温度制御を実施できる旨が記載されている。
本願発明者等は、複数のノズルチップを配列した記録ヘッドの温度制御において、複数のチップに対してその配列に従った順でインクを供給する場合にその供給方向における下流側のチップほど温度調整に時間を要するということに着目した。特に、ウォームアップ時において、この問題は顕著となる。これは、インク供給路においてチップまでの経路が長く、ベースプレートなど熱容量の大きい部材に接している面積が大きいほど所定の目標温度まで到達する時間が長くなるからである。また、チップまでの供給路において熱容量の大きい部材に接している面積だけでなく、ベースプレートの厚み方向への熱伝達も目標温度まで到達する時間が長くなる要因である。すなわち、インク供給路におけるチップの位置によって温まり易かったり、温まり難かったりすることがある。
これに対し、特許文献1では、複数のチップそれぞれについて、供給されるインクの温度とそのチップの温度との差に基づいてチップの加熱制御を行うものであるが、例えば、温度差が同じである場合には、どのチップに対しても同じ加熱、保温制御を行う。このため、上述した、下流側のチップほど温度調整に時間を要する問題に適切に対応することができず、結果として、目標温度に到達する時間がチップごとにまちまちとなる。その結果、ある一定の加熱制御の時間で記録を始める場合には、チップによっては目標温度に達していない場合があり、チップ間で温度差が生じる。また、総てのチップが目標温度に達した後に記録を開始する場合は、それだけ加熱制御の時間が長くなるという問題を派生する。
本発明は上記課題を解決し、記録ヘッドを構成する複数のチップ間で温度差が生じない、速やかな温度制御が可能なインクジェット記録装置および記録ヘッドの温度制御方法を提供することを目的とする。
そのために本発明では、それぞれインクを吐出するノズルが設けられた複数のチップと、前記複数のチップを保持するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられ、前記複数のチップのノズルに連通した液路との間でインクの授受を行うためのインク循環経路と、を備えた記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、前記複数のチップの配列の順に前記記録ヘッドのインク循環路を介してインクを循環させる循環手段と、前記インク循環路における、最下流のチップより下流側でインクの温度を検出する温度検出手段と、前記検出する温度に基づいて前記複数のチップにおけるインクの温度を制御する手段であって、前記インク循環路における下流側のチップほど加熱量の多い加熱を行う加熱制御手段と、を具えたことを特徴とする。
以上の構成によれば、記録ヘッドを構成する複数のチップ間で温度差が生じない、速やかな温度制御が可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す側断面図である。本実施形態の記録装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面記録することが可能となっている。記録装置内部には、概略、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、記録部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の各ユニットを備える。排出部12はソータ部11を含んで排出処理を行なうユニットである。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。斜行矯正部3では、搬送されるシートにループが形成される。
記録部4は、記録ヘッド14を備え、この記録ヘッド14によって搬送されるシートに対して上方からりシート上に記録のためのインク吐出を行なう。記録部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラを備えている。記録ヘッド14は、図2(a)にて後述されるように、ノズルを配列した複数のチップを配列することにより、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲にインクを吐出することができる、フルライン型記録ヘッドである。記録ヘッド14は、このノズル配列を有した記録ヘッドが、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色のインクそれぞれについて設けられたものである。なお、本実施形態のインク吐出方式は、発熱素子を用いて発生する気泡の圧力を利用した方式であるが、この方式に限られないことはもちろんである。例えば、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を用いることができる。各色のインクは、図2(b)にて後述されるように、インクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッド14に供給されるとともに、インクチューブを介して記録ヘッドからインクタンクに戻される。すなわち、インクは、インクタンクと記録ヘッドの間を循環する。
検査部5は、記録部4でシートに記録された検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、記録ヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しく記録されたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。カッタ部6は、記録後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタ18を備えたユニットである。カッタ部6はさらに、シート上に記録されているカットマークを光学的に検出するカットマークセンサとシートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。カッタ部6の近傍にはゴミ箱19が設けられている。ゴミ箱19は、カッタ部6で切り落とされゴミとして排出される小さなシート片を収容するものである。カッタ部6には、切断したシートをゴミ箱19に排出するか、本来の搬送経路に移行させるかの振り分け機構が設けられている。情報記録部7は、切断されたシートの非記録領域に記録のシリアル番号や日付などの記録情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードを記録することで行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知するセンサ21が設けられている。センサ21の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
乾燥部8は、記録部4で記録されたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路は記録部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。反転部9は両面記録を行う際に表面記録が終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再び記録部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経て記録部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面の記録が済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートは巻き取りのときとは逆順に送り出されてデカール部2に供給され、記録部4に送られる。このシートは表裏反転しているので記録部4で裏面に記録を行うことができる。シート供給部1を第1のシート供給部とすると、反転部9は第2のシート供給部とみなすことができる。両面記録のより具体的な動作については後述する。
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置(「排出分岐位置」と呼ぶ。)には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。ソータ部11を含む排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じて記録済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは排出部12が有する複数のトレイに排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んで記録部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
制御部13は、記録装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザが入出力を行なう操作部15を有する。記録装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。この制御部13によって、図3以降で後述される、本発明の一実施形態に係る記録ヘッドの温度制御が実行される。
図2(a)および(b)は、図1で説明した、1つのインク色の記録ヘッド14の、特に、ノズルチップおよびインク循環の構造を示す図である。
図2(b)に示すように、本実施形態の記録ヘッドは、複数のチップ401〜407を図のY方向に配列して構成される。この記録ヘッドが記録装置に装着された状態で、Y方向と交差する方向に記録媒体が搬送されるとともに各チップのノズルからインクが吐出されて記録媒体に記録が行われる。それぞれのチップは所定数のノズルをY方向に配列したものであり、上記複数チップの配列においてそれぞれの隣接するチップ間で一部のノズルを記録媒体上の記録領域が重複するように配列したものである。これら複数のチップ401〜407は、ベースプレート408に接着剤等で貼りつけられている。なお、図に示す例は、7つのチップを示しているが、これは図示の簡略化のためであり、実際は7つより多いチップが設けられる。
図2(a)は、記録ヘッド14をインク吐出方向に対して横からみた図である。同図に示すように、ベースプレート408内にインク循環経路(インク流路)411が設けられる。このベースプレートは、本実施形態では、熱容量の大きなアルミナなどのセラミックが用いられ、これにより、記録中に発生する各チップの昇温が抑制される。インク循環経路411は、インクタンクからのインクを記録ヘッド14内に供給するための入口409にその一端を有し、記録ヘッド14内からインクタンクへインクを戻すための出口410にその他端を有している。そして、インク循環経路411は、チップ401〜407を連結するようにその経路が設けられる。すなわち、インク循環経路411は、各チップにおける複数のノズルに対する共通の液路と連通して液路を経路の一部とし、この液路の入口と出口を隣接するチップ間で連結するものである。これにより、インク循環経路411は、各チップの液路とインクの授受を行いことができる、図2(a)に示すような、ジグザグ状の経路となる。以下の説明では、2つのチップを比べたとき、インク循環経路411において入口409側のチップを上流チップ、下流側のチップを下流チップと呼ぶ。
図3は、図1に示した記録装置におけるインク供給系の概略構成を示す図である。図3において、ポンプ200によってメインタンク161からサブタンク201にインクがくみ上げられる。そして、ポンプ203によって、サブタンク201からインク温調装置133を介してインクが記録ヘッド14に供給される。また、ポンプ202によって記録ヘッド14からサブタンク201にインクが戻される。このインク循環において、記録ヘッド14のインク入口409に供給されたインクは、上述したように記録ヘッド14内の循環路411を通って出口410に至る。そして、インク循環路411を通るインクは、各チップにおけるノズルごとのインク吐出動作に伴い、ノズルの液路内に導かれてインクメニスカスを形成する。また、インク吐出動作を行わない状態では、ポンプ203とポンプ202の駆動力を調整することによって、インク循環路411内を所望の負圧状態に保ち、これにより、ノズルからのインク垂れを防いでいる。記録ヘッド14のインク入り口の付近には供給されるインクの温度を検出するためのセンサ205が設けられ、一方、出口410の付近には記録ヘッドから出るインクの温度を検出するためのセンサ206が設けられ、インク出口410から出たインクは、記録ヘッド14の各チップにおけるノズルの吐出動作によって発生した熱を奪って昇温した状態にあり、一旦サブタンク201に貯蔵されて、再度サブタンク201かインク温調装置133を介して、インク流入口409にインクを循環させている。記録ヘッド14に供給されるインクの温度は、インク温調装置133によって調整される。すなわち、インク温調装置133は、図4にて後述されるように、記録ヘッドへインクが流入する側の温度センサ205の検出値に応じて、インクの温度をある範囲内で一定にするよう制御する。
図4は、インク温調装置133の詳細を模式的に示す図である。温調制御部134は、記録ヘッド14に対するインク入り口付近の温度センサ205の検出値に応じて、温調装置133内の液体(水)の温度を制御する。すなわち、液体の中をチューブなどからなるインク流路がらせん状に這い回されており、この流路内のインクの温度と液体の温度とが、ある時間で熱平衡になるよう構成されている。そして、上記センサ205の検出温度に応じて、この平衡状態を生じさせる液体の温度をヒータ(不図示)などで変化させる。これにより、記録ヘッド14に供給されるインクの温度を所定範囲内の略一定温度に制御することができる。
次に、以上説明した本実施形態のヘッド温度調整のための構成によるインク温度制御について説明する。本実施形態の基本となる温度制御は、記録ヘッドに対するインク流入側の温度センサ205の値が所定値以上である場合は、温調制御部134により温調装置133内の液体温度を下げる制御をする。また、インク流入側の温度センサ205の値が所定値以下である場合は、温調制御部134により温調装置133内の液体温度を上げる制御をする。この制御の結果、記録装置内の設定温度が28〜35℃の環境下において、記録ヘッドの流入部のセンサ205が検出するインクの温度はほぼ一定の温度に保たれる。
図5は、上述した特許文献1に記載の、記録ヘッドの温度制御を説明する図である。同図は、記録ヘッドの循環路411の入り口409の近傍に設けられたセンサ205(図3)が検出する温度と、それぞれのチップの温度との差に基づいて、加熱、保温制御を実施した結果を示している。詳しくは、図5において、一点鎖線407および破線401で示す温度変化の挙動は、下流側チップ407および上流側チップ401について、上述した本実施形態の基本となる温度制御だけを行った結果を示すものである。すなわち、記録ヘッドに対するインク流入側の温度センサ205の値に応じて、温調装置133内の液体温度を制御した結果を示している。これに対して、一点鎖線407´および破線401´は、特許文献1の温度制御を下流側チップ407および上流側チップ401に適用したときの温度変化の挙動を示している。
同図に示すように、特許文献1の温度制御では、記録ヘッドのインク流入側の温度センサ205の温度と各チップの温度差に応じて、それぞれのチップの加熱制御を行う(一点鎖線407´、破線401´)。これにより、上記基本の温度制御(一点鎖線407、破線401)と比較して、目標温度に達する時間を短くすることができる。しかし、特許文献1では、例えば、温度差が同じである場合には、どのチップに対しても同じ加熱、保温制御を行うことから、下流側チップの温度(一点鎖線407´)が目標温度に到達する時間が、上流側とのそれ(破線401´)との間に大きな差がある。
このように、上流チップ401も下流チップ407もウォームアップ時間の短縮はある程度実現できているが、チップ間での目標温度に到達する時間の差は依然として大きい。
これに対し、本発明の一実施形態は、記録ヘッドのインク流路の流出側のインク温度を検出し、この温度に基づいて各チップの温度制御を行い、その際に、インク流路における下流側ほど強い加熱を行うようにする。
図6は、本実施形態に係る記録ヘッドにおけるチップごとの加熱量を流出側のインク温度ごとに定めた加熱制御テーブルの内容を示す図である。同図において、「上流チップ」は、例えば、図2(b)に示すチップ401、402、「中央チップ」は、同じくチップ403、404、405、「下流チップ」は、同じくチップ406、407とすることができる。なお、この組み分けの数やそれぞれの組にどのチップが属するかは、記録ヘッドおよびそれを用いる記録装置の仕様に応じて、適切な温度制御を行い得るものとして定めることができる。図6に示すテーブルにおいて、上流チップ、中央チップおよび下流チップそれぞれについて、記録ヘッドの流出側のセンサ206(図3)が検出する温度T_inkごとに、加熱量(上段)および保温熱量(下段)が定められている。例えば、温度T_inkが24.5℃以下の場合、上流チップに対して12[W]の加熱を行い、目標温度に達すると、保温のための6[W]の加熱を行う。これに対し、検出する温度が同じでも、下流チップに対しては20[W]の加熱を行い、目標温度に達すると、保温のため10[W]の加熱を行う。
このように、記録ヘッドのベースプレート内のインク循環路の熱特性の影響が現れる、インク循環路の出口側のインク温度を考慮することにより、インク循環路の熱特性に応じて、チップごとの加熱量を適切なものとできる。これにより、複数のチップ間で温度差が生じない、速やかな温度制御が可能となる。
なお、本実施形態は、ノズルごとのヒータにインクを吐出しない程度の電気パルスを印加して熱を発生させてチップの(インクの)加熱を行う。
図7は、本実施形態の上記テーブルを用いた温度制御による、上流側のチップ401と下流側のチップ407と流出側のセンサ206が検出するそれぞれの温度変化の挙動を示す図である。図7に示すように、本実施形態のヘッド温度制御によれば、インク流路におけるチップの配置に係わらず、上流側、下流側のチップのいずれも、約5分程度で目標温度まで到達することができる。このように、各チップとも短時間でかつ、チップ間温度差のないウォームアップを実現できる。
上述した実施形態とは別の形態として、流出側のセンサ206が検出する温度の代わりに、一番温まりづらいインク流路の最下流チップの温度を検出してもよい。この形態によっても、図7で説明した各チップの加熱・保温制御を実施した場合とほぼ同じ効果を得ることができる。この場合、最下流のチップを温度検出用として使用する場合には、最下流チップは加熱制御せずに、最上流チップに対して最下流チップの近接チップの加熱量を図6における最下流チップと同程度にすればよい。
また、短パルスを使用した同じワット数で加熱制御を実施する場合、駆動周波数を変数として、温まりにくいチップに対して高周波数に、温まりやすいチップに低周波数にテーブルを定めても上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
さらに、上記実施形態では、インクを吐出しない程度の熱を発生するよう吐出用ヒータに電気パルスを印加するものとした。インクを吐出しない程度の投入エネルギーを加えた場合、吐出ヒータ付近のインクがそのエネルギー分の温度上昇を伴う。反対にインク吐出する投入エネルギーを加えてしまうと、吐出したインク滴の運動エネルギーの残留エネルギー分だけが吐出ヒータ付近のインクの温度上昇に寄与するだけとなる。つまり、ベースプレートの加熱保温効果としては、インクを吐出しない程度の熱を吐出チップの吐出用ヒータに印加する方が有効である。また、当然ながらインク吐出を実施していないため、無駄なインク消費を生じない利点もある。また、チップの加熱保温制御の別の実施形態として、チップ内に内蔵された吐出用ヒータ以外の保温用ヒータを使用しても同様の効果が得られることは言うまでもない。更には、上記の加熱時には、インク循環を停止させた方がベースプレートの温度を上昇させるには効率が良い。
上述のように、本実施形態によればインク循環経路に対してつながった各々の吐出チップ位置において異なる熱特性であっても、記録ヘッドのインク流路の流出側のインク温度に応じて各チップの加熱制御を実施する。これにより、ウォームアップ時の短縮と、かつチップ間において過不足なく、記録装置のウォームアップを実現することができる。
13 制御部
14 記録ヘッド
15 コントローラ部
205、206 温度センサ
401〜407 記録ヘッドのチップ
411 インク循環路(インク流路)
14 記録ヘッド
15 コントローラ部
205、206 温度センサ
401〜407 記録ヘッドのチップ
411 インク循環路(インク流路)
Claims (6)
- それぞれインクを吐出するノズルが設けられた複数のチップと、前記複数のチップを保持するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられ、前記複数のチップのノズルに連通した液路との間でインクの授受を行うためのインク循環経路と、を備えた記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記複数のチップの配列の順に前記記録ヘッドのインク循環路を介してインクを循環させる循環手段と、
前記インク循環路における、最下流のチップより下流側でインクの温度を検出する温度検出手段と、
前記検出する温度に基づいて前記複数のチップにおけるインクの温度を制御する手段であって、前記インク循環路における下流側のチップほど加熱量の多い加熱を行う加熱制御手段と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記温度検出手段は、前記インク循環経路の出口の温度を検出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記温度検出手段は、前記インク循環経路における最下流のチップの温度を検出することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記最下流のチップは、加熱制御を行わず、温度検出手段としてのみ使用することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
- 前記加熱制御手段は、加熱時において前記インク循環路におけるインク循環を停止することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- それぞれインクを吐出するノズルが設けられた複数のチップと、前記複数のチップを保持するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられ、前記複数のチップのノズルに連通した液路との間でインクの授受を行うためのインク循環経路と、を備えた記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置における記録ヘッドの温度制御方法であって、
前記複数のチップの配列の順に前記記録ヘッドのインク循環路を介してインクを循環させる循環工程と、
前記インク循環路における、最下流のチップより下流側でインクの温度を検出する温度検出工程と、
前記検出する温度に基づいて前記複数のチップにおけるインクの温度を制御する工程であって、前記インク循環路における下流側のチップほど加熱量の多い加熱を行う加熱制御工程と、
を有したことを特徴とする温度制御方法。
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