JP2014067593A - リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用正極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、正極合剤用のバインダーとしてとしてポリイミド樹脂を含む材料を用いた、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用正極の製造方法に関する。
現在、高エネルギー密度を有する二次電池として、リチウム二次電池が広く利用されている。リチウム二次電池の正極活物質としては、空間群R−3mに帰属されるLiCoO2等のリチウム遷移金属複合酸化物等が広く用いられている。
近年、リチウム二次電池が使用される携帯機器の多機能化等による消費電力の増加に伴って、エネルギー密度がさらに高いリチウム二次電池が強く要望されるようになってきている。高いエネルギー密度を有するリチウム二次電池を実現するためには、正極活物質を高エネルギー密度化、つまり、高容量化する必要がある。しかし、高い放電容量密度と充放電サイクルを繰り返した後の高い容量維持率を兼ね備えた正極活物質は限られる。
正極活物質が高い放電容量密度と充放電サイクルを繰り返した後の高い容量維持率を兼ね備えるためには、その正極活物質が多量のリチウムを引き抜くことが可能な材料で、かつ、その正極活物質の結晶構造が多量のリチウムが引き抜かれた際にも安定であること、その正極活物質表面が高い充電電位においても劣化しないことが必要である。
このような観点から、空間群R−3mに帰属される正極活物質の利用率を向上させる試みが多くなされてきている。また、正極活物質の利用率を向上させるために、正極活物質自体の改良だけでなく、正極合剤層全体の改良による手法も報告されている(下記特許文献1参照)
しかしながら、上記特許文献1に開示されている発明においても、正極の充放電サイクル特性は依然として不十分であった。特に、正極の充電終止電位が4.6V(リチウム基準で4.5V)以上もの高電位となる充放電条件では、正極活物質の劣化が顕著となる。
本発明の一の局面によれば、正極活物質から多量のリチウムを引き抜くために高電位まで充電する条件の充放電サイクルを繰り返した後においても、正極活物質及び正極構造の劣化を抑制し、高エネルギー密度かつサイクル特性に優れたリチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極の製造方法を提供することができる。
本発明の一の局面のリチウム二次電池用正極は、導電性金属箔の表面上に、リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質と、ポリイミド樹脂とを含む正極合剤層が形成され、
前記ポリイミド樹脂は、下記化1に示される構造を分子鎖内に含んでいることを特徴とする。
前記ポリイミド樹脂は、下記化1に示される構造を分子鎖内に含んでいることを特徴とする。
本発明に係るリチウム二次電池用正極においては、正極合剤層のバインダーとして、上記化1に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂が用いられているため、正極活物質の表面がこのポリイミド樹脂によって被覆された状態となる。そのため、本発明に係るリチウム二次電池用正極を用いたリチウム二次電池は、充電終止電圧がリチウム基準で4.5V以上といった高電位となる充放電サイクル条件であっても、正極活物質及び正極構造の劣化が抑制されて、高エネルギー密度かつサイクル特性に優れたリチウム二次電池となる。
正極合剤層のバインダーとして上記化1に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂を用いることによる一の効果の発現機構は、次のように推測される。すなわち、上記化1に示される分子構造は、たとえばベンゾフェノンテトラカルボン酸の誘導体と、m−フェニレンジアミンとの間の重合反応及びイミド化反応により得られるものが含まれる。このような分子構造を分子鎖内に有するポリイミド樹脂は、2つの芳香環が平面を維持したままの構造を取り、剛直性の高いベンゾフェノン部と、芳香環のメタ位の配置にアミノ基が配位し、屈曲性を有するm−フェニレンジアミン部を合わせ持つことになる。
したがって、正極合剤層のバインダーとして上記化1に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂が含まれていると、正極活物質の表面が上記化1に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂によって部分的に被覆された状態となる。ポリイミド樹脂は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)のような従来用いられてきたリチウム二次電池用正極のバインダーと比べて電解液による膨潤性が低いので、ポリイミド樹脂で覆われた正極活物質の表面部分では電解液との接触が実質的に生じない。
そのため、本発明に係るリチウム二次電池用正極を用いたリチウム二次電池では、このポリイミド樹脂で覆われた部分での正極活物質上での非水電解液の酸化分解反応に伴う正極活物質の劣化が生じないことになる。加えて、ポリイミド樹脂による集電体である導電性金属箔との高い密着性によって、特に優れたサイクル特性を得ることが可能となる。
また、LiCoO2が正極活物質として用いられている一般的なリチウム二次電池においては、特に4.4V以上の高電位まで充電された際、LiCoO2表面での非水電解液の酸化分解に伴って4価の酸化数のコバルトが2価の酸化数のコバルトまで還元され、LiCoO2からコバルトの非水電解液への溶出が生じやすくなることが知られている。
ポリイミド樹脂は、有機系樹脂の中でも耐酸化反応性が高い材料であるので、正極活物質の利用率を上げるためにリチウム二次電池を高電位まで充電した際にも、ほとんど分解が生じることがなく、分子構造が維持される。そのため、本発明に係るリチウム二次電池用正極を用いたリチウム二次電池では、高電位まで充電した際にも、ポリイミド樹脂で覆われた部分での正極活物質の劣化が生じないため、高電位となる充放電サイクル条件であっても、正極における正極活物質の劣化が抑制され、高エネルギー密度とサイクル特性の両立という優れた効果を奏することができるリチウム二次電池となる。
なお、本発明に係るリチウム二次電池用正極においては、上記化1に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂は、質量平均分子量が5000以上60000以下であることが好ましく、10000以上30000以下であることがより好ましい。
ポリイミド樹脂の質量平均分子量が小さすぎると、分子鎖が短いことにより正極活物質表面に対する点結着性が低下し、正極活物質表面を覆う効果が減少するしてしまう。一方、ポリイミド樹脂の質量平均分子量が大きすぎると、正極活物質表面を覆う効果が過大となり、正極活物質間の接触面積が減りすぎることになるため、電子伝導性が低下し、充放電特性が低下してしまう。
また、正極合剤層中の上記化1に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂の含有割合としては、1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ポリイミド樹脂の含有量が少なすぎると、バインダーとしての効果が低くなり、正極の集電性が低下する。一方、ポリイミド樹脂の含有量が多すぎると、正極活物質間の接触面積が減りすぎることになるため、電子伝導性が低下し、充放電特性が低下してしまう。
また、本発明に係るリチウム二次電池用正極においては、正極活物質としてリチウム遷移金属酸化物を用いているため、高いエネルギー密度を達成することが可能となる。本発明に係るリチウム二次電池用正極におけるリチウム遷移金属酸化物からなる正極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.5O2、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2、LiNi0.34Co0.33Mn0.33O2などの金属酸化物が挙げられる。さらには、リチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム、アルミニウム等の異種金属元素を添加したものも使用し得る。また、この他にも、LiFePO4など、リチウムを電気化学的に吸蔵、放出することができるリチウム含有遷移金属化合物も制限なく用いることができる。
また、本発明の一の局面の正極合剤層内には、正極導電剤としての導電性粒子が含まれていても良い。導電性粒子としては、公知の様々な導電性粒子を用いることができ、例えば、導電性の炭素材料を好ましく用いることができ、特に、アセチレンブラックやケッチェンブラックを好ましく用いることができる。
さらに、本発明に係るリチウム二次電池は、上記のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極と、負極活物質を有する負極と、非水溶媒と電解質塩とを有する非水電解質と、セパレータとを備えていることを特徴とする。
本発明に係るリチウム二次電池は、上述した構成のリチウム二次電池用正極を備えているため、充電終止電圧がリチウム基準で4.5V以上といった高電位となる充放電サイクル条件であっても、正極活物質及び正極構造の劣化が抑制された、高エネルギー密度かつサイクル特性に優れたリチウム二次電池となる。
なお、本発明の一の局面のリチウム二次電池で使用し得る負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及び易黒鉛化性炭素などの炭素原料、LiTiO2及びTiO2などのチタン酸化物、ケイ素及びスズなどの半金属元素、酸化ケイ素(SiOx,0.5≦x<1.6)、又はSn−Co合金等が挙げられる。
また、本発明の一の局面のリチウム二次電池において使用し得る非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状炭酸エステル、フッ素化された環状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(BL)、γ−バレロラクトン(VL)などの環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DBC)などの鎖状炭酸エステル、フッ素化された鎖状炭酸エステル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル、N,N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物、スルホランなどの硫黄化合物、テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの常温溶融塩などが例示できる。これらは2種以上混合して用いることが望ましい。これらの中では、特に誘電率が大きく、非水電解液のイオン伝導度が大きい環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルが好ましい。
なお、本発明の一の局面のリチウム二次電池で使用する非水電解質中には、電極の安定化用化合物として、更に、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、無水コハク酸(SUCAH)、無水マレイン酸(MAAH)、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン(VS)、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート(VP)、カテコールカーボネートなどを添加してもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いることもできる。
また、本発明の一の局面のリチウム二次電池で使用する非水溶媒中に溶解させる電解質塩としては、リチウム二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiAsF6、LiClO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が特に好ましい。前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.8〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
また、本発明に係るリチウム二次電池においては、電極体の形状に限定されることなく本発明の一の局面のリチウム二次電池用正極の作用効果を得ることができるため、円筒形、偏平形ないし角形のいずれの形状の電極体も採用することができる。
さらに、本発明に係るリチウム二次電池用正極の製造方法は、
(1)リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質をバインダー溶液中に分散させて正極合剤スラリーを調製する正極合剤スラリー調製工程と、
(2)導電性金属箔の表面上に前記正極合剤スラリーを塗布した後、乾燥させて前記正極合剤スラリー中の溶媒を除去し、前記導電性金属箔の表面を覆う正極合剤層を形成する正極合剤層形成工程と、を有し
前記バインダー溶液として、下記化2に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂を含むものを用いることを特徴とする。
(1)リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質をバインダー溶液中に分散させて正極合剤スラリーを調製する正極合剤スラリー調製工程と、
(2)導電性金属箔の表面上に前記正極合剤スラリーを塗布した後、乾燥させて前記正極合剤スラリー中の溶媒を除去し、前記導電性金属箔の表面を覆う正極合剤層を形成する正極合剤層形成工程と、を有し
前記バインダー溶液として、下記化2に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂を含むものを用いることを特徴とする。
このリチウム二次電池用正極の製造方法を用いれば、リチウム遷移金属酸化物と、上記記化2に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂と、を含む正極合剤層を導電性金属箔の表面上に容易に形成することができるため、上記効果を備えたリチウム二次電池用正極を容易に製造することができるようになる。
さらに、本発明に係るリチウム二次電池用正極の製造方法は、
(1)リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質を、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物の1価アルコールとのエステル化物及びテトラカルボン酸の1価アルコールとのエステル化物から選択された少なくとも1種と、ジアミン化合物とを含有するポリイミドバインダー前駆体溶液中に添加して正極合剤スラリーを調製する正極合剤スラリー調製工程と、
(2)導電性金属箔の表面上に前記正極合剤スラリーを塗布した後、乾燥させて前記正極合剤スラリー中の溶媒を除去し、前記導電性金属箔の表面を覆う正極合剤層を形成する正極合剤層形成工程と、
(3)前記正極合剤層が形成された導電性金属箔を非酸化性雰囲気下で熱処理して前記ポリイミドバインダー前駆体にイミド化反応を行わせ、前記正極合剤層内に下記化3に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂を含有させる工程と、を有することを特徴とする。
(1)リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質を、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物の1価アルコールとのエステル化物及びテトラカルボン酸の1価アルコールとのエステル化物から選択された少なくとも1種と、ジアミン化合物とを含有するポリイミドバインダー前駆体溶液中に添加して正極合剤スラリーを調製する正極合剤スラリー調製工程と、
(2)導電性金属箔の表面上に前記正極合剤スラリーを塗布した後、乾燥させて前記正極合剤スラリー中の溶媒を除去し、前記導電性金属箔の表面を覆う正極合剤層を形成する正極合剤層形成工程と、
(3)前記正極合剤層が形成された導電性金属箔を非酸化性雰囲気下で熱処理して前記ポリイミドバインダー前駆体にイミド化反応を行わせ、前記正極合剤層内に下記化3に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂を含有させる工程と、を有することを特徴とする。
このリチウム二次電池用正極の製造方法を採用すれば、正極集電体上に正極合剤スラリーを塗布・乾燥して正極合剤層層を形成する際に、正極合剤スラリー中のバインダー成分はポリイミド樹脂のモノマーの状態となっている。しかしながら、モノマーは当然ながらポリマーに比べて分子鎖が短いので、塗布・乾燥後には、正極活物質の周りにモノマー成分が点在した(点結着した)状態で配置された状態になる。
この状態を維持したまま、続く熱処理を実施すると、点結着状態をある程度維持したままで、隣り合うモノマー間で重合及びイミド化反応が生じるので、正極活物質表面を部分的に被覆したバインダー配置とすることが可能となる。さらには、モノマーはポリマーに比べて分子鎖が短いため、塗布後の状態において、活物質表面に有する小さな凹凸内にもモノマーが入り込みやすくなり、熱処理による重合及びイミド化後に非常に高いアンカー効果が得られ、優れた密着性を得られる。
係る態様のリチウム二次電池用正極の製造方法においては、熱処理を250〜300℃で行うことが好ましい。
熱処理温度を250〜300℃とすれば、ポリイミドバインダー前駆体のイミド化反応を十分に行わせることができるだけでなく、ポリイミド樹脂の焼結も十分に行うことができるので、上記本発明の一の局面のリチウム二次電池用正極の効果が良好に奏されるようになる。
なお、ポリイミド樹脂の原料となるテトラカルボン酸二無水物、ジアミンとしては、公知のものを使用することが可能である。例えば、テトラカルボン酸二無水物としては、上記化1の構造を有するポリマーのモノマー成分である3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物や、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸1,2:4,5−二無水物(別名;ピロメリット酸二無水物)、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
また、ジアミンとしては、上記化1の構造を有するm−フェニレンジアミンの他に、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノフェニルエーテル、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノフェニルメタン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
また、テトラカルボン酸又はその無水物の1価アルコール類とのエステル化物は、上記のテトラカルボン酸二無水物及びそれらのテトラカルボン酸自体に対して、アルコ−ル性OH基を1個有する化合物、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコ−ルエチルエ−テル、エチルカルビト−ルなどの脂肪族アルコ−ルや、ベンジルアルコ−ル、シクロヘキサノ−ルなどの環状アルコ−ルなどで反応させることで得られる。
上述したように、本発明によれば、充電終止電圧がリチウム基準で4.5V以上といった高電位となる充放電サイクル条件であっても、正極活物質及び正極構造の劣化が抑制されて、高エネルギー密度かつサイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることが可能となる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
[実施例1]
<正極の作製>
[1.リチウム遷移金属酸化物の作製]
正極活物質として、Li2CO3とCoCO3とを、LiとCoのモル比が1:1になるようにして乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて800℃で24時間熱処理後に粉砕して得られた、平均粒子径10μmのLiCoO2で表されるリチウムコバルト複合酸化物の粉末を得た。得られた正極活物質粉末のBET比表面積は0.37m2/gであった。
<正極の作製>
[1.リチウム遷移金属酸化物の作製]
正極活物質として、Li2CO3とCoCO3とを、LiとCoのモル比が1:1になるようにして乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて800℃で24時間熱処理後に粉砕して得られた、平均粒子径10μmのLiCoO2で表されるリチウムコバルト複合酸化物の粉末を得た。得られた正極活物質粉末のBET比表面積は0.37m2/gであった。
[2.正極合剤バインダー前駆体溶液の調製]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、質量平均分子量28000のポリアミド酸樹脂(下記化4〜化7で表される構造を有するポリアミド酸樹脂の混合物)を、溶解させることで、実施例1に係る正極合剤スラリー調製用溶液としての正極合剤バインダー前駆体溶液a1を得た。
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、質量平均分子量28000のポリアミド酸樹脂(下記化4〜化7で表される構造を有するポリアミド酸樹脂の混合物)を、溶解させることで、実施例1に係る正極合剤スラリー調製用溶液としての正極合剤バインダー前駆体溶液a1を得た。
上記で得られた正極活物質としてのLiCoO2粉末と、正極導電剤としての炭素材料粉末と、上記のようにして得られた正極合剤スラリー調製用溶液としての正極合剤バインダー前駆体溶液a1とを、正極活物質と正極導電剤と正極合剤バインダー(正極合剤バインダー前駆体溶液a1の乾燥によるNMP除去、イミド化反応後のもの)の質量比が94:3:3となるように混合し、実施例1に係る正極合剤スラリーとした。
なお、ポリアミド酸樹脂の質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。なお、下記熱処理によるイミド化(脱水縮合)後の質量平均分子量については、イミド化による質量減少率7.3質量%分を差し引いて求めた。
[3.正極合剤層の形成及び正極の作製]
上記のようにして得られた正極合剤スラリーを、正極集電体としての厚み15μmのアルミニウム箔の両面に25℃空気中で塗布した後、120℃空気中で乾燥させ、次いで、25℃空気中で圧延した。得られたものを、長さ55mm、幅20mmの長方形に切り抜き、その後端部を5mm剥離させた後、アルゴン雰囲気下で250℃、1時間で熱処理し、正極集電体としてのアルミニウム箔の表面(両面)に正極合剤層を形成した。
上記のようにして得られた正極合剤スラリーを、正極集電体としての厚み15μmのアルミニウム箔の両面に25℃空気中で塗布した後、120℃空気中で乾燥させ、次いで、25℃空気中で圧延した。得られたものを、長さ55mm、幅20mmの長方形に切り抜き、その後端部を5mm剥離させた後、アルゴン雰囲気下で250℃、1時間で熱処理し、正極集電体としてのアルミニウム箔の表面(両面)に正極合剤層を形成した。
その後、アルミニウム箔の端部にある正極合剤層の未塗布部分に、正極集電タブとしてアルミニウム板を接続し、実施例1に係る正極を作製した。なお、正極合剤層量及び正極の厚みは、正極合剤層が形成されている部分で38mg/cm2及び120μmであった。
上記の正極の熱処理によって、バインダー前駆体溶液a1からポリイミド化合物が生成したことを確認するために以下の実験を行った。すなわち、バインダー前駆体溶液a1を、120℃の空気中で乾燥させてNMPを除去後、上述した正極の熱処理と同様にアルゴン雰囲気下、250℃で1時間熱処理したものの赤外線(IR)吸収スペクトルを測定した。その結果、1720cm−1付近にイミド結合由来のピークが検出された。これにより、バインダー前駆体溶液a1の熱処理により、イミド化反応が進行してポリイミド化合物が生成したことを確認した。
なお、上記熱処理後のバインダー前駆体溶液a1のガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量測定法(DSC)で測定したところ、290℃であった。
<非水電解液の調製>
25℃、1気圧のアルゴン雰囲気下で、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比3:7で混合した溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度となるように溶解させ、実施例1に係る非水電解液とした。
25℃、1気圧のアルゴン雰囲気下で、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比3:7で混合した溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットルの濃度となるように溶解させ、実施例1に係る非水電解液とした。
<電池の作製>
図1に示したように、25℃、1気圧のアルゴン雰囲気下で、上記正極1と、対極としてのLi金属2とを、ポリエチレンの微多孔膜から成るセパレータ4を介して対向させ、参照極3としてのLi金属を組合せたものを、アルミニウムラミネート製の外装体6内に上記電解液7と共に挿入することで、実施例1に係るリチウム二次電池としての三極式セル8を作製した。なお、正極1、対極2及び参照極3には、それぞれ端部に集電タブ5a〜5cを取付てある。
[実施例2〜5]
正極合剤バインダー前駆体溶液a1に替えて、正極合剤バインダー前駆体溶液a1とは混合・溶解されているアミド酸樹脂の質量平均分子量のみが異なる正極合剤バインダー前駆体溶液a2〜a5を正極合剤スラリー調製用溶液として用いて、正極合剤スラリーを調整した他は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の実施例2〜5のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。なお、正極合剤バインダー前駆体溶液a2〜a5に溶解させたアミド酸樹脂の質量平均分子量は、7000(実施例2)、12000(実施例3)、42000(実施例4)、及び、55000(実施例5)であった。
正極合剤バインダー前駆体溶液a1に替えて、正極合剤バインダー前駆体溶液a1とは混合・溶解されているアミド酸樹脂の質量平均分子量のみが異なる正極合剤バインダー前駆体溶液a2〜a5を正極合剤スラリー調製用溶液として用いて、正極合剤スラリーを調整した他は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の実施例2〜5のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。なお、正極合剤バインダー前駆体溶液a2〜a5に溶解させたアミド酸樹脂の質量平均分子量は、7000(実施例2)、12000(実施例3)、42000(実施例4)、及び、55000(実施例5)であった。
[比較例1]
正極合剤バインダー前駆体溶液a1を用いずに、下記化8で示される質量平均分子量280000のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を正極合剤スラリー調製用溶液として用いて正極合剤スラリーを調製した他は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例1のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
正極合剤バインダー前駆体溶液a1を用いずに、下記化8で示される質量平均分子量280000のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を正極合剤スラリー調製用溶液として用いて正極合剤スラリーを調製した他は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例1のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
[比較例2]
正極合剤バインダー前駆体溶液a1に替えて、以下に示すバインダー前駆体溶液bを正極合剤スラリー調製用溶液として用いて、正極合剤スラリーを調製した他は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例2のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
正極合剤バインダー前駆体溶液a1に替えて、以下に示すバインダー前駆体溶液bを正極合剤スラリー調製用溶液として用いて、正極合剤スラリーを調製した他は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例2のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
なお、バインダー前駆体溶液bは、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンをNMP溶媒中で重合させることで得られる下記化9〜化12で表される構造を有するポリアミド酸樹脂の混合物であって、質量平均分子量38000のポリアミド酸樹脂のNMP溶液である。
バインダー前駆体溶液bのポリアミド酸樹脂の質量平均分子量は、GPC(ゲル パーミエーション クロマトグラフィー)により測定した。なお、正極合剤層の形成工程における熱処理によるイミド化(脱水縮合)後の質量平均分子量については、イミド化による質量減少率6.2wt%分を差し引いて求めた。
正極の熱処理によって、バインダー前駆体溶液bからポリイミド化合物が生成したことを確認するために以下の確認試験を行った。バインダー前駆体溶液bを、120℃の空気中で乾燥させてNMPを除去後、後述の負極の熱処理と同様に、アルゴン雰囲気下、250℃で1時間熱処理したものの赤外線(IR)吸収スペクトルを測定した。その結果、1720cm−1付近にイミド結合由来のピークが検出された。これにより、バインダー前駆体溶液bの熱処理により、アミド酸部でのイミド化反応が進行してポリイミド化合物が生成したことを確認した。
バインダー前駆体溶液bを乾燥後、アルゴン雰囲気下、250℃で1時間熱処理後のもののガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量測定法(DSC)で測定したところ、220℃であった。
[比較例3]
正極合剤バインダー前駆体溶液a1に替えて、以下に示すバインダー前駆体溶液cを正極合剤スラリー調製用溶液として用いて、正極合剤スラリーを調製した他は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例3のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
正極合剤バインダー前駆体溶液a1に替えて、以下に示すバインダー前駆体溶液cを正極合剤スラリー調製用溶液として用いて、正極合剤スラリーを調製した他は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例3のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
なお、バインダー前駆体溶液cは、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、4,4'−ジアミノフェニルエーテルをNMP溶媒中で重合させることで得られる、下記化13〜化16で表される構造を有するポリアミド酸樹脂の混合物であって、質量平均分子量45000のポリアミド酸樹脂のNMP溶液である。
バインダー前駆体溶液cのポリアミド酸樹脂の質量平均分子量は、GPC(ゲル パーミエーション クロマトグラフィー)により測定した。なお、正極合剤層の形成工程における熱処理によるイミド化(脱水縮合)後の質量平均分子量については、イミド化による質量減少率7.3wt%分を差し引いて求めた。
正極の熱処理によって、バインダー前駆体溶液cからポリイミド化合物が生成したことを確認するために以下の確認試験を行った。バインダー前駆体溶液cを、120℃の空気中で乾燥させてNMPを除去後、後述の負極の熱処理と同様に、アルゴン雰囲気下、300℃で3時間熱処理したものの赤外線(IR)吸収スペクトルを測定した。その結果、1720cm−1付近にイミド結合由来のピークが検出された。これにより、バインダー前駆体溶液cの熱処理により、アミド酸部でのイミド化反応が進行してポリイミド化合物が生成したことを確認した。
バインダー前駆体溶液cを乾燥後、アルゴン雰囲気下、250℃で1時間熱処理後のもののガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量測定法(DSC)で測定したところ、300℃であった。
[比較例4]
正極合剤層の形成工程における、アルゴン雰囲気下での250℃、1時間の熱処理を行わず、ポリアミド酸樹脂をイミド化させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例4のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
正極合剤層の形成工程における、アルゴン雰囲気下での250℃、1時間の熱処理を行わず、ポリアミド酸樹脂をイミド化させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例4のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
[比較例5]
正極合剤層の形成工程における、アルゴン雰囲気下での250℃、1時間の熱処理を行わなかったこと以外は、比較例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例5のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
正極合剤層の形成工程における、アルゴン雰囲気下での250℃、1時間の熱処理を行わなかったこと以外は、比較例1と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例5のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
[比較例6]
正極合剤層の形成工程における、アルゴン雰囲気下での250℃、1時間の熱処理を行わず、ポリアミド酸樹脂をイミド化させなかったこと以外は、比較例2と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例6のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
正極合剤層の形成工程における、アルゴン雰囲気下での250℃、1時間の熱処理を行わず、ポリアミド酸樹脂をイミド化させなかったこと以外は、比較例2と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例6のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
[比較例7]
正極合剤層の形成工程における、アルゴン雰囲気下での250℃、1時間の熱処理を行わず、ポリアミド酸樹脂をイミド化させなかったこと以外は、比較例3と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例7のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
正極合剤層の形成工程における、アルゴン雰囲気下での250℃、1時間の熱処理を行わず、ポリアミド酸樹脂をイミド化させなかったこと以外は、比較例3と同様にして、図1に記載されているものと同様の構成の比較例7のリチウム二次電池に係る三極式セルを作製した。
[充放電特性の評価]
上記のようにして得られた実施例1〜5及び比較例1〜7に係るリチウム二次電池に係る三極式セルについて、下記の充放電サイクル条件にて充放電を行い、充放電サイクル特性を評価した。結果をまとめて表1に示した。
上記のようにして得られた実施例1〜5及び比較例1〜7に係るリチウム二次電池に係る三極式セルについて、下記の充放電サイクル条件にて充放電を行い、充放電サイクル特性を評価した。結果をまとめて表1に示した。
<充放電サイクル条件>
・充電条件
10mAの電流で正極の参照極に対する電圧が4.6Vとなるまで定電流充電を行い、さらに、4.6Vの電圧で電流値が2mAとなるまで定電圧充電を行った。
・放電条件
10mAの電流で正極の参照極に対する電圧が2.5Vとなるまで定電流放電を行った。
そして、以下の計算式に基づき、サイクル特性を求めた。
(サイクル特性)=(10サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
・充電条件
10mAの電流で正極の参照極に対する電圧が4.6Vとなるまで定電流充電を行い、さらに、4.6Vの電圧で電流値が2mAとなるまで定電圧充電を行った。
・放電条件
10mAの電流で正極の参照極に対する電圧が2.5Vとなるまで定電流放電を行った。
そして、以下の計算式に基づき、サイクル特性を求めた。
(サイクル特性)=(10サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
[バインダーの膨潤率の評価]
上記のようにして得られた実施例1〜5及び比較例1〜7に係るリチウム二次電池のバインダーについて、電解液の膨潤のし易さ・し難さを評価するために、下記のようにしてバインダーの膨潤率を測定した。結果をまとめて表1に示した。
上記のようにして得られた実施例1〜5及び比較例1〜7に係るリチウム二次電池のバインダーについて、電解液の膨潤のし易さ・し難さを評価するために、下記のようにしてバインダーの膨潤率を測定した。結果をまとめて表1に示した。
上記正極合剤スラリーの調製工程において用いた各実施例及び比較例に係る正極合剤スラリー調製用溶液、すなわち、正極合剤バインダー前駆体溶液a1〜a5(実施例1〜5、比較例4)、正極合剤バインダー前駆体溶液b(比較例2、6)、正極合剤バインダー前駆体溶液c(比較例3、7)、ポリフッ化ビニリデンのNMP溶液(比較例1、5)を、それぞれ120℃の空気中で乾燥させてNMPを除去してフィルム状にしたものを作製し、その質量を測定し浸漬前フィルム質量とした。
続いて、実施例1〜5及び比較例1〜7に係る各フィルムについて、上記の正極合剤層の形成工程における熱処理と同様の熱処理(アルゴン雰囲気下、250℃で1時間)をしたもの(実施例1〜5、比較例1〜3)、及び、熱処理を施していないもの(比較例4〜7)を、それぞれ、上記電解液に25℃で24時間浸漬した。、その後、フィルムの表面上に液滴として残存した電解液を除去した後、各フィルムの質量を測定し浸漬後フィルム質量とした。
以下の計算式に基づき、バインダー膨潤率を求めた。
(膨潤率)
= (浸漬後フィルム質量−浸漬前フィルム質量)/(浸漬前フィルム質量)
×100(%)
以下の計算式に基づき、バインダー膨潤率を求めた。
(膨潤率)
= (浸漬後フィルム質量−浸漬前フィルム質量)/(浸漬前フィルム質量)
×100(%)
表1より、下記化17(上記化1に対応する)に示される構造を分子内に含むポリイミド樹脂をバインダーとして用いた実施例1〜5では、比較例1〜7に対して、4.6V(リチウム基準で4.5V)という高電圧の充放電サイクル条件での、サイクル特性が顕著に優れていることがわかる。
また、実施例2、4、5の結果から、バインダーであるポリイミド樹脂の質量平均分子量が小さすぎる場合、ないし、大きすぎる場合は、サイクル特性が低下する傾向があることが示唆される。そのため、ポリイミド樹脂の質量平均分子量は、5000以上60000以下であることが好ましく、10000以上30000以下であることがより好ましいことがわかる。
なお、ポリイミド樹脂の質量平均分子量の大きさのサイクル特性への影響は、下記のようなメカニズムによると考えられる。ポリイミド樹脂の質量平均分子量が小さすぎると、分子鎖が短いことにより点結着性が低下するため、正極活物質表面を覆う効果が減少し、質量平均分子量が大きすぎると、正極活物質表面を覆う効果が過大となり、正極活物質間の接触面積が減りすぎることになるため電子伝導性が低下し、それぞれ充放電特性の低下に繋がる。
また、比較例1と比較例2及び3との比較、ないし、比較例5と比較例4、6及び7との比較から、正極合剤のバインダーとしてのポリイミド樹脂ないしポリアミド酸樹脂は、PVdFと比べて高電圧充放電条件でのサイクル特性に優れることがわかる。
なお、スラリー調製用溶液フィルムの電解液膨潤率は、実施例1〜5及び比較例2〜4、6、7においては0%であるのに対して、比較例1及び5においては7ないし8%となている。これにより、ポリイミド樹脂ないしポリアミド酸樹脂は非水電解液によって膨潤しないのに対して、PVdFは非水電解液によって膨潤してしまうことがわかる。このことから、正極合剤のバインダーとしてのポリイミド樹脂ないしポリアミド酸樹脂で覆われた正極活物質の表面部分では、電解液との接触が防止されることが示唆される。
また、各実施例と比較例4との比較、ないし、比較例2及び3と比較例6及び7との比較から、正極合剤のバインダーとしてはイミド化されたポリイミド樹脂の方がポリアミド酸樹脂よりも高電圧充放電条件でのサイクル特性に優れることがわかる。
特に、各実施例と比較例4との比較から、正極合剤のバインダーとしてのポリイミド樹脂においては、上記化17(上記化1に対応)に示される構造を分子内に含むポリイミド樹脂であると、高電圧充放電条件でのサイクル特性が顕著に優れたリチウム二次電池が得られることがわかる。
なお、上記実施例1〜5では、本発明の一の局面のリチウム二次電池用正極の動作特性を正確に把握するため、負極(対極)及び参照極としてリチウム金属を用いた三極式のセルを構成した例を示した。しかしながら、本発明は、周知の負極活物質を有する負極を備える二極式のリチウムイオン電池に対しても等しく適用し得ることは自明である。
本発明は、例えば、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の駆動電源で、特に高エネルギー密度が必要とされる用途に適用することができる。また、EV、HEV、PHEVや電動工具といった高出力用途への展開も期待できる。
1…正極
2…負極
3…参照極
4…セパレータ
5a〜5c…タブ
6…アルミニウムラミネート外装体
7…非水電解液
8…三極式セル
2…負極
3…参照極
4…セパレータ
5a〜5c…タブ
6…アルミニウムラミネート外装体
7…非水電解液
8…三極式セル
Claims (7)
- 前記ポリイミド樹脂は、質量平均分子量が5000以上60000以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極。
- 前記ポリイミド樹脂の質量平均分子量は、10000以上30000以下であることを特徴とする請求項2に記載のリチウム二次電池用正極。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極と、
負極活物質を有する負極と、
非水溶媒と電解質塩とを有する非水電解質と、
セパレータとを備えていることを特徴とするリチウム二次電池。 - リチウム二次電池用正極の製造方法であって、
(1)リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質を、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物の1価アルコールとのエステル化物及びテトラカルボン酸の1価アルコールとのエステル化物から選択された少なくとも1種と、ジアミン化合物とを含有するポリイミドバインダー前駆体溶液中に添加して正極合剤スラリーを調製する正極合剤スラリー調製工程と、
(2)導電性金属箔の表面上に前記正極合剤スラリーを塗布した後、乾燥させて前記正極合剤スラリー中の溶媒を除去し、前記導電性金属箔の表面を覆う正極合剤層を形成する正極合剤層形成工程と、
(3)前記正極合剤層が形成された導電性金属箔を非酸化性雰囲気下で熱処理して前記ポリイミドバインダー前駆体にイミド化反応を行わせ、前記正極合剤層内に下記化3に示される構造を分子鎖内に含むポリイミド樹脂を含有させる工程と、を有することを特徴とするリチウム二次電池用正極の製造方法。
- 前記熱処理を250〜300℃で行うことを特徴とする請求項6に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
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---|---|---|---|---|
JP2017103212A (ja) * | 2015-11-19 | 2017-06-08 | 住友ゴム工業株式会社 | リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池 |
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WO2023123030A1 (zh) * | 2021-12-29 | 2023-07-06 | 宁德新能源科技有限公司 | 电化学装置和电子装置 |
-
2012
- 2012-09-26 JP JP2012212175A patent/JP2014067593A/ja active Pending
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