JP2014060119A - リチウムイオン二次電池の充電方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池の高容量化が可能な不織布を含むセパレータを用いても、短絡を十分に抑制し、セパレータの形状を十分に保持できるリチウムイオン二次電池を得ることが可能な充電方法を提供する。
【解決手段】正極及び負極と、炭素−炭素二重結合を有する炭酸エステル、フッ素原子を有する環状カーボネート及びスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と溶媒とを含有する電解液と、不織布を含むセパレータと、を備えるリチウムイオン二次電池に対して、0.3C以下の充電電流にて初回充電を行う、リチウムイオン二次電池の充電方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の充電方法に関する。
近年の電子技術の発展や環境技術への関心の高まりに伴い、様々な電気化学デバイスが用いられている。特に、省エネルギー化への要請が多くあり、それに貢献できるものへの期待はますます高くなっている。例えば、発電デバイスとして太陽電池が挙げられ、蓄電デバイスとして、二次電池、キャパシタ及びコンデンサなどが挙げられる。蓄電デバイスの代表例であるリチウムイオン二次電池は、従来、主に携帯機器用充電池として使用されていたが、近年では、ハイブリッド自動車及び電気自動車用電池としての使用も期待されている。
リチウムイオン二次電池は、一般に、リチウムを吸蔵及び放出可能な活物質を主体として構成された正極と負極とがセパレータを介して配された構成を有する。リチウムイオン二次電池の正極は、正極活物質としてのLiCoO、LiNiO又はLiMn等と、導電剤としてのカーボンブラック又は黒鉛等と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン、ラテックス又はゴム等とが混合された正極合剤が、アルミニウム等からなる正極集電体上に被覆されて形成される。負極は、負極活物質としてのコークス又は黒鉛等と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン、ラテックス又はゴム等とが混合された負極合剤が、銅等からなる負極集電体上に被覆されて形成される。セパレータは、多孔性ポリオレフィン等の合成樹脂製微多孔膜により形成され、その厚さは数μmから数百μmと非常に薄い。正極、負極及びセパレータは、電池内で電解液に含浸されている。電解液としては、例えば、LiPF又はLiBFのようなリチウム塩を、プロピレンカーボネート又はエチレンカーボネートのような非プロトン性溶媒に、あるいはポリエチレンオキシドのようなポリマーに溶解させた電解液が挙げられる。
リチウムイオン二次電池は、現在、携帯機器の充電池として主に用いられている(例えば特許文献1参照)。また、近年では、ハイブリッド自動車及び電気自動車などの自動車用途の電池としても広い展開が期待されている。リチウムイオン二次電池の用途拡大に向け、電池の小型化及び高性能化を図る必要があり、そのアプローチの1つとしてセパレータの改良が挙げられる。携帯機器用のリチウムイオン二次電池のセパレータとして、現在主に用いられているものは合成樹脂製微多孔膜である。合成樹脂製微多孔膜は非常に信頼性が高い膜ではあるが、車載向けリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いるためには、例えば、容量、電流密度、耐熱性及びコストなどの点で更なる改良が求められている。
これらの性能を向上させる試みとして、不織布又は紙などからなるセパレータを用いた例がある(例えば特許文献2、3参照)。不織布及び紙は、安価なプロセスコストで多孔性の膜、すなわち電池の高容量化が可能となる膜を作製できること、並びに、耐熱性の高い素材で製膜できることから有望である(例えば特許文献4参照)。この特許文献4には、セパレータの好適な1つの形態としてポリエチレンテレフタレート(PET)不織布を基材としたポリフッ化ビニリデン(PVdF)系ポリマー多孔膜が記載されている。この形態のセパレータは過充電時の安全性及び耐熱性も高く、コストも低い。
通常のリチウムイオン二次電池では、イオン伝導性の観点から、電解液として電解質のLiPFをカーボネート系溶媒に溶解した組成のものが用いられている。ここでカーボネート系溶媒は、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネートとジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネートとの混合溶媒が一般的となっている。
上記のようなPET不織布を含むセパレータとこのような電解液とを組み合わせた場合、高温での保存特性が良好でないという課題があった。そこで、この課題に対し、電解液にビニレンカーボネート(VC)を添加する技術が特許文献5において提案されている。
特開2009−087648号公報 特開2005−159283号公報 特開2005−293891号公報 国際公開第01/67536号 特開2003−187867号公報
しかしながら、特許文献7に記載の技術は、VCを電解液に添加することによりPET不織布を含むセパレータの分解反応を抑制する効果はあるものの、短絡を抑制する効果が不十分であることが判明した。また、特許文献2〜4に記載のようなセパレータを用いると、短絡が発生したり、デンドライト成長が見られたり、様々な不安定な充放電挙動が見られたりするため、セパレータ性能としての信頼性及び安全性に課題があることが明らかになった。さらに、特許文献3では、正極と対向していない負極部分でのLiPFとPET不織布との反応により、高温保存試験後にPET不織布の形状が保持されていないという耐熱性の課題も示されている。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電池の高容量化が可能な不織布を含むセパレータを用いても、短絡を十分に抑制し、セパレータの形状を十分に保持できるリチウムイオン二次電池を得ることが可能な、リチウムイオン二次電池の充電方法及び製造方法を提供する。
本発明者らは上記目的を達成すべく、リチウムイオン二次電池において、様々なセパレータと電解液との組み合わせを検討した。その結果、特定の溶媒を電解液に含有し、且つ、特定の充電条件で初回充電を行うことで、不織布を用いたセパレータの短絡を十分に抑制することができ、セパレータの形状を十分に保持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]正極及び負極と、炭素−炭素二重結合を有する炭酸エステル、フッ素原子及びスルホンを有する環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と溶媒とを含有する電解液と、不織布を含むセパレータと、を備えるリチウムイオン二次電池に対して、0.3C以下の充電電流にて初回充電を行う、リチウムイオン二次電池の充電方法。
[2]0.2C以下の充電電流にて前記初回充電を行う、上記充電方法。
[3]前記初回充電を行う際の温度が20〜60℃である、上記充電方法。
[4]前記化合物の総含有量が、前記溶媒の含有量に対して、1〜30質量%である、上記充電方法。
[5]前記不織布は、繊維径が0.1〜30μmである繊維を含む、上記充電方法。
[6]前記不織布は、ポリエステル系樹脂を含む不織布を含む、上記充電方法。
[7]前記ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含む、上記充電方法。
[8]前記炭素−炭素二重結合を有する炭酸エステルは、ビニレンカーボネートを含む、上記充電方法。
[9]前記フッ素原子を有する環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネートを含む、上記充電方法。
[10]上記リチウムイオン二次電池の充電方法により初回充電を行う工程を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
本発明によると、電池の高容量化が可能な不織布を含むセパレータを用いても、短絡を十分に抑制し、セパレータの形状を十分に保持できるリチウムイオン二次電池を得ることが可能な、リチウムイオン二次電池の充電方法及び製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池の充電方法(以下、単に「充電方法」とも表記する。)は、正極及び負極と、炭素−炭素二重結合を有する炭酸エステル、フッ素原子を有する環状カーボネート及びスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と溶媒とを含有する電解液と、不織布を含むセパレータとを備えるリチウムイオン二次電池に対して、0.3C以下の充電電流にて初回充電を行うものである。
<セパレータ>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正負極の短絡防止及びシャットダウン等の安全性付与の観点から、正極と負極との間にセパレータを備える。セパレータとしては、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。
セパレータは、繊維径が30μm以下である繊維を含む不織布層を含有することが好ましい。さらには、セパレータは、繊維径が4μm以下である繊維(以下、「極細繊維」ともいう。)を含む不織布層(以下、「不織布層(I)」と表記する。)を少なくとも1層含むことがより好ましい。したがって、セパレータにおいて、不織布層(I)を単層で用いてもよく、2層以上を直接又は間接的に積層して用いてもよい。そのセパレータは、不織布層(I)を他の繊維層と積層した構成を有していてもよい。短絡をより有効かつ確実に抑制し、更に高出力のリチウムイオン二次電池を得るために、太い繊維径を有する繊維によるリチウムイオンの拡散を極力防ぐ観点から、セパレータは不織布層(I)を有することが好ましいが、そのような効果をより有効且つ確実に奏する観点から、不織布層(I)を最外層として有する2層又は3層以上の繊維層からなる積層体であると好ましく、不織布層(I)を最外層として有する2層又は3層以上の不織布層からなる積層不織布であるとより好ましく、不織布層(I)を両最外層として有する2層又は3層以上の不織布層からなる積層不織布であると更に好ましい。本明細書において、「最外層」とは、積層方向の最も端に位置する層を意味する。最外層は電極により近いため、その最外層として不織布層(I)を有すると、電極近傍においてより良好なリチウムイオン拡散性を得ることができる。
不織布層において、繊維の繊維径が30μm以下であれば、繊維の径が太すぎず、より均一な繊維間距離を得ることができるため、より緻密で均一な不織布層を形成することができる。一方、繊維の繊維径が0.1μm以上であれば、繊維を容易に形成できるので好ましい。なお、不織布層やセパレータが均一であることは、それらを構成する繊維間の間隙の大きさが均一であることを意味し、それに加えて、厚さ、繊維径、目付、間隙の分布が均一であることを意味する。
極細繊維の繊維径は、好ましくは0.3〜4μmである。繊維の繊維径が4μm以下であれば、不織布層の繊維間の間隙の大きさが不均一になったり大きくなりすぎたりすることを抑制できるためないため、緻密で均一な不織布層の形成が可能となり、リチウムイオン二次電池において、不織布層の最大孔径が大きいことに由来する短絡を十分に防止することができる。極細繊維の繊維径は、より好ましくは0.3〜3.5μmであり、更に好ましくは0.5〜3μmであり、特に好ましくは0.5〜1μmである。特に、繊維径が0.5〜1μmである場合に、そのような繊維を不織布層に備えるリチウムイオン二次電池の出力を更に高めることができる。なお、本明細書における「繊維径」は、マイクロスコープにより測定される繊維直径であり、より詳細には、後述の実施例に準拠して測定されるものである。
本実施形態において用いる不織布層の製造方法は、特に限定されない。例えば、上記不織布層(I)の製造方法は、好ましくは、極細繊維を用いた乾式法及び湿式法等の製造方法、又は、エレクトロスピニング及びメルトブロウン法である。不織布層(I)をより容易且つ緻密に形成できるという観点から、不織布層(I)は、より好ましくはメルトブロウン法で形成される。後述のスパンボンド法又は湿式法により形成される不織布層では、それを構成する繊維の繊維径が、一般的には十数μm程度である。これに対し、メルトブロウン法により形成した不織布層では、それを構成する繊維の繊維径が、一般的には数μm程度である。
不織布層(I)は、本発明の目的達成を損なわない範囲で、上記極細繊維以外の繊維を含有してもよいが、上記極細繊維を質量基準で好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上含み、特に好ましくは上記極細繊維のみからなる。
本実施形態において、セパレータに用いる不織布層を構成する素材は、熱可塑性樹脂であってもよいし、例えばセルロースフィブリル等の、熱可塑性樹脂ではない従来不織布の素材として用いられているものであってもよい。好適には、不織布層を構成する素材は熱可塑性樹脂である。そのような熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエステル系樹脂及びその誘導体、ポリアミド系樹脂及びその誘導体、ポリオキシメチレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)系樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のポリケトン系樹脂、及び、熱可塑性ポリイミド樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂及びポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂を主体とする共重合体(すなわち、これらの樹脂のモノマーをモノマー単位として最も多く、好ましくは50%以上含む共重合体)又は混合物(すなわち、これらの樹脂を質量基準で最も多く、好ましくは50質量%以上含む混合物)も好ましい。
これらの素材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なお、本明細書において「PET系樹脂」とは、PET樹脂の他、全構成繰り返し単位中に、PETの基本骨格であるテレフタル酸とエチレングリコールとの縮合構造を必ず有する概念である。テレフタル酸及びエチレングリコール以外の構成繰り返し単位構成成分としては、ジカルボン酸又はその誘導体、オキシ酸又はその誘導体、及び、ジオールが挙げられる。ジカルボン酸又はその誘導体として、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、並びにこれらのジカルボン酸のエステル類が挙げられ、オキシ酸又はその誘導体として、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、及びグリコール酸が挙げられる。また、ジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール及びネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールのような脂環式グリコール、ビスフェノールA及びビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体が挙げられる。また、その他の「…系樹脂」についても同様に、全構成繰り返し単位中に、基本骨格となる構造を有する概念である。
不織布層の繊維を構成する素材は、吸水率の低い素材であると好ましい。そのような素材としては、例えば、PET系樹脂、PPS系樹脂、PPO系樹脂、ポリケトン樹脂及びPEEK系樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。また、繊維及び不織布を製造する際の製造の容易性、汎用性及びコストの観点から、不織布層の繊維を構成する素材は、PET系樹脂、PPS系樹脂、及びPEEK系樹脂であると好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
本実施形態において、不織布層(I)の目付は、15g/m以下であることが好ましい。不織布層の目付が15g/m以下であれば、短絡を抑制するのにより有利となるだけでなく、更に高い出力特性を得ることができる。その不織布層(I)の目付は、より好ましくは0.5〜13g/mであり、更に好ましくは1〜11g/mである。なお、本明細書において、目付は、実施例に記載の方法に準拠して測定される。
本実施形態に係るセパレータが、上記不織布層(I)と他の不織布層とを積層した積層不織布を含む場合、積層させる他の不織布層としては、機械強度向上の観点から、スパンボンド法により形成される繊維を含むことが好ましい。また、スパンボンド法により形成される繊維が過剰に太くなるのをより抑制し、かつ、一層均一な繊維間距離を得るために、その繊維の繊維径は好ましくは4μm超30μm以下であり、より好ましくは6〜25μmであり、更に好ましくは8〜20μmである。
本実施形態に係るセパレータは、極細繊維を含有する不織布層(I)を有することにより、繊維同士の距離が小さくなり、すなわち、孔径が小さくなり、繊維間の間隙がより均一な大きさとなる層を形成しやすい。このような観点から、本実施形態に係るセパレータに用いる積層不織布の平均孔径は、0.3〜30μmであることが好ましい。該平均孔径は、より好ましくは、1〜20μmである。
極細繊維を含有する不織布層(I)と他の不織布層とを積層して積層不織布を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、熱的結合により一体化する方法、高速水流を噴射して三次元交絡させる方法、粒子状又は繊維状の接着剤により一体化させる方法が挙げられる。これら中でも、熱的結合による一体化の方法としては、例えば、熱エンボスによる一体化(熱エンボスロール方式)、及び高温の熱風による一体化(エアースルー方式)が挙げられる。熱的結合による一体化は、不織布の引っ張り強度と曲げ柔軟性とをより有効に維持し、耐熱安定性をより有効に維持することができるという観点から好ましい。
熱的結合による一体化は、バインダーを用いることなく、複数の不織布層を有する積層不織布を形成できる点でも好ましい。不織布層同士を一体化して積層不織布を形成する場合にバインダーを用いると、そのバインダーがセパレータ内に残存する。バインダーが電池性能を劣化させないものであれば特に問題ないが、バインダーによって電池性能の劣化が促進される場合には、バインダーを除去する工程が新たに必要になる。以上の理由から、不織布層を積層する場合、熱のみにより一体化されたバインダーを用いない積層不織布が好ましい。
本実施形態において、不織布層及び/又は積層不織布はカレンダ加工されていることが好ましい。これにより、不織布層に、より均一な繊維間の間隙の大きさを有する構造を与えることができ、また、セパレータの厚さや空隙率を容易に制御することが可能となる。具体的には、通常の熱接着により繊維を接合した後、例えば、熱接着温度よりも10℃以上高い温度で、線圧100〜1000N/cmにて、カレンダ加工を施す。カレンダ加工における線圧が100N/cm以上であると、より十分な接着が得られ、一層十分な強度が発現される傾向がある。また、カレンダ加工における線圧が1000N/cm以下であると、繊維の変形が小さくなり繊維がより十分に接着されて、本発明による効果が一層有効かつ効果的に得られる観点から好ましい。ただし、カレンダ加工の条件は上記に限定されない。
本実施形態において、不織布が親水化加工されることも好ましい態様である。不織布が親水化加工されると、電解液が含浸されやすくなるため、より高性能の電池を製造できる。親水化加工としては、例えば、物理的な加工、すなわち、コロナ処理又はプラズマ処理による親水化、並びに、化学的な加工方法、すなわち、表面官能基の導入(例えば、酸化処理等による、スルホン酸基、カルボン酸基等の導入)、水溶性高分子(例えば、PVA、ポリスチレンスルホン酸、及びポリグルタミン酸)及び界面活性剤(例えば、ノニオン種、陰イオン性、陽イオン性、及び両イオン性の界面活性剤)等の処理剤による加工が挙げられる。親水化加工された不織布は、将来的に水分を含みやすくなり、電池特性の劣化を引き起こす可能性があるため、加工量、すなわち、不織布の質量に対する、上記の処理剤及び導入される官能基の質量は、3質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係るセパレータの厚さは、10〜60μmであることが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。セパレータの厚さは、機械的強度の観点、及び、正負極を隔離し短絡を抑制するという観点から、10μm以上であることが好ましい。また、電池としての出力密度を高め、エネルギー密度の低下を抑制する観点から、セパレータの厚さは60μm以下であると好ましい。
本実施形態に係るセパレータは、リチウムイオン二次電池用セパレータとして用いる場合にイオン透過性を十分に確保する観点から、空隙率をある程度制御したものが好ましい。例えば、セパレータが不織布層として不織布層(I)のみを有する場合の不織布層(I)の空隙率、あるいは、積層不織布の空隙率は、好ましくは45〜90%であり、より好ましくは50〜80%である。この空隙率が45%以上では、より高い出力特性が得られ、90%以下では、短絡を更に抑制することができる。この空隙率は、測定対象となる不織布層又は積層不織布の質量と見かけの体積とを測定し、これらの測定値と不織布層又は積層不織布を構成する素材の密度とを用いて算出することができる。
本実施形態において、セパレータの総目付は、30g/m以下であることが好ましい。セパレータの総目付が30g/m以下であれば、より高い出力特性を得ることができる。また、機械的強度の観点から、セパレータの総目付は、4g/m以上であることが好ましく、より好ましくは4〜25g/mであり、更に好ましくは5〜20g/mである。
本実施形態に係るセパレータは、上述の不織布層(I)以外に、更にその他の繊維層、好ましくは不織布層を含んでもよい。ただし、繊維及び不織布を製造する際の製造の容易性、汎用性及びコストの観点から、本実施形態のセパレータは、その少なくとも一部の層がポリエステル系樹脂を含む不織布を含有する不織布層であると好ましく、その不織布がポリエステル系樹脂を50質量%以上、望ましくは80質量%以上、より望ましくは90質量%、更に望ましくは95質量%以上、特に望ましくは98質量%以上含むとより好ましく、ポリエステル系樹脂からなる不織布であると更に好ましい。また、上記ポリエステル系樹脂がPETを含むと好ましく、PETを50質量%以上、望ましくは80質量%以上、より望ましくは90質量%、更に望ましくは95質量%以上、特に望ましくは98質量%以上含むとより好ましく、PETであると更に好ましい。
セパレータが積層不織布を含む場合、不織布層(I)以外の不織布層を「不織布層(II)」と表記すると、その積層態様としては、例えば、下記の態様が挙げられる。
・不織布層(I)−不織布層(II)
・不織布層(I)−不織布層(II)−不織布層(I)
・不織布層(I)−不織布層(II)−不織布層(I)−不織布層(II)−不織布層(I)
・不織布層(I)−不織布層(II)−不織布層(II)−不織布層(I)
・不織布層(II)−不織布層(I)−不織布層(II)
・不織布層(II)−不織布層(I)−不織布層(II)−不織布層(I)−不織布層(II)
・不織布層(II)−不織布層(I)−不織布層(I)−不織布層(II)
<電解液>
本実施形態に用いる電解液は、好ましくは非水溶媒とリチウム塩とを含有し、更に、炭素−炭素二重結合(以下、「C=C結合」と表記する。)を有する炭酸エステル、フッ素原子を有する環状カーボネート(以下、「含フッ素環状カーボネート」と表記する。)及びスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。
非水溶媒としては、様々なものを用いることができるが、例えば非プロトン性溶媒が挙げられる。リチウムイオン二次電池の電解液として用いる場合、その充放電に寄与する電解質であるリチウム塩の電離度を高めるために、非プロトン性極性溶媒が好ましい。その具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンに代表されるラクトン;テトラヒドロフラン及びジオキサンに代表される環状エーテル;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリルに代表されるニトリル;ジメチルエーテルに代表される鎖状エーテル;プロピオン酸メチルに代表される鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンに代表される鎖状エーテルカーボネート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
非水溶媒は、リチウム塩の電離度を高めるために環状の非プロトン性極性溶媒を1種類以上含むことが好ましい。同様の観点から、非水溶媒は、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートに代表される環状カーボネートを1種類以上含むことがより好ましい。
非水溶媒として、イオン液体を用いることもできる。イオン液体とは、有機カチオンとアニオンとを組み合わせたイオンからなる液体である。
有機カチオンとしては、例えば、ジアルキルイミダゾリウムカチオン、トリアルキルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ジアルキルピロリジニウムイオン、ジアルキルピペリジニウムイオンが挙げられる。
これらの有機カチオンのカウンターとなるアニオンとしては、例えば、PFアニオン、PF(Cアニオン、PF(CFアニオン、BFアニオン、BF(CFアニオン、BF(CF)アニオン、ビスオキサラトホウ酸アニオン、Tf(トリフルオロメタンスルフォニル)アニオン、Nf(ノナフルオロブタンスルホニル)アニオン、ビス(フルオロスルフォニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルフォニル)イミドアニオン、及びジシアノアミンアニオンを用いることができる。
本実施形態に係る電解液は、不織布の素材の分解を抑制する目的、特にPET等のポリエステル系樹脂の分解を抑制する目的で、電解液にC=C結合を有する炭酸エステル及び含フッ素環状カーボネートのうち少なくとも一方の化合物を含有する。C=C結合を有する炭酸エステル及び含フッ素環状カーボネートのうち少なくとも一方の化合物を含有することにより、負極上に不導態保護被膜(SEI:Solid Electrolyte Interphase)が形成され、不織布の素材が分解されるのを抑制できる。また、それらの化合物に代えて又は加えて、スルホンを用いても同様の効果を奏することができる。以下、これらの化合物を単に「添加剤」ともいう。
C=C結合を有する炭酸エステルとしては、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルが挙げられる。C=C結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)などの不飽和環状炭酸エステル、並びに、ビニルエチレンカーボネート及びジビニルエチレンカーボネートなどの炭素数2〜4のアルケニル基を置換基として有する環状炭酸エステルが挙げられる。これらの中では、電池性能の観点等から、ビニレンカーボネートが望ましい。
C=C結合を有する鎖状炭酸エステルとしては、例えば、ビニルアセテート、ビニルブチレート及びビニルヘキサネートなどが例示でき、これらの中では、電池性能の観点等から、ビニルアセテートが望ましい。
含フッ素環状カーボネートとしては、分子内にフッ素原子を有する環状カーボネートであれば特に限定されず、例えば、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、1,2,3−トリフルオロプロピレンカーボネート、2,3−ジフルオロ−2,3−ブチレンカーボネート、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2,3−ブチレンカーボネートなどの1〜6個のフッ素原子を有する含フッ素環状カーボネートが挙げられる。これらの中では、粘度の観点、及びリチウム塩の溶解性の観点から、含フッ素環状カーボネートがモノフルオロエチレンカーボネート(FEC)であると好ましい。
スルホンは、分子内に、2つの炭素原子に結合したスルホニル基(−SO−)を有する化合物である。その具体例としては、例えば、スルホラン、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、及びメチルプロピルスルホンなどの、2つのアルキル基に結合したスルホニル基を有する化合物が挙げられる。これらの中では、電池性能の観点等から、スルホランが好ましい。
電解液に含有されている、C=C結合を有する炭酸エステル、含フッ素環状カーボネート及びスルホンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。それら化合物の含有割合は、それらの合計で電解液量に対して1〜30質量%であることが好ましい。それらの化合物の含有割合が1質量%以上であることにより、負極に保護被膜をより十分に形成することが可能であり、30質量%以下であることにより、保護被膜による被膜抵抗の増加を抑制して、充放電特性の低下を一層防止することができる。このような観点から、それらの化合物の含有割合は、更に好ましくは、1〜25質量%である。
電解質として用いられるリチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiOSO2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiN(SO2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiPF(C2k+16−n〔nは1〜5の整数、kは1〜8の整数〕、LiBF((C2k+14−n〔nは1〜3の整数、kは1〜8の整数〕、LiB(Cで表されるリチウムビスオキサリルボレート、LiBF(C)で表されるリチウムジフルオロオキサリルボレート、LiPF(C)で表されるリチウムトリフルオロオキサリルフォスフェートが挙げられる。
また、下記一般式(a)、(b)又は(c)で表されるリチウム塩を電解質として用いることもできる。
LiC(SO11)(SO12)(SO13) (a)
LiN(SOOR14)(SOOR15) (b)
LiN(SO16)(SOOR17) (c)
ここで、式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。
これらの電解質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの電解質のうち、電池特性や安定性の観点から、LiPF、LiBF及びLiN(SO2k+1〔kは1〜8の整数〕が好ましい。
電解質の濃度は任意であり特に限定されないが、電解質は、電解液中に好ましくは0.1〜3mol/L、より好ましくは0.5〜2mol/Lの濃度で含有される。
なお、本実施形態に用いる電解液は、リチウムイオン二次電池で求められる安全性と電池特性とを満足することに特に優れ、リチウムイオン二次電池で好適に使用される。
<正極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、正極は、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する材料を用いる。そのような材料としては、例えば、下記一般式(d)及び(e)で表される複合酸化物、トンネル構造及び層状構造の金属カルコゲン化物及び金属酸化物、オリビン型リン酸化合物が挙げられる。
LixMO (d)
LiyM (e)
ここで、式中、Mは遷移金属から選ばれる1種以上の金属を示し、xは0〜1の数、yは0〜2の数を示す。
より具体的には、例えば、LiCoOに代表されるリチウムコバルト酸化物;LiMnO、LiMn、LiMnに代表されるリチウムマンガン酸化物;LiNiOに代表されるリチウムニッケル酸化物;LiMO(MはNi、Mn、Co、Al及びMgからなる群より選ばれる2種以上の元素を示し、zは0.9超1.2未満の数を示す)で表されるリチウム含有複合金属酸化物;LiFePOで表されるリン酸鉄オリビンが挙げられる。また、正極活物質として、例えば、S、MnO、FeO、FeS、V、V13、TiO、TiS、MoS及びNbSeに代表されるリチウム以外の金属の酸化物も例示される。さらには、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリピロールに代表される導電性高分子も正極活物質として例示される。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極が、正極活物質として、リチウム含有化合物を含むことが好ましい。
また、正極活物質としてリチウム含有化合物を用いると、高電圧及び高エネルギー密度を得ることができる傾向にあるので好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、リチウムを含有するものであればよく、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物及びリチウムと遷移金属元素とを含むケイ酸金属化合物(例えばLitMuSiO、Mは上記式(d)と同義であり、tは0〜1の数、uは0〜2の数を示す。)が挙げられる。より高い電圧を得る観点から、特に、リチウムと、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)及びチタン(Ti)からなる群より選ばれる1種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物並びにリン酸化合物が好ましい。
より具体的には、かかるリチウム含有化合物としてリチウムを有する金属酸化物、リチウムを有する金属カルコゲン化物及びリチウムを有するリン酸金属化合物が好ましく、例えば、それぞれ下記一般式(f)、(g)で表される化合物が挙げられる。
Li (f)
LiIIPO (g)
ここで、式中、M及びMIIはそれぞれ1種以上の遷移金属元素を示し、v及びwの値は電池の充放電状態によって異なるが、通常vは0.05〜1.10、wは0.05〜1.10の数を示す。
上記一般式(f)で表される化合物は一般に層状構造を有し、上記一般式(g)で表される化合物は一般にオリビン構造を有する。これらの化合物において、構造を安定化させる等の目的から、遷移金属元素の一部をAl、Mg、その他の遷移金属元素で置換したり結晶粒界に含ませたりしたもの、酸素原子の一部をフッ素原子等で置換したものも挙げられる。更に、正極活物質表面の少なくとも一部に他の正極活物質を被覆したものも挙げられる。
正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
正極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.05〜100μm、より好ましくは1〜10μmである。正極活物質の数平均粒子径は湿式の粒子径測定装置(例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布計、動的光散乱式粒度分布計)により測定することができる。あるいは、透過型電子顕微鏡にて観察した粒子100個をランダムに抽出し、画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト、商品名「A像くん」)で解析し、その相加平均を算出することでも得られる。この場合、同じ試料に対して、測定方法間で数平均粒子径が異なる場合は、標準試料を対象として作成した検量線を用いてもよい。
正極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記正極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、正極が作製される。
ここで、正極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
正極集電体は、例えば、アルミニウム箔、又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
<負極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を用いる。本実施形態のリチウムイオン二次電池において、負極は、負極活物質として、金属リチウム、炭素材料、リチウムと合金形成が可能な元素を含む材料、及び、リチウム含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると好ましい。そのような材料としては、金属リチウムの他、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックに代表される炭素材料が挙げられる。これらのうち、コークスとしては、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体は、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。なお、本実施形態においては、負極活物質に金属リチウムを採用した電池もリチウムイオン二次電池に含めるものとする。
更に、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としては、リチウムと合金を形成可能な元素を含む材料も挙げられる。この材料は金属又は半金属の単体であっても合金であっても化合物であってもよく、またこれらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。
なお、本明細書において、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含める。また、合金が、その全体として金属の性質を有するものであれば非金属元素を有していてもよい。その合金の組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はこれらのうちの2種以上が共存する。
このような金属元素及び半金属元素としては、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)が挙げられる。
これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましいのはチタン、ケイ素及びスズである。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
チタンの化合物、スズの化合物及びケイ素の化合物としては、例えば酸素(O)又は炭素(C)を有するものが挙げられ、チタン、スズ又はケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
また、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としてリチウム含有化合物も挙げられる。リチウム含有化合物としては、正極材料として例示したものと同じものを用いることができる。
負極活物質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
負極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜10μmである。負極活物質の数平均粒子径は、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。
負極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記負極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この負極合剤含有ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、負極が作製される。
ここで、負極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
正極及び負極の作製にあたって、必要に応じて用いられる導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜10μmであり、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンを含有する共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム及びフッ素ゴムが挙げられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、セパレータと、そのセパレータを両側から挟む正極と負極と、さらにそれらの積層体を挟む正極集電体(正極の外側に配置)と、負極集電体(負極の外側に配置)と、それらを収容する電池外装とを備える。正極とセパレータと負極とを積層した積層体は、上述した電解液に含浸されている。これらの各部材としては、電解液及びセパレータを上述したような組み合わせとすれば、その他の部材は、従来のリチウムイオン二次電池に備えられるものを用いることができ、例えば上述のものであってもよい。
<電池の作製方法>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述の構成を備える他は、従来と同様であってもよく、上述のセパレータと、電解液と、正極と、負極とを用いて、公知の方法により作製される。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層状態で巻回して巻回構造の積層体に成形したり、それらを折り曲げや複数層の積層などによって、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する積層体に成形したりする。次いで、電池ケース(外装)内にその積層体を収容して、電解液をケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、本実施形態のリチウムイオン二次電池を作製することができる。本実施形態のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形及びラミネート形などが好適に採用される。
本実施形態に用いる電解液は、高い伝導度を実現し得るので、当該電解液と上述のセパレータとを備えるリチウムイオン二次電池は、高い電池特性(例えば、充放電特性、低温作動性、高温耐久性等)を有する。
<電池の充電方法>
本実施形態のリチウムイオン二次電池の充電方法は、その電池に対して、0.3C以下の充電電流にて初回充電を行う。上述のようにして作製されたリチウムイオン二次電池は、まだ充電されていないため、この充電方法により初回充電が行われることにより、電池として機能することになる。よって、この充電方法は、リチウムイオン二次電池の作製方法の一工程として位置づけられてもよい。
初回充電の充電電流は、より緻密な被膜形成の観点から、0.2C以下とすることが好ましい。充電電流の下限は特に限定されないが、本発明による効果をより有効且つ確実に奏する観点、並びにリチウムイオン二次電池の製造効率の観点から、0.03Cであると好ましく、0.05Cであるとより好ましい。SEIが形成される充電範囲において、0.3C以下の低速で初回充電を行うことにより、SEIがゆっくりと形成されて、強固なSEIとなる。これにより、電池の実用開始後において、SEIの耐久性、すなわち負極からの剥離し難さが向上するので、剥離した場合に、その後に新たなSEIを形成するためのリチウム消費も防止され、電池の容量劣化を抑制し、良好なサイクル特性を得ることができる。
初回充電を行う際の充電時間は、5〜100時間の範囲であることが好ましい。充電時間が5時間以上であれば、SEIがより強固に形成されるので好ましい。また、電池の製造工程時間を短縮させる観点から、充電時間が100時間以下であることが好ましい。同様の観点から、初回充電における充電時間は、より好ましくは80時間以下であり、更に好ましくは50時間以下である。
初回充電を行う際の電池の温度は、20〜60℃の範囲であることが好ましい。この温度が60℃以下であれば、電池内部の電解質の揮発等、正・負極場での反応に影響を及ぼすような現象を、より有効に抑えられるので好ましい。また、この温度が20℃以上であれば、SEIをより強固に形成しやすくなるので好ましい。同様の観点から、初回充電における電池の温度は、より好ましくは20〜55℃であり、更に好ましくは20〜50℃である。なお、電池の温度は、電池周囲の温度は電池周囲の温度と同じ温度とし、例えば、電池の初回充電を恒温槽内で行う場合は、恒温槽内の温度と同じ温度とする。
初回充電における定電流充電は、上限電圧に達するまで行うことが好ましいが、その上限電圧は特に限定されない。上限電圧は、好ましくは3.5V以上であり、より好ましくは4.0〜4.5Vであり、更に好ましくは4.0〜4.3Vである。上限電圧が4.5V以下であると、一層優れた充放電効率を有する電池を得ることができる。また、上限電圧が4.0V以上であると、放電容量を更に増加させることができる。
なお、SEIを更に強固に形成するために、初回充電の後に、電池のエージングを行うエージング工程を設けてもよい。エージング工程の条件は特に限定されないが、未充電の電池を作製して、初回充電を行った後、好ましくは20〜60℃の温度範囲で、好ましくは30分間〜1週間の範囲でエージングを行うことが好ましい。
<充放電サイクル試験>
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、25℃における充放電サイクル試験を100サイクル行ったときの時の放電容量維持率が80%以上であると好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。本実施形態において、充放電サイクル試験とは、作製した電池の充放電を共に1C条件で実施する場合を示す。なお、電池の充電と放電とを各1回ずつ実施すると1サイクルと数え、放電容量維持率は2サイクル目の放電容量を100%として計算する。
本実施形態によると、電池の高容量化が可能な不織布を含むセパレータを用いても、短絡を十分に抑制し、セパレータの形状を十分に保持したまま、安定した充放電挙動を示し、出力特性やサイクル特性にも優れたリチウムイオン二次電池を作製可能な充電方法を提供することができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種物性・特性の測定方法及び評価方法は下記のとおりである。特記がない限り、不織布において、長さ方向とはMD方向(マシン方向)を意味し、幅方向とは該長さ方向と垂直の方向を意味する。
(1)目付(g/m
JIS L−1913に規定の方法に従い、不織布及びセパレータ(積層不織布)の1m×1mの領域において、縦(長さ方向)20cm×横(幅方向)25cmの試験片を、不織布及びセパレータの幅方向1m当たり3箇所、長さ方向1m当たり3箇所の、1m×1mの領域当たりで計9箇所採取した。それらの試験片の質量をそれぞれ測定し、その平均値を単位面積当たりの質量に換算して目付を求めた。
(2)厚さ(mm)
セパレータの厚さは膜厚計を用いて測定した。膜厚計にはMitutoyo製のデジマチックインジケーター(商品名)を用い、セパレータ中の任意の3点の厚さを測定し、その平均値をセパレータの厚さとした。
(3)繊維径(μm)
試料(不織布)の各端部10cmを除いて、試料の幅20cm毎の区域から、それぞれ1cm角の試験片を切り取った。各試験片について、マイクロスコープで繊維の直径を30点測定して、測定値の平均値(μm単位の小数点第2位を四捨五入)を算出し、試料に含まれる繊維の繊維径とした。
(4)空隙率
上記(1)において測定したセパレータの目付(総目付)、及び、上記(2)において測定したセパレータの厚さから、下記の式により、空隙率(%)を計算した。
空隙率=[1−(総目付/厚さ/セパレータの素材密度)]×100
(5)開孔径分布(平均流量孔径及び最大孔径)
PMI社のパームポロメーター(商品名、型式:CFP−1200AEX)を用いた。測定には浸液にPMI社製のシルウィック(商品名)を用い、試料を浸液に浸して十分に脱気した後、測定した。上記測定装置は、フィルターを試料として、予め表面張力が既知の液体にフィルターを浸し、フィルターの全ての細孔を液体の膜で覆った状態からフィルターに圧力をかけ、液膜の破壊される圧力と液体の表面張力とから計算された細孔の孔径を測定する。計算には下記の数式を用いる。
d=C・r/P
(式中、d(単位:μm)はフィルターの孔径、r(単位:N/m)は液体の表面張力、P(単位:Pa)はその孔径の液膜が破壊される圧力、Cは定数である。)
上記の数式より、液体に浸したフィルターにかける圧力Pを低圧から高圧に連続的に変化させた場合の流量(漏れ流量)を測定する。初期の圧力では、最も大きな細孔の液膜でも破壊されないので流量は0である。圧力を上げていくと、最も大きな細孔の液膜が破壊され、流量が発生する(バブルポイント)。さらに圧力を上げていくと、各圧力に応じて流量は増加する。最も小さな細孔の液膜が破壊されたときの圧力における流量が、乾いた上体の流量(乾き流量)と一致する。
上記測定装置による測定方法では、ある圧力における漏れ流量を、同圧力での乾き流量で除した値を累積フィルター流量(単位:%)と呼ぶ。累積フィルター流量が50%となる圧力で破壊される液膜の孔径を、平均流量孔径と呼ぶ。本明細書においては、上記フィルターとしてセパレータを用い、平均流量孔径を、本明細書におけるセパレータの平均孔径とした。
セパレータの最大孔径は、セパレータを上記フィルターとして用い、累積フィルター流量が50%の−2σの範囲、すなわち、累積フィルター流量が2.3%となる圧力で破壊される液膜の孔径とした。
上記測定方法にて、各サンプルについて3点測定を行い、その平均値として平均流量孔径と最大孔径とを計算した。
(6)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定
特定の充電電流及び放電電流における充電容量及び放電容量を以下のとおりに測定してリチウムイオン二次電池の充放電特性を評価した。
測定用のリチウムイオン二次電池として、1C=3mAとなる小型電池を作製して用いた。リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量の測定は、アスカ電子(株)製充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
未充電のリチウムイオン二次電池に対して、0.2C、0.3C又は0.5Cの充電電流にて定電流で充電を開始し、4.2Vに到達した後、4.2Vを保持するようにして電流値を1mAから絞り始めるという方法で、充電電流が0.03mAに収束するまで初回充電を行った。充電時間内に電流が0.03mA以下にならずに収束しない場合を短絡と判断した。その後、10分間の休止を経て、1mAで3.0Vまで放電した。
続いて、1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vを保持するようにして電流値を1Cから絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。その後、10分間の休止を経て、1Cで3.0Vまで放電し、その時の放電容量を1C放電容量(mAh)とした。
このときの電池周囲温度は、表1に示すとおり、25〜60℃に設定した。
(7)リチウムイオン二次電池の容量維持率測定(サイクル特性)
容量維持率の測定は、アスカ電子(株)製充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。測定用のリチウムイオン二次電池として、上記「(6)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定」と同様にして作製した初回充電及びその後の放電後のリチウムイオン二次電池を用いた。充放電サイクル試験では、まず1サイクル目として、1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計3時間充電を行った。その後、10分間の休止を経て、0.3Cの定電流で放電し、3.0Vに到達した時点で再び10分間の休止を経た。続いて、2サイクル目以降は、1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計3時間充電を行った。その後、10分間の休止を経て、3mAの定電流で放電し、3.0Vに到達した時点で再び10分間の休止を経た。充電と放電とを各々1回ずつ行うのを1サイクルとし、100サイクルの充放電を行った。2サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の放電容量の比率を容量維持率とした。電池の周囲温度は25℃に設定した。
(8)リチウムイオン二次電池の高温耐久性試験(高温サイクル特性)
1C=1.8mAとなるように、正極活物質の一部を剥がしてAl集電体部を露出させ、電池の周囲温度を50℃に設定したこと以外は、「(7)リチウムイオン二次電池の容量維持率測定(サイクル特性)」と同様にして、充放電サイクル試験を100サイクルまで行い、高温時の容量維持率を測定した。
(9)セパレータの状態の確認
上記「(7)リチウムイオン二次電池の容量維持率測定(サイクル特性)」又は「(8)リチウムイオン二次電池の高温耐久性試験(高温サイクル特性)」の試験を行った後、リチウムイオン二次電池を分解してセパレータの状態を目視にて確認した。セパレータに破れが認められなかった場合を「異常なし」、セパレータの正極集電体に対向する部分での破れが認められた場合を「破れあり」と評価した。
(実施例1)
<セパレータの作製>
以下の方法により、セパレータを作製した。
まず、熱可塑性合成長繊維の不織布層を下記の方法により作製した。具体的には、汎用的なPETの溶液を用い、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で、フィラメント群を、移動する捕集ネット面に向けて押し出し、紡糸速度4500m/分で紡糸した。次いで、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させてフィラメント群を充分に開繊させ、熱可塑性合成長繊維ウェブを捕集ネット上に形成した。繊維径の調整は、牽引条件を変えることにより行い、繊維径12μmのスパンボンド法による繊維の不織布(以下、単に「スパンボンド不織布」と表記する。)を得た。
次に、極細繊維を含む不織布を下記の方法により作製した。汎用的なPETの溶液を用い、紡糸温度300℃、加熱空気1000Nm/hr/mの条件下で、メルトブロウン法により紡糸して、上記のスパンボンド不織布上に吹き付けた。この際、メルトブロウンノズルからスパンボンド不織布までの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引力を0.2kPa、風速を7m/secに設定した。繊維径の調整は、加熱空気量を制御することにより行い、上記スパンボンド不織布上に、繊維径1.7μmのメルトブロウン法による繊維の不織布(以下、単に「メルトブロウン不織布」と表記する。)を形成して、それらの不織布の積層体を得た。
次いで、上記積層体のメルトブロウン不織布上に、上記と同様にしてスパンボンド不織布を形成して不織布の積層体を得て、その積層体の厚さが32μmとなるようにカレンダ加工を施し、積層不織布を得た。
カレンダ加工後の積層不織布を直径24mmの円盤状に打ち抜いてセパレータを得た後、そのセパレータの開口径分布などを上記のとおり測定した。セパレータの各種物性・特性を表1に示す。
<正極の作製>
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムのニッケル、マンガン及びコバルト混合酸化物と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、混合酸化物:グラファイト炭素粉末:アセチレンブラック粉末:PVDF=100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて正極を得た。
<負極の作製>
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末(III)及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末(IV)と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、グラファイト炭素粉末(III):グラファイト炭素粉末(IV):カルボキシメチルセルロース溶液:ジエン系ゴム=90:10:1.44:1.76の固形分質量比で全体の固形分濃度が45質量%になるように混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて負極を得た。
<電解液の調製>
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、ビニレンカーボネートを電解液量に対して6質量%となるように添加し、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/Lとなるように溶解させて電解液を調製した。
<電池組立と評価>
正極と負極との活物質面が対向するように、負極、セパレータ及び正極の順に重ね、蓋付きステンレス金属製容器に収納した。なお、容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接するように収納した。この容器内に上記電解液を注入して密閉し、未充電のリチウムイオン二次電池を得た。
上記のようにして組み立てた未充電のリチウムイオン二次電池について、「(6)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定」、「(7)リチウムイオン二次電池の容量維持率測定(サイクル特性)」及び「(9)セパレータの状態の確認」に記載の評価を行った。なお、「(6)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定」において、初回充電時に、未充電のリチウムイオン二次電池に対して、0.2Cの充電電流にて定電流で充電を開始し、そのときの電池の温度は25℃とした。結果を表1に示す(以下同様)。
(実施例2)
初回充電時に、未充電のリチウムイオン二次電池に対して、0.2Cの充電電流にて定電流で充電を開始するのに代えて、0.3Cの充電電流にて定電流で充電を開始した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例3)
電解液量に対して6質量%のビニレンカーボネートを、電解液量に対して6質量%のフルオロエチレンカーボネートに変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例4)
電解液量に対して6質量%のビニレンカーボネートを、電解液量に対して6質量%のスルホランに変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例5)
電解液量に対して6質量%のビニレンカーボネートを、電解液量に対して15質量%のビニレンカーボネートに変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例6)
電解液量に対して6質量%のビニレンカーボネートを、電解液量に対して10質量%のフルオロエチレンカーボネートに変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例7)
電解液量に対して6質量%のビニレンカーボネートを、電解液量に対して9質量%のスルホランに変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例8)
初回充電時の温度を25℃から45℃に変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例9)
初回充電時の温度を25℃から55℃に変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例10)
初回充電時の温度を25℃から15℃に変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例11)
初回充電時の温度を25℃から70℃に変更した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(実施例12)
「(7)リチウムイオン二次電池の容量維持率測定(サイクル特性)」に代えて「(8)リチウムイオン二次電池の高温耐久性試験(高温サイクル特性)」を行った以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(比較例1)
初回充電時に、未充電のリチウムイオン二次電池に対して、0.2Cの充電電流にて定電流で充電を開始するのに代えて、0.5Cの充電電流にて定電流で充電を開始した以外は実施例1と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
(比較例2)
電解液にビニレンカーボネートを添加しなかった以外は実施例12と同様にして、電池の組立及び評価まで行った。
Figure 2014060119
表1から分かるように、本実施形態のリチウム二次電池は、電池の高容量化が可能な不織布セパレータを用いても、短絡を十分に抑制し、セパレータの形状を十分に保持すると共に、高い耐熱性を示し、安定した充放電挙動を示し、出力特性やサイクル特性にも優れることが分かった。
本発明の充電方法及び製造方法により得られたリチウムイオン二次電池は、例えば、携帯電話、携帯オーディオ、パソコンなどの携帯機器に加え、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車などの自動車用充電池としての利用も期待される。

Claims (10)

  1. 正極及び負極と、炭素−炭素二重結合を有する炭酸エステル、フッ素原子を有する環状カーボネート及びスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と溶媒とを含有する電解液と、不織布を含むセパレータと、を備えるリチウムイオン二次電池に対して、0.3C以下の充電電流にて初回充電を行う、リチウムイオン二次電池の充電方法。
  2. 0.2C以下の充電電流にて前記初回充電を行う、請求項1記載の充電方法。
  3. 前記初回充電を行う際の温度が20〜60℃である、請求項1又は2に記載の充電方法。
  4. 前記化合物の総含有量が、前記溶媒の含有量に対して、1〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電方法。
  5. 前記不織布は、繊維径が0.1〜30μmである繊維を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電方法。
  6. 前記不織布は、ポリエステル系樹脂を含む不織布を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の充電方法。
  7. 前記ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項6記載の充電方法。
  8. 前記炭素−炭素二重結合を有する炭酸エステルは、ビニレンカーボネートを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の充電方法。
  9. 前記フッ素原子を有する環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネートを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の充電方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の充電方法により初回充電を行う工程を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN104766937A (zh) * 2015-02-10 2015-07-08 龙岩紫荆创新研究院 一种环保型锂离子电池隔膜及其制备方法
US10797350B2 (en) 2015-10-05 2020-10-06 Kabushiki Kaisha Toyota Jidoshokki Method for producing secondary battery including coating on electrode surface

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