JP2014059325A - 熱処理異常検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】形状,焼入れ条件等が種々異なる部材に適用可能であり、高周波焼入れが施された鋼製部材の熱処理異常を破壊することなく検出することができる方法を提供する。
【解決手段】高周波焼入れにより生じた焼入れ組織と非焼入れ組織とを備える鋼製の被検材に超音波パルスを入射し、被検材の表面から心部までの間の各深さ位置でそれぞれ反射された反射波を受信して、各反射波の強度を取得する。これら各反射波のうち、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度を、焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度で除した値により、被検材に熱処理異常があるか否かを検出する。
【選択図】図5

Description

本発明は、高周波焼入れが施された鋼製部材の熱処理異常を破壊することなく検出する方法に関する。
高周波焼入れ等の焼入れが施された鋼製部材において有効硬化層深さを測定する方法としては、切断した鋼製部材の切断面をエッチングしてマクロ的に観察する方法や、切断面の各深さ位置の硬さを測定する方法が知られている。しかしながら、このような破壊検査は、鋼製部材の形状が複雑であったり大型であったりした場合は、切断が容易ではないため、多大な時間とコストを要することになる。そのため、近年では、超音波を用いた非破壊検査が用いられることもある。
例えば、特許文献1には、MHz帯の周波数の超音波パルスを測定対象材料の表面に対し傾斜させて送受波する探触子を有するセンサ部と、測定対象材料内で反射してきた受波信号中から、測定対象材料の焼入れ硬化層と母材層(非焼入れ層)との境界からの反射波を抽出する抽出手段と、測定対象材料の表面から反射波までの距離を計測する演算部とを備える、超音波の横波を利用した層厚測定装置が開示されている。
特許文献1によれば、超音波パルスが測定対象材料の内部に伝播した際に、結晶粒径の小さい焼入れ硬化層と比較して結晶粒径の大きい母材層の方が反射レベルが大きいことを利用して、その反射レベルに差が見られる境界を検出することによって、有効硬化層深さを測定することができる。
また、特許文献2には、特許文献1の場合と同様に、焼入れ硬化層と母材層との境界付近の超音波反射波を利用して、焼入れ硬化層の深さを評価する方法が開示されている。特許文献2によれば、受信信号の焼入れ硬化層の表面反射波から該表面反射波の次に受信した境界付近の超音波反射波までの時間を複数計測し、この計測した時間情報を集計して、所定の時間帯毎の超音波反射波の発生頻度によりヒストグラムを形成し、発生頻度のピーク位置における時間帯値によって焼入れ硬化層の深さを評価することができる。
しかしながら、特許文献1,2の方法では、測定対象材料のうち硬化層深さ一点のみしか測定できないことに加えて、その硬さは不明確であった。高周波焼入れが施された転がり軸受の軸受部品においては、転がり疲労寿命等の必要な性能を確保するためには、例えば有効硬化層深さ(所定の硬さとなる深さ)を高精度に測定したり、熱処理異常(例えば、表面におけるトゥルースタイト,未変態フェライト等の不完全焼入れ組織の存在や、焼入れ層の貫通(すなわち、ずぶ焼入れ状態))を確実に検出する必要があるので、特許文献1,2の方法は転がり軸受の品質を保証するための方法としては不十分であった。
このような背景から、受信された超音波の反射波における散乱波のピーク信号を検出し、このピーク信号が現れる表面からの深さ位置であるピーク位置を、検出したピーク信号の発信から受信までの伝搬時間により算出し、算出したピーク位置のヒストグラムから所定の基準により超音波深さ位置を定め、予め求めておいた超音波深さ位置と有効硬化層深さとの相関関係に基づいて、有効硬化層深さを測定する方法が提案されている(特許文献3を参照)。
特開平8−94344号公報 特開平11−94809号公報 特開2007−198822号公報 特開2008−261765号公報 特開2007−218590号公報
しかしながら、特許文献3の方法では、前述した熱処理異常の検出は不可能であった。その上、例えば部材の形状や高周波焼入れ条件が変わって、高周波加熱時の温度勾配が変化した場合は、超音波深さ位置と有効硬化層深さとの相関関係も変化すると考えられるため、有効硬化層深さを正確に測定することができないおそれがあった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、形状,焼入れ条件等が種々異なる部材に適用可能であり、高周波焼入れが施された鋼製部材の熱処理異常を破壊することなく検出することができる方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る熱処理異常検出方法は、高周波焼入れにより生じた焼入れ組織と非焼入れ組織とを備える鋼製の被検材に超音波パルスを入射し、前記被検材の表面から所定深さまでの間の各深さ位置でそれぞれ反射された反射波を受信して、前記各反射波の強度を取得し、これら各反射波のうち、前記非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度を、前記焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度で除した値により、前記被検材に熱処理異常があるか否かを検出することを特徴とする。
この熱処理異常検出方法においては、取得した前記各反射波の強度を用いて、前記被検材の表面からの距離と前記反射波の強度との関係を示す反射波形曲線を描き、前記超音波パルスを複数回連続的に入射することにより、前記反射波形曲線を複数取得した後、これら複数の反射波形曲線を平均化して得た平均化曲線を平滑化し、その平滑化曲線から読み取った前記反射波の強度を用いて、前記被検材に熱処理異常があるか否かを検出することができる。
また、この熱処理異常検出方法においては、前記被検材は、転がり軸受の内輪,外輪,又は転動体とすることができる。
本発明の熱処理異常検出方法は、形状,焼入れ条件等が種々異なる部材に適用可能であり、高周波焼入れが施された鋼製部材の熱処理異常を破壊することなく検出することができる。
本発明の一実施形態に係る熱処理異常検出方法によって品質が保証された深溝玉軸受の構造を示す縦断面図である。 焼入れが施された被検材について表面からの距離と硬さとの関係を模式的に示したグラフである。 標準材における反射波の強度と非焼入れ組織の比率との相関関係を示すグラフである。 標準材における非焼入れ組織の比率と硬さとの相関関係を示すグラフである。 被検材の反射波形曲線とその平均化曲線及び平滑化曲線である。 被検材の硬さ分布曲線である。 高周波焼入れを施した3種の被検材の反射波形曲線の平滑化曲線である。 高周波焼入れを施した3種の被検材の硬さ分布曲線である。
本発明に係る熱処理異常検出方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1の深溝玉軸受は、外周面に軌道面1aを有する内輪1と、軌道面1aに対向する軌道面2aを内周面に有する外輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配された複数の転動体(玉)3と、内輪1及び外輪2の間に転動体3を保持する保持器4と、内輪1及び外輪2の間の隙間の開口を覆う密封装置5,5(例えば鋼製のシールドやゴムシール)と、を備えており、内輪1の外周面及び外輪2の内周面の間に形成された軸受内部空間には、図示しない潤滑剤(例えば潤滑油,グリース)が封入されている。なお、保持器4や密封装置5は備えていなくてもよい。
この深溝玉軸受においては、内輪1,外輪2,及び転動体3は、S53C,SUJ2等の鋼で構成されている。内輪1,外輪2,及び転動体3には高周波焼入れ(浸炭焼入れ,浸炭窒化焼入れ等も採用可能である)が施されていて、該焼入れにより硬化されてなる硬化層(図示せず)が軌道面1a,2a及び転動体3の転動面3aに形成されている。また、硬化層の内側には、焼入れが施されていない心部(図示せず)がある。硬化層は焼入れ組織を備え、心部は非焼入れ組織を備えている。
前述した従来技術においては硬化層と心部との2層構造が想定されており、非焼入れ組織に起因する反射波が検出された深さ位置が前記2層の境界部分であると考えられていた。しかしながら、実際には硬化層と心部との完全な2層構造となっているわけではなく、硬化層と心部との間に、焼入れ組織と非焼入れ組織とが混在する混合組織層が存在する。この混合組織層においては、表面側から心部側に向かうにしたがって(すなわち、表面からの距離が大きくなるにしたがって)、非焼入れ組織の比率が徐々に増加し、それに伴って硬さが徐々に低下する。表面からの距離と硬さとの関係を模式的に示したグラフを、図2に示す。
そして、この深溝玉軸受においては、内輪1,外輪2,及び転動体3の硬さ分布が、下記に示す硬さ分布測定方法で測定されているとともに、熱処理異常の有無が下記に示す熱処理異常検出方法で検出されており、その品質が保証されている。なお、内輪1,外輪2,及び転動体3のうち少なくとも一つの品質が保証されていればよいが、全ての品質が保証されていることが最も好ましい。
内輪1,外輪2,及び転動体3(以降は被検材と記す)の軌道面1a,2aや転動面3aに、所定の周波数(例えば10MHz)の超音波パルスを入射して、その反射波を受信する。被検材に入射された超音波パルスは、被検材の表面から心部までの間の各深さ位置でそれぞれ反射されるので、各反射波を受信して、各反射波の強度を取得する。また、超音波パルスの入射から反射波の受信までの時間を、各反射波について測定する。この反射波の受信までの時間によって、その反射波がどの深さ位置で反射されたものかを算出することができる。このようにして、各反射波について強度と反射された深さ位置とが得られるので、被検材の表面からの距離と反射波の強度との関係を示す反射波形曲線を描く。
そして、後述する標準材を用いて予め取得した、反射波の強度と非焼入れ組織の比率との相関関係及び非焼入れ組織の比率と硬さとの相関関係に基づいて、反射波の強度を硬さに変換すれば、被検材の各深さ位置の硬さを求めることができるから、前記反射波形曲線を被検材の硬さ分布曲線(深さ方向の硬さ分布)に変換することができる。
図3は、標準材における反射波の強度と非焼入れ組織の比率(面積率)との相関関係を示すグラフであり、図4は、標準材における非焼入れ組織の比率(面積率)と硬さとの相関関係を示すグラフである。図3から分かるように、全組織中の非焼入れ組織の比率が大きいほど、反射波の強度も大きくなる。なお、図3のグラフにおける強度の数値は、受信した反射波のうち焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度を0、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度を1と定義した場合の相対値で示してある。反射波形曲線を硬さ分布曲線に変換する場合には、上記のような相対値を反射波の強度として使用することが好ましい。
また、受信した反射波のうち、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度(絶対値)を、焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度(絶対値)で除した値が、所定値以上であれば、被検材に熱処理異常(例えば、表面におけるトゥルースタイト,未変態フェライト等の不完全焼入れ組織の存在や、焼入れ層の貫通(すなわち、ずぶ焼入れ状態))がなく、熱処理品質が良好であると判別できる。例えば、上記所定値が「2」であるとすれば、図5に示す反射波形曲線が得られた被検材は、熱処理品質が良好であると判別できる。
表面に不完全焼入れ組織が存在すると、焼入れ組織に起因する反射波の強度は高くなり、また、焼入れ層が貫通すると、心部の組織に起因する反射波の強度は低くなる。このため、熱処理異常があった場合は、無い場合に比べて、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度(絶対値)を、焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度(絶対値)で除した値が小さくなる。
本発明者らは、鋭意検討の結果、熱処理異常が無い場合は、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度(絶対値)を、焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度(絶対値)で除した値が2以上となることを見出した。したがって、熱処理異常が無いことを保証するためには、上記所定値が2か、あるいは、それより大きな値であることが好ましい。
ただし、上記所定値は、製品の機能に対して求められる熱処理品質に応じて決定すればよく、2に限定されるものではない。例えば、多少の不完全焼入れ組織や焼入れ層の貫通が、製品の機能上許容されるのであれば、上記所定値として2未満を採用することも可能である。
ただし、超音波パルスを1回入射しても、得られたデータから反射波形曲線を描くことができないので、超音波パルスを複数回連続的に入射して反射波形曲線を取得する。また、反射波形曲線は、被検体の表面状態、金属組織のバラツキ、非金属介在物等によるノイズを含んでいるため、1つの反射波形曲線では、高精度の硬さ分布を得たり、熱処理異常を正確に検出することができない場合がある。よって、複数回連続入射を複数回行って複数の反射波形曲線を得て、これらを平均化することにより、上記ノイズを除去することが好ましい。このような操作により、簡単且つ効果的にノイズを除去することができるので、高精度の硬さ分布を得たり、熱処理異常を正確に検出することが容易となる。
つまり、複数の反射波形曲線を平均化して1つの平均化曲線を得て、この平均化曲線を平滑化して得た平滑化曲線を利用する(図5を参照)。すなわち、平滑化曲線から読み取った反射波の強度を図3,4のグラフに基づいて硬さに変換すれば、被検材の各深さ位置の硬さを求めることができるから、平滑化曲線を被検材の硬さ分布曲線に変換することができる。また、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度(絶対値)を、焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度(絶対値)で除した値により、被検材に熱処理異常がなく熱処理品質が良好であるか判別することができる。平均化曲線を平滑化する際には、加重平均法や指数加重平均法を用いることが好ましい。
例えば、図5の平滑化曲線において、反射波の強度が0である深さ位置と反射波の強度が1である深さ位置との間で、反射波の強度を3点(r1,r2,r3)選択する。すると、図5から、反射波の強度r1,r2,r3に対応する表面からの距離D1,D2,D3、すなわち、3つの反射波が反射した深さ位置の表面からの距離が分かる(Dtは、強度が1であった反射波が反射した深さ位置の表面からの距離である)。
次に、図3のグラフを用いて、強度r1,r2,r3及び強度1を非焼入れ組織の比率R1,R2,R3及び比率100(%)に変換し、得られた非焼入れ組織の比率R1,R2,R3及び比率100(%)を、図4のグラフを用いて硬さ(Hv)H1,H2,H3及び心部硬さに変換する。そして、表面からの距離D1,D2,D3,及びDtと硬さ(Hv)H1,H2,H3及び心部硬さとから、図6の硬さ分布曲線が得られる。
このようにして、硬さ分布を直接的に測定することができるため、被検材の硬さ分布を非破壊で精度良く測定することが可能である。なお、上記の例では、反射波の強度が0である深さ位置と反射波の強度が1である深さ位置との間で、反射波の強度を3点選択して硬さ分布曲線を得たが、3点に限定されるものではなく、連続的な硬さ分布曲線を得たい場合には、より多数の点を選択すればよい。また、例えば有効硬化層深さのような特定の硬さとなる深さ位置のみを測定したい場合には、その硬さに対応する反射波の強度を選択すればよい。
また、上記ノイズを除去する方法としては、被検材の反射波形曲線を、被検材と同一材質の基準サンプルから得られた基準反射波形曲線で除する方法が考えられるが、この方法は測定精度が不十分であるおそれがある。すなわち、この方法においては、基準サンプルは、材質のみならず表面状態も被検材と同一である必要があるが、被検材の表面状態は様々であるので、様々な表面状態の基準サンプルを用意する必要がある。また、被検材と基準サンプルの金属組織や非金属介在物の状態を同一にする必要がある。しかしながら、このようなことは、事実上不可能である。
次に、高周波焼入れを施した鋼材からなる3種のサンプルを用意し、前述と同様の方法により、図7のような平滑化曲線を取得した。そして、これらの平滑化曲線について、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度(絶対値)、焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度(絶対値)、及び前者を後者で除した値を求めた。これらの数値を表1に示す。
なお、表1においては、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度(絶対値)を「ピーク強度」、焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度(絶対値)を「最低強度」、ピーク強度を最低強度で除した値を「ピーク強度/最低強度」と記してある。
Figure 2014059325
ここで、例えばピーク強度/最低強度が3以上であるものは、熱処理異常がなく、熱処理品質の良好な良品であるとすれば、サンプル1は良品であり、サンプル2,3は熱処理異常のある不良品であると判別できる。
次に、これらのサンプルを切断し、マイクロビッカース硬度計を用いて切断面の硬さを測定して、各深さ位置の硬さを得た。結果を図8のグラフに示す。このグラフから分かるように、サンプル1は熱処理異常のない良品であったが、サンプル2,3は熱処理異常のある不良品であった。すなわち、サンプル2は心部まで硬化されており(すなわち、焼入れ層の貫通がある)、サンプル3は表面に不完全焼入れ組織があるため硬さが不十分であった。
このように、ピーク強度/最低強度の値が所定値以上であるか否かによって、熱処理異常を検出できることが分かる。なお、上記の所定値は、求められる熱処理品質に応じて決定すればよく、上記の例に限定されるものではない。例えば、サンプル2,3が製品の機能上許容されるのであれば、所定値を例えば1.5とすれば、サンプル2,3は良品と判別される。
超音波パルスの入射、反射波の受信、及び反射波形曲線の取得を行う装置は特に限定されるものではないが、例えば神鋼検査サービス株式会社製のハード・エコーSH−65が好適である。該装置を用いれば、局部水浸法にて被検材の表面に探触子から連続的に超音波パルスを入射することができる。この際には、該装置の2次元探傷モード(Bスコープモード)を用いて、走査しながら連続的に超音波パルスを入射するとよい。また、該装置を用いれば、被検材の内部の各深さ位置でそれぞれ反射された反射波を連続的に受信し、それを積算表示して、反射波形曲線を描くことができる。
ここで、標準材から図3,4のグラフを取得する方法について説明する。まず、被検材(内輪1,外輪2,及び転動体3)と同一材質,同一形状の素材に、内輪1,外輪2,及び転動体3の場合と同一の条件で高周波焼入れを施して、標準材を調製する。そして、この標準材に向けて被検材と同一の周波数の超音波パルスを入射し、被検材と同様にして反射波形曲線を描く。
次に、この標準材を破断し、例えばマイクロビッカース硬度計を用いて破断面の硬さを測定し、各深さ位置の硬さを得た。また、例えばナイタールエッチングによる金属組織観察法や電子線後方散乱回折法(EBSP)により破断面の組織を分析し、各深さ位置における全組織(焼入れ組織及び非焼入れ組織)中の非焼入れ組織の比率を得た。そして、得られた上記各データと標準材の反射波形曲線とから、標準材における反射波の強度と非焼入れ組織の比率との相関関係及び非焼入れ組織の比率と硬さとの相関関係を取得した(すなわち、図3,4のグラフを作成した)。このようにして得られた各相関関係は、同一材質の素材であれば、いかなる形状であっても適用可能である。材質が異なる素材の場合は、その素材ごとに各相関関係を取得すればよい。
なお、超音波パルスを1回入射しても、得られたデータから反射波形曲線を描くことができないので、高精度の硬さ分布を得るためには、標準材においても被検材と同様に超音波パルスの複数回連続入射を複数回行って複数の反射波形曲線を取得し、これら複数の反射波形曲線から平滑化曲線を得ることが好ましい。そして、この平滑化曲線を利用して、反射波の強度と非焼入れ組織の比率との相関関係及び非焼入れ組織の比率と硬さとの相関関係を取得することが好ましい(すなわち、図3,4のグラフを作成することが好ましい)。また、反射波の強度として、受信した反射波のうち焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度を0、非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度を1とした場合の相対値を用いることが好ましい。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、高周波焼入れが施された鋼製部材を例にして説明したが、本発明の熱処理異常検出方法は、高周波焼入れが施された鋼製部材に限らず、あらゆる材質で構成された部材に対して適用することが可能である。例えば、焼入れが施されていない鋼製部材にも適用可能であるし、鋼以外の材質で構成された部材にも適用可能である。また、本実施形態においては、深溝玉軸受を構成する軸受部品を例にして説明したが、本発明の熱処理異常検出方法は、転がり軸受の軸受部品に限らず、あらゆる製品に対して適用することが可能である。
また、本実施形態においては転がり軸受の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,自動調心ころ軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
1 内輪
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 転動体
3a 転動面

Claims (3)

  1. 高周波焼入れにより生じた焼入れ組織と非焼入れ組織とを備える鋼製の被検材に超音波パルスを入射し、前記被検材の表面から所定深さまでの間の各深さ位置でそれぞれ反射された反射波を受信して、前記各反射波の強度を取得し、これら各反射波のうち、前記非焼入れ組織に起因し且つ強度が最も高い反射波の強度を、前記焼入れ組織に起因し且つ強度が最も低い反射波の強度で除した値により、前記被検材に熱処理異常があるか否かを検出することを特徴とする熱処理異常検出方法。
  2. 取得した前記各反射波の強度を用いて、前記被検材の表面からの距離と前記反射波の強度との関係を示す反射波形曲線を描き、前記超音波パルスを複数回連続的に入射することにより、前記反射波形曲線を複数取得した後、これら複数の反射波形曲線を平均化して得た平均化曲線を平滑化し、その平滑化曲線から読み取った前記反射波の強度を用いて、前記被検材に熱処理異常があるか否かを検出することを特徴とする請求項1に記載の熱処理異常検出方法。
  3. 前記被検材が転がり軸受の内輪,外輪,又は転動体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱処理異常検出方法。
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