JP2004177159A - 高周波焼入れパターン計測装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱影響層と母層の境界層が存在しないワークや表面に複雑な形状部分を有するワークについても、信頼性のある焼入れ深さの測定を可能とし、焼入れ深さパターンの表示も可能とする。
【解決手段】ワーク1の周囲に超音波を送波して得られる超音波送受波器2からの反射波信号に対し、データ処理装置13は、その反射波信号中の後方散乱波を顕在化させる前処理を行い、かつ、前処理後の反射波信号に対して閾値処理を施す。データ処理装置13は、閾値処理後の信号に基づいて焼入れ深さを求め、画像表示装置14に焼入れ深さパターンを表示させる。閾値処理に用いられる閾値を適宜選定しておき、従来、測定不能だったワークについての焼入れ深さ測定を可能にする。
【選択図】 図1
【解決手段】ワーク1の周囲に超音波を送波して得られる超音波送受波器2からの反射波信号に対し、データ処理装置13は、その反射波信号中の後方散乱波を顕在化させる前処理を行い、かつ、前処理後の反射波信号に対して閾値処理を施す。データ処理装置13は、閾値処理後の信号に基づいて焼入れ深さを求め、画像表示装置14に焼入れ深さパターンを表示させる。閾値処理に用いられる閾値を適宜選定しておき、従来、測定不能だったワークについての焼入れ深さ測定を可能にする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状のコイル内に定置されて高周波焼入れされたワーク(被計測物)の表面からの焼入れ深さを、超音波を用いて非破壊で計測する高周波焼入れ深さ計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の焼入れ深さ計測装置には、従来から、ワークに超音波を送波してその反射波を受波し、反射波の強度と伝播時間を用いて所定の演算を行うことにより、ワーク表面からの焼入れ深さを非破壊で計測する装置がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来技術では、次のような問題点があった。
すなわち、焼入れ後のワークは、表面から深さ方向に、焼入れ加熱の影響を完全に受けている焼入れ硬化層、完全にとはいい切れないが焼入れ加熱の影響を受けている熱影響層及び全く焼入れ加熱の影響を受けていない母層というように層分けされる。
【0004】
焼入れ時、ワークに向けて送波された超音波の反射は、主に、ワークの表面(ワーク計測時における超音波媒体、通常は水とワークの境界面)、ワーク中の焼入れ硬化層と熱影響層の境界層及び熱影響層と母層の境界層で発生する。そして、ワーク表面からの焼入れ深さは、前記熱影響層と母層の境界層で発生する反射波、つまり後方散乱波の計測値に基づいて求められる。
このため、熱影響層と母層の境界層が存在しないワークについては、焼入れ深さを測定できなかった。例えば、高周波焼入れ形式が定置焼入れの場合、生産性を高めるために、軸径の異なる焼入れ部位を同一コイルで焼入れすることが多い。このとき、軸径の小さい部位はオーバヒート傾向になり、熱影響層と母層の境界層が存在しない状態で焼入れ硬化層が形成され、その結果、焼入れ深さを求めることができなかった。
【0005】
また、熱影響層と母層の境界層が存在していたとしても、焼入れ条件が異なる場合、例えば焼入れ時の入熱量が同一ワークの他の部位よりも大きい場合には、適切な入熱量であった他の部位と比較して、上記境界層位置の計測ずれは大きくなる。このため、後方散乱波の計測値のずれも大きくなり、この計測値に基づく焼入れ深さの測定値に信頼性がなくなる。これを改善するためには、超音波測定値と焼入れ深さの相関関係を、テスト焼入れ等を行って焼入れ深さを実測する等、著しく手間のかかる作業により新たに求める必要がある。しかも上記相関関係は、ワークの材質に依存するので、ワークが変わる毎に行わなければならず、実現が困難であった。
【0006】
更に従来技術では、超音波反射波の生波形のピーク値を計測して焼入れ深さを測定するので、スプライン面・R面等のように表面に複雑な形状部分を有する場合に、その部分における表面波が遅れエコーとして生波形に現れ、そのピーク値により焼入れ深さが計測されてしまう。このため、計測結果が信頼性のないものとなった。
【0007】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、熱影響層と母層の境界層が存在しないワークについても、また、熱影響層と母層の境界層が存在しているが軸方向で焼入れ条件が相違して焼入れされたワークや、表面に複雑な形状部分を有するワークについても、信頼性を増した焼入れ深さの測定、焼入れ深さパターンの表示が可能な高周波焼入れ深さ計測装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ワークに超音波を送波し、その反射波を受波する超音波送受波器と、この超音波送受波器を、前記ワークの軸回り方向及び軸方向に相対移動させるワーク/送受波器回転・移動手段と、前記超音波送受波器を送受波動作させて超音波反射波を出力する超音波送受波手段と、前記ワークの軸回り方向において少なくとも1回転、所定の回転角度毎にワーク中心軸方向に超音波を送波させ、その反射波を受波させる超音波送受波動作を、そのワークの軸方向所望範囲について所定距離移動する毎に行うように、前記ワーク/送受波器回転・移動手段及び超音波送受波手段を制御する制御手段と、前記超音波送受波手段から出力される超音波反射波に対して後方散乱波を顕在化させる前処理を行い、この前処理後の反射波信号に対して閾値処理を施して得られた信号から超音波散乱頻度分布を得て超音波測定値を求め、予め設定された換算手段によって前記超音波測定値から前記ワークの焼入深さを算出し、その焼入深さに基づくワーク軸方向断面における焼入れ深さパターンを画像表示手段に表示させ、かつ、前記焼入れ深さをデジタルデータで保持するデータ処理手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、データ処理手段は、算出された焼入れ深さを予め設定された標準焼入れ深さと比較してその焼入れがなされたワークの良否を判定し、結果を画像表示手段に表示させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、制御手段は、ワーク軸回り方向の超音波送受波動作において、特定の回転角度位置について超音波送受波を省略させ、又はその位置における超音波反射波を処理対象から排除させることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明による高周波焼入れ深さ計測装置の一実施形態の全体構成を示す図である。
この図において、1はワーク(被計測物)、2は超音波送受波器(以下、送受波器と略記する。)で、いずれも水3が満たされた処理槽4内に浸漬されている。
上記ワーク1は、ワーク回転用モータ5により軸回り方向イに回転自在に保持されている。
また送受波器2は、ワーク1近傍に位置決めされ、ワーク中心軸に送受波面を向けた状態で保持具6に保持されている。この場合、送受波器2の超音波送受波中心軸は、ワーク中心軸に直交する方向から僅かな角度θだけ傾斜させた状態で固定されている。ワーク1への超音波を縦波から横波に変え、計測値の分解能を上げるためである。
この送受波器2は、超音波送受波回路7により送受波動作される。
上記保持具6は、ワーク軸方向移動装置8によって図中左右方向に移動自在であって、送受波器2をワーク軸方向(図中左右方向)に移動させる。
この場合、上記モータ5は回転角度センサ9を、ワーク軸方向移動装置8は直線移動位置センサ10を備えており、送受波器2の、ワーク軸回り角度位置及び軸方向位置を後述制御装置にフィードバック可能、つまりワーク1に対する超音波送受波位置のフィードバック制御が可能に構成されている。
【0012】
制御装置11は、計測条件付与装置12から与えられる計測条件に従い、内蔵するプログラムを実行して以下の制御を行う。すなわち制御装置11は、ワーク軸回り方向について所定の回転角度α°毎に、一定時間間隔ΔtでX回超音波を送波させてその反射波(生信号)を各回毎に受波させる超音波送受波動作(ワーク横断面方向送受波動作)を、ワーク軸回り方向に1回転行わせる。そして、このようなワーク横断面方向の超音波送受波動作を、ワーク1の軸方向所望範囲a1からa2について所定距離移動する毎に行うように、上記ワーク回転用モータ5、ワーク軸方向移動装置8及び超音波送受波回路7を制御する。これにより、ワーク軸方向の所望範囲a1からa2部分について、ワーク1を囲む多数箇所における超音波送受波(走査)が行われる。
なおこの例では、ワーク1の軸回り方向各位置における超音波の送受波は一定時間間隔で4回行われ、反射波レベルのばらつきを防いでいる。
計測条件付与装置12は、詳細を後述する閾値Z、A〜D等の計測条件の設定を行う装置で、設定された計測条件は制御装置11に付与される。閾値の設定は、個別に手動で行ってもよく、また、予めワーク1の材質や焼入条件毎に登録された計測条件の指定によって一括して設定するようにしてもよい。
【0013】
データ処理装置13は、上記超音波送受波回路7から出力された超音波反射波(生信号)に対して後方散乱波を顕在化させる前処理を行う。そして、前処理後の反射波信号に対し、予め設定された閾値を用いた閾値処理を施して得られた信号から超音波散乱頻度分布を得、超音波測定値を求める。その後、予め設定された換算手段により上記超音波測定値からワーク1の焼入深さを算出し、その焼入れ深さに基づくワーク軸方向断面(縦断面)における焼入れ深さパターンを画像表示装置14に表示させ、かつ、上記焼入れ深さをデジタルデータで保持する装置である。
焼入れ深さパターンは、ワーク軸方向断面において、ワーク表面位置に対する焼入れ深さ(焼入れされている最深部位置)が観察可能なパターン画像であればよい。
換算手段としては、表(テーブル)や曲線、ここでは較正曲線が用いられる。
【0014】
上記閾値は、この例ではZ、A、B、C及びDの5つが用いられている。
この場合、Zは、上記超音波反射波中の一定値以上の信号を取り込むための閾値であり、この閾値の設定により、超音波反射波中における計測に無用な信号が除去される。
A及びBは、スプライン面・R面等のように複雑な形状部分におけると超音波反射波中に表面波(遅れエコー)が現れ、誤ったピーク値を取得して誤計測する原因となるが、このような遅れエコーを除去するための閾値である。
以下、この閾値A,Bについて詳述する。
すなわち、取り込まれたワーク1からの超音波反射波の値(電圧レベル)をVxとし、閾値A,Bの値(電圧レベル)を適宜値Va,Vb(Va<Vb)とすると、Vx、Va、Vbは、経験的に以下の関係を有することが判明している。
Vx<Vaの関係にあるとき、Vxはノイズ、
Va<Vx<Vbの関係にあるとき、Vxは正常な反射波、
Vb<Vxの関係にあるとき、Vxは複雑な形状の測定面による遅れエコー
である。
つまり、予め実測等によりワーク1の材質や焼入条件等に応じて適宜値に設定された閾値A,B(Va,Vb)を用いることにより、遅れエコーを含まない正常な反射波Vxのみを取り込むことができ、適正なピーク値を取得できる。
ワーク1に熱影響層と母層の境界層が存在しない場合も同様で、閾値C,Dの値(電圧レベル)を、予め実測等によりワーク1の材質や焼入条件等に応じて適宜値Vc,Vd(Vc<Vd)に設定しておくことにより、Vc<Vx<Vdの関係にある正常な反射波Vxのみを取り込むことができ、適正なピーク値を取得できる。
【0015】
なお本実施の形態では、データ処理装置13は超音波送受波回路7から出力された超音波反射波に対し、各々2乗演算を行った後、その演算結果につき自己相関・同期加算(ワーク軸回り方向各位置において4回受波された反射波につき各々経過時間を同期させて加算する処理)を行い、得られた信号(前処理後の反射波信号)につき、上記閾値A、B、C及びDを用いた閾値処理を行っている。
画像表示装置14は、例えばカラーCRT等からなる。
【0016】
次に、上述実施の形態による焼入れ深さ計測及び焼入れパターン表示の手順につき、図2に示すフローチャートを併用して説明する。
この例では、図3に拡大して示すように、ワーク1は3段のシャフトであり、この図3中の位置a1からa2まで(矢印ロ参照)のワーク軸方向範囲についての焼入れ深さ及び焼入れパターンを計測、表示する場合について述べる
【0017】
まず、図1に示すように、水3が満たされた処理槽4内にワーク1及び送受波器をセットする。
次に、多種類のワーク1について計測できるように多種類の計測条件(閾値Z、A〜D等)が登録された計測条件付与装置12を操作し、図示ワーク1についての閾値Z、A〜D等を制御装置11に付与する。
この状態で、計測動作を開始させると、制御装置11は、直線移動位置センサ10から超音波送受波器2のワーク軸方向上の位置データを取得する(ステップ201)。得られた位置が所定の計測位置、この場合は計測開始位置a1(図1,図3参照)であればステップ202〜209を実行する。所定の計測位置でなければその位置に移動させた後、ステップ202〜209を実行する。
ステップ202〜209では、位置a1において、ワーク1を軸回り方向(図1中、矢印イ方向)について所定角度α°回転させた位置(ポイント)i毎に、一定時間Δt間隔で4回(全時間T)、超音波を送波させてその反射波を受波させる送受波動作を、ワーク1の軸回り方向1回転分、行わせる。
図4は、上記超音波送受波のワーク軸回り方向における動作位置の説明図で、送受波器2は、ワーク1周囲においてワーク1が矢印イ方向にα°回転したi1〜inの各位置毎に、ワーク中心軸O方向に対する超音波送受波を行う。
図5は、ステップ202において受波された反射波(生信号)の波形図である。
【0018】
ここで、各位置i1〜inにおいて受波された反射波の電圧レベルが閾値Z(Vz)に達していない場合には、その反射波は処理対象から排除される(ステップ203)。
また、ステップ203を経て取り込まれた反射波は、データ処理装置13によって各々2乗演算され、かつ位置iを同じくする4つの反射波(2乗演算後の反射波)につき各々自己相関・同期加算される(ステップ205)。このような前処理によれば、反射波中の後方散乱波が顕在化される。
図6はステップ205における自己相関・同期加算後の信号波形図である。
【0019】
ステップ206では、ステップ205により得られた各位置i(i1〜in)における反射波に対して閾値A,B及び/又はC,D、この例では、閾値C,Dによる閾値処理、すなわち、熱影響層と母層の境界層が存在しないワーク1の焼入れ深さ測定を行うための閾値処理を行う。
具体的には、ステップ205により得られた各位置i1〜inにおける4つの反射波の自己相関・同期加算後の反射波信号を各々Vxとし、閾値C,Dの値(電圧レベル)をVc,Vd(Vc<Vd)としたとき、Vc<Vx<Vdの関係にあるVxを正常な反射波として取り込む。
なお、閾値A,Bによる閾値処理、すなわち、複雑な形状部分におけるワーク1の焼入れ深さ測定を行うための閾値処理の場合には、閾値A,Bの値(電圧レベル)をVa,Vb(Va<Vb)としたとき、Va<Vx<Vbの関係にあるVxを正常な反射波として取り込む。
そしてステップ206では、ステップ205により取り込まれた正常な反射波Vxの中からピーク値をもつ反射波Vxの電圧レベルと、そのピーク値をもつ正常な反射波Vxのワーク1表面からの伝播時間(ワーク1表面からの反射波が受波されてから上記ピーク値をもつ正常な反射波Vxが受波されるまでの時間差)T1を各々取得する。伝播時間T1は正常な反射波Vxの反射位置(発生深さ)の算出に用いられる。
なお、ステップ206において、各位置i(1〜in)における反射波についての処理は、各々ワーク1表面からの反射波が受波されてから一定時間(ゲート時間GT)以内の反射波について行われる。このゲート時間GTは、ワーク1の大きさ、材質あるいは焼入条件等に応じて、予め計測条件付与装置12に設定される。
【0020】
ステップ202〜209の繰返し処理が終了、すなわちワーク1の位置a1についての軸回り方向0°〜360°の各位置i1〜inにおける、正常な反射波Vx中のピーク値をもつ反射波Vxの電圧レベルと、その伝播時間T1を各々取得すると、それらの値からピーク値をもつ反射波Vxの発生深さを算出する。そして、その算出結果(深さ)を、位置a1におけるワーク横断面形状中にプロットし、超音波散乱頻度分布図として画像表示装置14に表示する(ステップ210)。図7中の71は、画像表示装置14に表示された上記超音波散乱頻度分布図の一例を示す。
次に、上記超音波散乱頻度分布図71(データ)から超音波測定値を求め(ステップ211)、続いて、予め設定しておいた較正曲線から焼入深さを求める(ステップ212)。上記超音波測定値は、超音波散乱頻度分布図(ワーク横断面)上の多数のプロット点の中の、ワーク軸方向断面位置上のプロット点の値(深さ)である。
以上の処理(ステップ201〜212)は、制御装置11が直線移動位置センサ10から位置a2の位置データを取得し、その位置a2における同ステップ202〜212の処理を終えるまで繰り返される(ステップ213)。
【0021】
ステップ201〜212の繰返し処理が終了、すなわちワーク1の位置a1からa2までの各位置における、軸回り方向角度0°〜360°までの各位置i1〜inについての焼入深さの算出を終了すると、送受波器2の軸方向移動が終了した旨の判定(ステップ213)を経てステップ214が実行される。すなわち、ワーク1の位置a1からa2までの各横断面における焼入れ深さの全データをもとに、焼入れ深さパターンを画像表示装置14に表示させる。
図7中の72は、画像表示装置14に表示される焼入れ深さパターンの一例を示す。この例では、ワーク軸方向断面の全域についての焼入れ深さパターン72を表示したが、一般に焼入れ深さパターンは、ワーク1の中心軸Oを挟んで上下ほぼ対称であることが多いので、ワーク1の中心軸Oを挟んで上又は下半分の焼入れ深さパターンのみを表示するようにしてもよい。
ステップ215では、焼入れ深さパターン71(ワーク1の各横断面における焼入れ深さの全データ)を、予め設定されたワーク種毎の標準焼入れ深さパターン(データ)と比較して、ワーク1の焼入れ結果の良否が判定される。判定結果は、画像表示装置14に表示される。
なお、データ処理装置13は、適時に焼入れ深さ(パターン)のデジタルデータを保持する。
【0022】
上述実施の形態によれば、閾値Zを用いた閾値処理を経た反射波に対して2乗演算や自己相関・同期加算処理(前処理)を施し、この前処理後の反射波信号に対して閾値A,BあるいはC,Dを用いた閾値処理を施し、これにより得られた信号に基づいて焼入れ深さを求め、焼入れ深さパターンを得るように構成した。したがって、熱影響層と母層の境界層が存在しないワークについても、また、熱影響層と母層の境界層が存在しているが、軸方向で焼入れ条件が相違して焼入れされたワークや、表面に複雑な形状部分を有するワークについても、信頼性を増した焼入れ深さの測定、焼入れ深さパターンの表示が可能となる。
また、上記焼入れ深さをデジタルデータで保持するようにしたので、計測結果をチャート、テーブル等、所望の形態で画像表示可能である。また、ワークの良否判断も容易に行うことができる。更に、多数のワークの焼入れ深さパターン(データ)を蓄積して、ワーク各部位の焼入れ深さの傾向管理を行う等、各種の解析、管理も容易に行うことができ、焼入れ品質の向上等に役立つ。
【0023】
なお、ワーク軸回り方向の超音波送受波動作において、特定の回転角度位置について超音波送受波を省略させるか、その位置における超音波反射波を処理対象から排除させるように制御装置11を構成してもよい。これによれば、上記回転角度位置を適宜選択、指示することにより、スプライン面・R面等のように表面に複雑な形状部分を有する場合に、その部分における表面波が遅れエコーとして生波形に現れることを防止でき、焼入れ深さ測定の信頼性を増す。これは、閾値A及びBを用いて閾値処理を行った場合と同様の効果であるが、この例では同効果を異なる手法で実現できる。上記回転角度位置の選択、指示は、計測条件付与装置12に対して行われ、計測条件付与装置12が、その回転角度位置を制御装置11に付与した後、計測動作が開始される。
データ処理装置に高速デジタルオシロスコープを接続し、このオシロスコープによる焼入れ深さパターンの表示も可能な構成にしてもよい。
上掲図において、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、ワークの周囲に超音波を送波して得られる反射波に対して後方散乱波を顕在化させる前処理を行い、この前処理後の反射波信号に対して閾値処理を施し、これにより得られた信号に基づいて焼入れ深さを求め、焼入れ深さパターンを表示するようにした。したがって、熱影響層と母層の境界層が存在しないワークについても、また、軸方向で焼入れ条件が相違して焼入れされたワークや、表面に複雑な形状部分を有するワークについても、閾値を適宜選定することによって信頼性のある焼入れ深さ測定、焼入れ深さパターン表示が可能となる。また、焼入れ深さをデジタルデータで保持するので、ワークの良否判断等、種々の解析処理を容易に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の一実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】同上装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1中のワークの軸方向における焼入れ深さ計測範囲の説明図である。
【図4】同上ワークの軸回り方向における超音波送受波位置の説明図である。
【図5】受波された反射波(生信号)波形の一例を示す図である。
【図6】前処理後の信号波形図である。
【図7】超音波散乱頻度分布図及び焼入れ深さパターンの表示例を示す図である。
【符号の説明】
1 ワーク
2 超音波送受波器
5 ワーク回転用モータ(ワーク/送受波器回転・移動手段)
7 超音波送受波回路(超音波送受波手段)
8 ワーク軸方向移動装置(ワーク/送受波器回転・移動手段)
11 制御装置(制御手段)
13 データ処理装置(データ処理手段)
14 画像表示装置(画像表示手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、環状のコイル内に定置されて高周波焼入れされたワーク(被計測物)の表面からの焼入れ深さを、超音波を用いて非破壊で計測する高周波焼入れ深さ計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の焼入れ深さ計測装置には、従来から、ワークに超音波を送波してその反射波を受波し、反射波の強度と伝播時間を用いて所定の演算を行うことにより、ワーク表面からの焼入れ深さを非破壊で計測する装置がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来技術では、次のような問題点があった。
すなわち、焼入れ後のワークは、表面から深さ方向に、焼入れ加熱の影響を完全に受けている焼入れ硬化層、完全にとはいい切れないが焼入れ加熱の影響を受けている熱影響層及び全く焼入れ加熱の影響を受けていない母層というように層分けされる。
【0004】
焼入れ時、ワークに向けて送波された超音波の反射は、主に、ワークの表面(ワーク計測時における超音波媒体、通常は水とワークの境界面)、ワーク中の焼入れ硬化層と熱影響層の境界層及び熱影響層と母層の境界層で発生する。そして、ワーク表面からの焼入れ深さは、前記熱影響層と母層の境界層で発生する反射波、つまり後方散乱波の計測値に基づいて求められる。
このため、熱影響層と母層の境界層が存在しないワークについては、焼入れ深さを測定できなかった。例えば、高周波焼入れ形式が定置焼入れの場合、生産性を高めるために、軸径の異なる焼入れ部位を同一コイルで焼入れすることが多い。このとき、軸径の小さい部位はオーバヒート傾向になり、熱影響層と母層の境界層が存在しない状態で焼入れ硬化層が形成され、その結果、焼入れ深さを求めることができなかった。
【0005】
また、熱影響層と母層の境界層が存在していたとしても、焼入れ条件が異なる場合、例えば焼入れ時の入熱量が同一ワークの他の部位よりも大きい場合には、適切な入熱量であった他の部位と比較して、上記境界層位置の計測ずれは大きくなる。このため、後方散乱波の計測値のずれも大きくなり、この計測値に基づく焼入れ深さの測定値に信頼性がなくなる。これを改善するためには、超音波測定値と焼入れ深さの相関関係を、テスト焼入れ等を行って焼入れ深さを実測する等、著しく手間のかかる作業により新たに求める必要がある。しかも上記相関関係は、ワークの材質に依存するので、ワークが変わる毎に行わなければならず、実現が困難であった。
【0006】
更に従来技術では、超音波反射波の生波形のピーク値を計測して焼入れ深さを測定するので、スプライン面・R面等のように表面に複雑な形状部分を有する場合に、その部分における表面波が遅れエコーとして生波形に現れ、そのピーク値により焼入れ深さが計測されてしまう。このため、計測結果が信頼性のないものとなった。
【0007】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、熱影響層と母層の境界層が存在しないワークについても、また、熱影響層と母層の境界層が存在しているが軸方向で焼入れ条件が相違して焼入れされたワークや、表面に複雑な形状部分を有するワークについても、信頼性を増した焼入れ深さの測定、焼入れ深さパターンの表示が可能な高周波焼入れ深さ計測装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ワークに超音波を送波し、その反射波を受波する超音波送受波器と、この超音波送受波器を、前記ワークの軸回り方向及び軸方向に相対移動させるワーク/送受波器回転・移動手段と、前記超音波送受波器を送受波動作させて超音波反射波を出力する超音波送受波手段と、前記ワークの軸回り方向において少なくとも1回転、所定の回転角度毎にワーク中心軸方向に超音波を送波させ、その反射波を受波させる超音波送受波動作を、そのワークの軸方向所望範囲について所定距離移動する毎に行うように、前記ワーク/送受波器回転・移動手段及び超音波送受波手段を制御する制御手段と、前記超音波送受波手段から出力される超音波反射波に対して後方散乱波を顕在化させる前処理を行い、この前処理後の反射波信号に対して閾値処理を施して得られた信号から超音波散乱頻度分布を得て超音波測定値を求め、予め設定された換算手段によって前記超音波測定値から前記ワークの焼入深さを算出し、その焼入深さに基づくワーク軸方向断面における焼入れ深さパターンを画像表示手段に表示させ、かつ、前記焼入れ深さをデジタルデータで保持するデータ処理手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、データ処理手段は、算出された焼入れ深さを予め設定された標準焼入れ深さと比較してその焼入れがなされたワークの良否を判定し、結果を画像表示手段に表示させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、制御手段は、ワーク軸回り方向の超音波送受波動作において、特定の回転角度位置について超音波送受波を省略させ、又はその位置における超音波反射波を処理対象から排除させることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明による高周波焼入れ深さ計測装置の一実施形態の全体構成を示す図である。
この図において、1はワーク(被計測物)、2は超音波送受波器(以下、送受波器と略記する。)で、いずれも水3が満たされた処理槽4内に浸漬されている。
上記ワーク1は、ワーク回転用モータ5により軸回り方向イに回転自在に保持されている。
また送受波器2は、ワーク1近傍に位置決めされ、ワーク中心軸に送受波面を向けた状態で保持具6に保持されている。この場合、送受波器2の超音波送受波中心軸は、ワーク中心軸に直交する方向から僅かな角度θだけ傾斜させた状態で固定されている。ワーク1への超音波を縦波から横波に変え、計測値の分解能を上げるためである。
この送受波器2は、超音波送受波回路7により送受波動作される。
上記保持具6は、ワーク軸方向移動装置8によって図中左右方向に移動自在であって、送受波器2をワーク軸方向(図中左右方向)に移動させる。
この場合、上記モータ5は回転角度センサ9を、ワーク軸方向移動装置8は直線移動位置センサ10を備えており、送受波器2の、ワーク軸回り角度位置及び軸方向位置を後述制御装置にフィードバック可能、つまりワーク1に対する超音波送受波位置のフィードバック制御が可能に構成されている。
【0012】
制御装置11は、計測条件付与装置12から与えられる計測条件に従い、内蔵するプログラムを実行して以下の制御を行う。すなわち制御装置11は、ワーク軸回り方向について所定の回転角度α°毎に、一定時間間隔ΔtでX回超音波を送波させてその反射波(生信号)を各回毎に受波させる超音波送受波動作(ワーク横断面方向送受波動作)を、ワーク軸回り方向に1回転行わせる。そして、このようなワーク横断面方向の超音波送受波動作を、ワーク1の軸方向所望範囲a1からa2について所定距離移動する毎に行うように、上記ワーク回転用モータ5、ワーク軸方向移動装置8及び超音波送受波回路7を制御する。これにより、ワーク軸方向の所望範囲a1からa2部分について、ワーク1を囲む多数箇所における超音波送受波(走査)が行われる。
なおこの例では、ワーク1の軸回り方向各位置における超音波の送受波は一定時間間隔で4回行われ、反射波レベルのばらつきを防いでいる。
計測条件付与装置12は、詳細を後述する閾値Z、A〜D等の計測条件の設定を行う装置で、設定された計測条件は制御装置11に付与される。閾値の設定は、個別に手動で行ってもよく、また、予めワーク1の材質や焼入条件毎に登録された計測条件の指定によって一括して設定するようにしてもよい。
【0013】
データ処理装置13は、上記超音波送受波回路7から出力された超音波反射波(生信号)に対して後方散乱波を顕在化させる前処理を行う。そして、前処理後の反射波信号に対し、予め設定された閾値を用いた閾値処理を施して得られた信号から超音波散乱頻度分布を得、超音波測定値を求める。その後、予め設定された換算手段により上記超音波測定値からワーク1の焼入深さを算出し、その焼入れ深さに基づくワーク軸方向断面(縦断面)における焼入れ深さパターンを画像表示装置14に表示させ、かつ、上記焼入れ深さをデジタルデータで保持する装置である。
焼入れ深さパターンは、ワーク軸方向断面において、ワーク表面位置に対する焼入れ深さ(焼入れされている最深部位置)が観察可能なパターン画像であればよい。
換算手段としては、表(テーブル)や曲線、ここでは較正曲線が用いられる。
【0014】
上記閾値は、この例ではZ、A、B、C及びDの5つが用いられている。
この場合、Zは、上記超音波反射波中の一定値以上の信号を取り込むための閾値であり、この閾値の設定により、超音波反射波中における計測に無用な信号が除去される。
A及びBは、スプライン面・R面等のように複雑な形状部分におけると超音波反射波中に表面波(遅れエコー)が現れ、誤ったピーク値を取得して誤計測する原因となるが、このような遅れエコーを除去するための閾値である。
以下、この閾値A,Bについて詳述する。
すなわち、取り込まれたワーク1からの超音波反射波の値(電圧レベル)をVxとし、閾値A,Bの値(電圧レベル)を適宜値Va,Vb(Va<Vb)とすると、Vx、Va、Vbは、経験的に以下の関係を有することが判明している。
Vx<Vaの関係にあるとき、Vxはノイズ、
Va<Vx<Vbの関係にあるとき、Vxは正常な反射波、
Vb<Vxの関係にあるとき、Vxは複雑な形状の測定面による遅れエコー
である。
つまり、予め実測等によりワーク1の材質や焼入条件等に応じて適宜値に設定された閾値A,B(Va,Vb)を用いることにより、遅れエコーを含まない正常な反射波Vxのみを取り込むことができ、適正なピーク値を取得できる。
ワーク1に熱影響層と母層の境界層が存在しない場合も同様で、閾値C,Dの値(電圧レベル)を、予め実測等によりワーク1の材質や焼入条件等に応じて適宜値Vc,Vd(Vc<Vd)に設定しておくことにより、Vc<Vx<Vdの関係にある正常な反射波Vxのみを取り込むことができ、適正なピーク値を取得できる。
【0015】
なお本実施の形態では、データ処理装置13は超音波送受波回路7から出力された超音波反射波に対し、各々2乗演算を行った後、その演算結果につき自己相関・同期加算(ワーク軸回り方向各位置において4回受波された反射波につき各々経過時間を同期させて加算する処理)を行い、得られた信号(前処理後の反射波信号)につき、上記閾値A、B、C及びDを用いた閾値処理を行っている。
画像表示装置14は、例えばカラーCRT等からなる。
【0016】
次に、上述実施の形態による焼入れ深さ計測及び焼入れパターン表示の手順につき、図2に示すフローチャートを併用して説明する。
この例では、図3に拡大して示すように、ワーク1は3段のシャフトであり、この図3中の位置a1からa2まで(矢印ロ参照)のワーク軸方向範囲についての焼入れ深さ及び焼入れパターンを計測、表示する場合について述べる
【0017】
まず、図1に示すように、水3が満たされた処理槽4内にワーク1及び送受波器をセットする。
次に、多種類のワーク1について計測できるように多種類の計測条件(閾値Z、A〜D等)が登録された計測条件付与装置12を操作し、図示ワーク1についての閾値Z、A〜D等を制御装置11に付与する。
この状態で、計測動作を開始させると、制御装置11は、直線移動位置センサ10から超音波送受波器2のワーク軸方向上の位置データを取得する(ステップ201)。得られた位置が所定の計測位置、この場合は計測開始位置a1(図1,図3参照)であればステップ202〜209を実行する。所定の計測位置でなければその位置に移動させた後、ステップ202〜209を実行する。
ステップ202〜209では、位置a1において、ワーク1を軸回り方向(図1中、矢印イ方向)について所定角度α°回転させた位置(ポイント)i毎に、一定時間Δt間隔で4回(全時間T)、超音波を送波させてその反射波を受波させる送受波動作を、ワーク1の軸回り方向1回転分、行わせる。
図4は、上記超音波送受波のワーク軸回り方向における動作位置の説明図で、送受波器2は、ワーク1周囲においてワーク1が矢印イ方向にα°回転したi1〜inの各位置毎に、ワーク中心軸O方向に対する超音波送受波を行う。
図5は、ステップ202において受波された反射波(生信号)の波形図である。
【0018】
ここで、各位置i1〜inにおいて受波された反射波の電圧レベルが閾値Z(Vz)に達していない場合には、その反射波は処理対象から排除される(ステップ203)。
また、ステップ203を経て取り込まれた反射波は、データ処理装置13によって各々2乗演算され、かつ位置iを同じくする4つの反射波(2乗演算後の反射波)につき各々自己相関・同期加算される(ステップ205)。このような前処理によれば、反射波中の後方散乱波が顕在化される。
図6はステップ205における自己相関・同期加算後の信号波形図である。
【0019】
ステップ206では、ステップ205により得られた各位置i(i1〜in)における反射波に対して閾値A,B及び/又はC,D、この例では、閾値C,Dによる閾値処理、すなわち、熱影響層と母層の境界層が存在しないワーク1の焼入れ深さ測定を行うための閾値処理を行う。
具体的には、ステップ205により得られた各位置i1〜inにおける4つの反射波の自己相関・同期加算後の反射波信号を各々Vxとし、閾値C,Dの値(電圧レベル)をVc,Vd(Vc<Vd)としたとき、Vc<Vx<Vdの関係にあるVxを正常な反射波として取り込む。
なお、閾値A,Bによる閾値処理、すなわち、複雑な形状部分におけるワーク1の焼入れ深さ測定を行うための閾値処理の場合には、閾値A,Bの値(電圧レベル)をVa,Vb(Va<Vb)としたとき、Va<Vx<Vbの関係にあるVxを正常な反射波として取り込む。
そしてステップ206では、ステップ205により取り込まれた正常な反射波Vxの中からピーク値をもつ反射波Vxの電圧レベルと、そのピーク値をもつ正常な反射波Vxのワーク1表面からの伝播時間(ワーク1表面からの反射波が受波されてから上記ピーク値をもつ正常な反射波Vxが受波されるまでの時間差)T1を各々取得する。伝播時間T1は正常な反射波Vxの反射位置(発生深さ)の算出に用いられる。
なお、ステップ206において、各位置i(1〜in)における反射波についての処理は、各々ワーク1表面からの反射波が受波されてから一定時間(ゲート時間GT)以内の反射波について行われる。このゲート時間GTは、ワーク1の大きさ、材質あるいは焼入条件等に応じて、予め計測条件付与装置12に設定される。
【0020】
ステップ202〜209の繰返し処理が終了、すなわちワーク1の位置a1についての軸回り方向0°〜360°の各位置i1〜inにおける、正常な反射波Vx中のピーク値をもつ反射波Vxの電圧レベルと、その伝播時間T1を各々取得すると、それらの値からピーク値をもつ反射波Vxの発生深さを算出する。そして、その算出結果(深さ)を、位置a1におけるワーク横断面形状中にプロットし、超音波散乱頻度分布図として画像表示装置14に表示する(ステップ210)。図7中の71は、画像表示装置14に表示された上記超音波散乱頻度分布図の一例を示す。
次に、上記超音波散乱頻度分布図71(データ)から超音波測定値を求め(ステップ211)、続いて、予め設定しておいた較正曲線から焼入深さを求める(ステップ212)。上記超音波測定値は、超音波散乱頻度分布図(ワーク横断面)上の多数のプロット点の中の、ワーク軸方向断面位置上のプロット点の値(深さ)である。
以上の処理(ステップ201〜212)は、制御装置11が直線移動位置センサ10から位置a2の位置データを取得し、その位置a2における同ステップ202〜212の処理を終えるまで繰り返される(ステップ213)。
【0021】
ステップ201〜212の繰返し処理が終了、すなわちワーク1の位置a1からa2までの各位置における、軸回り方向角度0°〜360°までの各位置i1〜inについての焼入深さの算出を終了すると、送受波器2の軸方向移動が終了した旨の判定(ステップ213)を経てステップ214が実行される。すなわち、ワーク1の位置a1からa2までの各横断面における焼入れ深さの全データをもとに、焼入れ深さパターンを画像表示装置14に表示させる。
図7中の72は、画像表示装置14に表示される焼入れ深さパターンの一例を示す。この例では、ワーク軸方向断面の全域についての焼入れ深さパターン72を表示したが、一般に焼入れ深さパターンは、ワーク1の中心軸Oを挟んで上下ほぼ対称であることが多いので、ワーク1の中心軸Oを挟んで上又は下半分の焼入れ深さパターンのみを表示するようにしてもよい。
ステップ215では、焼入れ深さパターン71(ワーク1の各横断面における焼入れ深さの全データ)を、予め設定されたワーク種毎の標準焼入れ深さパターン(データ)と比較して、ワーク1の焼入れ結果の良否が判定される。判定結果は、画像表示装置14に表示される。
なお、データ処理装置13は、適時に焼入れ深さ(パターン)のデジタルデータを保持する。
【0022】
上述実施の形態によれば、閾値Zを用いた閾値処理を経た反射波に対して2乗演算や自己相関・同期加算処理(前処理)を施し、この前処理後の反射波信号に対して閾値A,BあるいはC,Dを用いた閾値処理を施し、これにより得られた信号に基づいて焼入れ深さを求め、焼入れ深さパターンを得るように構成した。したがって、熱影響層と母層の境界層が存在しないワークについても、また、熱影響層と母層の境界層が存在しているが、軸方向で焼入れ条件が相違して焼入れされたワークや、表面に複雑な形状部分を有するワークについても、信頼性を増した焼入れ深さの測定、焼入れ深さパターンの表示が可能となる。
また、上記焼入れ深さをデジタルデータで保持するようにしたので、計測結果をチャート、テーブル等、所望の形態で画像表示可能である。また、ワークの良否判断も容易に行うことができる。更に、多数のワークの焼入れ深さパターン(データ)を蓄積して、ワーク各部位の焼入れ深さの傾向管理を行う等、各種の解析、管理も容易に行うことができ、焼入れ品質の向上等に役立つ。
【0023】
なお、ワーク軸回り方向の超音波送受波動作において、特定の回転角度位置について超音波送受波を省略させるか、その位置における超音波反射波を処理対象から排除させるように制御装置11を構成してもよい。これによれば、上記回転角度位置を適宜選択、指示することにより、スプライン面・R面等のように表面に複雑な形状部分を有する場合に、その部分における表面波が遅れエコーとして生波形に現れることを防止でき、焼入れ深さ測定の信頼性を増す。これは、閾値A及びBを用いて閾値処理を行った場合と同様の効果であるが、この例では同効果を異なる手法で実現できる。上記回転角度位置の選択、指示は、計測条件付与装置12に対して行われ、計測条件付与装置12が、その回転角度位置を制御装置11に付与した後、計測動作が開始される。
データ処理装置に高速デジタルオシロスコープを接続し、このオシロスコープによる焼入れ深さパターンの表示も可能な構成にしてもよい。
上掲図において、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、ワークの周囲に超音波を送波して得られる反射波に対して後方散乱波を顕在化させる前処理を行い、この前処理後の反射波信号に対して閾値処理を施し、これにより得られた信号に基づいて焼入れ深さを求め、焼入れ深さパターンを表示するようにした。したがって、熱影響層と母層の境界層が存在しないワークについても、また、軸方向で焼入れ条件が相違して焼入れされたワークや、表面に複雑な形状部分を有するワークについても、閾値を適宜選定することによって信頼性のある焼入れ深さ測定、焼入れ深さパターン表示が可能となる。また、焼入れ深さをデジタルデータで保持するので、ワークの良否判断等、種々の解析処理を容易に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の一実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】同上装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1中のワークの軸方向における焼入れ深さ計測範囲の説明図である。
【図4】同上ワークの軸回り方向における超音波送受波位置の説明図である。
【図5】受波された反射波(生信号)波形の一例を示す図である。
【図6】前処理後の信号波形図である。
【図7】超音波散乱頻度分布図及び焼入れ深さパターンの表示例を示す図である。
【符号の説明】
1 ワーク
2 超音波送受波器
5 ワーク回転用モータ(ワーク/送受波器回転・移動手段)
7 超音波送受波回路(超音波送受波手段)
8 ワーク軸方向移動装置(ワーク/送受波器回転・移動手段)
11 制御装置(制御手段)
13 データ処理装置(データ処理手段)
14 画像表示装置(画像表示手段)
Claims (3)
- ワークに超音波を送波し、その反射波を受波する超音波送受波器と、
この超音波送受波器を、前記ワークの軸回り方向及び軸方向に相対移動させるワーク/送受波器回転・移動手段と、
前記超音波送受波器を送受波動作させて超音波反射波を出力する超音波送受波手段と、
前記ワークの軸回り方向において少なくとも1回転、所定の回転角度毎にワーク中心軸方向に超音波を送波させ、その反射波を受波させる超音波送受波動作を、そのワークの軸方向所望範囲について所定距離移動する毎に行うように、前記ワーク/送受波器回転・移動手段及び超音波送受波手段を制御する制御手段と、
前記超音波送受波手段から出力される超音波反射波に対して後方散乱波を顕在化させる前処理を行い、この前処理後の反射波信号に対して閾値処理を施して得られた信号から超音波散乱頻度分布を得て超音波測定値を求め、予め設定された換算手段によって前記超音波測定値から前記ワークの焼入深さを算出し、その焼入深さに基づくワーク軸方向断面における焼入れ深さパターンを画像表示手段に表示させ、かつ、前記焼入れ深さをデジタルデータで保持するデータ処理手段とを具備することを特徴とする高周波焼入れパターン計測装置。 - データ処理手段は、算出された焼入れ深さを予め設定された標準焼入れ深さと比較してその焼入れがなされたワークの良否を判定し、結果を画像表示手段に表示させることを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入れパターン計測装置。
- 制御手段は、ワーク軸回り方向の超音波送受波動作において、特定の回転角度位置について超音波送受波を省略させ、又はその位置における超音波反射波を処理対象から排除させることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波焼入れパターン計測装置。
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JP2014059325A (ja) * | 2009-01-30 | 2014-04-03 | Nsk Ltd | 熱処理異常検出方法 |
-
2002
- 2002-11-25 JP JP2002340728A patent/JP2004177159A/ja active Pending
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