JP6992678B2 - 超音波探傷方法、超音波探傷装置、鋼材の製造設備列、鋼材の製造方法、及び鋼材の品質保証方法 - Google Patents

超音波探傷方法、超音波探傷装置、鋼材の製造設備列、鋼材の製造方法、及び鋼材の品質保証方法 Download PDF

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Description

本発明は、超音波探傷方法、超音波探傷装置、鋼材の製造設備列、鋼材の製造方法、及び鋼材の品質保証方法に関するものである。
丸棒体の内部欠陥は、その丸棒体を素材とする機械部品を製造する際に割れの起点となることがあり、製造後には機械部品の強度や寿命を低下させる。このため、丸棒体の内部を超音波探傷し、丸棒体の内部欠陥を評価することが従来から行われている。従来の丸棒体の超音波探傷装置では、垂直用及び斜角用の単一のアレイ探触子を丸棒体の周方向及び軸方向に沿って相対的に移動させるか、あるいは円周方向に複数のアレイプローブを配置し、丸棒対を軸方向に移動させることによって、丸棒体の全面探傷を行っている。
特許文献1には、超音波探触子を走査しながら欠陥信号を受信し、受信した複数の欠陥信号に対してその受信位置に応じた遅延時間を設定して開口合成処理を行うことによって、小口径の超音波探触子を用いて欠陥の検出能及び分解能を向上させる手法が記載されている。
一方で、アレイ探触子を用いる場合には、各振動素子を励振するタイミングを制御し、超音波ビームが集束する深さや方向を変えることにより、欠陥検出能を向上させることができる。しかし、複数の焦点位置を設定し探傷を行うためには、振動素子を複数回励振する必要があり全断面を探傷するのに時間がかかってしまう。このような背景から、特許文献2では、振動素子を同時励振し、計算機上で各振動素子での受信信号に対して遅延時間を加えて合成することにより、円周方向に超音波ビームを集束させ、高速な探傷を可能とする手法が記載されている。
特開2005-233874号公報 特開2013-156277号公報
しかしながら、特許文献1の手法では、移動方向に対しては開口合成の効果によって一様に高検出能を得られるものの、探触子を配置する方向については、非集束プローブを用いた場合には検出能が低くなり、集束プローブを用いた場合には、ビームが探触子の中心軸上に集中するため、探触子と探触子の間の位置では検出能が低くなってしまう。例えば探触子を千鳥状に配置する手法も考えられるが、局部水浸法を用いる場合にはカップリングが必要な範囲が広くなるため、気泡がより混入しやすくなる。
また、特許文献2の手法では、計算機上で焦点を走査できるのは円周方向であり、丸棒体軸方向で一様に高検出能を得るために軸方向に集束するような振動素子を用いる場合には、細かいピッチで探傷を行う必要があり、全断面の探傷に時間を要する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、検査材内部の全範囲で高い検出能及び分解能の超音波探傷を高速で実行可能な超音波探傷方法及び超音波探傷装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、鋼材を歩留まりよく製造可能な鋼材の製造設備列及び鋼材の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、高品質の鋼材を提供可能な鋼材の品質保証方法を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る超音波探傷方法は、超音波探触子から検査材に超音波信号を送信し、前記検査材の内部で反射された超音波信号を欠陥信号として前記超音波探触子において受信することによって、前記検査材の内部を検査する超音波探傷方法であって、前記検査材と前記超音波探触子との位置関係を変化させながら、前記超音波探触子に備えられた一つ以上の振動素子において複数の欠陥信号を受信する受信ステップと、前記検査材と前記振動素子との各位置関係において、欠陥からの受信音圧が最大となる振動素子位置での受信音圧に対する、各振動素子位置での受信音圧の比を受信音圧比として算出し、算出された前記受信音圧比に基づいて、前記検査材の各振動素子位置での開口合成処理における合成波形群を決定する決定ステップと、複数回の送受信によって得られた前記振動素子における受信波形に対して、前記決定ステップで決定した合成波形群と、前記複数の欠陥信号の遅延時間とを用いて、開口合成処理を実行することによって前記検査材の内部を検査する検査ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る超音波探傷方法は、上記発明において、前記決定ステップは、各振動素子位置における前記受信音圧比を加算平均することによって欠陥信号のS/N比変化率を算出し、前記S/N比変化率が所定値以上となるような合成波形群を、開口合成処理に用いる欠陥信号波形として決定するステップを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る超音波探傷方法は、上記発明において、前記決定ステップは、前記振動素子について、二つの直交する断面内で前記振動素子の中心軸と超音波伝搬経路とのなす角である指向角に基づき前記受信音圧比を算出し、算出された二つの前記受信音圧比を用いることにより、受信音圧比を算出するステップを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る超音波探傷方法は、上記発明において、前記決定ステップは、前記振動素子について、一つの断面上でスネルの法則を満たす超音波伝搬経路及び入射点を算出し、前記断面に直交する面について前記入射点の位置及びスネルの法則を満たす超音波伝搬経路を算出することにより、超音波伝搬経路における前記遅延時間を決定するステップを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る超音波探傷方法は、上記発明において、前記決定ステップは、前記振動素子が矩形である場合、以下の式(1)、式(2)及び式(3)を利用して、直交する二断面における超音波信号の指向角ψ1,ψ2を用いて受信音圧比R1,R2を算出するステップを含むことを特徴とする。但し、以下の式(3)におけるパラメータmは、指向角ψ1,ψ2及び前記振動素子の幅によって決定される係数である。
Figure 0006992678000001
Figure 0006992678000002
Figure 0006992678000003
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る超音波探傷装置は、超音波探触子から検査材に超音波信号を送信し、前記検査材の内部で反射された超音波信号を欠陥信号として前記超音波探触子において受信することによって、前記検査材の内部を検査する超音波探傷装置であって、前記検査材と前記超音波探触子との位置関係を変化させながら、前記超音波探触子に備えられた一つ以上の振動素子において複数の欠陥信号を受信する受信手段と、前記検査材と前記振動素子との各位置関係において、欠陥からの受信音圧が最大となる振動素子位置での受信音圧に対する、各振動素子位置での受信音圧の比を受信音圧比として算出し、算出された前記受信音圧比に基づいて、前記検査材の各振動素子位置での開口合成処理における合成波形群を決定する決定手段と、複数回の送受信によって得られた前記振動素子における受信波形に対して、前記決定手段で決定された合成波形群と、前記複数の欠陥信号の遅延時間とを用いて、開口合成処理を実行することによって前記検査材の内部を検査する検査手段と、を備えることを特徴とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼材の製造設備列は、鋼材を製造する製造装置と、前記製造装置によって製造された前記鋼材の内部を検査する、本発明に係る超音波探傷装置と、を備えることを特徴とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼材の製造方法は、鋼材を製造する製造ステップと、本発明に係る超音波探傷方法によって、前記製造ステップにおいて製造された鋼材の内部を探傷する探傷ステップと、を含むことを特徴とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼材の品質保証方法は、本発明に係る超音波探傷方法によって、鋼材の内部を探傷する探傷ステップと、前記探傷ステップによって得られた探傷結果から前記鋼材の品質保証を行う品質保証ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る超音波探傷方法及び超音波探傷装置によれば、超音波探触子に備えられた一つ以上の振動素子で受信される信号を開口合成することにより、検査材内部の全範囲で高い検出能及び分解能の超音波探傷を高速で実行することができる。また、本発明に係る鋼材の製造設備列及び鋼材の製造方法によれば、鋼材を歩留まりよく製造することができる。さらに、本発明に係る鋼材の品質保証方法によれば、高品質の鋼材を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態である超音波探傷装置の構成を示す模式図である。 図2は、本発明の実施形態である開口合成処理条件の決定の流れを示すフローチャートである。 図3は、本発明の実施形態である伝搬経路算出処理の概要を説明するための模式図である。 図4は、本発明の実施形態である伝搬経路算出処理のアレイ探触子の構成を説明するための模式図である。 図5は、本発明の実施形態である丸棒体円周方向断面における伝搬経路算出処理及び遅延時間算出処理を説明するための模式図である。 図6は、本発明の実施形態である丸棒体軸方向断面における伝搬経路算出処理及び遅延時間算出処理を説明するための模式図である。 図7は、本発明の実施形態である丸棒体円周方向断面における受信音圧比算出処理及び最適合成幅算出処理を説明するための模式図である。 図8は、本発明の実施形態である丸棒体軸方向断面における受信音圧比算出処理及び最適合成幅算出処理を説明するための模式図である。 図9は、本発明による信号処理を行った場合の合成波形数とS/N比変化率との関係をシミュ一レーションした結果を示す図である。 図10は、従来手法による信号処理を行った場合の合成波形数とS/N比変化率との関係をシミュ一レーションした結果を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態である超音波探傷装置の構成及びその動作について詳しく説明する。
[超音波探傷装置]
本発明の実施形態である超音波探傷装置の構成について、図1を参照して説明する。超音波探傷装置1は、水浸探傷法(以下、水浸法と表記)を利用した超音波探傷方法によって、鋳造された鋼片を圧延して製造された丸棒体RBを超音波探傷する装置である。この超音波探傷装置1は、複数の振動素子111を有するアレイ探触子11、プローブヘッド12、架台13、回転駆動装置14、パルサ15、レシーバ16、A/Dコンバータ17、記録装置18、信号処理装置19、及び表示装置20を主な構成要素として備えている。
本発明に係る超音波探傷装置1は、検査材とアレイ探触子11との位置関係を変化させながら、アレイ探触子11に備えられた複数の振動素子111のそれぞれにおいて複数の欠陥信号を受信する受信手段を備える。上記図1に示された超音波探傷装置1においては、レシーバ16、A/Dコンバータ17、及び記録装置18が受信手段に該当する。
さらに、本発明に係る超音波探傷装置1は、検査材とアレイ探触子11との各位置関係において、欠陥からの受信音圧が最大となる振動素子位置での受信音圧に対する、各振動素子位置での受信音圧の比を受信音圧比として算出し、算出された受信音圧比に基づいて、検査材の各振動素子位置での開口合成処理における合成波形群を決定する決定手段を備える。さらに加えて、本発明に係る超音波探傷装置1は、複数回の送受信によって得られた複数の振動素子111のそれぞれにおける受信波形に対して、決定手段で決定された遅延時間及び合成波形群を用いて、開口合成処理を実行することによって検査材の内部を検査する検査手段を備える。上記図1に示された超音波探傷装置1においては、信号処理装置19が決定手段及び検査手段に該当する。
アレイ探触子11は、水浸法における媒質である水を介して丸棒体RBから所定距離離れた位置に配置されており、超音波探傷中はパルサ15から出力されるパルス信号によってアレイ探触子11の各振動素子111を励振することにより、超音波信号を丸棒体RBに送信する。そして、丸棒体RBの内部を伝搬して反射された超音波信号(以下、欠陥信号と表記)は、アレイ探触子11を介してレシーバ16によって受信される。
本実施形態では、探傷を高速に行うために、アレイ探触子11に備えられた各振動素子111の励振は同時に行い、平面波を丸棒体RB内に入射させるものとする。しかし、本発明におけるアレイ探触子11の励振方法は同時励振に限らず、各振動素子111の励振タイミングをずらすことにより、超音波の方向や焦点距離を変化させて送信させてもよい。
プローブヘッド12は、アレイ探触子11を備え、丸棒体RBの上部に配置された架台13上を移動することによって丸棒体RBの軸方向に走査される。丸棒体RBを回転駆動装置14によって矢印で示す円周方向に回転させながらプローブヘッド12を走査し、欠陥信号をレシーバ16で受信することにより、丸棒体RBの全体積を超音波探傷することができる。回転駆動装置14の回転速度及びプローブヘッド12の走査速度は、丸棒体RBの全体積が不足なく超音波探傷されるように設定されている。
レシーバ16によって受信されたアナログ形態の欠陥信号は、パルサ15から出力されるパルス信号に同期しながらA/Dコンバータ17によってデジタルデータに変換され、記録装置18に保存される。これにより、丸棒体RBの全体積の欠陥信号が記録装置18に保存される。保存された欠陥信号は、信号処理装置19によって信号処理され、信号処理結果は表示装置20に表示される。信号処理は、超音波探傷中に保存される欠陥信号に対して随時行われる場合や全ての欠陥信号が保存された後に行われる場合がある。
信号処理装置19は、信号処理の一つとして開口合成処理条件の決定を実行する。開口合成処理条件の決定では、信号処理装置19は、アレイ探触子11に備えられた複数の振動素子111のそれぞれについて、二つの直交する断面内で振動素子111の中心軸と超音波伝搬経路とのなす角である指向角に基づいて、欠陥信号の受信音圧比を算出し、算出された二つの受信音圧比を用いることにより、受信音圧比を算出する。そして、信号処理装置19は、算出された受信音圧比に基づいて、超音波探傷範囲毎に最適な合成波形群を決定する。また、信号処理装置19は、信号処理の一つとして開口合成処理を実行する。信号処理装置19は、決定した合成波形群に従って複数の欠陥信号を用いた開口合成処理を行う。これにより、丸棒体RBの内部を検査して内部欠陥を検出し、丸棒体RBの内部を探傷する。
ここで、通常のアレイ探触子で実施される開口合成処理は、1回の送受信で得られた信号に対して行われるものである。一方、本実施形態では、検査材に対する位置を変えながら、アレイ探触子11で受信された受信波形に対して、探傷範囲毎に最適な合成波形群を設定し開口合成処理を行う。これにより、より広い開口面積での開口合成処理が行えるため、超音波ビームの集束効果が高くなり検出能を向上させることができる。
[超音波探傷方法]
次に、本実施形態に係る超音波探傷方法について説明する。本実施形態に係る超音波探傷方法は、(I)受信ステップ、(II)決定ステップ、及び(III)検査ステップの3つのステップを含む。また、各ステップは、(I)受信ステップの次に(II)決定ステップ、(II)決定ステップの次に(III)検査ステップの順に実行される。
受信ステップでは、検査材とアレイ探触子11との位置関係を変化させながら、アレイ探触子11に備えられた複数の振動素子111のそれぞれにおいて複数の欠陥信号を受信する。受信ステップには、公知の超音波探触子による欠陥信号の受信方法を用いることができる。受信ステップは、一例としては、上述したレシーバ16、A/Dコンバータ17、及び記録装置18の動作により実現させることができる。
決定ステップでは、検査材とアレイ探触子11に備えられた各振動素子111との位置関係において、欠陥からの受信音圧が最大となる振動素子位置での受信音圧に対する、各振動素子位置での受信音圧の比を受信音圧比として算出し、算出された受信音圧比に基づいて、検査材の各深さ位置での開口合成処理における合成波形群を決定する。検査材の各深さ位置での合成波形群の算出は、本発明において最も重要な技術である。このため、合成波形群の算出方法は、後程詳細に説明する。
決定ステップでは、加えて、開口合成処理に用いる遅延時間の算出も行う。また、合成幅及び遅延時間は、決定ステップにより欠陥深さ毎に算出されることが、検出能の向上の点で望ましい。なお、遅延時間の算出は、開口合成処理として公知の方法を用いることができる。本実施形態では、送信された超音波信号の検査体中での伝搬経路を算出し、この算出された伝搬経路に基づいて遅延時間の決定を行う例を、後程説明する。
また、決定ステップでは、各振動素子位置における前記受信音圧比を加算平均することによって欠陥信号のS/N比変化率を算出し、S/N比変化率が所定値以上となるような合成波形群を、開口合成処理に用いる欠陥信号波形として決定することが好ましい。
検査ステップでは、受信ステップにおいて複数回の送受信によって得られた複数の振動素子111のそれぞれにおける受信波形に対して、決定ステップで決定した遅延時間及び合成波形群を用いて、開口合成処理を実行し、開口合成処理の結果に基づき検査材の内部を検査する。検査ステップで行われる開口合成処理は、公知の方法を用いることができる。本実施形態では、決定ステップによって決定された合成波形群に含まれる複数波形に対して、同じく決定ステップによって決定された遅延時間をかけて足し合わせる処理を行う例を、後程説明する。
得られた開口合成処理の結果に基づき、検査材内部を検査し、検査材内部の状態を知ることにより探傷することができる。探傷することができる検査材内部の状態の一例としては、欠陥からの反射信号の強度や受信時間等から、欠陥の有無、欠陥位置、欠陥サイズ等が挙げられる。得られた開口合成処理の結果の出力方法は、結果の利用目的等によって適宜決定すればよいが、位置(幅方向、圧延方向、深さ、厚さ等)に対する波形又は画像の形式で出力されることが視認性も高いため望ましい。
本発明に係る超音波探傷方法によれば、欠陥信号に対するノイズの比(S/N比)が改善されるため、検出能を向上させることができる。
[開口合成処理条件の決定]
図2を参照して、決定ステップにおいて開口合成処理条件、即ち、合成波形群及び遅延時間を決定する際の信号処理装置19の動作について説明する。加えて、決定ステップにおいて、遅延時間の決定に用いる超音波信号伝搬経路を算出する方法の例について説明する。ここで、伝搬経路とは、検査体中における超音波信号の伝搬経路である。必要に応じて、検査体中と媒質中とにおける超音波信号の伝搬経路としてもよい。また、以下では、合成波形群の決定に用いる受信音圧比を算出する方法の例についても説明する。
図2は、本発明の実施形態である開口合成処理条件の決定の流れを示すフローチャートである。開口合成処理条件の決定は、超音波探傷前に行われる場合だけでなく、超音波信号による丸棒体RBの厚み計測のように超音波探傷中に得られた値に基づいて超音波探傷開始後に行われる場合もある。
開口合成処理条件の決定は、探傷条件入力ステップ(S1)、伝搬経路算出ステップ(S2)、遅延時間算出ステップ(S3)、受信音圧比算出ステップ(S4)、及び最適合成幅算出ステップ(S5)の順に実行される。以下では、丸棒体RBを検査体とした場合の各ステップについて詳しく説明する。
ステップS1の処理では、信号処理装置19が、丸棒体RBの寸法、アレイ探触子11に備えられた各振動素子111の寸法や配置間隔、測定ピッチ、丸棒体RBとの位置関係、超音波探傷範囲等の超音波探傷条件を取得する。なお、超音波探傷条件は、超音波探傷前に取得される場合だけでなく、超音波探傷中若しくは超音波探傷後に取得される場合もある。これにより、ステップS1の処理は完了し、開口合成処理条件の決定はステップS2の処理に進む。
ステップS2の処理では、信号処理装置19が、ステップS1の処理において取得した超音波探傷条件を用いて、スネルの法則に従ってアレイ探触子11に備えられた各振動素子111から丸棒体RBに入射して想定欠陥位置を通過する超音波信号の伝搬経路を算出する(伝搬経路算出処理)。この伝搬経路算出処理の詳細については後述する。これにより、ステップS2の処理は完了し、開口合成処理条件の決定はステップS3の処理に進む。
ステップS3の処理では、信号処理装置19が、基準となる欠陥信号に対する他の複数の欠陥信号の各受信位置での遅延時間を算出する(遅延時間算出処理)。この遅延時間算出処理の詳細については後述する。これにより、ステップS3の処理は完了し、開口合成処理条件の決定はステップS4の処理に進む。
ステップS4の処理では、信号処理装置19が、丸棒体RBとアレイ探触子11に備えられた各振動素子111との位置関係での欠陥信号の受信音圧比を算出する(受信音圧比算出処理)。この受信音圧比算出処理の詳細については後述する。これにより、ステップS4の処理は完了し、開口合成処理条件の決定はステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、信号処理装置19が、ステップS4の処理において算出された受信音圧比に基づいて、丸棒体RBの各深さ位置での開口合成処理における最適な合成波形群を決定する。これにより、ステップS5の処理は完了し、一連の開口合成処理条件の決定は終了する。
<伝搬経路算出処理及び遅延時間算出処理>
次に、図3から図6を参照して、ステップS2の伝搬経路算出処理及びステップS3の遅延時間算出処理について詳しく説明する。
開口合成処理によって高いS/N比の欠陥信号を得るためには、合成する各欠陥信号の遅延時間を正確に算出することが望ましい。特に丸棒体RBのような曲面形状を有する鋼材を超音波探傷する場合には、曲面上での屈折現象によって超音波信号の伝搬経路が大きく変化するため、合成する各欠陥信号の遅延時間を正確に算出することが望ましい。
そこで、本実施形態では、アレイ探触子11及び想定欠陥位置の座標に基づき、スネルの法則を満たしながらアレイ探触子11の各振動素子111から丸棒体RBに入射して想定欠陥位置を通過する超音波信号の伝搬経路を算出して遅延時間を決定する。すなわち、アレイ探触子11に備えられた各振動素子111について、一つの断面上でスネルの法則を満たす超音波伝搬経路及び入射点を算出し、前記断面に直交する面について入射点の位置及びスネルの法則を満たす超音波伝搬経路を算出することにより、超音波伝搬経路における遅延時間を決定する。
図3は、本発明の実施形態である伝搬経路算出処理の一態様を説明するための模式図である。図3において、時刻t=0でのアレイ探触子11の位置をPと示し、時刻t=Tでのアレイ探触子11の位置をPと示す。
図4は、アレイ探触子11を拡大した模式図である。振動素子111の配置間隔(素子ピッチ)をp、振動素子111の幅をaとした場合、位置Pにある振動素子111と、当該振動素子111からN振動素子分だけ離れた位置Pにある振動素子111との距離bは、以下の式(4)によって表される。また、図3に示すように、時刻t=0において位置P05にある振動素子111は、時刻t=Tでは位置PT5へと移動する。
Figure 0006992678000004
図3に示すように、位置P03の振動素子111で受信された欠陥D(位置P)からの欠陥信号Sg1の受信時間に対する、位置PT5の振動素子111で受信された欠陥D(位置P)からの欠陥信号Sg2の受信時間の遅れを、遅延時間ΔTとする。また、丸棒体RBの円周方向移動速度をV1とし、アレイ探触子11の軸方向移動速度をV2とする。
また、位置P03の振動素子111から欠陥D(位置P)に向かう超音波伝搬経路において、水距離部分をwとし、鋼中部分をdとする(図5参照)。同様に、位置PT5の振動素子111から欠陥D(位置P)に向かう超音波伝搬経路において、水距離部分をLwとし、鋼中部分をLsとする。但し、前記伝搬経路は曲面上でのスネルの法則による屈折現象を考慮するものとする。
伝搬経路変化については、丸棒体RBの円周方向断面と丸棒体RBの軸方向断面とで個別に導出する。丸棒体RBの円周方向断面での伝搬経路変化を表す模式図を図5に、丸棒体RBの軸方向断面での伝搬経路変化を表す模式図を図6に表す。
図5において、位置P03の振動素子111と位置PT5の振動素子111との間の回転方向移動角度θは、以下の式(5)によって表される。また、丸棒体RBの円周方向断面での位置PT5の振動素子111から欠陥D(位置P)に向かう超音波伝搬経路の水中部分をLw1とし、鋼中部分をLs1とする。鋼中音速をCsとし、水中音速をCwとすると、超音波伝搬経路はスネルの法則に従うため、入射角θw1及び屈折角θs1は、以下の式(6)を満たす。式(6)の条件下で丸棒体円周上に存在する入射点X1は、集束計算によって決定される。この時の入射点X1の丸棒体RB底部からの高さをPθとする。
Figure 0006992678000005
Figure 0006992678000006
図6において、位置P03の振動素子111と位置PT5の振動素子111との間の軸方向移動量Lは、以下の式(7)によって表される。また、丸棒体RBの軸方向断面での位置PT5の振動素子111から欠陥D(位置P)に向かう超音波伝搬経路の水中部分をLw2とし、鋼中部分をLs2とし、入射点をX2とする。入射点X2の丸棒体RB底部からの高さは、前記丸棒体RBの円周方向断面で決定された入射点X1の丸棒体RB底部からの高さPθに一致する。鋼中における超音波伝搬経路はスネルの法則に従うため、入射角θw2及び屈折角θs2は、以下の式(8)を満たす。この時、式(8)の条件下で線分AB上に存在する入射点X2は、集束計算によって決定される。
Figure 0006992678000007
Figure 0006992678000008
ここで、丸棒体RBの円周方向断面と丸棒体RBの軸方向断面は直交しているため、図3に表した伝搬経路長Lw,Lsは、それぞれ以下の式(9)及び式(10)によって表される。
Figure 0006992678000009
Figure 0006992678000010
本実施形態では、アレイ探触子11を同時に励振するため、鋼中内にはビレット軸方向に位相の揃った平面波が入射する。そのため、送信時の伝搬経路によって生じる遅延時間ΔT1は以下の式(11)によって、受信時の伝搬経路によって生じる遅延時間ΔT2は以下の式(12)によって、ΔTは以下の式(13)によって表される。
Figure 0006992678000011
Figure 0006992678000012
Figure 0006992678000013
ここで、基準となる欠陥信号に対する他の複数の欠陥信号の各受信位置での遅延時間を算出して複数の欠陥信号を合成することにより、ランダムなノイズは打ち消し合うため、欠陥信号のS/N比は改善される。なお、図3において、欠陥信号Sg1を基準とした場合、欠陥信号Sg2は遅延時間ΔTだけ位相を早めて足し合わされる。これにより、ランダムなノイズは打ち消し合い、位相が揃えられた欠陥信号は強め合うため、開口合成処理前と比べて欠陥信号のS/N比は高くなる。また、アレイ探触子11に備えられた各振動素子111の位置や丸棒体RBの深さ位置毎にそれぞれ遅延時間を算出して開口合成処理を行うことにより、丸棒体RB内のどの深さに欠陥がある場合でも高いS/N比で欠陥信号を検出することができる。
<受信音圧比算出処理及び最適合成幅算出処理>
次に、図7及び図8を参照して、図2に示すステップS4の受信音圧比算出処理及びステップS5の最適合成幅算出処理について詳しく説明する。
アレイ探触子11の各振動素子111での欠陥信号の強度は、振動素子111と内部欠陥との位置関係に応じて変化する。具体的には、遠距離音場においては、振動素子111の中心軸上に欠陥が存在する場合に最も欠陥信号の強度が強くなり、振動素子111の中心軸と内部欠陥を通過する超音波の伝搬経路とのなす角が大きくなるに従って欠陥信号の強度は小さくなっていく。開口合成処理によって高いS/N比の欠陥信号を得るためには、欠陥信号が十分な強度を有する範囲内で複数の欠陥信号を足し合わせる必要があり、強度が小さい欠陥信号を足し合わせた場合にはS/N比の向上効果は小さくなる。
また、振動素子111から出力された超音波信号は、拡散しながら伝搬していくため、遠距離になるほどその音圧分布は広がって形成される。このとき、音圧分布内に欠陥が存在する場合、十分な強度の欠陥信号を得ることができる。つまり、超音波信号の音圧分布と音圧分布内での欠陥の移動位置によって十分な強度を持つ合成幅(足し合わせる欠陥信号数)は変化する。従って、開口合成処理によって高いS/N比の欠陥信号を得るためには、内部欠陥の位置及び探傷条件に基づいて合成波形群を適切に設定する必要がある。そこで、本実施形態では、欠陥信号の受信音圧比に基づき内部欠陥の深さ位置毎に適切な合成波形群を算出する。
本実施形態では、伝搬経路算出処理によって算出された超音波信号の伝搬経路から、直交する二断面における超音波信号の指向角ψ1,ψ2、すなわち振動素子111の各位置での回転方向の指向角ψ1及び軸方向の指向角ψ2を算出する。そして、アレイ探触子11が移動した際の、振動素子111の各位置での欠陥信号の受信音圧比の変化を算出し、受信音圧比の高いものから順に合成波形を選択し、合成波形数と欠陥信号S/N比変化率の関係から開口合成処理に用いる合成波形群の選択を行う。
まず、基準時刻からmΔT経過した時の、基準とする振動素子111から数えてN番目の振動素子111での受信音圧比Rの算出について説明する。
図7は、振動素子111の各位置での円周方向指向角を表す模式図である。基準時刻における振動素子111(基準振動素子)の位置をP11とし、基準時刻からサンプリング時間ΔT経過した時の基準振動素子からN番目の振動素子111の位置をP12とし、基準時刻からmΔT経過した時の基準振動素子からN番目の振動素子111の位置をP13とする。ΔTは、以下の式(14)によって表される。また、回転角Δθ及び回転角θは、それぞれ以下の式(15)及び式(16)によって表される。
Figure 0006992678000014
Figure 0006992678000015
Figure 0006992678000016
アレイ探触子11に備えられた振動素子111が矩形形状である場合には、受信音圧比RθmNは、指向角ψ1を用い、以下の式(17)、式(18)及び式(19)により表すことができる。式(18)におけるパラメータmは、指向角ψ1,ψ2及びアレイ探触子11の探触子幅によって決定される係数である。なお、アレイ探触子11が円形形状や矩形形状ではない複雑な形状を有する場合には、実験や有限要素法等を用いた物理解析の結果を用いて受信音圧比Rを決定してもよい。また、検出対象とする欠陥が強い指向性を有する場合には、前記した式(14)に欠陥の反射指向性関数を乗じたものを受信音圧比Rとすることがある。本実施形態では、上記手順により算出した受信音圧比Rを用いて合成幅を算出する。なお、式(17)は、前記した式(1)の「R1」を「RθmN」に置き換えたものであり、式(1)と同じ式である。
Figure 0006992678000017
Figure 0006992678000018
Figure 0006992678000019
図8は、振動素子111の各位置での軸方向指向角を表す模式図である。図7と同様に、基準時刻における振動素子111(基準振動素子)の位置をP11とし、基準時刻からサンプリング時間ΔT経過した時の基準振動素子からN番目の振動素子111の位置をP12とし、基準時刻からmΔT経過した時の基準振動素子からN番目の振動素子111の位置をP13とする。軸方向移動量L1及び軸方向移動量Lは、それぞれ以下の式(20)及び式(21)によって表される。
Figure 0006992678000020
Figure 0006992678000021
アレイ探触子11に備えられた振動素子111が矩形形状である場合には、受信音圧比RLmNは、指向角ψ2を用い、以下の式(18)、式(19)及び式(22)により表すことができる。なお、アレイ探触子11が円形形状や矩形形状ではない複雑な形状を有する場合には、実験や有限要素法等を用いた物理解析の結果を用いて受信音圧比Rを決定してもよい。また、検出対象とする欠陥が強い指向性を有する場合には、前記した式(14)に欠陥の反射指向性関数を乗じたものを受信音圧比Rとすることがある。本実施形態では、上記手順により算出した受信音圧比Rを用いて合成幅を算出する。なお、式(22)は、前記した式(2)の「R2」を「RLmN」に置き換えたものであり、式(2)と同じ式である。
Figure 0006992678000022
前記した式(17)及び式(22)によって表される受信音圧比Rθm,RLmを用いることにより、基準時刻からmΔT経過した際の、基準振動素子から数えてN番目の振動素子111での受信音圧比RmNは、以下の式(23)によって表される。
Figure 0006992678000023
前記方法に従って、各振動素子111の位置、各時刻における受信音圧比を算出し、大きいものから順に並べた配列をRA(x)とする。このとき、RAの要素1~Xまでを足し合わせた時の開口合成後受信音圧比Sは、以下の式(24)によって表される。
Figure 0006992678000024
加算回数Xの加算平均よってノイズが1√Xになると仮定すると、基準想定欠陥位置Fにおける開口合成前S/Nに対する開口合成後のS/N比向上係数Eは、以下の式(25)によって表される。
Figure 0006992678000025
前記した式(24)によってEが最大となる合成幅Nmaxを設定し、開口合成を行うことにより、欠陥信号のS/Nを最大化することができる。また、前記した式(25)を満たすNmaxを決定し、開口合成処理を行うことにより、十分に欠陥信号のS/Nを向上させることができる。
なお、上記の受信音圧比算出処理は、アレイ探触子11の各振動素子111を同時励振し、送信波が平面波であることを仮定し、振動素子111の受信指向性のみを考慮した場合について説明している。しかし、本発明に係る超音波探傷方法及び超音波探傷装置1では、上記のように送信波が平面波である場合だけに限らず、振動素子111の励振タイミングを制御し、特定の指向性及び焦点距離を有する送信波を用いることも可能である。この場合には、送信波の有する指向性及び距離特性を考慮し、受信音圧比の計算を行うことが望ましい。
以上説明した本実施形態に係る超音波探傷方法及び超音波探傷装置1によれば、アレイ探触子11に備えられた一つ以上の振動素子111で受信される信号を開口合成することにより、検査材内部の全範囲で高い検出能及び分解能の超音波探傷を高速で実行することができる。
なお、本実施形態では、超音波探触子の一形態であり、複数の振動素子が備えられたアレイ探触子を用いた場合について説明したが、本発明の実施形態はこの場合に限定されない。すなわち、本発明においては、一つ以上の振動素子を有する超音波探触子を用いることができる。具体的には、一つの振動素子を有する超音波探触子を一つ用いた場合、または一つの振動素子を有する超音波探触子を複数用いた場合も、同様に本発明は効果を奏する。どの種類の超音波探触子を用いるかは、超音波探触子の性能、寸法、検査材の状況及び探傷環境の状況(空間の空き具合等)等を考慮して、適宜選択すればよい。
[実施例]
本発明に係る超音波探傷方法の優れた結果を実施例で説明する。本実施例では、特許文献1に記載の手法、特許文献2に記載の手法及び本発明手法を用いた場合の超音波ビームの集束効果を、S/N比変化率、つまり開口合成処理によって改善されるS/N比によって比較した。
図9は、合成幅の違いに伴う合成波形数と欠陥信号のS/N比変化率との関係の変化の一例を示す図である。具体的には、図9は、直径φ175mmの丸棒鋼の内部深さ170mmに位置する欠陥を、周波数:5MHz、円周方向の振動素子の幅:12mm、軸方向の振動素子の幅:1.8mm、振動素子の間隔:0.2mm、振動素子数:61個、繰り返し周波数:1kHz、丸棒体回転速度:1100mm/s、軸方向走査速度:240mm/sの条件で探傷し、アレイ探触子の各振動素子で得られた受信波形を用いて開口合成を行った場合の、合成波形数と欠陥信号S/N比変化率との関係を算出した結果である。但し、アレイ探触子の振動素子は軸方向に並べて配置されており、合成波形は受信音圧の高い振動素子での受信波形から順に選択していくものとする。
図10は、直径φ175mmの丸棒鋼の内部深さ170mmに位置する欠陥を、周波数:5MHz、円周方向の振動素子の幅:1.8mm、軸方向の振動素子の幅:12mm、振動素子の間隔:0.2mm、振動素子数:121個のアレイ探触子で探傷し、アレイ探触子の各振動素子で得られた受信波形を円周方向のみで開口合成を行った場合の、合成波形数と欠陥信号S/N比変化率との関係を算出した結果である。但し、アレイ探触子の振動素子は円周方向に並べて配置されており、特許文献2に記載された手法を模擬した結果である。
図10の従来手法では、合成波形数:97波形で最大S/N比変化率:17.4dBを得るのに対して、図9の本発明手法では、合成波形:1512波形で最大S/N比変化率28.3dBを得ることができる。本発明では、丸棒体円周方向に加えて丸棒体軸方向についても超音波ビームの集束を得られるため、従来手法と比較して感度が10dB以上向上しており、その有効性が確認できた。さらに本発明によって合成波形群を適切に選択することにより、S/N比変化率を最大とすることができることも確認できた。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本発明を鋼材の製造設備列を構成する検査装置として適用し、本発明に係る超音波探傷装置において製造装置によって製造された鋼材の内部を検査し探傷するようにしてもよい。また、本発明を鋼材の製造方法に含まれる検査ステップとして適用し、製造ステップにおいて製造された鋼材の内部を検査し探傷するようにしてもよい。探傷ステップでは、検査ステップにおける開口合成処理の結果に基づき鋼材内部の欠陥を探傷し、欠陥の有無、欠陥位置、欠陥サイズ等についての結果を得る。このような鋼材の製造設備列及び鋼材の製造方法によれば、鋼材を歩留まりよく製造することができる。
さらに、本発明を鋼材の品質保証方法に適用し、鋼材の内部を検査し探傷することにより鋼材の品質保証を行うようにしてもよい。具体的には、本発明で鋼材の内部を探傷ステップで探傷し、探傷ステップで得られた探傷結果から鋼材の品質保証を行うことができる。探傷ステップでは、検査ステップにおける開口合成処理の結果に基づき鋼材内部の欠陥を探傷し、欠陥の有無、欠陥位置、欠陥サイズ等についての結果を得る。次に続く品質保証ステップでは、探傷ステップにより得られた、欠陥有無、欠陥位置、欠陥サイズに関わる結果に基づき、製造された鋼材が予め指定された基準を満たしているかどうか判定し、鋼材の品質を保証する。このような鋼材の品質保証方法によれば、高品質の鋼材を提供することができる。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1 超音波探傷装置
11 アレイ探触子
111 振動素子
12 プローブヘッド
13 架台
14 回転駆動装置
15 パルサ
16 レシーバ
17 A/Dコンバータ
18 記録装置
19 信号処理装置
20 表示装置
RB 丸棒体

Claims (8)

  1. 超音波探触子から検査材に超音波信号を水を媒質として送信し、前記検査材の内部で反射された超音波信号を欠陥信号として前記超音波探触子において水を媒質として受信することによって、前記検査材の内部を検査する超音波探傷方法であって、
    前記検査材と前記超音波探触子との位置関係を変化させながら、前記超音波探触子に備えられた一つ以上の振動素子において複数の欠陥信号を受信する受信ステップと、
    前記検査材と前記振動素子との各位置関係において、受信音圧比を算出し、算出された前記受信音圧比に基づいて、前記受信音圧比の高いものから順に、前記検査材の各振動素子位置での開口合成処理における合成波形群として決定する決定ステップと、
    複数回の送受信によって得られた前記振動素子における受信波形に対して、前記決定ステップで決定した合成波形群と、前記複数の欠陥信号の遅延時間とを用いて、開口合成処理を実行することによって前記検査材の内部を検査する検査ステップと、
    を含み、
    前記決定ステップは、前記振動素子が矩形である場合、以下の式(1)、式(2)、式(3)及び式(19)を利用して、直交する二断面における超音波信号の指向角ψ1または指向角ψ2を用いて、それぞれに対する受信音圧比R1,R2を算出するステップを含むことを特徴とする超音波探傷方法。
    但し、以下の式(3)及び式(19)におけるパラメータmは、指向角ψ1,ψ2、前記振動素子の幅D、超音波の水中音速Cw及び超音波の周波数Fによって決定される係数である。
    Figure 0006992678000026
    Figure 0006992678000027
    Figure 0006992678000028
    Figure 0006992678000029
  2. 前記決定ステップは、各振動素子位置における前記受信音圧比を加算平均することによって欠陥信号のS/N比変化率を算出し、前記S/N比変化率が所定値以上となるような合成波形群を、開口合成処理に用いる欠陥信号波形として決定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷方法。
  3. 前記決定ステップは、前記振動素子について、二つの直交する断面内で前記振動素子の中心軸と超音波伝搬経路とのなす角である指向角に基づき前記受信音圧比を算出し、算出された二つの前記受信音圧比を用いることにより、受信音圧比を算出するステップを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波探傷方法。
  4. 前記決定ステップは、前記振動素子について、一つの断面上でスネルの法則を満たす超音波伝搬経路及び入射点を算出し、前記断面に直交する面について前記入射点の位置及びスネルの法則を満たす超音波伝搬経路を算出することにより、超音波伝搬経路における前記遅延時間を決定するステップを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超音波探傷方法。
  5. 超音波探触子から検査材に超音波信号を水を媒質として送信し、前記検査材の内部で反射された超音波信号を欠陥信号として前記超音波探触子において水を媒質として受信することによって、前記検査材の内部を検査する超音波探傷装置であって、
    前記検査材と前記超音波探触子との位置関係を変化させながら、前記超音波探触子に備えられた一つ以上の振動素子において複数の欠陥信号を受信する受信手段と、
    前記検査材と前記振動素子との各位置関係において、受信音圧比を算出し、算出された前記受信音圧比に基づいて、前記受信音圧比の高いものから順に、前記検査材の各振動素子位置での開口合成処理における合成波形群として決定する決定手段と、
    複数回の送受信によって得られた前記振動素子における受信波形に対して、前記決定手段で決定された合成波形群と、前記複数の欠陥信号の遅延時間とを用いて、開口合成処理を実行することによって前記検査材の内部を検査する検査手段と、
    を備え、
    前記決定手段は、前記振動素子が矩形である場合、以下の式(1)、式(2)、式(3)及び式(19)を利用して、直交する二断面における超音波信号の指向角ψ1または指向角ψ2を用いて、それぞれに対する受信音圧比R1,R2を算出することを特徴とする超音波探傷装置。
    但し、以下の式(3)及び式(19)におけるパラメータmは、指向角ψ1,ψ2、前記振動素子の幅D、超音波の水中音速Cw及び超音波の周波数Fによって決定される係数である。
    Figure 0006992678000030
    Figure 0006992678000031
    Figure 0006992678000032
    Figure 0006992678000033
  6. 鋼材を製造する製造装置と、
    前記製造装置によって製造された前記鋼材の内部を検査する請求項5に記載の超音波探傷装置と、
    を備えることを特徴とする鋼材の製造設備列。
  7. 鋼材を製造する製造ステップと、
    請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探傷方法によって、前記製造ステップにおいて製造された鋼材の内部を探傷する探傷ステップと、
    を含むことを特徴とする鋼材の製造方法。
  8. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探傷方法によって、鋼材の内部を探傷する探傷ステップと、
    前記探傷ステップによって得られた探傷結果から前記鋼材の品質保証を行う品質保証ステップと、
    を含むことを特徴とする鋼材の品質保証方法。
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