JP2014058716A - 金型、型ロールおよび剥離電鋳品 - Google Patents

金型、型ロールおよび剥離電鋳品 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂やフィルムへの転写性やその樹脂やフィルムの離型性の高い金型、型ロールおよび剥離電鋳品を提供すること。
【解決手段】ニッケルを主成分とし、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含み、その他に不可避的不純物を含む非晶質の20μm〜10mmの厚みの電気ニッケル−リン合金めっき皮膜を形成し、当該皮膜表面に高精密彫刻加工を施した後、さらに、その表面に10μm以下の厚みのCr、DLCまたはTiNを被覆する。
【選択図】なし

Description

本発明は、集光型太陽光発電に使用されるフレネルレンズ用金型、光学用マイクロレンズ用金型、液晶用偏光フィルター加工用に、その表面に高精密彫刻などの高精度超微細形状が形成されためっき皮膜を有する金型や型ロールなどにおいて、当該表面に設けた精密形状を成形する樹脂やフィルムに転写する精度と、成形された樹脂やフィルムなどの金型や型ロールからの離型性とを高める目的で、めっき皮膜表面に化学的に安定な被覆層を積層することで、結果的に長寿命化を可能とする金型、型ロール、さらにはめっき皮膜とその表面の被覆層のみからなる剥離電鋳品(以後、剥離電鋳品と称す)に関するものである。
上記の光学レンズ用金型や偏光フィルター加工用金型ロールなどの超精密加工を要する部材では、幅または切り込み量が10μm以下の溝加工など、極めて精密な彫刻切削加工を必要としている。これらの超精密加工に於いては、加工しようとする金属素材の結晶粒径以下の厳しい加工精度が要求されている。また加工時には、型材端部の欠けや切削加工面に生ずる金属バリは、最終的に成形品の表面に転写されるために全く許容されない。さらに超精密加工しためっき皮膜からなる金型や型ロール自体は、その加工費から高コストにならざるを得ない為に、形状精度の長寿命(耐久性)も要求される。つまり、上記めっき皮膜から構成される金型や型ロールは超精密加工性、耐摩耗性および耐腐食性などの特性を全て備えていなければならない。なお、上記めっき皮膜を有する部材の超精密加工にはダイヤモンドのバイト工具を利用するのが一般的である。
一般に、超精密加工を行うための金型や型ロールには、従来からベリリウム銅や無電解ニッケルめっき皮膜を被覆したステンレス鋼や炭素鋼等が使用されていた。しかし、ベリリウム銅は比較的硬度が低く、切削バリの発生やその硬度から加工精度と共に長寿命を期待できない。また、無電解ニッケルめっき皮膜については、材料特性として切削面にバリが発生するという問題を抱えており、近年ますます要求が高くなっている超精密加工性の要求を十分に満足することができない。一方、無電解ニッケルめっき皮膜に対応する電気ニッケルめっき皮膜は、無電解ニッケル皮膜よりもさらに低硬度で塑性変形し易く、超精密加工性が全くないだけでなく、高価なダイヤモンドバイトの寿命にも問題を生じている。
非特許文献1には、電気ニッケルめっき膜中の水素の挙動に関して、金属塩濃度とpHが異なる3種類のワット浴(NiSO:NiCl=4:1)を用いて電気ニッケルめっき析出時の物質収支を定量的に評価した記載がある。その評価結果によれば、「ワット浴から電気めっきしたニッケル皮膜中に共存する水素の量は電流効率に依存せず、ほとんどの水素は気泡になって大気放出されてしまう。ところがニッケルめっき皮膜中に存在(吸蔵)する水素の含有量は原子比 H/Ni=10−3以下で一見微量のように思えるが、ニッケル金属の室温における水素の固溶度(H/Ni=3×10−5)の10倍以上である。」と記載されている。しかし、水素の含有量が切削加工性に与える影響についての記載は一切見当たらない。
また、非特許文献2には、電気ニッケル−リン合金めっき皮膜の結晶化過程について述べており、皮膜中にリンを約8重量%以上含有すると非晶質になり、優れた耐食性や光沢性を有すること、さらにまた非晶質のものを加熱して結晶化させるとHv1100に達する高い硬さを有することなどが記載されている。しかし、非特許文献2には、電気ニッケル−リン合金めっきにおいて、リンを約8重量%以上含有すると非晶質になるとの記載はあるが、その切削加工性についての記載は一切ない。
また、特許文献1には、ミクロクラックのない硬質クロム層を成形ロール表面に形成するために、ロール表面に下地層として電気ニッケル−リン非晶質合金めっき皮膜を施し、その表面を0.1μmRy以下の表面粗さに鏡面加工したのち、当該電気ニッケル−リン非晶質合金めっき皮膜上に電気クロムめっき皮膜を形成することが記載されている。しかし、電気ニッケル−リン非晶質合金めっき皮膜中の水素含有量については記載されておらず、その表面に高精密彫刻加工を施すことも記載されていない。
技術雑誌「表面技術」Vol.63, No.4, 2012、222-226頁、めっき膜中の水素挙動 技術雑誌「金属表面技術」Vol.31, No.12, 1980、667-672頁、電析Ni−P非晶質合金の結晶化過程
特開2012−21174号公報
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、高精密彫刻加工などの超微細な切削加工を施したニッケル−リン合金めっき皮膜をその表面に有する樹脂成形用金型やフィルム成形用型ロールから樹脂やフィルムへの転写性やその樹脂やフィルムの離型性を高めるために、ニッケル−リン合金めっき皮膜上に化学的に安定な材料からなる被覆層を設けた金型および型ロールならびにニッケル−リン合金めっき皮膜上に化学的に安定な材料の被覆層を設けた金型、型ロールおよび剥離電鋳品を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の金型、型ロールおよび剥離電鋳品は、ニッケルを主成分とし、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含み、その他に不可避的不純物を含む非晶質の電析めっき皮膜の表面に高精密彫刻加工を施した後、化学的に安定な材料からなる被覆層を設けたことを特徴とする。本発明は、非晶質の電析めっき皮膜の表面に設けられた化学的に安定な材料からなる被覆層により、樹脂やフィルムへの高精密彫刻形状の転写性と樹脂やフィルムの離型性を長期間にわたって保持することができる。かかる高精密彫刻加工性を備えるためには、非晶質の電析めっき皮膜はニッケルを主成分とし、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含むことを必須としている。
また、本発明は、上記の特徴を有する電析めっき皮膜において、X線回折によるニッケルの最大ピーク強度がバックグラウンド強度の2倍以下であることが好ましく、ニッケルの最大ピーク強度がバックグラウンド強度と識別できないレベルであることがより好ましい。また、加えて上記の特徴を有する電析めっき皮膜において、X線回折におけるニッケルの最大ピーク強度の半値幅が3°以上の非晶質材料であることが好ましい。
化学的に安定な材料からなる被覆層は、高精密彫刻形状の転写性や離型性において優れた特性を備えたものであることが好ましく、例えば、例えば、CrやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)やTiNを挙げることができる。この被覆層の厚みは、0.01μm以上必要であるが、上記転写性や離型性を確保できれば、薄い方が好ましく、1μm以下が好ましい。一方、耐摩耗性の点からは、被覆層の厚みは厚い方が好ましいが、厚すぎると形状精度が低下するので、10μm以下が好ましい。
被覆層は、離型性や転写性に優れ、Niめっき皮膜より化学的に安定で、高硬度で耐摩耗性に優れていることが好ましい。例えば、被覆層として、Crのめっき皮膜を挙げることができる。また、イオンプレーティング法やプラズマ法を利用した化学蒸着によって作製したDLCやTiNの薄膜も被覆層として使用することができる。被覆層としては、CrやDLCやTiNの薄膜に限定されることはなく、これらと同等の化学的および機械的特性を備えているものであればよく、例えば、物理蒸着法で作製されるTiAlNやCrAlNの単層膜や多層膜も被覆層として使用することができる。さらに、Alなどの酸化膜も被覆層として使用することができる。
高精密彫刻加工などの超精密微細加工が必要とされる金型や型ロール表面に本発明の電析めっき皮膜を被覆すること以外に、本発明の電析めっき皮膜と化学的に安定な材料からなる被覆層との積層体で構成される、剥離電鋳品として提供されることも好ましい。
本発明の電析めっき皮膜において、発明者等が調査した結果、リン含有量が10重量%未満では、ニッケルの結晶が析出し、X線回折により明確にNiPのピークが観察される。このような金属組織は、超精密彫刻加工の加工応力によって結晶粒界が破壊しやすく、破壊した結晶粒の大きさが目的とする微細加工粗さに到達することを阻害すると同時に切削バリとなり、高精度の加工が出来ない。一方、リン含有量が20重量%を超えるような電析めっき皮膜は製造することそのものが困難である。また、水素含有量が0.3原子%未満の電析めっき皮膜は皮膜ないし材料としての強度が低く、同じく切削時にバリや欠けが発生し易く超精密彫刻加工性に劣っている。なお、水素含有量が3.0原子%を超える電析めっき皮膜は電気めっき法でも得られていない。
本発明の電析めっき皮膜は、ニッケルを主成分として、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含んでおり、それがために非晶質であるという特性に加えて高硬度でありながらも強靭で高度な精密彫刻加工性を具備している。
ニッケルを主成分として、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含む電析めっき皮膜は、このように、非晶質でありながら、高硬度で延性も備えているが、活性がやや高いことから、樹脂成形用金型やフィルム成形用型ロールなどとして使用したときに、その成形圧力や成形温度が高い場合、樹脂やフィルムの転写性や離型性に不都合が生じることがある。そこで、ニッケルを主成分とし、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含み、その他に不可避的不純物を含む非晶質の電析めっき皮膜の表面に高精密彫刻加工を施した後、化学的に安定な材料からなる被覆層を設けることにより、転写性や離型性、耐久性を大幅に改善することができる。
図1は、本発明の電析めっき皮膜を施した物品の切削加工時に生じた切り屑の走査電子顕微鏡写真(300倍)である。
(1)電析めっき皮膜の製造方法
本発明のニッケル−リン合金めっき皮膜は、めっき皮膜中のリン含有量が約8重量%(約15原子%)を超えると、非晶質構造をとるようになる。非晶質構造の合金は、耐食性や耐酸化性や耐変色性などにおいて優れており、耐食性に劣る鉄鋼材料の表面にこれらの性質を付与するための表面処理法の一つとして、ニッケル−リン合金めっき法が広く一般に利用されている。ニッケル−リン合金めっき液として、ニッケル供給源としてニッケル塩と還元剤として次亜リン酸塩を添加した無電解ニッケル−リン合金浴が実用化されている。しかしながら、無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜には、「(1)合金めっき皮膜中に多くのピット(欠陥部)を内在している。(2)0.1mmを超える厚いめっき皮膜の場合では外観に問題がある、(3)合金めっき皮膜の成長に伴って次亜リン酸イオンやニッケルイオンの浴中濃度が刻々と変化するので還元速度の制御が難しい、(4)さらに液の老化に伴ってリンの含有量が一定であるめっき皮膜を得にくい」などの多くの問題を抱えている。
(2)本発明の電析めっき皮膜を得るためのめっき浴
本発明の電析めっき皮膜を得るためのめっき浴の一例としては、ニッケル塩、亜リン酸および/または亜リン酸塩、カルボン酸および/またはホウ酸などを必要量調合して電気めっき浴とする。ここで、カルボン酸としてはクエン酸、マロン酸、シュウ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酪酸、酒石酸、蟻酸、プロピオン酸、吉草酸、コハク酸、マレイン酸のいずれか/またはこれらを混合したものを用いることができる。めっき浴のpHは1.6〜3.5の範囲にするのが好ましい。pHが1.6未満では水素発生により電流効率が低下して電析速度が遅くなり、実用性に欠ける。一方、pHが3.5を超えると、陽極で酸化されたリン酸イオンとニッケルイオンによって沈殿が生じるので、長時間の電解作業で光沢めっきを得ることが困難になる。また、浴を構成する成分の量に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ成分や硫酸、塩酸などの鉱酸により適宜調整可能である。
〔本発明の重要な特徴(非晶質であること、適量の水素を含むこと、離型性に優れていること)〕
《非晶質》
本発明の電析めっき皮膜は、ニッケルを主成分とし、10〜20重量%のリンを含有することによって非晶質となっていることを一つの重要な特徴とする非晶質合金である。当該非晶質合金の別の特徴は、その特有の原子構造からもたらされる特性である電気的性質、磁気的性質、化学的性質、機械的性質に広く現れており、化学的性質に関しては、優れた耐食性を備えている。また機械的性質に関しては、高硬度、高強度でありながらも靭性を備えていることにある。
《適量の水素を含むこと》
本発明の電析めっき皮膜は非晶質合金であるから、上記のような様々な特性を備えているが、単に非晶質であるというだけでは金属バリを生じない良好な切削加工性を備えることはできない。そこで、本発明の電析めっき皮膜は適量の水素(0.3〜3.0原子%)を含むことを特徴としている。
一般に金属材料が水素を含有(吸蔵)すると、金属材料種によっては、吸蔵水素の影響で脆化する現象である、いわゆる水素脆性が知られており、一部のステンレス鋼や高炭素鋼などで水素脆性破壊が問題となることは一般にも良く知られている。水素に起因する脆性破壊の形態は、使用中の構造体に突然破壊を誘発するので遅れ破壊とも呼ばれている。金属材料が脆化するメカニズムとして様々な説が提案されており、例えば、結合力や表面エネルギーの低下、気泡内ガス圧、水素化物形成などがその原因として挙げられている。しかし、水素脆性破壊に関して統一されたメカニズム解明には至っていない。その原因としては、水素は原子番号が一番小さく、金属中へ容易に侵入し、著しく速く拡散して破壊直後に材料から放出されてしまうので、それを実証するのが困難なことが挙げられる。水素が金属材料の中に侵入し、金属材料の強度を著しく弱めることが知られている以上、水素脆性破壊を防止するには水素が金属材料中に侵入しないようにすること、または水素が侵入しても影響が少ない金属材料を開発することが一般の技術常識であると言える。
ところが、本発明者は、この技術常識を覆す驚くべき知見を得たのである。すなわち多量の水素を金属材料中に含有すると材料強度が著しく低下し、破壊し易くなるという一般常識に反して、逆に靭性を保持した状態で優れた切削加工特性を示すことが分かったのである。すなわち、本発明の電析めっき皮膜は、非晶質且つ高硬度であり、通常想定される以上の異常に多量の水素を含有しているという事実にも関わらず、切削試験では極めて切削加工性に優れた材料で、高強度でありながらも可撓性を示すという特性を備えている。これは本発明の電析めっき皮膜が、0.3〜3.0原子%の水素を含むことによって、適切な材料強度と切削加工性とを具備していることを示しているのである。図1は、本発明の電析めっき皮膜をダイヤモンドバイトにより切削加工したときに生じる切削片を走査電子顕微鏡写真(300倍)で観察したものである。図1に示した切削片は、極めて薄い切り屑であるにも関わらず、切削途中で破砕することなく連続しており、柔軟且つ延性の大きい、可撓性のある材料であることを示すものである。
《離型性に優れていること》
ニッケルを主成分として、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含む電析めっき皮膜は、切削加工性に優れており、その表面に高精度彫刻加工が施され、光学用途の樹脂製品やフィルム製品の成形用金型や成形用型ロール材料として使用される。光学用途の樹脂製品やフィルム製品の高精度彫刻は、10nm〜100μmの凹凸形状で、極めて高い寸法精度や形状精度が要求されている。ニッケルを主成分として、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含む電析めっき皮膜は、非晶質でありながら、高硬度で延性も備えているが、活性がやや高いことから、樹脂成形用金型やフィルム成形用型ロールなどとして使用するときに、成形する樹脂種やその成形圧力や成形温度等のいかんによって、成形された樹脂やフィルムの転写性や離型性に不都合が生じることがある。そこで、ニッケルを主成分とし、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含み、その他に不可避的不純物を含む非晶質の電析めっき皮膜の表面に高精密彫刻加工を施した後、化学的に安定な材料からなる被覆層を設けることにより、転写性や離型性を改善することができるのである。この被覆層としては、Cr、DLC、TiNなどの薄膜を使用することができる。また、高精度彫刻加工や寸法精度、形状精度などを満足できれば、ナノダイヤモンド被覆層も用いることができる。さらに、炭化物、窒化物、酸化物及びその化合物からなるセラミックスは、ニッケルめっき皮膜より化学的に安定であり、それら物質の薄膜形成法もよく知られているので、被覆層として使用することができる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更や修正が可能であることは言うまでもない。
(1)実施例
硫酸ニッケル190g/リットル、亜リン酸50g/リットル、ホウ酸35g/リットル、クエン酸15g/リットル、塩化ナトリウム1g/リットルの組成のニッケル−リン合金めっき浴を調製し、白金被覆チタン材を陽極として、浴温度50℃、電流密度2.5A/mを固定的な条件として、金型用材料としての使用例の多いスタバックス鋼(クロム合金ステンレス工具鋼、C:Si:Mn:Cr=0.38:0.8:0.5:13.6)からなる基材表面に、200μmの厚みの電気ニッケル−リン合金めっき皮膜を形成した。この皮膜の水素含有量は0.7原子%、リン含有量は13重量%であった(残部はニッケル)。そして、この電気ニッケル−リン合金めっき皮膜表面に高精度彫刻加工を施すために、4軸制御超精密加工機(東芝社製の商品名ULG-100D(SH3))を用い、単結晶ダイヤモンド工具にて、深さが20μmで幅が20μmである断面がV溝の切削加工を、電気ニッケル−リン合金めっき皮膜表面の縦方向が100mmで横方向が100mmである範囲に複数本施した。
なお、限定されるものではないが、電気ニッケル−リン合金めっき皮膜の厚みは、20μm〜10mmとすることができる。
ここで、皮膜中のリン含有量は、エネルギー分散型X線分光法により定量分析した。また、水素含有量は、皮膜の一部を不活性ガス中の黒鉛坩堝で通電溶融し、発生したガスから水素を抽出し、熱伝導測定式ガスクロマトグラフにて定量分析した。
上記のように、高精度彫刻加工を施した電気ニッケル−リン合金めっき皮膜表面に、標準的なサージェント浴(クロム酸250g/リットル、硫酸2.5g/リットル)を用い、温度50℃、電流密度40A/dmの条件で、膜厚1.0μmのCrめっき皮膜を被覆してなる本発明の試験片1の射出成形用金型を得た。また、水素93mol%、メタン7mol%のプラズマ雰囲気にて、高精度彫刻加工を施した電気ニッケル−リン合金めっき皮膜表面に膜厚0.5μmのDLCを被覆してなる本発明の試験片2の射出成形用金型を得た。さらに、アークイオンプレーティング法により、バイアス50Vの条件で、高精度彫刻加工を施した電気ニッケル−リン合金めっき皮膜表面に膜厚1.2μmのTiNを被覆してなる本発明の試験片3の射出成形用金型を得た。そして、高精度彫刻加工を施した電気ニッケル−リン合金めっき皮膜表面に被覆層を施していない射出成形用金型を比較例とした。
被覆層を有する本発明の試験片1〜3の射出成形用金型と、被覆層のない比較例の射出成形用金型とを用いて、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製の商品名「HL-4000」)の射出成形試験を実施し、離型性を評価した。射出成形機としては、ファナック製射出成形機(商品名「Roboshot2000i 100B」)を用い、射出条件は、成形温度310℃、金型温度105℃、充填時間0.7秒、保圧時間2.0秒、冷却時間20秒、型締力1000kNとした。離型性の評価は、射出成形によって得た樹脂製品表面の凹凸形状を、500ショット毎にレーザー顕微鏡で寸法および形状を測定し、深さが20μmで幅が20μmである断面がV溝の形状の深さおよび/または幅の寸法に±2μmを超える異常が発見されたときを寿命に達したと判断した。その結果を以下の表1に示す。
表1に示すように、比較例は1500ショットでV溝底に樹脂の溶着が見られ、寸法精度が悪化したので寿命に達したと判断した。一方、本発明の試験片1〜3は比較例に比して長寿命を示した。
本発明の金型、型ロールおよび剥離電鋳品は、集光型太陽光発電に使用されるフレネルレンズ用金型、光学用マイクロレンズ用金型、液晶用偏光フィルター加工用型ロールなどを初めとし、諸々の超精密加工金型など、高精密彫刻加工の超微細な加工が必要とされる用途に好適である。

Claims (2)

  1. 金属基材表面に、ニッケルを主成分とし、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含み、その他に不可避的不純物を含む非晶質の20μm〜10mmの厚みの電気ニッケル−リン合金めっき皮膜を形成し、当該皮膜表面に高精密彫刻加工を施した後、さらに、その表面に10μm以下の厚みのCr、DLCまたはTiNを被覆してなる金型または型ロール。
  2. ニッケルを主成分とし、10〜20重量%のリンを含有し、且つ0.3〜3.0原子%の水素を含み、その他に不可避的不純物を含む非晶質の20μm〜10mmの厚みの電気ニッケル−リン合金めっき皮膜を形成し、当該皮膜表面に高精密彫刻加工を施した後、さらに、その表面に10μm以下の厚みのCr、DLCまたはTiNを被覆してなる剥離電鋳品。
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