JP2001342591A - 高強度合金及びその製造方法並びにその高強度合金を被覆してなる金属とその高強度合金を用いたマイクロ構造体 - Google Patents

高強度合金及びその製造方法並びにその高強度合金を被覆してなる金属とその高強度合金を用いたマイクロ構造体

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JP2001342591A
JP2001342591A JP2001085311A JP2001085311A JP2001342591A JP 2001342591 A JP2001342591 A JP 2001342591A JP 2001085311 A JP2001085311 A JP 2001085311A JP 2001085311 A JP2001085311 A JP 2001085311A JP 2001342591 A JP2001342591 A JP 2001342591A
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mol
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electrolytic
strength alloy
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Takayasu Mochizuki
孝晏 望月
Toru Yamazaki
徹 山崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 マイクロ構造体用材料として好適に用いるこ
とのできる、十分な靱性を備えた高強度合金及びその製
造方法並びにその高強度合金を用いたマイクロ構造体を
提供すること 【解決手段】 NiイオンまたはCoイオンとWイオン
またはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの範
囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオ
ンの含有比率が20〜40%の範囲にある組成の電解浴
を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の電解条件を
適用することにより、マイクロ構造体用材料として好適
な高強度合金を製造する方法及びその方法により製造し
た高強度合金並びにその高強度合金を用いたマイクロ構
造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】電解
析出合金は、基板となる素材に耐食性・耐摩耗性等の機
能を付与させることを目的に、主として表面被覆材料と
して利用されてきた。しかしながら、近年になって、L
IGAプロセス(ドイツのカールスルーエ研究センター
において開発された、放射光を利用したリソグラフィ
ー、電解析出および金型成形を組み合わせたマイクロ成
形技術)に代表されるように、主として電解析出合金を
用いた複雑なマイクロ構造体の作製技術の開発が進めら
れている。
【0003】さらに、半導体集積回路の技術開発ととも
に電子機器もますます高密度化、多機能化が求められて
いる。特に、携帯電子機器では、電子部品の実装密度は
100μm以下の配線密度のものが必要とされている。
これらの微小な電子回路の部品の補修、交換または機能
拡張のための手段として、半田付けによる接続方法は、
作業が極めて困難で、しかも、周辺の基板に許容されな
い熱影響を与える可能性がある。この問題を解消するた
めに、上記マイクロ構造体を利用したコネクタが提供さ
れている。しかし、これまでマイクロ構造体に利用され
ている金属材料は、ニッケル、銅、金などの電解析出の
容易な軟質材料に限定されており、これら材料はマイク
ロ金型材料や、駆動摺動機能を必要とするマイクロ部品
用材料として利用するには軟らかすぎるという問題があ
り、構造材料としての十分な強度と靱性を備えていな
い。
【0004】一方、Ni−P系合金を代表とする硬質電
解析出合金も各種提案されているが、いずれの合金も非
常に脆く、マイクロ構造体用材料として利用することは
できない。
【0005】本発明は従来の技術の有するこのような問
題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、マイ
クロ構造体用材料として好適に用いることのできる、十
分な靱性を備えた高強度合金及びその製造方法並びにそ
の高強度合金を用いたマイクロ構造体を提供することに
ある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、特定量のNiイオンもしくはCoイオン
とWイオンもしくはMoイオンを含む水溶液、又は特定
量のFeイオンとWイオンもしくはMoイオンを含む水
溶液中に、金属錯化剤としてクエン酸イオンとアンモニ
ウムイオンを添加した電解水溶液を用いることとしてい
る。このような特定組成の電解水溶液中では、陰極基板
への水素の共析が抑制され、高い電解析出効率の下で電
解析出された、超微細な結晶粒組織もしくは非晶質組織
を有する高強度のNi−W、Ni−Mo、Co−W、C
o−Mo、Fe−WまたはFe−Mo合金を提供するこ
とができる。
【0007】
【発明の実施の形態】すなわち、本発明は、以下の第一
〜第三十七の発明より構成されている。 (1)本発明は、NiイオンまたはCoイオンとWイオ
ンまたはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/L
(リットル)の範囲で、全金属イオンに対するNiイオ
ンまたはCoイオンの含有比率が20〜40%の範囲に
ある組成の電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解
析出させることを特徴とする高強度合金の製造方法を第
一の発明とし、その製造方法により得た高強度合金を第
十五の発明とする。
【0008】本発明における数値限定理由は、以下に説
明するとおりである。 (イ)電解浴の浴温が40℃未満であるか、または80
℃を超える場合、金属原子の電解析出効率が下がり、陰
極板上で水素元素が発生しやすくなり、得られた合金は
水素脆化により高強度を示さなくなる。 (ロ)NiイオンまたはCoイオンとWイオンまたはM
oイオンの総和が0.1モル/L未満であると、金属イ
オン濃度が過小であることにより、電解析出速度が低す
ぎて一定以上の厚さ(例えば、LIGAプロセスの場
合、100μm以上の厚さ)の合金膜の形成が困難にな
り、また、焼きつき現象が見られるので好ましくない。
一方、NiイオンまたはCoイオンとWイオンまたはM
oイオンの総和が0.3モル/Lを超えると、電解析出
合金の引っ張り残留応力が増大し、激しい脆化状態を呈
するので好ましくない。 (ハ)全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオ
ンの含有比率が20%未満では、金属イオン濃度が過小
であることにより、電解析出速度が低すぎて一定以上の
厚さ(例えば、LIGAプロセスの場合、100μm以
上の厚さ)の合金膜の形成が困難になり、また、焼きつ
き現象が見られるので好ましくない。一方、全金属イオ
ンに対するNiイオンまたはCoイオンの含有比率が4
0%を超えると、電解析出合金の引っ張り残留応力が増
大し、激しい脆化状態を呈するので好ましくない。 (2)NiイオンまたはCoイオンとWイオンまたはM
oイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの範囲で、全
金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオンの含有
比率が20〜40%の範囲にある組成を有するととも
に、クエン酸イオンの濃度(Citモル/L)とWイオン
またはMoイオンの濃度(WまたはMoモル/L)なら
びに浴温(T℃)との間に以下のような関係がある電解
浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出させること
を特徴とする高強度合金の製造方法を第二の発明とし、
その製造方法により得た高強度合金を第十六の発明とす
る。
【0009】Cit=(WまたはMo)×{1+0.07
(T−40)}±0.1 本発明における電解浴の浴温の数値限定理由、Niイオ
ンまたはCoイオンとWイオンまたはMoイオンの総和
の数値限定理由および全金属イオンに対するNiイオン
またはCoイオンの含有比率の限定理由は上記イ、ロ、
ハのとおりであり、上記関係式を規定する理由は下記ニ
のとおりである。 (ニ)Cit>(WまたはMo)×{1+0.07(T−
40)}+0.1であるか、又はCit<(WまたはM
o)×{1+0.07(T−40)}−0.1であれ
ば、金属原子の電解析出効率が下がり、陰極板上で水素
元素が発生しやすくなり、得られた合金は水素脆化によ
り高強度を示さなくなる。
【0010】従って、(WまたはMo)×{1+0.0
7(T−40)}=F(W、Mo、T)と表した場合、
F(W、Mo、T)−0.1≦Cit≦F(W、Mo、
T)+0.1であるのが好ましい。本明細書において、
Cit=(WまたはMo)×{1+0.07(T−4
0)}±0.1は、F(W、Mo、T)−0.1≦Cit
≦F(W、Mo、T)+0.1と同義である。 (3)NiイオンまたはCoイオンとWイオンまたはM
oイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの範囲で、全
金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオンの含有
比率が20〜40%の範囲にある組成を有するととも
に、クエン酸イオンの濃度(Citモル/L)とWイオン
またはMoイオンの濃度(WまたはMoモル/L)と浴
温(T℃)との間に以下のような関係があり、且つアン
モニウムイオンの濃度(モル/L)が全金属イオンの濃
度の2〜3倍である組成の電解浴を用いて、40〜80
℃の浴温で電解析出させることを特徴とする高強度合金
の製造方法を第三の発明とし、その製造方法により得た
高強度合金を第十七の発明とする。
【0011】Cit=(WまたはMo)×{1+0.07
(T−40)}±0.1 本発明における電解浴の浴温の数値限定理由、Niイオ
ンまたはCoイオンとWイオンまたはMoイオンの総和
の数値限定理由、全金属イオンに対するNiイオンまた
はCoイオンの含有比率の限定理由および上記関係式を
規定する理由は上記イ、ロ、ハ、ニのとおりであり、全
金属イオンの濃度に対するアンモニウムイオン濃度の比
率限定理由は下記ホのとおりである。 (ホ)アンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全金属
イオンの濃度の2倍未満では、電解析出速度が著しく低
下し、実質的に合金膜の形成が不可能になる。一方、ア
ンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全金属イオンの
濃度の3倍を超えると、電解析出合金の表面が焼きつき
状態になり好ましくない。 (4)FeイオンとWイオンまたはMoイオンの総和が
0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオンに対す
るFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲にある組
成の電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出さ
せることを特徴とする高強度合金の製造方法を第四の発
明とし、その製造方法により得た高強度合金を第十八の
発明とする。
【0012】本発明における電解浴の浴温の数値限定理
由、FeイオンとWイオンまたはMoイオンの総和の数
値限定理由および全金属イオンに対するFeイオンの含
有比率の限定理由は、イオンの総和濃度0.3モル/L
を0.5モル/Lと読み替え且つNiまたはCoをFe
と読み替えた上記イ、ロ、ハと同様の理由である。 (5)FeイオンとWイオンまたはMoイオンの総和が
0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオンに対す
るFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲にある組
成を有するとともに、クエン酸イオンの濃度(Citモル
/L)とWイオンまたはMoイオンの濃度(WまたはM
oモル/L)との間に以下のような関係がある電解浴を
用いて、40〜80℃の浴温で電解析出させることを特
徴とする高強度合金の製造方法を第五の発明とし、その
製造方法により得た高強度合金を第十九の発明とする。
【0013】Cit=WまたはMo±0.1 本発明における電解浴の浴温の数値限定理由、Feイオ
ンとWイオンまたはMoイオンの総和の数値限定理由お
よび全金属イオンに対するFeイオンの含有比率の限定
理由は、イオンの総和濃度0.3モル/Lを0.5モル
/Lと読み替え且つNiまたはCoをFeと読み替えた
上記イ、ロ、ハと同様の理由であり、上記関係式を規定
する理由は下記ヘのとおりである。 (ヘ)Cit>(WまたはMo)+0.1であるか、又は
Cit<(WまたはMo)−0.1であれば、金属原子の
電解析出効率が下がり、陰極板上で水素元素が発生しや
すくなり、得られた合金は水素脆化により高強度を示さ
なくなる。
【0014】従って、(WまたはMo)−0.1≦Cit
≦(WまたはMo)+0.1であるのが好ましい。
【0015】本明細書において、Cit=(WまたはM
o)±0.1は、(WまたはMo)−0.1≦Cit≦
(WまたはMo)+0.1と同義である。 (6)FeイオンとWイオンまたはMoイオンの総和が
0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオンに対す
るFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲にあっ
て、クエン酸イオンの濃度が0.20〜0.25モル/
Lである組成の電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で
電解析出させることを特徴とする高強度合金の製造方法
を第六の発明とし、その製造方法により得た高強度合金
を第二十の発明とする。
【0016】本発明における電解浴の浴温の数値限定理
由、FeイオンとWイオンまたはMoイオンの総和の数
値限定理由および全金属イオンに対するFeイオンの含
有比率の限定理由は、イオンの総和濃度0.3モル/L
を0.5モル/Lと読み替え且つNiまたはCoをFe
と読み替えた上記イ、ロ、ハと同様の理由であり、クエ
ン酸イオン濃度の数値限定理由は下記トのとおりであ
る。 (ト)クエン酸イオンの濃度が0.20モル/L未満で
あるか、または0.25モル/Lを超えると、金属原子
の電解析出効率が下がり、陰極板上で水素原子が発生し
やすくなり、得られた合金は水素脆化により高強度を示
さなくなる。 (7)FeイオンとWイオンまたはMoイオンの総和が
0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオンに対す
るFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲にある組
成を有するとともに、クエン酸イオンの濃度(Citモル
/L)とWイオンまたはMoイオンの濃度(WまたはM
oモル/L)との間に以下のような関係があり、且つア
ンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全金属イオンの
濃度の1〜3倍である組成の電解浴を用いて、40〜8
0℃の浴温で電解析出させることを特徴とする高強度合
金の製造方法を第七の発明とし、その製造方法により得
た高強度合金を第二十一の発明とする。
【0017】Cit=WまたはMo±0.1 本発明における電解浴の浴温の数値限定理由、Feイオ
ンとWイオンまたはMoイオンの総和の数値限定理由、
全金属イオンに対するFeイオンの含有比率の限定理由
および上記関係式を規定する理由は、イオンの総和濃度
0.3モル/Lを0.5モル/Lと読み替え且つNiま
たはCoをFeと読み替えた上記イ、ロ、ハ、ヘと同様
の理由であり、全金属イオンの濃度に対するアンモニウ
ムイオン濃度の比率限定理由は下記チのとおりである。 (チ)アンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全金属
イオンの濃度の1倍未満では、電解析出速度が著しく低
下し、実質的に合金膜の形成が不可能になる。一方、ア
ンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全金属イオンの
濃度の3倍を超えると、電解析出合金の表面が焼きつき
状態になり好ましくない。 (8)FeイオンとWイオンまたはMoイオンの総和が
0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオンに対す
るFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲にあっ
て、クエン酸イオンの濃度が0.20〜0.25モル/
Lである組成を有し、且つアンモニウムイオンの濃度
(モル/L)が全金属イオンの濃度の1〜3倍である組
成の電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出さ
せることを特徴とする高強度合金の製造方法を第八の発
明とし、その製造方法により得た高強度合金を第二十二
の発明とする。
【0018】本発明における電解浴の浴温の数値限定理
由、FeイオンとWイオンまたはMoイオンの総和の数
値限定理由および全金属イオンに対するFeイオンの含
有比率の限定理由は、イオンの総和濃度0.3モル/L
を0.5モル/Lと読み替え且つNiまたはCoをFe
と読み替えた上記イ、ロ、ハと同様の理由であり、クエ
ン酸イオン濃度の数値限定理由および全金属イオンの濃
度に対するアンモニウムイオン濃度の比率限定理由は、
上記ト、チのとおりである。 (9)上記の高強度合金の製造方法では、電解浴の浴温
は40〜80℃であって、やや高い。その浴温を維持す
るためには、適正な方式および容量の熱源が必要であ
り、設備コストおよび操業継続のためのランニングコス
トが上昇することは否めない。そこで、電解浴温を低く
し、しかも、析出速度を減少させることなく効率よく電
解析出膜を形成し、高靱性で高強度の合金を得ることが
できれば、コスト低下によるメリットは大きい。一般的
に、クエン酸イオンの濃度が増えると、金属錯化剤の過
剰という理由により、電解析出効率が低下し、高靱性を
示す点は高温の浴温側に移行すると考えられる。そこ
で、低浴温において、高靱性の合金を得るためには、ク
エン酸イオンの濃度を減少させることが好ましい。
【0019】すなわち、NiイオンまたはCoイオンと
WイオンまたはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル
/Lの範囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたは
Coイオンの含有比率が30〜50%の範囲にある組成
を有するとともに、クエン酸イオンの濃度が0.12〜
0.16モル/Lである組成の電解浴を用いて、クエン
酸素イオンの濃度がWイオンまたはMoイオンの濃度よ
り多くなるように、20〜40℃の浴温で電解析出させ
ることを特徴とする高強度合金の製造方法を第九の発明
とし、その製造方法により得た高強度合金を第二十三の
発明とする。
【0020】本発明におけるNiイオンまたはCoイオ
ンとWイオンまたはMoイオンの総和の数値限定理由は
上記ロのとおりであり、全金属イオンに対するNiイオ
ンまたはCoイオンの含有比率の限定理由、クエン酸イ
オン濃度の数値限定理由および電解浴の浴温の数値限定
理由は下記リのとおりである。 (リ)全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオ
ンの含有比率が30%未満では、金属イオン濃度が低く
て電解析出速度が遅いので、一定以上の厚さ(例えば、
LIGAプロセスの場合、100μm以上の厚さ)の合
金膜の形成が困難になることがあり、また、焼き付き現
象が見られることがあるので好ましくない。
【0021】一方、全金属イオンに対するNiイオンま
たはCoイオンの含有比率が50%を超えると、電解析
出合金の引っ張り残留応力が増大し、激しい脆化状態を
呈するので好ましくない。
【0022】この場合、電解浴温が40℃以上である
か、またはクエン酸イオンの濃度が0.20モル/L以
上であれば、全金属イオンに対するNiイオンまたはC
oイオンの含有比率は40%以下にすべきであるが、電
解浴温を40℃以下にすることにより引張残留応力の減
少という効果が発揮され、クエン酸イオンの濃度を0.
16モル/L以下にすることにより高靱性を示す浴温の
低下という効果が発揮される。そこで、Niイオンまた
はCoイオンの含有比率の上限を50%とすることがで
きるのである。
【0023】クエン酸イオンの濃度を0.16モル/L
以下にすることにより、高靱性を示す浴温の低下という
理由により、40℃以下の低い浴温においても、電解析
出効率を低下させることなく、高靱性の合金を得ること
が可能である。しかし、クエン酸イオンの濃度が0.1
2モル/L未満であるか、または電解浴温が20℃未満
であると、金属原子の電解析出効率が下がり、陰極板上
で水素元素が発生しやすくなり、得られた合金は水素脆
化により高強度を示さなくなる。
【0024】なお、クエン酸イオンの濃度がWイオンま
たはMoイオンの濃度より少なくなると、金属錯化剤の
不足という理由により、浴分解が生じて電解析出操作が
できなくなるので、クエン酸イオンの濃度がWイオンま
たはMoイオンの濃度より多いことが好ましい。 (10)上記第一、第二、第三、第四、第五、第六、第
七、第八または第九の発明において、電解析出に引き続
いてベーキングを施すことを特徴とする高強度合金の製
造方法を第十の発明とし、その製造方法により得た高強
度合金を第二十四の発明とする。本発明によれば、ベー
キングを施すことにより、電解析出に伴って生成する共
析水素を放出し(以下「ベーキング効果」という)、水
素脆化を防止しうるので強度向上を図ることができる。 (11)上記第十の発明において、ベーキング温度が5
0℃未満では、ベーキング効果が十分でなく、200℃
を超えても、ベーキング効果は向上せず、余分な熱エネ
ルギーを必要とするので経済的に不利である。そこで、
電解析出に引き続いて50〜200℃に加熱することに
より(第十一の発明)、効率的にベーキング効果を享受
し、超高強度合金(第二十五の発明)を提供することが
できる。 (12)上記第一、第二、第三、第四、第五、第六、第
七、第八または第九の発明において、電解析出に引き続
いてアニーリングを施すことを特徴とする高強度合金の
製造方法を第十二の発明とし、その製造方法により得た
高強度合金を第二十六の発明とする。本発明によれば、
アニーリングを施すことにより、電解析出に伴う内部歪
みを除去して、強度向上を図ることができる。 (13)上記第十二の発明におけるアニーリング温度と
して、Ni(またはCo)−W(またはMo)系合金の
場合、400℃未満では内部歪みの除去効果が十分でな
く、600℃を超えると、結晶粒が粗大になる可能性が
あるので好ましくない。そこで、Ni(またはCo)−
W(またはMo)系合金の場合、電解析出に引き続いて
400〜600℃に加熱することにより(第十三の発
明)、超高強度合金(第二十七の発明)を提供すること
ができる。 (14)上記第十二の発明におけるアニーリング温度と
して、Fe−W(またはMo)系合金の場合、400℃
未満では内部歪みの除去効果が十分でなく、800℃を
超えると、結晶粒が粗大になる可能性があるので好まし
くない。そこで、Fe−W(またはMo)系合金の場
合、電解析出に引き続いて400〜800℃に加熱する
ことにより(第十四の発明)、超高強度合金(第二十八
の発明)を提供することができる。 (15)上記第十五、第十六、第十七、第十八、第十
九、第二十、第二十一、第二十二、第二十三、第二十
四、第二十五、第二十六、第二十七または第二十八の発
明において、アモルファス構造または平均結晶粒径が1
00nm以下のナノ結晶構造である高強度合金を第二十
九の発明とする。アモルファス構造または平均結晶粒径
が100nm以下のナノ結晶構造であれば、飛躍的に強
度向上を図ることができる。 (16)WまたはMoを8〜30原子%含有して残部が
NiまたはCoよりなるとともに、水素含有量が1.0
0原子%以下で且つ酸素含有量が0.50原子%以下で
ある組成のものを電解析出してなる高強度合金を第三十
の発明とする。
【0025】本発明における数値限定理由は以下に説明
するとおりである。すなわち、水素含有量が1.00原
子%以下であれば、いわゆる水素脆性を生じず、靱性を
改善することができる。この水素脆性の原因は、粒界に
おける水素化物の形成や、粒界に吸着した水素あるいは
塑性変形中に転位によって粒界に運ばれた水素による粒
界結合力の低下によるものであると言われているが、水
素と同時に酸素が存在する場合には、激しい水素割れが
発生する。というのは、電解析出中及び熱処理中に金属
原子に吸着した酸素が水素と安定な化合物を生じること
によって粒界面等における結合力を著しく低下させた
り、その結果として微小のクラックを生成させることに
よって、脱水素ガス後も脆化を避けることができないか
らである。この点で、酸素含有量を0.50原子%以下
にするのが好ましい。これら水素と酸素の存在による脆
化を避け、靱性を高めるためには、水素含有量は0.2
0原子%以下とし、酸素含有量は0.20原子%以下と
するのがさらに好ましい。
【0026】また、WまたはMoが30原子%を超える
高強度合金を得る場合、電解浴温度および電解電流密度
が高くなり、金属原子の電解析出効率が下がり、陰極板
上で水素原子が発生しやすくなり、得られた合金は水素
脆化により高強度を示さなくなる。WまたはMoが8原
子%未満の場合、WまたはMoが電解析出する前に、低
い電解電流密度でNiまたはCoが電解析出し、合金中
のWまたはMoの含有量が少なくなるので、高強度を確
保することができない。
【0027】そこで、WまたはMoを8〜30原子%含
有し、残部がNiまたはCoよりなり、水素含有量が
1.00原子%以下で且つ酸素含有量が0.50原子%
以下である組成のものを電解析出してなる合金は高強度
且つ高靱性を有する。 (17)WまたはMoを8〜30原子%含有して残部が
NiまたはCoよりなるとともに、水素含有量が1.0
0原子%以下で且つ酸素含有量が0.50原子%以下で
ある合金組成のものを被覆してなる金属を第三十一の発
明とする。
【0028】本明細書において、「被覆」とは「メッ
キ」と同義であり、電気メッキ、化学メッキ、溶融メッ
キなどを含む意である。上記特徴を有する高強度合金
を、例えば、電気製品の金属枠体や石油輸送金属パイプ
の内面などに被覆すれば、靱性が良好で高強度で耐食性
に優れた被覆層により、上記金属枠体や金属パイプの亀
裂や腐食を防止することができる。 (18)WまたはMoを20〜30原子%含有して残部
がFeよりなるとともに、水素含有量が1.00原子%
以下で且つ酸素含有量が1.00原子%以下である組成
のものを電解析出してなる高強度合金を第三十二の発明
とする。
【0029】本発明における水素含有量、酸素含有量お
よびWまたはMoの含有量の上限値の限定理由は上記し
たとおりである。WまたはMoが20原子%未満の場
合、WまたはMoが電解析出する前に、低い電解電流密
度でFeが電解析出し、合金中のWまたはMoの含有量
が少なくなるので、高強度を確保することができない。
【0030】そこで、WまたはMoを20〜30原子%
含有し、残部がFeよりなり、水素含有量が1.00原
子%以下で且つ酸素含有量が1.00原子%以下である
組成のものを電解析出してなる合金は高強度且つ高靱性
を有する。 (19)WまたはMoを20〜30原子%含有して残部
がFeよりなるとともに、水素含有量が1.00原子%
以下で且つ酸素含有量が1.00原子%以下である合金
組成のものを被覆してなる金属を第三十三の発明とす
る。上記特徴を有する高強度合金を、例えば、電気製品
の金属枠体や石油輸送金属パイプの内面などに被覆すれ
ば、靱性が良好で高強度で耐食性に優れた被覆層によ
り、上記金属枠体や金属パイプの亀裂や腐食を防止する
ことができる (20)上記第三十または第三十二の発明において、電
解析出に引き続いてベーキングを施すことにより得た高
強度合金を第三十四の発明とする。本発明によれば、ベ
ーキングを施すことにより、電解析出に伴って生成する
共析水素を放出し(以下「ベーキング効果」という)、
水素脆化を防止しうるので強度向上を図ることができ
る。 (21)上記三十四の発明において、ベーキング温度が
50〜200℃であることを特徴とする高強度合金を第
三十五の発明とする。ベーキング温度が50℃未満で
は、ベーキング効果が十分でなく、200℃を超えて
も、ベーキング効果は向上せず、余分なエネルギーを必
要とするので経済的に不利である。そこで、電解析出に
引き続いて50〜200℃に加熱することにより、効率
的にベーキング効果を享受し、超高強度合金を得ること
ができる。しかし、そのベーキング時間が長くなると、
合金中の酸素と水素の化合物の生成反応の進行及び雰囲
気からの酸素の侵入という理由により脆化することがあ
るので、ベーキング時間は、Feをベースとする合金系
では1〜3時間とするのが好ましく、1.5〜2.5時
間とするのがさらに好ましい。鉄と水素の結合力よりニ
ッケルと水素の結合力の方が強いので、Niをベースと
する合金系のベーキング時間は、鉄をベースとする合金
系のベーキング時間より長くするのが好ましい。 (22)WまたはMoを8〜20原子%含有して残部が
NiまたはCoよりなる高強度合金を用いたマイクロ構
造体を第三十六の発明とする。かかる合金を用いること
により、マイクロ部品用材料として好適の高強度のマイ
クロ構造体を提供することができる。 (23)WまたはMoを20〜30原子%含有して残部
がFeよりなる高強度合金を用いたマイクロ構造体を第
三十七の発明とする。かかる合金を用いることにより、
マイクロ部品用材料として好適の高強度のマイクロ構造
体を提供することができる。
【0031】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。 1.Ni−W系合金の作製 (1)電解浴の組成が下記のAの場合 電解浴の組成が、濃度0.06モル/Lの硫酸ニッケル
(NiSO4)と、 濃度を0.14〜0.5モル/Lの
範囲で変化させたクエン酸ナトリウム(Na3 657
−2H2O)と、濃度0.14モル/Lのタングステン
酸ナトリウム(Na2WO4−2H2O )と、濃度0.5
モル/Lの塩化アンモニウム(NH4Cl)を主成分と
する組成Aの場合において、0.5mm×30mm×40mm
の大きさの白金製陽極板と0.2mm×30mm×40mmの
大きさの銅製陰極板を用いて電解を行った。また、電解
電流密度は、5〜20A/dm2 の範囲で変化させ、こ
れにより合金のW含有量を変化させた。なお、銅製陰極
板の片面にフロンマスクを塗布し、マスクのない片面に
のみ合金を析出させた。また、銅製陰極板には前処理と
してリン酸:水=2:1の溶液を用いて電解研磨処理を
施した。また、電解析出中は、ホットスターラーを用い
て電解浴を常時撹拌して以下に示す各実験中のそれぞれ
の浴温が一定になるようにし、同時にpHコントローラ
ーを用いて電解析出中のpHを一定(約7.4〜7.
5)に保持した。また、電解析出時間は、0.5時間と
した。
【0032】電解析出後、銅製陰極板(以下、銅板とも
いう)は、クロム酸−硫酸混合水溶液(クロム酸250
g/Lと硫酸15cc/Lの混合液)で溶解除去するこ
とにより、Ni−W合金のみを銅板上に残留させた。
【0033】以下に、実験結果について順次説明する。 (a)電解浴組成がAの場合における浴温と合金の析出
速度 電解浴の浴温を20〜90℃の範囲で変化させたときの
浴温(℃)と電解析出速度(mg/cm2hr)との関係を図
1に示す。このときの電解電流密度は5A/dm2 であ
った。図1において、符号「△」「●」「○」はそれぞ
れ、クエン酸ナトリウムの濃度が0.50モル/L、
0.25モル/L、0.14モル/Lを示す。電解析出
速度は、電解析出前後の銅板の重量差より銅板1cm2
上に析出した1時間当たりの重量(mg)を算出した。
【0034】各符号において、記号tで指したものは、
完全密着曲げ後も破断しない「高靱性」のものであるこ
とを示す。靱性を評価するための曲げ試験は、図2に示
すように、透明な石英製平板1、1の間に、厚さdの試
験片(Ni−W系合金を電解析出させた銅製陰極板)2
を折り曲げるようにして挟み、平板1、1を密着させる
ように互いに接近させるようにして行い、試験片2が破
断したときの平板1、1間の間隔Lをマイクロメーター
により測定し、湾曲した試験片2の中心の歪み量をゼロ
とすると、湾曲した試験片の表面の歪みεは、ε=d/
(L−d)となるので(以下「εの式」という)、この
εの値により靱性を評価した。「完全密着曲げ後も破断
しない」とは、上側の平板1に当接する試験片と下側の
平板1に当接する試験片が破断せずに完全に密着した状
態にあることをいい、このとき、L=2dで、ε=1.
0となる。
【0035】すなわち、Ni−W系合金においては、ク
エン酸ナトリウムの濃度が0.5モル/Lのときは浴温
が75℃、クエン酸ナトリウムの濃度が0.25モル/
Lのときは浴温が60℃、クエン酸ナトリウムの濃度が
0.14モル/Lのときは浴温が40℃と50℃の条件
でそれぞれ電解析出させることによって、極めて靱性に
優れたNi−W系合金を得ることができる。
【0036】図1に明らかなように、クエン酸ナトリウ
ムの濃度が増えると、高靱性を示す点(記号tで指した
もの)は、より高温の浴温側に移行している。 (b)電解浴組成がAの場合における浴温と結晶粒径 図1に示すクエン酸ナトリウムの濃度が0.14モル/
Lの場合の浴温(℃)とNi−W系合金の平均結晶粒径
(×10-9m)との関係を図3に示し、図1に示すクエ
ン酸ナトリウムの濃度が0.25モル/Lの場合の浴温
(℃)とNi−W系合金の平均結晶粒径(×10-9m)
との関係を図4に示す。図3において、高靱性を示すも
の(記号tで指したもの)は、結晶粒径が約5.15×
10-9mおよび約7.0×10-9mであり、図4におい
て、高靱性を示すもの(記号tで指したもの)は、結晶
粒径が約6.1×10-9mであり、いずれも微細な結晶
である。なお、結晶粒径は、下記に説明する方法により
求めた。 (c)電解浴組成がAの場合における浴温とW含有量 図1に示すクエン酸ナトリウムの濃度が0.14モル/
Lの場合の浴温(℃)とNiーW系合金中のW含有量
(原子%)との関係を図5に示し、図1に示すクエン酸
ナトリウムの濃度が0.25モル/Lの場合の浴温
(℃)とNi−W系合金中のW含有量(原子%)との関
係を図6に示す。図5と図6から、高靱性を示すもの
(記号tで指したもの)のNi−W系合金のW含有量
は、約10〜12原子%である。なお、W含有量は、角
度分散型EPMA(X線マイクロアナライザ)分析装置
(日本電子データム株式会社製JXA−8900R)を
用い、ZAF補正による定量分析法により求めた。 (d)電解浴組成がAの場合におけるX線回折パターン 理学電気社製のX線回折測定装置(RINT−150
0)により、Ni−W系合金の構造の同定および結晶粒
径の算出を行った。測定条件は、40kV−200mA
とし、ターゲットにCu対陰極(Cu−Kα線)を使用
した。また、結晶粒径(cdia)は、回折ピークの半価
幅より、以下に示すシェーラーの式を用いて求めた。
【0037】cdia =0.9λ/(Bcosθ) な
お、λは波長(nm)、Bは半価幅(ラジアン)、θは
回折角(度)である。
【0038】図1に示すクエン酸ナトリウムの濃度が
0.14モル/Lの場合のNi−W系合金のX線回折パ
ターンを図7に示し、図1に示すクエン酸ナトリウムの
濃度が0.25モル/Lの場合のNi−W合金のX線回
折パターンを図8に示す。図7において、線a、b、
c、dの「浴温、合金中のW含有量、合金の平均結晶粒
径」は、それぞれ「40℃、10.6原子%、10.6
nm(ナノメーター)」、「50℃、12.3原子%、
5.2nm」、「60℃、15.1原子%、3.3n
m」、「70℃、12.8原子%、5.4nm」であ
る。同様に、図8において、線e、f、g、hの「浴
温、合金中のW含有量、合金の平均結晶粒径」は、それ
ぞれ「40℃、7.2原子%、9.9nm」、「50
℃、9.1原子%、8.0nm」、「60℃、11.7
原子%、6.3nm」、「70℃、9.4原子%、1
3.2nm」である。
【0039】図7より、W含有量が約12原子%以上
で、幅広いX線回折ピークを有するアモルファス構造を
示すことが分かる。図7および図8から、W含有量が約
15原子%以下では、平均結晶粒径が15×10-9m以
下のナノ結晶構造を示すことが分かる。 (2)電解浴の組成が下記のBの場合 電解浴の組成が、濃度を0.06〜0.12モル/Lの
範囲で変化させた硫酸ニッケルアンモニウム((N
42Ni(SO42−6H2O)と、 濃度を0.10
〜0.16モル/Lの範囲で変化させたクエン酸ナトリ
ウム(Na365 7−2H2 O)と、濃度を0.08
〜0.14モル/Lの範囲で変化させたタングステン酸
ナトリウム(Na2WO4−2H2O )と、濃度0.25
モル/Lの硫化アンモニウム((NH42SO4)と、
濃度0.15モル/Lの臭化ナトリウム(NaBr)を
主成分とする組成Bの場合において、0.1mm×30mm
×40mmの大きさの白金製陽極板と同じ大きさの銅製陰
極板を用いて電解を行った。また、電解電流密度は、5
A/dm2 とした。他の条件は、電解浴組成がAの場合
と同じである。
【0040】以下に、実験結果について順次説明する。 (a)電解浴組成がBの場合における浴温と合金の析出
速度 電解浴の浴温を10〜80℃の範囲で変化させたときの
浴温(℃)と電解析出速度(mg/cm2hr)との関係を図
9、図10に示す。このときのクエン酸ナトリウムの濃
度は0.14モル/Lであった。電解析出速度は、電解
析出前後の銅板の重量差より銅板1cm2 上に析出した
1時間当たりの重量(mg)を算出した。 図9におい
て、符号「○」「●」は、それぞれ、「濃度0.06モ
ル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度0.14モル
/Lのタングステン酸ナトリウムの組成を有する液」、
「濃度0.08モル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと
濃度0.12モル/Lのタングステン酸ナトリウムの組
成を有する液」を示し、図10において、符号「△」
「▲」は、それぞれ、「濃度0.10モル/Lの硫酸ニ
ッケルアンモニウムと濃度0.10モル/Lのタングス
テン酸ナトリウムの組成を有する液)」、「濃度0.1
2モル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度0.08
モル/Lのタングステン酸ナトリウムの組成を有する
液」を示す。
【0041】図9、図10に明らかなように、浴温が高
くなればなるほど合金の析出速度は上昇し、しかも、N
iイオンの含有量が増えるほど(全金属イオンに対する
Niイオンの比率が増えるほど)析出速度は上昇する
が、浴温が20℃でNiイオンが0.06モル/L(全
金属イオンに対するNiイオンの比率が30%)におい
ても、十分に実用に供しうる析出速度を示している。 (b)電解浴組成がBの場合におけるクエン酸ナトリウ
ムの濃度と合金の析出速度 電解浴の浴温が30℃または40℃において、クエン酸
ナトリウムの濃度を0.10〜0.16モル/Lの範囲
で変化させたときのクエン酸ナトリウムの濃度(モル/
L)と電解析出速度(mg/cm2hr)との関係を図11に
示す。電解析出速度は、同上方法により算出した。
【0042】図11において、符号「○」「●」は、そ
れぞれ、浴温が30℃において、「濃度0.10モル/
Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度0.10モル/L
のタングステン酸ナトリウムの組成を有する液」、「濃
度0.08モル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度
0.12モル/Lのタングステン酸ナトリウムの組成を
有する液」を示し、符号「△」「▲」は、それぞれ、浴
温が40℃において、「濃度0.10モル/Lの硫酸ニ
ッケルアンモニウムと濃度0.10モル/Lのタングス
テン酸ナトリウムの組成を有する液」、「濃度0.08
モル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度0.12モ
ル/Lのタングステン酸ナトリウムの組成を有する液」
を示す。
【0043】図11に明らかなように、クエン酸ナトリ
ウムの濃度が0.12モル/Lにおいて電解析出速度は
最も高くなっている。これは、金属イオン量に対して錯
化剤の量が最適であることによると考えられる。 (c)電解浴組成がBの場合におけるX線回折パターン 同上X線回折測定装置(RINT−1500)により、
Ni−W系合金の構造の同定および結晶粒径の算出を行
った。
【0044】図9に示す硫酸ニッケルアンモニウムの濃
度が0.08モル/Lである液のNi−W系合金のX線
回折パターンを図12に示し、「図9、図10におい
て、電解浴温度が30℃の場合における硫酸ニッケルア
ンモニウムの濃度が0.08モル/Lの液と0.10モ
ル/Lの液と0.12モル/Lの液のNi−W系合金の
X線回折パターン」を図13に示す。
【0045】図12において、線i、j、k、m、n、
pの「浴温、合金中のW含有量、合金の平均結晶粒径」
は、それぞれ「30℃、10.7原子%、10.5nm
(ナノメーター)」、「40℃、13.7原子%、9.
3nm」、「50℃、13.7原子%、9.3nm」
「60℃、15.4原子%、10.1nm」、「70
℃、15.9原子%、16.7nm」、「80℃、1
1.9原子%、25.5nm」である。図13におい
て、線q、r、sの「Niイオン濃度、合金中のW含有
量、合金の平均結晶粒径」は、それぞれ「0.08モル
/L、10.7原子%、10.5nm」「0.10モル
/L、12.2原子%、10.9nm」「0.12モル
/L、3.3原子%、13.4nm」である。
【0046】図12および図13より、以下の点が分か
る。すなわち、浴温が上昇するほど、また、Niイオン
濃度が増加するほど、結晶粒径が増大し、W含有量はN
i濃度が増加すると、大幅に低下することが分かる。 2.Fe−W系合金の作製 電解浴の組成は、Ni−W系合金作製の場合の濃度0.
06モル/Lの硫酸ニッケル(NiSO4) に代えて濃
度0.06モル/Lの硫酸アンモニウム鉄(Fe( N
4)(SO42−12H2O) を用いた以外は、Ni
−W系合金の電解浴の組成Aと同じ組成の浴(以下、組
成Cという)を用いた。また、白金製陽極板と銅製陰極
板もNi−W系合金の組成Aの電解の場合と同じであ
り、他の条件も電解浴組成がAの場合と同じである。以
下に、実験結果について順次説明する。 (1)電解浴組成がCの場合における浴温と合金の析出
速度 電解浴の浴温を50℃(323K)〜75℃(348
K)の範囲で変化させたときの浴温(K)と電解析出速
度(mg/cm2hr)との関係を図14に示す。このときの
電解電流密度は1.7A/dm2 であった。図14にお
いて、符号「○」「△」「●」はそれぞれ、クエン酸ナ
トリウムの濃度が0.3モル/L、0.25モル/L、
0.225モル/Lを示す。
【0047】電解析出速度は、電解析出前後の銅板の重
量差より銅板1cm2 上に析出した1時間当たりの重量
(mg)を算出した。
【0048】各符号において、記号tで指したものは、
完全密着曲げ後も破断しない「高靱性」のものであるこ
とを示す。すなわち、Fe−W系合金においては、0.
225〜0.3モル/Lの濃度のクエン酸ナトリウムに
おいては、浴温が323〜338k(50〜65℃)に
おいて、極めて靱性に富んだFe−W系合金を得ること
ができ、高靱性を示す浴温は、上記範囲のクエン酸ナト
リウムの濃度の影響を受けないことが分かる。 (2)電解浴組成がCの場合におけるクエン酸ナトリウ
ムの濃度と合金の析出速度 クエン酸ナトリウムの濃度を0.15〜0.33モル/
Lで変化させたときのクエン酸ナトリウムの濃度(モル
/L)と電解析出速度(mg/cm2hr)との関係を図15
に示す。このときの電解電流密度は1.7A/dm2
あった。図15において、符号「○」「●」「△」はそ
れぞれ、浴温が75℃(348K)、65℃(338
K)、55℃(328K)を示す。
【0049】電解析出速度は、同上方法により算出し
た。
【0050】各符号において、記号tで指したものは、
完全密着曲げ後も破断しない「高靱性」のものであるこ
とを示す。すなわち、Fe−W系合金においては、1.
7A/dm2 のような低電流密度では高靱性のものが得
られ、その靱性はクエン酸ナトリウムの濃度の影響を受
けやすく、浴温が55〜75℃においては、クエン酸ナ
トリウムの濃度が0.2〜0.25モル/Lにおいて、
極めて靱性に富んだFe−W系合金を得ることができ、
高靱性を示すクエン酸ナトリウムの濃度は、上記範囲の
浴温の影響を受けないことが分かる。 (3)電解浴組成がCの場合におけるX線回折パターン 同上X線回折測定装置(RINT−1500)により、
Fe−W系合金の構造の同定および結晶粒径の算出を行
った。
【0051】電解浴の浴温を55℃(328K)〜85
℃(358K)の範囲で変化させたときのFe−W系合
金のX線回折パターンを図16に示す。このときの電解
電流密度は1.7A/dm2 であり、クエン酸ナトリウ
ムの濃度は0.225モル/Lであった。図16におい
て、線t、u、v、w、x、y、zの「浴温、合金中の
W含有量」は、それぞれ「55℃、24.7原子%」、
「60℃、25.8原子%」、「65℃、26.9原子
%」、「70℃、27.0原子%」、「75℃、28.
6原子%」、「80℃、28.8原子%」、「85℃、
29.0原子%」である。これらの合金はいずれもアモ
ルファス構造であった。図16より、いずれの浴温にお
いても幅広いX線回折ピークを有するアモルファス構造
を示しているのが分かる。 3.Ni−W系合金およびFe−W系合金の機械的特性 (1)Ni−W系合金の機械的特性 イ 機械的特性 上記電解浴の組成Aにおいて、クエン酸ナトリウムの濃
度が0.5モル/Lで、電解浴の浴温が60〜90℃
(333〜363K)で、電解電流密度が20A/dm
2 の条件で、1時間電解析出を行うことによってW含有
量を変化させ、表1に示すような結果を得た。表1に明
らかなように、浴温が75℃(348K)のものは、マ
イクロビッカース硬さHVが685と高く、しかも、破
断歪み(εの式によるもの)が1.0、すなわち、完全
密着曲げ後も破断しない「超高靱性」の特性を示してい
る。また、浴温が80℃(353K)のものは、破断歪
み(εの式によるもの)が0.416であり、良好な靱
性を示している。
【0052】
【表1】
【0053】また、上記電解浴の組成Aにおいて、クエ
ン酸ナトリウムの濃度が0.14モル/Lで、電解浴の
浴温が30〜80℃(303〜353K)で、電解電流
密度が5A/dm2 の条件で、1時間電解析出を行うこ
とによってW含有量を変化させ、表2に示すような結果
を得た。表2に明らかなように、浴温が40℃(313
K)と50℃(323K)のものは、マイクロビッカー
ス硬さHVが696〜702と高く、しかも、破断歪み
(εの式によるもの)が1.0、すなわち、完全密着曲
げ後も破断しない「超高靱性」の特性を示している。
【0054】
【表2】
【0055】ロ 熱処理(合金形成後のベーキング)に
よる強度上昇 上記電解浴の組成Aにおいて、クエン酸ナトリウムの濃
度が0.5モル/Lで、電解浴の浴温が75℃で、電解
電流密度が10A/dm2または5A/dm2で、1〜4
時間電解析出を行うことによってNi−W合金層の厚さ
を変化させ、一部のものは、Ni−W合金形成後にAr
雰囲気で75℃(348K)で2時間加熱(ベーキン
グ)した後、炉冷することによって、電解析出に伴って
生成した水素を放出して強度向上を図り、表3に示すよ
うな結果を得た。表3に明らかなように、加熱前のNi
−W合金の引張り強度はすでに438〜583MPaと
高強度を示しているが、この合金を75℃(348K)
で2時間加熱することによって、745〜1047MP
aの超高強度化を達成することができた。
【0056】
【表3】
【0057】ハ 熱処理(合金形成後のアニーリング)
による強度上昇(マイクロビッカース硬さHV(荷重2
5g、保持時間15秒)の上昇) 上記電解浴の組成Aにおいて、クエン酸ナトリウムの濃
度が0.14モル/Lで、電解浴の浴温が50℃で、電
解電流密度が5A/dm2 の条件で電解析出を行うこと
によってNi−12.3原子%Wの合金を得た。このN
i−W系合金を300℃(573K)〜600℃(87
3K)の範囲の温度で真空中で加熱した後、炉冷するこ
とによって、電解析出に伴う内部歪みを除去して結晶粒
サイズを調整(15×10-9m程度で最大硬度を示す)
し、一層の強度上昇を図った。その結果、表4に示すよ
うに、加熱温度が400〜600℃のものは、マイクロ
ビッカース硬さHVとして、約850〜921の超高強
度化を達成することができたが、加熱温度が600℃を
超えると、マイクロビッカース硬さHVは低下したの
で、結晶粒の粗大化が進行すると推定できる。すなわ
ち、Ni−W系合金を電解析出後に約400〜600℃
に加熱(アニーリング)することにより、結晶粒が粗大
化することなく超高強度合金を得ることができる。
【0058】
【表4】
【0059】ニ 破断歪みに及ぼすNiイオン濃度と浴
温の影響 上記電解浴の組成Bにおいて、クエン酸ナトリウムの濃
度が0.14モル/Lにおいて、破断歪みに及ぼすNi
イオン濃度と浴温の影響を図17、図18に示す。図1
7において、符号「○」「●」は、それぞれ、「濃度
0.06モル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度
0.14モル/Lのタングステン酸ナトリウムの組成を
有する液」、「濃度0.08モル/Lの硫酸ニッケルア
ンモニウムと濃度0.12モル/Lのタングステン酸ナ
トリウムの組成を有する液」を示し、図18において、
符号「△」「▲」は、それぞれ、「濃度0.10モル/
Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度0.10モル/L
のタングステン酸ナトリウムの組成を有する液」、「濃
度0.12モル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度
0.08モル/Lのタングステン酸ナトリウムの組成を
有する液」を示す。
【0060】図17に示すように、硫酸ニッケルアンモ
ニウムの濃度が0.08モル/Lで、タングステン酸ナ
トリウムの濃度が0.12モル/Lである組成(符号
●)の液において、破断歪み値が向上する傾向にあり
(すなわち、靱性が改善され)、浴温が30℃でも破断
歪み(εの式によるもの)が1.0を示す合金が得られ
る。しかし、電解析出効率の低下による水素等の共析と
いう理由により、浴温が上昇すると、破断歪み値が減少
する(靱性が低下する)。 ホ 破断歪みに及ぼすクエン酸ナトリウムの濃度の影響 上記電解浴の組成Bにおいて、電解浴の浴温が30℃ま
たは40℃において、クエン酸ナトリウムの濃度を0.
10〜0.16モル/Lの範囲で変化させたときのクエ
ン酸ナトリウムの濃度(モル/L)と破断歪みとの関係
を図19に示す。このときの電解電流密度は、5A/d
2 である。図19において、符号「○」「●」は、
それぞれ、浴温が30℃において、「濃度0.10モル
/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度0.10モル/
Lのタングステン酸ナトリウムの組成を有する液)」、
「濃度0.08モル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと
濃度0.12モル/Lのタングステン酸ナトリウムの組
成を有する液」を示し、符号「△」「▲」は、それぞ
れ、浴温が40℃において、「濃度0.10モル/Lの
硫酸ニッケルアンモニウムと濃度0.10モル/Lのタ
ングステン酸ナトリウムの組成を有する液」、「濃度
0.08モル/Lの硫酸ニッケルアンモニウムと濃度
0.12モル/Lのタングステン酸ナトリウムの組成を
有する液」を示す。
【0061】図19から明らかなように、クエン酸ナト
リウムの濃度が0.14モル/Lのとき(クエン酸イオ
ンの濃度をタングステンイオンの濃度より多くする
と)、破断歪み値が向上する傾向にあり(すなわち、靱
性が改善され)、浴温が30℃でも破断歪み(εの式に
よるもの)が1.0を示す合金が得られる。しかし、合
金の電解析出効率の低下と水素等の共析という理由によ
り、クエン酸イオンの濃度が高すぎると靱性が低下する
ことがある。 (2)Fe−W系合金の機械的特性 イ 熱処理(合金形成後のアニーリング)による強度上
昇(マイクロビッカース硬さHV(荷重25g、保持時
間15秒)の上昇) 上記電解浴の組成Cにおいて、クエン酸ナトリウムの濃
度が0.225モル/Lで、電解浴の浴温が65℃で、
電解電流密度が1.7A/dm2 の条件で電解析出を行
うことによってFe−27.2原子%Wの合金を得た。
この合金のマイクロビッカース硬さHVは、878と高
いものであったが、さらに、このFe−W系合金を40
0℃(673K)〜1000℃(1273K)の範囲の
温度で真空中で加熱した後、炉冷することによって、電
解析出に伴う内部歪みを除去し且つbcc硬度を有する
結晶相を析出させることにより、一層の強度上昇を図っ
た。その結果、図20に示すように、マイクロビッカー
ス硬さHVとして、約970〜1240の超高強度化を
達成することができた。図20において、符号「●」は
マイクロビッカース硬さHVの平均値を示し、矢印で示
す範囲は、各加熱温度におけるマイクロビッカース硬さ
HVの上下限範囲を示す。図20を見れば、約800℃
(1073K)を超えると、マイクロビッカース硬さH
Vは低下している。すなわち、結晶粒の粗大化が進行し
ていると推定できる。そこで、Fe−W系合金を電解析
出後に約400〜800℃に加熱(アニーリング)する
ことにより、結晶粒が粗大化することなく超高強度合金
を得ることができる。 ロ 引張り強度 図20において、マイクロビッカース硬さHVが878
のものの合金厚さは42μmであり、その引張り強度は
450MPaであった。 4.Ni−W系合金およびFe−W系合金の物理的特性
(水素含有量および酸素含有量と靱性) (1)Ni−W系合金の物理的特性 a.電流密度が5A/dm2 の場合 基本的に上記電解浴の組成Aとし、他のメッキ条件は、
表5の上段に示すとおりの条件で電解析出を行った結
果、そのNi−W系合金の物理的特性として、表5の下
段に示すような結果を得た。表5に示すように、試料N
o.2〜4によれば、破断歪み(εの式によるもの)が
0.1以上であって良好な靱性を具備し、特に、破断歪
み(εの式によるもの)が1.0である超高靱性の試料
No.3の水素含有量は、0.12原子%であり、酸素
含有量は、0.18原子%であり、破断歪みがゼロであ
る(曲げることが全くできない)試料No.5や試料N
o.6の水素含有量や酸素含有量に比べて遙かに少な
い。
【0062】なお、水素含有量及び酸素含有量は、とも
に不活性ガス融解法により測定した。
【0063】なお、表5の試料No.2及び試料No.
4に、真空中75℃で2時間のベーキング(脱水素ガス
処理)を施すことにより、破断歪み(εの式によるも
の)が1.0まで大きく向上した。
【0064】
【表5】
【0065】b.電流密度が10A/dm2 の場合 基本的に上記電解浴の組成Aとし、他のメッキ条件は、
表6の上段に示すとおりの条件で電解析出を行った結
果、そのNi−W系合金の物理的特性として、表6の下
段に示すような結果を得た。表5と表6を比較すると、
浴温が同じ50℃である試料No.3と試料No.7を
比較すると、電流密度が高くなると、合金中の水素含有
量もやや増えるが、試料No.7の破断歪み(εの式に
よるもの)は1.0であって、超高靱性を示している。
表6に示すように、浴温が75℃の試料No.8の破断
歪み(εの式によるもの)も1.0であって、試料N
o.7と同様の超高靱性を示しているが、特筆すべき
は、酸素含有量の差である。すなわち、試料No.8の
水素含有量は0.20原子%であって、試料No.7と
同じであるが、試料No.8の酸素含有量は、0.03
原子%と極めて少ない。このように、Ni−W系合金に
おいては、電解電流密度が増加しても、クエン酸濃度を
増加し、浴温を高くすれば、水素含有量および酸素含有
量がともに少ない、超高靱性の合金を得ることが可能で
あることを示唆している。また、合金中の酸素濃度をさ
らに低下させる方法として、電解浴中の溶存酸素濃度を
極めて低く保持することも有効である。
【0066】
【表6】
【0067】試料No.8の酸素含有量は非常に少な
く、極めて優れた靱性を備えているが、この試料No.
8の電解析出直後の引張り強度はすでに670MPaと
非常に高い値を示していたが、同試料をAr雰囲気で7
5℃(348K)で24時間加熱(ベーキング)処理し
た後、炉冷することによって、電解析出に伴って生成し
た水素を放出して強度は向上し、2333MPaという
極めて高い引張り強度を達成した。なお、表6の試料N
o.8は粒径が2〜3nmのナノ結晶組織で、粒界部分
にアモルファス相を含む構造であったが、表5の試料N
o.2の粒径は約5nmであり、その試料No.2の電
解析出直後の引張り強度は1100MPaと極めて高い
値を示した。すなわち、一般的に粒径が小さくなるほど
強度は向上するが、アモルファス相や約5nm以下の極
めて微小な粒径になれば、逆にやや強度が低下すること
がある。 (2)Fe−W系合金の物理的特性 a.電流密度が1.7A/dm2 の場合 基本的に上記電解浴の組成Cとし、白金製陽極板と銅製
陽極板はNi−W系合金の組成Aの電解の場合と同じで
あり、他のメッキ条件は、表7の上段に示すとおりの条
件で電解析出を行った結果、そのFe−W系合金の物理
的特性として、表7の下段に示すような結果を得た。表
7に示すように、浴温が65℃の場合において、水素含
有量が、0.16原子%であって、酸素含有量が、0.
39原子%である試料No.11の破断歪み(εの式に
よるもの)は1.0であって超高靱性を示している。
【0068】
【表7】
【0069】表7の試料No.9と試料No.10の水
素含有量には大きな差はないが、試料No.9の酸素含
有量は試料No.10のその値に比べて非常に多い。そ
こで、加熱(ベーキング)することによって、電解析出
に伴って生成した水素を放出して強度が向上するかどう
かを確認するために、試料No.9と試料No.10の
合金を、Ar雰囲気下で75℃で2〜8時間加熱(ベー
キング)した後、炉冷すると、図21に示すような結果
を得た。図21の横軸は加熱時間であり、縦軸は破断歪
みを示す。図21において、記号「●」は試料No.9
を示し、記号「○」は試料No.10を示す。図21に
明らかなように、試料No.10では、75℃で2時間
加熱することによって、電解析出に伴って生成した水素
を放出し、靱性が大幅に改善されることを確認した。し
かし、加熱時間を4時間以上長くしても、試料中に残存
する酸素と水素の化学反応の進行と雰囲気からの酸素の
侵入という理由により、靱性は改善されなかった。
【0070】一方、試料No.9は、酸素含有量が多す
ぎて、酸素と水素が安定な化学結合をし、粒界面におけ
る結合力を著しく低下させ、微小のクラックを生成する
ので、上記加熱によって水素を放出しても、靱性を改善
することができなかった。 b.電流密度が5A/dm2 または20A/dm2場合 基本的に上記電解浴の組成Cとし、白金製陽極板とも銅
製陽極板はNi−W系合金の組成Aの電解の場合と同じ
であり、他のメッキ条件は、表8の上段に示すとおりの
条件で電解析出を行った結果、そのFe−W系合金の物
理的特性として、表8の下段に示すような結果を得た。
表8に示すように、Fe−合金の場合、電流密度を5A
/dm2 以上に増加すると、電解浴温が65℃におい
ても良好な靱性を得ることができない。
【0071】
【表8】
【0072】5.マイクロ構造体の作製 本発明に係る高強度合金を用いたマイクロ構造体の製造
方法の一例を、図22に基づいて説明する。 (1)放射光の照射 フォトマスク1を通して、導電性基板2上に塗布した感
光性樹脂3に放射光4を照射する(図22(a))。 (2)感光性樹脂の現像 フォトマスク1の中で「IMT」と表示された部分5は
放射光を吸収する光吸収体からなり、フォトマスク1の
光吸収体5を除く部分を透過した放射光により、その放
射光に露光された部分の感光性樹脂3の分子鎖が切れ、
特定の現像液に選択的に溶解するようになる。この現像
処理により、導電性基板2上に感光性樹脂のマイクロ構
造体6が形成される(図22(b))。 (3)電解析出法による金属堆積 感光性樹脂が溶解した部分に、本発明に係る高強度合金
を上記電解析出法にしたがって電解析出させる(図22
(c))。 (4)残りの感光性樹脂の剥離 残った感光性樹脂を溶剤で取り除くことにより、高強度
合金のマイクロ構造体7が得られる(図22(d))。
この方法によれば、機械加工法では成形が困難であるマ
イクロメータサイズの微小な金属構造体の成形が可能で
あり、フォトマスクの光吸収体の形状を変えることによ
り、任意の構造のマイクロ構造体の成形が可能である。 6.その他 本発明によれば、以上のようにして高靱性の高強度合金
を得ることができるが、密着性の良好な電解析出合金を
得るためには、次に説明する条件に留意することがさら
に好ましい。 (1)電流密度 電解析出時間を短縮し、緻密な合金膜を得るためには、
電流密度は一般に大きい方が好ましい。しかし、電流密
度が大きくなると、水素の生成量が多くなり、水素脆化
の原因となるので、電流密度が大きすぎるのは好ましく
ない。 (2)pH 強酸性浴あるいは強アルカリ性では、電解特性はpHに
それほど敏感ではないが、本発明による高強度合金は、
弱アルカリ性浴を用いるのが好ましい。なお、金属イオ
ンと錯体の構造はpHにより変化して、Ni(またはC
o)とW(またはMo)の電解析出電位がほぼ同じにな
ったときに、Ni−W系合金が析出し、FeとW(また
はMo)の電解析出電位がほぼ同じになったときに、F
e−W系合金が析出する。 (3)添加剤 添加剤の目的は、電解析出膜の平滑化、光沢化、結晶微
細化、均一電解析出性の改善、残留応力低減、ピット防
止などである。本発明においては、ピット防止のために
公知の界面活性剤を適量添加し、ピット防止以外の上記
目的のために、サッカリンを適量添加するのが好まし
い。 (4)前処理 密着性のよい平滑な電解析出膜を得るためには、被電解
析出面を清浄にする前処理は重要であり、公知の前処理
方法を採用することができる。
【0073】
【発明の効果】本発明は上記のとおり構成されているの
で、次の効果を奏する。
【0074】請求項1〜9記載の発明によれば、マイク
ロ構造体用材料として好適である、十分な靱性を備えた
高強度合金を製造する方法を提供することができる。特
に、請求項9記載の方法によれば、電解浴温を低下する
ことができ、設備コストおよびランニングコストを低下
することができるという効果がある。
【0075】請求項15〜23記載の発明によれば、マ
イクロ構造体用材料として好適である、十分な靱性を備
えた高強度合金を提供することができる。
【0076】特に、請求項10、11記載の発明によれ
ば、電解析出に伴って生成する水素ガスを放出すること
により超高強度合金を製造する方法を提供することがで
きる。
【0077】特に、請求項12、13、14記載の発明
によれば、電解析出に伴う内部歪みを除去することによ
り超高強度合金を製造する方法を提供することができ
る。
【0078】特に、請求項24、25、26、27、2
8および29記載の発明によれば、十分な靱性を備えた
超高強度合金を提供することができる。
【0079】特に、請求項30、31、32、33記載
の発明によれば、十分な靱性を備えた高強度合金および
その高強度合金を被覆してなる金属を提供することがで
きる。
【0080】請求項34、35記載の発明によれば、高
強度合金の靱性をさらに向上することができる。
【0081】特に、請求項36、37記載の発明によれ
ば、マイクロ部品用材料として好適のマイクロ構造体を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対す
る電解析出速度の変化を示す図である。
【図2】曲げ試験の方法を説明する図である。
【図3】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対す
る結晶粒径の変化を示す図である。
【図4】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対す
る結晶粒径の変化を示す別の図である。
【図5】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対す
るW含有量の変化を示す図である。
【図6】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対す
るW含有量の変化を示す別の図である。
【図7】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対す
るX線回折パターンの変化を示す図である。
【図8】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対す
るX線回折パターンの変化を示す別の図である。
【図9】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対す
る電解析出速度の変化を示す別の図である。
【図10】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対
する電解析出速度の変化を示すさらに別の図である。
【図11】Ni−W系合金におけるクエン酸ナトリウム
の濃度の変化に対する電解析出速度の変化を示す図であ
る。
【図12】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対
するX線回折パターンの変化を示すさらに別の図であ
る。
【図13】Ni−W系合金におけるNi濃度の変化に対
するX線回折パターンの変化を示す図である。
【図14】Fe−W系合金における電解浴温の変化に対
する電解析出速度の変化を示す図である。
【図15】Fe−W系合金におけるクエン酸ナトリウム
の濃度の変化に対する電解析出速度の変化を示す図であ
る。
【図16】Fe−W系合金における電解浴温の変化に対
するX線回折パターンの変化を示す図である。
【図17】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対
する破断歪みの変化を示す図である。
【図18】Ni−W系合金における電解浴温の変化に対
する破断歪みの変化を示す別の図である。
【図19】Ni−W系合金におけるクエン酸ナトリウム
の濃度の変化に対する破断歪みの変化を示す図である。
【図20】Fe−W系合金におけるアニーリング処理に
よる硬度上昇の一例を示す図である。
【図21】Fe−W系合金におけるベーキング処理によ
る靱性改善の一例を示す図である。
【図22】マイクロ構造体の製造方法のフローの一例を
示す図である。
【符号の説明】
1…フォトマスク 2…導電性基板 3…感光性樹脂 4…放射光 5…光吸収体 6、7…マイクロ構造体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C22F 1/00 C22F 1/00 B 604 604 661 661A 682 682 691 691B (72)発明者 山崎 徹 兵庫県姫路市的形町的形1778番地の1 サ ンパティック的形307号 Fターム(参考) 4K023 AB18 AB19 AB21 BA06 BA16 CA09 CB03 DA03 DA06 DA07 DA08 4K024 AA15 BA01 BB18 BC05 CA01 CA02 CA03 CA04 CA06 DB01 GA04 GA16

Claims (37)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 NiイオンまたはCoイオンとWイオン
    またはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの範
    囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオ
    ンの含有比率が20〜40%の範囲にある組成の電解浴
    を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出させることを
    特徴とする高強度合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 NiイオンまたはCoイオンとWイオン
    またはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの範
    囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオ
    ンの含有比率が20〜40%の範囲にある組成を有する
    とともに、クエン酸イオンの濃度(Citモル/L)とW
    イオンまたはMoイオンの濃度(WまたはMoモル/
    L)と浴温(T℃)との間に以下のような関係がある電
    解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出させるこ
    とを特徴とする高強度合金の製造方法。 Cit=(WまたはMo)×{1+0.07(T−4
    0)}±0.1
  3. 【請求項3】 NiイオンまたはCoイオンとWイオン
    またはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの範
    囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオ
    ンの含有比率が20〜40%の範囲にある組成を有する
    とともに、クエン酸イオンの濃度(Citモル/L)とW
    イオンまたはMoイオンの濃度(WまたはMoモル/
    L)と浴温(T℃)との間に以下のような関係があり、
    且つアンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全金属イ
    オンの濃度の2〜3倍である組成の電解浴を用いて、4
    0〜80℃の浴温で電解析出させることを特徴とする高
    強度合金の製造方法。 Cit=(WまたはMo)×{1+0.07(T−4
    0)}±0.1
  4. 【請求項4】 FeイオンとWイオンまたはMoイオン
    の総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオ
    ンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲
    にある組成の電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電
    解析出させることを特徴とする高強度合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 FeイオンとWイオンまたはMoイオン
    の総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオ
    ンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲
    にある組成を有するとともに、クエン酸イオンの濃度
    (Citモル/L)とWイオンまたはMoイオンの濃度
    (WまたはMoモル/L)との間に以下のような関係が
    ある電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出さ
    せることを特徴とする高強度合金の製造方法。 Cit=WまたはMo±0.1
  6. 【請求項6】 FeイオンとWイオンまたはMoイオン
    の総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオ
    ンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲
    にあって、クエン酸イオンの濃度が0.20〜0.25
    モル/Lである組成の電解浴を用いて、40〜80℃の
    浴温で電解析出させることを特徴とする高強度合金の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 FeイオンとWイオンまたはMoイオン
    の総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオ
    ンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲
    にある組成を有するとともに、クエン酸イオンの濃度
    (Citモル/L)とWイオンまたはMoイオンの濃度
    (WまたはMoモル/L)との間に以下のような関係が
    あり、且つアンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全
    金属イオンの濃度の1〜3倍である組成の電解浴を用い
    て、40〜80℃の浴温で電解析出させることを特徴と
    する高強度合金の製造方法。 Cit=WまたはMo±0.1
  8. 【請求項8】 FeイオンとWイオンまたはMoイオン
    の総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イオ
    ンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範囲
    にあって、クエン酸イオンの濃度が0.20〜0.25
    モル/Lである組成を有し、且つアンモニウムイオンの
    濃度(モル/L)が全金属イオンの濃度の1〜3倍であ
    る組成の電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析
    出させることを特徴とする高強度合金の製造方法。
  9. 【請求項9】 NiイオンまたはCoイオンとWイオン
    またはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの範
    囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイオ
    ンの含有比率が30〜50%の範囲にある組成を有する
    とともに、クエン酸イオンの濃度が0.12〜0.16
    モル/Lである組成の電解浴を用いて、クエン酸イオン
    の濃度がWイオンまたはMoイオンの濃度より多くなる
    ように、20〜40℃の浴温で電解析出させることを特
    徴とする高強度合金の製造方法。
  10. 【請求項10】 電解析出に引き続いてベーキングを施
    すことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、
    7、8または9記載の高強度合金の製造方法。
  11. 【請求項11】 ベーキング温度が、50〜200℃で
    あることを特徴とする請求項10記載の高強度合金の製
    造方法。
  12. 【請求項12】 電解析出に引き続いてアニーリングを
    施すことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、
    7、8または9記載の高強度合金の製造方法。
  13. 【請求項13】 アニーリング温度が、400〜600
    ℃であることを特徴とする請求項12記載の高強度合金
    の製造方法。
  14. 【請求項14】 アニーリング温度が、400〜800
    ℃であることを特徴とする請求項12記載の高強度合金
    の製造方法。
  15. 【請求項15】 NiイオンまたはCoイオンとWイオ
    ンまたはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの
    範囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイ
    オンの含有比率が20〜40%の範囲にある組成の電解
    浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出させること
    により得た高強度合金。
  16. 【請求項16】 NiイオンまたはCoイオンとWイオ
    ンまたはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの
    範囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイ
    オンの含有比率が20〜40%の範囲にある組成を有す
    るとともに、クエン酸イオンの濃度(Citモル/L)と
    WイオンまたはMoイオンの濃度(WまたはMoモル/
    L)と浴温(T℃)との間に以下のような関係がある電
    解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出させるこ
    とにより得た高強度合金。 Cit=(WまたはMo)×{1+0.07(T−4
    0)}±0.1
  17. 【請求項17】 NiイオンまたはCoイオンとWイオ
    ンまたはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの
    範囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイ
    オンの含有比率が20〜40%の範囲にある組成を有す
    るとともに、クエン酸イオンの濃度(Citモル/L)と
    WイオンまたはMoイオンの濃度(WまたはMoモル/
    L)と浴温(T℃)との間に以下のような関係があり、
    且つアンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全金属イ
    オンの濃度の2〜3倍である組成の電解浴を用いて、4
    0〜80℃の浴温で電解析出させることにより得た高強
    度合金。 Cit=(WまたはMo)×{1+0.07(T−4
    0)}±0.1
  18. 【請求項18】 FeイオンとWイオンまたはMoイオ
    ンの総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イ
    オンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範
    囲にある組成の電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で
    電解析出させることにより得た高強度合金。
  19. 【請求項19】 FeイオンとWイオンまたはMoイオ
    ンの総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イ
    オンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範
    囲にある組成を有するとともに、クエン酸イオンの濃度
    (Citモル/L)とWイオンまたはMoイオンの濃度
    (WまたはMoモル/L)との間に以下のような関係が
    ある電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解析出さ
    せることにより得た高強度合金。 Cit=WまたはMo±0.1
  20. 【請求項20】 FeイオンとWイオンまたはMoイオ
    ンの総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イ
    オンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範
    囲にあって、クエン酸イオンの濃度が0.20〜0.2
    5モル/Lである組成の電解浴を用いて、40〜80℃
    の浴温で電解析出させることにより得た高強度合金。
  21. 【請求項21】 FeイオンとWイオンまたはMoイオ
    ンの総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イ
    オンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範
    囲にある組成を有するとともに、クエン酸イオンの濃度
    (Citモル/L)とWイオンまたはMoイオンの濃度
    (WまたはMoモル/L)との間に以下のような関係が
    あり、且つアンモニウムイオンの濃度(モル/L)が全
    金属イオンの濃度の1〜3倍である組成の電解浴を用い
    て、40〜80℃の浴温で電解析出させることにより得
    た高強度合金。 Cit=WまたはMo±0.1
  22. 【請求項22】 FeイオンとWイオンまたはMoイオ
    ンの総和が0.1〜0.5モル/Lの範囲で、全金属イ
    オンに対するFeイオンの含有比率が20〜40%の範
    囲にあって、クエン酸イオンの濃度が0.20〜0.2
    5モル/Lである組成を有し、且つアンモニウムイオン
    の濃度(モル/L)が全金属イオンの濃度の1〜3倍で
    ある組成の電解浴を用いて、40〜80℃の浴温で電解
    析出させることにより得た高強度合金。
  23. 【請求項23】 NiイオンまたはCoイオンとWイオ
    ンまたはMoイオンの総和が0.1〜0.3モル/Lの
    範囲で、全金属イオンに対するNiイオンまたはCoイ
    オンの含有比率が30〜50%の範囲にある組成を有す
    るとともに、クエン酸イオンの濃度が0.12〜0.1
    6モル/Lである組成の電解浴を用いて、クエン酸イオ
    ンの濃度がWイオンまたはMoイオンの濃度より多くな
    るように、20〜40℃の浴温で電解析出させることに
    より得た高強度合金。
  24. 【請求項24】 電解析出に引き続いてベーキングを施
    すことにより得た請求項15、16、17、18、1
    9、20、21、22または23記載の高強度合金。
  25. 【請求項25】 ベーキング温度が50〜200℃であ
    ることを特徴とする請求項24記載の高強度合金。
  26. 【請求項26】 電解析出に引き続いてアニーリングを
    施すことにより得た請求項15、16、17、18、1
    9、20、21、22または23記載の高強度合金。
  27. 【請求項27】 アニーリング温度が400〜600℃
    であることを特徴とする請求項26記載の高強度合金。
  28. 【請求項28】 アニーリング温度が400〜800℃
    であることを特徴とする請求項26記載の高強度合金。
  29. 【請求項29】 アモルファス構造または平均結晶粒径
    が100nm以下のナノ結晶構造であることを特徴とす
    る請求項15、16、17、18、19、20、21、
    22、23、24、25、26、27または28記載の
    高強度合金。
  30. 【請求項30】 WまたはMoを8〜30原子%含有し
    て残部がNiまたはCoよりなるとともに、水素含有量
    が1.00原子%以下で且つ酸素含有量が0.50原子
    %以下である組成のものを電解析出してなる高強度合
    金。
  31. 【請求項31】 WまたはMoを8〜30原子%含有し
    て残部がNiまたはCoよりなるとともに、水素含有量
    が1.00原子%以下で且つ酸素含有量が0.50原子
    %以下である合金組成のものを被覆してなる金属。
  32. 【請求項32】 WまたはMoを20〜30原子%含有
    して残部がFeよりなるとともに、水素含有量が1.0
    0原子%以下で且つ酸素含有量が1.00原子%以下で
    ある組成のものを電解析出してなる高強度合金。
  33. 【請求項33】 WまたはMoを20〜30原子%含有
    して残部がFeよりなるとともに、水素含有量が1.0
    0原子%以下で且つ酸素含有量が1.00原子%以下で
    ある合金組成のものを被覆してなる金属。
  34. 【請求項34】 電解析出に引き続いてベーキングを施
    すことにより得た請求項30または32記載の高強度合
    金。
  35. 【請求項35】 ベーキング温度が50〜200℃であ
    ることを特徴とする請求項34記載の高強度合金。
  36. 【請求項36】 WまたはMoを8〜20原子%含有し
    て残部がNiまたはCoよりなる高強度合金を用いたマ
    イクロ構造体。
  37. 【請求項37】 WまたはMoを20〜30原子%含有
    して残部がFeよりなる高強度合金を用いたマイクロ構
    造体。
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