JP2014056976A - 半導体装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】FWDの順電圧降下が正の温度係数を有し、逆回復動作がソフトリカバリー特性であってジュール発熱による破壊耐量が向上する半導体装置およびその半導体装置の製造方法の提供。
【解決手段】FWDの活性部において、深さ方向に対してp型アノード層側に第1短ライフタイム領域を有し、n型カソード層側に第1長ライフタイム領域とを有する。FWDのエッジ終端構造部には、前記活性部内の前記第1長ライフタイム領域のライフタイムよりも短い第2短ライフタイム領域を有するとともに、前記活性部内の第1長ライフタイム領域が前記エッジ終端構造部側に延長されて張り出す第2長ライフタイム領域を、前記エッジ終端構造部のn型カソード層側に備える半導体装置とする。
【選択図】図1
【解決手段】FWDの活性部において、深さ方向に対してp型アノード層側に第1短ライフタイム領域を有し、n型カソード層側に第1長ライフタイム領域とを有する。FWDのエッジ終端構造部には、前記活性部内の前記第1長ライフタイム領域のライフタイムよりも短い第2短ライフタイム領域を有するとともに、前記活性部内の第1長ライフタイム領域が前記エッジ終端構造部側に延長されて張り出す第2長ライフタイム領域を、前記エッジ終端構造部のn型カソード層側に備える半導体装置とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、電力変換装置などに使用される電力用の半導体装置およびその製造方法に関する。
高電圧・大電流を扱う縦型パワーダイオードは半導体基板の上面と下面にそれぞれアノード電極、カソード電極が設けられている半導体整流素子である。特にインバーター等に搭載されるパワースイッチング素子と組み合わせて用いられるダイオードはフリーホイールダイオード(以降、FWD)と呼ばれる。
一般的にFWDは、半導体基板の一面側の中心部に選択的に形成されるアノード層と他面側の全面に形成されるカソード層を有する。アノード層表面でアノード電極がオーミック接触する部分は、主たる電流を流す活性部となる。また、同じ一面側でアノード層を取り巻く周辺には、アノードを負極とする逆電圧印加時にpn接合近傍に生じる電界を緩和させる機能とpn接合終端の絶縁保護機能を有するエッジ終端構造部を備える。
図4に、そのようなFWD100の活性部の一部とエッジ終端構造部の具体的な構造の一例を要部断面図で示す。活性部101は、ドリフト層1aとなるn−型半導体基板1の表面側にp型アノード層2およびこのp型アノード層2表面に直接接触するアノード電極3を備える。エッジ終端構造部102にはアノード電極3に直接接触する部分のp型アノード層2は含まれないが、p型アノード層2とドリフト層1aとの間のpn接合5の終端を表面に交差させ絶縁膜6で保護する構造を有している。さらに、エッジ終端構造部102には、ガードリング7とフィールドプレート8などの電界緩和機構が設けられる。逆電圧印加時に、空乏層の伸長とともに電界強度が一様に大きくなる活性部内のpn接合5の面近傍に比較して、エッジ終端構造部102側のp型アノード層2の外周端9の近傍などで局所的により大きくなり易い。そこで、上記の電界緩和機構により、電界強度を緩和することができるので、高耐圧化と同時にエッジ終端構造部102の幅を短縮してコストダウン効果を得ることができる。
このようなFWD100が搭載されるインバーターなどにおいて、印加電圧極性が順方向(アノードが正)から逆方向(カソードが正)に変わる過渡状態(ターンオフ時)を、逆回復過程、あるいは単に逆回復と呼ぶ。逆回復では、まず、ドリフト層1a内の残留過剰キャリアのホールがp型アノード層2を経てアノード電極3から排除され、それとともにpn接合5から空乏層が拡がり始める。一方、ドリフト層1a内の残留過剰電子はn+型カソード層4から排除されるが、ホールのキャリア移動度が電子より小さいので、残留ホールの排除が逆回復電流のdi/dtの基準になる。この時の電圧と電流の時間(μs)推移を示す過渡波形を図2に示す。
図4のFWD100は、アノード電極3がオーミック接触するp型アノード層2が基板の一面側の中央部に選択的に設けられ、他面側にはカソード電極(図示しない)が全面のn+型カソード層4に接触する構造である。このような構造では、逆回復電流は、特にp型アノード層2の外周端9にエッジ終端構造部102内のドリフト層1a中の残留キャリアのホールが集中して電流密度が高い状態になる。そのため、ジュール発熱による素子破壊が起き易いことが問題となる。このようなFWD100の逆回復動作中における素子破壊の起こし難さを表す量を逆回復耐量と言う。また、素子破壊は図2の逆回復電流時間変化(di/dt)の大きさに比例して発生し易くなるので、di/dt耐量と言うこともある。di/dt耐量は、ダイオードを破壊することなく流すことのできる逆回復電流の減少率di/dtの最大値であり、高いほど好ましい。
図2によれば、順電流が定常電流の状態から逆バイアス電圧印加へと切換えられると、順電流は回路ファクターで決まる電流減少率di/dtで徐々に減少する。順電流がゼロになっても、ダイオードのドリフト層に残留する過剰キャリア(ホール)がp型アノード層2をへてアノード電極3から排除される間は逆方向に電流が流れる。この電流が前述の逆回復電流である。通常、電流減少率di/dtが大きいほど、逆回復電流のピーク電流値が大きくなり、逆回復電流のdi/dtが大きくなる。この逆回復電流が増加する過程で、少し遅れてpn接合から空乏層が伸び始めて逆電圧が大きくなる。その後、大きくなった逆電圧はやがて、外部から印加される逆バイアス電圧値へと収束してゆく。
従来のFWDでは、n−型半導体基板1の一方の主面にp型アノード層2とアノード電極3を形成した後、図示しない電子線を照射してn−型半導体基板1の全面に結晶欠陥を導入する。その結果、n−型半導体基板1の全体はライフタイムの短い短ライフタイム領域であって、かつ順電圧降下が正の温度係数を有する領域となる。この構造により、n+型カソード層を形成してFWDを完成させると、大きいdi/dtを必要とする高周波回路に対応することができる。しかしながら、このような構造では、逆回復はハードリカバリー特性になり易く、過電圧破壊や発振、振動によるノイズなどが発生しやすくなる問題がある。
そこで、図3に示すように、電子線照射後、n−型半導体基板1の他方の主面を研削して薄板化し、研削により露出した全面からn−型半導体基板1にリンをイオン注入する。次いで、その注入面にダブルパルス法でYAGレーザー光を照射してレーザーアニール29を行い、n−型半導体基板1の中に注入されたリンを電気的に活性化させn+型カソード層4とする。それと同時に、YAGレーザー光の照射面から、薄板化されたn−型半導体基板1全体の厚さの5〜30%に相当する深さまでの領域の結晶欠陥を回復させライフタイムが長い長ライフタイム領域Bを形成する。その結果、順電圧降下が正の温度係数を有し、di/dt耐量とソフトリカバリー特性とが得られる半導体装置とする製造方法が知られている(特許文献1、図4および要約)。図3の斜線ハッチングは短ライフタイム領域A、斜線ハッチングのない領域は長ライフタイム領域Bをそれぞれ示す。前述の説明にない図3中の符号について、図4と同符号は同じ部位を表す。
特許文献2には、p型アノード層の最表層に欠陥を残留させて、逆回復ピーク電流(逆回復電流の大きさの最大値)を低減する構造が開示されている。
また、特許文献3には、活性部のpウェルとアノード電極等の素子表面の電極が接する端部の近辺のみに、低ライフタイム領域を形成し、逆回復時のdi/dt耐量を向上させる構造が開示されている。
また、特許文献3には、活性部のpウェルとアノード電極等の素子表面の電極が接する端部の近辺のみに、低ライフタイム領域を形成し、逆回復時のdi/dt耐量を向上させる構造が開示されている。
さらに特許文献4には、エッジ終端部のライフタイムを活性部のライフタイムよりも短くする構造が開示されている。
前述のように、図3に示すような従来のソフトリカバリー化された改良FWD100では、より厳しいdi/dtに対する要求(すなわちFWDの高速化)に対して、p型アノード層2の外周端9での逆回復電流の集中による素子破壊が再度起き易くなる。このようなFWD100の素子破壊に対し、従来はp型アノード層2の外周縁のみpn接合を深くしていた。これにより、特に外周縁の電界を緩和できる。また、アノード電極がp型アノード層2に直接に接触しないp型アノード層2の外周端9の幅を大きくすることにより、電界集中が発生する領域と、電流集中が発生する領域とを、分離する構造が採られていた。
しかし、いずれの構造も電流集中自体を抑える構造ではないので、素子破壊耐量の向上には限界がある。しかも、FWDを搭載するインバーター等の高周波化のために、FWD側で対応が求められる逆回復電流時間変化(di/dt)はさらに年々大きくなる傾向がある。電流減少率di/dtが大きくなると逆回復電流のピーク値も大きくなり、過電圧破壊や発振、振動などの問題がさらに大きくなり易いので、問題の解決はさらに困難になる。
本発明は、以上説明した点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、FWDの順電圧降下が正の温度係数を有し、逆回復動作がソフトリカバリー特性であってジュール発熱による破壊耐量がより向上する半導体装置およびその半導体装置の製造方法の提供である。
前記課題を解決するために、本発明では、第1導電型の半導体基板からなる第1導電型ドリフト層と、
前記半導体基板の一方の主面側の表層に選択的に配置される高濃度第2導電型アノード層と、
前記半導体基板の他方の主面の表層の全面に配置される第1導電型カソード層と、
前記一方の主面側から他方の主面側に主たる電流を流す活性部と、
該活性部の外周側を取り巻くエッジ終端構造部と、を備え、
前記活性部を前記半導体基板内に投影させた領域の前記第2導電型アノード層側には第1短ライフタイム領域を有し、
前記活性部を前記半導体基板内に投影させた領域の前記第1導電型カソード層側には第1長ライフタイム領域を有し、
前記エッジ終端構造部には、前記活性部内の前記第1長ライフタイム領域のライフタイムよりも短い第2短ライフタイム領域を有するとともに、
前記活性部内の第1長ライフタイム領域が前記エッジ終端構造部側に延長されて張り出す第2長ライフタイム領域を前記エッジ終端構造部の第1導電型半導体層側に備えることを特徴とする半導体装置とする。
前記半導体基板の一方の主面側の表層に選択的に配置される高濃度第2導電型アノード層と、
前記半導体基板の他方の主面の表層の全面に配置される第1導電型カソード層と、
前記一方の主面側から他方の主面側に主たる電流を流す活性部と、
該活性部の外周側を取り巻くエッジ終端構造部と、を備え、
前記活性部を前記半導体基板内に投影させた領域の前記第2導電型アノード層側には第1短ライフタイム領域を有し、
前記活性部を前記半導体基板内に投影させた領域の前記第1導電型カソード層側には第1長ライフタイム領域を有し、
前記エッジ終端構造部には、前記活性部内の前記第1長ライフタイム領域のライフタイムよりも短い第2短ライフタイム領域を有するとともに、
前記活性部内の第1長ライフタイム領域が前記エッジ終端構造部側に延長されて張り出す第2長ライフタイム領域を前記エッジ終端構造部の第1導電型半導体層側に備えることを特徴とする半導体装置とする。
耐圧がXボルトの半導体装置の前記半導体基板の厚さをTx、前記第2長ライフタイム領域の前記エッジ終端構造部内の張り出し距離をWx(μm)とすると、Wx(μm)はWx(μm)≦Tx×100/130(μm)であると、好ましい。
耐圧1200ボルト、半導体基板厚さ130μmの前記第2長ライフタイム領域の前記エッジ終端構造部内の張り出し距離W1200が100μm以下であると好ましい。
前記エッジ終端構造部の第2短ライフタイム領域と前記活性部の第1短ライフタイムとが同時に形成される上記半導体装置の製造方法とすると、好ましい。
前記エッジ終端構造部の第2短ライフタイム領域と前記活性部の第1短ライフタイムとが同時に形成される上記半導体装置の製造方法とすると、好ましい。
前記短ライフタイム領域は前記電子線照射とアニール熱処理により形成し、前記長ライフタイム領域は前記電子線照射とアニール熱処理後に前記半導体基板の第2主面側からのレーザーアニール処理により形成すると、好ましい。
前記半導体基板の第2主面側からのレーザーアニール処理は、レーザー光照射の描写機能を用いて、選択的に照射することにより形成すると、好ましい。
前記半導体基板の第2主面側からのレーザーアニール処理は、選択的に照射する領域以外の領域にレーザー光を反射または吸収する膜をマスクとして形成した後、全面にレーザーアニール処理を行うと、好ましい。
前記半導体基板の第2主面側からのレーザーアニール処理は、選択的に照射する領域以外の領域にレーザー光を反射または吸収する膜をマスクとして形成した後、全面にレーザーアニール処理を行うと、好ましい。
本発明によれば、FWDの順電圧降下が正の温度係数を有し、逆回復動作がソフトリカバリー特性であってジュール発熱による破壊耐量が向上する半導体装置およびその半導体装置の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の半導体装置およびその製造方法にかかる実施例について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれ相対的に不純物濃度が高いまたは低いことを意味する。なお、以下の実施例の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例で説明される添付図面は、見易くまたは理解し易くするために正確なスケール、寸法比で描かれていない。さらに、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
本発明の実施例1にかかる半導体装置について、1200V耐圧のFWDの一例を図1を参照して説明する。チップ厚T1200が130μmで不純物濃度が1.0×1014cm−3のn−型半導体基板1の裏面側の全面に、ピーク不純物濃度が3.0×1019cm−3、深さ0.8μmのn+型カソード層4と、表面中央部にピーク不純物濃度が5.0×1016cm−3、深さ4μmのp型アノード層2を選択的に形成する。p型アノード層2の表面にアノード電極3が直接接触する領域が活性部101となる。活性部101の外周にはエッジ終端構造部102が取り巻くように配設される。
エッジ終端構造部102には、ピーク不純物濃度が1.0×1017cm−3、深さ8μm、幅20μmのp領域が、ガードリング7として、p型アノード層2の外周端9から所定の間隔をおいてリング状に10本形成される。さらに、フィールドプレート8が絶縁膜6に設けられた開口部7a(開口部の抜き幅は10μm)を介してガードリング7の表面に接触するように絶縁膜6上に形成される。
図1ではn−型半導体基板1内のライフタイムが短い領域(以降、短ライフタイム領域A)を斜線ハッチングで示す。その領域Aの電子のライフタイムを3.1×10−7秒、ホールのライフタイムを9.3×10−8秒とした。ライフタイムが長い領域(以降、長ライフタイム領域B)を斜線ハッチング無しで示し、その領域Bの電子のライフタイムを1.0×10−5秒、ホールのライフタイムを3.0×10−6秒とした。なお、短ライフタイム領域Aと長ライフタイム領域Bのライフタイム値の比率A/Bは0.001倍以上0.1倍以下の範囲にすることが好ましい。
長ライフタイム領域Bは活性部内のn+型カソード層4aと、その延長であるエッジ終端構造部内のn+型カソード層4bの一部を含み、裏面から深さDを11μmとする領域である。n−型半導体基板1の残りの領域は短ライフタイム領域Aである。前述した長ライフタイム領域Bの深さDは、より深い方が順電圧降下Vfは低減し、振動抑制効果が期待できる。しかし、長ライフタイム領域Bの深さDが深すぎるとスイッチング損失の増加を招く。また、ライフタイムキラー量で順電圧降下Vfをコントロールした場合でも局所的にライフタイムを多く入れるためにリーク電流の増加が生じるので、好ましくない。従って、長ライフタイム領域Bの深さDは5μm以上70μm以下が好ましい。
また、前述の「長ライフタイム領域Bは活性部内のn+型カソード層4aと、その延長であるエッジ終端構造部内のn+型カソード層4bの一部を含み」とは、次の意味を持つ。すなわち、長ライフタイム領域Bを活性部からエッジ終端構造部側へ延長するように一部張り出させ、エッジ終端構造部の残りの領域は短ライフタイム領域Aのままとなるようにライフタイムの長短領域を分布させることである。このようなライフタイムの長短領域の配置とすることにより、逆回復時にエッジ終端構造部102のn+型カソード層4b中の注入キャリアを再結合によってより早く消滅させることができる。その結果、ターンオフ時のp型アノード層2の外周端9への逆回復電流の集中を緩和させることができる。
一方、短ライフタイム領域Aについては、活性部101とエッジ終端構造部102の短ライフタイム領域Aのライフタイムは、それぞれ長ライフタイム領域Bよりも短ければよく、活性部101とエッジ終端構造部102とでは異なっていても構わない。一方、活性部101とエッジ終端構造部102の短ライフタイム領域を同じプロセスで同時形成することができれば、プロセスの工程数を増やさなくてもすむ。そのため、チップコストを小さくできるので好ましい。
次に、図1に示す、チップ厚Tが130μmで1200V耐圧のFWDについて逆回復時の素子破壊の起こし易さと前述の長短ライフタイム領域の分布配置との関係を調べた。まず、逆回復時に素子破壊の起こし易さを示す指標として、p型アノード層2の外周端9で発生するジュール熱Jの大きさを用いる。図1で長ライフタイム領域Bと短ライフタイム領域Aの境界の位置を、活性部101とエッジ終端構造部102の境界を基準位置としてエッジ終端構造部102側に張り出させた距離W1200(μm)で表す。この距離W1200(μm)とp型アノード層2の外周端9にて発生するジュール熱J(sec−1cm−3)の大きさとの関係をデバイスシミュレーションにより評価した。その結果を図5に示す。なお、デバイスシミュレーションには、逆回復電流が最も大きいときに発生するジュール熱Jを用いて評価した。
図5によれば、エッジ終端構造部102側へ張り出す距離W1200を100μm以下にすると、100μm以上の場合に比べて、p型アノード層2の外周端9において発生するジュール熱Jの低減率が大く、ジュール熱Jを十分小さくできる。そのため、逆回復動作時の破壊耐量の向上が期待できる。従って、エッジ終端構造部102側へ張り出す距離Wを100μm以下にすると、図3に示すような距離Wがエッジ終端構造部の全域に伸びている従来のFWDよりも逆回復動作時の破壊耐量の向上が期待できることになる。
以上の説明は耐圧Xが1200VのFWDの場合のシミュレーション結果である。チップ厚さTが130μmのとき、短ライフタイム領域Bのエッジ終端構造部への張り出し距離W1200は100μm以下とすると、素子破壊を抑制できるという内容である。耐圧Xが1700V、3300VのFWDでは、高耐圧化とともにチップ厚さTxは厚くなるので、それぞれの短ライフタイム領域Bのエッジ終端構造部への張り出し距離Wxは、1200Vと同じ比率で変えればよい。すなわち、Wx/Tx=100(μm)/130(μm)から、張り出し距離Wxは、Wx=Tx×100/130となる。
従って、例えば、耐圧Xが1700Vのとき、チップ厚T1700を200μmとすると、W1700=200μm×100/130となり、約153μmである。よって、耐圧1700Vでチップ厚さ200μmFWDの長ライフタイム領域の張り出し距離W1700は153μm以下となる。同様に耐圧Xが3300VのFWDでは、チップ厚さT3300を450μmとすると、長ライフタイム領域の張り出し距離W450は約346μmとなる。従って、長ライフタイム領域の張り出し距離W3300は346μm以下となる。
活性部のn+型カソード層4aを含む領域に長ライフタイム領域Bだけでなく、短ライフタイム領域Aも併存する構成の場合(すなわち、張り出し距離Wがマイナスの場合)、順電圧降下Vfの増加、発振、裏面へのパンチスルーなどによる破壊が生じやすくなる。そのため、本発明にかかる実施例1では活性部からエッジ終端構造部に長ライフタイム領域Bが張り出す構造にすることが肝要である。さらに、活性部からエッジ終端構造部に長ライフタイム領域Bが張り出す構造であっても、その深さDに対して張り出し距離Wが少ないと、上述の効果は小さくなってしまう。例えば、長ライフタイム領域Bの深さDが境界からエッジ終端構造部側へ張り出す領域Bの距離Wより大きい構成の場合も、長ライフタイム領域Bからの回り込み電流が電流集中箇所に流れてジュール熱が大きくなる。よって、長ライフタイム領域Bの深さDが、境界からエッジ終端構造部側へ張り出す領域Bの距離Wより小さい構成とすることが好ましい。
以上、実施例1ではFWDについて説明したが、IGBTにも前述したFWDのn+型カソード層4a,4bをIGBTのpコレクタ層に置き換えれば、同様の考え方で適用することができる。
本発明の半導体装置の製造方法について、1200V耐圧のFWDの製造方法を図6〜図14を参照して説明する。図6〜図14はいずれも、活性部とエッジ終端構造部の境界近傍の要部断面図である。図6〜図14では、前記図3に示したエッジ終端構造部の電界緩和機構であるガードリングは、直接的には本発明に考え方に関与しないので、図の複雑化を避けるため省略している。
主面が(100)面の60Ωcmのn型FZ法により作製されたシリコン基板20を材料とし、8000Å厚の初期酸化膜21を成長させる(図6)。フォトリソグラフィによりp型アノード層23のパターンに初期酸化膜21を開口後に厚さ500Åのスクリーニング酸化膜22を成長させ、ドーズ量3.0×1013cm−2のボロンイオンを100keVの加速エネルギーで注入しp型アノード層23を形成する(図7)。初期酸化膜21を除去後、PSG(Phospho Silicate Glass)24を厚さ11000Å形成する(図8)。PSG24に活性部101となるコンタクトホールをフォトリソグラフィにより形成し、Al金属膜をスパッタ蒸着などにより形成する。Al金属膜が前記コンタクトホール表面に接触する領域がAlアノード電極25となる。
活性部101を取り巻くエッジ終端構造部102との境界を図9に破線で示す。図9に示す破線の右側がエッジ終端構造部102となる(図9)。アノード電極25の延長膜としてp型アノード層23の外周端23aの上方にPSG24を介して形成されるAl金属膜はフォトリソグラフィを経てフィールドプレート25aとなる。基板表面にポリイミド保護膜26を塗布し、続いて同膜のフォトリソグラフィによるパターン形成を行う(図10)。基板裏面を研磨することでシリコン基板厚を130μmにし、裏面にドーズ量1.0×1015cm−2のリンイオンを100keVの加速エネルギーで注入してn+型カソード層27を形成する(図11)。
電子線を80kGy、4.6MeVで照射する。続いて、電子線を照射した基板を、石英管に入れて電気炉によるアニール熱処理(炉アニール)を行う。アニール条件は、360℃で1時間であり、短ライフタイム領域A(斜線ハッチング)を基板内全域に形成する(図12)。続いて、レーザー光照射29によるレーザーアニールを、YAG第2高調波でエネルギー密度1.8J/cm2で2回以上、基板裏面側から選択的に行う。これにより、先の電子線照射で形成された結晶欠陥を一部の領域で回復させ、長ライフタイム領域B(非斜線ハッチング)を選択的に形成する。
なお、長ライフタイム領域Bを選択的に形成する方法として、エッジ終端構造部102のn+型カソード層27を含む領域の一部に描画機能を用いて裏面からのレーザー光照射29を選択的に行うことができる(図13)。これにより、マスク28のない箇所のみに選択的にレーザー光を照射してレーザーアニールを行い、選択的にライフタイムを回復させることができる
または、銀のようなレーザー反射性の膜もしくはシリコンのようなレーザー吸収性の膜をマスク28として形成した後、レーザー光照射29を裏面から全面に行ってもよい。これにより、マスク28のない箇所のみに選択的にレーザー光照射を行い、選択的にライフタイムを回復させることができる(図14)。
または、銀のようなレーザー反射性の膜もしくはシリコンのようなレーザー吸収性の膜をマスク28として形成した後、レーザー光照射29を裏面から全面に行ってもよい。これにより、マスク28のない箇所のみに選択的にレーザー光照射を行い、選択的にライフタイムを回復させることができる(図14)。
以上説明した実施例にかかるFWDによれば、順電圧降下が正の温度係数を有し、逆回復動作がソフトリカバリー特性であってジュール発熱による破壊耐量をいっそう向上させることができる。
1 n−型半導体基板
1a ドリフト層
2,23 p型アノード層
3 アノード電極
4,4a,4b,27 n+型カソード層
5 pn接合
6 絶縁膜
7 ガードリング
7a 開口部
8 フィールドプレート
9,23a 外周端
20 シリコン基板
21 初期酸化膜
22 スクリーニング酸化膜
24 PSG
25 Alアノード電極
25a フィールドプレート
26 ポリイミド保護膜
28 マスク
29 レーザー光照射
101 活性部
102 エッジ終端構造部
1a ドリフト層
2,23 p型アノード層
3 アノード電極
4,4a,4b,27 n+型カソード層
5 pn接合
6 絶縁膜
7 ガードリング
7a 開口部
8 フィールドプレート
9,23a 外周端
20 シリコン基板
21 初期酸化膜
22 スクリーニング酸化膜
24 PSG
25 Alアノード電極
25a フィールドプレート
26 ポリイミド保護膜
28 マスク
29 レーザー光照射
101 活性部
102 エッジ終端構造部
Claims (7)
- 第1導電型の半導体基板からなる第1導電型ドリフト層と、
前記半導体基板の一方の主面側の表層に選択的に配置される高濃度第2導電型アノード層と、
前記半導体基板の他方の主面の表層の全面に配置される第1導電型カソード層と、
前記一方の主面側から他方の主面側に主たる電流を流す活性部と、
該活性部の外周側を取り巻くエッジ終端構造部と、を備え、
前記活性部を前記半導体基板内に投影させた領域の前記第2導電型アノード層側には第1短ライフタイム領域を有し、
前記活性部を前記半導体基板内に投影させた領域の前記第1導電型カソード層側には第1長ライフタイム領域を有し、
前記エッジ終端構造部には、前記活性部内の前記第1長ライフタイム領域のライフタイムよりも短い第2短ライフタイム領域を有するとともに、
前記活性部内の第1長ライフタイム領域が前記エッジ終端構造部側に延長されて張り出す第2長ライフタイム領域を前記エッジ終端構造部の第1導電型半導体層側に備えることを特徴とする半導体装置。 - 耐圧がXボルトの半導体装置の前記半導体基板の厚さをTx、前記第2長ライフタイム領域の前記エッジ終端構造部内の張り出し距離をWx(μm)とすると、Wx(μm)はWx(μm)≦Tx×100/130(μm)であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
- 耐圧1200ボルト、半導体基板厚さ130μmの前記第2長ライフタイム領域の前記エッジ終端構造部内の張り出し距離W1200が100μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
- 前記エッジ終端構造部の第2短ライフタイム領域と前記活性部の第1短ライフタイムとが同時に形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記短ライフタイム領域は前記電子線照射とアニール熱処理により形成し、前記長ライフタイム領域は前記電子線照射とアニール熱処理後に前記半導体基板の第2主面側からのレーザーアニール処理により形成することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記半導体基板の第2主面側からのレーザーアニール処理は、レーザー光照射の描写機能を用いて、選択的に照射することにより形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記半導体基板の第2主面側からのレーザーアニール処理は、選択的に照射する領域以外の領域にレーザー光を反射または吸収する膜をマスクとして形成した後、全面にレーザーアニール処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
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