以下、本発明を、画像形成装置としての電子写真方式のプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す。)用の4つの作像ユニット1Y,1C,1M,1Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kのトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。
図2は、Yトナー像を作像するための作像ユニット1Yの構成を示す概略図である。また、図3は、作像ユニット1Yの外観を示す斜視図である。これらの図において、作像ユニット1Yは、感光体ユニット2Yと現像ユニット7Yとを有している。感光体ユニット2Y及び現像ユニット7Yは、図3に示されるように、作像ユニット1Yとして一体的にプリンタ本体に対して着脱可能に構成されている。ただし、プリンタ本体から取り外した状態では、現像ユニット7Yを図示しない感光体ユニットに対して着脱することができる。
感光体ユニット2Yは、潜像担持体としてのドラム状の感光体3Y、ドラムクリーニング装置4Y、図示しない除電装置、帯電装置5Yなどを有している。帯電手段としての帯電装置5Yは、図示しない駆動手段によって図2中の時計回り方向に回転駆動する感光体3Yの表面を帯電ローラ6Yにより一様帯電させる。具体的には、図2において、反時計回りに回転駆動する帯電ローラ6Yに対して図示しない電源から帯電バイアスを印加し、その帯電ローラ6Yを感光体3Yに近接又は接触させることで、感光体3Yを一様帯電させる。
なお、帯電ローラ6Yの代わりに、帯電ブラシ等の他の帯電部材を近接又は接触させるものを用いてもよい。また、スコロトロンチャージャのように、チャージャ方式によって感光体3Yを一様帯電させるものを用いてもよい。帯電装置5Yによって一様帯電した感光体3Yの表面は、後述する潜像形成手段としての光書込ユニット20から発せられるレーザー光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
図4は、現像ユニット7Y内を示す分解構成図である。現像手段としての現像ユニット7Yは、図2や図4に示されるように、現像剤搬送手段としての第1搬送スクリュウ8Yが配設された第1剤収容室9Yを有している。また、トナー濃度検出手段としての透磁率センサからなるトナー濃度センサ10Y、現像剤搬送手段としての第2搬送スクリュウ11Y、現像剤担持体としての現像ロール12Y、現像剤規制部材としてのドクターブレード13Yなどが配設された第2剤収容室14Yも有している。
循環経路を形成しているこれら2つの剤収容室内には、磁性キャリアとマイナス帯電性のYトナーとからなる二成分現像剤である図示しないY現像剤が内包されている。第1搬送スクリュウ8Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動することで、第1剤収容室9Y内のY現像剤を図2中の手前側(図4中矢印Bの方向)へ搬送する。搬送途中のY現像剤は、第1搬送スクリュウ8Yの上方に固定されたトナー濃度センサ10Yによって、第1剤収容室9Yにおけるトナー補給口17Yに対向する箇所(以下「補給位置」という。)よりも現像剤循環方向下流側に位置する所定の検出箇所を通過するY現像剤のトナー濃度が検知される。そして、第1搬送スクリュウ8Yにより第1剤収容室9Yの端部まで搬送されたY現像剤は、連通口18Yを経て第2剤収容室14Y内に進入する。
第2剤収容室14Y内の第2搬送スクリュウ11Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動することで、Y現像剤を図2中の奥側(図4の矢印Aの方向)へ搬送する。このようにしてY現像剤を搬送する第2搬送スクリュウ11Yの上方には、現像ロール12Yが第2搬送スクリュウ11Yと平行な姿勢で配設されている。この現像ロール12Yは、図2中で反時計回り方向に回転駆動する非磁性スリーブからなる現像スリーブ15Y内に固定配置されたマグネットローラ16Yを内包した構成となっている。
第2搬送スクリュウ11Yによって搬送されるY現像剤の一部は、マグネットローラ16Yの発する磁力によって現像スリーブ15Yの表面に汲み上げられる。そして、現像スリーブ15Yの表面と所定の間隙を保持するように配設されたドクターブレード13Yによってその層厚が規制された後、感光体3Yと対向する現像領域まで搬送され、感光体3Y上のY用の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体3Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像スリーブ15Yの回転に伴って第2搬送スクリュウ11Y上に戻される。そして、第2搬送スクリュウ11Yにより第2剤収容室14Yの端部まで搬送されたY現像剤は、連通口19Yを経て第1剤収容室9Y内に戻る。このようにして、Y現像剤は現像ユニット内を循環搬送される。
トナー濃度センサ10YによるY現像剤のトナー濃度の検出結果は、電気信号として図示しない制御装置に送られる。この制御装置は、RAMの中にトナー濃度センサ10Yからの出力電圧を、Y現像剤のトナー濃度に変換する。また、C,M,K用の現像ユニット(7C,7M,7K)に搭載されたトナー濃度センサ(10C,10M,10K)からの出力電圧を、それぞれの現像剤(C,M,K現像剤)のトナー濃度に変換する。なお、透磁率センサからなるトナー濃度センサからの出力電圧は、トナー濃度と相関する。現像剤のトナー濃度が高くなるにつれて現像剤の透磁率が低下してトナー濃度センサからの出力値が低下する。
Y用の現像ユニット7Yについては、トナー濃度センサ10Yからの出力電圧に基づいて算出したトナー濃度検知結果と、RAMに記憶しているYトナー濃度の制御目標値とを比較する。そして、比較結果に応じた量のYトナーをトナー補給口17Yから供給するように、トナー補給装置のY用の補給モータをその量に応じた時間分だけ駆動する。これにより、現像に伴うYトナーの消費によってYトナー濃度が低下したY現像剤に対し、第1剤収容室9Yで適量のYトナーが供給される。このため、第2剤収容室14Y内のY現像剤のトナー濃度はトナー濃度の目標値の付近に維持される。他色用の現像ユニット7C,7M,7K内における現像剤についても同様である。
図1において、感光体3Y上に形成されたYトナー像は、中間転写体である中間転写ベルト41に中間転写される。感光体ユニット2Yのドラムクリーニング装置4Yは、中間転写工程を経た後の感光体3Yの表面に残留したトナーを除去する。これによってクリーニング処理が施された感光体3Yの表面は、図示しない除電装置によって除電される。この除電により、感光体3Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色用の作像ユニット1C,1M,1Kにおいても、同様にして感光体3C,3M,3K上にCトナー像、Mトナー像、Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト41上に中間転写される。
作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの下方には、光書込ユニット20が配設されている。この光書込ユニット20は、画像情報に基づいて発したレーザー光Lを、各作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの感光体3Y,3C,3M,3Kに照射する。これにより、感光体3Y,3C,3M,3K上には、それぞれY用、C用、M用、K用の静電潜像が形成される。
なお、光書込ユニット20は、光源から発したレーザー光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー21によって偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y,3C,3M,3Kに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LEDアレイを採用したものを用いてもよい。
光書込ユニット20の下方には、第1給紙カセット31、第2給紙カセット32が鉛直方向に重なるように配設されている。これらの給紙カセット内には、それぞれ、記録材である記録シートPが複数枚重ねられた記録シート束の状態で収容されており、一番上の記録シートPには、第1給紙ローラ31a及び第2給紙ローラ32aがそれぞれ当接している。第1給紙ローラ31aが図示しない駆動手段によって図1中で反時計回りに回転駆動すると、第1給紙カセット31内の一番上の記録シートPが、カセットの図1中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路33に向けて排出される。また、第2給紙ローラ32aが図示しない駆動手段によって図1中で反時計回りに回転駆動すると、第2給紙カセット32内の一番上の記録シートPが給紙路33に向けて排出される。
給紙路33内には、複数の搬送ローラ対34が配設されており、給紙路33に送り込まれた記録シートPは、これら搬送ローラ対34のローラ間に挟み込まれながら、給紙路33内を鉛直方向の下側から上側に向けて搬送される。
給紙路33の末端には、レジストローラ対35が配設されている。レジストローラ対35は、搬送ローラ対34から送られてくる記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録シートPを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの上方には、中間転写ベルト41を張架しながら反時計回りに無端移動させる転写ユニット40が配設されている。転写ユニット40は、中間転写ベルト41の他に、ベルトクリーニングユニット42、第1ブラケット43、第2ブラケット44などを備えている。また、4つの1次転写ローラ45Y,45C,45M,45K、2次転写バックアップローラ46、駆動ローラ47、補助ローラ48、ニップ入口ローラ49なども備えている。中間転写ベルト41は、これらのローラに張架されながら、駆動ローラ47の回転駆動によって図1中反時計回りに無端移動する。
4つの1次転写ローラ45Y,45C,45M,45Kは、無端移動する中間転写ベルト41を感光体3Y,3C,3M,3Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト41の内周面にトナーとは逆極性(本実施形態ではプラス極性)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト41は、その無端移動に伴ってY用、C用、M用、K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、その外周面に感光体3Y,3C,3M,3K上の各色トナー像が重なり合うように1次転写される。これにより、中間転写ベルト41上に4色重ね合わせトナー像(以下「4色トナー像」という。)が形成される。
2次転写バックアップローラ46は、中間転写ベルト41のループ外側に配設された2次転写ローラ50との間に中間転写ベルト41を挟み込んで2次転写ニップを形成している。先に説明したレジストローラ対35は、ローラ間に挟み込んだ記録シートPを、中間転写ベルト41上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、2次転写ニップに向けて送り出す。中間転写ベルト41上の4色トナー像は、2次転写バイアスが印加される2次転写ローラ50と2次転写バックアップローラ46との間に形成される2次転写電界や、ニップ圧の影響により、2次転写ニップ内で記録シートPに一括2次転写される。そして、記録シートPの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト41には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニングユニット42によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニングユニット42は、クリーニングブレード42aを中間転写ベルト41のおもて面に当接させており、これによってベルト上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
なお、転写ユニット40の第1ブラケット43は、図示しないソレノイドの駆動のオンオフに伴って、補助ローラ48の回転軸線を中心にして所定の回転角度で揺動するようになっている。
本プリンタは、モノクロ画像を形成する場合には、前述のソレノイドの駆動によって第1ブラケット43を図中反時計回りに少しだけ回転させる。この回転により、補助ローラ48の回転軸線を中心にしてY用、C用、M用の1次転写ローラ45Y,45C,45Mを図中反時計回りに公転させることで、中間転写ベルト41をY用、C用、M用の感光体3Y,3C,3Mから離間させる。そして、4つの作像ユニット1Y,1C,1M,1Kのうち、K用の作像ユニット1Kだけを駆動して、モノクロ画像を形成する。これにより、モノクロ画像形成時にY用、C用、M用の作像ユニットを無駄に駆動させることによるそれら作像ユニットの消耗を回避することができる。
2次転写ニップの図中上方には、定着手段としての定着ユニット60が配設されている。この定着ユニット60は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加圧加熱ローラ61と、定着ベルトユニット62とを備えている。定着ベルトユニット62は、定着ベルト64、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ63、テンションローラ65、駆動ローラ66、図示しない温度センサ等を有している。そして、無端状の定着ベルト64を加熱ローラ63、テンションローラ65及び駆動ローラ66によって張架しながら、図2中反時計回り方向に無端移動せしめる。この無端移動の過程で、定着ベルト64は加熱ローラ63によって裏面側から加熱される。
定着ベルト64における加熱ローラ63に対する掛け回し箇所には、図1中時計回り方向に回転駆動される加圧加熱ローラ61がおもて面側から当接している。これにより、加圧加熱ローラ61と定着ベルト64とが当接する定着ニップが形成されている。
定着ベルト64のループ外側には、図示しない温度センサが定着ベルト64のおもて面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、定着ニップに進入する直前の定着ベルト64の表面温度を検知する。この検知結果は、図示しない定着電源回路に送られる。定着電源回路は、温度センサによる検知結果に基づいて、加熱ローラ63に内包される発熱源や、加圧加熱ローラ61に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。これにより、定着ベルト64の表面温度が約140℃に維持される。
2次転写ニップを通過した記録シートPは、中間転写ベルト41から分離した後、定着ユニット60内に送られる。そして、定着ユニット60内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト64によって加熱されたり、押圧されたりして、フルカラートナー像が記録シートPに定着する。
このようにして定着処理が施された記録シートPは、排紙ローラ対67のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ本体の筺体の上面には、スタック部68が形成されており、排紙ローラ対67によって機外に排出された記録シートPは、このスタック部68に順次スタックされる。
転写ユニット40の上方には、Yトナー,Cトナー,Mトナー,Kトナーをそれぞれ収容する4つのトナー収容器であるトナーボトル72Y,72C,72M,72Kが配設されている。トナーボトル72Y,72C,72M,72K内の各色トナーは、トナー補給装置により、それぞれ、作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの現像ユニット7Y,7C,7M,7Kに適宜供給される。トナーボトル72Y,72C,72M,72Kは、作像ユニット1Y,1C,1M,1Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
図4において、トナー濃度センサ10Yは、第1剤収容室9Y内において、第2剤収容室14Yに進入する直前の現像剤のトナー濃度を検知する。また、トナー補給口17Yは、第2剤収容室14Yから第1剤収容室9Y内に進入した直後の現像剤に対してトナーを補給する位置に設けられている。つまり、第1剤収容室9Y内において、トナー濃度センサ10Yは、トナー補給口17Yよりも下流側の位置で現像剤のトナー濃度を検知する。
図5は、Y用のトナーボトル72Yを示す斜視図である。同図において、Y用のトナーボトル72Yは、粉体としての図示しないYトナーを収容する粉体収容部たるボトル状のボトル部73Yと、粉体排出部たる円筒状のホルダー部74Yとを備えている。
ホルダー部74Yは、図6に示されるように、ボトル状のボトル部73Yの頭部に係合して、ボトル部73Yを回転自在に保持する。ボトル部73Yの内周面には、容器の外側から内側に向けて突出するスクリュウ状の螺旋突起がボトル軸線方向に延在するように形成されている。
図7は、本プリンタにおけるトナー補給装置70を示す斜視図である。同図において、トナー補給手段としてのトナー補給装置70は、4つのトナーボトル72K,Y,C,Mを載置するボトル載置台95、それぞれのボトル部を個別に回転駆動するボトル駆動部96などを備えている。ボトル載置台95上にセットされたトナーボトル72K,Y,C,Mは、それぞれホルダー部をボトル駆動部96に係合させている。
図中矢印X1で示されるように、ボトル駆動部96に係合しているトナーボトル72Mをボトル載置台95上でボトル駆動部96から遠ざける方向にスライド移動させると、トナーボトル72Mのホルダー部74Mがボトル駆動部96から外れる。このようにして、トナー補給装置70からトナーボトル72Mを取り外すことができる。
一方、トナーボトル72Mが装着されていない状態のトナー補給装置70において、図中矢印X2で示されるように、ボトル載置台95上でトナーボトル72Mをボトル駆動部96に近づける方向にスライド移動させると、トナーボトル72Mのホルダー部74Mがボトル駆動部96に係合する。このようにして、トナー補給装置70にトナーボトル72Mを装着することができる。他色用のトナーボトル72K,Y,Cについても、同様の操作を行うことでトナー補給装置70に脱着することができる。
トナーボトル72Y,C,M,Kのボトル部73K,Y,C,Mの頭部外周面には、それぞれ図示しないギヤ部が形成されているが、このギヤ部はホルダー部74K,Y,C,Mに覆い隠されている。但し、ホルダー部74K,Y,C,Mの周面の一部には、ギヤ部を部分的に露出させるための図示しない切り欠きが形成されおり、ギヤ部はこの切り欠きから自らの一部を露出させている。
トナーボトル72K,Y,C,Mのホルダー部74K,Y,C,Mがボトル駆動部96に係合すると、ボトル駆動部96に設けられた図示しないK,Y,C,M用のボトル原動ギヤが、前述の切り欠きを介してボトル部73K,Y,C,Mのギヤ部に噛み合う。そして、ボトル駆動部96のK,Y,C,M用のボトル原動ギヤが図示しない駆動系によって回転駆動することで、ボトル部73K,Y,C,Mがホルダー部74K,Y,C,M上で回転駆動される。
図5において、ボトル部73Yがこのようにしてホルダー部74Y上で回転せしめられると、ボトル部73Y内のYトナーが上述のスクリュウ状の螺旋突起に沿ってボトル底側からボトル頭部側に向けて移動する。そして、粉体を収容する収容体たるボトル部73Yの先端に設けられた図示しないボトル開口を通って、円筒状のホルダー部74Y内に流入する。
図8は、トナー補給装置に装着された状態のトナーボトルと、その周囲構成とを示す概略構成図である。同図において、トナーボトルは、ホルダー部74Yの箇所で破断した横断面が示されている。上述したように、このホルダー部74Yには、ホルダー部74Yよりも図中奥側に存在している図示しないボトル部が回転駆動することで、ボトル部内のYトナーが送り込まれてくる。
トナーボトルのホルダー部74Yは、トナー補給装置のホッパ部76Yに係合している。このホッパ部76Yは、図紙面に直交する方向に扁平な形状に構成され、同図においては、中間転写ベルト41の手前側に位置している。ホルダー部74Yの底に形成されているトナー排出口75Yと、トナー補給装置のホッパ部76Yに形成されているトナー受入口とは、互いに連通している。
トナーボトルのボトル部からホルダー部74Yに送り込まれたYトナーは、自重によってホッパ部76Y内に落とし込まれる。ホッパ部内では、回転可能な回転軸部材77Yに固定された可撓性に富んだ押圧フィルム78Yが回転軸部材77Yとともに回転する。ホッパ部76Yの内壁には、ホッパ部76Y内におけるYトナーの有無を検知する圧電素子からなるトナー検知センサ82Yが固定されている。
ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる押圧フィルム78Yは、その回転に伴ってYトナーをトナー検知センサ82Yの検知面に向けて押圧する。これにより、トナー検知センサ82Yがホッパ部76Y内のトナーを良好に検知することが可能になる。トナーボトルのボトル部の回転駆動制御は、このトナー検知センサ82YがYトナーを良好に検知するようになるように行われる。よって、ボトル部内にYトナーが十分に存在している限り、ボトル部からホルダー部74Yを介してホッパ部76Y内に十分量のYトナーが落とし込まれて、ホッパ部76Y内は十分量のトナーで満たされる。この状態から、ボトル部を頻繁に回転させているにもかかわらず、トナー検知センサ82YによってYトナーが検知され難くなる状態に変化すると、図示しない制御装置は、ボトル部内のYトナーが残り僅かであるとみなして、「トナーニアエンド」の警報をユーザーに報知する。
ホッパ部76Yの下部には、横搬送管79Yが接続されており、ホッパ部76Y内のYトナーは、自重によってテーパーを滑り落ちでこの横搬送管79Y内に落とし込まれる。横搬送管79Y内には、トナー補給スクリュウ80Yが配設されており、その回転駆動に伴って、Yトナーを横搬送管79Yの長手方向に沿って横搬送する。
横搬送管79Yの長手方向の一端部には、落下案内管81Yが鉛直方向に延在する姿勢で接続されている。この落下案内管81Yの下端は、現像ユニット7Yの第1剤収容室9Yのトナー補給口17Yに接続されている。横搬送管79Y内のトナー補給スクリュウ80Yが回転すると、横搬送管79Yの長手方向の一端部まで搬送されたYトナーが、落下案内管81Yとトナー補給口17Yとを通じて現像ユニット7Yの第1剤収容室9Y内に落下する。これにより、第1剤収容室9Y内にYトナーが補給される。他色(C,M,K)においても、同様にしてトナーが補給される。
図9は、本プリンタにおける一部の電気回路を示すブロック図である。Y,C,M,Kトナーの補給量の調整は、補給制御手段として機能する制御装置100が、Y,C,M,K用の補給モータ71Y,71C,71M,71Kの駆動を制御することによって行われる。なお、トナー補給部材としては、補給モータ(例えば71Y)の駆動力によりトナー補給口(例えば17Y)から現像ユニット内へのトナーの補給量を調整できるものであれば、公知のものを広く利用することが可能である。
制御装置100は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段であるRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、記録手段たるフラッシュメモリー等から構成され、各種の演算処理や、制御プログラムの実行を行うことができる。そして、制御装置100は、RAMの中にY,C,M,Kについてのトナー濃度の制御目標値である目標トナー濃度値をそれぞれ格納している。
制御装置100の補給制御部102は、予測データ算出手段として機能する予測データ算出部101によって算出された予測データに基づいて、トナー補給装置70における各色の補給モータ(71Y,71C,71M,71K)の駆動を制御する。また、予測データ算出部101は、トナー濃度センサ(10Y,10C,10M,10K)によるトナー濃度検知結果や目標トナー濃度値などに基づいて、ROMに記憶されている演算プログラムや演算テーブルを用いて、現像剤のトナー濃度の時間変化についての予測データを算出する。
図10は、制御装置(100)によって実施されるトナー補給量の決定のプロセスを回路的に説明するためのブロック図である。実際には、制御装置(100)は、トナー補給量を演算処理によって決定しているが、理解を容易にするために、その演算処理のプロセスを回路的に説明する。制御装置(100)は、目標トナー濃度値と、トナー濃度検知結果とを比較し、比較結果に応じた量のトナーをトナー補給口(例えば17Y)から現像ユニット内に供給するように、補給モータ(例えば71Y)の駆動を制御する。この制御により、現像に伴うトナーの消費によってトナー濃度を低下したさせた現像剤に対し、現像ユニットの第1剤収容部(例えば9Y)にて適量のトナーが補給される。このため、第2剤収容部(例えば14Y)内の現像剤のトナー濃度が目標トナー濃度値の付近に維持される。
制御装置(100)においては、まず、トナー濃度検知結果と目標トナー濃度値とが比較され、その結果がセンサ計算部に入力される。そして、第1補給量計算部により、その比較結果などに基づいて、トナー濃度検知結果と目標トナー濃度値との差分を解消するためのトナー補給量が算出される。連続プリント動作中には、現像が連続的に行われていることから、そのトナー補給量に相当するトナーを補給しただけでは、トナー濃度を目標トナー濃度値に合わせることができない。そこで、画像情報や用紙情報など、出力される画像に関係する情報に基づいて、現像に伴うトナー消費量を相殺するためのトナー補給量が第2補給量計算部によって算出される。そして、第1補給量算出部によって算出されたトナー補給量と、第2補給量算出部によって算出されたトナー補給量との合計が、最終的なトナー補給量として求められる。
図11は、第1補給量計算部で行われる演算処理を回路的に説明するためのブロック図である。この図では、PI制御によってトナー補給量が算出される例を示している。第1補給量計算部には、目標トナー濃度値とトナー濃度検知結果との差分であるトナー濃度目標差分値が入力される。トナー濃度目標差分値が大きいほど、トナー濃度が目標トナー濃度値から離れた値になっている。このトナー濃度目標差分値は、比例処理部(P)と積分処理部(I)とにそれぞれ入力される。そして、比例処理部では、トナー濃度目標差分値に対して所定のゲインを乗算する。これにより、トナー濃度差分値に比例した値のトナー補給量を求める。一方、積分処理部では、トナー濃度目標差分値を累積した積分値を求める。あるタイミングにおけるトナー濃度目標差分値がかなり大きな値であった場合、積分値も大きな値になるため、トナー補給量も大きな値が算出される。このため、トナー濃度の迅速な回復が図られる。トナー補給量が適切であれば、積分値は迅速に小さくなっていく。第1補給量計算部では、比例制御部によって算出されたトナー補給量と、積分制御部によって算出されたトナー補給量との合計が、FB(フィードバック)制御によるトナー補給量として算出される。なお、PI制御に限らず、入力に対する差分に相当するトナー補給量と、差分の累積に相当するトナー補給量とを反映するものであれば、他の制御による算出方法を採用してもよい。
図1に示されるように、中間転写ベルト41の周方向における全域のうち、ニップ入口ローラ49に対する掛け回し箇所には、光学センサ150がベルトおもて面側から対向している。図12は、光学センサ150を中間転写ベルト41とともに示す拡大構成図である。マルチ反射型光学センサからなる光学センサ150は、光源たるLED150aと、正反射受光部150bと、拡散反射受光部150cとを有している。そして、LED150aから発した後、中間転写ベルト41の表面上で正反射した正反射光を、正反射受光部150bによって受光しながら、正反射光の受光量に応じた電圧を正反射受光部150bから出力する。また、LED150aから発した後、中間転写ベルト41の表面上で拡散反射した拡散反射光を、拡散反射受光部150cによって受光しながら、拡散反射光の受光量に応じた電圧を拡散反射受光部150cから出力する。中間転写ベルト41上に形成されたテストトナー像(詳細は後述する)が光学センサ150との対向位置を通過するときには、前述した正反射光や拡散反射光の受光量がテストトナー像の光学特性を示す。また、ベルト地肌が前記対向位置を通過するときには、前述した正反射光や拡散反射光の受光量がベルト地肌の光学特性を示す。
本プリンタの制御装置は、以下のようなプロセスコントロール処理を、電源オン直後や、所定枚数のプリントを行う毎に実施するように構成されている。プロセスコントロール処理では、Y,C,M,KトナーからなるY,C,M,K階調パターン像をそれぞれ形成する。これら階調パターン像はそれぞれ、複数個のテストトナー像からなり、光学センサ150との対向位置を通過するように、中間転写ベルト41のベルト幅方向における中央部に形成される。K階調パターン像PKを例にすると、これは例えば図13に示されるように、段階的にトナー付着量が徐々に増えていく第1Kテストトナー像PK1、第2Kテストトナー像PK2、第3Kテストトナー像PK3・・・第14Kテストトナー像PK14という14個のKテストトナー像からなる。これらKテストトナー像がそれぞれ光学センサ150との対向位置に進入したときにおける光学センサ150からの出力電圧が、I/Oインターフェースを介して制御装置(100)に送られてRAMに記憶される。Kと同様にして、Y,C,M,についても、それぞれ14個のY,C,Mテストトナー像からなるY,C,M階調パターン像PY,PC,PMが形成される。そして、14個のY,C,Mテストトナー像が光学センサ150との対向位置に進入したときにおける光学センサ150からの出力電圧がRAMに記憶される。なお、図13は、中間転写ベルト41を鉛直方向の下方から上方に向けて見上げた状態を示している。
制御装置(100)は、RAMに記憶した光学センサ150からの出力電圧と、ROM内に予め記憶しているアルゴリズムとに基づいて、Y,C,M,Kについてそれぞれ、出力電圧を単位面積当りのY,C,M,Kトナー付着量に換算してRAMに記憶する。
図14は、プロセスコントロール処理で実施される各種の工程を示すフローチャートである。プロセスコントロール処理では、装置立ち上げ処理(ステップ1:以下、ステップをSと記す)、フォトセンサの校正処理(S2)、トナー濃度センサの出力値の取得処理(S3)、階調パターン像の作成処理(S4)、階調パターン検出処理(S5)、トナー付着量の算出処理(S6)、目標付着量となる現像バイアスの算出処理(S8)、及び目標トナー濃度値(Vtref)の補正処理(S9)が行われる。
装置立ち上げ処理(S1)では、各種モータや各種デバイスの駆動が開始されて、それらの駆動が安定するまで処理の進行が待機される。光学センサ150は、温度変化や経時劣化などによってLEDの出力を変化させたり、受光部の感度を変化させたりする。このため、LEDに対して一定の電流を供給し続けたとしても、ベルトの地肌を検知しているときの光学センサ150の受光部からの出力電圧値が経時的に変化してしまう。ベルト表面性の経時変化によっても、受光部からの出力電圧値が経時的に変化してしまう。このため、プロセスコントロール処理を実施するにあたっては、フォトセンサの校正処理を行って、中間転写ベルト41の地肌部を検知しているときの受光部から一定の電圧を出力させるようにする。
フォトセンサの校正処理(S2)では、光学センサ150ついて、正反射受光部からの出力電圧値が所定の範囲内になるように、LEDへの電流供給量(LEDの発光量)が調整される。以下、このときの受光部からの出力電圧値を、地肌出力値Vsgという。LEDへの電流供給量を増やすにつれてLEDの発光量が増加して正反射受光部の受光量が増加する。逆に、LEDへの電流供給量を減らすにつれてLEDの発光量が減少して正反射受光部の受光量が減少する。
フォトセンサの校正処理(S2)における処理の詳細工程は次の通りである。即ち、各フォトセンサについてそれぞれ、LEDに対する電流供給が開始された後、正反射受光部からの出力電圧値が4±0.5[V]になるように、LEDに対する電流供給量が調整される。以下、この電流供給量をLED電流Ifsgと記す。
制御装置(100)は、二分探索法を用いて正反射受光部からの出力電圧値を4.0[V]に最も近づけ得るLED電流Ifsgを探索する。二分探索法の結果、正反射受光部からの出力電圧値を4±0.5[V]の範囲内に収め得るLED電流Ifsgが存在しなかった場合には、地肌出力値Vsg調整エラーとする。この地肌出力値Vsg調整エラーが連続して3回発生した場合には、異常発生エラーの処理に移行して装置を緊急停止させてその旨のメッセージを表示する。なお、本プリンタにおいては、過電流を供給することによるLEDの破損を防止する狙いで、LED電流Ifsgの上限値が30[mA]に設定されている。
制御装置(100)は、二分探索法により、正反射受光部からの出力電圧値を4±0.5[V]の範囲内に収め、且つ、4.0[V]に最も近づけ得るLED電流Ifsgを見つけた場合には、その値をRAMに記憶する。そして、以降、プロセスコントロール処理を終了するまで、そのLED電流IfsgをLEDに供給する。
なお、LED電流Ifsgの初期値をかなり低い値に設定していると地肌出力値Vsgの調整終了までに長時間を要してしまうため、制御装置(100)は、初期値として、前回の校正処理を実施したときのLED電流Ifsgの値をRAMから読み出してそれを初期値として採用する。そして、その初期値の条件で地肌出力値Vsgを所定の時間間隔で測定してそれらの平均値を求め、平均値が4.0±0.5[V]の範囲内である場合には、そのLED電流Ifsgをそのまま採用する。
制御装置(100)は、このようにして光学センサ150の校正処理(S2)を終えると、次に、トナー濃度センサの出力値の取得処理(S3)を実施する。この取得処理では、上述したY,C,M,K用のトナー濃度センサ(10Y,10C,10M,10K)についてそれぞれ、出力電圧値Vtを取得してRAMに記憶する。Y,C,M,K用のトナー濃度センサの出力電圧値Vtをそれぞれ取得するのは、後に、Y,C,M,Kについてそれぞれ、目標トナー濃度値の補正に利用するためである。
次に、制御装置(100)は、階調パターン像の作成処理(S4)の実施により、Y,C,M,Kの階調パターン像を中間転写ベルト41に形成する。図13では、各色の階調パターン像のうち、K階調パターン像PKだけを示しているが、階調パターン像の作成処理(S4)では、Y,C,M,Kの階調パターン像PY,PC,PM,PKがベルト移動方向に沿って一直線上に並んで形成される。何れの階調パターン像も、14個のテストトナー像からなり、それらテストトナー像の光学特性が光学センサ150によって検知される。
各色の階調パターン像における14個のテストトナー像のサイズは次の通りである。即ち、ベルト幅方向の長さが10[mm]であり、ベルト移動方向の長さが14.4[mm]であり、先行するテストトナー像と後続のテストトナー像との間の間隙が5.6[mm]である。階調パターン像におけるテストトナー像の数は14個に限定されるものではないが、互いに隣り合う感光体の中心間距離の範囲に収まる個数であることが望ましい。階調パターン像のベルト移動方向における長さが前述の中心間距離によりも長くなると、各色の階調パターン像の形成を同時に開始することができず、先行する階調パターン像の末端部と後続の階調パターン像の先頭部とを重ねないように、形成タイミングをずらす必要が生ずる。これにより、プロセスコントロール処理の実施時間を長くしてしまうからである。
本プリンタでは、階調パターン像を形成する際、テストトナー像の画像濃度(トナー付着量)にかかわらず、テストトナー像の潜像の光書込強度を最大強度(ベタ画像を形成するときの強度)に設定する。そして、個々のテストトナー像で現像バイアスや帯電バイアスを異ならせることで、個々のテストトナー像の画像濃度を異ならせている。
本プリンタのように、各色の階調パターン像を1つの光学センサ150だけで検知する構成では、ベルト幅方向の一端部と他端部とで画像濃度偏差が生じてしまう場合であっても、その画像濃度偏差の影響を受けることなく、テストトナー像の画像濃度を正確に検知することができる。これに対し、各色の階調パターンを互いにベルト幅方向にずれた位置に形成し、それぞれを専用のフォトセンサで検知する構成では、階調パターン像の形成や検知の時間を短縮することが可能になるが、前述の画像濃度偏差の影響を受けてしまう。
各色の階調パターン像を形成したら、制御装置(100)は、階調パターン検出処理(S5)を実施して、Y,M,C,Kの階調パターン像についてそれぞれ、14個のテストトナー像における単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を検出する。本プリンタにおいては、K階調パターン像のテストトナー像については、正反射光量だけを利用してトナー付着量を検出する。これに対し、C,M,K階調パターン像のテストトナー像については、正反射光量と拡散反射光量とを利用してトナー付着量を検出する。
上述したように、階調パターン像は、Y,C,M,Kの4色のうち、Yの階調パターン像が1番始めに形成される。Y階調パターン像の形成が開始されてから、Y階調パターン像の1つ目のテストトナー像が光学センサ150の直下に進入するまでの時間(以下、検知タイムラグという)は、プロセスコントロール実施時におけるプロセス線速(ベルト等の速度)や、感光体〜センサ間距離などによって予め決まっている。但し、中間転写ベルト41は厳密に設計速度で移動するわけではなく、且つ感光体〜センサ間距離にも誤差があることから、検知タイムラグにも多少の誤差が発生する。制御装置(100)は、想定し得る最大の誤差が検知タイムラグに発生したとしても、Y階調パターン像の先頭を確実に捉えることができるタイミングで、光学センサ150からの出力電圧値を取得し始める。
次に、制御装置(100)は、トナー付着量の算出処理(S6)を実施する。この演算処理では、K階調パターン像におけるKテストトナー像のトナー付着量を、次のようにして求める。即ち、まず、正反射受光部からの地肌出力値Vsgやトナー像出力値Vspについて、次のような計算を行う。
これらの式において、「_reg」は正反射受光部からの出力電圧値であることを示している。これらの式においては、地肌出力値Vsgやトナー像出力値Vspについて、オフセット電圧Voffsetとの差分を求めている。オフセット電圧Voffsetは、LEDの発光をオフにしたときの受光部からの出力電圧値を表している。また、式におけるnは、Kテストトナー像の番号を表している。つまり、階調パターン像における14個のKテストトナー像の全てについて、前述の差分を求めるのである。測定値とオフセット電圧Voffsetとの差分を求めることで、Kテストトナー像のトナー付着量の増加分を把握することが可能になる。
次に、制御装置(100)は、次式のように差分の正規化値を求める。
そして、予め記憶している正規化値Rnとトナー付着量との関係を示すアルゴリズム(グラフ、計算式)に基づいて、それぞれのKテストトナー像におけるトナー付着量を求める。
また、Y階調パターン像,C階調パターン像,M階調パターン像のテストトナー像のトナー付着量については、次のようにして求める。図15は、センサ出力値とカラーテストトナー像のトナー付着量との関係を示すグラフである。制御装置(100)は、まず、次式のように、Y,C,Mの各色についてそれぞれ、14個のテストトナー像におけるトナー像出力値Vspのオフセット電圧Voffsetとの差分を求める。なお、式中における「_dif」は拡散反射受光部からの出力電圧値であることを示している。
次に、拡散反射受光部からのトナー像出力値Vsp_difに対して拡散反射受光部の感度に応じた補正を行うための感度補正係数αを次のようにして求める。
感度補正係数αの比を最小値によって求めるのは、正反射光受光部からのトナー像出力値Vsp_regにおける正反射成分の最小値はほぼゼロであり、かつ正の値となることがわかっているからである。このようにして求めた感度補正係数αを拡散反射受光部からのトナー像出力値Vsp_dif[n]に乗ずることで、トナー像出力値Vsp_difの差分とトナー付着量との関係を示すグラフが例えば図16に示されるように補正される。
次に、次式のようにして、正反射受光部からのトナー像出力値Vsp_regの差分について、拡散反射光成分と正反射光成分とをそれぞれ分解する。なお、数7における△Vsp_reg_dif[n]は、差分の拡散反射光成分を表している。また、数8における△Vsp_reg_reg[n]は、差分の正反射光成分を表している。
このようにして、正反射光受光部からのトナー像出力値Vsp_regの差分から、拡散反射光成分を分離して、純粋な正反射光成分のみを抽出する。これにより、例えば図17に示されるように、正反射光受光部からのトナー像出力値Vsp_regの差分とトナー付着量との関係を示すグラフが純粋な正反射成分だけを反映したものに補正される。
次に、次式により、正反射受光部について14個のテストトナー像にそれぞれ対応する14個の正反射成分の正規化を行う。
また、次式により、拡散反射受光部について、トナー像出力値Vsp_difから地肌出力値Vsp=difの拡散光出力成分を除去する。
以上のようにして、正反射光に対して感度を持つ低トナー付着量域において、正反射光よりトナー付着量との関係が一義的に表せる正反射光成分のみを抽出し、拡散反射光から、[ベルト地肌部から直接反射されてくる拡散反射光成分]を除去したら、これらを基に拡散反射光出力の感度補正を行う。感度補正を行う理由は、次の補正を行うためである。即ち、LED及び受光部の感度の固体誤差に関連する補正、及び、LED及び受光部の温度特性や経時劣化特性に関連する補正である。
この補正については、次のようにして行う。即ち、図18に示されるように、「正反射光部の正反射成分の正規化値」に対し、地肌部変動補正後の拡散反射光出力をプロットし、低トナー付着量域における直線関係から、拡散反射光出力の感度を求め、この感度が予め定めた狙いの感度となるように、補正を行う。拡散反射光出力の感度とは、図18のグラフに示される直線の傾きであり、ある正規化値の地肌部変動補正後の拡散反射光出力がある値となるように、現状の傾きに対して乗じる補正係数を算出して、補正する。その直線の傾きを最小二乗法により求める。
グラフにプロットした点を近似する方法は、次の通りである。即ち、「正反射光の正反射成分の正規化値」に対し、地肌部変動補正後の拡散光出力をプロットしたプロット線を多項式近似(2次式近似)して、感度補正係数ηを算出する。より詳しくは、まず、プロット線を2次近似式(y=ξ1x2+ξ2x+ξ3)で近似して、次式のように最小二乗法により係数ξ1、ξ2、ξ3を求める。なお、次式におけるmは、データ数を表している。また、x[i]は、正反射光の正反射成分の正規化値を表している。また、y[i]は、地肌部変動補正後拡散光出力を表している。計算に用いるxの範囲は、例えば0.1≦x≦1.00とする。
次に、こうして近似されたプロット線から計算される正規化値aをある値bとするような感度補正係数ηを次式によって求める。
また、次式のように、上記数10で求めた地肌部変動補正後の拡散光出力に対し、この感度補正係数ηを乗じることで、トナー付着量と拡散出力との関係を予め定められた関係となるように補正する。なお、次式における△Vsp_dif’は、上記数10で求められた拡散光出力を表している。
このような補正を行うことで、温度変化、経時劣化などによるLEDや受光部の出力変動を抑えて、受光部からの出力電圧値とトナー付着量との関係を一義的な関係に補正することができる。
次に、付着量変換テーブルを用いて△Vsp_dif"をトナー付着量に変換する。補正後の出力電圧値に基づいて、付着量変換テーブルを参照することにより、出力電圧値をトナー付着量に変換することができる。
以上のようにして、各色の階調パターン像についてそれぞれ14個のテストトナー像のトナー付着量を求めたら、次に、目標付着量となる現像バイアスの算出処理(S8)を実施する。具体的には、まず、図19に示されるように、テストトナー像を現像したときの現像ポテンシャル(静電潜像と現像スリーブとの電位差)と、そのテストトナー像のトナー付着量との関係を示す近似直線を最小二乗法によって求める。そして、その近似直線の傾きを、現像γとして求める。また、その近似直線のx切片を現像開始電圧Vkとして求める。
次に、近似直線に基づいて、目標トナー付着量(図示の例では4.5mg/cm2)が得られる現像ポテンシャルを求め、その結果から、目標トナー付着量が得られる現像バイアスを算出する(現像バイアスVb[−V]=(現像ポテンシャル−|潜像電位|)×(−1))。なお、作像時の帯電バイアスVcは、感光体の地肌部電位を現像剤の磁性キャリアを感光体に付着させない程度の値にするように予め決定されている。
現像バイアスVbを求めたら、次に、目標トナー濃度値(Vtref)の補正処理(S9)を実施する。この補正処理では、上記S8で求めた現像γから所定の目標現像γを減ずることで、△γを求める。目標現像γは予め決められた所定の数値であり、例えば現像ポテンシャル=1000[−V]という条件で1.0[mg/cm2]のトナー付着量が得られる値などが採用される。この場合、現像開始電圧Vkは0[−V]として想定され、目標トナー付着量が0.5[mg/cm2]であれば、現像ポテンシャルは500[−V]必要である。現像ポテンシャル[−V]=現像バイアスVb−潜像電位であるので、潜像電位が50[−V]であれば、現像バイアスVb=550[−V]となる。Δγが所定の値を超えるとVbが設定可能な範囲を超えたり、異常画像が発生したりするので、Δγが目標範囲になるように目標トナー濃度値(Vtref)を補正する。ただし、このときのVtがVtrefと大きく異なっているときは補正を行わない。
例えば、Δγ≧0.30[mg/cm2/−kV](高い)で、且つ、Vt−Vtref≧−0.2[V]であったとする(例1)。この場合、Vtref=Vt−0.2[V]となる。つまり、現時点よりトナー濃度を下げるように目標トナー濃度値(トナー濃度制御目標値)Vtrefを設定することになる。一方、Δγ≦0.30[mg/cm2/−kV](低い)で、且つ、Vt−Vtref≦0.2[V]であったとする(例2)。この場合、Vtref=Vt+0.2[V]となる。つまり、現時点よりトナー濃度を上げるように目標トナー濃度値を設定することになる。例1や例2とは異なる事例の場合には、目標トナー濃度値Vtrefを補正せずに、前回と同じ値のままにする。
制御装置(100)は、以上のようなプロセスコントロール処理を、定期的に実施するようになっている。
図20は、感光体表面電位と、感光体の表面位置との関係を示すグラフである。本プリンタでは、いわゆる反転現像を行うようになっている。そして、トナーとして、マイナス帯電性のものを用い、感光体の表面を帯電装置によってマイナス極性に一様に帯電させる。同図のグラフにおける縦軸の感光体表面電位は、単位が[−V]になっているため、縦軸の値が原点から遠ざかるほど、マイナス側に大きな値になっていることを意味している。地肌部電位は、感光体の全域のうち、帯電装置によって一様帯電せしめられたままの状態になっている領域の電位である。地肌部に対する露光によって書き込まれた潜像の電位も、地肌部電位と同様にマイナスの極性になっているが、その絶対値が地肌部電位の絶対値よりも小さくなっている。これは、感光体の地肌部におけるマイナス極性の電位が露光によって減衰したからである。
現像ユニットの現像ロールに印加される現像バイアスVbは、地肌部電位や潜像電位と同様にマイナス極性の値であるが、その絶対値が、地肌部電位の絶対値と、潜像電位の絶対値との間の値になっている。現像バイアスVbと潜像電位との電位差である現像ポテンシャルが、現像ロール上のトナーを静電潜像に引き寄せる力として作用することから、現像ポテンシャルが大きくなるほど、静電潜像に対する単位面積あたりのトナー付着量(現像濃度)が多くなる。
現像ポテンシャルの大きさは、地肌部電位に影響を与える帯電装置の帯電ローラに対する帯電バイアスの大きさや、露光時における地肌部電位の減衰率に影響を与えるレーザー光学系のレーザー強度、現像バイアスVbなどによって左右される。トナーは、潜像に対して現像ポテンシャルをトナー集合体の電荷量でほぼ相殺する量で付着することから、トナー付着量は、現像ポテンシャルだけでなく、トナー帯電量(Q/M)によっても左右される。このため、作像ユニットの現像能力は、トナー帯電量に大きく影響を受ける。そして、トナー帯電量は、温湿度やプリント実施頻度などに影響を受けることから、現像能力も温湿度やプリント実施頻度などに影響を受けてしまう。
具体的には、図21に示されるように、湿度が比較的高い場合には、中程度である場合に比べて、二成分現像剤におけるトナー帯電量(Q/M)が低下する。温度とトナー帯電量との関係も、湿度とトナー帯電量との関係と同様である。よって、湿度や温度が比較的高い場合には、トナー帯電量(Q/M)が低下して、現像能力が高まって現像濃度を過剰に濃くしてしまい易くなる。これに対し、温湿度が比較的低い場合には、中程度である場合に比べて、二成分現像剤におけるトナー帯電量(Q/M)が増加することから、現像能力が低下して現像濃度不足を発生させ易くなる。また、プリント実施頻度が比較的高い場合には、現像ユニット内でトナー粒子が撹拌によって摩擦される頻度が増加することから、トナー帯電量(Q/M)が増加する。これにより、現像能力が低下して現像濃度不足を発生させ易くなる。これに対し、プリント実施頻度が比較的低い場合には、現像ユニット内でトナー粒子が摩擦される頻度が低下することから、トナー帯電量(Q/M)が低下する。これにより、現像能力が増加して現像濃度を過剰に高め易くなる。
トナー帯電量に影響を与える事象としては、温湿度やプリント実施頻度(動作頻度)の他に、放置時間も挙げられる。放置時間は、画像形成動作が連続的に停止され続ける時間である。画像形成動作が停止しているときには、二成分現像剤の撹拌動作も停止することから、現像ユニット内のトナーは放置時間が長くなるにつれて、図22に示されるように、帯電量を徐々に低下させていく。放置時間がある程度長くなっている状態でプリントジョブが開始されると、トナー帯電量が著しく低下している状態、即ち、現像能力が著しく高まっている状態であることから、現像濃度過多を引き起こし易くなる。オフィスにおいては、年末年始や夏休みなど長期間の休暇をまたいでしまうと、放置時間が非常に長くなってトナー帯電量が大きく低下することになる。
そこで、制御装置(100)は、画像濃度を定期的に監視し、画像濃度と目標値との差に応じて目標トナー濃度値を補正する目標値補正処理を実施するようになっている。なお、上述したプロセスコントロール処理においても、目標トナー濃度値を補正しているが、この目標値補正処理は、プロセスコントロール処理とは全く別に行われる。
プロセスコントロール処理を実施する一番の目的は、作像ユニットの部品の劣化に起因する現像ポテンシャルの変化を、バイアス等の条件変更によって相殺することにある。具体的には、感光体が使用に伴って劣化してくると、感光体が帯電し難くなってくるため、劣化にかかわらず帯電バイアスを一定にしていると、地肌部電位が経時的に低下して所望の現像ポテンシャルが得られなくなる。感光体の劣化に限らず、レーザー光学系、現像ロールなど、様々な機器の劣化が現像ポテンシャルの経時変化を引き起こすことになる。そこで、プロセスコントロールを定期的に実施することで、機器の劣化にかかわらず、所望の現像ポテンシャルが得られるように、帯電バイアス、現像バイアス、レーザー強度などを補正するのである。
これに対し、目標トナー濃度値を補正する目標値補正処理を実施する目的は、現像ポテンシャルを安定化させることではなく、トナー帯電量(Q/M)を安定化させることにある。
図2において、作像ユニット(1Y)は、感光体3Yの周面における全域のうち、現像領域を通過した後、1次転写ニップに進入する前の領域に対向する反射型フォトセンサからなる画像濃度センサ90Yを有している。この画像濃度センサ90Yは、感光体3Yの回転軸線方向における全域のうち、画像情報に基づく画像を形成しない端部領域に対向している。この端部領域には、後述するベタテストトナー像が形成される。画像濃度センサ90Yは、感光体3Yの端部領域における感光体無垢表面の光反射量(以下、無垢表面光反射量という)を検知したり、端部領域に形成されたベタテストトナー像の光反射量(以下、トナー像光反射量という)を検知したりする。制御装置(100)は、画像濃度センサ90Yから送られてくる無垢表面光反射量とトナー像光反射量とに基づいて、ベタテストトナー像に対する単位面積あたりのトナー付着量、即ち、画像濃度を把握することができる。なお、C,M,K用の作像ユニット(1C,M,K)においても、Y用の作像ユニットと同様の画像濃度センサが設けられている。
制御装置(100)は、10枚のプリントを行う毎に、Y,M,C,Kについてそれぞれ、目標トナー濃度値を補正するための目標値補正処理を実施する。この目標値補正処理では、まず、図23に示されるように、感光体の端部領域にベタテストトナー像を形成した後(S1)、そのベタテストトナー像の画像濃度を検知する(S2)。次に、その検知結果と画像濃度の目標値との差又は比を用いるアルゴリズムにより、目標トナー濃度値の補正量を算出する(S3)。そして、その補正量で目標トナー濃度値を補正する(S4)。このような目標値補正処理をY,C,M,Kの各色でそれぞれ実施する。なお、前述のアルゴリズムは、制御装置(100)のフラッシュメモリーに記憶されている。また、アルゴリズムの代わりに、データテーブルを用いてもよい。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
制御装置(100)は、目標値補正処理を実施してから、所定時間が経過した後に、目標値補正処理で使用するアルゴリズムを補正するためのアルゴリズム補正処理を実施する。このアルゴリズム補正処理では、図24に示されるように、まず、感光体の端部領域にベタテストトナー像を形成した後(S1)、そのベタテストトナー像の画像濃度を検知する(S2)。次に、その検知結果と画像濃度の目標値との差又は比に基づいてアルゴリズムを補正する(S3)。このようなアルゴリズム補正処理をY,C,M,Kの各色でそれぞれ実施する。なお、アルゴリズムの代わりにデータテーブルを用いる場合には、アルゴリズム補正処理に代えて、データテーブル補正処理を実施させるようにする。
かかる構成において、温湿度、プリント実施頻度、放置時間などが変化し始めると、目標値補正処理でアルゴリズムによって求められる目標トナー濃度値の補正量が適正値からずれ始める。すると、アルゴリズム補正処理において、ベタテストトナー像の画像濃度の検知結果が目標値からずれ始めて、そのずれ量に応じてアルゴリズムがより適正値に近い補正量を求めるものに補正される。よって、目標トナー濃度値の補正量が温湿度等によって適正量からずれてしまうことによる画像濃度不足や画像濃度過多の発生を抑えることができる。
なお、制御目標値としての目標トナー濃度値を目標値補正処理で補正する例について説明したが、他の制御目標値を目標値補正処理で補正するように構成してもよい。例えば、特許文献2に記載の画像形成装置と同様に、出力画像面積に基づいて求めたトナー補給装置の目標駆動量を目標値補正処理によって補正するようにしてもよい。
アルゴリズムを補正する具体的な方法の第1例として、関数の係数を変化させる方法を挙げることができる。例えば、目標トナー濃度値や目標駆動量などの補正量を求めるアルゴリズムとして、「補正量y=ax+b」という一次関数を用いる場合に、係数としてaを、ベタテストトナー像の画像濃度と目標値との差又は比に応じた値に補正するのである。
また、アルゴリズムを補正する具体的な方法の第2例として、関数の式を変化させる方法を挙げることができる。例えば、線形の特性を表す関数から、非線形の特性を表す関数に補正したり、その逆の補正を行ったりすることが挙げられる。また、ある次数の関数を別の次数の関数に補正する例も挙げられる。また、一次関数の切片を補正する例も挙げられる。
また、アルゴリズムを補正する具体的な方法の第3例として、アルゴリズムとしてのデータテーブルを変化させる方法が挙げられる。更に、データテーブルを変化させる方法としては、上記差又は比と補正量とを関連付けているデータテーブルにおける各補正量のデータを、上記差又は比に基づく計算式によって補正する方法が挙げられる。また、予め複数の基準データテーブルを用意しておき、使用中のデータテーブルに対応する基準データテーブルと、上記差又は比とに基づいて、補正量をより適切に求めることができるデータテーブルを複数の基準データテーブルの中から特定し、それと全く同じものに、使用中のデータテーブルを補正する方法でもよい。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例のプリンタについて説明する。
上述した目標値補正処理を実施することで、画像濃度をより目標値に近づけることが可能になるが、急激な温度変化、湿度変化、プリント実施頻度変化に対して迅速に応答することが困難であった。具体的には、ユーザーがエアコンのスイッチを入れるなどして、温度や湿度が急激に変化すると、目標値補正処理の実施によって目標トナー濃度値を大きく補正する必要が生じる。ところが、目標トナー濃度値を大きく補正した時点では、現像装置内の二成分現像剤のトナー濃度が補正後の目標トナー濃度値から大きくかけ離れた値になっている。その後、二成分現像剤のトナー濃度が補正後の目標トナー濃度値まで大きく変化するためには、ある程度の時間を要する。その時間内では、二成分現像剤のトナー濃度が目標トナー濃度値からずれていることから、現像濃度過多や現像濃度不足を引き起こしてしまうのである。
二成分現像剤のトナー濃度は、作像ユニットの現像能力に影響を及ぼす制御パラメータであるが、作像ユニットにおいては、その他にも、現像能力に影響を及ぼす制御パラメータがたくさんある。例えば、現像バイアスVbは、現像ポテンシャルを決定することから、現像能力に影響を及ぼす制御パラメータである。現像バイアスVbの制御目標値を補正すると、その瞬間に、現像領域における現像バイアスVbが補正後の値に変化する。このため、現像バイアスVbは、補正による現像能力の変化の応答速度が極めて速い制御パラメータである。これに対し、トナー濃度は、既に説明したように、補正による現像能力の変化の応答速度がかなり遅い制御パラメータである。
制御装置(100)は、目標値補正処理において、少なくとも、代替補正処理と、正規補正処理と、代替値戻し補正処理とを実施するようになっている。具体的には、正規補正処理は、目標トナー濃度値を補正する処理であり、実施形態に係るプリンタでは、この正規補正処理だけが行われていた。
一方、代替補正処理は、第1制御パラメータたるトナー濃度よりも応答速度の速い第2制御パラメータとしての現像バイアスVbの制御目標値を、正規補正処理における目標トナー濃度値の補正量に相当する補正量で補正する処理である。具体的には、制御装置(100)は、目標トナー濃度値の補正量と、現像バイアスVbの制御目標値の補正量との対応関係を示すデータテーブルをフラッシュメモリーに記憶している。このデータテーブルは、予めの実験によって構築されたものであり、トナー濃度を変化させた場合と同等の現像濃度変化をきたす現像バイアスの変化量(補正量)を、目標トナー濃度値の補正量に関係付けたものである。このデータテーブルに基づいて、目標トナー濃度値の補正量に対応する現像バイアスVbの制御目標値の補正量を特定し、特定結果と同じ値に現像バイアスVbの制御目標値を補正する。これにより、トナー濃度を目標トナー濃度値と同じ値まで変化させた場合と同様の効果を、一瞬にして得ることができる。つまり、代替補正処理によって現像バイアスVbの制御目標値を補正することで、現像能力を一瞬のうちに所望のレベルに戻すことができるのである。
制御装置(100)は、目標値補正処理を開始すると、まず、目標トナー濃度値の補正量を特定する。そして、その補正量に対応する、現像バイアスVbの制御目標値の補正量を上述したデータテーブルに基づいて特定する。このようにして現像バイアスVbの制御目標値の補正量を特定したら、代替補正処理を実施して、現像バイアスVbの制御目標値をその補正量に基づいて補正する。また、この代替補正処理と並行して、正規補正処理を実施する。この正規補正処理では、目標トナー濃度値を実施形態と同様にして補正する。
正規補正処理を実施してしばらくすると、トナー補給、あるいはプリントジョブが進行して、二成分現像剤のトナー濃度が、補正後の目標トナー濃度値とほぼ同じ値まで変化する。制御装置(100)は、このとき、あるいは、もう少し早いタイミングを見計らって、代替値戻し処理を実施する。そして、この代替値戻し処理により、代替補正処理で補正していた現像バイアスVbの制御目標値を元の値に戻す。
かかる構成の本プリンタにおいては、温度変化等によって変化してしまった現像能力を代替補正処理によって迅速に元通りに復帰させる。また、正規補正処理により、現像バイアスVbよりも応答速度の遅い目標トナー濃度値を補正する。そして、目標トナー濃度値の補正が現像能力に反映されるようになってきた時点、即ち、実際のトナー濃度が補正後の目標トナー濃度値の付近まで変化した時点で、代替値戻し処理により、現像バイアスVbの制御目標値を元の値に戻すことで、狙いの現像能力をそのまま維持する。このような一連の処理により、目標トナー濃度値を補正してから、その補正が現像能力に反映されるようになるまでにおける現像濃度不良の発生を抑えることができる。
なお、アルゴリズム補正処理では、第1制御パラメータとしてのトナー濃度の制御目標値である目標トナー濃度(第1目標値)を求めるためのアルゴリズム(第1アルゴリズム)を、実施形態と同様にして補正する。また、第2制御パラメータとしての現像バイアスVbの制御目標値(第2目標値)を求めるためのデータテーブル(第2アルゴリズム)を、次のようにして補正する。即ち、上述のベタテストトナー像の画像濃度を検知した検知結果と画像濃度の目標値との差又は比に基づいて、データテーブルを補正する。
現像バイアスVbの制御目標値の補正は、あくまでも一時的な措置であり、その補正を目標トナー濃度値の補正として完全に代替することはできない。これは次に説明する理由による。即ち、現像バイアスVbの制御目標値を補正すると、現像バイアスVbの変化によって現像ポテンシャルを変化させることに加えて、現像バイアスVbと地肌部電位との電位差も変化させる。例えば、図20に示されるグラフにおいて、現像バイアスVbの値をより大きくして現像ポテンシャルをより大きくした場合、その分だけ、現像バイアスVbと地肌部電位との電位差が小さくなる。この電位差が小さくなり過ぎると、画像のエッジ部がぼやけてしまう。代替補正処理では、エッジ部のぼやけの発生よりも、現像濃度の安定化を優先して、現像バイアスVbの制御目標値を一時的に補正することになる。現像バイアスVbの制御目標値の補正だけを行い、トナー濃度の制御目標値を補正しないと、エッジ部のぼやけを継続して発生させてしまう。そこで、目標トナー濃度値を従来と同様に補正して、その補正が現像能力に反映されるようになった時点で、現像バイアスVbの制御目標値を元の値に戻すことで、エッジ部のぼやけを解消することができる。
次に、実施例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各具体例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各具体例のプリンタの構成は、実施例と同様である。
[第1具体例]
第1具体例に係るプリンタでは、制御装置(100)が、目標値補正処理の正規補正処理において、第1制御パラメータたる目標トナー濃度値を段階的に補正する。より詳しくは、目標トナー濃度値の補正量が比較的大きい場合、目標トナー濃度値をその補正量で一気に補正すると、短時間の間に多量のトナーを補給することになる。すると、実際のトナー濃度がオーバーシュートして、狙いよりも大きな値になることがある。特に、本プリンタのようにトナー補給量をPI制御で決定する構成においては、前述のオーバーシュートを起こしやすくなる。
そこで、正規補正処理において、目標トナー濃度値を段階的に補正するのである。具体的には、本プリンタにおいては、目標トナー濃度値を高濃度側に補正した場合、実際のトナー濃度が補正後の目標トナー濃度値まで増加するのに約1分の時間を要する。そして、制御装置(100)は、目標トナー濃度値の補正量を求めたら、その補正量を6で除算して分割補正量とする。正規補正処理では、まず、目標トナー濃度値を、分割補正量の加算によって補正する。その10秒後に、その目標トナー濃度値を分割補正量の加算によって更に補正する。以降、10秒毎に、同様の補正を繰り返すことで、1分後に、目標トナー濃度値を、当初の目標トナー濃度値に対して前記補正量を加算した値にする。
かかる構成では、トナーを徐々に補給してトナー濃度を補正後の目標トナー濃度値に徐々に近づけていくことで、トナー濃度のオーバーシュートの発生を回避する。これにより、正規補正処理で目標トナー濃度値を一気に補正する場合に比べて、現像能力を安定化させて現像濃度の変化を抑えることができる。
[第2具体例]
第2具体例に係るプリンタは、次に説明する点の他が、第1具体例に係るプリンタと同様の構成になっている。即ち、制御装置(100)が、目標値補正処理の代替値戻し処理において、第2制御パラメータたる現像バイアスVbの制御目標値を段階的に補正して元の値に徐々に戻す処理を実施する。より詳しくは、代替補正処理における現像バイアスVbの制御目標値の補正量を6で除算して分割補正量とする。代替値戻し処理では、まず、現状の現像バイアスVbの制御目標値を、分割補正量の減算によって補正する。その10秒後に、その制御目標値を分割補正量の減算によって更に補正する。以降、10秒毎に、同様の補正を繰り返すことで、1分後に、現像バイアスVbの制御目標値を、当初の制御目標値に戻す。
かかる構成では、第1制御パラメータたる目標トナー濃度値の補正が、現像能力に徐々に反映されてくる過程で、それに応じて第2制御パラメータたる現像バイアスVbを徐々に元の値に戻すことで、現像能力をより安定化させる。これにより、代替値戻し処理で現像バイアスVbを一気に元の値に戻す場合に比べて、現像能力を安定化させて現像濃度の変化を抑えることができる。
これまで、第1制御パラメータたる目標トナー濃度値を補正し、且つ第2制御パラメータたる現像バイアスVbの制御目標値を補正する例について説明したが、第1制御パラメータはトナー濃度に限られない。また、第2制御パラメータは現像バイアスVbに限られない。例えば、何らかの理由により、第1制御パラメータとしてのレーザー強度の制御目標値を正規補正処理で補正する場合に、レーザー強度よりも応答速度の速い第2制御パラメータたる現像バイアスの制御目標値を代替補正処理で補正してもよい。また、第1制御パラメータとしての帯電バイアスの制御目標値を正規補正処理で補正する場合に、帯電バイアスよりも応答速度の速い第2制御パラメータたるレーザー強度を代替補正処理で補正してもよい。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、潜像担持体(例えば感光体3)、潜像書込手段(例えば光書込ユニット)
及び現像手段(例えば現像ユニット7)を具備する作像手段(例えば作像ユニット1)と、前記作像手段の現像能力に影響を及ぼす制御パラメータ(例えばトナー濃度)の制御目標値(例えば目標トナー濃度値)を所定のアルゴリズム又はデータテーブルによって求めた補正量で補正する目標値補正処理を実施する制御手段(例えば制御装置100)とを備える画像形成装置において、前記作像手段によって形成された画像の画像濃度を検知する画像濃度検知手段(例えば画像濃度センサ90)を設けるとともに、画像濃度検知手段による画像濃度の検知結果に基づいて前記アルゴリズム又は前記データテーブルを補正する補正処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記目標値補正処理にて、前記アルゴリズム又は前記データテーブルとして、第1制御パラメータ(例えばトナー濃度)の制御目標値である第1制御目標値を求めるための第1アルゴリズム又は第1データテーブルと、補正による現像能力の応答速度が前記第1制御パラメータよりも速い第2制御パラメータ(例えば現像バイアスVb)の制御目標値である第2制御目標値を求めるための第2アルゴリズム又は第2データテーブルとを用いて前記第2制御目標値及び前記第1制御目標値を補正した後、前記第2制御パラメータの制御目標値を元の値に戻す処理を実施し、且つ、前記補正処理にて、前記第1アルゴリズム及び第2アルゴリズムのうち、少なくとも前記第1アルゴリズムを補正するか、あるいは、前記第1データテーブル及び第2データテーブルのうち、少なくとも前記第1データテーブルを補正する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、第1制御目標値(例えば目標トナー濃度値)を補正してから、その補正が現像能力に反映されるようになるまでにおける現像濃度不良の発生を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bであって、前記作像手段が、帯電手段によって一様に帯電させた前記潜像担持体の表面に対して前記潜像書込手段によって静電潜像を書き込むものであり、前記現像手段が、現像剤担持体の表面上に担持したトナーによって前記静電潜像を現像してトナー像を得るものであり、且つ、前記制御手段が、前記目標値補正処理にて、前記現像手段内におけるトナーの帯電量に影響を及ぼす制御パラメータを前記第1制御パラメータとして用いる一方で、前記潜像担持体における静電潜像の電位と前記現像剤担持体の電位との差である現像ポテンシャルに影響を及ぼすパラメータを前記第2制御パラメータとして用いるものであることを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、現像ポテンシャルに影響を及ぼす第2制御パラメータの制御目標値を補正することで、トナーの帯電量に影響を及ぼす第2制御パラメータの制御目標値だけを補正する場合に比べて、現像能力を迅速に復帰させることができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記目標値補正処理にて、前記第1制御目標値を段階的に補正する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、第1制御パラメータを一気に補正する場合に比べて、現像能力を安定化させて現像濃度の変化を抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様C又はDにおいて、前記目標値補正処理にて、前記第2制御目標値を補正した後、前記第2制御目標値を段階的に元の値に戻す処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、第2制御パラメータを一気に元の値に戻す場合に比べて、現像能力を安定化させて現像濃度の変化を抑えることができる。
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eにおいて、前記補正処理にて、前記アルゴリズムとしての関数の係数を変化させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、係数の変化によってアルゴリズムを容易に補正することができる。
[態様G]
態様Gは、態様A〜Eにおいて、前記補正処理にて、前記アルゴリズムとしての関数の式を変化させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、係数を用いなかったり、係数の変化では適切な補正が困難であったりするアルゴリズムであっても適切に補正することができる。
[態様H]
態様Hは、態様A〜Eにおいて、前記補正処理にて、前記データテーブルを変化させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、データテーブルを補正することができる。