JP2014054221A - 新規α−グルカン転移酵素とそれらの製造方法並びに用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、重合度が4以上のα−1,4グルカンに作用して重合度2以上のα−1,4グルカンを生成し、生成した重合度2以上のα−1,4グルカンをα−、β−及びγ−サイクロデキストリンのグルコース残基にα−1,6転移する活性を有する新規α−グルカン転移酵素と当該酵素をコードするDNAとこれを含んでなる組換えDNA及び形質転換微生物、当該酵素の製造方法、当該酵素を用いた分岐CDの製造方法並びに用途を提供することによって上記課題を解決する。
【選択図】 なし
Description
(1)Tyr−Gln−Ile−Phe−Pro−Asp;
(2)Gln−Met−Gly−Tyr−Pro−Gly;
(3)Ile−Tyr−Tyr−Gly−Asp−Glu;
<a>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、160,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、20分間反応の条件下で、55℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、40℃、20分間反応の条件下で6.0;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で50℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH5.0乃至9.0で安定;
<b>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、160,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、30分間反応の条件下で、60℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、50℃、30分間反応の条件下で7.5;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で70℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH4.5乃至10.5で安定;
<c>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、100,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、20分間反応の条件下で、100℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、60℃、20分間反応の条件下で6.5;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で85℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH4.0乃至11.0で安定。
(1)Tyr−Gln−Ile−Phe−Pro−Asp;
(2)Gln−Met−Gly−Tyr−Pro−Gly;
(3)Ile−Tyr−Tyr−Gly−Asp−Glu。
(1)肉汁寒天培養、27℃
通常0.8乃至1.0μmの幅を持つ菌糸状を有す。運動性なし。鞭毛なし。胞子連鎖形成あり。非抗酸性。グラム陽性。
(1) 肉汁寒天平板培養、27℃
形状: 円形 大きさは3日間で2.5乃至3mm。
周縁: 波状
隆起: 円錐状
光沢: 鈍光
表面: 平滑
色調: 不透明、淡い黄色
澱粉の加水分解: 陽性
ゼラチンの液化: 陽性
色素の生成: 可溶性色素の生成はない
ウレアーゼ: 陰性
オキシダーゼ: 陽性
カタラーゼ: 陽性
硝酸塩の還元: 陽性
炭水化物の利用: D−グルコース、D−フラクトース、スクロース
生育の範囲: pH5.0乃至8.3、温度 15乃至41℃
酸素に対する態度: 好気性
細胞壁型: IIIC型
16S rDNA配列: バチルス・アシディセラーCBD119と99.7%の相同性を示す。
<a>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、160,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、20分間反応の条件下で、55℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、40℃、20分間反応の条件下で6.0;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で50℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH5.0乃至9.0で安定;
<b>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、160,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、30分間反応の条件下で、60℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、50℃、30分間反応の条件下で7.5;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で70℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH4.5乃至10.5で安定;
<c>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、100,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、20分間反応の条件下で、100℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、60℃、20分間反応の条件下で6.5;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で85℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH4.0乃至11.0で安定。
澱粉部分分解物(商品名『パインデックス#4』、松谷化学工業株式会社製造)1.5w/v%、酵母抽出物(商品名『ポリペプトン』、日本製薬株式会社製造)0.5w/v%、酵母抽出物(商品名『酵母エキスS』、日本製薬株式会社製造)0.1w/v%、リン酸二カリウム0.1w/v%、リン酸一ナトリウム・2水和物0.06w/v%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05w/v%、硫酸第二鉄・7水和物0.001w/v%、硫酸マンガン・5水和物0.001w/v%、炭酸カルシウム0.3w/v%及び水からなる液体培地を、pH6.8に調整後、500ml容三角フラスコ1本に30ml入れ、オートクレーブで121℃、20分間滅菌し、冷却して、バチルス・アシディセラー R61(FERM BP−11436)を1白金耳接種し、27℃、230rpmで24時間回転振盪培養したものを種培養とした。
実験1で得た培養上清(総活性約1,020単位)を1mM塩化カルシウムを含む10mM MOPS−NaOH緩衝液(pH7.0)に対して透析し、粗酵素液約300mlを得た。粗酵素液のα−グルカン転移酵素活性は約3.0単位/mlであった(総活性約900単位)。この粗酵素液を東ソー株式会社製『DEAE−トヨパール 650S』ゲルを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル容量180ml)に供した。α−グルカン転移酵素は、1mM塩化カルシウムを含む10mM MOPS−NaOH緩衝液(pH7.0)で平衡化したカラムに吸着した。そして、塩化ナトリウム濃度0Mから0.5Mのリニアグラジエントで溶出させたところ、塩化ナトリウム濃度約0.08M付近に溶出した画分にα−グルカン転移酵素活性が認められた。この画分を回収し、終濃度1Mとなるように硫安を添加後、遠心分離して不溶物を除き、アマシャム ファルマシア バイオテク AB(Amersham Pharmacia Biotech AB)社製『リソース フェニル(Resource PHE)』疎水カラムクロマトグラフィー(ゲル容量6ml)に供した。バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素は、1M硫安及び1mM塩化カルシウムを含む10mM MOPS−NaOH緩衝液(pH7.0)で平衡化したカラムに吸着した。そして、硫安濃度1Mから0Mのリニアグラジエントで溶出させたところ、硫安濃度約0.08M付近に溶出した画分にα−グルカン転移酵素活性が認められた。この画分を回収し、これを1mM塩化カルシウムを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に対して透析した。精製の各工程におけるα−グルカン転移酵素活性、全蛋白質、α−グルカン転移酵素の比活性及び収率を表1に示す。なお、精製の各工程における蛋白量は、牛血清アルブミンを標準蛋白としたBradford法により定量した。
<実験3−1:分子量>
実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(5乃至20w/v%濃度勾配)に供し、同時に泳動した分子量マーカー(SDS−PAGE Molecular Weight Standards,Broad Range バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)と比較して分子量を測定したところ、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素の分子量は160,000±10,000ダルトンであることが判明した。
実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品を用いて、酵素活性に及ぼすpH、温度の影響を本酵素の活性測定方法に準じて測定した。これらの結果を図1(至適pH)及び図2(至適温度)に示した。バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素の至適pHは40℃、20分間反応の条件下でpH6.0であり、至適温度はpH6.0、20分間反応の条件下で55℃であることが判明した。
実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品を用いて、本酵素のpH安定性及び温度安定性を調べた。pH安定性は、本酵素を各pHの100mM緩衝液中で4℃、24時間保持した後、pHを6.0に調整し、残存する酵素活性を測定することにより求めた。温度安定性は、酵素溶液(50mM酢酸緩衝液、pH6.0)を塩化カルシウム非存在下または1mM存在下で各温度に60分間保持し、水冷した後、残存する酵素活性を測定することにより求めた。これらの結果を図3(pH安定性)及び図4(温度安定性)に示した。図3から明らかなように、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素は、pH5.0乃至9.0の範囲で安定であることが判明した。また、図4から明らかなように、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素は、塩化カルシウム非存在下で30℃まで、塩化カルシウム1mM存在下で50℃まで安定であることが判明し、カルシウムイオンによって本酵素の温度安定性が向上することがわかった。
実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品を用いて、酵素活性に及ぼす金属塩の影響を濃度1mMの各種金属塩存在下で活性測定の方法に準じて調べた。結果を表2に示す。
実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品を用いて、本酵素のN末端アミノ酸配列を、プロテインシーケンサー モデル492HT(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて分析したところ、配列表における配列番号7で示されるアミノ酸配列、すなわち、Ala―Arg−Gln−Val−Val−Leu−Val−Gly−Ser−Phe−Gln−Lys−Leu−Leu−Gly;
を有していることが判明した。
実験1の方法で得た培養上清に、最終濃度80%飽和となるように硫安を添加し、4℃、24時間放置することにより塩析した。生成した塩析沈殿物を遠心分離(13,500rpm、20分間)にて回収し、これを1mM塩化カルシウムを含む5mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解後、同緩衝液に対して透析し、粗酵素液として約100mlを得た。この粗酵素液から実験2記載の方法に準じてα−グルカン転移酵素の精製を行った。得られたα−グルカン転移酵素標品を5乃至20w/v%濃度勾配ポリアクリルアミドゲル電気泳動により酵素標品の純度を検定したところ、3本の蛋白バンドが検出された。これらのバンドの分子量は大きいものから順に160,000±10,000ダルトン、100,000±5,000ダルトン、60,000±5,000ダルトンであった。以後、これら3本のバンドに対応する蛋白質を分子量の大きいものから順にP1、P2、P3と呼称する。P1乃至P3のN末端アミノ酸配列をそれぞれ、プロテインシーケンサー モデル492HT(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて分析したところ、
P1:Ala−Arg−Gln−Val−Val−Leu−Val−Gly−Ser−Phe−Gln−Lys−Leu−Leu−Gly;
P2:Val−Ser−Thr−Gly−Glu−His−Tyr−Lys−Tyr−Glu−Trp−Trp;
P3:Ala−Arg−Gln−Val−Val−Leu−Val−Gly−Ser−Phe−Gln−Lys−Leu−Leu−Gly;
を有していることが判明した。P1とP3のN末端アミノ酸配列が全く同一であること、P1の分子量がP2とP3の分子量の和と一致すること、精製操作を行ってもこれら蛋白質が全く分離しないことから、P1が完全長のα−グルカン転移酵素であり、P2とP3はα−グルカン転移酵素が断片化したものと推定した。すなわち、P2のN末端アミノ酸配列がα−グルカン転移酵素の内部アミノ酸配列を指し示すものと判断した。
α−グルカン転移酵素をコードするDNAをバチルス・アシディセラー R61(FERM BP−11436)からクローニングし、自律複製可能な組換えDNAの作製、酵素をコードするDNAの塩基配列の決定、及び形質転換微生物の調製を行った。
10g/lトリプトン(商品名『Bacto−tryptone』、Difco社販売)、5g/l酵母エキス(商品名『Bacto−yeast extract』、Difco社販売)、10g/l食塩及び水からなる液体培地を、500ml容三角フラスコに100mlずつ入れ、オートクレーブで121℃、20分間滅菌し、冷却して、バチルス・アシディセラー R61(FERM BP−11436)を接種し、27℃、230rpmで24時間回転振盪培養した。
α−グルカン転移酵素をコードするDNAのクローニングを行うに先立ち、まず、その部分DNA断片のPCR−クローニングを行った。α−グルカン転移酵素のN末端アミノ酸配列である配列表における配列番号7で表されるアミノ酸配列における第3乃至第8番目及び第7乃至第12番目のアミノ酸配列に基づき、配列表における配列番号8及び9で示される2種のセンスプライマーF1及びF2を合成した。また、当該酵素の内部アミノ酸配列である配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列における第6乃至第11番目及び第5乃至第10番目のアミノ酸配列に基づき、配列表における配列番号11及び12で示される2種のアンチセンスプライマーR1及びR2を合成した。センスプライマーF1とアンチセンスプライマーR1の組合せで、実験4−1で得た染色体DNAを鋳型として1回目のPCRを常法に従い行った。次いで、得られたPCR産物を鋳型としてセンスプライマーF2とアンチセンスプライマーR2の組合せで2回目のPCRを行ったところ、約1,700塩基対のPCR増幅DNA断片が認められた。PCR増幅DNA断片を、プラスミド(商品名「pCR−Script Cam SK(+)」、ストラタジーン社販売)の制限酵素SrfI部位に挿入した後、通常のコンピテントセル法により大腸菌コンピテントセル(商品名『XL10−Gold Kan’』、ストラタジーン社製)を形質転換した。得られた形質転換微生物から通常のアルカリ−SDS法により組換えDNAを抽出し、目的とする約1,700塩基対の挿入DNA断片を有する組換えDNAを保持する形質転換微生物を選択した。次いで、この組換えDNAの塩基配列を、通常のジデオキシ法により分析したところ、当該組換えDNAは、配列表における配列番号13で示される鎖長1,706塩基対の塩基配列を有するDNAを含んでいた。
α−グルカン転移酵素遺伝子を発現用ベクターに挿入し、組換え型α−グルカン転移酵素の大腸菌における発現を検討した。
α−グルカン転移酵素遺伝子を発現用ベクターに組込むに際し、配列表における配列番号16及び17で示されるセンスプライマーとアンチセンスプライマーを合成し、これらの組合せでPCRを行いα−グルカン転移酵素遺伝子を増幅した。常法により、制限酵素Sac I及びKpn Iで消化した発現用ベクターpRSET A(インビトロジェン社製)に、上記で増幅したDNAを組込んで得られた組換えDNAを『pRSETA−R61』と命名した。pRSETA−R61を用いて大腸菌コンピテントセル(商品名『XL10−Gold Kan’』、ストラタジーン社製)を形質転換し、得られた形質転換微生物からpRSETA−R61を調製し、発現用宿主大腸菌BL21(DE3)(ノバジェン社製)を形質転換して形質転換微生物『SETAR61』を調製した。
形質転換微生物SETAR61を、500ml容の三角フラスコに100mlずつ入れたTB培地(トリプトン 1.2%、酵母エキス 2.4%、グリセリン 0.4%、リン酸2水素1カリウム 17mM、リン酸水素2カリウム 72mM、pH6.8、アンピシリン 80μg/ml含有)に植菌し、27℃で24時間培養した。得られた培養物を、常法に従い、遠心分離して培養上清と菌体とに分離して回収した。菌体については、超音波破砕法により細胞からの全抽出物を調製した。超音波破砕法は、菌体を20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した後、その菌体懸濁液を氷水中で冷却しながら超音波ホモジナイザー(モデルUH−600、株式会社エスエムテー製)で細胞破砕することによって行い、その破砕物を全細胞抽出物とした。
各種糖質を用いて、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素の基質特異性を調べた。マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、α−、β−又はγ−CD、アミロース、可溶性澱粉、プルラン又はデキストランを含む水溶液を調製し、これらの基質溶液に、最終濃度20mM酢酸緩衝液(pH6.0)と最終濃度1mM塩化カルシウムを加えた後、実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品を基質固形物1グラム当りそれぞれ1単位ずつ加え、基質濃度を2w/v%になるように調整し、これを40℃で24時間作用させた。酵素反応前後の反応液をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(以下、TLCと略す)法で分析し、それぞれの糖質に対する酵素作用の有無又は強さの程度を確認した。詳細には、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素の分解作用により生成するオリゴ糖量により評価した。TLCは、展開溶媒としてn−ブタノール、ピリジン、水混液(容量比6:4:1)を、また、薄層プレートとしてメルク社製『キーゼルゲル60』(アルミプレート、10×20cm)を用い、2回展開後、硫酸−メタノール法にて分離した糖質を発色させる方法で実施した。さらに、作用した糖質の反応液の組成を高速液体クロマトグラフィー法(以下、HPLCと略称する。)で調べ、分解物を同定した。なお、HPLCは、カラムに『MCIgel CK04SS』(株式会社三菱化学製)を2本連結したものを用い、溶離液に水を用いて、カラム温度80℃、流速0.4ml/分の条件で行い、検出は示差屈折計RID−10A(株式会社島津製作所製)を用いて行った。結果を表3に示す。なお、TLC法又はHPLCで認められた基質以上の重合度を有する糖質を転移糖とした。
アミロースを供与体、各種糖質を受容体として用いて、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素の受容体特異性を調べた。なお、実験6において本酵素反応の供与体及び受容体となったマルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースなどの一連のマルトオリゴ糖及びマルトテトライトールについては本試験から除外した。自身が供与体とはならないマルトース、マルトトリオース、マルチトール、マルトトリイトール、α−、β−又はγ−CDを含む水溶液を調製した。これらの基質溶液に、供与体として最終濃度1w/v%のアミロース(商品名『アミロース EX−I』、株式会社林原製)、最終濃度20mM酢酸緩衝液(pH6.0)及び最終濃度1mM塩化カルシウムを加えた後、実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品をアミロース固形物1グラム当り2単位を加え、供与体濃度を0.5w/v%になるように調整し、これを40℃で48時間作用させた。酵素反応前後の反応液は、CD以外の糖質が受容体の場合についてはβ−アミラーゼ消化を、CDが受容体の場合についてはグルコアミラーゼ消化を行い、反応液中の直鎖α−1,4グルカンを分解して糖転移物の生成を容易に確認できるようにした後、組成をHPLCで調べ、糖転移物の有無を確認した。なお、β−アミラーゼ消化はβ−アミラーゼ(大豆由来、ナガセケムテックス株式会社製)をアミロース固形物1グラム当り10単位を加え、アミロース濃度を0.5w/v%になるように調整し、これを50℃、pH5.0で48時間作用させた。また、グルコアミラーゼ消化はグルコアミラーゼ(リゾプス属(Rhizopus sp.)由来、生化学工業株式会社製)をアミロース固形物1グラム当り100単位を加え、アミロース濃度を0.5w/v%になるように調整し、これを50℃、pH5.0で48時間作用させた。HPLCは、実験6に記載の条件を用いて行った。結果を表4に示す。
<実験8−1:β−CD又はγ−CDへの糖転移>
最終濃度1w/v%のβ−CD又はγ−CDと、最終濃度4w/v%のアミロース(商品名『アミロース EX−I』、株式会社林原製)水溶液に、最終濃度20mM酢酸緩衝液(pH6.0)及び最終濃度1mM塩化カルシウムを加えた後、実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品を、アミロース固形分1グラム当り0.5単位加え、50℃、pH6.0で48時間作用させ、100℃で10分間保持して反応を停止した。なお、対照として、CDを含まないアミロースのみでの酵素反応も行い、合計3種類の「酵素反応物」を得た。3種類の酵素反応物のそれぞれ一部に、トランスグルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL「アマノ」天野エンザイム株式会社製、以下「TG」という)を固形物1グラム当り1,000単位添加して50℃、pH5.0で24時間反応させた。反応後、約100℃で10分間、熱処理して反応を停止させたものを「TG消化物」とした。本操作を行うと、直鎖α−1,4グルカンがグルコースに分解されるので、グルコース、CD及びグルコシル分岐が1つ以上導入された分岐CDが残存することとなる。さらに、合計3種類の酵素反応液のそれぞれ一部を用いてアルカリ処理物を調製した。上述の酵素反応物8mlに水酸化ナトリウムを添加してpHを12に調整し、98℃で1時間保持することにより還元糖を分解した。不溶物を濾過して除去した後、三菱化学製カチオン交換樹脂『ダイヤイオンSK−1B』とオルガノ製アニオン交換樹脂『IRA411S』を用いて脱色、脱塩し、精密濾過した後、エバポレーターで乾固し、8mlの水に溶解させたものを「アルカリ処理物」とした。アルカリ処理では、還元糖が分解されるので、環状構造を有するような非還元性糖質のみが残存することとなる。以上、3種類の酵素反応物、これらからそれぞれ調製したTG消化物及びアルカリ処理物、合計9種類のサンプルを実験6に記載の条件にてHPLCを用いて分析した。溶出パターンを図7乃至9に示す。
転移糖A乃至Hの単離を試みた。α−グルカン転移酵素をβ−CD、又はγ−CDとアミロースの混合物に作用させた反応物から調製したTG消化物又はアルカリ処理物を、それぞれ1回に50μlで100回に分けて、実験6に記載の条件でHPLCカラムに供して精製し、いずれも純度97%以上の転移糖A乃至Hを固形物として10mg以上得た。
<実験8−3−1:質量分析>
実験8−2で得られた転移糖A乃至Hについて、質量分析装置『LCQ Advantage』(サーモエレクトロン社製)を用いて質量分析した。結果を表5にまとめた。
実験8−2で得られた転移糖A乃至Hについて、プルラナーゼによる分解試験を行った。各転移糖を最終濃度0.5w/v%でプルラナーゼ(株式会社林原製)を固形物1グラム当り200単位添加して、50℃、pH6.0にて96時間反応させた。100℃で10分間保持して反応を停止した後、実験6に記載の条件にてHPLCで分析し、生成物を調べたところ、転移糖A及びEは分解されず、転移糖Bは等モルのマルトテトラオースとβ−CDに、転移糖Cは等モルのマルトトリオースとβ−CDに、転移糖Dは等モルのマルトースとβ−CDに、転移糖Fは等モルのマルトテトラオースとγ−CDに、転移糖Gは等モルのマルトトリオースとγ−CDに、転移糖Hは等モルのマルトースとγ−CDに、それぞれ分解された。即ち、転移糖B乃至D及びF乃至Hは、マルトオリゴ糖分子と、β−CD、又はγ−CD分子がα−1,6グルコシド結合した構造を有することが判明した。
は、β−及びγ−CDの1個以上のグルコース残基に対して、重合度2以上のα−1,4グルカンをα−1,6グリコシル転移することが明らかとなった。
最終濃度4w/v%のα−CDと最終濃度4w/v%のマルトペンタオース水溶液に、最終濃度20mM酢酸緩衝液(pH6.0)及び最終濃度1mM塩化カルシウムを加えた後、実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品を、マルトペンタオース固形分1グラム当り2単位加え、50℃、pH6.0で48時間作用させ、100℃で10分間保持して反応を停止した。なお、α−グルカン転移酵素を作用させていない反応物を対照とするために、以下同様に処理した。こうして得た反応物を実験8−1、2及び3と同様の方法にて分析した。その結果、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素は、α−CDに対しても、β−及びγ−CDと同様に、1個以上のグルコース残基に対して、重合度2以上のα−1,4グルカンをα−1,6グリコシル転移することが明らかとなった。
最終濃度約10w/v%の澱粉部分分解物(商品名「パインデックス#100」、松谷化学工業株式会社製)水溶液に、最終濃度10mM酢酸緩衝液(pH5.0)及び最終濃度2mMの塩化カルシウムを加えた。これに、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来CGTase(株式会社林原製)を基質固形物1グラム当り4単位及びイソアミラーゼ(株式会社林原製)を基質固形物1グラム当り1000単位加え、50℃で24時間反応させた後、100℃に加熱し30分保持して反応を停止させた。次いで、この反応液に、実験2の方法で得たα−グルカン転移酵素精製標品を固形物1グラム当り2.0単位加え、50℃、48時間作用させた後、反応液を100℃に加熱し30分間保持し、反応物Aとした。反応物Aを実験8−1と同様にしてTG消化物を調製し、実験6記載の条件でHPLCにて分析した。また、対照として市販分岐CD製品(イソエリート40P、塩水港精糖株式会社製)で同様に、TG消化物の調製及びHPLCによる分析を行った。その結果、糖組成に占めるCD及び分岐CDの総含量は、反応物Aで33.8%、市販分岐CD製品で32.6%であり、同等であった。また、分岐CD含量のみについて比較した場合でも、反応物Aで14.4%、市販分岐CD製品で15.8%となっており、反応物Aと市販分岐CD製品は同等のものであった。
実験4−2で得られたα−グルカン転移酵素と同様の酵素が他の細菌にも存在しているかを調査するために、BLASTPプログラムを用いて配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列の相同性検索を行った。その結果、アノキシバチルス属やサーモアナエロバクター属に高い相同性を示すアミノ酸配列が幅広く存在することがわかった。よって、これらの属に属する微生物は、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素と同様の活性を有する酵素を産生している可能性が考えられた。そこで、自社で保有するアノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317及びサーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047からα−グルカン転移酵素の検出を試みた。
<実験11−1:アノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317由来α−グルカン転移酵素の生産>
酵母抽出物(商品名『ポリペプトン』、日本製薬株式会社製造)1.0w/v%、酵母抽出物(商品名『イースト・エキストラクト』、ベクトン・ディッキンソン社製造)0.2w/v%、硫酸マグネシウム・7水和物0.1w/v%、及び水からなる液体培地を、pH7.0に調整後、500ml容三角フラスコ1本に50ml入れ、オートクレーブで121℃、20分間滅菌し、冷却して、アノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317を1白金耳接種し、50℃、230rpmで16時間回転振盪培養したものを種培養とした。
実験11−1で得た培養上清(総活性約240単位)に80%飽和になるように硫安を添加、溶解し、4℃、24時間放置することにより塩析した。沈殿した塩析物を遠心分離(10,500rpm、20分間)にて回収し、これを20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)に溶解後、同緩衝液に対して透析し、遠心分離して不溶物を除き、粗酵素液を91ml得た。粗酵素液のα−グルカン転移酵素活性は約2.2単位/mlであった(総活性約200単位)。この粗酵素液を東ソー株式会社製『DEAE−トヨパール 650S』ゲルを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル容量180ml)に供し、実験2と同様にして、α−グルカン転移酵素活性画分を回収した。回収した画分に、終濃度1.5Mとなるように硫安を添加後、遠心分離して不溶物を除き、東ソー株式会社製『Phenyl−トヨパール 650M』ゲルを用いた疎水カラムクロマトグラフィー(ゲル容量17ml)に供した。α−グルカン転移酵素は、1.5M硫安を含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化したカラムに吸着した。そして、硫安濃度1.5Mから0Mのリニアグラジエントで溶出させたところ、硫安濃度約0.65M付近に溶出した画分にα−グルカン転移酵素活性が認められた。この画分を回収し、10mM リン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した後、和光純薬社製『ハイドロキシアパタイト・ファストフロー』ゲルを用いた群特異的アフィニティーカラムクロマトグラフィー(ゲル容量8.6ml)に供した。α−グルカン転移酵素は、10mM リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したカラムに吸着した。そして、リン酸濃度0.01Mから0.3Mのリニアグラジエントで溶出させたところ、リン酸濃度約0.03M付近に溶出した画分にα−グルカン転移酵素活性が認められた。この画分を回収し、これを0.4M塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に対して透析した後、0.2mlまで濃縮し、GEヘルスケア・バイオサイエンス社製『スーパーローズ12』ゲルを用いたゲルろ過カラムクロマトグラフィー(ゲル容量24ml)に供した。α−グルカン転移酵素は、0.4M塩化ナトリウムを含む20mM 酢酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したカラムを通過し、溶出液量10.5ml付近に溶出した。この画分を回収し、これを20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)に対して透析した。各精製の各工程におけるα−グルカン転移酵素活性、全蛋白質、α−グルカン転移酵素の比活性及び収率を表6に示す。なお、精製の各工程における蛋白量は、牛血清アルブミンを標準蛋白としたBradford法により定量した。
実験11−2で得られたα−グルカン転移酵素標品の分子量、至適pH、至適温度、pH安定性及び温度安定性を実験3と同様の方法にて調べた。その結果、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量は約160,000±10,000ダルトン、至適温度は、pH6.0、30分間反応の条件下60℃、至適pHは50℃、30分間反応の条件下で7.5、温度安定性は、各温度に60分間保持する条件下で、1mM塩化カルシウム存在下で約70℃まで安定であり、pH安定性は、各pHに4℃で24時間保持する条件下で4.6乃至10.7の範囲で安定であった。また、アノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317由来α−グルカン転移酵素の基質特異性及び受容体特異性はバチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素と良く一致した。
実験11−2の方法で得たα−グルカン転移酵素標品を用いて、本酵素のN末端アミノ酸配列を、実験3−6と同様にして分析したところ、配列表における配列番号18で示されるアミノ酸配列、すなわち、Asn−Glu−Asn−Val−Gln−Ser−Pro−Val−Glu−Gln−Gln−Arg;
を有していることが判明した。
α−グルカン転移酵素をコードするDNAをアノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317からクローニングし、自律複製可能な組換えDNAの作製、酵素をコードするDNAの塩基配列の決定、及び形質転換微生物の調製を行った。
10g/lトリプトン(商品名『Bacto−tryptone』、Difco社販売)、5g/l酵母エキス(商品名『Bacto−yeast extract』、Difco社販売)、10g/l食塩及び水からなる液体培地を、500ml容三角フラスコに100mlずつ入れ、オートクレーブで121℃、20分間滅菌し、冷却して、アノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317を接種し、50℃、230rpmで24時間回転振盪培養した。
α−グルカン転移酵素をコードするDNAのクローニングを行うに先立ち、まず、その部分DNA断片のPCR−クローニングを行った。α−グルカン転移酵素のN末端アミノ酸配列である配列表における配列番号18で表されるアミノ酸配列における第1乃至第5番目及び第7乃至第11番目のアミノ酸配列に基づき、配列表における配列番号19及び20で示される2種のセンスプライマーF101及びF102を合成した。また、バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素の内部アミノ酸配列、すなわち、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列における第820乃至第824番目及び第1,296乃至第1,301番目のアミノ酸配列に基づき、配列表における配列番号21及び22で示される2種のアンチセンスプライマーR101及びR102を合成した。センスプライマーF101とアンチセンスプライマーR102の組合せで、実験11−4−1で得た染色体DNAを鋳型として1回目のPCRを常法に従い行った。次いで、得られたPCR産物を鋳型としてセンスプライマーF102とアンチセンスプライマーR101の組合せで2回目のPCRを行ったところ、約2,300塩基対のPCR増幅DNA断片が認められた。得られた断片を用いて、実験4−2の方法に準じて塩基配列を分析したところ、当該DNAは、配列表における配列番号23で示される鎖長2,333塩基対の塩基配列を有した。
アノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317由来α−グルカン転移酵素遺伝子を発現用ベクターに挿入し、組換え型α−グルカン転移酵素の大腸菌における発現を検討した。
α−グルカン転移酵素遺伝子を発現用ベクターに組込むに際し、配列表における配列番号26及び27で示されるセンスプライマーとアンチセンスプライマーを合成し、これらの組合せでPCRを行いα−グルカン転移酵素遺伝子を増幅した。常法により、制限酵素Nde I及びKpn Iで消化した発現用ベクターpRSET A(インビトロジェン社製)に、上記で増幅したDNAを組込んで得られた組換えDNAを『pRSETA−AF61』と命名した。pRSETA−AF61を用いて、実験5−2と同様に操作し、形質転換微生物『SETAAF61』を調製した。
形質転換微生物SETAAF61について実験5−2と同様の操作にて培養上清と全細胞抽出物調製した。それぞれのα−グルカン転移酵素活性を測定した。なお、対照としてプラスミドpRSET Aを保持する大腸菌BL21(DE3)を用いて、上述の形質転換微生物の場合と同一条件で調製した培養上清と全細胞抽出物のα−グルカン転移酵素活性を測定した。その結果、実験5−2と同様に形質転換微生物SETAAF61は、α−グルカン転移酵素を細胞内に産生することが判明した。
最終濃度4.4w/v%のα−、β−又はγ−CDと最終濃度4.4w/v%のマルトペンタオース水溶液に、最終濃度50mM酢酸緩衝液(pH6.0)及び最終濃度1mM塩化カルシウムを加えた後、実験11−5−2で得たα−グルカン転移酵素精製標品を、マルトペンタオース固形分1グラム当り2単位加え、60℃、pH6.0で72時間作用させ、100℃で10分間保持して反応を停止した。また、α−グルカン転移酵素を添加していないものを対照として用意した。こうして得た酵素反応物を実験8と同様にして分析した結果、アノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317由来α−グルカン転移酵素は、バチルス・アシディセラー R61(FERM BP−11436)由来α−グルカン転移酵素と同様の作用を有し、α−、β−及びγ−CDに対して、重合度2以上のマルトオリゴ糖のα−1,6グリコシル転移を触媒することが判明した。
<実験12−1:サーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047由来α−グルカン転移酵素をコードするDNAのクローニング及びこれを含む組換えDNAと形質転換微生物の調製>
嫌気性好熱細菌であるサーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047は、バチルス・アシディセラー R61やアノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317と異なり、好気培養を行うことが不可能であるため、サーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047の染色体DNAからバチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素と相同性の高いアミノ酸配列をコードするDNAをクローニングし、自律複製可能な組換えDNAの作製、大腸菌を宿主とした組み換え酵素を調製することにより、α−グルカン転移酵素の検出を試みた。
炭素源として0.5w/v%グルコースに代えて0.5w/v%トレハロースを用いたこと以外は全て『ATCC カタログ・オブ・バクテリア・アンド・バクテリオファージズ、第18版』(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション発行、1992年)、452乃至456頁に記載のサーモアナエロビウム・ブロッキイ培地の調製法に従って、培地を100ml容耐圧ボトルに100ml調製した後、サーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047を接種し、60℃、24時間培養した。
α−グルカン転移酵素をコードするDNAのクローニングを行うために、プライマーの合成を行った。プライマーの塩基配列はサーモアナエロバクター・ブロッキイに属する細菌のうち、染色体DNAの全塩基配列が明らかにされているサーモアナエロバクター・ブロッキイ サブスピーシーズ・フィンニイ Ako−1の配列を参考にした。バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素と相同性を示すアミノ酸配列をコードするDNAをサーモアナエロバクター・ブロッキイ サブスピーシーズ・フィンニイ Ako−1の染色体DNA上で特定した後、α−グルカン転移酵素遺伝子全域を増幅するため、配列表における配列番号28及び29で示されるセンスプライマーTFA及びアンチセンスプライマーTRAを合成し、これらの組合せで、実験12−1−1で得た染色体DNAを鋳型としてPCRを常法に従い行った。その結果、約5,000塩基対のDNA断片が得られた。
サーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047由来α−グルカン転移酵素遺伝子を発現用ベクターに挿入し、組換え型α−グルカン転移酵素の大腸菌における発現を検討した。
α−グルカン転移酵素遺伝子を発現用ベクターに組込むに際し、配列表における配列番号30及び31で示される塩基配列を有するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを合成し、これらの組合せでPCRを行いα−グルカン転移酵素遺伝子を増幅した。常法により、制限酵素Xho I及びEco RIで消化した発現用ベクターpRSET A(インビトロジェン社製)に、上記で増幅したDNAを組込んで得られた組換えDNAを『pRSETA−TB61』と命名した。pRSETA−TB61を用いて大腸菌コンピテントセル(商品名『XL10−Gold Kan’』、ストラタジーン社製)を形質転換し、得られた形質転換微生物からpRSETA−TB61を調製し、発現用宿主大腸菌Rosetta(DE3)(ノバジェン社製)を形質転換して形質転換微生物『SETATB61』を調製した。
形質転換微生物SETATB61について実験5−2と同様の操作にて培養上清と全細胞抽出物を調製した。それぞれのα−グルカン転移酵素活性を測定した。なお、対照としてプラスミドpRSET Aを保持する大腸菌Rosetta(DE3)を上述の形質転換微生物の場合と同一条件で培養し、培養物から培養上清と全細胞抽出物を調製し、同様にα−グルカン転移酵素活性を測定した。その結果、実験5−2同様に形質転換微生物SETATB61の全細胞抽出液にのみα−グルカン転移酵素活性が認められ、形質転換微生物SETATB61はα−グルカン転移酵素を細胞内に産生することが判明した。
実験12−2−2で得た全細胞抽出物を85℃、1時間の熱処理に供した後、遠心分離(10,500rpm、20分間)により上清を回収した。この熱処理抽出液上清(総活性約57単位)について、実験11−2と同様の操作を行い、粗酵素液を10ml得た。粗酵素液中のα−グルカン転移酵素活性を測定したところ、該酵素活性を約4.6単位/ml含んでいた(総活性約46単位)。この粗酵素液を実験11−2と同様にして、東ソー株式会社製『DEAE−トヨパール 650S』ゲルを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、東ソー株式会社製『Phenyl−トヨパール 650M』ゲルを用いた疎水カラムクロマトグラフィー、GEヘルスケア・バイオサイエンス社製『スーパーローズ12』ゲルを用いたゲルろ過カラムクロマトグラフィーに供し、α−グルカン転移酵素活性画分を回収した。この活性画分を20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)に対して透析した。精製の各工程におけるα−グルカン転移酵素活性、α−グルカン転移酵素の比活性及び収率を表7に示す。なお、精製の各工程における蛋白量は、牛血清アルブミンを標準蛋白としたBradford法により定量した。
実験12−3の方法で得た精製α−グルカン転移酵素標品を用いて、本酵素のN末端アミノ酸配列を、プロテインシーケンサー モデル492HT(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて分析したところ、配列表における配列番号32で示されるアミノ酸配列、すなわち、Glu−Thr−Asp−Thr−Ala−Pro−Ala−Ile−Ala−Asn−Val−Val−Gly−Asp−Phe−Gln−Ser−Lys−Ileを有していることが判明した。
組換え型サーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047由来α−グルカン転移酵素の分子量、至適pH、至適温度、pH安定性及び温度安定性を実験3と同様の方法にて調べた。なお、至適温度は、1mM塩化カルシウム存在下、pH6.0、20分間反応の条件下で、至適pHは、1mM塩化カルシウム存在下、60℃、20分間反応の条件下で測定した。その結果、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量は100,000±10,000ダルトン、至適温度は、pH6.0、20分間反応の条件下100℃、至適pHは60℃、20分間反応の条件下で6.5、温度安定性は、各温度に60分間保持する条件下で、1mM塩化カルシウム存在下で85℃まで安定であり、pH安定性は、各pHに4℃で24時間保持する条件下で4.1乃至10.7の範囲で安定であった。また、組換え型サーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047由来α−グルカン転移酵素の基質特異性及び受容体特異性はバチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素と良く一致した。
最終濃度4.4w/v%のα−、β−又はγ−CDと最終濃度4.4w/v%のマルトペンタオース水溶液に、最終濃度50mM酢酸緩衝液(pH6.0)及び最終濃度1mM塩化カルシウムを加えた後、実験12−3で得たα−グルカン転移酵素精製標品を、マルトペンタオース固形分1グラム当り2単位加え、60℃、pH6.0で72時間作用させ、100℃で10分間保持して反応を停止した。また、α−グルカン転移酵素を添加していないものを対照とした。こうして得た酵素反応物を実験8と同様にして分析した。その結果、組換え型サーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047由来α−グルカン転移酵素は、バチルス・アシディセラー R61(FERM BP−11436)由来α−グルカン転移酵素と同様の作用を有し、α−CD、β−CD及びγ−CDに対して、重合度2以上のマルトオリゴ糖のα−1,6グリコシル転移を触媒することが判明した。
バチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素、アノキシバチルス・フラビサーマス NBRC15317由来α−グルカン転移酵素、サーモアナエロバクター・ブロッキイ ATCC35047由来α−グルカン転移酵素のアミノ酸配列の比較を行った。その結果、これらの3種の酵素においてはα−アミラーゼファミリー(GH13)に保存される4つの領域以外に、配列表における配列番号1で示されるバチルス・アシディセラー R61由来α−グルカン転移酵素のアミノ酸配列における残基番号384−389、810−815、819−824の3箇所がよく保存されていた。これらの配列はα−アミラーゼ、CGTase、プルラナーゼ、ネオプルラナーゼ、枝作り酵素などのアミノ酸配列には存在しない。従って、これらの配列は、本発明のα−グルカン転移酵素の特徴的な配列である。
バチルス・アシディセラー R61(FERM BP−11436)を実験1の方法に準じて、種培養した。続いて、容量30Lのファーメンターに、澱粉部分分解物(商品名『パインデックス#4』、松谷化学工業株式会社製)1.7w/v%、酵母抽出物(商品名『ミースト顆粒S』、アサヒフード&ヘルスケア株式会社製)1.5w/v%、リン酸二カリウム0.1w/v%、リン酸一ナトリウム・2水和物0.06w/v%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05w/v%、硫酸第二鉄・7水和物0.001w/v%、硫酸マンガン・5水和物0.001w/v%、及び水からなる液体培地をpH7.0に調整後、約20L入れて、加熱滅菌、冷却して温度27℃とした後、種培養液1v/v%を接種し、温度27℃、pH5.5乃至8.0に保ちつつ、24時間通気培養した。培養後、SF膜を用いて除菌濾過し、3.7単位/mlの本発明のα−グルカン転移酵素を含む培養濾液を約18L得た。更に、その濾液をUF膜濃縮し、3.8単位/mlのα−グルカン転移酵素を含む濃縮酵素液約1Lを回収した。本品は、分岐CDの製造に有利に利用できる。
市販の澱粉部分分解物(商品名「パインデックス#100」、松谷化学工業株式会社製)を濃度約15%(w/v)水溶液とし、終濃度1mMとなるように塩化カルシウムを加え、pH5.5に調整した。これに、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来CGTase(株式会社林原製)を基質固形物1グラム当り4単位及びイソアミラーゼ(株式会社林原製)を750単位を加え、50℃で24時間反応させた後、90℃に加熱し30分保持して反応を停止させた。次いで、この反応液に、実施例1の方法で調製したα−グルカン転移酵素の濃縮粗酵素液を固形物1グラム当り1.0単位加え、50℃、48時間作用させた。さらに、市販のα−アミラーゼ剤(商品名「ネオスピターゼPK2」、ナガセケムテックス株式会社製)を基質固形物1グラム当り5単位を加え、80℃で1時間反応させた後、反応液を90℃に加熱し、10分間保持した。冷却後、珪藻土濾過して得られる濾液を常法に従って、活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度30質量%の分岐CD含有溶液を固形物当り収率約90%で得た。実験8−1と同様にして調製した本品のTG消化物の糖組成を調べた。その結果、α−CD 4.1%、β−CD 7.7%、グルコシルβ−CD 8.1%、γ−CD 2.1%、グルコシルγ−CD 2.3%が検出され、本品に含有するβ−CD及びγ−CDの半分程度に分岐が導入されていた。本品は、各種CDだけでなく、分岐β−CD及び分岐γ−CDを含有しており、温和な甘味、適度の粘度、保湿性、包接性を有し、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、離水防止剤、安定剤、変色防止剤、賦形剤、包接剤、粉末化基材などとして、各種飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
15質量%タピオカ澱粉液化液(加水分解率3.6%)に、最終濃度0.3質量%となるように亜硫酸水素ナトリウムを、また、最終濃度1mMとなるように塩化カルシウムを加えた後、50℃に冷却した。この液化溶液に、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来CGTase(株式会社林原製)を基質固形物1グラム当り8単位及びイソアミラーゼ(株式会社林原製)を750単位を加え、50℃で24時間反応させた後、90℃に加熱し30分保持して反応を停止させた。次いで、この反応液に、実施例1の方法で調製したα−グルカン転移酵素の濃縮粗酵素液を固形物1グラム当り1.0単位加え、50℃、48時間作用させた。さらに、市販のα−アミラーゼ剤(商品名「ネオスピターゼPK2」、ナガセケムテックス株式会社製)を基質固形物1グラム当り5単位を加え、80℃で1時間反応させた後、反応液を90℃に加熱し、10分間保持した。冷却後、珪藻土濾過して得られる濾液を常法に従って、活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度50質量%の分岐CD溶液を固形物当り収率約90%で得た。実験8−1に記載した条件で調製した本品のTG消化物の糖組成を調べた結果、α−CD 3.9%、β−CD 8.1%、グルコシルβ−CD 8.1%、γ−CD 1.7%、グルコシルγ−CD 2.1%が検出され、本品に含有するβ−CD及びγ−CDの半分程度に分岐が導入されていた。そのため、本品を5℃で3週間保存してもCD類の結晶は認められなかった。本品は、各種CDだけでなく、分岐β−CD及び分岐γ−CDを含有しており、温和な甘味、適度の粘度、保湿性、包接性を有し、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、離水防止剤、安定剤、変色防止剤、賦形剤、包接剤、粉末化基材などとして、各種飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
実施例3の方法で得た分岐CD含有シラップを、常法に従って、水素添加して還元性糖質を糖アルコール化し、精製し、濃縮し、真空乾燥し、粉砕して、分岐CD含有粉末を固形物当り収率約90%で得た。本品は、CD類及び分岐CD類以外にマルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、及びその他の糖アルコールを含有しており、実質的に還元力を示さず、アミノカルボニル反応を起こしにくく、低還元性で、温和な甘味、適度の粘度、保湿性、包接性を有し、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、離水防止剤、安定剤、変色防止剤、賦形剤、包接剤などとして、各種飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
実施例3において、α−グルカン転移酵素を用いた分岐CD生成反応後、市販のα−アミラーゼ剤(商品名「ネオスピターゼPK2」、ナガセケムテックス株式会社製)を基質固形物1グラム当り5単位及びβ−アミラーゼ(大豆由来、ナガセケムテックス株式会社製)固形物1グラム当り5単位添加して55℃、24時間反応させ、さらに、反応液を90℃に加熱し、10分間保持した。冷却後、珪藻土濾過して得られる濾液を常法に従って、活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度30質量%の分岐CD溶液を固形物当り収率約90%で得た。この分岐CD含有シラップを原糖液とし、分岐CD及びCDの含量を高めるため、塩型強酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトCR−1310、Na型、オルガノ株式会社製)を用いるカラムクロマトグラフィーを行なって、分岐CD及びCD高含有画分を採取し、精製、濃縮し、噴霧乾燥して、分岐CD及びCD高含有粉末を固形物当り収率約40%で得た。本品は、α−CD 8.1%、β−CD 16.3%、グリコシルβ−CD 21.0%、γ−CD 3.5%、グリコシルγ−CD 5.1%を含んでいる分岐CD及びCD高含有粉末であって、還元性が比較的低く、温和な低甘味、適度の粘度、保湿性、包接性、難消化性、を有し、低カロリー食品素材、呈味改良剤、風味改良剤、品質改良剤、離水防止剤、安定剤、変色防止剤、賦形剤、包接剤、粉末化基材などとして、各種飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
●:カルシウムイオン非存在下
○:1mMカルシウムイオン存在下
図7乃至9において、
イ:反応前
ロ:酵素反応物
ハ:TG消化物
ニ:アルカリ処理物
1:マルトテトラオースの溶出位置
2:マルトトリオースの溶出位置
3:マルトースの溶出位置
4:グルコースの溶出位置
5:β−CDの溶出位置
6:γ−CDの溶出位置
A乃至H:転移糖A乃至Hの溶出位置
Claims (17)
- 重合度が4以上のα−1,4グルカンに作用してそれよりも重合度が小さい重合度2以上のα−1,4グルカンを生成し、生成した重合度2以上のα−1,4グルカンをα−、β−及びγ−サイクロデキストリンのグルコース残基にα−1,6転移する活性を有するα−グルカン転移酵素。
- 下記の(1)乃至(3)に示す部分アミノ酸配列を有する請求項1記載のα−グルカン転移酵素:
(1)Tyr−Gln−Ile−Phe−Pro−Asp;
(2)Gln−Met−Gly−Tyr−Pro−Gly;
(3)Ile−Tyr−Tyr−Gly−Asp−Glu。 - 配列表における配列番号1乃至3のいずれかで示されるアミノ酸配列か、該アミノ酸配列において、α−グルカン転移酵素の活性を保持する範囲で1個又は2個以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加したアミノ酸配列を有する請求項1又は2に記載のα−グルカン転移酵素。
- バチルス属、アノキシバチルス属、及びサーモアナエロバクター属のいずれかの微生物に由来する請求項1乃至3のいずれかに記載のα−グルカン転移酵素。
- バチルス属微生物がバチルス・アシディセラー(Bacillus acidiceler)、アノキシバチルス属微生物がアノキシバチルス・フラビサーマス(Anoxybacillus flavithermus)、及びサーモアナエロバクター属微生物がサーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobacter brockii)である請求項4記載のα−グルカン転移酵素。
- バチルス・アシディセラーが、バチルス・アシディセラー R61(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受託番号 FERM BP−11436)又はその変異株である請求項5記載のα−グルカン転移酵素。
- 下記<a>乃至<c>のいずれかの理化学的性質を有する請求項1乃至6のいずれかに記載のα−グルカン転移酵素:
<a>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、160,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、20分間反応の条件下で、55℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、40℃、20分間反応の条件下で6.0;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で50℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH5.0乃至9.0で安定;
<b>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、160,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、30分間反応の条件下で、60℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、50℃、30分間反応の条件下で7.5;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で70℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH4.5乃至10.5で安定;
<c>
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法において、100,000±10,000ダルトン;
(2)至適温度
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、20分間反応の条件下で、100℃;
(3)至適pH
1mM 塩化カルシウム存在下、60℃、20分間反応の条件下で6.5;
(4)温度安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、pH6.0、60分間保持の条件下で85℃まで安定;及び
(5)pH安定性
1mM 塩化カルシウム存在下、4℃、24時間保持の条件下でpH4.0乃至11.0で安定。 - 請求項3記載のα−グルカン転移酵素をコードするDNA。
- 配列表における配列番号4乃至6のいずれかで示される塩基配列か、該塩基配列において、コードする酵素の活性を保持する範囲で1個又は2個以上の塩基が欠失、置換若しくは付加した塩基配列、又はそれらに相補的な塩基配列を有する請求項8記載のDNA。
- 遺伝子コードの縮重に基づき、コードするアミノ酸配列を変えることなく、配列表における配列番号4乃至6のいずれかで示される塩基配列における塩基の1個又は2個以上を他の塩基で置換した請求項8又は9記載のDNA。
- 請求項8乃至10のいずれかに記載のDNAと、自律複製可能なベクターを含んでなる複製可能な組換えDNA。
- 請求項11記載の組換えDNAを適宜の宿主微生物に導入してなる形質転換微生物。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のα−グルカン転移酵素の産生能を有するバチルス属、アノキシバチルス属、サーモアナエロバクター属のいずれかの微生物を栄養培地で培養して得られる培養物から、請求項1乃至7のいずれかに記載のα−グルカン転移酵素を採取することを特徴とするα−グルカン転移酵素の製造方法。
- バチルス属微生物が、バチルス・アシディセラー(Bacillus acidiceler) R61(独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、受託番号 FERM BP−11436)又はこれらの変異株であり、アノキシバチルス属微生物が、アノキシバチルス・フラビサーマス(Anoxybacillus flavithermus) NBRC15317又はその変異株であり、サーモアナエロバクター属微生物が、サーモアナエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobacter brockii) ATCC35047又はその変異株である請求項13記載のα−グルカン転移酵素の製造方法。
- 請求項12記載の形質転換微生物を培養し、培養物から組換え型α−グルカン転移酵素を採取することを特徴とする組換え型α−グルカン転移酵素の製造方法。
- 重合度4以上のα−1,4グルカンとサイクロデキストリンとを含んでなる糖液に、請求項1乃至7のいずれかに記載のα−グルカン転移酵素を作用させて、分岐サイクロデキストリンを生成せしめる工程と、これを採取する工程とを含んでなる分岐サイクロデキストリン又はこれを含有する糖質の製造方法。
- 重合度4以上のα−1,4グルカンとサイクロデキストリンとを含んでなる糖液を重合度が4以上のα−1,4グルカンに澱粉枝切り酵素及びサイクロデキストリン・グルカノトランスフェラーゼを作用させてサイクロデキストリンを生成せしめることを特徴とする請求項16項記載の分岐サイクロデキストリン又はこれを含有する糖質の製造方法。
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