JPH11318441A - 超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ - Google Patents

超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ

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JPH11318441A
JPH11318441A JP10132320A JP13232098A JPH11318441A JP H11318441 A JPH11318441 A JP H11318441A JP 10132320 A JP10132320 A JP 10132320A JP 13232098 A JP13232098 A JP 13232098A JP H11318441 A JPH11318441 A JP H11318441A
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Japan
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amylopullulanase
acid
hyperthermostable
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Application number
JP10132320A
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English (en)
Inventor
Yoshinaga Tachibana
佳永 橘
Akiko Kuramura
昭子 倉村
Naoteru Shirasaka
直輝 白坂
Yuji Suzuki
裕治 鈴木
Kensaku Uzura
健作 卯津羅
Iwao Kojima
岩夫 小島
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Nagase and Co Ltd
Original Assignee
Nagase and Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼを提供する
こと。 【解決手段】 本発明により、高温環境から新たに単離
された菌株が生産する、新規な超耐熱耐酸性アミロプル
ラナーゼが提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な超耐熱耐酸
性アミロプルラナーゼに関する。
【0002】
【従来の技術】α-アミラーゼは広く天然界に分布して
おり、これまでに種々の性質のα-アミラーゼが取得さ
れ、産業上利用されている。α-アミラーゼの活性すな
わちα-1,4グルコシド結合をエンド型で加水分解する活
性は、例えば、デンプンの液化において工業的に利用さ
れている。
【0003】デンプン液は粘度が高く、これは物質移動
の問題を生じるので、工業的なデンプンの液化は、でき
る限り高い温度で行われる。デンプン液化は、安価な原
料から、大量のオリゴ糖またはD-グルコースを製造す
るための重要な工程である。
【0004】従来、工業的に利用可能であった耐熱性α
-アミラーゼは、中性付近(pH6〜8)に最適pHを有す
るので、工業的なデンプンの液化はデンプンスラリー
(pH無調整でpH4.5付近)を通常pH6付近に調整した後
行われていた。また、特に、D-グルコースの製造にお
いては、デンプンの液化に続いて行われる糖化において
用いられるグルコアミラーゼの最適pHは通常4.5付近で
あるので、液化工程終了後に、再び液化液のpHを4.5に
調整する必要があった。さらに、酸性条件下で液化した
液化液を用いて糖化を行った場合の方がD-グルコース
の収率が向上するので、酸性条件下での液化工程の優位
性が広く知られていた。従って、酸性条件下でデンプン
液化能を有する工業用α-アミラーゼの供給が望まれて
いる。
【0005】デンプンの分解のためには、α-1,4グルコ
シド結合に作用するα-アミラーゼおよびグルコアミラ
ーゼに加えて、α-1,6グルコシド結合に作用する酵素を
使用することにより反応を促進し得る。このような目的
で使用される酵素は「枝切り酵素(debranching enzym
e)」といわれており、枝切り酵素としては例えば、イ
ソアミラーゼおよびプルラナーゼが挙げられる。枝切り
酵素についても、α-アミラーゼと同様に、高温および
酸性条件下で活性であることが望ましく、そして単一の
酵素が両方の酵素活性(すなわち、α-1,4グルコシド結
合およびα-1,6グルコシド結合に対する活性)を有する
ことがさらに望ましい。
【0006】1972年、Brockらによってイエローストー
ンの温泉中より好熱好酸性細菌Sulfolobusが単離されて
以来、多数の超好熱菌が分離されている。超好熱菌は、
80℃以上に生育最適温度を有する微生物であるので、こ
れらの菌が生産する酵素群が非常に耐熱性に優れている
ことが期待されている。事実、超好熱菌の生産する酵素
の熱失活温度が菌の生育可能上限温度より高い温度であ
る場合が多く、100℃以上の最適温度を有する酵素も報
告されている。このような超耐熱性酵素は、産業上の利
用性が高いので、その探索および研究開発が世界中で広
く進められている。
【0007】超好熱菌由来のα-アミラーゼの例として
は、Pyrococcus属の細菌(特表平4-503757)およびKOD-
1株(特開平9-173077)に由来する酵素が挙げられる。
また、超好熱菌由来のプルラナーゼの例としては、Pyro
coccus属の細菌(特表平5-508997)、Fervidobacterium
属などの細菌(特表平6-505632)に由来する酵素が挙げ
られる。しかし、これらのいずれもが、α-アミラーゼ
活性およびプルラナーゼ活性の両方を、高温かつ酸性の
条件下で有するという所望される特性を有していなかっ
た。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、新規
な超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼを提供することであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、以下の
特徴を有する超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ: (1)α-1,4グルコシド結合およびα-1,6グルコシド結
合を分解する、(2)SDS-PAGEにおいて約70kDaの分子
量を示し、ゲルろ過において約45kDaの分子量を示す、
(3)約5.0の最適pHを有し、pH4.0において最適pHにお
ける活性の少なくとも約70%の活性を有する。
【0010】1つの実施態様において、上記超耐熱耐酸
性アミロプルラナーゼは、約100℃の最適温度を有し、
そしてCaCl2非存在下、pH5.0、90℃、30分間のインキュ
ベーション後に、少なくとも約90%の残存活性を有す
る。
【0011】1つの実施態様において、上記超耐熱耐酸
性アミロプルラナーゼは、ベータサイクロデキストリン
および/またはガンマサイクロデキストリンに対してα
-1,4グルコシド結合分解活性を有する。
【0012】1つの実施態様において、上記超耐熱耐酸
性アミロプルラナーゼは、α-1,4グルコシド結合を介す
る糖転移活性をさらに有する。
【0013】1つの実施態様において、上記超耐熱耐酸
性アミロプルラナーゼは、Desulfurococcus属に属する
超好熱菌に由来する。
【0014】1つの実施態様において、上記超耐熱耐酸
性アミロプルラナーゼは、Z-3株(受託番号FERM P-1660
2)に由来する。
【0015】本発明によれば、Z-3株(受託番号FERM P-
16602)が提供される。
【0016】本発明によれば、上記の超耐熱耐酸性アミ
ロプルラナーゼを産生する細胞を培養する工程を包含す
る、超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼの生産方法が提供
される。
【0017】1つの実施態様において、前記細胞はZ-3
株(受託番号FERM P-16602)の細胞である。
【0018】本発明によれば、デンプンスラリーと上記
の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼとをインキュベート
する工程を包含する、グルコースの製造方法が提供され
る。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明は、新規な超耐熱耐酸性ア
ミロプルラナーゼに関する。α-アミラーゼは、デンプ
ンのα-1,4グルコシド結合に作用してデンプンを加水分
解する酵素である。プルラナーゼは、プルラン、アミロ
ペクチン、デキストリンなどのα-1,6グルコシド結合を
分解する酵素である。アミロプルラナーゼは、α-アミ
ラーゼ活性およびプルラナーゼ活性の両方を有する、す
なわちα-1,4グルコシド結合およびα-1,6グルコシド結
合の両方を加水分解する活性を有する酵素として定義さ
れる。
【0020】本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
を得るために利用され得る超好熱菌は、80℃以上に最適
生育温度を有する微生物であると定義される。超好熱菌
の例としては、Desulfurolobus属、Sulfolobus属、Acid
ianus属、Thermoproteus属、Thermofilum属、Thermodis
cus属、Staphylothermus属、Archaeoglobus属、Pyrobac
ulum属、Pyrococcus属、Thermotoga属、Theromococcus
属、Desulfurococcus属、Pyrodictium属などの菌が挙げ
られる。これらの超好熱菌は、例えば、「古細菌」(古
賀洋介著、東京大学出版会、UPバイオロジーシリーズ 7
3 )に記載されている。この文献には、超好熱菌の分離
源、およびその性質が記載されている。本発明の超耐熱
耐酸性アミロプルラナーゼを産生する超好熱菌は以下の
ようにして取得され得る。高温環境由来のサンプル(例
えば、温泉湧出口付近の温泉水)を採取する。採取した
サンプルをネジつき試験管に入れた適切な培地(例え
ば、実施例1に記載のZ培地)に接種し、気相を窒素置
換した後、高温(例えば、90℃)で、数日間培養する。
濁りが発生した試験管から培養液の一部を採取し、これ
を顕微鏡下で観察する。微生物の存在を確認した後、計
数し、この培養液から限界希釈法により菌株を分離す
る。
【0021】本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
の生産のために好ましい菌株は、Z-3株である。この株
は工業技術院生命工学工業技術研究所に平成10年1月27
日に寄託されており、その受託番号はFERM P-16602号で
ある。菌株の分類は、例えば、形態、増殖温度、増殖p
H、増殖塩濃度、増殖速度、利用炭素源の種類、抗生物
質感受性、染色体DNAのGC含量および他の染色体DNAと
のハイブリダイゼーション、16S rRNA遺伝子のヌクレオ
チド配列の比較などに基づいて行われる。Z-3株は、こ
れらの同定試験項目の検討の結果によりDesulfurococcu
s属に比較的近縁である事が示唆されたが、DNA相同性試
験により既知のいかなる種とも異なることが示された
(実施例2を参照のこと)。
【0022】本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
は、単離された菌株を培養することにより生産され得
る。培養は菌株の増殖のために適切な条件で実施され
る。培養物から常法により本発明の超耐熱耐酸性アミロ
プルラナーゼを精製し得る。例えば培養物を遠心分離ま
たはろ過することによって菌体を分離して上澄を得、こ
の上澄から通常の手段、例えば、塩析法、溶媒沈澱法
(例えば、エタノール、アセトン等)によって目的酵素
蛋白を沈澱させたり、また、限外ろ過(例えば、ダイヤ
フローメンブレンYC、アミコン社製)により濃縮させ
て、本発明のアミロプルラナーゼを得る。塩析法、溶媒
沈澱法では、アミロプルラナーゼを沈澱させ、ろ過ある
いは遠心分離、脱塩処理した後、これを凍結乾燥粉末と
することもできる。さらに上記で得られたアミロプルラ
ナーゼを塩析、溶媒沈澱、等電点沈澱、電気泳動、イオ
ン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、アフィニティー
クロマトグラフィー、晶出等の通常の酵素の精製手段を
適宜組合せることによって、比活性の向上した粗酵素な
いし精製酵素とすることもできる。
【0023】酵素の分子量は、例えば、精製酵素をSDS-
ポリアクリルアミトゲル電気泳動することにより、およ
び/またはゲルろ過に供することにより決定される。本
発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼは、SDS-PAGEに
おいて約60〜80kDa、好ましくは約70kDaの分子量を示
し、ゲルろ過において約35〜55kDa、好ましくは約45kDa
の分子量を示す。
【0024】得られたサンプルを用いて、酵素のより詳
細な性質を調べることができる。酵素活性は、基質(例
えば、プルラン、可溶性デンプン)溶液に酵素サンプル
を加え、反応させた後、生成された還元糖をソモギー・
ネルソン法により測定することで測定し得る。簡易的な
アミラーゼ活性は、例えば、ネオアミラーゼテスト「第
一」(第一化学製薬)を使用して比色的に定量され得
る。
【0025】デンプンへの作用様式は、酵素サンプルを
可溶性デンプンと反応させた後、オリゴ糖の生成パター
ンを薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出することに
より調べ得る。例えば、プルランを基質とした際に、TL
Cにおいてマルトトリオース(G3)が検出されることに
より、酵素がプルランのα-1,6グルコシド結合を分解す
ることが示される。また、酵素を可溶性デンプンおよび
アミロースに作用された場合に、各種マルトオリゴ糖が
検出されることにより、酵素が可溶性デンプンおよびア
ミロースのα-1,4グルコシド結合も分解する事が示され
る。本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼは、α-
1,4グルコシド結合およびα-1,6グルコシド結合を分解
する。
【0026】酵素活性を種々のpHおよび種々の温度にお
いて測定することにより、酵素の最適pHおよび最適温度
を決定し得る。また、酵素を種々の時間一定の温度でイ
ンキュベートした後に残存する酵素活性を測定すること
により、酵素の耐熱性を決定し得る。本発明の酵素は、
約4.0〜6.0、好ましくは約5.0の最適pHを有する。本発
明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼは、pH4.0におい
て最適pHにおける活性の少なくとも約30%、好ましくは
約50%、最も好ましくは約70%の活性を有する。本発明
の酵素は、約90〜110℃、好ましくは約100℃の最適温度
を有する。本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
は、CaCl2非存在下、pH5.0、90℃、30分間のインキュベ
ーション後に、少なくとも約70%、好ましくは少なくと
も約80%、最も好ましくは少なくとも約90%の残存活性
を有する。
【0027】本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
は、糖転移活性を有し得る。糖転移活性は、各種オリゴ
糖に酵素を作用させ、次いで反応液をTLCで分析するこ
とにより確認され得る。糖転移活性はオリゴ糖の製造の
ために有用であり得る。グルコースの製造は、例えば、
以下のように実施し得る:デンプンスラリー(例えば、
約30%)に、適切な量の本発明の超耐熱耐酸性アミロプ
ルラナーゼを添加する;必要に応じて、pHを調整し(例
えば、4.0〜6.0に)そして/または酵素の安定性を増加
させるために塩化カルシウムを添加する(例えば、0〜
5mM);ジェットクッカーで液化する(例えば、90〜11
0℃で);熟成を行う場合には、90〜95℃で適切な時間
熟成を行う;必要に応じて、pHを4.5に調整する;グル
コアミラーゼを添加する;糖化する(例えば、60℃で、
48時間)。
【0028】
【実施例】(実施例1:Z-3株の分離)耐熱耐酸性アミ
ラーゼを産生する超好熱菌菌株を以下のようにスクリー
ニングした。 1.1 菌株の単離 使用培地したZ培地の組成を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】混合ガス(N2:H2:CO2 = 90:5:5)下、ネジ
付き試験管中の5mlのZ培地に、500μlの日本国内各地
の温泉水サンプルを添加した。試験管のキャップを固く
締めた後、これらの試験管を90℃で3〜7日インキュベ
ートした。濁りの認められたサンプルについて、光学顕
微鏡観察を行うことにより、細胞の増殖を確認した。
【0031】東北地方の温泉水から得た1つのサンプル
を使用した場合に、Z培地における濁りが認められた。
得られた培養液中の微生物を光学顕微鏡を用いて観察
し、桿菌と球菌とが混在していることを確認した。
【0032】1.2 アミラーゼ活性の測定 増殖の認められたサンプルから得た細胞を、0.2%可溶
性デンプンを含むZ培地中で増殖させ、得られた培養液
を酵素液として使用した。ネオアミラーゼテスト「第一」
(第一化学製薬)の錠剤1錠をネジ付き試験管に入れ、
これに酵素液4mlを注入した。次いで、試験管に2M酢
酸緩衝液(pH4.0またはpH5.0)を200μl添加し、Vortex
で攪拌した後、キャップを締め、そして90℃で22時間イ
ンキュベートした。インキュベーション後、遠心分離
(3,000 rpm、5分間)により回収した上清の620 nmにお
ける吸光度(青色)を測定した。
【0033】上記サンプルの培養液中のアミラーゼ活性
をpH4.0およびpH5.0で測定し、いずれのpHにおいても活
性が確認された(表2)。
【0034】
【表2】
【0035】1.3 限界希釈法による菌株の単離 培養液中の細胞密度をPetroff-Hausser菌数計算盤を用
いて細胞数を測定することにより算出した。次いで、新
たな5mlのZ培地当たり0〜1個の菌数になるように上記
培養液を適当に希釈して、これを接種した(1サンプル
について各5本ずつ)。90℃での3〜7日間のインキュ
ベーションの後、試験管中の培地の濁りを目視により確
認した。5本中1〜4本の試験管中の培地に濁りが認め
られた場合、1回の限界希釈を完了したこととした。3
回の限界希釈を完了した時点で、菌株が単離されたこと
とした。
【0036】限界希釈により単離した菌株のうち、球状
の菌の培養液中にアミラーゼ活性が検出された(表
3)。この菌株をZ-3株と命名した。
【0037】
【表3】
【0038】(実施例2:Z-3株の菌学的性質の検討) 2.1 最適増殖温度の検討 5mlのZ培地(0.2%トリプトンを含有する)に、Z-3株
の前培養液50μlを接種し、これを70、80、85、90、9
5、100、または105℃で培養した。経時的に培養液をサ
ンプリングし、培養液中の細胞密度をPetroff-Hausser
菌数計算盤を用いて測定することにより、倍加時間を算
出した。最も短い倍加時間を生じる培養温度を最適増殖
温度とした。
【0039】図1に示すように、試験した80〜100℃に
おいて増殖が観察された。また、最適増殖温度は90〜95
℃であった。
【0040】2.2 最適増殖pHの検討 1N H2SO4溶液または1N KOH溶液を用いて、pH4.5、5.
0、5.2、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、9.0、9.5、お
よび10.0に調節した各5mlのZ培地(0.2%トリプトン
を含有する)に、Z-3株の前培養液50μlを接種し、これ
を90℃で培養した。培養液中の細胞密度をPetroff-Haus
ser菌数計算盤を用いて測定することにより、倍加時間
を算出した。最も短い倍加時間を生じるpHを最適増殖pH
とした。試験したpH5.2〜9.0において増殖が観察され
た。また、最適増殖pHは7付近であった(図2)。
【0041】2.3 最適増殖NaCl濃度の検討 0、0.01、0.025、0.05、0.1、0.2、および0.4%のNaCl
濃度に調節した5mlのZ培地(0.2%トリプトンを含有
する)にZ-3株の前培養液50μlを接種し、これを90℃で
培養した。培養液中の細胞密度をPetroff-Hausser菌数
計算盤を用いて測定することにより、倍加時間を算出し
た。最も短い倍加時間を生じるNaCl濃度を最適増殖NaCl
濃度とした。
【0042】図3に示すように、試験した0〜0.2%のN
aCl濃度で増殖が観察された。また、最適増殖NaCl濃度
は0.025%であった。
【0043】2.4 炭素源の検討 酵母エキスのかわりに、0.02%または0.2%の各種炭素
源(グルコース、マルトース、サッカロース、ラクトー
ス、フルクトース、可溶性デンプン、カザミノ酸、ペプ
トン、酵母エキス、メタノール、またはエタノール)を
含有する5mlのZ培地にZ-3株の前培養液50μlを接種
し、これを90℃で培養した。48時間後にPetroff-Hausse
r菌数計算盤を用いて菌数を測定して、増殖の程度を確
認した。
【0044】酵母エキスを除いたZ培地においては、Z-
3株の増殖は認められなかった。0.2%のペプトンまたは
酵母エキスを添加したZ培地においてのみ、Z-3株の増
殖が確認された。
【0045】2.5 抗生物質感受性の検討 100 μg/mlの各種抗生物質(ストレプトマイシン、バン
コマイシン、クロラムフェニコール、リファンピシン、
またはベンジルペニシリン)を含有する5mlのZ培地
(0.2%トリプトンを含有する)にZ-3株の前培養液50μ
lを接種し、これを90℃で培養した。48時間後にPetroff
-Hausser菌数計算盤で菌数を測定して、増殖の程度を確
認した。
【0046】100μg/mlのリファンピシンの添加によ
り、Z-3株の増殖は完全に阻害された。一方、100μg/ml
のストレプトマイシン、バンコマイシン、クロラムフェ
ニコール、およびベンジルペニシリンの添加によって
は、Z-3株の増殖は影響されなかった。
【0047】2.6 染色体DNAのGC含量の測定 2.6.1 染色体DNAの調製 800mlのZ-3株培養液から、まず濾紙ろ過により硫黄を除
去し、次いで遠心分離(10,000 rpm、20分間)により菌
体を回収した。4mlの25%スクロースを含む0.05M Tris
-HCl緩衝液(pH8.0)に菌体を懸濁した。この懸濁液に80
0μlの0.25M Tris-HCl緩衝液(pH8.0)中0.5%リゾチー
ム溶液および2mlの0.2M EDTA溶液を添加し、これを20
℃(室温)で1時間インキュベートした。インキュベー
ション後、上記懸濁液に24mlのSET溶液(150mM NaCl、
1mM EDTA、20mM Tris-HCl(pH8.0))、4mlの5%SDS
溶液、および400μlのProteinase K溶液(10 mg/ml)を
添加し、さらに37℃で1時間インキュベートした。イン
キュベーション後、フェノール/クロロホルム抽出を実
施し、上部水層を分取し、これに2倍量の冷エタノール
を加えた。生じた糸状のDNAをガラス棒を用いて採り、
これを4mlのTE溶液(50mM Tris-HCl (pH8.0)、50mM ED
TA (pH8.0))中に溶解した。RNase(10 mg/ml)15μlを
添加した後、この溶液を37℃で1時間インキュベート
し、次いでフェノール/クロロホルム抽出を実施した。
上部水層を分取し、これに1/10量の3M酢酸ナトリウム
(pH5.2)、および2.5倍量の冷エタノールを加えた。生
じた糸状のDNAをガラス棒を用いて採り、70%エタノー
ルで洗浄し、次いでこれを1mlのTE溶液(10mM Tris-HC
l (pH8.0)、0.1mM EDTA (pH8.0))中に溶解した。同様
の方法により、Desulfurococcus mobilis(DSM 216
1)、Desulfurococcus mucosus(DSM 2162)、およびDe
sulfurococcus amylolyticus(DSM 3822)(いずれも理
化学研究所微生物系統保存機関(JCM)から購入した)
から染色体DNAを調製した。
【0048】2.6.2 GC含量の測定 GC含量の測定を、上記2.6.1で得られたDNAをヌクレアー
ゼP1で完全に消化したものをサンプルとして、HPLCにお
いてモノヌクレオチドの量比を測定する「DNAGCキッ
ト」(ヤマサ醤油)を製造業者の説明書に従って使用す
ることにより実施した。コントロールとして、仔牛胸腺
DNA(ファルマシア)およびバクテリオファージλDNA
(東洋紡績)を使用した。
【0049】Z-3株由来の染色体DNAのGC含量は、45.0 m
ol%であった。
【0050】2.7 16S rRNA遺伝子塩基配列の決定 16S rRNAをコードする染色体DNA領域を、テンプレート
としての2.6において調製した染色体DNA、および高度に
保存された領域の配列に基づいて設計したプライマー対
(ForwardプライマーおよびReverseプライマー、それぞ
れ配列番号1および2)を用いるPCRにより増幅した。
増幅されたDNAフラグメントを平滑末端化し、これをHin
c IIで消化したM13mp18およびM13mp19ベクターと連結し
た。目的のクローンを有するE.coli JM109株の培養上清
から調製した1本鎖DNAをテンプレートとして、ジデオ
キシ法により増幅されたDNAの塩基配列を決定した。
【0051】決定したZ-3株の16S rRNA遺伝子配列(142
8 bp)を配列番号3に示す。
【0052】Desulfurococcus mucosus(DSM 2162)お
よびDesulfurococcus amylolyticus(DSM 3822)の16S
rRNA遺伝子についても同様に塩基配列の決定を実施した
(データは示さず)。
【0053】2.8 16S rRNA遺伝子塩基配列を用いた系統
学的解析 バイオデータベースソフトウェアGENETYX-MAC/DB Ver.3
7.0(ソフトウエア開発株式会社)を用いて、バイオデ
ータベースCD-ROM GENETYX-CD Ver.37(ソフトウエア開
発株式会社)に入力されているGenBank(登録商標)Rel
ease 100.0 April, 1997およびEMBL Release 50.0 Marc
h, 1997 (non redundancy)の登録データ、ならびに上記
で決定したD. mucosus(DSM 2162)およびD. amylolyti
cus(DSM3822)の16S rRNA遺伝子塩基配列に対して、Z-
3株の16S-rRNA遺伝子塩基配列との相同性の検索を実施
した。
【0054】相対的に高い相同性を有する配列に対し
て、遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX-MAC Ver.9.0を
用いてマルチアライメント解析を行った。そのマルチア
ライメント解析の結果に基づいて、平均距離法(UPGMA
法)および近隣結合法(NJ法)による系統樹解析を行っ
た。通常、近隣結合法は、無根系統樹で表示されるが、
このソフトウェアを使用した場合は有根系統樹として表
示されるので、ルートの部分において距離が等しくなる
ように2分割されている。
【0055】Z-3株の16S rRNA遺伝子塩基配列に対する
相同性検索の結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】Z-3株と最も高い相同性を有する株は、D.
mobilis(DSM 2161)であった(95.8%)。このD. mobi
lis(DSM 2161)と同じDesulfurococcus属に分類される
D. mucosus(DSM 2162)(95.7%)およびD. amylolyti
cus(DSM 3822) (95.3%)とも高い相同性が示され
た。Staphylothermus marinus(DSM 3639)とも上記Des
ulfurococcus属菌株と同程度の相同性(95.7%)が示さ
れた。
【0058】Z-3株との高い相同性を有する株の16S rRN
A遺伝子配列とのマルチアライメントの結果に基づい
て、近隣結合法(NJ法)(図4)および平均距離法(UP
GMA法)(図5)により作成した系統樹を示す(図中の
数字は、進化距離を示す)。 2.9 DNA-DNAハイブリダイゼーションによるDNA相同性
試験 DNA相同性試験をマイクロプレートハイブリダイゼーシ
ョン法(蛍光法)により行った。実験操作は、「DNA相同
性試験、マイクロプレートハイブリダイゼーション法」
(日本放線菌学会発行、放線菌学技術叢書2)またはIn
ternational Journal of Systematic Bacteriology, Vo
l. 39 No. 3, p. 224-229 (1989)に記載の方法に従っ
た。
【0059】Z-3株の染色体DNAをホトビオチンで標識
し、これをZ-3株、D. amylolyticus(DSM 3822)、D. m
obilis(DSM 2161)、およびD. mucosus(DSM 2162)の
染色体DNAに対して45℃で2時間ハイブリダイゼーショ
ンを行った。
【0060】Z-3株と各菌株の間のDNA相同性を表5に示
す。
【0061】
【表5】
【0062】この方法において、同一の種は相同性値が
最適条件下で70%以上であると定義されている(「DNA相
同性試験、マイクロプレートハイブリダイゼーション
法」(日本放線菌学会発行、放線菌学技術叢書2)を参
照のこと)。このように、Z-3株はD. mobilis、D. muco
susおよびD. amylolyticus種のいずれにもに分類されな
いことが実証された。
【0063】Z-3株の生理学的性質をD. mobilis、D. mu
cosus[Zbl. Bakt. Hyg., I. Abt.Orig. C3, 304-317
(1982)]、D. amylolyticus [Mikrobiologiya, 57, 94
-101(1988)]、およびS. marinus[System. Appl. Micr
obiol. 8, 106-113 (1986)]と比較した(表6)。
【0064】
【表6】
【0065】2.8において上記したように、16S rRNA遺
伝子塩基配列の相同性検索の結果により、本発明のZ-3
株がDesulfurococcus属およびStaphylothermus属に比較
的近縁である事が示唆された。さらに2.3において上記
した増殖NaCl濃度、および2.9において上記した染色体D
NAのGC含量の比較からは、Z-3株はStaphylothermus属よ
りもむしろDesulfurococcus属に近縁であることが示さ
れた(表6を参照のこと)。しかし、系統学的解析およ
びDNA相同性試験(2.9)により、Z-3株はD. mobilis、
D. mucosusおよびD. amylolyticusのいずれの種とも異
なることが示された。
【0066】(実施例3:Z-3株の産生するアミラーゼ
の性質) 3.1 酵素の精製 0.2%可溶性デンプンおよび0.2%ペプトンを含有するZ
培地800mlに、5〜10%容量の前培養液を接種して、90
℃で3日間培養した。濾紙ろ過により硫黄を除去し、次
いで遠心分離(10,000 rpm、15分間)により菌体を除去
した。上清に固形硫酸アンモニウムを80%飽和濃度とな
るように添加し、4℃で一夜以上放置した。220リット
ルの培養液上清の硫酸アンモニウム塩析溶液を遠心分離
することにより生じた沈澱を、100mlの25mM Tris-HCl緩
衝液(pH7.0)(緩衝液1)に溶解し、次いでこれを緩
衝液1に対して一夜透析した。透析後の粗酵素溶液を、
緩衝液1で平衡化した疎水性相互作用クロマトグラフィ
ー用カラム(RESOURCE PHE、ファルマシアバイオテク)
にかけ、次いで、緩衝液1でこのカラムを十分洗浄し、
そして6M尿素を含有する緩衝液1で溶出した。溶出さ
れたデンプン分解活性を有する画分を緩衝液1に対して
一夜透析し、次いで陰イオン交換クロマトグラフィー用
カラム(POROS HQ、パーセプティブバイオシステムズ)
にかけた。緩衝液1でこのカラムを十分に洗浄した後、
0Mから1MのNaClを含む緩衝液1を用いる濃度勾配で
溶出した。溶出されたデンプン分解活性を有する画分
を、100mM NaClを含む緩衝液1で平衡化したアフィニテ
ィークロマトグラフィー用カラム(製造業者の説明書に
従って可溶性デンプンを結合したEpoxy-Sepharose 6B、
ファルマシアバイオテク)にかけた。2 M NaClを含む緩
衝液1でこのカラムを十分洗浄し、次いで1%アミロー
スを含む緩衝液1で溶出した。溶出されたデンプン分解
活性を有する画分を70℃で20分間熱処理して、アミロー
スを分解した。これを蒸留水に対して3日間、4℃で透
析し、そして平均分画分子量3万の限外ろ過膜を用いて
0.5mlに濃縮して、精製酵素サンプルを得た。
【0067】タンパク質の定量は、NanoOrangeタンパク
質定量キット(モリキュラープローブ)を製造業者の説
明書に従って使用して実施した。
【0068】プルラナーゼおよびアミラーゼの活性測定
については、高温での処理に際しての活性測定反応液の
沸騰および蒸発を防ぐために、Oil-Free PCR Tube(宝
酒造)を使用して、密封して行った。10μlの2%プル
ランまたは可溶性デンプン(それぞれ0.2M酢酸ナトリウ
ム緩衝液(pH5.0)中に溶解)に、適当に希釈した精製酵
素サンプル10μlを添加し、次いでこの混合液を100℃で
10分間反応させ、そして氷水中で急冷した。生成した還
元糖量をソモギー・ネルソン法により測定した。40μl
のソモギー銅試液(ナカライテスク)を上記反応液に添
加し、次いで混合液を100℃で30分間加熱し、そして氷
水中で冷却した。ネルソン試液(ナカライテスク)40μ
lをさらに加えることにより発色させた液に300μlの蒸
留水を添加し、得られた溶液の波長540nmにおける吸光
度を測定した。この反応条件下で、1分間に1μmolの
グルコースに相当する還元力を生成する酵素量を1単位
(U)とする。
【0069】各ステップのタンパク質量および酵素活性
(プルラナーゼ活性)の測定結果を表7に示す。
【0070】
【表7】
【0071】3.2 分子量の測定 3.2.1 SDSーポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAG
E) 精製酵素サンプルに、2倍量のSDS-PAGE用サンプル緩衝
液(バイオラッド)を添加し、そしてこれを100℃で5
分間加熱した。電気泳動は、Phast System(ファルマシ
ア)を使用して、PhastGel Gradient 8-25(ファルマシ
ア)ゲルで実施した。電気泳動後、銀染色法によりタン
パク質を染色した(PhastGel Silver Kit、ファルマシ
ア)。分子量マーカーとしては、LMW Kit E(ファルマ
シア)を使用した。
【0072】3.2.2 ゲルろ過 ゲルろ過用カラムSuperose 12(ファルマシア)を装着
したSMART System(ファルマシア)を使用して、ゲルろ
過による分子量の測定を実施した。20μlの精製酵素サ
ンプルをカラムにかけ、40μl/分の流速でゲルろ過用緩
衝液(0.15M NaCl、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.
0))で溶出した。分子量マーカーとしては、ゲルろ過ス
タンダード(バイオラッド)を使用した。
【0073】精製酵素サンプルをSDS-PAGE分析し、分子
量70kDaの位置に単一バンドが認められた(図6)。こ
の事は、このサンプルが実質的に純粋であり、そして酵
素の精製が完了した事を示している。また、精製酵素サ
ンプルをゲルろ過分析に供したところ、分子量45kDaの
位置にプルラナーゼ活性とアミラーゼ活性を含む単一ピ
ークが認められた(データは示さず)。一般に、超好熱
菌由来タンパク質は、非常にコンパクトな立体構造を取
ることによって、非常に高い耐熱性を有している事が知
られている。SDS-PAGE分析結果とゲルろ過分析結果との
間に認められた差異は、分子量マーカーとして使用した
従来の常温生物由来タンパク質の立体構造と、超好熱菌
由来タンパク質の立体構造との間の差異に起因すると考
えられる。
【0074】3.3 最適温度の測定 精製酵素サンプルを使用して、プルラナーゼ活性および
アミラーゼ活性を70、80、90、100、110、または120℃
で測定(3.3.2に記載の方法に従い)した。反応pHは、p
H5.0(酢酸ナトリウム)であった。各測定温度でのイン
キュベーションのためには、ブロックヒーターを使用し
た。
【0075】種々の温度におけるプルラナーゼ活性およ
びアミラーゼ活性の相対活性は、互いにほぼ一致してい
た。本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼの最適温
度は、100℃であった(図7)。
【0076】3.4 最適pHの測定 プルランおよび可溶性デンプンを、種々のpHを有する緩
衝液(0.2Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0〜4.0)、
0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0〜6.5)、または0.2M
リン酸カリウム緩衝液(pH6.5〜8.0))に2%溶液にな
るように溶解し、これを基質とした。緩衝液のpHは、80
℃で測定した。精製酵素サンプルのプルラナーゼ活性お
よびアミラーゼ活性を90℃で測定した。
【0077】各種pHにおけるプルラナーゼ活性およびア
ミラーゼ活性の相対活性曲線は、互いにほぼ一致してい
た。本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼの最適pH
は、5.0であった(図8)。
【0078】3.5 熱安定性の測定 50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)(1mM CaCl2を含
有するかまたは含有しない)中に溶解した精製酵素サン
プルを、90℃または100℃で、0、10、20、または30分
間熱処理した後、プルラナーゼ活性を測定した。
【0079】本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
は、1mM CaCl2の存在下または非存在下のいずれにおい
ても、90℃で30分間の熱処理後に100%の残存活性を示
した。100℃で30分間の熱処理については、1mM CaCl2
の非存在下においては約50%の活性が失なわれたが、一
方1mM CaCl2の存在下においては100%の残存活性を示
した(図9)。このことは、この条件下でのCaCl2の安
定化効果を示す。
【0080】3.6 基質特異性の測定 プルラン、可溶性デンプン、アミロース、アミロペクチ
ン、グリコーゲン、デキストラン、アルファサイクロデ
キストリン(α-CD)、ベータサイクロデキストリン
(β-CD)、またはガンマサイクロデキストリン(γ-C
D)を2%の濃度になるように0.2M酢酸ナトリウム緩衝
液(pH5.0)に溶解し、これを基質とした。これらの基
質に精製酵素サンプルを添加して、100℃で10分間の反
応により生成された還元糖の量を測定した。
【0081】種々の基質に対する本発明の酵素の相対活
性(100℃、pH5.0、10分間反応)を表8に示す。本発明
の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼはプルランに対して
最も高い反応性を示し、その50〜60%の割合で可溶性デ
ンプンおよびアミロースも分解した。また、γ-CDに対
しても比較的効率的な分解活性を示した。
【0082】
【表8】
【0083】3.7 薄層クロマトグラフィー(TLC)によ
る反応生成物の分析 プルラン、可溶性デンプン、またはアミロースを2%の
濃度になるように0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)
に溶解し、これを基質とした。これらの基質10μlに10
μlの精製酵素を添加し、100℃で、0、3、または16時
間で反応させた。
【0084】同様に、グルコース(G1)、マルトース
(G2)、マルトトリオース(G3)、マルトテトラオース
(G4)、マルトペンタオース(G5)、マルトヘキサオー
ス(G6)、またはマルトヘプタオース(G7)を2%の濃
度になるように0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に
溶解し、これらに精製酵素を添加して100℃で3時間反
応させた。
【0085】各反応液(1.5μl)を、シリカゲル60 TLC
プレート(メルク)にのせ、このプレートを展開溶媒
(イソプロパノール:アセトン:蒸留水=2:2:1)
で展開した。展開後のプレートに発色液(4mlアニリ
ン、4gジフェニルアミン、200mlアセトン、30ml 85%
リン酸)を噴霧し、次いで105℃で30分間加熱して、ス
ポット(青色)を検出した。スタンダードとしては、G1
〜G7の混合液を用いた。本発明の超耐熱耐酸性アミロプ
ルラナーゼはプルランを分解して、マルトトリオース
(G3)を生成した(図10)。この事は、この酵素がプル
ランのα-1,6グルコシド結合を分解することを示してい
る。また、この酵素は可溶性デンプンおよびアミロース
を分解して、各種マルトオリゴ糖を生成した(図10)。
このことは、本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
が可溶性デンプンおよびアミロースのα-1,4グルコシド
結合も分解する事を示している。以上の結果より、この
酵素がアミロプルラナーゼに分類されることが示され
た。
【0086】本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
を各種マルトオリゴ糖に作用させた(図11)。この酵素
をマルトテトラオース(G4)、マルトペンタオース(G
5)、マルトヘキサオース(G6)、およびマルトヘプタ
オース(G7)に作用させた場合、基質としたマルトオリ
ゴ糖よりも重合度の高いマルトオリゴ糖を含む種々のマ
ルトオリゴ糖が産生された。反応時間を延長するか、ま
たは使用酵素量を増加させると、マルトトリオースに対
しても作用して、マルトトリオースよりも重合度の高い
マルトオリゴ糖を含む種々のマルトオリゴ糖を少量産生
した。この結果より、本発明の酵素はマルトトリオース
以上のマルトオリゴ糖に作用し得ることが示された。ま
た、この酵素は糖転位活性をさらに有することが示され
た。TLCにおいて観察された、基質よりも大きい生成し
たオリゴ糖がマルトペンタオース(G5)、マルトヘキサ
オース(G6)、およびマルトヘプタオース(G7)などに
相当するので、糖転移は、α-1,4グルコシド結合を介し
ている事が示唆された。本発明の超耐熱耐酸性アミロプ
ルラナーゼは、α-1,4グルコシド結合分解活性に加えて
α-1,6グルコシド結合分解を有するので、この酵素がα
-1,6グルコシド結合を介する糖転移活性を有する可能性
がある。
【0087】3.8 パノース、イソマルトース、イソマル
トトリオース、およびガンマサイクロデキストリンに対
する作用 3.7に記載のように、パノース、イソマルトース、イソ
マルトトリオース、およびガンマサイクロデキストリン
を2%の濃度になるように0.2M酢酸ナトリウム緩衝液
(pH5.0)に溶解し、これらに精製酵素を添加して、100
℃で3時間反応させた。
【0088】本発明の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ
は、パノース、イソマルトース、およびイソマルトトリ
オースを分解しない事が示された。ガンマサイクロデキ
ストリンは分解され、種々のマルトオリゴ糖の生成が認
められた(図12)。
【0089】
【発明の効果】本発明により、新規な超耐熱耐酸性アミ
ロプルラナーゼが提供される。
【0090】
【配列表】
【0091】
【配列番号1】 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸合成DNA 配列 TTCCGGTTGA TCCYGCCGGA 20
【0092】
【配列番号2】 配列の長さ:19 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸合成DNA 配列 GGTTACCTTG TTACGACTT 19
【0093】
【配列番号3】 配列の長さ:1428 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:genomic DNA 起源 株名:Z-3(受託番号FERM P-16602) 配列 CCCGACCGCT ATCGGGGTAG GGCTAAGCCA TGGGAGTCGT ACGCCCCGCC GCCGCGGGGC 60 GTGGCGGACG GCTGAGTAAC ACGTGGCTAA CCTACCCTCG GGAGGGGGAT AACACCGGGA 120 AACTGGTGCT AATCCCCCAT AGGGGAGGAG GCCTGGAAGG GTCCCTCCCC GAAAGGGTGT 180 AGCGGGGGTT AACGCCGCTA CACCGCCCGA GGATGGGGCT GCGGCCCATC AGGTAGTTGG 240 CGGGGTAACG GCCCGCCAAG CCTATAACGG GTAGGGGCCG TGAGAGCGGG AGCCCCCAGT 300 TGGGCACTGA GACAAGGGCC CAGGCCCTAC GGGGCGCACC AGGCGCGAAA ACTCCGCAAT 360 GCGGGAAACC GTGACGGGGC TACCCCGAGT GCCCCCGATA AGGGGGCTTT TCCCCGCTGT 420 AAGAAGGCGG GGGAATAAGC GGGGGGCAAG TCTGGTGTCA GCCGCCGCGG TAATACCAGC 480 CCCGCGAGTG GTCGGGACGA TTATTGGGCC TAAAGCGCCC GTAGCCGGCC CGGAAAGTCT 540 CCCCTTAAAT CCTCGGGCTC AACCCGAGGG CTGGGGGAGA TACTTCCGGG CTAGGGGGCG 600 GGAGAGGCCG GGGGTACTCC CGGGGTAGGG GCGAAATCCT ATAATCCCGG GAGGACCACC 660 AGTGGCGAAG GCGCCCGGCT GGAACGCGCC CGACGGTGAG GGGCGAAAGC CGGGGGAGCG 720 AACCGGATTA GATACCCGGG TAGTCCCGGC TGTAAACGAT GCGGGCTAGG TGTTGGGTGG 780 GCTTAGAGCC CACCCAGTGC CGCAGGGAAG CCGTTAAGCC CGCCGCCTGG GGAGTACGGC 840 CGCAAGGCTG AAACTTAAAG GAATTGGCGG GGGAGCACCA CAAGGGGTGG AGCCTGCGGT 900 TTAATTGGAG TCAACGCCGG GAACCTCACC GGGGGCGACA GCAGGATGAC GGCCAGGCTA 960 ACGACCTTGC CCGACGCGCT GAGAGGAGGT GCATGGCCGT CGCCAGCTCG TGCTGTGAAG 1020 TGTCCGGTTA AGTCCGGCAA CGAGCGAGAC CCCCGCCCCT AGTTGCCATC CGGGGCTCCG 1080 GCCCCGGGGC ACACTAGGGG GACTGCCGCC GTTTAAGGCG GAGGAAGGAG GGGGCCACGG 1140 CAGGTCAGCA TGCCCCGAAA CCCCCGGGCT ACACGCGGGC TACAATGGCG GGGACAGAGG 1200 GATCCGAACC CGAAAGGGGG AGGTAATCCC TCAAACCCCG CCGTAGTTGG GATCGAGGGC 1260 TGCAACTCGC CCTCGTGAAC GCGGAATCCC TAGTAACCGC GCGTCATCAT CGCGCGGTGA 1320 ATACGTCCCT GCTCCTTGCA CACACCGCCC GTCGCTCCAC CCAAGGGAGG AGGGAGTGAG 1380 GCCCGGCCTC CAGGGGTCGG GTCGAACTCC CTCCTCCTGA GGGGGGAG 1428
【図面の簡単な説明】
【図1】Z-3株の最適増殖温度を示すグラフである。
【図2】Z-3株の最適増殖pHを示すグラフである。
【図3】Z-3株の最適増殖NaCl濃度を示すグラフであ
る。
【図4】近隣結合法(NJ法)により作成した系統樹を示
す図である。
【図5】平均距離法(UPGMA法)により作成した系統樹
を示す図である。
【図6】本発明の酵素の分子量のSDS-PAGEによる分析を
示す電気泳動写真である。
【図7】本発明の酵素の最適温度を示すグラフである。
【図8】本発明の酵素の最適pHを示すグラフである。
【図9】本発明の酵素の熱安定性を示すグラフである。
【図10】本発明の酵素のプルラン、可溶性デンプン、ま
たはアミロースに対する作用を示す薄相クロマトグラフ
ィーの写真である。M:マルトオリゴ糖マーカー;1〜
4:プルランに作用;5〜8:可溶性デンプンに作用;
9〜12:アミロースに作用;1、5、9:0時間反応;
2、6、10:1時間反応;3、7、11:3時間反応;
4、8、12:16時間反応。
【図11】本発明の酵素の各種マルトオリゴ糖に対する作
用を示す薄相クロマトグラフィーの写真である。M:マ
ルトオリゴ糖マーカー;1、2:グルコース(G1)に作
用;3、4:マルトース(G2)に作用;5、6:マルト
トリオース(G3)に作用;7、8:マルトテトラオース
(G4)に作用;9、10:マルトペンタオース(G5)に作
用;11、12:マルトヘキサオース(G6)に作用;13、1
4:マルトヘプタオース(G7)に作用;1、3、5、
7、9、11、13:0時間反応;2、4、6、8、10、1
2、14:3時間反応。
【図12】本発明の酵素のパノース、イソマルトース、イ
ソマルトトリオース、およびガンマサイクロデキストリ
ンに対する作用を示す図である。M:マルトオリゴ糖マ
ーカー;1、2:パノースに作用;3、4:イソマルト
ースに作用;5、6:イソマルトトリオースに作用;
7、8:ガンマサイクロデキストリンに作用;1、3、
5、7:0時間反応;2、4、6、8:3時間反応。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 白坂 直輝 兵庫県神戸市西区室谷2丁目2番3号 長 瀬産業株式会社研究開発センター内 (72)発明者 鈴木 裕治 京都府福知山市長田野町一丁目52番地 ナ ガセ生化学工業株式会社内 (72)発明者 卯津羅 健作 京都府福知山市長田野町一丁目52番地 ナ ガセ生化学工業株式会社内 (72)発明者 小島 岩夫 京都府福知山市長田野町一丁目52番地 ナ ガセ生化学工業株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の特徴を有する超耐熱耐酸性アミロ
    プルラナーゼ: (1)α-1,4グルコシド結合およびα-1,6グルコシド結
    合を分解する、(2)SDS-PAGEにおいて約70kDaの分子
    量を示し、ゲルろ過において約45kDaの分子量を示す、
    (3)約5.0の最適pHを有し、pH4.0において最適pHにお
    ける活性の少なくとも約70%の活性を有する。
  2. 【請求項2】 約100℃の最適温度を有し、そしてCaCl2
    非存在下、pH5.0、90℃、30分間のインキュベーション
    後に、少なくとも約90%の残存活性を有する、請求項1
    に記載の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ。
  3. 【請求項3】 ベータサイクロデキストリンおよび/ま
    たはガンマサイクロデキストリンに対してα-1,4グルコ
    シド結合分解活性を有する、請求項1または2に記載の
    超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ。
  4. 【請求項4】 α-1,4グルコシド結合を介する糖転移活
    性をさらに有する、請求項1〜3のいずれかに記載の超
    耐熱耐酸性アミロプルラナーゼ。
  5. 【請求項5】 Desulfurococcus属に属する超好熱菌に
    由来する、請求項1〜4のいずれかに記載の超耐熱耐酸
    性アミロプルラナーゼ。
  6. 【請求項6】 Z-3株(受託番号FERM P-16602)に由来
    する、請求項1〜4のいずれかに記載の超耐熱耐酸性ア
    ミロプルラナーゼ。
  7. 【請求項7】 Z-3株(受託番号FERM P-16602)。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれかに記載の超耐熱
    耐酸性アミロプルラナーゼを産生する細胞を培養する工
    程を包含する、超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼの生産
    方法。
  9. 【請求項9】 前記細胞がZ-3株(受託番号FERM P-1660
    2)の細胞である、請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 デンプンスラリーと請求項1〜6のい
    ずれかに記載の超耐熱耐酸性アミロプルラナーゼとをイ
    ンキュベートする工程を包含する、グルコースの製造方
    法。
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