以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同じ機能を有する構成には同じ符号を付け、その説明を省略する場合がある。
図1は、本発明の第一の実施形態のマルチプロジェクタシステムを示した図である。図1において、マルチプロジェクタシステムは、プロジェクタ1〜9と、スクリーン100とを備える。なお、プロジェクタは、図1では、9個であるが、実際には、複数あればよい。また、スクリーン100は、マルチプロジェクタシステムとは別体であってもよい。
プロジェクタ1〜9は、スクリーン100の背面に光を出射して、スクリーン100に画像を投射するリアプロジェクタである。また、プロジェクタ1〜9は、図2で示すように、プロジェクタ1〜9のそれぞれの投射領域が並ぶように配置される。これにより、プロジェクタ1〜9のそれぞれの投射画像がスクリーン100上に並んで表示される。
スクリーン100は、リアスクリーンであり、その背面には、スクリーン100を支持するためのスクリーン支持部材が設置されている。
図3は、スクリーン100の背面図である。図3で示されたように、スクリーン支持部材200は、プロジェクタ1〜9の投射領域の境界上に設置されている。なお、本実施形態では、投射領域の境界は、水平方向および垂直方向のそれぞれに沿っているものとする。
スクリーン支持部材200は、図3では、プロジェクタ1〜9の投射画像の全ての境界上に設置されているが、スクリーン100が弛んだりしないように十分な強度でスクリーン100が支持できれば、プロジェクタ1〜9の投射画像の一部の境界上にだけ設置されてもよい。
図4は、マルチプロジェクタシステムにおけるプロジェクタ1の投射領域を側面から見た側面断面図である。
図4に示したように、スクリーン支持部材200は、プロジェクタ1の投射領域の境界がスクリーン支持部材200の中心と一致するように、スクリーン100に接合されて設置される。また、スクリーン支持部材200は、透過部201と、遮蔽部202とを有する。
透過部201は、スクリーン100に接合されている。透過部201は、光を透過する光透過部材で形成されている。なお、本実施形態では、スクリーン支持部材200は、スクリーン100に対して垂直に設けられ、透過部201の側面は、スクリーン100の表面と直交している。
遮蔽部202は、透過部201の上に設けられている。遮蔽部202は、光を遮蔽することができれば、光を遮蔽する光遮蔽部材で形成されていてもよいし、光を遮蔽する光遮蔽膜が光透過部材の表面に形成されたものでもよい。
また、透過部201の高さhは、プロジェクタ1の投射光が透過部201を透過して投射領域の境界まで到達でき、かつ、プロジェクタ1の投射光が他のプロジェクタの投射領域に入射されないように決定されることが望ましい。
図5は、透過部201の高さhを説明するための図である。図5に示されたように、投射光が投射領域の境界まで到達でき、かつ、他のプロジェクタの投射領域に入射されないようにする透過部201の高さhは、
となる。なお、透過部201の屈折率をn、透過部201の幅を2dとしている。また、補助角度θは、投射光が投射領域の境界に到達するときの、投射光の投射角度βを用いてθ=90°−βで表され、本実施形態では、投射光が投射領域の境界に到達するときの、投射光の透過部201に対する入射角度である臨界入射角となる。
この場合、例えば、透過部201の屈折率n=1.4、透過部201の幅2d=100mm、臨界入射角θ=60°とすると、透過部201の高さhは39mmとなる。
次に、透過部201と映像の乱れとの関係について説明する。
図6および図7は、透過部201と映像の乱れとの関係について説明するための図である。なお、図6は、マルチプロジェクタシステムにおけるスクリーン支持部材200の近傍を示す側面図であり、図7は、プロジェクタ1からの投射光のスクリーン100における入射位置を、スクリーン100の背面から見た図である。また、図6および図7では、透過部201の屈折率nを1.4としている。
プロジェクタ1からの投射光がスクリーン支持部材200の透過部201を透過してスクリーン100に入射される場合を考える。この場合、図6および図7で示されたように、プロジェクタ1からの投射光が透過部201に入射するときに屈折するので、投射光のスクリーン100における入射位置が、スクリーン支持部材200がない場合(屈折率n=1.0に対応する)と比べてずれることになる。このため、投射画像が乱れる。
例えば、スクリーン100が蛍光スクリーンの場合について考える。図8は、スクリーン100が蛍光スクリーンの場合における、スクリーン支持部材の近傍を示した側面断面図である。
図8で示されたように、蛍光スクリーン上には、入射光に応じて互いに異なる波長帯の蛍光を発する複数の蛍光体101が並んでいる。例えば、蛍光スクリーンには、赤色、青色および緑色のそれぞれに対応する波長帯の蛍光を発する3種類の蛍光体101が順番に並んでいる。なお、蛍光体101の間には、間隙が設けられている。
スクリーン100が図8で示された蛍光スクリーンの場合、投射光のスクリーン100への入射位置が、スクリーン支持部材200がない場合と比べてずれると、投射光は、本来入射されるべき蛍光体と異なる場所(他の蛍光体や蛍光体間の間隙)に入射されることがある。この場合、投射画像が本来の明るさや色からずれ、投射画像が乱れることになる。
次に、プロジェクタ1〜9の構成について説明する。なお、プロジェクタ1〜9は全て同じ構成を有する。以下では、プロジェクタ1を例にとって説明する。
図9は、プロジェクタ1の構成の一例を示すブロック図である。図9において、プロジェクタ1は、投射部11と、制御部12とを有する。
投射部11は、スクリーン100に対して背面側から光を投射する。より具体的には、投射部11は、LD発光部111と、走査部112とを有し、各部が以下の機能を有する。
LD発光部111は、LD(Laser Diode:レーザダイオード)を用いた光源であり、走査部112に向けて光を出射する。
走査部112は、LD発光部111からの出射光を水平方向および垂直方向の2方向に走査してスクリーン100に投射する。なお、本実施形態では、互いに異なる第一走査方向および第二走査方向のうち、第一走査方向が水平方向に対応し、第二走査方向が垂直方向に対応している。
走査部112は、水平ミラー部112Aおよび垂直ミラー部112Bを有する。水平ミラー部112Aは、LD発光部111からの出射光を水平方向に走査して出射し、垂直ミラー部112Bは、水平ミラー部112Aから出射された出射光を垂直方向に走査して、スクリーン100の背面に投射する。
制御部12には、映像信号が入力される。制御部12は、その入力された映像信号に応じて投射部11を制御して、投射部11に画像をスクリーン100に対して投射させる。
図10は、制御部12の構成の一例を示すブロック図である。図10において、制御部12は、駆動部121と、補正部122とを有する。
駆動部121には、映像信号が入力される。駆動部121は、その入力された映像信号に応じて、LD発光部111を制御する発光信号と、走査部112を制御する駆動信号とを生成する。
発光信号は、LD発光部111から出射される、投射画像の各画素に対応する各出射光(以下、画素出射光と称する)の光量に相当する発光電圧指令値を示す。なお、画素出射光の光量は、画素出射光の光強度および出射時間で表される。
また、駆動信号は、走査部112の走査角度とその走査角度の変化率である走査角速度とを変化させる駆動電圧を示す。より具体的には、駆動信号は、水平ミラー部112Aの走査角度である水平走査角度と水平走査角度の変化率である水平走査角速度を変化させる水平ミラー駆動電圧指令値を示す水平ミラー駆動信号と、垂直ミラー部112Bの走査角度である垂直走査角度と垂直走査角度の変化率である垂直走査角速度とを変化させる垂直ミラー駆動電圧指令値を示す。なお、水平走査角度は、第一走査角度の一例であり、垂直走査角度は、第二走査角度の一例である。また、垂直走査角速度は、第二走査方向の走査角速度の一例である。
駆動部121は、発光信号をLD発光部111に入力することで、映像信号に応じて、LD発光部111から出射される出射光の光量を制御する。
また、駆動部121は、水平ミラー駆動信号を水平ミラー部112Aに入力し、かつ、垂直ミラー駆動信号を垂直ミラー部112Bに入力することで、映像信号に応じて、走査部112における走査角度を制御する。
ここで、駆動部121は、図11で示したように、走査部112が水平方向に沿った画像のラインごとに出射光を走査するように制御する。
補正部122は、スクリーン支持部材200の光透過部201の屈折率と、走査部112における走査角度とに基づいて、投射部11から投射される、投射画像の各画素に対応する各投射光(以下、画素投射光と称する)の投射角度(向き)を補正して、各画素投射光のスクリーン100上の入射位置を補正する。
より具体的には、補正部122は、各画素出射光の出射時間を補正して、各画素投射光の投射角度を補正する水平方向補正処理と、走査部112における垂直走査角速度を補正して、各画素投射光の投射角度を補正する垂直方向補正処理とを行う。
以下では、先ず、水平補正処理について説明する。
図12は、水平補正処理を説明するための説明図であり、垂直方向に沿ってスクリーンに設置されたスクリーン支持部材200の近傍を示した側面図である。
図12で示したように、水平走査角度φがαからβまでの角度範囲である水平補正範囲に含まれるときには、投射光は、スクリーン支持部材200の透過部201を透過してスクリーン100に入射され、水平走査角度φが0°からαまでの角度範囲である水平補正外範囲に含まれるときには、スクリーン支持部材200の透過部201を介さずに直接スクリーン100に入射される。
なお、角度αおよびβは、0°<α<β<90°を満たす実数である。角度αおよびβで規定される水平補正範囲は、スクリーン支持部材200の位置および形状に応じて決定される。より具体的には、図4で示したように、プロジェクタ1の走査部112からスクリーン200までの距離をH、プロジェクタ1の走査部112(より具体的には、水平ミラー部112a)から透過部201までの距離をLとした場合、角度αは、α=atan(L/H)で表わされ、角度βは、β=atan(L/(Hーh))で表わされる。
補正部122は、水平走査角度φが水平補正範囲に含まれるか否かを判断する。なお、水平補正範囲は、プロジェクタのユーザや製作者が予め設定しておいても良いし、プロジェクタ1が、スクリーン支持部材200の設置場所、大きさおよび形状や、プロジェクタ1およびスクリーン100の位置関係などの検出が可能なセンサを備えていれば、補正部122がそのセンサの検出結果に応じて水平補正範囲を求め、自身に設定してもよい。
水平走査角度φが水平補正範囲に含まれる場合、補正部122は、透過部201の屈折率nに基づいて各画素出射光の出射時間を補正する。
より具体的には、先ず、補正部122は、出射時間の補正量である水平補正量を求める。水平補正量は、スクリーン100上の投射光の入射位置が透過部201の側面から中心まで動く水平方向の距離X2(=d)と、スクリーン支持部材200ないときに、スクリーン100上の投射光の入射位置が透過部201の側面から動く水平方向の距離X1との比で表される。つまり、補正部122は、
により、水平補正量f(n)を求める。なお、βは、上述したように水平補正範囲を規定する角度であり、投射光が投射領域の境界に入射されるときの水平走査角度である。また、θnは、投射光の透過部201に対する入射角が臨界入射角の場合における、投射光のスクリーン100に対する入射角であり、
で表される。
続いて、補正部122は、駆動部121が生成した発光信号が示す出射時間を1/f(n)倍にして、各画素出射光の出射時間を1/f(n)倍にする。
以上の水平補正処理により、各画素出射光の出射時間が補正されるので、各画素投射光の投射角度が補正されることになり、投射光のスクリーン100における入射位置が補正されることになる。
ここで、出射時間が1/f(n)になるので、各画素出射光の光量が低くなり、画像が暗くなる可能性がある。このため、補正部122は、駆動部121が生成した発光信号が示す光強度をf(n)倍にすることで、各画素の光量を変化しないように、その光強度を補正することが望ましい。
次に、垂直補正処理について説明する。
図13は、垂直補正処理を説明するための説明図であり、水平方向に沿ってスクリーンに設置されたスクリーン支持部材200の近傍を示した側面図である。
図13で示したように、垂直走査角度φvがαvからβvまでの角度範囲である垂直補正範囲に含まれるときには、投射光は、スクリーン支持部材200の透過部201を透過してスクリーン100に入射され、垂直走査角度φvが0°からαvまでの角度範囲である垂直補正外範囲に含まれるときには、スクリーン支持部材200の透過部201を介さずに直接スクリーン100に入射される。
なお、角度αvおよびβvは、0°<αv<βv<90°を満たす実数である。角度αvおよびβvで規定される垂直補正範囲はスクリーン支持部材200(より具体的には、透過部201)の設置場所、大きさおよび形状や、プロジェクタ1およびスクリーン100の位置関係などに応じて決定される。
補正部122は、垂直走査角度φvが垂直補正範囲に含まれるか否かを判断する。なお、垂直補正範囲は、プロジェクタのユーザや製作者が予め設定しておいても良いし、プロジェクタ1が、スクリーン支持部材200の設置場所、大きさおよび形状や、プロジェクタ1およびスクリーン100の位置関係を検出可能なセンサを備えていれば、補正部122がそのセンサの検出結果に応じて垂直補正範囲を求め、自身に設定してもよい。
垂直走査角度φvが垂直補正範囲に含まれる場合、補正部122は、透過部201の屈折率nに基づいて、垂直ミラー駆動信号を補正する。
より具体的には、先ず、補正部122は、垂直走査角速度の補正量である垂直補正量を求める。
垂直補正量は、垂直走査角度がαvからβvに変わるまでの角度変位と、垂直走査角度がαvから、スクリーン支持部材200がないときに投射光が投射領域に到達するときの垂直走査角度γvに変わるまで角度変位との比で表される。つまり、補正部122は、
により、垂直補正量g(n)を求める。また、θvは、投射光の透過部201に対する入射角が臨界入射角の場合における、投射光のスクリーン100に対する入射角であり、数2と同様に、
で表される。
続いて、補正部122は、垂直走査角速度がg(n)倍となるように駆動部121が生成した垂直ミラー駆動信号を補正する。
以上の垂直補正処理により、補正後の垂直走査角速度ω(t)で、垂直走査角度がαvからβvに変わるまでの時間と、補正前の垂直走査角速度ω0(t)で、垂直走査角度がαvから、スクリーン支持部材200がないときに投射光が投射領域に到達するときの垂直走査角度γvに変わるまでの時間とが等しくなる条件式
つまり、
から分かるように、補正後の垂直走査角速度ω(t)で垂直走査角度がαvからβvに変わるまでの時間と、補正前の垂直走査角速度ω0(t)で垂直走査角度がαvからγvに変わるまでの時間とが等しくなるように垂直走査角速度が補正されることになり、投射光のスクリーン100における入射位置が補正されることになる。
次にプロジェクタ1の動作を説明する。
図14は、プロジェクタ1の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
ステップS1では、駆動部121は、入力された映像信号に基づいて、発光信号および駆動信号を生成するとともに、映像信号に基づいて、その発光信号に応じて出射される画素出射光の水平走査角度および垂直走査角度を算出する。駆動部121は、その水平走査角度および垂直走査角度を示す角度信号を補正部122に出力する。補正部122は、角度信号を受け付けると、ステップS2を実行する。
ステップS2では、補正部122は、角度信号が示す垂直走査角度が垂直補正範囲に含まれるか否かを判断する。補正部122は、垂直走査角度が垂直補正範囲に含まれない場合、ステップS3を実行し、垂直走査角度が垂直補正範囲に含まれる場合、ステップS7を実行する。
ステップS3では、補正部122は、垂直走査角速度の補正が必要ないと判断して、ステップS4に移る。
ステップS4では、補正部122は、角度信号が示す水平走査角度が水平補正範囲に含まれるか否かを判断する。補正部122は、水平走査角度が水平補正範囲に含まれない場合、ステップS5を実行し、水平走査角度が水平補正範囲に含まれる場合、ステップS6を実行する。
ステップS5では、補正部122は、補正を行わないことを示す補正可否信号である無補正信号を駆動部121に出力する。駆動部121は、無補正信号を受け付けると、ステップS1で生成した発光信号をLD発光部111に出力し、同様に、ステップS1で生成した駆動信号を走査部112に出力する。その後、駆動部121は、ステップS1に戻る。
なお、LD発光部111は、発光信号が入力されると、その発光信号に応じた画素出射光を出射する。また、走査部112の水平ミラー部112Aは、駆動信号である水平ミラー駆動信号が入力されると、その水平ミラー駆動信号に応じた速度でLD発光部111からの画素出射光を走査して出射する。さらに、走査部112の垂直ミラー部112Bは、水平ミラー部112Aからの画素出射光を走査してスクリーン100の背面に向けて投射する。
また、ステップS6では、補正部122は、数2および数3を用いて水平補正量f(n)を算出し、補正を行うことを示す補正可否信号として、水平補正量f(n)と発光信号の補正とを示す補正信号を駆動部121に出力する。駆動部121は、補正信号を受け付け、その補正信号が発光信号の補正を示すことを確認すると、ステップS1で生成した発光信号が示す出射時間を1/f(n)倍にし、その発光信号が示す光強度を補正量信号を用いてf(n)倍にする。その後、駆動部121は、その補正した発光信号をLD発光部111に入力し、ステップS1で生成した駆動信号を走査部112に入力する。その後、駆動部121は、ステップS1に戻る。
図15は、補正前の発光信号と補正後の発光信号とを比較するための図である。図1では、スクリーン100は蛍光スクリーンであるとしている。発光信号は、赤、青および緑の蛍光体に入射される投射光の光量に相当する発光電圧指令値のそれぞれを表す3つのパルス信号で構成される。パルス信号の振幅が光強度を表し、パルス信号の幅が出射時間を表す。
補正前のパルス信号では、パルス信号の振幅がUBであり、パルス信号の幅がTBであったとする。この場合、補正後のパルス信号では、パルス信号の振幅がUB・f(n)であり、パルス信号の幅がTB/f(n)となる。
パルス信号の幅がTB/f(n)になることで、各画素投射光のスクリーン100上の位置が補正されて、各画素投射光が本来入射されるべき位置に入射されることになる。さらに、パルス信号の振幅がUB・f(n)となるので、パルス信号が示す光量は、補正前でも補正後でも、UB・TBとなり、画素信号の光量が補正前と補正後で変化しないことになる。
動作の説明に戻る。ステップS7では、補正部122は、垂直走査角速度の補正が必要と判断して、ステップS8に移る。
ステップS8では、補正部122は、数4および数7を用いて垂直補正量g(n)を算出し、補正を行うことを示す補正可否信号として、垂直補正量g(n)と駆動信号の補正とを示す補正信号を駆動部121に出力する。駆動部121は、補正信号を受け付け、その補正信号が駆動信号の補正を示すことを確認すると、ステップS1で生成した駆動信号を垂直走査角速度がg(n)倍となるように補正する。その後、駆動部121は、ステップS1で生成した発光信号をLD発光部111に入力し、その補正した駆動信号を走査部112に出力する。その後、駆動部121は、ステップS1に戻る。
なお、駆動部121は、角度信号の代わりに、水平走査角度が水平補正範囲に含まれるか否かと、垂直走査角度が垂直補正範囲に含まれるか否かと、を示すフラグ信号を補正部122に出力してもよい。この場合、補正部122は、そのフラグ信号に応じて、水平走査角度が水平補正範囲に含まれるか否かと、垂直走査角度が垂直補正範囲に含まれるか否とを判断する。なお、このとき、水平補正範囲および垂直補正範囲は、駆動部121に設定されることになる。
以上説明したように本実施形態によれば、投射部11は、LD発光部111と、LD発光部111からの出射光を走査してスクリーン100の背面側から光を投射する走査部112とを含む。駆動部121は、LD発光部111から出射される出射光の光量と、走査部112における走査角度とを映像信号に応じて制御することで、投射部11を用いて映像信号に応じた画像をスクリーン100に投射する。補正部122は、スクリーン支持部材200の透過部201の屈折率と、走査部112における走査角度とに基づいて、投射部から投射される画像の各画素に対応する画素投射光の投射角度を補正して、その画素投射光のスクリーン100における入射位置を補正する。
この場合、画素投射光のスクリーン100における入射位置が透過部201の屈折率および走査部112における走査角度に基づいて補正される。このため、スクリーン支持部材200がある場合でも、スクリーン支持部材200がない場合と同じ位置に投射光を入射させることが可能になる。したがって、スクリーン100に対する投射光の入射位置のずれによる投射画像の乱れを軽減することが可能になる。
次に第二の実施形態について説明する。
本実施形態のプロジェクタは、第一の実施形態のプロジェクタと比べて、制御部12の構成が異なる。
図16は、本実施形態の制御部12の構成を示したブロック図である。図16において、制御部12は、駆動部121Aと、補正部122Aとを含む。
駆動部121Aおよび補正部122Aの基本機能は、図8で示した駆動部121および補正部122の機能と同じであるが、動作が異なる。
駆動部121Aは、発光信号および駆動信号のそれぞれを、補正部122Aを介してLD発光部111および走査部112のそれぞれに入力して、LD発光部111から出射される出射光の光量と、走査部112における走査角度とを映像信号に応じて制御する。
より具体的には、駆動部121Aは、映像信号に基づいて、発光信号、駆動信号および角度信号を生成すると、その発光信号、駆動信号および角度信号を補正部122Aに出力する。
補正部122Aは、発光信号、駆動信号および角度信号を受け付けると、その角度信号に基づいて、発光信号または駆動信号を補正するか否かを判断する。
補正部122Aは、補正すると判断した場合、発光信号または駆動信号を補正し、その後、発光信号および駆動信号のそれぞれをLD発光部111および走査部112のそれぞれに入力する。一方、補正部122Aは、補正しないと判断した場合、発光信号および駆動信号を補正せずにそのままLD発光部111および走査部112のそれぞれに入力する。
なお、駆動部121Aにおける発光信号、駆動信号および角度信号の生成処理は、駆動部121と同じであり、補正部122Aにおける補正するか否かの判断や補正処理は、補正部122と同じである。また、駆動部121Aおよび補正部122Aは、角度信号の代わりにフラグ信号を用いても良い。
本実施形態でも、第一の実施形態と同様な効果が得られる。
次に第三の実施形態について説明する。
本実施形態では、スクリーン支持部材200の形状が第一および第二の実施形態と比べて異なる。
図17は、本実施形態のスクリーン支持部材200を示した図であり、より具体的には、スクリーン100における垂直方向に沿って設けられたスクリーン支持部材200の近傍を示した側面図である。
図17において、スクリーン支持部材200の透過部201がテーパー構造を有しており、透過部201の側面は、スクリーンの表面に対してテーパー角度δを成している。なお、遮蔽部202の構造は、第一の実施形態と同じである。以下、透過部201の下面の長さを2d2とし、透過部201の上面の長さを2d1とする。
なお、透過部201がテーパー構造を有する利点は、投射光が透過部201の表面で反射してスクリーンに入射されることを抑制することができるため、画像の乱れをさらに軽減することができることである。この場合、テーパー角度δは、反射光が少なくともスクリーンに対して平行になるように設定される。つまり、テーパー角度δは、θ≧90−δ≧θ/2となるように設定される。なお、θは、上述した補助角度θである。
また、プロジェクタ1の投射光が透過部201を透過して投射領域の境界まで到達でき、かつ、プロジェクタ1の投射光が他のプロジェクタの投射領域に入射されないような透過部201の高さhは、
となる。なお、透過部201の下面の長さd2は、
で表される。
次に、透過部201がテーパー構造を有している場合における水平補正量f(n)について説明する。
水平補正量f(n)は、第一の実施形態で説明したように、スクリーン100上の投射光の入射位置が透過部201の側面の下面側から中心まで動く水平方向の距離X2(=d)と、スクリーン支持部材200ないときに、スクリーン100上の投射光の入射位置が透過部201の側面の下面側から動く水平方向の距離X1との比で表される。このため、水平補正量f(n)は、第一の実施形態と同様に、
で表される。
ここで、入射角θnは、テーパー角度δおよび屈折率nを用いて、
となる。
次に垂直補正量について説明する。
垂直補正量は、透過部201がテーパー構造を有していても有していなくても、補正後の垂直走査角速度ω(t)で垂直走査角度がαvからβvに変わるまでの時間と、補正前の垂直走査角速度ω0(t)で垂直走査角度がαvからγvに変わるまでの時間とが等しくなる条件式に変化がない。このため、補正部122は、数4および数7を用いて垂直補正量を求めることができる。
本実施形態でも、第一の実施形態と同様な効果が得られる。さらに、透過部201による反射光の影響で画像が乱れることを軽減することが可能になるので、投射画像の乱れをさらに軽減することが可能になる。
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
例えば、光源は、LDを用いた光源に限らず適宜変更可能である。例えば、光源は、固体レーザ素子を用いた光源でもよい。また、プロジェクタ1からの投射光が他のプロジェクタの投射領域に入射されることがないように走査角度が制御されていれば、遮蔽部202はなくてもよい。
また、補正部122は、垂直補正量g(n)を、数4を用いて求める代わりに、数4の近似式を用いて求めてもよい。具体的には、垂直補正量g(n)は、水平補正量f(n)の算出と同様に、スクリーン100上の投射光の入射位置が透過部201の側面から中心まで動く垂直方向の距離Xv2(=d)と、スクリーン支持部材200ないときに、スクリーン100上の投射光の入射位置が透過部201の側面から動く垂直方向の距離Xv1との比で表される。ここで、距離Xv1およびXv2は、Xv1〜H・(βv−αv)、Xv2〜H・(γv−αv)と近似できるので、垂直補正量g(n)は、近似的には、
と表すことができる。このため、補正部122は、垂直補正量g(n)を、近似式
から求めてもよい。
この出願は、2010年3月31日に出願された日本出願特願2010−80761号公報を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。