JP2014031467A - 印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物、及び印刷ロール - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた耐溶剤性と耐水性を共に有する印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物、及びそれを用いてなる印刷ロールを提供する。
【解決手段】 ジイソシアネート(A)と、炭素数2〜40のジオール(b1)とダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を用いて合成されたポリエステルポリオール(B)とから得られるポリウレタンエラストマー組成物であり、ポリウレタンエラストマーのFedors法に基づき式〔1〕にて算出したSP値δが9.0〜9.5の範囲である。(下記式〔1〕中、δはSP値〔(cal/cm31/2〕、Ecohは凝集エネルギー(cal/mol)、Vはモル分子容(cm3/mol)を表す。)
δ = (ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・式〔1〕
【選択図】 なし

Description

本発明は、印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物、及び該組成物を用いてなる印刷ロールに関する。更に詳しくは、優れた耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性。膨潤抑制効果。)と耐水性(耐着色性。着色防止効果。)を共に有する弾性部材、特に印刷ロールに適したポリウレタンエラストマー組成物に関する。
従来から印刷ロールには、比較的低硬度のエラストマー、例えばニトリルゴム(NBR)やエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリウレタンなどが用いられている。
しかし、印刷ロールのゴム材質としてNBRやEPDMを使用した場合には、油性印刷インキに含有される低極性の芳香族炭化水素系溶剤や洗浄溶剤、あるいは紫外線(UV)印刷インキに含まれるアクリル系モノマーが、ゴム材質を膨潤させたり着色させたりするという問題があった。そのため、これら有機溶剤に対する耐溶剤性(耐膨潤性)、耐摩耗性、機械的強度が要求され、対応可能な素材として、特にポリウレタンエラストマーを用いた印刷ロールが多用されてきた。
これまで汎用されてきた印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物は、印刷インキに含有される低極性の芳香族炭化水素溶剤や洗浄溶剤に対する耐溶剤性(耐膨潤性)の向上を重視しており、例えば低分子量グリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコールなど)と二塩基酸(コハク酸、アジピン酸など)を主成分に用いた縮合反応により、得られる分子末端に水酸基を有するポリエステルポリオールとジイソシアネートとを硬化反応させることにより、印刷ロールの製造に用いられてきた。
しかし、上記組成で得られるポリウレタンエラストマーでは、耐溶剤性は比較的良好であるものの、吸水性が高く耐加水分解性に劣り、湿し水や水を吸い込みやすく、高極性の洗浄液に対して、印刷ロールの加水分解、着色、膨潤などの問題があり、長期間の連続使用は困難であった。
一方、最近では印刷業界においても、印刷インキに含まれる有機溶剤による環境汚染や生体への悪影響などが強く懸念されており、環境調和志向の高まりと共に、有機溶剤系インキから水性インキの需要量が増加傾向にある。
しかし、水性インキの場合でも実際には少量の有機溶剤が含有されていたり、あるいは洗浄溶剤が使用されていたりするため、印刷ロールには、優れた耐溶剤性のみならず、優れた耐水性が共に要求されるようになってきた。
また、従来のUVインキと比較して2〜3割程度のUVエネルギーで硬化するハイブリッド−UV印刷システムが開発され、順調に需要を伸ばしている。このハイブリッドUVインキは、低出力のUV照射で硬化する必要があり、従来のUVインキに比べ水を吸いやすく、同時に使用する洗浄剤も毒性の観点から吸水性の低い炭化水素系溶剤から、水と相溶性の高いアルコール系溶剤やエーテル系溶剤に切り替えて作業環境の改善を図る傾向も強くなってきている。この影響で、ウレタン素材を使用した印刷ロールでは、ロールの加水分解や膨潤、インキ着色が発生するようになってきた。
そのため、優れた耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性)と耐水性(耐着色性)を共に有する印刷ロールの開発が切望されていた。このような業界からの強い要望に対して、これまで種々の提案がなされてきた。
例えば、ポリウレタン製造に用いるポリエステルポリオールにおいて、(1)該ポリオールが有機ポリヒドロキシル化合物とポリカルボン酸及び/又はポリカルボン酸無水物の縮合物によって得られるものであり、(2)該ポリエステル主鎖中のポリカルボン酸残基全量中のこはく酸残基が70重量%以上であり、メチルエチルケトン浸漬(25℃、48時間)の体積膨潤率100%以下である印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1記載の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物は、芳香族炭化水素系溶剤やケトン系溶剤に対する耐溶剤性、機械的強度が良好であるという。
しかしながら、特許文献1の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物は、確かに耐溶剤性については若干の改善は認められるものの、水の影響で加水分解が起こりやすく耐久性が低下するとともに、親水性の高い水性インキやUVインキでは印刷ロールの着色が起こりやすいという問題があった。
また、印刷ロールの弾性部材を構成する、JIS−A硬度が20〜90のウレタンエラストマーを形成するための組成物であって、ポリイソシアネートと、ポリカーボネート系ポリオールを必須成分とするポリオールとを含有するウレタンエラストマー形成性組成物が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献2記載のウレタンエラストマー形成性組成物は、耐水性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が良好で、水性インクと接触する印刷ロールの弾性部材として好適なウレタンエラストマーを形成することができ、前記組成物を用いてなる印刷ロールは、耐水性、耐溶剤性及び耐アルカリ性が良好な弾性部材を備えてなるので、水性インキによる美麗な画像を長期にわたり印刷することができるという。
しかしながら、特許文献2のウレタンエラストマー形成性組成物は、耐水性については確かに若干の改善は認められるものの、印刷ロールを実用に適したレベルにまで低硬度化することが困難であるため、耐久性や印刷適性が低下するという問題があった。また、インキに少量含まれるモノマーや有機溶剤、洗浄用の有機溶剤に対して、耐溶剤性に未だ劣り膨潤しやすく、長期間の使用に耐え難いという問題があった。
更に、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとを用いて得られるウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリエステルポリオールが、水酸基含有ニ官能成分として1,3−プロパンジオールを必須とし、カルボキシル基含有成分としてコハク酸を必須としてなる印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
特許文献3記載の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物は、良好な耐溶剤性と耐水性を共に有しており、前記組成物を成形してなる印刷ロールは、従来の有機溶剤系インキのみならず、水性インキを用いた印刷にも有用であり、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷など、各種印刷に用いられる。
しかしながら、特許文献3の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物は、前記特許文献1と同様に、ポリエステルポリオールを構成するグリコール成分に1,3−プロパンジオールを使用することで、耐水性、耐加水分解性などの多少の改善効果はあるが、カルボキシル基含有成分としてコハク酸を主成分に用いているために、耐溶剤性には問題はないものの、耐水性、耐加水分解性の改善効果が未だ充分でなく、得られる印刷ロールは長期間使用において、インキ着色や加水分解による強度変化を起こしやすく、実用上問題があった。
以上のように、従来技術は未だ実用上不充分であり、優れた耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性)と耐水性(耐着色性)を共に発現可能な印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物、及びそれを用いてなる印刷ロールの開発が切望されていた。
特公昭63−015290号公報 特開2004−217844号公報 特開2010−234530号公報
本発明の目的は、優れた耐溶剤性(耐膨潤性)と耐水性(耐着色性)を共に発現可能な印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物、及びそれを用いてなる印刷ロールを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ジイソシアネートと、特定のジオールと特定のジカルボン酸を用いて合成されたポリエステルポリオールから得られるポリウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリウレタンエラストマーのFedors法に基づき算出した溶解性パラメータ(以下「SP値δ」と云う。)が特定の範囲にあることにより、優れた耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性。膨潤抑制効果。)と耐水性(耐着色性。着色防止効果。)とを共に有する印刷ロールを得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、ジイソシアネート(A)と、炭素数2〜40のジオール(b1)とダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を必須に用いて合成されたポリエステルポリオール(B)とから得られるポリウレタンエラストマー組成物であり、ポリウレタンエラストマーのFedors法に基づき式〔1〕にて算出したSP値δが9.0〜9.5の範囲であることを特徴とする印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物に関するものである。
(下記式〔1〕中、δはSP値〔(cal/cm31/2〕、Ecohは凝集エネルギー(cal/mol)、Vはモル分子容(cm3/mol)を表す。)
δ = (ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・式〔1〕
また、本発明は、前記印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物を硬化させ成形してなることを特徴とする印刷ロールに関するものである。
本発明の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物は、優れた耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性。膨潤抑制効果。)と耐水性(耐着色性。着色防止効果。)を共に発現できるので、前記組成物を用いて硬化させ成形してなる印刷ロールは、有機溶剤系インキのみならず水性インキやハイブリッド−UVインキを用いた印刷であっても、印刷ロールの膨潤や着色などの弊害を起こさず、長期間連続して使用できるので、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷などの各種印刷に使用できる。
<印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物>
(A)ジイソシアネート
先ず、本発明で用いるジイソシアネート(A)について、以下に説明する。
本発明の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物は、イソシアネート成分としてジイソシアネート(A)と、ポリオール成分として特定のポリエステルポリオール(B)を含有してなる。
本発明では、前記ジイソシアネート(A)として、公知の脂肪族、脂環式、芳香族のいずれのジイソシアネートも用いることができる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等;あるいは脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)等;あるいは前記芳香族ジイソシアネ−トとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(略称MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物であるクルードMDI)、トリレンジイソシアネ−ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、適度な反応性、優れた機械的強度、耐溶剤性などの点から、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、クルードMDIが好ましい。
また、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド変性した液状MDI(ジフェニルメタンポリイソシアネート)などのポリイソシアネートなども使用可能である。
(B)ポリエステルポリオール
次に、本発明で用いるポリエステルポリオール(B)について、以下に説明する。
前記ポリエステルポリオール(B)は、水酸基を有する反応性成分(以下「水酸基含有反応性成分」と云う。)として炭素数2〜40のジオール(b1)と、カルボキシル基を有する反応性成分(以下「カルボキシル基含有反応性成分」と云う。)としてダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を必須原料に用いて、公知の方法に従い反応させて得ることができ、その反応方法は特に限定しない。
前記水酸基含有反応性成分として炭素数2〜40のジオール(b1)を用いて、且つ、後述するカルボキシル基含有反応性成分としてダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を用いて、両者を縮合反応させることにより、優れた耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性)と耐水性(耐着色性)とを共にバランス良く発現可能なポリエステルポリオール(B)を得ることができる。
前記炭素数2〜40のジオール(b1)としては、直鎖、分岐、環状のいずれの分子構造のものも使用でき、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2,4−ジメチルペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3,3’−ジメチロールへプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ダイマージオール等が挙げられる。これらの中でも、炭素数8〜40のジオールが、SP値δをより容易に適正化できること、耐水性の向上により有効であること、などから好ましく、その中でも特に側鎖を有するジオールが、疎水性の向上の点から、より好ましい。これらジオールは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステルポリオール(B)の合成において、前記炭素数2〜40のジオール(b1)の代わりに、炭素数が40を超えるジオールを用いた場合には、前記ジイソシアネート(A)との相溶性に乏しいためウレタン化反応が充分に進行し難いこと、原料のジオールに不純物が多いため副反応が起こりやすいこと、などの理由から目的とする性能を有するポリウレタンエラストマーが得られない恐れがある。
また、前記ポリエステルポリオール(B)の合成に際しては、カルボキシル基含有反応性成分として、ダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を必須に用いる。
前記炭素数2〜40のジオール(b1)と共に、前記ダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を必須に用いることにより、耐水性、耐加水分解性、及び耐溶剤性などの性能バランスのとれたポリエステルポリオール(B)を得ることができる。
本発明で用いる前記ダイマー酸とは、リシノール酸等の不飽和脂肪酸をディールス・アルダー反応で不飽和部分を二量化した炭素数が36の二塩基酸の総称であり、原料としては、例えばトール油脂肪酸、米ぬか油、大豆油、綿実油、ひまし油等が挙げられる。それら成分の中には、モノカルボン酸やトリマー酸等が混在していてもよい。
前記ダイマー酸の市販品としては、例えば、ハリダイマー200、250、270S(商標:いずれもハリマ化成株式会社製);あるいはツノダイム205、216、228(商標:いずれも築野食品工業株式会社製);あるいはプリポール1012,1013,1017(商標:いずれもクローダジャパン株式会社製)などが挙げられる。
また、本発明で用いる前記水添ダイマー酸とは、上記ダイマー酸を水添化して樹脂中の二重結合を飽和結合に変えた分子構造のものである。
前記水添ダイマー酸の市販品としては、例えば、プリポール1006、1009(商標:いずれもクローダジャパン株式会社製)などが挙げられる。
本発明では、前記カルボキシル基含有反応性成分の全てがダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)であってもよく、前記(b2)以外のカルボキシル基含有反応性成分を併用してもよい。
前記ダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)と前記(b2)以外のカルボキシル基含有反応性成分とを併用する場合において、前記(b2)の仕込モル数は、カルボキシル基含有反応性成分の全仕込モル数に対して、50モル%以上である。
前記ダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)以外のカルボキシル基含有成分としては、特に限定はしないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族多塩基酸、あるいはシクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式多塩基酸、あるいはオルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族多塩基酸等が挙げられる。これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
更に、前記ポリエステルポリオール(B)の合成には、本発明の目的を阻害しない範囲で、水酸基を3つ以上有する多官能化合物(b3)(以下「多官能化合物」と云う。)を併用してもよい。
前記多官能化合物(b3)としては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオールなどの3〜4官能の化合物、あるいはトリメチロールプロパンやペンタエリスリトール等の二量体化合物、ソルビトール等の糖類等が挙げられる。これらの中でも、ハンドリング性がより良好な点から、好ましくはトリメチロールプロパン、グリセリンであり、より好ましくはトリメチロールプロパンである。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
前記多官能化合物(b3)を併用することにより、ポリウレタンエラストマーの耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性)、耐加水分解性、機械的特性を一層向上させることができる。
前記ジオール(b1)と前記多官能化合物(b3)を併用する場合の官能基数の合計は、好ましくは2.0〜4.0の範囲、より好ましくは2.1〜3.0の範囲である。前記ジオール(b1)と前記多官能化合物(b3)の官能基数の合計がかかる範囲であれば、得られるポリエステルポリオールの耐溶剤性、ハンドリング性などの性能をより向上できる。
トリメチロールプロパン、グリセリンなどの3官能の化合物は水酸基を3つ有すが、そのうち2つは合成時にエステル結合としてポリエステル中に組み込まれるため、水酸基は1つしか残らない。従って、この場合の生成物は3官能となる。また、上記成分をポリエステルに2モル使用すれば、4官能になる。
本発明では、本発明の目的を阻害しない範囲で、前記ポリエステルポリオール(B)と共にその他のポリオールを併用してもよい。
前記その他のポリオールとしては、特に限定しないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油ポリオール、ポリブタジエンポリオール及びその水添化物、ポリイソプレン及びその水添加物などが挙げられる。
また、その他のポリオールとして、開環重合系ポリエステルポリオールも用いることができ、例えば、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物(即ちラクトン類)の開環重合により得られるポリカプロラクトンポリオール、ポリブチロラクトンポリオール等の開環重合系ポリエステルポリオールを挙げることができる。
前記ポリエステルポリオール(B)の数平均分子量(以下、「Mn」とも云う。)は、好ましくは600〜5000の範囲であり、より好ましくは1000〜2500の範囲である。前記ポリエステルポリオール(B)のMnがかかる範囲であるならば、適度な弾性とハンドリング性を得ることができるので、好ましい。
尚、本発明で記載のポリエステルポリオールのMnとは、ポリスチレンを分子量標準とするゲル浸透クロマトグラフィー法(Gel Permeation Chromatography。GPC法。)により、下記測定条件にて求めた値である。
樹脂試料溶液;0.4%テトラヒドロフラン(THF)溶液
GPC型番 ;HLC−8220GPC
カラム ;TSKgel(東ソー株式会社製)
溶離液 ;THF
本発明のポリウレタンエラストマー組成物では、使用するポリウレタンエラストマーのFedors法に基づき下記の式〔1〕にて算出した溶解性パラメータ、即ち、SP値δは、9.0〜9.5の範囲である。
(下記式〔1〕中、δはSP値〔(cal/cm31/2〕、Ecohは凝集エネルギー(cal/mol)、Vはモル分子容(cm3/mol)を表す。)
δ = (ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・式〔1〕
前記ポリウレタンエラストマーのSP値δが9.0〜9.5の範囲であれば、優れた耐溶剤性(耐膨潤性)と耐水性(耐着色性)を共に有する印刷ロールを得ることができる。しかしながら、前記SP値δが9.5を超える場合には、印刷ロールが疎水性に劣り、着色を生じ易くなる恐れがある。一方、SP値δが9.0未満の場合には、印刷ロールが有機溶剤に対して膨潤し易くなり、長期間使用ができない恐れがある。
本発明では、前記ポリエステルポリオール(B)の合成原料として、比較的親水性の強いジオール(b1)と、疎水性の大変に強いダイマー酸や水添ダイマー酸(b2)を併用することで、前記ポリエステルポリオール(B)の疎水性と親水性という相反する性質のバランス化を図り、優れた耐溶剤性(耐膨潤性。膨潤抑制効果。)と耐水性(耐着色性。着色防止効果。)という2つの性能を両立させた印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物を初めて提供できる。
前記ポリエステルポリオール(B)を合成する際のジオール(b1)とダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)の配合量は、目的とする前記(B)のMnで設定すればよく、通常、好ましくは前記(b1)/前記(b2)=1.05〜3.00/1.00モル比の範囲であり、より好ましくは1.20〜1.70/1.00モル比の範囲である。前記(B)を合成する際の前記(b1)と前記(b2)のモル比がかかる範囲であれば、優れた耐溶剤性、耐水性、機械強度と、良好な成形性、ハンドリング性を得ることができ、好ましい。
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物において、ジイソシアネート(A)のイソシアネート基当量を[NCO]で表し、ポリエステルポリオール(B)の水酸基当量を[OH]で表す場合に、前記(A)のイソシアネート基当量と前記(B)の水酸基当量との比(即ち[NCO]/[OH]当量比)は、好ましくは0.6〜1.1の範囲であり、より好ましくは0.7〜1.0範囲である。前記[NCO]/[OH]当量比がかかる範囲であれば、得られる印刷ロールが適度な表面硬度と弾性を保持でき、長期間の連続使用に耐えることができる。
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲の量で、通常のエラストマー組成物(ポリウレタン原料)に使用される公知の添加剤を任意成分として含有させることができる。
かかる添加剤としては、特に限定しないが、例えば、触媒、可塑剤、酸化防止剤、脱泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤などのエネルギー線吸収剤、反応調節剤、補強剤、充填剤、着色剤(染料、顔料など)、離型剤、安定剤、光安定剤、電気絶縁性向上剤、防かび剤、有機酸の金属塩、ワックス(アミド系他)、金属酸化物、金属水酸化物などの増量剤など、公知のものを挙げることができる。
本発明の印刷ロール用ウレタンエラストマー組成物の調整法としては、特に限定しないが、一例を挙げるならば、前記ジイソシアネート(A)、及び、前記特定のポリエステルポリオール(B)を必須成分とするポリオールと各種添加剤などとを攪拌混合し、必要に応じて真空脱泡処理する方法を挙げることができる。
<印刷ロール>
本発明の印刷ロールは、本発明の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物を成形型内で硬化させ成形して得ることができる
前記印刷ロールは、公知の成形方法で得ることができ、特に限定しない。成形方法の一つの概略を示すならば、例えば、以下のような(1)〜(3)の一連の工程を含む方法を挙げることができる。尚、本発明の印刷ロールは、下記成形方法で得られるものに限定するものではない。
工程(1):加温溶融状態のジイソシアネート(A)、及び、炭素数2〜40のジオール(b1)とダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を用いて合成された加温溶融状態のポリエステルポリオール(B)と添加剤のポリオールプレミックスを、手動又は混合機など適当な手段にて素早く攪拌混合し、本発明のポリウレタンエラストマー組成物を調整する。
工程(2):直ちに、前記工程(1)で調整したポリウレタンエラストマー組成物を予熱した型内に注入し、所定の条件(温度、時間)にて保持し、前記ジイソシアネート(A)とポリエステルポリオール(B)を反応させ一次硬化させ、次いで、所定の条件(温度、時間)にて保持して二次硬化(ポストキュア)させる。
工程(3):硬化後の成形物を型抜きして、目的の印刷ロールを得る。
前記ジイソシアネート(A)と前記ポリエステルポリオール(B)との混合方法は、特に限定するものではなく、公知の方法を採用することができ、例えば、手動混合、機械混合、衝突混合、噴射混合等が挙げられる。
硬化処理の養生条件(温度、時間、圧力など)は、特に限定はしないが、好ましくは60〜150℃で1〜24時間であり、より好ましくは80〜120℃で2〜16時間である。養生時の圧力も常圧、減圧、加圧の何れであってもよい。
使用する成形型は、予熱されていることが好ましく、予熱温度としては、特に限定しないが、60〜150℃が好ましい。
尚、本発明のポリウレタンエラストマーが芯金を被覆するエラストマー層である場合には、前記芯金を成形型に組み込むこと以外は前述の成形方法と同様の操作で、目的の印刷ロールを得ることができる。成形済みのウレタンエラストマーを芯金に装着して印刷ロールを構成しても本発明の効果を損なうことはない。
前記成形方法としては、例えば、ワンショット成形法、プレポリマー成形法など公知の成形法が適用可能であるが、好ましくはワンショット成形法である。
ワンショット成形法としては、例えば、溶融したポリエステルポリオール(B)にフィラーや添加剤を混合し予め調整しておいたポリオールコンパウンドを撹拌・脱泡させ、次いで、適温に調整したジイソシアネート(A)を混合撹拌後直ちに加温された金型に注入し一定時間保持後、脱型しポストキュア(後架橋)を行う方法が挙げられる。
本発明の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物は、優れた耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性。膨潤抑制効果。)と耐水性(耐着色性。着色防止効果。)をバランス良く発現可能である。
従って、前記印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物を硬化させ成形してなる本発明の印刷ロールは、有機溶剤系インキでも水系インキでもいずれの印刷インキを長期間使用した場合であっても、印刷ロールの膨潤や着色が起こらず、硬度や質量の変化が極めて小さく安定性に優れているので、美麗な画像を長期間安定して連続印刷することができる。
本発明の印刷ロールは、有機溶剤型インキのみならず水性インキを用いた長期間の連続印刷にも適しており、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷など、各種印刷に使用される種々のロール(インキ呼出し、インキ練り、インキ着け等など)に広範囲に有用である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
また、本文中の「部」、「%」は全て質量基準である。
〔合成例1〕ポリエステルポリオール(B1)の合成
反応容器にジオール(b1)としてエチレングリコール246部、ダイマー酸(b2)1754部、及び触媒としてテトラブチルチタネート(以下「TBT」と云う。)0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.4、水酸基価57.1のポリエステルポリオール(B1)を得た。
尚、本発明でいうポリエステルポリオールの酸価と水酸基価とは、後述する方法に従い測定した。
〔合成例2〕ポリエステルポリオール(B2)の合成
反応容器に、ジオール(b1)として1,2−プロパンジオール274部、ダイマー酸(b2)1726部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で48時間反応後、酸価0.6、水酸基価37.3のポリエステルポリオール(B2)を得た。
〔合成例3〕ポリエステルポリオール(B3)の合成
反応容器に、ジオール(b1)としてダイマージオール1241部、水添ダイマー酸(b2)759部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.7、水酸基価55.3のポリエステルポリオール(B3)を得た。
〔合成例4〕ポリエステルポリオール(B4)の合成
反応容器に、ジオール(b1)としてブチルエチルプロパンジオール554部、水添ダイマー酸(b2)1446部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.1、水酸基価54.1のポリエステルポリオール(B4)を得た。
〔合成例5〕ポリエステルポリオール(B5)の合成
反応容器に、ジオール(b1)としてブチルエチルプロパンジオール673部、ダイマー酸(b2)1327部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で12時間反応後、酸価0.3、水酸基価109.3のポリエステルポリオール(B5)を得た。
〔合成例6〕ポリエステルポリオール(B6)の合成
反応容器に、ジオール(b1)としてブチルエチルプロパンジオール448部、ダイマー酸(b2)1552部、トリメチロールプロパン136部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.1、水酸基価86.8のポリエステルポリオール(B6)を得た。
〔合成例7〕ポリエステルポリオール(B7)の合成
反応容器に、ジオール(b1)として1,8−オクタンジオール514部、ダイマー酸(b2)1487部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.2、水酸基価53.9のポリエステルポリオール(B7)を得た。
〔合成例8〕ポリエステルポリオール(B8)の合成
反応容器に、ジオール(b1)として1,12−ドデカンジオール660部、ダイマー酸(b2)1340部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.1、水酸基価55.6のポリエステルポリオール(B8)を得た。
〔合成例9〕ポリエステルポリオール(B9)の合成
反応容器にジオール(b1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール508部、ダイマー酸(b2)1492部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.5、水酸基価54.5のポリエステルポリオール(B9)を得た。
〔合成例10〕ポリエステルポリオール(C1)の合成
反応容器に、ジオール(b1)としてジエチレングリコール1102部、トリメチロールプロパン108部、コハク酸1200部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.4、水酸基価61.1のポリエステルポリオール(C1)を得た。
〔合成例11〕ポリエステルポリオール(C2)の合成
反応容器に、ジオール(b1)としてブチルエチルエチルプロパンジオール1114部、アジピン酸886部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.7、水酸基価55.3のポリエステルポリオール(C2)を得た。
〔合成例12〕ポリエステルポリオール(C3)の合成
反応容器に、ジオール(b1)として1,8−オクタンジオール916部、セバシン酸1084部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下200℃で24時間反応後、酸価0.1、水酸基価56.5のポリエステルポリオール(C3)を得た。
〔合成例13〕ポリエステルポリオール(C4)の合成
反応容器に、ジオール(b1)として1,12−ドデカンジオール1035部、ドデカン二酸965部、及びTBTを0.1部仕込み、窒素気流下24時間反応後、酸価0.5、水酸基価が57.1のポリエステルポリオール(C4)を得た。
〔ポリエステルポリオールの酸価の測定方法〕
ポリエステルポリオールの酸価は、JIS K 1557−5に準拠し、ポリエステルポリオールの試料を三角フラスコに秤量し、2−プロパノールに溶解し、ブロモチモールブルー指示薬を加え、水酸化カリウム・メタノール溶液で滴定し、液の色が緑となった点を終点として、下記式で酸価(式中、A:mgKOH/g)を求めた。
A=〔(T−B)×F×C〕/S〕
A:酸価(mgKOH/g)
T:試料の滴定に要した水酸化カリウム・メタノール溶液の使用量(ml)
B:ブランク(ml)
F:水酸化カリウム・メタノール溶液のファクター
C:水酸化カリウム・メタノール溶液の濃度(モル/L)
S:試料量(g)
〔ポリエステルポリオールの水酸基価の測定方法〕
ポリエステルポリオールの水酸基価は、JIS K 1557−1に準拠し、所定量のポリエステルポリオールを無水酢酸ピリジン溶液に溶解し、所定温度で1時間反応させ、水酸基をアセチル化した後、未反応のアセチル化剤を水を加え加水分解した後、フェノールフタレイン指示薬を加え、生成した酢酸を水酸化カリウム・メタノール溶液で中和滴定し、下記式で水酸基価(式中、H:mgKOH/g)を求めた。
H=〔(T−B)×F×C〕/S〕
A:水酸基価(mgKOH/g)
T:試料の滴定に要した水酸化カリウム・メタノール溶液の使用量(ml)
B:ブランク(ml)
F:水酸化カリウム・メタノール溶液のファクター
C:水酸化カリウム・メタノール溶液の濃度(モル/L)
S:試料量(g)
〔JIS−A硬度の測定方法〕
上記ポリウレタン成形物(円柱)を試験体に用いて、JIS−K−6253に規定するデューロメータ硬さ試験法に準拠して、JIS−A硬度を測定した。
〔着色試験〕
(1)着色試験の方法
上記ポリウレタン成形物(円柱)を試験体に用いて、50℃に温度調整されたハイブリッドUVインキ藍/湿し水/3−メチル−3−メトキシ−ブタノール=1/2/2質量比の混合溶液に、24時間浸漬後、取り出し二つに切断して、断面を観察してインキの浸み込みした長さ(mm)を測定し、下記の基準に従い評価した。
(2)着色試験結果の評価基準
着色試験(インクの浸み込み)結果の評価は、以下の基準に従い行った。
○(優れる) :浸み込みなし又は3mm未満。
△(やや劣る):浸み込み3mm以上5mm未満。
×(劣る) :浸み込み5mm以上浸み込み。
〔耐水性試験〕
(1)耐水性試験の方法
上記ポリウレタン成形物(シート)を用いて試験体(5.0cm×2.5cm)を打ち抜き、該試験体をイオン交換水に浸漬させ、50℃で3日間放置後の質量変化率(%)を測定し、下記の基準に従い評価した。
(2)質量変化率の計算方法
質量変化率(%)=〔(W−W)/W〕×100
式中、WとWは下記を意味する。
:浸漬前のシートの質量。
:イオン交換水中50℃で3日間浸漬後のシートの質量。
(3)耐水性試験結果の評価
耐水性試験結果の評価は、以下の基準に従い行った。
○(優れる ):0.0%以上0.5%未満。
△(やや不良):0.5%以上1.0%未満。
×(不良 ):1.0%以上。
〔耐溶剤性試験〕
(1)耐溶剤性試験の方法
上記ポリウレタン成形物(円柱)を試験体に用いて、3−メチル−3−メトキシ−ブタノール(以下「MMB」と略す。)中、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下「DPM」と略す。)中に、それぞれ50℃で24時間浸漬後の質量変化率(%)を測定し、下記の基準に従い評価した。
(2)耐水性試験結果の評価
耐水性試験結果の評価は、以下の基準に従い行った。
・試験1:MMB浸漬(50℃、24時間)の場合。
◎(優れる ):0.0%以上2.5%未満。
○(良好) :2.5%以上5.0%未満。
△(やや不良):5.0%以上10.0%未満。
×(不良) :
10.0%以上。
・試験2:DPM浸漬(50℃、24時間)の場合。
◎(優れる) :0.0%以上10.0%未満。
○(良好) :10.0%以上20.0%未満。
△(やや不良):20.0%以上30.0%未満。
×(不良 ):30.0%以上。
〔実施例1〕
<ワンショット法による成形>
ジイソシアネート(A)としてハイプロックス1225(商標:DIC株式会社製、クルードMDI)と、前記合成例1で得たポリエステルポリオール(B1)を第3表に示す[NCO]/[OH]当量比で配合し混合攪拌して、本発明の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物を調整し、直ちに、該混合液を予熱しておいたシート成形金型(2mm厚のもの)及び円柱金型(直径4.0cm×厚み1.2cmのもの)に注入した。
次いで、夫々の金型を120℃で2時間、一次硬化させ、更に110℃で16時間、二次硬化させて、目的とするポリウレタン成形物を作製した。
上記で得たポリエステルポリオール及びポリウレタン成形物(シートと円柱)を下記の試験方法により、評価し判定した。その評価結果を第3表に示した。
〔実施例2〜9〕
合成例2〜9で得たポリエステルポリオール(B2)〜(B9)を用いた以外は実施例1と同様の操作で、本発明の本発明の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物をそれぞれ調整し、目的とするポリウレタン成形物を作製した。上記で得たポリエステルポリオール及びポリウレタン成形物の評価結果を第3表に示した。
〔比較例1〜4〕
合成例10〜13で得たポリエステルポリオール(C1)〜(C4)を用いた以外は実施例1と同様の操作で行った。上記で得たポリエステルポリオール及びポリウレタン成形物の評価結果を第4表に示した。
実施例1〜9は、ジイソシアネート(A)と、炭素数が2〜40のジオール(b1)とダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を用いて合成されたポリエステルポリオール(B)から得られるポリウレタンエラストマー組成物であり、前記ポリエステルポリオール(B)のFedors法に基づき算出したSP値δ、即ち、溶解性パラメータが9.0〜9.5の範囲であれば、耐溶剤性(耐膨潤性)と耐水性(耐着色性)が共に優れることが判る。一方、比較例1〜4は、耐溶剤性、耐水性の何れかの性能に劣っており、本発明の目的を達成できない。
Figure 2014031467
Figure 2014031467
Figure 2014031467
Figure 2014031467
Figure 2014031467
尚、第1表〜第4表に記載の略号は下記を意味する。
EG :エチレングリコール。
DA :ダイマー酸。
TBT :テトラブチルチタネート。
1,2PD:1,2−プロパンジオール。
HDG :ダイマージオール。
HAD :水添ダイマー酸。
BEPD :ブチルエチルプロパンジオール。
TMP :トリメチロールプロパン。
1,8OD:1,8−オクタンジオール。
DDG :1,12−ドデカンジオール。
CHDM :1,4−シクロヘキサンジメタノール。
DEG :ジエチレングリコール。
SucA :コハク酸。
AA :アジピン酸。
SebA :セバシン酸。
DDA :ドデカン二酸。
クルードMDI:ジフェニルメタンジイソシアネ−トの4,4’体、2,4’体又は2,2’体の混合物。
MMB :3−メチル−3−メトキシ−ブタノール。
DPM :ジプロピレングリコールモノメチルエーテル。
本発明の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物は、優れた耐溶剤性(有機溶剤に対する耐膨潤性。膨潤抑制効果。)と耐水性(耐着色性。着色防止効果。)を共に発現できるので、前記組成物を硬化させ成形してなる印刷ロールは、有機溶剤系インキや水性インキなどの印刷インキであっても印刷ロールの膨潤や着色などの弊害を起こさず長期間使用でき、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷などの広範囲の印刷に連続使用できる。

Claims (3)

  1. ジイソシアネート(A)と、炭素数2〜40のジオール(b1)とダイマー酸及び/又は水添ダイマー酸(b2)を用いて合成されたポリエステルポリオール(B)とから得られるポリウレタンエラストマー組成物であり、ポリウレタンエラストマーのFedors法に基づき式〔1〕にて算出したSP値δが9.0〜9.5の範囲であることを特徴とする印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物。
    (下記式〔1〕中、δはSP値〔(cal/cm31/2〕、Ecohは凝集エネルギー(cal/mol)、Vはモル分子容(cm3/mol)を表す。)
    δ = (ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・式〔1〕
  2. 前記ポリエステルポリオール(B)が、水酸基を3つ以上有する多官能化合物(b3)を用いて合成されたポリオールである請求項1記載の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物。
  3. 請求項1又は2記載の印刷ロール用ポリウレタンエラストマー組成物を硬化させ成形してなることを特徴とする印刷ロール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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