JP7106889B2 - ポリウレタン樹脂、水性ポリウレタン樹脂分散体、その製造方法、その使用及びその硬化物 - Google Patents
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Description
また、特許文献5、6に記載の1,6-ヘキサンジオールから得られるポリカーボネートポリオールと、ポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネートとから誘導されるポリウレタン樹脂では、水系媒体に分散する際に、粘度が高くなるという問題があった。更に、ポリオールモノマーとして、1,6-ヘキサンジオールを有するポリカーボネートポリオールと、ポリプロピレングリコールと、ポリイソシアネートとから誘導されるウレタンプレポリマーは、水系媒体への分散性が低いという問題があった。
[1]下記式(A)の繰り返し単位を有する(a1)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(a2)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b)ポリイソシアネート由来の構造とを有する、ポリウレタン樹脂。
[2]前記(a1)ポリカーボネートポリオールが、
下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(D)で示される繰り返し単位と、末端水酸基を有するポリカーボネートポリオールであって、
ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(D)の割合が0.1~0.8モル%である
[1]のポリウレタン樹脂。
[3]前記(a1)ポリカーボネートポリオールが、更に、下記式(B)で示される繰り返し単位を、ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対して0.5モル%以下の割合で有する、[2]のポリウレタン樹脂。
[4]前記(a1)ポリカーボネートポリオールが、
下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(B)で示される繰り返し単位と、末端水酸基を有するポリカーボネートポリオールであって、
ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(B)の割合が0.01~0.5モル%である、
[1]のポリウレタン樹脂。
[5]前記(a1)ポリカーボネートポリオールが、
下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(C)で示される繰り返し単位と、末端水酸基を有するポリカーボネートポリオールであって、
ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(C)の割合が0.5モル%以下である、
[1]のポリウレタン樹脂。
[6]前記(a1)ポリカーボネートポリオールが、更に、下記式(B)で示される繰り返し単位を、ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対して0.5モル%以下の割合で有する、
[5]のポリウレタン樹脂。
[7]前記(a1)ポリカーボネートポリオールが、
下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(B)で示される繰り返し単位と、下記式(C)で示される繰り返し単位と、下記式(D)で示される繰り返し単位と、末端水酸基を有するポリカーボネートポリオールであって、
ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(B)の割合が0.5モル%以下であり、
下記式(C)の割合が0.5モル%以下であり、
下記式(D)の割合が0.1~0.8モル%である、
[1]のポリウレタン樹脂。
[8]前記(a1)ポリカーボネートポリオールが、更に、末端水酸基を有する、[1]のポリウレタン樹脂。
[9]前記(a1)ポリカーボネートポリオールと、前記(a2)ポリエーテルポリオールとの重量の割合(a1/a2)が、87.5/12.5~5/95である[1]~[8]のいずれかのポリウレタン樹脂。
[10]更に、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造を有する、[1]~[9]のいずれかのポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散している水性ポリウレタン樹脂分散体。
[11][1]~[9]のいずれかのポリウレタン樹脂から得られる合皮。
[12][1]~[9]のいずれかのポリウレタン樹脂を含有する、塗料組成物。
[13][1]~[9]のいずれかのポリウレタン樹脂を含有する、コーティング剤組成物。
[14][1]~[9]のいずれかのポリウレタン樹脂を含有する、インク組成物。
[15][1]~[9]のいずれかのポリウレタン樹脂から形成される、ポリウレタン樹脂フィルム。
[16][10]の水性ポリウレタン樹脂分散体から得られる合皮。
[17][10]の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、塗料組成物。
[18][10]の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、コーティング剤組成物。
[19][10]の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、インク組成物。
[20][10]の水性ポリウレタン樹脂分散体から形成される、ポリウレタン樹脂フィルム。
ポリウレタン樹脂は、下記式(A)の繰り返し単位を有する(a1)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(a2)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b)ポリイソシアネート由来の構造とを有する。
また、ポリウレタン樹脂が(c)酸性基含有ポリオール由来の構造を有する場合、更に、(c’)中和剤の部分が、前記(c)酸性基含有ポリオールの対イオンとして存在していてもよい。
(a1)ポリカーボネートポリオール由来の構造とは、(a1)ポリカーボネートポリオールの分子構造のうち、ポリウレタン化反応に関与する基以外の部分構造を意味する。(a1)ポリカーボネートポリオール由来の構造は、(a1)ポリカーボネートポリオールによって、ポリウレタン樹脂に導入される。(a2)~(d)についても同様である。また、(e)鎖延長剤由来の構造とは、(e)鎖延長剤の分子構造のうち、鎖延長化反応に関与する基以外の部分構造を意味する。(e)鎖延長剤由来の構造は、(e)鎖延長剤によってポリウレタン樹脂に導入される。また、(f)末端停止剤由来の構造とは、(f)末端停止剤の分子構造のうち、ウレタン化反応及び/又は鎖延長反応を停止する反応に関与する基以外の部分構造を意味する。(f)末端停止剤由来の構造は、(f)末端停止剤によってポリウレタン樹脂に導入される。
(a1)ポリカーボネートポリオールは、少なくとも式(A)で示される繰り返し単位(以下、「式(A)の繰り返し単位」と称することもある)を有する。(a1)ポリカーボネートポリオールは、その末端に水酸基を有することができる。
ポリカーボネートポリオール中の繰り返し単位とは、ポリカーボネートポリオールを構成するモノマーに由来する成分である。また、(a1)ポリカーボネートポリオールは、繰り返し単位として、式(A)の繰り返し単位を有するものであれば特に制限されない。
ここで、全繰り返し単位数は、ポリカーボネートポリオールを構成するモノマー数に相当する。従って、ポリカーボネート中に含まれるモノマーの数を測定することにより、全繰り返し単位数(全モノマーの合計モル数)、及び各々の繰り返し単位数(各々のモノマーのモル数)を算出することができる。
なお、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)により、直接、ポリカーボネートポリオール中に含まれるモノマーの数を測定することもできる。
式(A)で示される繰り返し単位は、具体的には、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオールと炭酸エステルとの反応等により構成される繰り返し単位である。
ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対する式(A)で示される繰り返し単位の割合(以下「式(A)の単位の割合」と称することもある)は、好ましくは99.0~99.8モル%、より好ましくは99.1~99.7モル%、更に好ましくは99.2~99.6モル%である。残余は、式(A)の単位以外の単位であり、後述する式(B)~式(D)の単位、及び式(B)~式(D)の単位以外のその他の繰り返し単位である。式(A)の単位の割合が、この範囲内にあることで、ポリオールモノマーとして、2-メチル-1,3-プロパンジオールを有する(a1)ポリカーボネートポリオールの機能を効率的に発揮することができる。
ポリカーボネートポリオール(1)は、下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(D)で示される繰り返し単位と、末端水酸基とを有し、
ポリカーボネートポリオール(1)中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(D)の割合が0.1~0.9モル%、好ましくは0.1~0.8モル%である
ポリカーボネートポリオールである。
なお、式(D)は、2-メチル-1,3-ペンタンジオール由来の繰り返し単位であり、具体的には、例えば、2-メチル-1,3-ペンタンジオール(プロピレン基を主鎖とした場合;1-エチル-2-メチルプロパンジオール)と炭酸エステルとの反応などにより構成される繰り返し単位である。
ポリカーボネートポリオール(2)は、前記式(A)で示される繰り返し単位と、前記式(D)で示される繰り返し単位と、下記式(B)で示される繰り返し単位と、末端水酸基とを有し、
ポリカーボネートポリオール(2)中の全繰り返し単位に対して、
前記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
前記式(D)の割合が0.1~0.9モル%、好ましくは0.1~0.8モル%であり、
下記式(B)の割合が0.5モル%以下の割合である、
ポリカーボネートポリオールである。
ポリカーボネートポリオール(3)は、前記式(A)で示される繰り返し単位と、前記式(D)で示される繰り返し単位と、下記式(C)で示される繰り返し単位と、末端水酸基とを有し、
ポリカーボネートポリオール(3)中の全繰り返し単位に対して、
前記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
前記式(D)の割合が0.1~0.9モル%、好ましくは0.1~0.8モル%であり、
下記式(C)の割合が0.5モル%以下、好ましくは0.2モル%以下である、
ポリカーボネートポリオールである。
ポリカーボネートポリオール(4)は、下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(B)で示される繰り返し単位と、末端水酸基とを有し、
ポリカーボネートポリオール(4)中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(B)の割合が0.5モル%以下である、
ポリカーボネートポリオールである。
ポリカーボネートポリオール(5)は、下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(C)で示される繰り返し単位と、末端水酸基とを有し、
ポリカーボネートポリオール(5)中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(C)の割合が0.5モル%以下、好ましくは0.2モル%以下である、
ポリカーボネートポリオールである。
ポリカーボネートポリオール(6)は、下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(C)で示される繰り返し単位と、下記式(B)で示される繰り返し単位と、末端水酸基とを有し、
ポリカーボネートポリオール(6)中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(C)の割合が0.5モル%以下、好ましくは0.2モル%以下であり、
下記式(B)の割合が0.5モル%以下である、
ポリカーボネートポリオールである。
ポリカーボネートポリオール(7)は、下記式(A)で示される繰り返し単位と、下記式(B)で示される繰り返し単位と、下記式(C)で示される繰り返し単位と、下記式(D)で示される繰り返し単位と、末端水酸基とを有し、
ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%であり、
下記式(B)の割合が0.5モル%以下であり、
下記式(C)の割合が0.5モル%以下、好ましくは0.2モル%以下であり、
下記式(D)の割合が0.1~0.9モル%、好ましくは0.1~0.8モル%である、
ポリカーボネートポリオールである。
ポリカーボネートポリオール(2)、(4)、(6)及び(7)において、ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対する式(B)の割合を前記範囲とすることで、ポリカーボネートポリオールから誘導されたポリウレタン樹脂のタック性能を低下させることなく、より高い柔軟性、即ち、より高い破断点伸度とより高い破断点応力が発現する。
ポリカーボネートポリオール(3)、(5)、(6)及び(7)において、ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対する式(C)の割合を前記範囲とすることで、ポリカーボネートポリオールから誘導されたポリウレタン樹脂の耐溶剤性、特に汗の成分であるオレイン酸に対する耐久性(耐オレイン酸性)が向上する。
ポリカーボネートポリオール(1)、(2)、(3)及び(7)において、ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対する式(D)の割合を前記範囲とすることで、ポリカーボネートポリオールから誘導化されたポリウレタン樹脂のタック性能を低下させることなく、より高い柔軟性、即ち、より高い破断点伸度とより高い破断点応力が発現する。また、式(D)が有する2級水酸基の影響によりウレタン化する際の反応速度を低減させることもない。
(a1)ポリカーボネートポリオールは、式(A)~式(D)以外に、その他の繰り返し単位(その他の原料モノマーに由来する構造)を含んでいてもよく、例えば、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、3-オキサ-1,5-ペンタンジオール(ジエチレングリコール)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの炭素原子数2~12のジオール;ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンなどの炭素原子数4~12のラクトン;ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸などの炭素原子数4~12のヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
また、(a1)ポリカーボネートポリオールが、式(B)~式(D)の単位を有する場合、(a1)ポリカーボネートポリオール中のその他の繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位から、式(A)~式(D)の繰り返し単位の合計割合を引いた割合であり、好ましくは0.05~0.35モル%である。
この範囲内にあることで、(a1)ポリカーボネートポリオールの機能を効率的に発揮することができる。
(a1)ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、目的に応じて適宜調整することができるが、好ましくは100~5000、より好ましくは200~4000、特に好ましくは300~3000である。
なお、数平均分子量は、JIS K 1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1000×価数)/水酸基価を用いて算出する(この式において、水酸基価の単位は[mgKOH/g]である)。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
この範囲とすることで、ポリカーボネートポリオールが取り扱い容易な液状となるとともに、ポリカーボネートポリオールから誘導されたポリウレタン樹脂の低温特性がより良好となる。
(a1)ポリカーボネートポリオールの製造方法は特に限定されないが、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール(式(A)の構成成分)、炭酸エステル、触媒、及び、必要に応じて、2-メチル-1,3-ペンタンジオール(式(D)の構成成分)、1,4-ブタンジオール(式(B)の構成成分)、γ-ブチロラクトン(式(C)の構成成分)、ヒドロキシブタン酸(式(C)の構成成分)、ヒドロキシブタン酸エステル(式(C)の構成成分)、その他のモノマー(その他の繰り返し単位の構成成分)等を混合して、低沸点成分(例えば、副生するアルコールなど)を留去しながら、反応させるなどの方法によって好適に行われる。
なお、この反応は、一旦、ポリカーボネートポリオールのプレポリマー(目的とするポリカーボネートポリオールより低分子量)を得た後、更に分子量を上げるためにプレポリマーを反応させるなど、反応を複数回に分けて行うこともできる。
前記その他のモノマーは、主原料となる2-メチル-1,3-プロパンジオールに予め含有されていてもよい。
(a1)ポリカーボネートポリオールの製造において使用可能な炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチルなどの炭酸ジアルキル;炭酸ジフェニルなどの炭酸ジアリール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、トリメチレンカーボネート)、ブチレンカーボネート(4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、テトラメチレンカーボネート)、5-メチル-1,3-ジオキサン-2-オンなどの環状カーボネートが挙げられるが、好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートが使用される。
炭酸エステルは、単独または二種以上の組合せであってもよい。
この範囲とすることで、十分な反応速度で、効率良く目的とするポリカーボネートポリオールを得ることができる。
ポリカーボネートポリオールの製造時の反応温度は、炭酸エステルの種類に応じて適宜調整することができるが、好ましくは50~250℃、更に好ましくは70~230℃である。
また、この反応における反応圧力は、低沸点成分を除去しながら反応させる態様となるような圧力ならば特に制限されず、好ましくは常圧または減圧下で行われる。
この範囲とすることで、逐次反応や副反応が起こることなく、効率良く目的とする(a1)ポリカーボネートポリオールを得ることができる。
ポリカーボネートポリオールの製造時に使用する触媒として、公知のエステル交換触媒を使用することができ、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、コバルト、ゲルマニウム、スズ、セリウムなどの金属、及びそれらの水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機金属などが挙げられるが、好ましくは水素化ナトリウム、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズオキサイドが使用される。
触媒は、単独または二種以上の組合せであってもよい。
この範囲とすることで、後処理を煩雑とすることなく、効率良く目的とするポリカーボネートポリオールを得ることができる。
なお、当該触媒は、反応開始時に一括で使用しても、反応開始時、及び反応開始後に2回以上分割して使用(添加)してもよい。
(a2)ポリエーテルポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基を有していれば、その種類に特に制限はない。
この範囲とすることで、ポリウレタン樹脂を用いて水性ポリウレタン樹脂分散体とする際、粘度の上昇を抑えることができるという利点が挙げられる。またポリウレタン樹脂を用いて水性ポリウレタン樹脂分散体とする際、貯蔵安定性の低下を抑えることができるという利点も挙げられる。さらに、分散性に優れた水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。本明細書において、(a1)ポリカーボネートポリオールと(a2)ポリエーテルポリオールとの重量比は、ポリウレタン樹脂の製造における仕込み比によって求められる。
(b)ポリイソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂が(c)酸性基含有ポリオール由来の構造を有する場合、ポリウレタン樹脂を水系媒体に分散させることで、水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
(c)酸性基含有ポリオールは、単独または二種以上の組合せであってもよい。
各ポリオールの水酸基当量数=各ポリオールの分子量/各ポリオールの水酸基の数(フェノール性水酸基は除く)・・・(1)
ポリオールの合計の水酸基当量数=M/ポリオールの合計モル数・・・(2)
ポリウレタン樹脂の場合、式(2)において、Mは、[〔(a1)ポリカーボネートポリオールの水酸基当量数×(a1)ポリカーボネートポリオールのモル数〕+〔a2)ポリエーテルポリオールの水酸基当量数×(a2)ポリエーテルポリオールのモル数〕]+〔(c)酸性基含有ポリオールの水酸基当量数×(c)酸性基含有ポリオールのモル数〕]を示す。
(c’)中和剤としては、(c)酸性基含有ポリオールの酸性基を中和できる当業者に公知の塩基であれば特に制限されない。(c’)中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ塩類、アンモニアが挙げられる。中でも、好ましくは有機アミン類を用いることができ、より好ましくは3級アミンを用いることができる。分散安定性が向上する点で、トリエチルアミンがより好ましい。
ここで、ポリウレタンプレポリマーの酸性基とは、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等をいう。
(c’)中和剤は、単独または二種以上の組合せであってもよい。
(d)その他のポリオールは、必要に応じて用いることができる。
(d)その他のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
(d)その他のポリオールは、単独または二種以上の組合せであってもよい。
ポリウレタン樹脂は、分子量を増大させることを目的として、更に(e)鎖延長剤を反応させて得られるものであってもよい。(e)鎖延長剤としては、イソシアナト基と反応性を有する化合物であれば特に制限されるものではなく、目的や用途に応じて適宜選択することができる。例えば、アミン化合物、ヒドラジン化合物、その他活性水素原子を有する化合物等が挙げられる。
具体的なアミン化合物としては、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-ヘキサメチレンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
また具体的なその他活性水素原子を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサンなどの低分子ポリオール;ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオールなどの高分子ポリオール;水が挙げられる。
(e)鎖延長剤は、好ましくはジアミン化合物、特に好ましくは1級ジアミン化合物である。
(e)鎖延長剤は、単独または二種類以上の組合せであってもよい。
なお、鎖延長剤については、例えば、「最新ポリウレタン応用技術」(株式会社CMC社、1985年に発行)を参照することができる。また、前記高分子ポリオールについては、例えば、「ポリウレタンフォーム」(高分子刊行会、1987年)を参照することができる。
(f)末端停止剤の種類は当業者に公知である。
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、通常25,000~10,000,000程度である。より好ましくは、50,000~5,000,000であり、更に好ましくは、100,000~1,000,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を使用することができる。この範囲内とすることで、良好なフィルムを得ることができる傾向がある。また水性ポリウレタン樹脂分散体とした際に、乾燥性をより高くすることができる傾向がある。
ポリウレタン樹脂の製造方法としては、少なくとも(a1)ポリカーボネートポリオール、(a2)ポリエーテルポリオール、及び(b)ポリイソシアネートを反応(以下、ポリウレタン化反応と称して説明する場合がある。)させる工程を含む方法が挙げられる。ポリウレタン樹脂の製造方法では、必要に応じて、ウレタン化触媒、溶媒等の存在下で行ってもよい。また、更に、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造を有するポリウレタン樹脂の製造方法としては、例えば、後述する水性樹脂分散体の製造方法が挙げられる。
ウレタン化触媒としては、反応速度を向上させるために公知の重合触媒を用いることができ、例えば、第三級アミン、またはスズ若しくはチタンなどの有機金属塩が使用される。具体的には、スズ(錫)系触媒(トリメチルスズラウリレート、ジブチルスズジラウリレート等)や鉛系触媒(オクチル酸鉛等)等の金属と有機または無機酸の塩、並びに有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチルスズジラウリレートが好ましい。
なお、重合触媒については、吉田敬治著「ポリウレタン樹脂」(日本工業新聞社刊、1969年)の第23~32頁を参照することができる。
溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-カプロラクトン等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、2-エトキシエタノールなどのエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどのピロリドン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
ポリウレタン樹脂には、目的に応じて、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤などを含有させた、ポリウレタン樹脂組成物とすることができる。
ポリウレタン樹脂は、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、熱可塑性ポリウレタン、溶剤系ポリウレタン溶液、ポリウレタン(メタ)アクリレート、水性ポリウレタン樹脂分散体等とすることができる。また、これらを使って、人工皮革や合成皮革(これらをまとめて「合皮」と称することもある)、断熱材、クッション材、接着剤、塗料、コーティング剤、フィルム等の成形体などに加工することができる。
ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン(メタ)アクリレートへ誘導することができる。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂の末端がイソシアナト基であれば水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得ることができ、ポリウレタン樹脂の末端が水酸基であればイソシアナト基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得ることができる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ヘプチル)メタアクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単官能(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有多官能(メタ)アクリレート
が挙げられる。
なお、これらのエチレンオキシ変性品やプロピレンオキシ変性品、ラクトン変性品も使用することができ、水酸基含有(メタ)アクリレートは複数種を併用しても良い。
イソシアナト基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:昭和電工株式会社製「カレンズAOI(登録商標)」など)、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:昭和電工株式会社製「カレンズMOI(登録商標)」など)、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(商品名:昭和電工株式会社製「カレンズBEI(登録商標)」など)、5-メタクロイルオキシ-3-オキシペンチルイソシアネート(商品名:昭和電工株式会社製「カレンズMOI-EG(登録商標)」など)などが挙げられる。
なお、これらのエチレンオキシ変性品やプロピレンオキシ変性品、ラクトン変性品も使用することができ、イソシアナト基含有(メタ)アクリレートは複数種を併用しても良い。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、更に、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造を有する前記ポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散されたものである。水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれるポリウレタン樹脂は、任意の構造を有することができる。任意の構造として、(d)その他のポリオール(但し、(a1)、(a2)及び(c)ではない)由来の構造、(e)鎖延長剤由来の構造、(f)末端停止剤由来の構造等が挙げられる。任意の構造は、単独または二種以上の組合せであってもよい。また、ポリウレタン樹脂は、更に、(c’)中和剤の部分が、(c)酸性基含有ポリオールの対イオンとして存在していてもよい。
なお、各工程では、必要に応じて触媒を使用することで、反応を促進させたり、副生成物の量を制御することができる。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリウレタン樹脂と水系媒体とを含むものである。水系媒体としては、水、水と有機溶剤との混合物等が挙げられる。
前記水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられるが、入手の容易さや、塩の影響による粒子の不安定化抑制等を考慮して、イオン交換水を用い
ることが好ましい。また前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ジエチルエーテル、ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテルなど)等のエーテル溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチルピロリドン等のラクタム溶剤;出光興産社製「エクアミド」に代表されるβ-アルコキシプロピオンアミドなどのアミド類;2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMAP)などの水酸基含有三級アミンなどが挙げられる。
ポリウレタンプレポリマーは、少なくとも、(a1)ポリカーボネートポリオール及び(a2)ポリエーテルポリオールを含む(a)ポリオール(但し、(c)酸性基含有ポリオールを含まない)と、(b)ポリイソシアネートと、(c)酸性基含有ポリオールとを反応させて得られる。またポリウレタンプレポリマーは、(f)末端停止剤を含んでもよい。
(a)ポリオールの割合を30質量部以上とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥性を高くすることができる傾向があり、90質量部以下とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性がより向上する傾向がある。
(c)酸性基含有ポリオールの割合を0.5質量部以上とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂の水系媒体中への分散性が良好になる傾向があり、10質量部以下とすることで、得られる水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥性が高くなる傾向がある。また、水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得た塗膜の耐水性を高くすることができ、得られるフィルムの柔軟性も良好にすることができる傾向がある。
なお、本発明において、「ポリウレタンプレポリマーの酸価」とは、ポリウレタンプレポリマーを製造するにあたって用いられる溶媒及び前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させるための中和剤を除いたいわゆる固形分中の酸価である。
具体的には、ポリウレタンプレポリマーの酸価は、下記式(3)によって導き出すことができる。
〔ポリウレタンプレポリマーの酸価〕=〔((c)酸性基含有ポリオールのミリモル数)×((c)酸性基含有ポリオール1分子中の酸性基の数)〕×56.11/〔(a)ポリオール化合物、(c)酸性基含有ポリオール及び(b)ポリイソシアネートの合計の質量〕・・・(3)
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、例えば、
(a)ポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールを、(b)ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンプレポリマーを得る工程(α)、
ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和する工程(β)、
ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程(γ)、
ポリウレタンプレポリマーと、前記ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する(e)鎖延長剤とを反応させる工程(δ)を含む。ここで、工程(α)は、更に、得られたポリウレタンプレポリマーに、(f)末端停止剤を添加する工程を含んでもよい。
(a)ポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールを、(b)ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンプレポリマーを得る(工程(α));
次いで、ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和する(工程(β))、
工程(β)で得られた溶液を水系媒体中に分散させる(工程(γ))、
分散媒中に分散したポリウレタンプレポリマーと、前記ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する(e)鎖延長剤とを反応させること(工程δ))により、水性ポリウレタン樹脂分散体を得る。
水性ポリウレタン樹脂分散体には、必要に応じて、増粘剤、光増感剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の添加剤を添加することもできる。これらの添加剤の種類は当業者に公知である。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の割合は、好ましくは5~60質量%であり、特に好ましくは15~50質量%である。
水性ポリウレタン樹脂分散体中の水系媒体の割合は、好ましくは10質量%~90質量%であり、特に好ましくは20質量%~80質量%である。また、水系媒体中の有機溶媒の割合は、好ましくは0~20質量%である。
水性ポリウレタン樹脂分散体中の添加剤の割合は、一般に用いられる範囲の量とすることができる。
塗料組成物、コーティング剤組成物及びインク組成物は、上記ポリウレタン樹脂または上記水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する。
塗料組成物、コーティング剤組成物及びインク組成物は、上記ポリウレタン樹脂や上記水性ポリウレタン樹脂分散体以外に、他の樹脂を含有することができる。他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。他の樹脂は、1種以上の親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基等が挙げられる。
ポリエステル樹脂の水酸基価は、10~300mgKOH/g程度が好ましく、50~250mgKOH/g程度がより好ましく、80~180mgKOH/g程度が更に好ましい。前記ポリエステル樹脂の酸価は、1~200mgKOH/g程度が好ましく、15~100mgKOH/g程度がより好ましく、25~60mgKOH/g程度が更に好ま
しい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500~500,000が好ましく、1,000~300,000がより好ましく、1,500~200,000が更に好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、組成物の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、1~200mgKOH/g程度が好ましく、2~100mgKOH/g程度がより好ましく、3~60mgKOH/g程度が更に好ましい。
また、水酸基含有アクリル樹脂がカルボキシル基等の酸基を有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂の酸価は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、1~200mgKOH/g程度が好ましく、2~150mgKOH/g程度がより好ましく、5~100mgKOH/g程度が更に好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、1,000~200,000が好ましく、2,000~100,000がより好ましく、更に好ましくは3,000~50,000の範囲内であることが好適である。
脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂が挙げられる。
オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ドデセン等のα-オレフィン;ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、スチレン類等の共役ジエンまたは非共役ジエンが挙げられ、これらのモノマーは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
オレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸が挙げられ、これらのモノマーは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。これらは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。特に、着色顔料として、酸化チタン及び/またはカーボンブラックを使用することが好ましい。
体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトが挙げられる。これらは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。特に、体質顔料として、硫酸バリウム及び/またはタルクを使用することが好ましく、硫酸バリウムを使用することがより好ましい。
光輝性顔料は、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を使用することができる。
ポリウレタン樹脂または水性ポリウレタン樹脂分散体から得られるポリウレタン樹脂フィルムは、例えば、水性ポリウレタン樹脂分散体を離形性基材に適用し、加熱等の手段により乾燥、硬化させ、続いてポリウレタン樹脂の硬化物を離形性基材から剥離させることで得られる。
ポリウレタン樹脂又は水性ポリウレタン樹脂分散体から得られる合皮は、当業者に公知の方法、例えば、特開2016-191000号公報に記載された方法により製造することができる。
[分散性]
水性ポリウレタン樹脂分散体の分散性を、以下の基準で評価した。
○:分散性が良好で、水性ポリウレタン樹脂分散体が得られた。
×:分散性が不良で、水性ポリウレタン樹脂分散体が得られなかった。
[粘度の測定]
水性ポリウレタン樹脂分散体の粘度は、E型粘度計(東機産業製、TV10)を用いて測定した。
数平均分子量の算出は下記式に基づいて行った。
数平均分子量=(56100×2)/水酸基価
なお、ポリカーボネートポリオールの水酸基価は、JIS K 1557に準拠して、滴定で求めた。ここで、水酸基価の単位は、mgKOH/gである。
ポリカーボネートポリオール1g、エタノール30g及び水酸化カリウム4gを混合し、95~105℃で1時間攪拌した。
攪拌終了後、塩酸で中和し、生成した塩化ナトリウムを濾過した後、濾液をエタノールで3倍に希釈し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
検出された2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、及びその他のモノマーを検量線法により定量し、全モノマー成分の合計量を100%として、それぞれの繰り返し単位(モル%)を算出した。
なお、2-メチル-1,3-ペンタンジオールの定量には、標準物質として3-メチル-1,5-ペンタンジオールを用いた。
装置;ガスクロマトグラフGC-2010(島津製作所製)
カラム;DB-WAX(米国J&W社製)、膜厚0.25μm、長さ30m
カラム温度;60℃(5分間保持)→250℃(保持)
昇温速度;10℃/分
キャリアーガス;ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
注入量;1μL
(ポリウレタンフィルムの作成)
厚さ約0.08mmのポリウレタンフィルムを形成し、このフィルムを20mm×5mmの短冊型に切り取り、23℃、50%RHの恒温室にて3日養生したものを評価サンプルとした。
前記ポリウレタンフィルムに、水、5%硫酸、5%水酸化ナトリウム水溶液をしみこませた脱脂綿を置いて室温で24時間静置し、ウェスでふき取った後のフィルムの状態を、下記の基準で目視により評価した。
◎;変化なし
○;微小なしわや若干変色あり
△;しわ多数あり
×;しわ及び膨れあり
厚さ約0.06mmのポリウレタンフィルムを3mm×20mmに切り取り、固体粘弾性アナライザー(ティー・エイ・インスツルメント製、RSA-G2)を用いて、引っ張りモード、昇温速度3℃/分、温度範囲-100~150℃、周波数1Hz、窒素気流中で動的粘弾性測定を行い、tanδピーク温度をガラス転移温度とした。
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートポリオール(宇部興産製;数平均分子量1951;水酸基価57.5mgKOH/g;ポリオールモノマーが2-メチル-1,3-プロパンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、81.3g)と、ポリプロピレングリコール(189g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(10.7g)と、イソホロンジイソシアネート(70.3g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(87.8g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で6時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.72質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(8.1g)を加え、30分攪拌した。反応混合物のうち、419gを抜き出し、強攪拌しながら水(691g)に入れた後、鎖延長剤として、35%2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(25.6g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
下記の表1、2に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、水性ポリウレタン樹脂分散体を調製した。
実施例1~9及び比較例1~6について、水性ポリウレタン樹脂分散体の分散性を評価し、実施例1~9及び比較例2~6について、得られた水性ポリウレタン樹脂分散体の粘度を測定した。
以上の結果を表1及び表2に示した。
PCD:ポリカーボネートジオール
MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール
HDL:1,6-ヘキサンジオール
MPDL:2-メチル-1,5-ペンタンジオール
PDL:1,5-ペンタンジオール
PPG:ポリプロプレングリコール
PTMG:ポリテトラメチレングリコール
DMPA:2,2-ジメチロールプロピオン酸
IPDI:イソホロンジイソシアネート
H12MDI:4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
DMM:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
NMP:N-メチルピロリドン
TEA:トリエチルアミン
DMPA:2-メチル-1,5-ペンタンジアミン
DETA:ジエチレントリアミン
実施例1と比較例1の比較から、2-メチル-1,3-プロパンジオールに由来する繰り返し単位を有する(a1)ポリカーボネートポリオールとポリプロピレングリコールを含む水性ポリウレタン樹脂は、分散性に優れることが分かった。
また、実施例8と比較例6の比較から、2-メチル-1,3-プロパンジオールに由来する繰り返し単位を有する(a1)ポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールを含む水性ポリウレタン樹脂は、1,6-ヘキサンジオールに由来する繰り返し単位を有するポリカーボネートポリオールとポリテトラメチレングリコールを含む水性ポリウレタン樹脂より、粘度が低くなることが分かった。
精留塔、攪拌装置、温度計及び窒素導入管を備えたガラス製丸底フラスコに、
2-メチル-1,3-プロパンジオール425.5g(4.72モル、純度98%以上)、炭酸ジメチル445.6g(4.95モル、99%以上)及び水酸化リチウム0.003g(0.13ミリモル)を混合し、常圧下、低沸点成分を留去しながら120~200℃で12時間反応させた。
更に、減圧下(0.1~6.7kPa)、2-メチル-1,3-プロパンジオールを含む成分を留去しながら150~170℃で8時間反応を行い、粘ちょうな液体としてポリカーボネートポリオール(1)を得た。
繰り返し単位(A);99.6モル%
繰り返し単位(B);0.1モル%
繰り返し単位(D);0.3モル%
精留塔、攪拌装置、温度計及び窒素導入管を備えたガラス製丸底フラスコに、
2-メチル-1,3-プロパンジオール440.0g(4.88モル、純度98%以上)、炭酸ジメチル460.8g(5.12モル、99%以上)及び水酸化リチウム0.002g(0.08ミリモル)を混合し、常圧下、低沸点成分を留去しながら120~200℃で12時間反応させた。
更に、減圧下(0.1~6.7kPa)、2-メチル-1,3-プロパンジオールを含む成分を留去しながら150~170℃で8時間反応を行い、粘ちょうな液体としてポリカーボネートポリオール(2)を得た。
繰り返し単位(A);99.4モル%
繰り返し単位(B);0.1モル%
繰り返し単位(D);0.5モル%
精留塔、攪拌装置、温度計及び窒素導入管を備えたガラス製丸底フラスコに、
2-メチル-1,3-プロパンジオール817.0g(9.07モル、純度98%以上)、炭酸ジメチル855.7g(9.50モル、99%以上)及び水酸化リチウム0.004g(0.17ミリモル)を混合し、常圧下、低沸点成分を留去しながら120~200℃で12時間反応させた。
更に、減圧下(0.1~6.7kPa)、2-メチル-1,3-プロパンジオールを含む成分を留去しながら150~170℃で8時間反応を行い、粘ちょうな液体としてポリカーボネートポリオール(3)を得た。
繰り返し単位(A);99.9モル%
繰り返し単位(B);0.1モル%
合成例1で合成したポリカーボネートポリオール(1)24.2g、1,4-ブタンジオール4.5g、ポリテトラメチレングリコール(三菱ケミカル社製、製品名:PTMG2000、分子量2000タイプ)24.2g、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート20.7g(イソシアナト基/水酸基=1/1(モル比)なるように調整)、固形分30%となるようにN-エチルピロリドンで希釈し、75~85℃で4時間反応させポリウレタン樹脂(1)のN-エチルピロリドン溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂(1)のN-エチルピロリドン溶液をガラス板上に塗布し、70℃で3時間、120℃で3時間乾燥させてポリウレタンフィルム(1)を得た。
ポリカーボネートポリオール(1)に代えて、合成例2で合成したポリカーボネートポリオール(2)を用いた以外は実施例10と同様の方法により、ポリウレタンフィルム(2)を得た。
ポリカーボネートポリオール(1)に代えて、合成例3で合成したポリカーボネートポリオール(3)を用いた以外は実施例10と同様の方法により、ポリウレタンフィルム(3)を得た。
合成例1で合成したポリカーボネートポリオール(1)48.5g、1,4-ブタンジオール4.4g、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート19.6g(イソシアナト基/水酸基=1/1(モル比)なるように調整)、固形分30%となるようにN-エチルピロリドンで希釈し、75~85℃で4時間反応させポリウレタン樹脂(4)のN-エチルピロリドン溶液を得た。
得られたポリウレタン樹脂(4)のN-エチルピロリドン溶液をガラス板上に塗布し、70℃で3時間、120℃で3時間乾燥させてポリウレタンフィルム(4)を得た。
Claims (13)
- 下記式(A)の繰り返し単位を有する(a1)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(a2)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b)ポリイソシアネート由来の構造とを有する、ポリウレタン樹脂であって、前記(a1)ポリカーボネートポリオールと、前記(a2)ポリエーテルポリオールとの重量の割合(a1/a2)が、95/5~4/96である、ポリウレタン樹脂(但し、式(1):
(式中、R 2 は直鎖又は分岐鎖を有するC2-C20アルキレン基であり、及び
R 3 は直鎖又は分岐鎖を有するC2-C10アルキレン基であり、m及びnはそれぞれ0~10の整数であり、m+n≧1である)の繰り返し単位を有するポリカーボネートポリオール由来の構造を有するポリウレタン樹脂を除く)。
- 前記(a1)ポリカーボネートポリオールが、
下記式(A)で示される繰り返し単位と、末端水酸基とを有し、更に、下記式(B)の単位、下記式(C)の単位、下記式(D)の単位、炭素原子数2~12のジオール由来の単位(但し、下記式(B)の単位及び下記式(D)の単位ではない)、炭素原子数4~12のラクトン由来の単位(但し、下記式(C)の単位ではない)及び炭素原子数4~12のヒドロキシカルボン酸由来の単位(但し、下記式(C)の単位ではない)からなる群より選択される1種以上の単位を有するポリカーボネートポリオールであって、
ポリカーボネートポリオール中の全繰り返し単位に対して、
下記式(A)の割合が99.0~99.8モル%である、
請求項1記載のポリウレタン樹脂。
- 更に、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造を有する、請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散している水性ポリウレタン樹脂分散体。
- 請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂から得られる合皮。
- 請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂を含有する、塗料組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂を含有する、コーティング剤組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂を含有する、インク組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂から形成される、ポリウレタン樹脂フィルム。
- 請求項3に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体から得られる合皮。
- 請求項3に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、塗料組成物。
- 請求項3に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、コーティング剤組成物。
- 請求項3に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、インク組成物。
- 請求項3に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体から形成される、ポリウレタン樹脂フィルム。
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