JP2014030984A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】常態においては勿論のこと苛酷なレトルト処理を施した後にも、ガスバリア性に優れ、層間剥離が生じない良好な密着性を発現させることができ、しかも印刷加工を施した際にもガスバリア性と意匠性等の印刷品質を両立できる、製造が容易で経済性にも優れた積層フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層、保護層の順に積層したフィルムであって、前記保護層が、ウレタン樹脂とブロックイソシアネートを主成分とし、前記ブロックイソシアネートの解離温度が130℃以下である、積層フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、食品、医薬品、工業製品等の包装分野に用いられる積層フィルムに関する。詳しくは、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムとした際に、無機薄膜層の層間密着性を高めることができ、レトルト処理を施しても良好なガスバリア性と密着性(ラミネート強度)を発現させうる積層フィルムに関する。
食品、医薬品等に用いられる包装材料は、蛋白質、油脂の酸化抑制、味、鮮度の保持、医薬品の効能維持のために、酸素や水蒸気などのガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。また、太陽電池や有機EL等の電子デバイスや電子部品等に使用されるガスバリア性材料は、食品等の包装材料以上に高いガスバリア性を必要とする。
従来より、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品用途においては、プラスチックからなる基材フィルムの表面に、アルミニウム等からなる金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物からなる無機薄膜を形成したガスバリア性積層体が、一般的に用いられている。中でも、酸化ケイ素や酸化アルミニウム、これらの混合物などの無機酸化物の薄膜(無機薄膜層)を形成したものは、透明であり内容物の確認が可能であることから、広く使用されている。
しかしながら、上記のガスバリア性積層体は、形成工程において局部的に高温となりやすいため、基材に損傷が生じたり、低分子量の部分あるいは可塑剤など添加剤の部分で分解や脱ガスなどが起こり、それに起因して無機薄膜層中に欠陥やピンホール等が発生し、ガスバリア性が低下したりする場合がある。さらに、印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に無機薄膜層がひび割れてクラックが発生し、ガスバリア性が低下するといった問題もあった。特に、印刷工程においては、インキ組成物中の着色料(顔料)の影響でガスバリア性が低下することが知られており、より無機薄膜層へのダメージが一層大きくなる。食品用包装材料等のレトルト処理が施される用途においては、無機薄膜層がダメージを受けると、その後のレトルト処理によってガスバリア性が大幅に低下したり、無機薄膜とそれに接する樹脂間の層間密着性が低下して内容物が漏れ出たりする問題があった。
印刷工程に起因するバリア性低下の問題に対しては、蒸着薄膜層に保護層を設けることで対処する方法が知られている。保護層の形成には、従来からポリエステル樹脂やポリウレタン・ウレア樹脂が用いられている。これらの樹脂は分子量が数万のもので、溶剤に溶解させて1液または2液仕様の塗工液として使用されている。しかし、これらの塗工液を塗布して形成された直後の保護層は、印刷インキに使用される溶剤に対する耐性が低く、それが原因で印刷インキの転移性が悪くなり、意匠性の高い印刷物が得られないという欠点があった。
また上記のようなガスバリア性積層体のほかに、基材フィルムの上に樹脂組成物をコートしたガスバリア性フィルムも多く提案されている。特に、それ自体が高い酸素バリア性を持つポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール系共重合体を用いたコート剤が実用化されている。
さらに、上記ビニルアルコール系樹脂にモンモリロナイトなどの無機層状化合物を配合したガスバリア性を有する層をプラスチックからなる基材フィルムにコートしたガスバリア性フィルムも提案されている。例えば、基材フィルム上に、ポリビニルアルコール、架橋剤、無機層状化合物で構成されたガスバリア性を有する層を設ける例、基材フィルム上に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、水溶性ジルコニウム系架橋剤、無機層状化合物からなるガスバリア性を有する層を設ける例(例えば特許文献1、2参照)が挙げられる。これらのガスバリア性フィルムは、樹脂を架橋しているため、高湿下での耐湿性や、ボイル程度の条件での耐水性は確保できるものの、例えば120〜130℃の加圧下に曝されるようなレトルト処理を施した場合には、ガスバリア性やラミネート強度が低下し、十分満足できる性能は得られていなかった。
一方、無機薄膜を形成したガスバリア性積層体の欠点を改善する方法として、無機薄膜の上にさらにガスバリア性を有する層を設ける試みがなされている。例えば、無機薄膜上に、水溶性高分子と無機層状化合物および金属アルコキシドあるいはその加水分解物をコートして、ゾルゲル法により無機薄膜上に無機層状化合物を含有する無機物と水溶性高分子との複合体を形成させる方法が提案されている(例えば特許文献3参照)。この方法によれば、レトルト処理後も優れた特性を示すが、コートに供する液の安定性が低いため、コートの開始時と終了時(例えば、工業的に流通するロールフィルムとした場合であればロール外周部分と内周部分)で特性が異なったり、フィルム幅方向における乾燥や熱処理の僅かな温度の違いにより特性が異なったり、製造時の環境により品質の違いが大きく生じる、といった問題を抱えていた。さらには、ゾルゲル法によりコートされた膜は柔軟性に乏しいため、フィルムに折り曲げや衝撃が加わると、ピンホールが発生しやすく、ガスバリア性が低下することがあるといった問題も指摘されている。
このような背景のもと、ゾルゲル反応などを伴わないコート法、すなわち樹脂を主体としコート時には架橋反応を伴う程度のコート法で、無機薄膜層上に樹脂層を形成させうる改良が望まれていた。このような改良がなされたガスバリア性積層体としては、無機薄膜上に特定の粒径およびアスペクト比の無機層状化合物を含有する樹脂層をコートしたガスバリア性積層体(例えば特許文献4)や、無機薄膜上にシランカップリング剤を含むバリア性樹脂をコートしたガスバリア性積層体(例えば特許文献5)が開示されている。
また、無機薄膜を形成したガスバリア性積層体の劣化を改善する他の方法として、ポリエステル基材フィルムと例えば蒸着法により形成した無機薄膜層との間に、各種水性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、またはポリウレタンとポリエステルの混合物からなる被覆層を設ける方法が提案されている(例えば特許文献6)。さらに、湿熱下での被覆層の耐水性を向上させるために、各種水性ポリウレタンおよび/または水性ポリエステル樹脂とオキサゾリン基含有水溶性ポリマーとからなる被覆層を設けることが報告されている(例えば特許文献7)。この場合、オキサゾリン基を添加して架橋させることで耐水性を向上させている。また基材フィルムからのオリゴマー析出による無機薄膜層の劣化を防止するためには、各種水性アクリル樹脂とオキサゾリン基含有水溶性ポリマーとの混合物からなる被覆層を設ける方法が知られている(例えば特許文献8参照)。
特開2005−349769号公報 特開2008−297527号公報 特開2000−43182号公報 特許第3681426号公報 特許第3441594号公報 特開平2−50837号公報 特開2002−301787号公報 特開平11−179836号公報
しかしながら、上述したいずれの方法も、高湿下やボイル程度の条件下での特性は改良されるものの、レトルト処理のような苛酷な条件下においては十分満足しうるガスバリア性やラミネート強度を発揮させることはできず、しかも印刷加工を施した際にはガスバリア性と意匠性等の印刷品質を両立できないのが現状であった。
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものであり、その目的は、常態においては勿論のこと苛酷なレトルト処理を施した後にも、ガスバリア性に優れ、層間剥離が生じない良好な密着性を発現させることができ、しかも印刷加工を施した際にもガスバリア性と意匠性等の印刷品質を両立できる、製造が容易で経済性にも優れた積層フィルムを提供することにある。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明に至ったものである。
すなわち、前記の課題は、以下の解決手段により達成することができる。
(1)
基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層、保護層の順に積層したフィルムであって、前記保護層が、ウレタン樹脂とブロックイソシアネートを主成分とし、
前記ブロックイソシアネートの解離温度が130℃以下である、積層フィルム。
(2)
前記ブロックイソシアネートのブロック剤が重亜硫酸塩系化合物、ピラゾール系化合物、活性メチレン系、トリアゾール系化合物のいずれかに属する化合物である前記(1)に記載の積層フィルム。
(3)
前記ブロックイソシアネートのブロック剤の沸点が180℃以上である前記(2)に記載の積層フィルム。
(4)
前記基材フィルムと無機薄膜層の間に被覆層を設けた前記(1)〜(3)に記載の積層フィルム。
(5)
前記無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
本発明において、保護層にウレタン樹脂とブロックイソシアネートを主成分とし、前記ブロックイソシアネートの解離温度が130℃以下である塗布層を用いることにより、常態においては勿論のことレトルト処理を施した後にも、ガスバリア性に優れ、層間剥離が生じない良好な密着性を発現させることができる。
本発明の積層フィルムは、常態においては勿論のことレトルト処理を施した後にも、ガスバリア性に優れ、層間剥離が生じない良好な密着性を有する。そのため、本発明の積層フィルムは、各種食品や医薬品、工業製品の包装用途、高温多湿の環境下に置かれたり長期の安定したガスバリア性や耐久性が求められる太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途に有用である。
[基材フィルム]
本発明で用いる基材フィルムは、プラスチック基材フィルムであり、例えば、プラスチックを溶融押出しし、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムを用いることができる。プラスチックとしては、ナイロン4・6、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12等に代表されるポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等に代表されるポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等に代表されるポリオレフィン;のほか、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ乳酸等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、寸歩安定性、透明性の点でポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに他の成分を共重合した共重合体が好ましい。
基材フィルムとしては、機械強度、透明性など所望の目的や用途に応じて任意の膜厚のものを使用することができ、その膜厚は特に限定されないが、通常は5〜250μmであることが推奨され、包装材料として用いる場合は10〜60μmであることが望ましい。
基材フィルムの透明度は、特に限定されるものではないが、透明性が求められる包装材料として使用する場合には、50%以上の光線透過率をもつものが望ましい。
基材フィルムは、1種のプラスチックからなる単層型フィルムであってもよいし、2種以上のプラスチックフィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
また基材フィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電、火炎処理、表面粗面化処理等の表面処理が施されていてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾等が施されてもよい。
[保護層]
本発明の保護層は、ウレタン樹脂と、解離温度が130℃以下であるブロックイソシアネートを主成分とする塗布層を有することが重要である。ここで、「主成分」とは、保護層に含まれる全固形成分中として50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有することを意味する
上記特許文献1〜2のように、従来の技術常識では保護層の耐湿熱性を向上させる点からは保護層形成において架橋構造を積極的に導入することが望ましいと考えられていた。
その1つの手段としてイソシアネート架橋剤を使用さることが多いが、反応性が高いため水系の塗布液中で水と反応して架橋反応性を喪失したり、ウレタン樹脂と反応し、凝集物が生じやすい傾向がある。そのため、いわゆるポットライフが短く、長期間安定的に塗向することは困難であった。そこで、熱付加により解離するブロック剤で官能基をブロックしたイソシアネートが用いられる場合がある。しかしながら、十分な熱量が得られない場合は未解離のブッロク剤の影響により高温高湿下での接着性が得られない場合があった。
そもそも蒸着層の上にはブロックイソシアネート架橋剤を使用することすら考えられていない。
しかし、本発明ではポリウレタン樹脂と解離温度が130℃以下であるブロックイソシアネートを組み合わせることで、レトルト処理後(例えば、120〜130℃の加圧下)のラミネート強度の低下を抑制することを見出し、本発明に至った。このような構成により、レトルト処理後のラミネート強度の低下を抑制することの機序はよくわからないが、本発明者は次のように考えている。
本発明では、ポリウレタン樹脂と解離温度が130℃以下であるブロックイソシアネートを組み合わせるため、保護層形成時には熱付加が十分でないため、未反応のブロックイソシアネートが残存する。その後のレトルト処理の環境下で、ブロック剤が解離し、無機薄膜層の欠陥部分と反応することで、レトルト処理後のラミネート強度の低下を抑制できると考えている。すなわち、解離温度が上記温度を超える場合は、熱付加によるブロック剤の解離が不十分となり、レトルト処理後のラミネート強度が低下するものと考えられる。また、解離温度が低いブロックイソシアネートを使用するため、一定の架橋効果を得られるため、次工程で溶剤の影響を受けにくいと考えられる。
本発明は、上記態様により、レトルト処理後のラミネート強度の低下を抑制させることができる。さらに、本発明の構成を以下に詳細する。
(ウレタン樹脂)
本発明のウレタン樹脂は、構成成分として、少なくともポリオール成分、ポリイソシアネート成分を含み、さらに必要に応じて鎖延長剤を含む。本発明のウレタン樹脂は、これら構成成分が主としてウレタン結合により共重合された高分子化合物である。
ポリオール成分としては、多価カルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等)の反応から得られるポリエステルポリオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等ポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類やポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類などが挙げられる。なかでも、低分子量のポリオール成分を用いることで
ウレタン基比率が増加し、水素結合による凝集力が向上するため、バリア性が向上する。
本発明のウレタン樹脂の構成成分であるポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンー4,4−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。バリア性の観点から、芳香族ジイソシアネート類、芳香脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、が好ましい。さらに、環状部に置換基を有する場合は、芳香環や脂環の側鎖は短鎖である方が好ましく、また、ジイソシアネート成分は対称性を有する方が凝集力が向上するため、好ましい。
本発明の塗布層は、環境問題の点から、水系の塗布液を用いることが好ましい。そのため、本発明のウレタン樹脂は水溶性であることが望ましい。なお、前記の「水溶性」とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解することを意味する。
ウレタン樹脂に水溶性を付与させるためには、ウレタン分子骨格中にスルホン酸(塩)基又はカルボン酸(塩)基を導入(共重合)することができる。スルホン酸(塩)基は強酸性であり、その吸湿性能により耐湿性を維持するのが困難な場合があるので、弱酸性であるカルボン酸(塩)基を導入するのが好適である。また、ポリオキシアルキレン基などのノニオン性基を導入することもできる。
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのN−アルキルモルホリン類、N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミンなどのN−ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。
水溶性を付与するために、カルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物を共重合成分として用いる場合は、ウレタン樹脂中のカルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%としたときに、3〜60モル%であることが好ましく、5〜40モル%であることが好ましい。前記組成モル比が3モル%未満の場合は、水分散性が困難になる場合がある。また、前記組成モル比が60モル%を超える場合は、耐水性が低下するためレトルト処理後のラミネート強度が低下する場合がある。
前記ウレタン樹脂は架橋剤に対して、30質量%以上90質量%以下含有することが好ましい。特に、レンズ層のように高い密着性が求められる場合、より好ましくは50質量%以上80質量%以下である。ウレタン樹脂の含有量が多い場合には、レトルト処理後のラミネート強度が低下し、逆に、含有量が少ない場合には、バリア性が低下する。
本発明のウレタン樹脂には耐溶剤性を向上させるために、架橋剤の添加に加えてウレタン樹脂自体に自己架橋基を導入しても良い。これにより、樹脂の架橋度が増し、耐溶剤性が向上する。本発明に用いる自己架橋基としては特に限定されないが、水系塗布液中でも比較的安定性なシラノール基を好適に用いることができる。
本発明のウレタン樹脂は、無機薄膜層との接着性を向上させるために2種類以上含有させても良い。
本発明のウレタン樹脂以外の樹脂でも、無機薄膜層との接着性を向上させるために含有させても良い。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
(ブロックイソシアネート)
本発明において、保護層中に解離温度が130℃以下であるブロックイソシアネートを含有させる必要がある。ブロックイソシアネートはポリイソシアネートとブッロク剤を反応させることで得られる。なお、解離温度、沸点は示差熱分析により測定することができる。
ブロックイソシアネートの解離温度は130℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましく、120℃以下がよりさらに好ましい。ブロック剤は塗布液の塗布後の乾燥工程やレトルト処理時における熱付加により官能基と解離し、再生イソシアネート基が生成される。そのため、ウレタン樹脂などとの架橋反応が進行し、常態、レトルト処理後の保護層の耐溶剤性やラミネート強度が向上する。ブロックイソシアネートの解離温度が上記温度以下である場合は、ブロック剤の解離が十分進行するため、レトルト処理後のラミネート強度が良好となる。解離温度の上限は、塗布液の安定化のため室温以上であれば特に限定しないが、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。
ブロック剤は活性水素を分子内に1個有する化合物が好適に用いられる。この場合、解離温度を上記のように比較的低くするためには、高い電子密度が得られるブロック剤を採用することが好ましい。例えば、分子内に複素環やそれに類似した構造を有するブロック剤などが好適に用いられる。
ブロック剤の沸点は180℃以上が好ましく、190℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、210℃以上がよりさらに好ましい。ブロック剤の沸点が高い程、塗布液の塗布後の乾燥工程における熱付加によってもブロック剤の揮発が抑制され、微小な塗布面凹凸による塗布面外観欠点が良好になり、塗布外観や透明性が向上する。また、欠点が減少するため、バリア性の低下も抑制できる。ブロック剤の沸点の上限は特に限定しないが、生産性の点から300℃程度が上限であると思われる。沸点は分子量と関係するため、ブロック剤の沸点を高くするためには、分子量の大きなブロック剤を用いることが好ましく、ブロック剤の分子量は50以上が好ましく、60以上がより好ましく、80以上がさらに好ましい。
本発明のブロックイソシアネートに用いる解離温度が130℃以下であるブロック剤としては、重亜硫酸塩系化合物、ピラゾール系化合物、活性メチレン系、トリアゾール系化合物の中から選ばれる化合物ある。なかでも、耐湿熱性、黄変の点から、ピラゾール系化合物や活性メチレン系が好ましい。
さらにこれらの中で、沸点が180℃以上のブロック剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
重亜硫酸塩系化合物:重亜硫酸ソーダ
ピラゾール系化合物:3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ブロモー3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロー3,5−ジメチルピラゾール
活性メチレン系:マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル)
トリアゾール系化合物:1,2,4−トリアゾール
本発明のブロックイソシアネートの前駆体であるポリイソシアネートは、ジイソシアネートを導入して得られる。例えば、ジイソシアネートのウレタント変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。透明性、接着性、耐湿熱性の点から、脂肪族、脂環式イソシアネートやこれらの変性体が好ましい。芳香族イソシアネートを使用した場合、脂肪族系と比較して、強硬な塗膜になるため、基材や張り合わせた他の基材等の収縮、膨潤による応力を緩和できなくなり、密着性が低下する場合がある。
本発明のブロックイソシアネートは、水溶性、または、水分散性を付与するために前駆体であるポリイソシアネートに親水基を導入することができる。親水基としては、(1)ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩やジアルキルアミノアルキルアミンの四級アンモニウム塩など、(2)スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩など、(3)アルコキシ基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。親水性部位を導入した場合は(1)カチオン性、(2)アニオン性、(3)ノニオン性となる。なかでも、他の水溶性樹脂はアニオン性のものが多いため、容易に相溶できるアニオン性やノニオン性が好ましい。また、アニオン性は他の樹脂との相溶性に優れ、ノニオン性はイオン性の親水基をもたないため、耐湿熱性を向上させるためにも好ましい。また、アニオン性やカチオン性のものは他の樹脂と凝集、もしくは自己凝集し、透明性や外観性に影響する場合があるため、上記のなかでもノニオン性のものがより好ましい。
アニオン性の親水基としては、ポリイソシアネートに導入するための水酸基、親水性を付与するためのカルボン酸基を有するものが好ましい。例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、カルボン酸基を有するポリカプロラクトンが挙げられる。カルボン酸基を中和するには、有機アミン化合物が好ましい。例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンなどの炭素数1から20の直鎖状、分岐状の1,2または3級アミン、モルホリン、N−アルキルモルホリン、ピリジンなどの環状アミン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基含有アミンなどが挙げられる。
ノニオン性の親水基としては、アルコキシ基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの繰り返し単位が3〜50が好ましく、より好ましくは、5〜30である。繰り返し単位が小さい場合は、樹脂との相溶性が悪くなり、ヘイズが上昇し、大きい場合は、レトルト処理後のラミネート強度が低下する場合がある。
本発明のブロックイソシアネートは水分散性向上のために、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤を添加することができる。例えばポリエチレングリコール、多価アルコール脂肪酸エステル等のノニオン系、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等のカチオン系、カルボン酸アミン塩、スルホン酸アミン塩、硫酸エステル塩等の界面活性剤などが挙げられる。
また、水以外にも水溶性の有機溶剤を含有することができる。例えば、反応に使用した有機溶剤やそれを除去し、別の有機溶剤を添加することもできる。
保護層中のウレタン樹脂とブロックイソシアネートの質量比(ウレタン樹脂/ブロックイソシアネート)は3/7〜9/1が好ましく、5/5〜8/2がより好ましい。また、保護層の固形成分中のブロックイソシアネートの含有量としては、10質量%以上70質量%以下が好ましい。より好ましくは、20質量%以上50質量%以下である。少ない場合には、保護層の耐溶剤性が低下し、レトルト処理後のラミネート強度が低下し、多い場合には、保護層のバリア性が低下する。ブロックイソシアネートは2種類以上を組み合わせても良いし、2種類以上のブロック剤を組合せも良い。その際は、少なくとも1種のブロックイソシアネートは本発明の規定を満足する必要がある。
本発明において、塗膜強度を向上させるために、2種類の架橋剤を混合させても良い。混合させる架橋剤としては、メラミン系、エポキシ系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、シランカップリング剤等が挙げられる。塗液の経時安定性、レトルト処理後のラミネート強度向上効果からカルボジイミド系、オキサゾリン系が好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用される。
(添加剤)
本発明において、保護層中に粒子を含有させることもできる。粒子は(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。
前記粒子は、平均粒径が1〜500nmのものが好適である。平均粒子径は特に限定されないが、フィルムの透明性を維持する点から1〜100nmであれば好ましい。
前記粒子は、平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有させても良い。
なお、上記の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、塗布層の断面に存在する10ヶ以上の粒子の最大径を測定し、それらの平均値として求めることができる。
粒子の含有量としては、0.5質量%以上20質量%以下が好ましい。少ない場合は、十分な耐ブロッキング性を得ることができない。また、対スクラッチ性が悪化してしまう。多い場合は、保護層の透明性が悪くなるだけでなく、塗膜強度が低下する。
保護層には、コート時のレベリング性の向上、コート液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、無機薄膜層との接着性を損なわない程度の範囲、例えば、塗布液中に0.005〜0.5質量%の範囲で含有させることも好ましい。
保護層に他の機能性を付与するために、無機薄膜層との接着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤等が挙げられる。
本発明において、無機薄膜上に保護層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液を無機薄膜層を積層した基材に塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
(保護層の製造)
本発明の積層フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)フィルムを例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。
塗布層は、PETフィルムの少なくとも片面に、無機薄膜層を積層し、その上に塗布液を塗布し、形成する。保護層はPETフィルムの両面に形成させても特に問題はない。保護層を設ける方法は、特に限定されないが、保護層形成時でのブロック剤の解離を抑制する点で熱付加温度の制御が容易なオフラインコート法が好ましい。
本発明の塗布液中の樹脂組成物の固形分濃度は、2〜35重量%であることが好ましく、特に好ましくは4〜15重量%である。
この塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
本発明において、最終的に得られる保護層の厚みは好ましくは50〜3000nm、より好ましくは100〜1000nm、さらに好ましくは150〜500nm、よりさらに好ましくは200〜400nmである。また、保護層の乾燥後の塗布量は、好ましくは0.05〜3g/m、より好ましくは0.1〜1g/m、さらに好ましくは0.15〜0.5g/m、よりさらに好ましくは0.2〜0.4g/mである。保護層の塗布量が0.05g/m未満であると、レトルト処理後のラミネート強度が低下する場合がある。一方、塗布量が3g/mを越えると、耐ブロッキング性が低下してしまう。
保護層の形成をオフラインコート法によって行う場合は、製膜後のフィルムに塗布液を塗工後、乾燥ゾーンでの乾燥工程において熱付加することが好ましい。乾燥工程で熱付加する際は、塗布層中に未解離のブロックイソシアネートを好適に残存させるために、乾燥ゾーンの最高温度および乾燥時間は100℃以上180℃以下、1秒以上60秒以下が好ましく、100℃以上180℃以下、2秒以上30秒以下がより好ましい。乾燥工程における最高温度および乾燥時間が低く、短い場合は、保護層が未乾燥になり接着性が低下する場合があり、高く、長い場合は、ブロック剤の解離が増加し、レトルト処理後のラミネート強度が低下する場合がある。乾燥工程は、2つ以上の乾燥ゾーンに分けて行うことも好ましい。この場合は、初期ゾーンから後期ゾーンにかけて温度を変更してもよいが、この際にも乾燥工程の最高温度および乾燥時間は上記範囲に制御することが好ましい。
[無機薄膜層]
本発明の積層フィルムは、前記基材の上、または、基材に被覆層を設けた上に無機薄膜層が積層する必要がある。無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物(複合酸化物)等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20〜70%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20%未満であると、バリア性が低くなる場合があり、一方、70%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
無機薄膜層の膜厚は、通常1〜800nm、好ましくは5〜500nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、800nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)など、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm〜5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却などは、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
[被覆層]
本発明において、被覆層を設けてもよい。被覆層は特に限定はしないが、オキサゾリン基を有する樹脂とアクリル樹脂とを含む被覆層用樹脂組成物から形成されることが好ましい。そして、この被覆層の膜厚(D)は特定範囲であり、かつ被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおける所定の2つのピークのピーク強度比(P1/P2)と前記膜厚(D)とが特定の関係を満たす。これにより、レトルト処理を施した際にも優れたガスバリア性およびラミネート強度を保持させることができる。
本発明における被覆層は、オキサゾリン基を含有してもよい。このオキサゾリン基は未反応のオキサゾリン基であり、通常、被覆層を構成する被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基を有する樹脂により導入される。
オキサゾリン基は金属酸化物といった無機薄膜との親和性が高く、また無機薄膜層形成時に発生する無機酸化物の酸素欠損部分や金属水酸化物と反応できるため、無機薄膜層と強固な密着性を示す。また被覆層中に存在する未反応のオキサゾリン基は、基材フィルムおよび被覆層の加水分解により発生したカルボン酸末端と反応し、架橋を形成することができる。このような作用により、本発明では、レトルト処理時であっても、無機薄膜層−被覆層−基材フィルムの各層間の密着性が強固になり、結果として無機薄膜のひび割れや劣化を防止でき、ガスバリア性およびラミネート強度を維持できる。
本発明においては、被覆層の膜厚を5〜150nmとすることが好ましい。これにより、被覆層の厚みを均一に制御し、結果として無機薄膜層を緻密に堆積させることが可能になる。また被覆層自体の凝集力が向上し、無機薄膜層−被覆層−基材フィルムの各層間の密着性が高くなるため、塗膜の耐水性を高めることもできる。被覆層の膜厚は、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、好ましくは140nm以下、より好ましくは110nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。被覆層の膜厚が150nmを超えると、被覆層の凝集力が不十分となり、また被覆層の均一性も低下するため、レトルト処理時のガスバリア性を十分に発現できない場合があり、しかもガスバリア性が低下するだけでなく、製造コストが高くなり経済的に不利になる。一方、被覆層の膜厚が5nm未満であると、基材フィルムに対して十分な層間密着性が得られない場合がある。
本発明ではさらに、被覆層用樹脂組成物がウレタン樹脂、特にカルボキシル基を有するウレタン樹脂を含むことにより、被覆層の耐レトルト性を高めることができる。すなわち、ウレタン樹脂中のカルボキシル基とオキサゾリン基を適度に反応させることにより、被覆層は部分的に架橋しながらも、ウレタン樹脂に起因する柔軟性を備えることとなり、耐水性向上と無機薄膜層の応力緩和とを両立しやすくなる。
このような被覆層を設けることにより、本発明の積層フィルムは、レトルト処理後であっても優れたガスバリア性およびラミネート強度を維持することができる。
次に、被覆層を形成する被覆層用樹脂組成物の構成成分について詳細に説明する。
(オキサゾリン基を有する樹脂)
被覆層用樹脂組成物は、オキサゾリン基を有する樹脂を含有することが好ましい。オキサゾリン基を有する樹脂としては、例えば、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体を、必要に応じその他の重合性不飽和単量体とともに従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)で共重合させることにより得られるオキサゾリン基を有する重合体等を挙げることができる。
オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の重合性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24個のアルキルまたはシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の重合性不飽和単量体は、得られるオキサゾリン基を有する樹脂を水溶性樹脂として、他樹脂との相溶性、濡れ性、架橋反応効率、被覆層の透明性等を向上させる観点から、親水性単量体であることが好ましい。親水性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物等のポリエチレングリコール鎖を有する単量体、2−アミノエチル(メタ)アクリレートおよびその塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、水への溶解性の高いメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物等のポリエチレングリコール鎖を有する単量体(導入するポリエチレングリコール鎖の分子量は、好ましくは150〜700、特に、耐水性の観点からは150〜200が好ましく、他の樹脂との相溶性や被覆層の透明性の観点からは300〜700が好ましい)が好ましい。
オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体及びその他の重合性不飽和単量体からなる共重合体において、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体が占める組成モル比は、30〜70モル%であることが好ましく、40〜65モル%であることがより好ましい。
オキサゾリン基を有する樹脂は、そのオキサゾリン基含有量が5.1〜9.0mmol/gであることが好ましい。より好ましくは6.0〜8.0mmol/gの範囲内である。従来、オキサゾリン基を有する樹脂を被覆層に用いることに関し、オキサゾリン基が5.0mmol/g程度の樹脂の使用例は報告されているが(例えば、特許文献8参照)、本発明では比較的オキサゾリン基量が多い樹脂を使用する。これは、オキサゾリン基量が多い樹脂を用いることにより、被覆層に架橋構造を形成させると同時に、被覆層中にオキサゾリン基を残存させ、その結果、耐水性と柔軟性のバランスをよりコントロールしやすくなるからである。
オキサゾリン基を有する樹脂の数平均分子量は、被覆層の柔軟性と凝集力を発現させるうえでは、20000〜50000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは25000〜45000である。数平均分子量が20000未満であると、架橋構造をとった際の拘束力が大きくなることから、レトルト処理時における被覆層の柔軟性が十分に得られず、無機薄膜層への応力負荷が増大する虞がある。一方、数平均分子量が50000を超えると、被覆層の凝集力が十分でないことから、耐水性が低下する虞がある。
前記被覆層中のオキサゾリンを有する樹脂の含有割合は、前記被覆層用樹脂組成物中の全樹脂成分(オキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の合計)100質量%中、20〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%、さらに好ましくは40〜50質量%であるのがよい。オキサゾリンを有する樹脂の含有割合が20質量%未満であると、オキサゾリン基による耐水密着性、柔軟性の向上効果が十分に発揮されない傾向にあり、一方、70質量%を超えると、上述した(P1/P2)/Dの値が前記範囲の上限を超えやすくなる結果、被覆層の凝集力が不十分となり、耐水性が低下する虞がある。
(アクリル樹脂)
被覆層用樹脂組成物は、アクリル樹脂を含有することが好ましい。アクリル樹脂としては、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレート(以下、纏めて「アルキル(メタ)アクリレート」と称することがある)を主要な成分とする水性アクリル樹脂が用いられる。水性アクリル樹脂としては、具体的には、アルキル(メタ)アクリレートを通常40〜95モル%(好ましくは45〜90モル%、より好ましくは50〜85モル%)の含有割合で含み、共重合可能でかつ特定の官能基を有するビニル単量体を通常5〜60モル%(好ましくは10〜55モル%、より好ましくは15〜50モル%)の含有割合で含む水溶性樹脂または水分散性樹脂が好ましく挙げられる。
前記アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記ビニル単量体における特定の官能基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩、水酸基、エポキシ基などが挙げられ、特に、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基などが好ましい。これらの官能基は、1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
前記水性アクリル樹脂において、アルキル(メタ)アクリレートの含有割合を40モル%以上とすることにより、塗布性、塗膜の強度、耐ブロッキング性が特に良好になる。一方、アルキル(メタ)アクリレートの含有割合を95モル%以下とし、共重合成分として特定の官能基を有する化合物を水性アクリル樹脂に5モル%以上導入することにより、水溶化ないし水分散化を容易にするとともに、その状態を長期にわたり安定化することができ、その結果、被覆層と基材フィルムとの接着性や、被覆層内での反応による被覆層の強度、耐水性、耐薬品性などの改善を図ることができる。
カルボキシル基や酸無水物基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等のほか、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、さらには無水マレイン酸等が挙げられる。
スルホン酸基またはその塩を有する前記ビニル単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらスルホン酸の金属塩(ナトリウム塩等)やアンモニウム塩等が挙げられる。
アミド基またはアルキロール化されたアミド基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、β−ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレート等が挙げられる。
アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩を有する前記ビニル単量体としては、例えば、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、およびこれらのアミノ基をメチロール化したものや、ハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、サルトン等により4級化したもの等が挙げられる。
水酸基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
前記水性アクリル樹脂には、アルキル(メタ)アクリレートおよび上述した特定の官能基を有するビニル単量体のほかに、例えば、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノ又はジアルキルエステル、フマル酸モノ又はジアルキルエステル、イタコン酸モノ又はジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシラン等を併用して含有させることもできる。
アクリル樹脂は、カルボキシル基(カルボン酸基)を有し、その酸価が40mgKOH/g以下であることが望ましい。これにより、上述したオキサゾリン基とカルボキシル基とが反応し、被覆層は部分的に架橋しながらも柔軟性を維持でき、一層の凝集力向上と無機薄膜の応力緩和が両立できる。より好ましい酸価は20mgKOH/g以下、さらに好ましい酸価は10mgKOH/g以下である。酸価が40mgKOH/gを超えると、架橋が進みすぎることによって被覆層の柔軟性が低下し、レトルト処理時の無機薄膜層への応力が増加する虞がある。
被覆層を構成する被覆層用樹脂組成物中のアクリル樹脂の含有割合は、組成物中の全樹脂成分(オキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂、および必要に応じて含有する後述のウレタン樹脂の合計)100質量%中、10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%であるのがよい。アクリル樹脂の含有割合が10質量%未満であると、耐水性、耐溶剤性の効果が十分に発揮されない場合があり、一方、60質量%を超えると、被覆層が硬くなりすぎるため、レトルト処理時の無機薄膜層への応力負荷が増大する傾向にある。
またアクリル樹脂は、被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基量[mmol]に対するカルボキシル基量(カルボン酸基量)[mmol]が0〜20mmol%になるように用いることが好ましく、より好ましくは、0〜15mmol%である。カルボキシル基量が20mmol%を超えると、被覆層形成時に架橋反応が進みすぎることによってオキサゾリン基を多量に消費してしまうことになり、無機薄膜層に対する密着性および被覆層の柔軟性が低下し、その結果、レトルト処理後のガスバリア性や密着性が不充分になる虞がある。
(ウレタン樹脂)
本発明においては、被覆層用樹脂組成物はウレタン樹脂を含有してもよい。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを常法に従って反応させることにより製造される水溶性または水分散性樹脂等の水性樹脂を用いることができる。特に、カルボキシル基またはその塩を含有する水性ウレタン樹脂は、水媒体との親和性が高い。なお、ウレタン樹脂の構成成分は、核磁気共鳴分析などにより特定することが可能である。
ウレタン樹脂の構成成分であるポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
ウレタン樹脂の構成成分であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
ウレタン樹脂は、カルボキシル基(カルボン酸基)を有し、その酸価が10〜40mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。これにより、ウレタン樹脂中のカルボキシル基と上述したオキサゾリン基とが反応し、被覆層は部分的に架橋しながらも柔軟性を維持でき、一層の凝集力向上と無機薄膜の応力緩和が両立できる。より好ましくは15〜35mgKOH/gの範囲内、さらに好ましくは20〜30mgKOH/gの範囲内である。
ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入するには、例えば、ポリオール成分(ポリヒドロキシ化合物)として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基を有するポリオール化合物を用いることで共重合成分として導入し、塩形成剤により中和すればよい。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのN−アルキルモルホリン類N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミンなどのN−ジアルキルアルカノールアミン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
被覆層を構成する被覆層用樹脂組成物中のウレタン樹脂の含有割合は、組成物中の全樹脂成分(オキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の合計)100質量%中、10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%であるのがよい。上記範囲でウレタン樹脂を含有させることにより、耐水性の向上が期待できる。
またウレタン樹脂は、被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基量[mmol]に対するカルボキシル基量(カルボン酸基量)[mmol]が0〜20mmol%になるように用いることが好ましく、より好ましくは、0〜15mmol%である。カルボキシル基量が20mmol%を超えると、被覆層形成時に架橋反応が進みすぎることによってオキサゾリン基を多量に消費してしまうことになり、無機薄膜層に対する密着性および被覆層の柔軟性が低下し、その結果、レトルト処理後のガスバリア性や密着性が不充分になる虞がある。
なお、被覆層用樹脂組成物には、必要に応じて、本発明を損なわない範囲で、静電防止剤、滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を含有させてもよい。
被覆層の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えばコート法など従来公知の方法を採用することができる。コート法の中でも好適な方法としては、オフラインコート法、インラインコート法を挙げることができる。例えば基材フィルムを製造する工程で行うインラインコート法の場合、コート時の乾燥や熱処理の条件は、コート厚みや装置の条件にもよるが、コート後直ちに直角方向の延伸工程に送入し延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましく、そのような場合には通常50〜250℃程度の温度とすることが好ましい。
[その他の層]
本発明の積層フィルムには、上記基材フィルム、被覆層、無機薄膜層および保護層のほかに、必要に応じて、公知のガスバリア性積層フィルムが備えている種々の層を設けることができる。
例えば、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、保護層上に設けられるが、基材フィルムの外側(被覆層形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
さらに、本発明の積層フィルムには、保護層または基材フィルムとヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層や他のプラスチック基材および/または紙基材を少なくとも1層以上積層していてもよい。
印刷層を形成する印刷インキとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インキが好ましく使用できる。ここで印刷インキに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インキには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥など公知の乾燥方法が使用できる。
他方、他のプラスチック基材や紙基材としては、充分な積層体の剛性および強度を得る観点から、紙、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂および生分解性樹脂等が好ましく用いられる。また、機械的強度の優れたフィルムとする上では、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルムなどの延伸フィルムが好ましい。
特に、本発明の積層フィルムを包装材料として用いる場合、保護層とヒートシール性樹脂層との間に、ピンホール性や突き刺し強度などの機械特性を向上させるため、ナイロンフィルムを積層することが好ましい。ここでナイロンの種類としては、通常、ナイロン6、ナイロン66、メタキシレンアジパミド等が用いられる。ナイロンフィルムの厚みは、通常10〜30μm、好ましくは15〜25μmである。ナイロンフィルムが10μmより薄いと、強度不足になる虞があり、一方、30μmを超えると、腰が強く加工に適さない場合がある。ナイロンフィルムとしては、縦横の各方向の延伸倍率が、通常2倍以上、好ましくは2.5〜4倍程度の二軸延伸フィルムが好ましい。
以上のような本発明の積層フィルムは、レトルト処理後のガスバリア性に優れ、層間密着性が高くラミネート強度に優れ、かつ印刷加工を施した際にも無機薄膜層がダメージを受けることなくガスバリア性と意匠性等の印刷品質を両立できるガスバリア性積層フィルムとなる。
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)解離温度、沸点
ブロックイソシアネートの解離温度は示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)によりDSC分析にて測定し、ブロック剤の沸点は熱重量・示差熱分析(TG/DTA)により測定した。なお、沸点の測定は1気圧下で行なった。
(2)ガラス転移点温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、DSC曲線からガラス転移開始温度を求めた。
(3)インキ転移性の評価方法
得られたラミネート積層体を、無延伸ポリプロピレンフィルムの上から目視にて印刷層のインキの網点の広がりの程度を観察した。一方、対照として、保護層を設けないこと以外は各実施例、比較例と同様にして得られた積層フィルムの無機薄膜層上に印刷層を形成し、ナイロンフィルムおよび無延伸ポリプロピレンフィルムを貼り合わせてラミネート積層体を作製し、該ラミネート積層体について上記と同様に印刷層のインキの網点の広がりの程度を観察した。そして、両者の網点の広がり(網点濃度)を比較し、下記の基準で判定した。このインキ転移性の評価は、保護層の耐溶剤性が低いと、付与されたインキは保護層に吸収されやすくなる結果、保護層面での横方向(平面方向)への広がりが少なくなり(網点濃度が低くなり)、一方、保護層の耐溶剤性が高いと、付与されたインキが保護層に吸収されにくくなる結果、保護層面での横方向(平面方向)への広がりが大きくなる(網点濃度が高くなる)ことに基づくものであり、グラビアインキ中の溶剤に対する保護層の耐久性を示す尺度である。
◎:保護層なしの場合(対照)と同等の大きさの網点の広がりである。
○:保護層なしの場合(対照)よりは劣るが網点の広がりは大きい。
△:保護層なしの場合(対照)に比べ明らかに網点の広がりが小さく、見かけの網点濃度低下が大きい。
(4)酸素透過度の評価方法
得られたラミネート積層体を、JIS−K7126−2の電解センサー法(付属書A)に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/20」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で、常態での酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、ラミネート積層体の基材フィルム側からヒートシール性樹脂層側に酸素が透過する方向で行った。
また、得られたラミネート積層体を、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、40℃で24時間乾燥し、得られたレトルト処理後のラミネート積層体について、上記と同様にして酸素透過度(レトルト処理後)を測定した。
(5)ラミネート強度の評価方法
得られたラミネート積層体を幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT−II−500型」)を用いてラミネート強度(常態)を測定した。なお、ラミネート強度の測定は、引張速度を200mm/分とし、実施例および比較例で得られた各積層フィルムの無機薄膜層(ガスバリア性積層フィルム層)とナイロンフィルム層との層間に水をつけて剥離角度90度で剥離させたときの強度を測定した。
また、得られたラミネート積層体を、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、直ちに、得られたレトルト処理後のラミネート積層体から上記と同様にして試験片を切り出し、上記と同様にしてラミネート強度(レトルト処理後)を測定した。
(ウレタン樹脂A−1の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メタキシリレンジイソシアネート45.59質量部、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)93.90質量部、エチレングリコール24.8質量部、ジメチロールプロピオン酸13.40質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン80.20質量部を混合し、窒素雰囲気下、70℃で5時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、の反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.60質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水624.80質量部を添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散させ、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール21.10質量部を添加し、鎖伸長反応を行った。その後、減圧下で、メチルエチルケトンおよび水の一部を除去することにより、固形分30重量%、平均粒子径90nmの水分散型ポリウレタン樹脂(A−1)を得た。
(ウレタン樹脂A−2の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン72.96質量部と、ジメチロールプロピオン酸12.60質量部と、ネオペンチルグリコール11.74質量部と、数平均分子量2000のポリエステルジオール112.70質量部と、溶剤としてアセトニトリル85.00質量部およびN−メチルピロリドン5.00質量部とを投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次いで、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.03質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液(イソシアネート基末端プレポリマー)を得た。
次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450質量部を添加し、25℃に調整して2000min−1で攪拌混合しながら、上記で得られたポリウレタンプレポリマー溶液(イソシアネート基末端プレポリマー)の全量を添加して水分散させた。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分濃度30%の水溶性ポリウレタン樹脂(A−2)を調製した。得られたウレタン樹脂(A−2)の酸価(理論値)は25mgKOH/gであった。
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−1の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)52.21質量部にポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量 1000)20.72質量部を滴下し、素雰囲気下、70℃で5時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)27.08質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、ジプロピレングリコールジメチルエーテル25質量部、水125質量部を加え、30℃で高速攪拌し、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−1)を得た。
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−2の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたビウレット構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネート24A−100)52.54質量部にポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量 1000)19.78質量部素雰囲気下、70℃で5時間保持した。その後、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)27.67質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、ジプロピレングリコールジメチルエーテル25質量部、水125質量部を加え、30℃で高速攪拌し、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−2)を得た。
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−3の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)66.04質量部、N−メチルピロリドン17.50質量部に3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)25.19質量部を滴下し、素雰囲気下、70℃で1時間保持した。その後、ジメチロールプロパン酸5.27質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、N,N−ジメチルエタノールアミン5.59質量部、水132.5質量部を加え、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−3)を得た。
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−4の重合)
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1)の3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)をマロン酸ジエチル(解離温度:120℃、沸点199℃)に変更した以外は、同様の方法で固形分40%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−4)を得た。
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−5の重合)
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1)の3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)をメチルエチルケトオキシム(解離温度:140℃、沸点:152℃)に変更した以外は、同様の方法で固形分40%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−5)を得た。
(ブロックポリイソシアネート架橋剤B−6の重合)
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−3)の3,5−ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)をメチルエチルケトオキシム(解離温度:140℃、沸点:152℃)に変更した以外は、同様の方法で固形分40%のブロックポリイソシアネート水分散液(B−6)を得た。
(オキサゾリン基を有する樹脂C)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール460.6部を仕込み、緩やかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート84部からなる単量体混合物と、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業株式会社製「ABN−E」)21部およびイソプロピルアルコール189部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下漏斗から2時間かけて滴下して反応させ、滴下終了後も引き続き5時間反応させた。反応中は窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。その後、反応液を冷却し、得られた重合体をイオン交換水に溶解させ、固形分濃度25%のオキサゾリン基を有する樹脂(C)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(C)のオキサゾリン基量は4.3mmol/gであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した数平均分子量は20000であった。
(アクリル樹脂D)
アクリル樹脂として、市販のアクリル酸エステル共重合体の25質量%エマルジョン(ニチゴー・モビニール(株)社製「モビニール(登録商標)7980」用意した。このアクリル樹脂(D)の酸価(理論値)は4mgKOH/gであった。
(1)塗布液(被覆層用樹脂組成物)の調整
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。
水 67.53質量%
イソプロパノール 5.00質量%
オキサゾリン基を有する樹脂(C) 20.00質量%
アクリル樹脂(D) 4.80質量%
ウレタン樹脂(A−2) 2.67質量%
(2)ポリエステル基材フィルムの製造および被覆層の形成
極限粘度0.62(30℃、フェノール/テトラクロロエタン(質量比)=60/40)のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を予備結晶化した後、本乾燥し、Tダイを有する押出機を用いて280℃で押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。次に、得られた無定形シートを加熱ロールと冷却ロールとの間で縦方向に100℃で4.0倍に延伸し、一軸延伸PETフィルムを得た。
次に、得られた一軸延伸PETフィルムの片面に、上記(1)で調製した被覆層用樹脂組成物(塗布液)をファウンテンバーコート法により塗布した。その後、乾燥しながらテンターに導き、予熱温度100℃で溶媒を揮発、乾燥させた。次いで、温度120℃で横方向に4.0倍に延伸し、6%の横方向の弛緩を行いながら、225℃で熱固定処理を行うことにより、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(プラスチック基材フィルム)の片面に被覆層が形成された2層フィルム(プラスチック基材フィルム/被覆層)を得た。
(3)無機薄膜層の形成(蒸着)
次に、上記(2)で得られた2層フィルムの被覆層面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm〜5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/被覆層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO/A1複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
(4)保護層の形成
(実施例1)
次に、上記(3)で得られたフィルムの無機薄膜層面に、室温で5時間放置した後の下記の塗布液をワイヤーバーを用いて塗布乾燥後の保護層の厚みが300nmになるように塗布し、温度80℃の熱風で10秒、温度160℃の熱風で10秒乾燥し、積層ポリエステルフィルムを得た。
(塗布液)
下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した
水 39.17質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂溶液(A−1) 23.33質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 7.50質量%
(5)ラミネート積層体の製造
次に、上記(4)で得られた積層ポリエステルフィルムの保護層面に、グラビア印刷機によりインキ(東洋インキ社製「NewLPスーパー白」)を用いて印刷層を形成した。得られた印刷層面に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」を13.5:1(質量比)の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、厚さ15μmのナイロンフィルム(東洋紡績株式会社製「N1100」)を貼り合わせ、次いで該ナイロンフィルムの上に、上記と同様のウレタン系2液硬化型接着剤を用いてドライラミネート法により、ヒートシール性樹脂層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製「P1147」)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネートガスバリア性積層体(以下「ラミネート積層体」と称することもある)を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。
(比較例1)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
水 36.67質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 33.33質量%
(比較例2)
ブロックポリイソシアネート水分散液をブロックポリイソシアネート水分散液(B−5)に変更した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(比較例3)
ブロックポリイソシアネート水分散液をブロックポリイソシアネート水分散液(B−6)に変更した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(比較例4)
ブロックポリイソシアネート水分散液をヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート水分散液(旭化成ケミカルズ製WT30−100)に変更し、塗布液を作成して24時間後に塗布した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(比較例5)
2層フィルムと保護層の間に無機薄膜層が積層されていないこと以外は実施例1と同
様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(比較例6)
無機薄膜層の上に保護層が積層されていないこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(実施例2)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムおよび光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
水 37.50質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 30.00質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 2.50質量%
(実施例3)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
水 38.33質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 26.67質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 5.00質量%
(実施例4)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
水 40.83質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 16.67質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 12.50質量%
(実施例5)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
水 42.50質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 10.00質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 17.50質量%
(実施例6)
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1)をブロックポリイソシアネート水分散液(B−2)に変更した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(実施例7)
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1)をブロックポリイソシアネート水分散液(B−3)に変更した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(実施例8)
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1)をブロックポリイソシアネート水分散液(B−4)に変更した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(実施例9)
塗布液を作成して、24時間後に塗布した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(実施例10)
ポリエステルフィルムと無機薄膜層の間に被覆層が積層されていないこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
(実施例11)
塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムおよびラミネート積層体を得た。
水 54.58質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(A−1) 11.67質量%
ブロックポリイソシアネート水分散液(B−1) 3.75質量%
上記結果を表1に示す。
本発明により、常態においては勿論のことレトルト処理を施した後にも、ガスバリア性に優れ、層間剥離が生じない良好な密着性(ラミネート強度)を有するガスバリア性積層フィルムを提供することができる。かかるガスバリア性積層フィルムは、製造が容易で経済性や生産安定性に優れ、均質の特性が得られやすいという利点を有している。したがって、かかるガスバリア性積層フィルムは、レトルト用の食品包装に止まらず、各種食品や医薬品、工業製品の包装用途のほか、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途にも広く用いることができる。

Claims (5)

  1. 基材フィルムの少なくとも片面に無機薄膜層、保護層の順に積層したフィルムであって、前記保護層が、ウレタン樹脂とブロックイソシアネートを主成分とし、
    前記ブロックイソシアネートの解離温度が130℃以下である、積層フィルム。
  2. 前記ブロックイソシアネートのブロック剤が重亜硫酸塩系化合物、ピラゾール系化合物、活性メチレン系、トリアゾール系化合物のいずれかに属する化合物である請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記ブロックイソシアネートのブロック剤の沸点が180℃以上である請求項1に記載の積層フィルム。
  4. 前記基材フィルムと無機薄膜層の間に被覆層を設けた請求項1に記載の積層フィルム。
  5. 前記無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
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