JP6278067B2 - 積層フィルム - Google Patents

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本発明は、食品、医薬品、工業製品等の包装分野に用いられる積層フィルムに関する。詳しくは、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムとした際に、無機薄膜層の層間密着性を高めることができ、レトルト処理を施しても良好なガスバリア性と密着性(ラミネート強度)を発現させうる積層フィルムに関する。
食品、医薬品等に用いられる包装材料は、蛋白質、油脂の酸化抑制、味、鮮度の保持、医薬品の効能維持のために、酸素や水蒸気などのガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。また、太陽電池や有機EL等の電子デバイスや電子部品等に使用されるガスバリア性材料は、食品等の包装材料以上に高いガスバリア性を必要とする。
従来より、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品用途においては、プラスチックからなる基材フィルムの表面に、アルミニウム等からなる金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物からなる無機薄膜を形成したガスバリア性積層体が、一般的に用いられている。中でも、酸化ケイ素や酸化アルミニウム、これらの混合物などの無機酸化物の薄膜(無機薄膜層)を形成したものは、透明であり内容物の確認が可能であることから、広く使用されている。
しかしながら、上記のガスバリア性積層体は、形成工程において局部的に高温となりやすいため、基材に損傷が生じたり、低分子量の部分あるいは可塑剤など添加剤の部分で分解や脱ガスなどが起こり、それに起因して無機薄膜層中に欠陥やピンホール等が発生し、ガスバリア性が低下したりする場合がある。さらに、印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に無機薄膜層がひび割れてクラックが発生し、ガスバリア性が低下するといった問題もあった。特に、食品用包装材料等のレトルト処理が施される用途においては、無機薄膜層がダメージを受けると、その後のレトルト処理によってガスバリア性が大幅に低下したり、無機薄膜とそれに接する樹脂間の層間密着性が低下して内容物が漏れ出たりする問題があった。
また上記のようなガスバリア性積層体のほかに、基材フィルムの上に樹脂組成物をコートしたガスバリア性フィルムも多く提案されている。特に、それ自体が高い酸素バリア性を持つポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール系共重合体を用いたコート剤が実用化されている。
さらに、上記ビニルアルコール系樹脂にモンモリロナイトなどの無機層状化合物を配合したガスバリア性を有する層をプラスチックからなる基材フィルムにコートしたガスバリア性フィルムも提案されている。例えば、基材フィルム上に、ポリビニルアルコール、架橋剤、無機層状化合物で構成されたガスバリア性を有する層を設ける例、基材フィルム上に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、水溶性ジルコニウム系架橋剤、無機層状化合物からなるガスバリア性を有する層を設ける例(例えば特許文献1、2参照)が挙げられる。これらのガスバリア性フィルムは、樹脂を架橋しているため、高湿下での耐湿性や、ボイル程度の条件での耐水性は確保できるものの、例えば120〜130℃の加圧下に曝されるようなレトルト処理を施した場合には、ガスバリア性やラミネート強度が低下し、十分満足できる性能は得られていなかった。
一方、無機薄膜を形成したガスバリア性積層体の欠点を改善する方法として、無機薄膜の上にさらにガスバリア性を有する層を設ける試みがなされている。例えば、無機薄膜上に、水溶性高分子と無機層状化合物および金属アルコキシドあるいはその加水分解物をコートして、ゾルゲル法により無機薄膜上に無機層状化合物を含有する無機物と水溶性高分子との複合体を形成させる方法が提案されている(例えば特許文献3参照)。この方法によれば、レトルト処理後も優れた特性を示すが、コートに供する液の安定性が低いため、コートの開始時と終了時(例えば、工業的に流通するロールフィルムとした場合であればロール外周部分と内周部分)で特性が異なったり、フィルム幅方向における乾燥や熱処理の僅かな温度の違いにより特性が異なったり、製造時の環境により品質の違いが大きく生じる、といった問題を抱えていた。さらには、ゾルゲル法によりコートされた膜は柔軟性に乏しいため、フィルムに折り曲げや衝撃が加わると、ピンホールが発生しやすく、ガスバリア性が低下することがあるといった問題も指摘されている。
このような背景のもと、ゾルゲル反応などを伴わないコート法、すなわち樹脂を主体としコート時には架橋反応を伴う程度のコート法で、無機薄膜層上に樹脂層を形成させうる改良が望まれていた。このような改良がなされたガスバリア性積層体としては、無機薄膜上に特定の粒径およびアスペクト比の無機層状化合物を含有する樹脂層をコートしたガスバリア性積層体(例えば特許文献4)や、無機薄膜上にシランカップリング剤を含むバリア性樹脂をコートしたガスバリア性積層体(例えば特許文献5)が開示されている。
また、無機薄膜を形成したガスバリア性積層体の劣化を改善する他の方法として、ポリエステル基材フィルムと例えば蒸着法により形成した無機薄膜層との間に、各種水性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、またはポリウレタンとポリエステルの混合物からなる被覆層を設ける方法が提案されている(例えば特許文献6)。さらに、湿熱下での被覆層の耐水性を向上させるために、各種水性ポリウレタンおよび/または水性ポリエステル樹脂とオキサゾリン基含有水溶性ポリマーとからなる被覆層を設けることが報告されている(例えば特許文献7)。この場合、オキサゾリン基を添加して架橋させることで耐水性を向上させている。また基材フィルムからのオリゴマー析出による無機薄膜層の劣化を防止するためには、各種水性アクリル樹脂とオキサゾリン基含有水溶性ポリマーとの混合物からなる被覆層を設ける方法が知られている(例えば特許文献8参照)。
特開2005−349769号公報 特開2008−297527号公報 特開2000−43182号公報 特許第3681426号公報 特許第3441594号公報 特開平2−50837号公報 特開2002−301787号公報 特開平11−179836号公報
しかしながら、上述したいずれの方法も、高湿下やボイル程度の条件下での特性は改良されるものの、レトルト処理のような苛酷な条件下においては十分満足しうるガスバリア性やラミネート強度を発揮させることはできないのが現状であった。
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものであり、その目的は、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムとした際に、常態においては勿論のことレトルト処理を施した後にも、ガスバリア性に優れ、層間剥離が生じない良好な密着性を発現させることができ、しかも製造が容易で経済性にも優れた積層フィルムを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、プラスチック基材フィルムの少なくとも片面に被覆層を設け、該被覆層を、オキサゾリン基を含有するとともにアクリル樹脂を含むものとし、かつその膜厚(D)を特定の範囲とし、全反射赤外吸収スペクトルにおいて2つの所定のピーク強度の比(P1/P2)が膜厚に対して特定範囲となるようにした積層フィルムであれば、被覆層の上に無機薄膜層を形成してガスバリア性積層フィルムとした際に、常態においては勿論のことレトルト処理を施した後にも、ガスバリア性に優れ、層間剥離が生じない良好な密着性を発現させることができることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、プラスチック基材フィルムの上に設ける被覆層に関し、従来、被覆層の耐湿熱性を向上させるために、架橋剤とそれに反応しうる官能基を有する樹脂と混合して被覆層形成時に高度に架橋構造を形成させることが望ましいと考えられてきたところ、かかる技術常識に反して成し遂げられたものである。すなわち、本発明では、被覆層を形成する樹脂としてオキサゾリン基を有する樹脂とアクリル樹脂とを用い、オキサゾリン基を特定範囲で適度に反応、残存させることで、被覆層にオキサゾリン基とアクリル樹脂とを含有させる。これにより、架橋構造と塗膜柔軟性とを制御でき、その結果、無機薄膜層を設けてガスバリア性積層フィルムとしたときに、レトルト処理を施した際にもガスバリア性を維持できるのである。さらに本発明では、被覆層の膜厚を5〜150nmの範囲とすることで、均一性に優れた無機薄膜層を形成できるという作用効果が期待できる。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に被覆層が設けられてなり、前記被覆層は、オキサゾリン基を有する樹脂、カルボキシル基を有するアクリル樹脂およびカルボキシル基を有するウレタン樹脂を必須成分として含む被覆用樹脂組成物から形成されており、前記アクリル樹脂のカルボキシル基量[mmol]は、前記被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基量[mmol]に対して0〜20mmol%であり、前記ウレタン樹脂のカルボキシル基量[mmol]は、前記被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基量[mmol]に対して0〜20mmol%であり、該被覆層の膜厚(D)は30〜150nmであり、かつ該被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおいて1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P1)と1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P2)との比(P1/P2)と前記被覆層の膜厚(D)とが下記式
0.035≦(P1/P2)/D≦0.15
に示す関係を満たすことを特徴とする積層フィルム。
(2)前記被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基を有する樹脂は、そのオキサゾリン基量が5.1〜9.0mmol/gである前記(1)に記載の積層フィルム。
(3)前記被覆層用樹脂組成物中のウレタン樹脂の酸価が10〜40mgKOH/gである前記(1)または(2)に記載の積層フィルム。
(4)前記被覆層用樹脂組成物中のアクリル樹脂の酸価が40mgKOH/g以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
(5)前記オキサゾリン基を有する樹脂、前記アクリル樹脂および前記ウレタン樹脂の合計100質量%中、オキサゾリン基を有する樹脂が20〜70質量%、アクリル樹脂が10〜60質量%、ウレタン樹脂が10〜60質量%である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
(6)前記被覆層の上に無機薄膜層が積層されてなる前記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
(7)前記無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層である前記(6)に記載の積層フィルム。
本発明によれば、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムとした際に、常態においては勿論のことレトルト処理を施した後にも、酸素や水蒸気に対して優れたガスバリア性を発揮し、また層間剥離が生じない良好なラミネート強度(密着性)を発現させることができる。しかも、本発明によれば、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムを容易に製造できるので経済性に優れ、さらに生産安定性に優れ、均質な特性が得られやすい。
本発明の積層フィルムは、プラスチック基材フィルムの少なくとも片面に被覆層が設けられてなる。以下、まずプラスチック基材フィルムおよび被覆層について説明し、次いでこれに積層しうる層について説明する。
[プラスチック基材フィルム]
本発明で用いるプラスチック基材フィルム(以下「基材フィルム」と称する)としては、例えば、プラスチックを溶融押出しし、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムを用いることができる。プラスチックとしては、ナイロン4・6、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12等に代表されるポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等に代表されるポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等に代表されるポリオレフィン;のほか、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ乳酸等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、寸歩安定性、透明性の点でポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに他の成分を共重合した共重合体が好ましい。
基材フィルムとしては、機械強度、透明性など所望の目的や用途に応じて任意の膜厚のものを使用することができ、その膜厚は特に限定されないが、通常は5〜250μmであることが推奨され、包装材料として用いる場合は10〜60μmであることが望ましい。
基材フィルムの透明度は、特に限定されるものではないが、透明性が求められる包装材料として使用する場合には、50%以上の光線透過率をもつものが望ましい。
基材フィルムは、1種のプラスチックからなる単層型フィルムであってもよいし、2種以上のプラスチックフィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
また基材フィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電、火炎処理、表面粗面化処理等の表面処理が施されていてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾等が施されてもよい。
[被覆層]
本発明において、前記被覆層は、オキサゾリン基を含有するとともにアクリル樹脂を含む。そのためには、被覆層は、オキサゾリン基を有する樹脂とアクリル樹脂とを必須成分として含む被覆層用樹脂組成物から形成されることが好ましい。そして、この被覆層の膜厚(D)は特定範囲であり、かつ被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおける所定の2つのピークのピーク強度比(P1/P2)と前記膜厚(D)とが特定の関係を満たす。これにより、レトルト処理を施した際にも優れたガスバリア性およびラミネート強度を保持させることができる。
詳しくは、従来、被覆層の耐湿熱性を向上させるうえでは高度な架橋構造を積極的に導入することが望ましいと考えられていたところ、本発明では単に高度な架橋構造を積極的に導入するのではなく、被覆層を上記のような構成にすることにより、レトルト処理時のガスバリア性およびラミネート強度を向上させたのである。以下、上記の被覆層の構成によりレトルト処理後にも優れたガスバリア性およびラミネート強度を維持できることの作用機序について説明する。
従来、無機薄膜層を備えた積層フィルムの場合、無機薄膜層と基材フィルムあるいは該基材フィルム上に設けた被覆層との密着性が不十分であると、レトルト処理した際に層間に水が入り込み、無機薄膜層との界面での剥離が生じていた。そして、この剥離部分をきっかけとして無機薄膜層に割れや浮きが生じ、その結果バリア性およびラミネート強度が低下するという問題が生じていた。
またレトルト処理時の層間剥離は、基材フィルムと被覆層との間にも起こる。すなわち、レトルト処理時には、基材フィルムを構成するポリエステル樹脂などのプラスチックや被覆層中の樹脂が加水分解してしまい、結合が分断されることがある。その結果、基材フィルムと被覆層との間の密着性不良が起こり、上記同様にガスバリア性およびラミネート強度が低下する原因となることもあった。
さらにレトルト処理時には、基材フィルムまたは無機薄膜層上に設けた後述のシーラント層が湿熱環境下に曝されることで寸法変化を起こし、隣接する無機薄膜層に応力負荷がかかる。その結果、無機薄膜層が破壊されてバリア性が低下してしまう場合があった。
本発明における被覆層は、オキサゾリン基を含有している。このオキサゾリン基は未反応のオキサゾリン基であり、通常、被覆層を構成する被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基を有する樹脂により導入される。
オキサゾリン基は金属酸化物といった無機薄膜との親和性が高く、また無機薄膜層形成時に発生する無機酸化物の酸素欠損部分や金属水酸化物と反応できるため、無機薄膜層と強固な密着性を示す。また被覆層中に存在する未反応のオキサゾリン基は、基材フィルムおよび被覆層の加水分解により発生したカルボン酸末端と反応し、架橋を形成することができる。このような作用により、本発明では、レトルト処理時であっても、無機薄膜層−被覆層−基材フィルムの各層間の密着性が強固になり、結果として無機薄膜のひび割れや劣化を防止でき、ガスバリア性およびラミネート強度を維持できる。
上記のような作用効果を発現させるために、本発明においては、被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおいて1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P1)と1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P2)との比(P1/P2)と、被覆層の膜厚(D)(nm)とが下記式
0.03≦(P1/P2)/D≦0.15
に示す関係を満たしている必要がある。ここで、1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークはオキサゾリン基に由来し、1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークはポリエステルに由来するものである。上記式中、(P1/P2)/Dで示される値は、好ましくは0.035以上、さらに好ましくは0.04以上であり、好ましくは0.13以下、さらに好ましくは0.10以下である。(P1/P2)/Dで示される値が0.03未満であると、オキサゾリン基量が少ないため、レトルト処理後において十分なガスバリア性およびラミネート強度が得られない場合がある。一方、(P1/P2)/Dで示される値が0.15を超えると、オキサゾリン基量が多すぎることにより凝集力が低下したり、オキサゾリン基量に対して膜厚が薄くなりすぎ、レトルト処理後に十分な層間密着性が得られない。なお、被覆層の全反射赤外吸収スペクトル測定は、例えば後述する実施例に記載の方法で行うことができる。
上記のような作用効果を発現させるために、さらに本発明においては、被覆層の膜厚(D)を5〜150nmとする。これにより、被覆層の厚みを均一に制御し、結果として無機薄膜層を緻密に堆積させることが可能になる。また被覆層自体の凝集力が向上し、無機薄膜層−被覆層−基材フィルムの各層間の密着性が高くなるため、塗膜の耐水性を高めることもできる。被覆層の膜厚(D)は、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、好ましくは140nm以下、より好ましくは110nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。被覆層の膜厚が150nmを超えると、被覆層の凝集力が不十分となり、また被覆層の均一性も低下するため、レトルト処理時の酸素バリア性や水蒸気バリア性を十分に発現できない場合があり、しかもガスバリア性が低下するだけでなく、製造コストが高くなり経済的に不利になる。一方、被覆層の膜厚が5nm未満であると、基材フィルムに対して十分な層間密着性が得られない。
例えば被覆層用樹脂組成物がオキサゾリン基を有する樹脂のみからなるとしても、(P1/P2)/Dの範囲を規定した上記式を満たすだけのオキサゾリン基を有していれば、良好な耐レトルト性を発現できるかもしれないが、より長時間で高温の苛酷なレトルト処理に曝された場合には、被覆層自体の凝集力が不足し、被覆層自体の変形による無機薄膜層へのダメージは避けられない。そこで、本発明では、より苛酷なレトルト処理にも被覆層が十分に耐えうるように、アクリル樹脂を被覆層用樹脂組成物の必須成分とし、被覆層にアクリル樹脂を含有させる。アクリル樹脂を含有させることで、被覆層自体の凝集力が向上し、結果として耐水性が高まる。さらにアクリル樹脂がカルボキシル基を有する場合には、該カルボキシル基を適度に(具体的には、上述した(P1/P2)/Dの値が前記範囲に入るように)オキサゾリン基と反応させることにより、部分的な架橋構造を有することができ、さらに耐水性の向上が期待できる。
本発明ではさらに、被覆層用樹脂組成物がウレタン樹脂、特にカルボキシル基を有するウレタン樹脂を含むことにより、被覆層の耐レトルト性を高めることができる。すなわち、ウレタン樹脂中のカルボキシル基とオキサゾリン基を適度に(具体的には、上述した(P1/P2)/Dの値が前記範囲に入るように)反応させることにより、被覆層は部分的に架橋しながらも、ウレタン樹脂に起因する柔軟性を備えることとなり、耐水性向上と無機薄膜層の応力緩和とを両立しやすくなる。
以上のことから、本発明の積層フィルムは、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムとしたときに、レトルト処理後であっても優れたガスバリア性および層間密着性(ラミネート強度)を維持することができる。
次に、被覆層を形成する被覆層用樹脂組成物の構成成分について詳細に説明する。
(オキサゾリン基を有する樹脂)
被覆層用樹脂組成物は、オキサゾリン基を有する樹脂を含有することが好ましい。オキサゾリン基を有する樹脂としては、例えば、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体を、必要に応じその他の重合性不飽和単量体とともに従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)で共重合させることにより得られるオキサゾリン基を有する重合体等を挙げることができる。
オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の重合性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24個のアルキルまたはシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の重合性不飽和単量体は、得られるオキサゾリン基を有する樹脂を水溶性樹脂として、他樹脂との相溶性、濡れ性、架橋反応効率、被覆層の透明性等を向上させる観点から、親水性単量体であることが好ましい。親水性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物等のポリエチレングリコール鎖を有する単量体、2−アミノエチル(メタ)アクリレートおよびその塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、水への溶解性の高いメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールのモノエステル化合物等のポリエチレングリコール鎖を有する単量体(導入するポリエチレングリコール鎖の分子量は、好ましくは150〜700、特に、耐水性の観点からは150〜200、他の樹脂との相溶性や被覆層の透明性の観点からは300〜700)が好ましい。
オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体及びその他の重合性不飽和単量体からなる共重合体において、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体が占める組成モル比は、30〜70モル%であることが好ましく、40〜65モル%であることがより好ましい。
オキサゾリン基を有する樹脂は、そのオキサゾリン基含有量が5.1〜9.0mmol/gであることが好ましい。より好ましくは6.0〜8.0mmol/gの範囲内である。従来、オキサゾリン基を有する樹脂を被覆層に用いることに関し、オキサゾリン基が5.0mmol/g程度の樹脂の使用例は報告されているが(例えば、特許文献8参照)、本発明では比較的オキサゾリン基量が多い樹脂を使用する。これは、オキサゾリン基量が多い樹脂を用いることにより、被覆層に架橋構造を形成させると同時に、被覆層中にオキサゾリン基を残存させ、その結果、耐水性と柔軟性のバランスをよりコントロールしやすくなるからである。
オキサゾリン基を有する樹脂の数平均分子量は、被覆層の柔軟性と凝集力を発現させるうえでは、20000〜50000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは25000〜45000である。数平均分子量が20000未満であると、架橋構造をとった際の拘束力が大きくなることから、レトルト処理時における被覆層の柔軟性が十分に得られず、無機薄膜層への応力負荷が増大する虞がある。一方、数平均分子量が50000を超えると、被覆層の凝集力が十分でないことから、耐水性が低下する虞がある。
前記被覆層中のオキサゾリンを有する樹脂の含有割合は、前記被覆層用樹脂組成物中の全樹脂成分(オキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の合計)100質量%中、20〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%、さらに好ましくは40〜50質量%であるのがよい。オキサゾリンを有する樹脂の含有割合が20質量%未満であると、オキサゾリン基による耐水密着性、柔軟性の向上効果が十分に発揮されない傾向にあり、一方、70質量%を超えると、上述した(P1/P2)/Dの値が前記範囲の上限を超えやすくなる結果、被覆層の凝集力が不十分となり、耐水性が低下する虞がある。
(アクリル樹脂)
被覆層用樹脂組成物は、アクリル樹脂を含有する。アクリル樹脂としては、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレート(以下、纏めて「アルキル(メタ)アクリレート」と称することがある)を主要な成分とする水性アクリル樹脂が用いられる。水性アクリル樹脂としては、具体的には、アルキル(メタ)アクリレートを通常40〜95モル%(好ましくは45〜90モル%、より好ましくは50〜85モル%)の含有割合で含み、共重合可能でかつ特定の官能基を有するビニル単量体を通常5〜60モル%(好ましくは10〜55モル%、より好ましくは15〜50モル%)の含有割合で含む水溶性樹脂または水分散性樹脂が好ましく挙げられる。
前記アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記ビニル単量体における特定の官能基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩、水酸基、エポキシ基などが挙げられ、特に、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基などが好ましい。これらの官能基は、1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
前記水性アクリル樹脂において、アルキル(メタ)アクリレートの含有割合を40モル%以上とすることにより、塗布性、塗膜の強度、耐ブロッキング性が特に良好になる。一方、アルキル(メタ)アクリレートの含有割合を95モル%以下とし、共重合成分として特定の官能基を有する化合物を水性アクリル樹脂に5モル%以上導入することにより、水溶化ないし水分散化を容易にするとともに、その状態を長期にわたり安定化することができ、その結果、被覆層と基材フィルムとの接着性や、被覆層内での反応による被覆層の強度、耐水性、耐薬品性などの改善を図ることができる。
カルボキシル基や酸無水物基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等のほか、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、さらには無水マレイン酸等が挙げられる。
スルホン酸基またはその塩を有する前記ビニル単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらスルホン酸の金属塩(ナトリウム塩等)やアンモニウム塩等が挙げられる。
アミド基またはアルキロール化されたアミド基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、β−ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレート等が挙げられる。
アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩を有する前記ビニル単量体としては、例えば、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、およびこれらのアミノ基をメチロール化したものや、ハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、サルトン等により4級化したもの等が挙げられる。
水酸基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
前記水性アクリル樹脂には、アルキル(メタ)アクリレートおよび上述した特定の官能基を有するビニル単量体のほかに、例えば、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノ又はジアルキルエステル、フマル酸モノ又はジアルキルエステル、イタコン酸モノ又はジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシラン等を併用して含有させることもできる。
アクリル樹脂は、カルボキシル基(カルボン酸基)を有し、その酸価が40mgKOH/g以下であることが望ましい。これにより、上述したオキサゾリン基とカルボキシル基とが反応し、被覆層は部分的に架橋しながらも柔軟性を維持でき、一層の凝集力向上と無機薄膜の応力緩和が両立できる。より好ましい酸価は20mgKOH/g以下、さらに好ましい酸価は10mgKOH/g以下である。酸価が40mgKOH/gを超えると、架橋が進みすぎることによって被覆層の柔軟性が低下し、レトルト処理時の無機薄膜層への応力が増加する虞がある。
被覆層を構成する被覆層用樹脂組成物中のアクリル樹脂の含有割合は、組成物中の全樹脂成分(オキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂、および必要に応じて含有する後述のウレタン樹脂の合計)100質量%中、10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%であるのがよい。アクリル樹脂の含有割合が10質量%未満であると、耐水性、耐溶剤性の効果が十分に発揮されない場合があり、一方、60質量%を超えると、被覆層が硬くなりすぎるため、レトルト処理時の無機薄膜層への応力負荷が増大する傾向にある。
またアクリル樹脂は、被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基量[mmol]に対するカルボキシル基量(カルボン酸基量)[mmol]が0〜20mmol%になるように用いることが好ましく、より好ましくは、0〜15mmol%である。カルボキシル基量が20mmol%を超えると、被覆層形成時に架橋反応が進みすぎることによってオキサゾリン基を多量に消費してしまうことになり、無機薄膜層に対する密着性および被覆層の柔軟性が低下し、その結果、レトルト処理後のガスバリア性や密着性が不充分になる虞がある。
(ウレタン樹脂)
本発明においては、被覆層用樹脂組成物はウレタン樹脂を含有することが好ましい。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを常法に従って反応させることにより製造される水溶性または水分散性樹脂等の水性樹脂を用いることができる。特に、カルボキシル基またはその塩を含有する水性ウレタン樹脂は、水媒体との親和性が高い。なお、ウレタン樹脂の構成成分は、核磁気共鳴分析などにより特定することが可能である。
ウレタン樹脂の構成成分であるポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
ウレタン樹脂の構成成分であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
ウレタン樹脂は、カルボキシル基(カルボン酸基)を有し、その酸価が10〜40mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。これにより、ウレタン樹脂中のカルボキシル基と上述したオキサゾリン基とが反応し、被覆層は部分的に架橋しながらも柔軟性を維持でき、一層の凝集力向上と無機薄膜の応力緩和が両立できる。より好ましくは15〜35mgKOH/gの範囲内、さらに好ましくは20〜30mgKOH/gの範囲内である。
ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入するには、例えば、ポリオール成分(ポリヒドロキシ化合物)として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基を有するポリオール化合物を用いることで共重合成分として導入し、塩形成剤により中和すればよい。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのN−アルキルモルホリン類;N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミンなどのN−ジアルキルアルカノールアミン類;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
被覆層を構成する被覆層用樹脂組成物中のウレタン樹脂の含有割合は、組成物中の全樹脂成分(オキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の合計)100質量%中、10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%であるのがよい。上記範囲でウレタン樹脂を含有させることにより、耐水性の向上が期待できる。
またウレタン樹脂は、被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基量[mmol]に対するカルボキシル基量(カルボン酸基量)[mmol]が0〜20mmol%になるように用いることが好ましく、より好ましくは、0〜15mmol%である。カルボキシル基量が20mmol%を超えると、被覆層形成時に架橋反応が進みすぎることによってオキサゾリン基を多量に消費してしまうことになり、無機薄膜層に対する密着性および被覆層の柔軟性が低下し、その結果、レトルト処理後のガスバリア性や密着性が不充分になる虞がある。
なお、被覆層用樹脂組成物には、必要に応じて、本発明を損なわない範囲で、静電防止剤、滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を含有させてもよい。
被覆層の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えばコート法など従来公知の方法を採用することができる。コート法の中でも好適な方法としては、オフラインコート法、インラインコート法を挙げることができる。例えば基材フィルムを製造する工程で行うインラインコート法の場合、コート時の乾燥や熱処理の条件は、コート厚みや装置の条件にもよるが、コート後直ちに直角方向の延伸工程に送入し延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましく、そのような場合には通常50〜250℃程度の温度とすることが好ましい。
[無機薄膜層]
本発明の積層フィルムは、前記被覆層のさらにその上に無機薄膜層が積層されている態様であってもよい。つまり、本発明の積層フィルムは無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムに用いるものであるが、該無機薄膜層を予め積層した態様であってもよい。
無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20〜70%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合があり、一方、70%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2O3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
無機薄膜層の膜厚は、通常1〜800nm、好ましくは5〜500nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、800nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)など、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO2とAl2O3の混合物、あるいはSiO2とAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm〜5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却などは、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
以上のような本発明の積層フィルムは、無機薄膜層を有さない場合には無機薄膜層を積層して、無機薄膜層を有する場合にはそのままで、レトルト処理後の酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れ、かつ層間密着性が高くラミネート強度に優れたガスバリア性積層フィルム(積層体)となる。
[その他の層]
本発明の積層フィルムを用いてなる無機薄薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムには、上記基材フィルム、被覆層および無機薄膜層のほかに、必要に応じて、公知のガスバリア性積層フィルムが備えている種々の層を設けることができる。
例えば、無機薄薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムを包装材材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルムの外側(被覆層形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
さらに、無機薄薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムには、無機薄膜層または基材フィルムとヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層や他のプラスチック基材および/または紙基材を少なくとも1層以上積層していてもよい。
印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥など公知の乾燥方法が使用できる。
他方、他のプラスチック基材や紙基材としては、充分な積層体の剛性および強度を得る観点から、紙、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂および生分解性樹脂等が好ましく用いられる。また、機械的強度の優れたフィルムとする上では、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルムなどの延伸フィルムが好ましい。
特に、無機薄薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムを包装材材料として用いる場合、無機薄膜層とヒートシール性樹脂層との間に、ピンホール性や突き刺し強度などの機械特性を向上させるため、ナイロンフィルムを積層することが好ましい。ここでナイロンの種類としては、通常、ナイロン6、ナイロン66、メタキシレンアジパミド等が用いられる。ナイロンフィルムの厚みは、通常10〜30μm、好ましくは15〜25μmである。ナイロンフィルムが10μmより薄いと、強度不足になる虞があり、一方、30μmを超えると、腰が強く加工に適さない場合がある。ナイロンフィルムとしては、縦横の各方向の延伸倍率が、通常2倍以上、好ましくは2.5〜4倍程度の二軸延伸フィルムが好ましい。
本発明の積層フィルムは、被覆層および無機薄膜層以外の上述した各層を有する態様をも包含する。
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
各実施例、比較例で用いた評価方法および物性測定方法は以下の通りである。
(1)評価用ラミネート積層体の作製
実施例および比較例で得られた各積層フィルムの無機薄膜層の上に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」を13.5:1(質量比)の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、厚さ15μmのナイロンフィルム(東洋紡績株式会社製「N1100」)を貼り合わせ、次いで該ナイロンフィルムの上に、上記と同様のウレタン系2液硬化型接着剤を用いてドライラミネート法により、熱接着性樹脂層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製「P1147」)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネートガスバリア性積層体(以下「ラミネート積層体」と称することもある)を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。
(2)水蒸気透過度の評価方法
上記(1)で作製したラミネート積層体について、JIS−K7129−B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN−W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度100%RHの雰囲気下で、常態での水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、ラミネート積層体の基材フィルム側から熱接着性樹脂層側に水蒸気が透過する方向で行った。
他方、上記(1)で作製したラミネート積層体に対して、温度131℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、40℃で24時間乾燥し、得られたレトルト処理後のラミネート積層体について、上記と同様にして水蒸気透過度(レトルト処理後)を測定した。
(3)酸素透過度の評価方法
上記(1)で作製したラミネート積層体について、JIS−K7126−2の電解センサー法(付属書A)に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/20」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で、常態での酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、ラミネート積層体の基材フィルム側から熱接着性樹脂層側に酸素が透過する方向で行った。
他方、上記(1)で作製したラミネート積層体に対して、温度131℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、40℃で24時間乾燥し、得られたレトルト処理後のラミネート積層体について、上記と同様にして酸素透過度(レトルト処理後)を測定した。
(4)ラミネート強度の評価方法
上記(1)で作製したラミネート積層体を幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT−II−500型」)を用いてラミネート強度(常態)を測定した。なお、ラミネート強度の測定は、引張速度を200mm/分とし、実施例および比較例で得られた各積層フィルムの無機薄膜層(ガスバリア性積層フィルム層)とナイロンフィルム層との層間に水をつけて剥離角度90度で剥離させたときの強度を測定した。
他方、上記(1)で作製したラミネート積層体に対して、温度131℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、直ちに、得られたレトルト処理後のラミネート積層体から上記と同様にして試験片を切り出し、上記と同様にしてラミネート強度(レトルト処理後)を測定した。
(5)被覆層の全反射赤外吸収スペクトルの測定方法
各実施例および比較例において、基材フィルム上に被覆層を形成した段階で得られた各フィルムの被覆層の面について、全反射吸収赤外分光法で全反射赤外吸収スペクトルを測定し、1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク(オキサゾリン由来のピーク)のピーク強度(P1)と、1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク(ポリエチレンテレフタレート由来のピーク)のピーク強度(P2)を求め、その強度比(P1/P2)を算出した。
ピーク強度の算出に際しては、ピーク強度の比(P1/P2)は各ピークの高さの比に基づき求めた。なお、1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークについては、ピークがショルダーになることから、1600cm-1と1800cm-1を結ぶ線をベースラインとし、一方、1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのベースラインについては、ピークの両側の袖を結ぶ線とした。
(測定条件)
装置:Varian社製「FTS−60A/896」
1回反射ATRアタッチメント:SPECTRA TECH社製「Silver Gate」
光学結晶:Ge
入射角:45°
分解能:4cm-1
積算回数:128回
なお、被覆層の膜厚が薄く十分な感度が得られない場合(実施例6および比較例4)は、使用する1回反射アタッチメントを、より入射角が大きい(65度)アタッチメント(エス・ティ・ジャパン社製「VeeMax」)に代えて測定した。
(6)被覆層の膜厚(D)の測定方法
各実施例および比較例において基材フィルム上に被覆層のみを積層した段階で得られた積層フィルムを試料とし、該試料を斜め切削して得られた斜め切削面を観察し、被覆層表面から被覆層/基材フィルム界面までの高さ測定を走査型プローブ顕微鏡(SPM)で行うことにより、被覆層の膜厚(D)(nm)を求めた。
なお、試料の斜め切削は、ダイプラウインテス社製「SAICAS NN04」を使用し、切刃にダイアモンドナイフを用い、水平速度約500nm/秒、垂直速度約20nm/秒の条件で実施した。
斜め切削面の観察は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「SPA300(Nanonaviプローブステーション)」)を使用して(カンチレバー:同社から提供されるDF3又はDF20を使用、観察モード:DFMモード)実施した。詳しくは、被覆層表面と斜め切削面とが1視野内に入るようにして観察し、被覆層表面の平坦化処理を行うことにより、観察像の傾き補正を実施した。平坦化処理は、SPM付属のソフトウエアの機能であるマニュアル傾き補正を使用し、X方向・Y方向の傾き補正を行った。なお、被覆層/基材フィルム界面は観察視野全体の平坦化処理(ソフトウエアの機能である、2次傾き補正等)を行った像から決定した。被覆層/基材フィルムの界面は、被覆層と基材フィルムの物性が異なるため、切削角度が界面で変化すること、SPMによる位相像において被覆層と基材フィルムでコントラストが変化すること、被覆層と基材フィルムでは切削面の凹凸状態が変化すること、などから容易に認識することが可能であった。
上記(5)、(6)の測定で得られた赤外吸光度比(P1/P2)および被覆層の厚み(D)のデータを用いて、各実施例および比較例で得られた積層フィルムの(P1/P2)/Dの値を求めた。
(7)オキサゾリン基を有する樹脂のオキサゾリン基量
オキサゾリンを含有する樹脂を凍結乾燥し、これを核磁気共鳴分析計(NMR)(ヴァリアン社製「ジェミニ−200」)を用いて1H−NMR分析し、オキサゾリン基に由来する吸収ピーク強度と、その他のモノマーに由来する吸収ピーク強度とを求め、それらピーク強度からオキサゾリン基量(mmol/g)を算出した。
各実施例、比較例において被覆層の形成に用いた各材料は以下のようにして調製した。
(オキサゾリン基を有する樹脂(A−1))
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール460.6部を仕込み、緩やかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート84部からなる単量体混合物と、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業株式会社製「ABN−E」)21部およびイソプロピルアルコール189部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下漏斗から2時間かけて滴下して反応させ、滴下終了後も引き続き5時間反応させた。反応中は窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。その後、反応液を冷却し、固形分濃度25%のオキサゾリン基を有する樹脂(A−1)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(A−1)のオキサゾリン基量は4.3mmol/gであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した数平均分子量は20000であった。
(オキサゾリン基を有する樹脂(A−2))
上記オキサゾリン基を有する樹脂(A−1)の合成と同様の方法で、組成(オキサゾリン基量および分子量)の異なる固形分濃度10%のオキサゾリン基を有する樹脂(A−2)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(A−2)のオキサゾリン基量は7.7mmol/gであり、GPCにより測定した数平均分子量は40000であった。
(アクリル樹脂(B−1))
アクリル樹脂として、市販のアクリル酸エステル共重合体の25質量%エマルジョン(ニチゴー・モビニール社製「モビニール(登録商標)7980」)を用意した。このアクリル樹脂(B−1)の酸価(理論値)は4mgKOH/gであった。
(ウレタン樹脂(C−1))
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管および温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン72.96部と、ジメチロールプロピオン酸12.60部と、ネオペンチルグリコール11.74部と、数平均分子量2000のポリエステルジオール112.70部と、溶剤としてアセトニトリル85.00部およびN−メチルピロリドン5.00部とを投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次いで、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.03部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液(イソシアネート基末端プレポリマー)を得た。
次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450部を添加し、25℃に調整して2000min-1で攪拌混合しながら、上記で得られたポリウレタンプレポリマー溶液(イソシアネート基末端プレポリマー)の全量を添加して水分散させた。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分濃度30%の水溶性ポリウレタン樹脂(C−1)を調製した。得られたウレタン樹脂(C−1)の酸価(理論値)は25mgKOH/gであった。
(実施例1)
(1)塗布液(被覆層用樹脂組成物)の調製
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(被覆層用樹脂組成物)を作製した。なお、得られた塗布液中のオキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の固形分換算の質量比は表1に示す通りである。
水 67.53質量%
イソプロパノール 5.00質量%
オキサゾリン基を有する樹脂(A−2) 20.00質量%
アクリル樹脂(B−1) 4.80質量%
ウレタン樹脂(C−1) 2.67質量%
(2)ポリエステル基材フィルムの製造および被覆層の形成
極限粘度0.62(30℃、フェノール/テトラクロロエタン(質量比)=60/40)のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を予備結晶化した後、本乾燥し、Tダイを有する押出機を用いて280℃で押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。次に、得られた無定形シートを加熱ロールと冷却ロールとの間で縦方向に100℃で4.0倍に延伸し、一軸延伸PETフィルムを得た。
次に、得られた一軸延伸PETフィルムの片面に、上記(1)で調製した塗布液をファウンテンバーコート法により塗布した。その後、乾燥しながらテンターに導き、予熱温度100℃で溶媒を揮発、乾燥させた。次いで、温度120℃で横方向に4.0倍に延伸し、6%の横方向の弛緩を行いながら、225℃で熱固定処理を行うことにより、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(プラスチック基材フィルム)の片面に被覆層が形成された積層フィルムを得た。
なお、この積層フィルムについて全反射赤外吸収スペクトル測定および膜厚測定を行った。結果を表1に示す。
(3)無機薄膜層の形成(蒸着)
次に、上記(2)で得られた積層フィルムの被覆層面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm〜5mm程度の粒子状SiO2(純度99.9%)とA12O3(純度99.9%)とを用いた。ここで複合酸化物層の組成は、SiO2/A12O3(質量比)=60/40であった。またこのようにして得られたフィルム(無機薄膜層/被覆層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO2/A12O3複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。
以上のようにして、基材フィルムの上に被覆層および無機薄膜層を備えた本発明の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、上記の通り、酸素透過度、水蒸気透過度およびラミネート強度を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2〜5、7〜9、参考例1、比較例1〜4)
塗布液(被覆層用樹脂組成物)を調製するにあたり、オキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の固形分換算の質量比が表1に示す通りとなるよう各材料の使用量を変更し(このとき、塗工液全量に占めるイソプロパノールの比率は、実施例1と同様、5.00質量%とした)、あるいは被覆層の膜厚が表1に示す通りとなるよう塗布液の塗布量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、酸素透過度、水蒸気透過度およびラミネート強度を評価した。結果を表1に示す。
本発明により、常態においては勿論のことレトルト処理を施した後にも、ガスバリア性に優れ、層間剥離が生じない良好な密着性(ラミネート強度)を有する、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムを提供することができる。かかるガスバリア性積層フィルムは、製造が容易で経済性や生産安定性に優れ、均質の特性が得られやすいという利点を有している。したがって、かかるガスバリア性積層フィルムは、レトルト用の食品包装に止まらず、各種食品や医薬品、工業製品の包装用途のほか、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途にも広く用いることができる。

Claims (7)

  1. ポリエステル基材フィルムの少なくとも片面に被覆層が設けられてなり、
    前記被覆層は、オキサゾリン基を有する樹脂、カルボキシル基を有するアクリル樹脂およびカルボキシル基を有するウレタン樹脂を必須成分として含む被覆用樹脂組成物から形成されており、前記アクリル樹脂のカルボキシル基量[mmol]は、前記被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基量[mmol]に対して0〜20mmol%であり、前記ウレタン樹脂のカルボキシル基量[mmol]は、前記被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基量[mmol]に対して0〜20mmol%であり、該被覆層の膜厚(D)は30〜150nmであり、かつ該被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおいて1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P1)と1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P2)との比(P1/P2)と前記被覆層の膜厚(D)とが下記式
    0.035≦(P1/P2)/D≦0.15
    に示す関係を満たすことを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基を有する樹脂は、そのオキサゾリン基量が5.1〜9.0mmol/gである請求項に記載の積層フィルム。
  3. 前記被覆層用樹脂組成物中のウレタン樹脂酸価が10〜40mgKOH/gである請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記被覆層用樹脂組成物中のアクリル樹脂酸価が40mgKOH/g以下である請求項のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記オキサゾリン基を有する樹脂、前記アクリル樹脂および前記ウレタン樹脂の合計100質量%中、オキサゾリン基を有する樹脂が20〜70質量%、アクリル樹脂が10〜60質量%、ウレタン樹脂が10〜60質量%である請求項のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 前記被覆層の上に無機薄膜層が積層されてなる請求項1〜のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. 前記無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層である請求項に記載の積層フィルム。
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