1.ポリオレフィン系樹脂
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂[1]としては、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種のオレフィンの単独重合体、少なくとも2種のオレフィンのランダム共重合体、少なくとも2種のオレフィンのブロック共重合体などが挙げられ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレンーブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリ−4−メチルペンテンなどが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用することができる。耐熱性、剛性の観点からはプロピレン系(共)重合体が好ましく、低温耐衝撃性、柔軟性の観点からはエチレン系(共)重合体が好ましい。
プロピレン系(共)重合体及びエチレン系(共)重合体のメルトマスフローレート(以後、MFRと略す)は、JIS K 7210:1999(プロピレン系(共)重合体の場合)又はJIS K 6922−1(エチレン系(共)重合体の場合)の方法に準拠して測定した場合、1〜100g/10min、好ましくは3〜50g/10min、更に好ましくは5〜30g/10minとなる範囲から選択するのがよい。この範囲にある場合、溶融成形性と機械的強度のバランスが良い成形品が得られるため好ましい。
2.ブロック共重合体水素化物[3]
本発明に使用するブロック共重合体水素化物[3]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[2]の、全不飽和結合の90%以上を水素化した、ブロック共重合体水素化物[3]である。
本発明に係るブロック共重合体水素化物[3]の前駆体であるブロック共重合体[2]は、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する。
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするものであり、重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。また、重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分としては、鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができ、その含有量は通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少なすぎると、本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物合の耐熱性が低下する恐れがある。
複数の重合体ブロック[A]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするものであり、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位が上記範囲にあると、本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物の低温での耐衝撃性に優れる。また、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができ、その含有量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が増加すると、低温での柔軟性が低下し、本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物の低温での耐衝撃性が低下する恐れがある。
重合体ブロック[B]が複数有る場合には、重合体ブロック[B]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、工業的入手のし易さ、耐衝撃性の観点からスチレンが特に好ましい。
鎖状共役ジエン系化合物としては、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物や環状ビニル化合物が挙げられ、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基を有するビニル化合物及び/又は不飽和の環状酸無水物又は不飽和イミド化合物を含んでも良いが、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテンなどの鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサンなどの環状オレフィンなどの、極性基を含有しないものが吸湿性の面で好ましく、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
ブロック共重合体[2]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。重合体ブロック[A]及び/又は重合体ブロック[B]が複数存在する際、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)とした時、該Mw(A1)とMw(A2)との比(Mw(A1)/Mw(A2))、及び、該Mw(B1)とMw(B2)との比(Mw(B1)/Mw(B2))は、それぞれ2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
ブロック共重合体[2]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[2]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体、及び、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。
ブロック共重合体中[2]の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとした時に、wAとwBとの比(wA:wB)は、30:70〜60:40、好ましくは35:65〜55:45、より好ましくは40:60〜50:50である。wAが高過ぎる場合は、本発明で使用するブロック共重合体水素化物[3]の耐熱性は高くなるが、柔軟性が低く、繊維状無機充填材含有樹脂組成物の耐衝撃性が低下する恐れがあり、wAが低過ぎる場合は、耐熱性が劣る。
ブロック共重合体[2]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[1]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
ブロック共重合体[2]の製造方法は、例えば3つの重合体ブロックを有するブロック共重合体を製造する場合、重合体ブロック[A]を形成させるモノマー成分として、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a1)を重合させる第1工程と、重合体ブロック[B]を形成させるモノマー成分として、鎖状共役ジエン系化合物を含有するモノマー混合物(b1)を重合させる第2工程と、重合体ブロック[A]を形成させるモノマー成分として、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a2)(ただし、モノマー混合物(a1)とモノマー混合物(a2)は同一でも異なっていてもよい。)を重合させる第3工程を、有する方法;重合体ブロック[A]を形成させるモノマー成分として、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a1)を重合させる第1工程と、重合体ブロック[B]を形成させるモノマー成分として、鎖状共役ジエン系化合物を含有するモノマー混合物(b1)を重合させる第2工程と、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法などがある。
上記モノマー混合物を用いてそれぞれの重合体ブロックを重合する方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合などのいずれを用いてもよい。ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などを、リビング重合により行う方法、特にリビングアニオン重合により行う方法を用いた場合に、重合操作及び後工程での水素化反応が容易になる。
重合は、重合開始剤の存在下、通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜80℃、特に好ましくは20℃〜70℃の温度範囲において行う。リビングアニオン重合の場合は、開始剤として、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウムなどのモノ有機リチウム; ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサンなどの多官能性有機リチウム化合物;などが使用可能である。
重合反応形態は、溶液重合、スラリー重合などのいずれでも構わないが、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易である。この場合、各工程で得られる重合体が溶解する不活性溶媒を用いる。使用可能な不活性溶媒としては、たとえば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素類; シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂環式炭化水素類; ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;などが挙げられる。中でも脂環式炭化水素類を用いると、後述する水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用でき、ブロック共重合体の溶解性も良好であるため好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒の使用量は、全使用モノマー100重量部に対して、通常200〜2000重量部である。
それぞれのモノマー混合物が2種以上の成分からなる場合、或る1成分の連鎖だけが長くなるのを防止するために、ランダマイザーなどを使用することができる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物などをランダマイザーとして使用するのが好ましい。
使用可能なルイス塩基化合物としては、たとえば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテルなどのエーテル化合物; テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの第3級アミン化合物; カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド化合物; トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明に係るブロック共重合体水素化物[3]は、上記のブロック共重合体[2]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものであり、その水素化率は通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物の耐熱性、耐光性が良好である。ブロック共重合体水素化物[3]の水素化率は、1H−NMRによる測定において求めることができる。
特に、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、耐光性、耐酸化性が高くなると言う効果が得られる。
また、芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、得られる重合体水素化物ブロック[A’]のガラス転移温度が高くなり、架橋せずとも合わせガラスの接着材としての十分な耐熱性が発現するという効果が得られる。
不飽和結合の水素化方法や反応形態などは特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような好ましい水素化方法としては、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能であり、水素化反応は有機溶媒中で行うのが好ましい。
使用可能な不均一系触媒は、金属又は金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、たとえば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素、フッ化カルシウムなどが挙げられる。触媒の担持量は、触媒と担体との合計量に対して通常0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲である。担持型触媒としては、たとえば、比表面積が100〜500m2/g、平均細孔径100〜1000Å、好ましくは200〜500Åを有するものが好ましい。上記の比表面積の値は窒素吸着量を測定し、BET式を用いて算出した値であり、平均細孔径の値は水銀圧入法により測定した値である。
使用可能な均一系触媒としては、たとえば、ニッケル、コバルト、チタン又は鉄化合物と有機金属化合物(たとえば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウムなどの有機金属錯体触媒などを用いることができる。
ニッケル、コバルト、チタン又は鉄化合物としては、たとえば、各種金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物などが用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどのハロゲン化アルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの水素化アルキルアルミニウムなどが挙げられる。
有機金属錯体触媒としては、たとえば、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)鉄、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケルなどの遷移金属錯体が挙げられる。
これらの水素化触媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。水素化触媒の使用量は、重合体100重量部に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.05〜50重量部、より好ましくは0.1〜30重量部である。
水素化反応温度は、通常10℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃であるときに水素化率が高くなり、分子切断も減少する。また水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPa、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaであると水素化率が高くなり、分子鎖切断も減少し、操作性にも優れる。
上記した方法で得られるブロック共重合体水素化物[3]は、水素化触媒及び/又は重合触媒を、ブロック共重合体水素化物[3]を含む反応溶液からたとえば濾過、遠心分離などの方法により除去した後、反応溶液から回収される。反応溶液からブロック共重合体水素化物[2]を回収する方法としては、たとえば、ブロック共重合体水素化物[3]が溶解した溶液から、スチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法、減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法、ブロック共重合体水素化物[3]の貧溶媒中に溶液を注いで析出、凝固させる凝固法などの公知の方法を挙げることができる。
回収されたブロック共重合体水素化物[3]の形態は限定されるものではないが、その後の成形加工やシリル化変性反応に供し易いようにペレット形状とするのが通常である。直接脱溶媒法を用いる場合は、たとえば、溶融状態のブロック共重合体水素化物をダイからストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーでカッティングしてペレット状にして各種の成形に供することができる。凝固法を用いる場合は、たとえば、得られた凝固物を乾燥した後、押出機により溶融状態で押し出し、上記と同様にペレット状にしてシリル化変性反応に供することができる。
ブロック共重合体水素化物[3]の分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体水素化物[3]の分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物の機械強度や耐熱性が向上する。
3.アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]
本発明で、より好適に使用されるアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]は、上記ブロック共重合体水素化物[3]にアルコキシシリル基が導入されたものである。アルコキシル基は、ブロック共重合体水素化物[3]とガラスなどの繊維状無機充填材[5]の界面をより強固に接着させるものであり、上記ブロック共重合体水素化物[3]に直接結合していても、アルキレン基などの2価の有機基を介して結合していても良い。
アルコキシシリル基の導入方法は、通常、上記のブロック共重合体水素化物[3]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法が採用される。アルコキシシリル基の導入量が多すぎると、微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋度が高くなり、ガラスなどの繊維状無機充填材[5]との接着性が低下し易くなるという問題を生じる。この観点から、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]を繊維状無機充填材含有樹脂組成物に用いる場合、アルコキシシリル基の導入量は、通常、ブロック共重合体水素化物[3]の重量に対し、0.1〜10g/g、好ましくは0.2〜5g/g、より好ましくは0.3〜3g/gである。アルコキシシリル基の導入量は、1H−NMRスペクトル(導入量が少ない場合は積算回数を増やす)にて算出される。アルコキシシリル基の導入量が少なすぎると繊維状無機充填材含有樹脂組成物の耐衝撃性の顕著な改善効果が損なわれるため好ましくない。
エチレン性不飽和シラン化合物としては、上記のブロック共重合体水素化物[3]とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物[3]にアルコキシシリル基を導入するものであれば特に限定されないが、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−ノルボルネン−5−イルトリメトキシシランなどのエチレン性不飽和シラン化合物から選択される少なくとも1種類のものを用いることができる。本発明においては、中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好適に用いられる。
これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、上述したアルコキシシリル基の導入量になる量を用いれば良く、ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。
過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物から選択される少なくとも1種類のものを用いることができる。本発明においては、中でも、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用され、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシドなどが好適に用いられる。
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。過酸化物の量が多すぎるとアルコキシシリル基の導入反応時にブロック共重合体水素化物[3]の分解が促進されて低分子量成分が多く生成して不都合であり、逆に少なすぎるとアルコキシシリル基の導入量が不十分であり、いずれも好ましくない。
上記のブロック共重合体水素化物[3]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は、過熱混練機や反応器を用いて行うことができる。例えば、ブロック共重合体水素化物[3]とエチレン性不飽和シラン化合物と過酸化物との混合物を、二軸混練機にてブロック共重合体水素化物[3]の溶融温度以上で加熱溶融させて、所望の時間混練することにより変成することができる。本発明のブロック共重合体水素化物[3]では、その温度は、通常180〜240℃、好ましくは190〜230℃、より好ましくは200〜220℃である。加熱混練時間は、通常0.1〜15分、好ましくは0.2〜10分、より好ましくは0.3〜5分程度である。二軸混練機、短軸押出し機などの連続混練設備を使用する場合は、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
本発明で使用するアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、重合体主成分の分子量はブロック共重合体水素化物[3]の分子量と顕著には変わらないが、過酸化物の存在下で変性反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応も併発し、分子量分布は大きくなる。テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常(30,000〜200,000)、好ましくは(40,000〜150,000)、より好ましくは(50,000〜120,000)、分子量分布(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは2.5以下特に好ましくは2.0以下である。Mw及びMw/Mnがこの範囲であると、本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物としての良好な機械的強度や引張り伸びが維持される。
上記のようにして得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]は、ガラス、金属酸化物、金属などとの接着性が改善され、繊維状無機充填材含有樹脂組成物として使用した場合、繊維状無機充填材と樹脂との接着がより強固になり、繊維状無機充填材含有樹脂組成物の信頼性評価で120℃、100%RHのスチーム環境で30分程度の暴露された後も、機械的強度や耐衝撃性を維持することができ、好ましく適用される。
4.繊維状無機充填材[5]
本発明における繊維状無機充填材としては、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、炭素繊維、セラミックファイバー、金属繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられる。これらの中では、工業的入手の容易さ及び機械的強度の観点からガラス繊維が好ましい。
繊維状無機充填材の形態は、樹脂との混合作業上、また、分散性、繊維強化効果の点でその平均径が通常1〜30μm、好ましくは5〜15μm、長さが1〜10mmのものが好ましく用いられる。繊維状無機充填材は補強強化材として、機械的強度、剛性、寸法安定性などを付与するものであるが、径が1μm未満では凝集し易く分散性が良好でなく、30μmを超える場合はアスペクト比(L/D)が小さくなり、繊維強化材としての補強効果が低下する。また、繊維長さが1mm未満では繊維強化材としての補強効果が小さく、10mmを超える場合は繊維状無機充填材含有樹脂組成物の溶融流動性が低下し、成形性が劣るため好ましくない。このような形態を有する繊維状無機充填材としては、例えばガラス繊維の場合では、チョップドストランド、カットファイバー、ミルドファイバーなどと称されるものが適用できる。
本発明において繊維状無機充填材は、その表面をステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸、パラフィン、ワックス、有機シラン、有機チタネート、エポキシ化合物などで表面処理を施すこともできる。繊維状無機充填材含有樹脂組成物にアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]を用いる場合は、有機シラン、エポキシ化合物のような繊維状無機充填材表面の−OH基と反応している表面処理があると、繊維状無機充填材表面の−OH基とブロック共重合体水素化物[4]のアルコキシシリル基の反応が阻害されるため、アルコキシシリル基を導入している効果が相殺されてしまうので、繊維状無機充填剤表面処理剤に注意が必要となる。尚、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸、パラフィン、ワックス、有機チタネートなど、繊維状無機充填材表面の−OH基と反応してない表面処理であれば問題はない。
4.繊維状無機充填材含有樹脂組成物の配合割合
本発明における樹脂成分の配合割合は、ポリオレフィン系重合体[1]とブロック共重合体水素化物[3]の合計を100重量%とした場合、ポリオレフィン系重合体[1] 15〜85重量%に対し、ブロック共重合体水素化物[3] 85〜15重量%である。
アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]は、ブロック共重合体水素化物[3]の全部又は一部を代替して使用することができる。
ブロック共重合体水素化物[3]の全量をアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]で代替する場合、ポリオレフィン系重合体[1]とアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の合計を100重量%とした場合、ポリオレフィン系重合体[1] 15〜85重量%に対し、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4] 85〜15重量%である。
ブロック共重合体水素化物[3]の一部を、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]で代替して使用する場合、ポリオレフィン系重合体[1]とブロック共重合体水素化物[3]及びアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の合計100重量%の内訳は、ポリオレフィン系重合体[1] 15〜85重量%に対し、ブロック共重合体水素化物[3]及びアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の合計が85〜15重量%である。また、ブロック共重合体水素化物[3]とアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の配合割合は任意であるが、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の配合割合が多いほど、得られる繊維状無機充填材含有樹脂組成物の耐衝撃性が高くなるため好ましい。
本発明における樹脂成分に対する繊維状無機充填材[5]の配合割合は、ポリオレフィン系重合体[1]とブロック共重合体水素化物[3]及びアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の合計100重量部に対して繊維状無機充填材[5] 10〜100重量部、好ましくは15〜80重量部、より好ましくは25〜50重量部である。繊維状無機充填材の配合量が10重量部以下では繊維状無機充填材含有樹脂組成物の機械的強度の補強が十分でなく、100重量部以上では分散が困難で、成形性が低下するため好ましくない。
5.その他の配合剤
本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物は、耐光性や耐熱性などを向上させるための光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、熱伝導性付与材、赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤などを配合することができ、単独でも、2種以上併用してもよい。
これらの配合剤の量は、ポリオレフィン系重合体[1]とブロック共重合体水素化物[3]及びアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の合計100重量部に対して、通常10重量部以下である。
[光安定剤]
本発明において、繊維状無機充填材含有樹脂組成物の耐光性を向上させるための光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、構造中に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基、あるいは、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基などを有している化合物が挙げられる。
具体的には、ホルムアルデヒド重縮合物・{2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン・[N,N’ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサン−1,6−ジイルジアミン]・モルフォリン重合物}及びギ酸の反応生成物(CAS番号:193098−40−7)、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−アルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスアルキレン脂肪酸アミド類、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕が好ましく、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物などが例示される。
ヒンダードアミン系耐光安定剤の量は、ポリオレフィン系重合体[1]とブロック共重合体水素化物[3]及びアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の合計100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜2.5重量部、より好ましくは0.04〜1.0重量部である。ヒンダードアミン系耐光安定剤の量がこれより少ない場合は、繊維状無機充填材含有樹脂組成物の耐候性が不十分な場合があり、これより多い場合は、繊維状無機充填材含有樹脂組成物を成形する溶融成形加工時に、押出し機のTダイや冷却ロールの汚れが酷かったり、射出成形での金型に汚れが付着して加工性に劣る場合がある。
[紫外線吸収剤]
本発明において、繊維状無機充填材含有樹脂組成物の耐光性を更に向上させるために、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤を配合することができる。
紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデカロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなど; サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなど; ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジクミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]など;が挙げられる。
紫外線吸収剤の量は、ポリオレフィン系重合体[1]とブロック共重合体水素化物[3]及びアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の合計100重量部に対して、通常0.01〜2重量部、好ましくは0.02〜1重量部、より好ましくは0.04〜0.5重量部である。紫外線吸収剤は、ヒンダードアミン系耐光安定剤と併用することにより、更に耐光性を改善することができるが、上記範囲を超えて過剰に添加しても、更なる改善は認められない。
[酸化防止剤]
本発明において、繊維状無機充填材含有樹脂組成物に上記ヒンダードアミン系耐光安定剤、紫外線吸収剤の他に、更に酸化防止剤を配合することにより、より熱安定性を向上することもできる。添加することができる酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、着色がより少ないリン系酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤の具体例として、例えば、リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物; 4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物; 6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン、6−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピンなどの化合物を挙げることができる。
フェノ−ル系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなど化合物を挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどなど化合物を挙げることができる。
酸化防止剤の量は、ポリオレフィン系重合体[1]とブロック共重合体水素化物[3]及びアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の合計100重量部に対して、通常0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。酸化防止剤は、ヒンダードアミン系耐光安定剤と併用することにより、更に耐光性を改善することもできるが、上記範囲を超えて過剰に添加しても、更なる改善は認められない。
6.繊維状無機充填材含有樹脂組成物
本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物の調製は、樹脂組成物調製法として一般に用いられる公知の方法により容易に調製される。例えば、ポリオレフィン系重合体[1]、ブロック共重合体水素化物[3]及び/又はアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]、及び、繊維状無機充填材[5]、所望により光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などをタンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサーなどの混合機を使用してドライブレンドした後、単軸押出機、二軸押出機などの連続式溶融混練機により溶融混合し、押出してペレットを調製することによって繊維状無機充填材含有樹脂組成物を得ることができる。また、構成成分の一部をドライブレンドして単軸押出機、二軸押出機などに供給し、構成成分の残部の内、繊維状無機充填材などの溶融混合時に破砕されやすい成分を該押出機の中間部からサイドフィードすることにより供給するなどの方法によりペレットを調製して繊維状無機充填材含有樹脂組成物を得ることができる。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレットは、一般的に用いられる射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などによって成形品に成形することができる。本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物からなる成形品は、高剛性、寸法安定性、成形加工性、耐熱性、耐衝撃性などに優れた特徴を有しているため、例えば、インパネロア、エアクリーナーハウジング、オーバーフェンダー、カウルルーバー、カーヒーターケース、クーリングファン、グリルガード、サイドステップ、サイドプロテクター、サイドモール、サイドロアスカート、シートバック、トリム、バッテリーケース、バンパー、バンパービーム、ヒーターケース、ヒューズボックス、ファンシュラウド、フェンダー、フロントグリル、ホイールキャップ、ラジエータータンク、ランプハウジング、リアスポイラー、ルーフレールなどの自動車部品; コイルボビン、コネクター、液晶テレビ・コンパクトカメラ・電動工具・ビデオカメラ・電子レンジ・電気釜・ポット・掃除機・パーソナルコンピューター・複写機・プリンターなどのハウジング、モーターカバー、モーターファンなどの電気部品; タンク、パイプ、建築用型枠などの構造物; IC・LSIなどの半導体やハイブリッドIC・液晶表示素子・発光ダイオードなどの電子部品と接触する器材、ウェハ・液晶基板・これらに透明電極層や保護層などを積層したものなどの製造中間体と接触する器材、電子部品の製造工程において製造中間体の処理に用いる薬液や超純水などの処理液と接触する器材など、具体的には、タンク、トレー、キャリア、ケース、ウェハーシッパー、FOUP、FOSB、キャリアテープ、セパレーションフィルム、薬液パイプ、チューブ、バルブ、流量計、フィルター、ポンプ、サンプリング容器、ボトル、アンプルなどの電子部品処理用器材; メス・鉗子・ガーゼ・コンタクトレンズ・医療用器具を保管するトレー及びその蓋などの滅菌用容器などの医療用容器; シリンジ、プレフィルドシリンジ、アンプル、バイアルなどの医薬品容器; バイオリアクター、シャーレ、トレーなどの培養用容器などに有用である。
また、本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物からなる成形品あるいは繊維状無機充填材を含有しない樹脂組成物は、電子レンジ容器、哺乳瓶、インスタント食品容器、ボトル、食器などの食品容器; 容器・哺乳瓶・ボトルなどのキャップ、シャーレ・トレーなどの蓋などの医療用容器用蓋などにも有用である。
更に、本発明の繊維状無機充填材含有樹脂組成物に使用するブロック共重合体水素化物[3]は、透明で単独でも耐蒸気滅菌性を有しているため、輸液用バッグ、バイアル、シリンジ用プランジャーロッド、スクイズ性点眼薬容器などの医薬品容器; バイオプレート、ピペット、マイクロテストチューブ、チューブ、コネクター、計量容器などの医療用実験器具などとしても有用である。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。以下に各種物性の測定法を示す。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[3]の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、1H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)引張破壊応力
樹脂組成物及び繊維状無機充填材含有樹脂組成物を射出成形して試験片を作成し、JIS K 7164に準拠して引張り試験を行い、破断時の応力を測定した。
(4)曲げ弾性率
樹脂組成物及び繊維状無機充填材含有樹脂組成物を射出成形して試験片を作成し、JIS K 7171に準拠して曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。
(5)荷重たわみ温度
樹脂組成物及び繊維状無機充填材含有樹脂組成物を射出成形して試験片を作成し、JIS K 7191−2に準拠して、B法、荷重:0.45MPaの条件で荷重たわみ温度を測定した。
(6)アイゾット衝撃値
樹脂組成物及び繊維状無機充填材含有樹脂組成物を射出成形して試験片を作成し、JIS K 7062に準拠して、ノッチ加工した試験片でアイゾット衝撃値を測定した。測定温度は常温(23℃)である。試験片は常温(23℃)で保管したもの、及び恒温槽内で−10℃に24時間保管したものを取り出し直後に測定して比較した。
[参考例1]
ブロック共重合体水素化物[3]−1の合成
充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、n−ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.68部を加えて重合を開始した。攪拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点で重合転化率は99.5%であった。
次に、脱水イソプレン50.0部を加えそのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止し、ブロック共重合体[2]−1を含む溶液を得た。
得られたブロック共重合体[2]−1の重量平均分子量(Mw)は61,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
次に、上記共重合体を含む溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(製品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)3.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、更に溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
反応終了後、冷却して脱圧し、水素化触媒及びブロック共重合体水素化物[3]−1を含む溶液を得た。
水素化反応後のブロック共重合体水素化物[3]−1の重量平均分子量(Mw)は65,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
次いで、上記共重合体水素化物を含む溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Irganox(登録商標) 1010」、BASFジャパン社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーでカットしてブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット93部を得た。得られたブロック共重合体水素化物[3]−1の重量平均分子量(Mw)は64,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。水素化率はほぼ100%であった。
[参考例2]
アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1の合成
参考例1で得られたブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標) 25B」、日油社製)0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1のペレット97部を得た。
得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水したメタノール400部中に注いでアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1を凝固させ、濾別した後、25℃で真空乾燥してアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1のクラム9.5部を単離した。FT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH3基及び825、739cm−1にSi−CH2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm−1と異なる位置に観察された。また、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)では3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[3]−1の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.7部が結合したことが確認された。
[参考例3]
ブロック共重合体水素化物[3]−2の合成
重合段階でモノマーとして、スチレン17.5部、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.50部、イソプレン65.0部、及び、スチレン17.5部をこの順に反応系に添加して重合する以外は参考例1と同様にして、ブロック共重合体水素化物[3]−2のペレット90部を得た。得られたブロック共重合体水素化物[3]−2の重量平均分子量(Mw)は87,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。水素化率はほぼ100%であった。
[参考例4]
アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−2の合成
参考例3で得られたブロック共重合体水素化物[3]−2のペレットを使用する以外は参考例2と同様にして、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−2のペレット95部を得た。
得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−2は、参考例2と同様に分析した結果、FT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH3基及び825、739cm−1にSi−CH2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm−1と異なる位置に観察され、また、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)では3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[3]−2の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
[実施例1]
ポリプロピレン(製品名「ノバテック(登録商標)PP MA3」、日本ポリプロ社製;MFR=11g/10min)80部、参考例1で得られたブロック共重合体水素化物[3]−1 20部、及びガラス繊維(チョップドストランド、製品名「ECS03−631K」、繊維径:13μm、繊維長:3mm、セントラル硝子社製)30部をミキサー(製品名「DMV−50」、ダイゴー精機社製)で混合した後、二軸押出し機(製品名「TEM−37B」、東芝機械製)を用いて、シリンダー温度240℃で溶融混練し、ストランド状に押出したものを、ペレタイザーでカッティングして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて射出成形機(製品名「SAV−30−30」、山城精機社製)にて樹脂温度250℃、金型温度60℃で射出成形し、引張り試験、曲げ試験、荷重たわみ温度測定、及びアイゾット衝撃試験に使用する試験片を成形した。得られた試験片を用いて各種試験を実施した。測定結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリプロピレンの量を50部に、ブロック共重合体水素化物[3]−1の量を50部に変える以外は実施例1と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット115部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表1に示す。
[実施例3]
ポリプロピレンの量を20部に、ブロック共重合体水素化物[3]−1の量を80部に変える以外は実施例1と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット115部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表1に示す。
[比較例1]
ブロック共重合体水素化物[3]−1を使用せず、ポリプロピレンの量を100部に変える以外は実施例1と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表1に示す。
[比較例2]
ポリプロピレンの量を90部に、ブロック共重合体水素化物[3]−1の量を10部に変える以外は実施例1と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表1に示す。
[比較例3]
ポリプロピレンの量を10部に、ブロック共重合体水素化物[3]−1の量を90部に変える以外は実施例1と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット115部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表1に示す。
[比較例4]
ガラス繊維を配合せず、ポリプロピレンの量を50部に、ブロック共重合体水素化物[3]−1の量を50部に変える以外は実施例1と同様にして樹脂組成物のペレット90部を得た。
この樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表1に示す。
ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例2で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1を使用したこと以外は実施例1と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表2に示す。
[実施例5]
ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例2で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1を使用したこと以外は実施例2と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット117部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表2に示す。
[実施例6]
ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例2で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1を使用したこと以外は実施例3と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表2に示す。
[実施例7]
ガラス繊維の量を70部に変えたこと以外は実施例6と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット150部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表2に示す。
[比較例5]
ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例2で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1を使用したこと以外は比較例2と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表2に示す。
[比較例6]
ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例2で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1を使用したこと以外は比較例3と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表2に示す。
[比較例7]
ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例2で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1を使用したこと以外は比較例3と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット90部を得た。
この樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表2に示す。
ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例4で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−2を使用したこと以外は実施例1と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表3に示す。
[比較例8]
ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例4で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−2を使用したこと以外は比較例4と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット86部を得た。
この樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表3に示す。
ポリプロピレンに換えてポリエチレン(製品名「ノバテック(登録商標)LL UJ370」、日本ポリエチレン社製;16g/10min)を使用し、ブロック共重合体水素化物[3]−1に換えて参考例2で得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]−1を使用したこと以外は実施例2と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表4に示す。
[比較例9]
ポリプロピレンに換えてポリエチレン(製品名「ノバテック(登録商標)LL UJ370」、日本ポリエチレン社製)を使用したこと以外は比較例1と同様にして繊維状無機充填材含有樹脂組成物のペレット120部を得た。
得られた繊維状無機充填材含有樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表4に示す。
[比較例10]
ポリプロピレンに換えてポリエチレン(製品名「ノバテック(登録商標)LL UJ370」、日本ポリエチレン社製)を使用したこと以外は比較例4と同様にして樹脂組成物のペレット85部を得た。
この樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして試験片を作成し、各種試験を実施した。測定結果を表4に示す。
実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
ブロック共重合体水素化物[3]あるいはアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]を配合しない場合(比較例1、比較例9)、あるいはブロック共重合体水素化物[3]あるいはアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の配合割合が少な過ぎる場合(比較例2、比較例5)は、アイゾット衝撃値が小さく、機械的強度の改善効果が低い。
ブロック共重合体水素化物[3]あるいはアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]の配合割合が多過ぎる場合(比較例3、比較例6)は、アイゾット衝撃値は大きくなるが、曲げ弾性率が低く、機械的強度の改善効果が低い。
繊維状無機充填材[5]を配合しない場合(比較例4、比較例7、比較例8、比較例10)は、荷重たわみ温度が低く、耐熱性が不十分であり、また、引張破断強度、曲げ弾性率ともに小さく、機械的強度の改善効果も低い。
ポリオレフィン系重合体[1]、ブロック共重合体水素化物[3]及び/又はアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[4]、及び繊維状無機充填材[5]を配合した繊維状無機充填材含有樹脂組成物(実施例1〜実施例9)は、引張破断強度、曲げ弾性率、荷重たわみ温度、アイゾット衝撃値などにバランスの良い物性値を示し、特に低温においても高い耐衝撃性を維持しており、剛性、機械強度、耐熱性などに優れた特徴を有する成形用材料である。