JP6083257B2 - 難燃性ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、強度や伸度などの力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも耐油性に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。また、本発明は、強度や伸度などの力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性及び耐油性に優れ、電線被覆用樹脂として好適な難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、電気絶縁性に優れ、且つ自消性の難燃特性を持つことから、古くより、電線被覆、チューブ、テープ、建材、自動車部品、家電部品などに広く使用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は分子構造中に塩素を含んでいるため、燃焼時に腐食性ガスである塩化水素ガスを発生し、また、燃焼条件によっては有毒ガスを発生する場合がある。このため、最近の環境問題への対策の一環として、ハロゲンを含有しない材料(以下、ハロゲンを含有しないことを「非ハロゲン」ということがある。)が使用されるようになっている。
非ハロゲン系の材料としては、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるオレフィン系樹脂やスチレン系樹脂が挙げられるが、これらの樹脂は難燃性ではないため、用途によっては難燃化する必要がある。その対策としては、ハロゲン系難燃剤を添加する手法が古くより行われてきた。しかしながら、ハロゲン系難燃剤も燃焼時に有毒ガスを発生する可能性があるため、最近では、非ハロゲン系難燃剤として、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムといった金属水酸化物を配合する手法が採られている(例えば特許文献1参照)。
このような金属水酸化物を含む難燃性樹脂組成物は、燃焼時のハロゲン系ガスの発生は防止し得るが、燃焼時に高温になることから樹脂組成物が溶融し、着火した溶融樹脂が落下するという所謂ドリップ現象を発生することや、或いは高温時の形状保持性については改良されていなかった。
ポリオレフィン系の難燃性樹脂組成物における上記の問題点を解決するために耐熱性を向上させる手法としては、樹脂組成物を電子線照射、化学架橋、水架橋などの方法で架橋させる方法が知られている(例えば特許文献2、3参照)。このうち、水架橋法は、電子線照射法や化学架橋法に比べ、特殊な架橋設備が不要であり、簡便に架橋することが可能であるため好適に用いられている。
一方、電線被覆等の用途に対してポリオレフィン系の難燃性樹脂組成物を用いる場合、難燃性や耐熱性とともに、耐油性も要求される。しかしながら、上記のように樹脂組成物を架橋して難燃性樹脂組成物とするだけでは、耐熱性能は向上するものの耐油性能の改善は不十分であり、特に100℃以上の高温下での耐油性には満足する性能が得られていない。
特許文献4では、ポリオレフィン系の難燃性樹脂組成物の耐油性及び柔軟性を改良する方法として、結晶性ポリオレフィン、過酸化物架橋型のエラストマー、金属水和物等からなる樹脂組成物を有機過酸化物で架橋する方法が開示されている。
特開2000−109638号公報 特開平7−25939号公報 特開2000−38481号公報 特開2004−285185号公報
本発明者らの知見によれば、特許文献4の方法においても100℃以上の高温下での耐油性は不十分であり、未だ柔軟性、耐熱性に優れ、しかも耐油性に優れた難燃性樹脂組成物は見出されていないのが現状である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、強度や伸度などの力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも耐油性、特に高温下での耐油性に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性及び耐油性に優れ、電線被覆用樹脂として好適な難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなり、架橋後のゲル含率が特定の値以上のポリオレフィン組成物が、力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも耐油性に優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[]を要旨とする。
[1]熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂が架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有し、該架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマーをシラン化合物でグラフト変性したものであり、該オレフィン系熱可塑性エラストマーの融点ピーク温度が120℃以上であり、架橋後の熱可塑性樹脂のゲル含率が30質量%以上であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物
[2]オレフィン系熱可塑性エラストマーが、プロピレン並びにエチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィンを重合成分として含有する重合体であり、かつo−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0〜140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分が全溶出量に対して10〜60質量%である、[]に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
]金属水酸化物の含有量が、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の全質量に対して40質量%以上である、[1]又は2]に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
]熱可塑性樹脂が、さらにエチレン・酢酸ビニル共重合体を含有する、[1]乃至[]の何れかに記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
][1]乃至[]の何れかに記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
][1]乃至[]の何れかに記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を被覆してなることを特徴とする電線。
本発明によれば、強度や伸度などの力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも耐油性に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。特に本発明によれば、100℃以上の高温下での耐油性に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性及び耐油性に優れ、電線被覆用樹脂として好適な難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と略記することがある。)は、熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂が架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有し、架橋後の熱可塑性樹脂のゲル含率が30質量%以上であることに特徴をもつものである。
<熱可塑性樹脂>
本発明における熱可塑性樹脂は、架橋が可能な熱可塑性樹脂、すなわち以下に詳述する架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーを少なくとも含有する。
<架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマー>
本発明おいて、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーとは、架橋反応が可能であるが、未だ架橋されていない重合体(樹脂)を意味する。すなわち、架橋することによって得られる本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成する原料としての、架橋前のオレフィン系熱可塑性エラストマーを意味する。
ここで、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーの架橋度は0である必要は無く、実質的に溶融成形可能な程度の熱可塑性を有していればよい。具体的には、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーの架橋度は、後述する測定方法におけるゲル含率として、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下であり、下限は0質量%である。
本発明において、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーは、架橋反応によって架橋可能なオレフィン系熱可塑性エラストマーであれば特に限定されない。ここで架橋反応の種類は特に限定されず、過酸化物による架橋であってもよいが、通常は水分による架橋(水架橋)である。従って、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、水架橋が可能なように変性または共重合されたオレフィン系熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。
変性する原料として用いるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、プロピレン並びにエチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィンを重合成分として含有する重合体(弾性体)であれば特に限定されないが、通常ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂のマトリックスに、エチレン−プロピレンゴム等のオレフィン系ゴムを微分散させた熱可塑性エラストマー(弾性体)である。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレン並びにエチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィンを重合成分として含有する重合体であって、その融点ピーク温度が120℃以上であり、かつo−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0〜140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分(以下、「o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分」ということがある。)が全溶出量に対して10〜60質量%であるものが好ましい。
上記エラストマーにおいて、炭素数4〜8のα−オレフィンとしては、ブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等が挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンとエチレンとの共重合体が好ましい。また、プロピレン単位の割合は、好ましくは50〜95質量%、さらに好ましくは60〜92質量%である。エチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィン単位の割合は、プロピレン単位の割合を引いた残量である。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの融点ピ−ク温度は、下限が好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは160℃以上であり、上限が通常240℃以下、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。ピーク温度が120℃以下であると、高温下での耐油性能、特に100℃以上での耐油性能が著しく悪化し、逆に融点ピーク温度が240℃以上の場合は、成形加工時の熱量が高くなり、成形機内での焼け焦げや早期架橋を引き起こす可能性が高くなり外観不良の問題が発生しやすくなる傾向がある。
なお、融点ピ−ク温度は一般的にはJIS K7121に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定される値である。
また、「o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分」は、全溶出量に対して、下限が好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、上限が好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。「o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分」が10質量%以下であると、剛性が上がりケーブルとしての柔軟性が損なわれ、逆に60質量%以上になると耐油性能や耐熱性が悪化する傾向がある。
かかる性質をもつオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることにより、後述するとおり、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の柔軟性と耐油性が良好となる。
なお、前記温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation;TREF)とは、公知の分析法である。原理的には、高温でポリマーを溶媒に完全に溶解させた後に冷却して、溶液中に存在させておいた不活性坦体の表面に薄いポリマー層を形成させる。このとき、結晶化し易い高結晶性成分から結晶化しにくい低結晶性または非晶性成分の順にポリマー層が形成される。次いで、連続又は段階的に昇温すると、前記と逆に、低結晶性または非晶性成分から溶出し、最後に高結晶性成分が溶出する。この各温度での溶出量と溶出温度によって描かれる溶出曲線からポリマーの組成分布を分析するものである。
測定装置としては、例えば、クロス分別装置(三菱化学社製、CFC・T150A)を使用いる。測定すべきサンプル(オレフィン系熱可塑性エラストマー)を、溶媒(o−ジクロロベンゼン)を用い、濃度30mg/mlとなるように140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入する。以下の測定は設定条件に従って自動的に行われる。
サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置付属のステンレスカラム)に0.4ml注入される。当該サンプルは、1℃/分の速度で140℃から0°の温度まで冷却され、上記不活性担体にコーティングされる。このとき高結晶成分(結晶化しやすいもの)から低結晶成分(結晶化しにくいもの)の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。TREFカラムは0℃でさらに30分間保持した後、以下の溶出温度のように段階的に昇温され、それぞれの温度において30分間保持されながら、その温度における溶出分が測定される。
溶出温度(℃):0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、上記のとおり、特定の重合成分を含有し、特定の融点ピーク温度、温度上昇溶離分別に係わる条件(o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分)を満足するものが好ましいが、その製造方法は特に制限されず、例えば特開2003−7654号公報等に開示されている方法を用いればよい。
具体的には、例えば、一段目でプロピレン単独重合体またはプロピレンと少量のエチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィンとのランダム共重合体を製造後、二段目以降でプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜8の他のα−オレフィンのランダム共重合体を製造する、少なくとも二段以上の逐次重合方法;プロピレン単独重合体またはプロピレンと少量のエチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィンのランダム共重合体と、エチレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとのランダム共重合体、またはエチレンおよび/または炭素数4〜8とプロピレンとのランダム共重合体をそれぞれ別に重合したものをブレンドする方法等が挙げられる。これら方法としては、少なくとも二段以上の逐次重合方法が好ましい。
上記製造方法において、プロピレン単位の割合を、前記した好ましい範囲とすることにより、融点ピ−ク温度、o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分の条件を満足するオレフィン系熱可塑性エラストマーを得ることができる。
なお、前記方法により製造されるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、JIS K7210に準拠して温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフロレート(MFR)は0.1〜50g/10分、JIS K7112に準拠して水中置換法にて測定した密度は0.87〜0.89g/cm程度であって、JIS K7203に準拠して温度23℃で測定した曲げ弾性率が600MPa以下のものとなる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、公知の有機パーオキサイドまたはさらに二重結合を分子内に1個以上、好ましくは2個以上を有する架橋剤の存在下に動的に熱処理してMFRを調整することもできる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、三菱化学社製の「ゼラス」(商品名)、LyondellBasell社製の「キャタロイ」(商品名)、「アドフレックス」(商品名)、「アドシル」(商品名)、「ハイファックス」(商品名)、三井化学社製の「ノティオ」(商品名)等から適宜選択して使用することができる。
本発明における架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーは、前記のオレフィン系熱可塑性エラストマーを水架橋が可能なように変性することによって好適に得ることができる。変性の方法は特に限定されないが、オレフィン系熱可塑性エラストマーを不飽和シラン化合物でグラフト化することが好ましい。以下に、オレフィン系熱可塑性エラストマーを不飽和シラン化合物でグラフト化した樹脂(以下、「シラングラフトエラストマー」ということがある。)について詳細に説明する。
本発明においてシラングラフトエラストマーとしては、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを有機過酸化物等のラジカル発生剤の存在下に不飽和シラン化合物のグラフト反応工程に付して得られた変性オレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。なお、グラフト化ではなく共重合によって架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーを得ることも可能であり、その場合は、前記したオレフィン系熱可塑性エラストマーを構成するモノマーと不飽和シラン化合物とをラジカル共重合することによって得ることができる。
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーに不飽和シラン化合物をグラフト化させるためには、例えば、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーに所定量の不飽和シラン化合物、ラジカル発生剤を溶融混練する方法を用いることができる。
ここで、不飽和シラン化合物は特に限定されないが、具体的には、下記一般式:
SiR 3−n
(式中、Rはエチレン性不飽和炭化水素基を示し、Rは炭化水素基を示し、Yは加水分解可能な有機基を示し、nは0〜2の整数である。)
で表される化合物が挙げられる。
ここで、Rとしては炭素数3〜10のエチレン性不飽和炭化水素基が好ましい。具体的には、例えば、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等が挙げられる。Rとしては炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基、フェニル基等が挙げられる。Yとしては炭素数1〜10の加水分解可能な有機基が好ましい。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。
このような不飽和シラン化合物の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、臭気等の観点から、ビニルトリメトキシシランが好適である。
不飽和シラン化合物の添加量は特に限定されないが、オレフィン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、下限が好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、上限が好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
また、ラジカル発生剤としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーに対して不飽和シラン化合物をグラフト化可能であれば特に限定されないが、有機過酸化物またはジアルキルパーオキサイド化合物が好ましい。
有機化酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バラレート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン等のペルオキシケタール類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルペルオキシド類;アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,5−ジクロロベンゾイルペルオキシド、m−トリオイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウリレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシマレイックアシッド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシオクテート等のペルオキシエステル類;ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類;t−ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロペルオキシド等のハイドロペルオキシド類などが挙げられる。これらの中で、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシドなどが好ましい。
また、ジアルキルパーオキサイド化合物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等が挙げられる。
ラジカル発生剤の添加量は特に限定されず、オレフィン系熱可塑性エラストマーに不飽和シラン化合物がグラフト化して十分な架橋効果を得る為には多い方が望ましいが、加工性の観点からは少ない方が望ましい。具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、下限が好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上であり、上限が好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
オレフィン系熱可塑性エラストマーに不飽和シラン化合物をグラフト化させる方法は特に限定されないが、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、不飽和シラン化合物、ラジカル発生剤を80〜250℃の温度で溶融混練する方法が挙げられる。この際、水を含んでいると、水架橋反応が行われるので、水を含まない状態で溶融混練することが好ましい。
シラングラフトエラストマーのグラフト量は特に限定されないが、下限が通常0.5質量%以上、好ましくは0.7質量%以上であり、上限が通常8質量%以下、好ましくは5質量%以下である。グラフト量が下限値未満の場合は、熱可塑性樹脂部分の架橋が不十分であるため、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の引張特性が不十分となる場合がある。一方、グラフト量が上限値を超過すると、熱可塑性樹脂部分の架橋度が高過ぎて成形性が低下する傾向にある。
ここで、シラングラフトエラストマーのグラフト量の測定は、赤外吸収スペクトル、H−NMR、高周波プラズマ発光分析装置(ICP)等を用いた分析法により確認することができる。
架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、下限が好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、更に好ましくは0.5g/10分以上であり、上限が好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは20g/10分以下である。MFRが下限値未満では、流動性が低すぎるため押出機への負荷が高くなり生産性が低下する傾向にあり、MFRが上限値を超過する場合は流動性が高すぎて押出機によるストランド化が困難となる傾向にある。
なお、MFRは、JIS K7210に準拠して温度230℃、荷重21.18Nで測定することができる。
本発明においては、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーとして、オレフィン系熱可塑性エラストマーが、プロピレン並びにエチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィンを重合成分として含有する重合体であって、その融点ピーク温度が120℃以上であり、かつo−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0〜140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分(o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分)が全溶出量に対して10〜60重量%である、オレフィン系熱可塑性エラストマーをシラン化合物でグラフト変性したものを用いるのが特に好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの融点ピーク温度が下限値未満の場合や、o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分が上限値を超える場合は、耐油性が悪化する傾向がある。また、ポリオレフィン熱可塑性エラストマーのo−ジクロロベンゼンへ(0℃)溶出分が下限値未満の場合は、引張伸度が悪化する傾向がある。オレフィン系熱可塑性エラストマーの物性を前記範囲内とすることにより、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の柔軟性と耐油性が良好となるが、これは、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーに上記範囲の組成物を用いる事により、高温下での耐油性能を向上させる結晶成分と柔軟性を支配する非結晶部(非晶部)とのバランスが良好になるためと考えられる。この結果、柔軟性を維持しつつ、油による物性低下を抑制することができると考えられる。
本発明において架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーは、異なる2種以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。例えば、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーとしてシラングラフトエラストマーを用いる場合としては、異なるオレフィン系熱可塑性エラストマーを変性したものを併用する場合や、異なる不飽和シラン化合物で変性したものを併用する場合、或いは異なるグラフト量で変性されたものを併用する場合等が挙げられる。
なお、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーとして異なる2種以上を併用する場合において、各々のオレフィン系熱可塑性エラストマーが前記融点ピーク温度とo−ジクロロベンゼンへ(0℃)溶出分の値を満たしていることが好ましい。
<金属水酸化物>
本発明において金属水酸化物は、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に難燃作用を付与するために用いる。
金属水酸化物の種類は特に限定されないが、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カリウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。中でも、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合と比率で併用してもよい。
本発明に用いる金属水酸化物は、表面処理剤によって表面処理されたものを使用することができる。表面処理剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸または脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらの表面処理剤で金属水酸化物を処理する方法としては、湿式法、乾式法、直接混練法などの既知の方法を用いることができる。金属水酸化物として表面処理されたものを使用することにより、得られる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物中での分散性が向上する場合や、力学的特性が向上する場合がある。
また、金属水酸化物の平均粒子径は、機械的特性、分散性、難燃性の点から4μm以下のものが好適である。
金属水酸化物の含有量は特に限定されないが、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の全質量に対し、下限が好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、上限が好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。金属水酸化物の含有量が下限値未満では、本発明が課題とするレベルの難燃性が得られない傾向にある。一方、金属水酸化物の含有量が上限値を超過すると、加工性や機械的強度が低下する傾向にある。
架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーに対する金属水酸化物の配合量は特に限定されないが、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーの100質量部に対し、下限が通常100質量部以上、好ましくは150質量部以上であり、上限が通常500質量部以下、好ましくは400質量部以下である。金属水酸化物の配合量が下限値未満では、本発明が課題とするレベルの難燃性が得られない傾向にある。一方、金属水酸化物の配合量が上限値を超過すると、加工性や機械的強度が低下する傾向にある。
また、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成する樹脂成分に対する金属水酸化物の配合量は特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対し、下限が通常100質量部以上、好ましくは150質量部以上であり、上限が通常500質量部以下、好ましくは400質量部以下である。金属水酸化物の配合量が下限値未満では、本発明が課題とするレベルの難燃性が得られない傾向にある。一方、金属水酸化物の配合量が上限値を超過すると、加工性や機械的強度が低下する傾向にある。
<架橋触媒>
本発明において架橋触媒は、上記の架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーを架橋するために用いる。
架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーとしてシラングラフトエラストマーを用い、架橋方法として水架橋を行う場合、架橋触媒としては、触媒の存在下に水分と接触させてオレフィン系熱可塑性エラストマー内に架橋構造を形成させることができる化合物、いわゆるシラノール縮合触媒が選択される。
シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第1錫、カプリル酸第1錫、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト等の金属脂肪酸塩が挙げられる。架橋触媒は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
架橋触媒の使用量は特に限定されないが、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、下限が通常0.000005質量部以上、好ましくは0.00001量部以上であり、上限が通常0.05質量部以下、好ましくは0.01質量部以下である。架橋触媒の使用量が前記下限値未満では、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーの架橋が不十分であるため、十分な難燃性が得られない場合がある。一方、架橋触媒の使用量が前記上限値を超過すると、加工性が低下する傾向にある。
なお、架橋触媒は、樹脂中に含有されたマスターバッチの状態で使用することもできる。マスターバッチのベースとする樹脂は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂が好適である。また、マスターバッチ中の架橋触媒の含有量は特に限定されないが、通常10〜500倍程度に濃縮されて用いられるため、0.0001〜5.0質量%程度である。
架橋触媒のマスターバッチは市販品を用いることもでき、例えば、三菱化学社製の「リンクロン触媒マスターバッチ」(商品名)から選択して用いることができる。
<その他のポリオレフィン樹脂>
本発明では、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーの他に、架橋性ではないオレフィン系熱可塑性エラストマーやポリオレフィン樹脂(以下、「その他のポリオレフィン樹脂」ということがある。)を併用することができる。このような「その他のポリオレフィン樹脂」も、本発明における前記熱可塑性樹脂に包含されるものである。
その他のポリオレフィン樹脂は特に限定されないが、前記した、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーの原料として用いるオレフィン系熱可塑性エラストマーやそれ自体既知の通常用いられるポリオレフィン樹脂そのものを用いることができる。更には、その他のポリオレフィン樹脂には、不飽和カルボン酸などで変性されたポリオレフィン樹脂も含まれる。その他のポリオレフィン樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
これらの中では、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン等を好適に用いることができる。
その他のポリオレフィン樹脂の使用量は特に限定されないが、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成する樹脂成分(本発明における熱可塑性樹脂)の全質量に対し、上限が通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下であり、下限が通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。また、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、下限が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上であり、上限が通常400質量部以下、好ましくは250質量部以下である。
その他のポリオレフィン樹脂を前記範囲の使用量で用いた場合、加工性や得られる成形品の外観、諸物性が良好となる場合があるが、前記範囲を超えて用いた場合は、耐熱性や難燃性が低下する場合がある。
その他のポリオレフィン樹脂として好適に用いることができるエチレン・酢酸ビニル共重合体とは、エチレンに由来する重合体単位と酢酸ビニルに由来する重合体単位とを少なくとも有する共重合体である。その他のポリオレフィン樹脂としてエチレン・酢酸ビニル共重合体を含有することにより、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の柔軟性や難燃性、耐油性が向上する場合がある。
エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は特に限定されないが、下限が好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、上限が好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。ここで、酢酸ビニル含有量とは、エチレン・酢酸ビニル共重合体を構成する全単量体単位のうち、酢酸ビニル由来の単量体の質量割合を意味する。なお、本発明において酢酸ビニル含有量の測定は、フーリエ変換赤外分光光度計を用い、JIS K7192(1999)に順じて測定した値を意味する。
該エチレン・酢酸ビニル共重合体には、エチレン及び酢酸ビニル以外に、他の共重合成分を含有していてもよい。共重合可能な成分は特に限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜20程度のα−オレフィンや、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等との共重合体等が挙げられる。
エチレン・酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、190℃、21.18N荷重で測定した値が、通常0.1〜60g/10分、好ましくは1〜35g/10分、さらに好ましくは2〜30g/10分の範囲のものが好適である。
エチレン・酢酸ビニル共重合体としては、例えば、日本ポリエチレン社製の「ノバテックEVA」(商品名)、三井・デュポンポリケミカル社製の「エバフレックス」(商品名)、ランクセス社製の「レバプレン」(商品名)等から適宜選択して使用することができる。
<その他の樹脂>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分以外の樹脂を、「その他の樹脂」として必要に応じて用いてもよい。その他の樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
その他の樹脂、即ち、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびその他のポリオレフィン樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂等アクリル/メタクリル系樹脂等が挙げられる。更には、スチレン系、オレフィン系、エステル系、アミド系、ウレタン系等の各種熱可塑性エラストマーも好適に用いることができる。
なお、前記の「その他のポリオレフィン樹脂」のみならず、このような「その他の樹脂」も、本発明における前記熱可塑性樹脂に包含されるものである。
その他の樹脂の含有量/使用量は特に限定されないが、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物における全樹脂成分に対し、上限が通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下であり、下限が通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。また、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、下限が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上であり、上限が通常400質量部以下、好ましくは250質量部以下である。
その他の樹脂としては、スチレン系エラストマーを好適に用いることができる。スチレン系エラストマーを含有させることにより、柔軟性が向上する場合がある。
本発明おいて、スチレン系エラストマーは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、柔軟性を付与する重合体ブロックとを有するものであれば特に限定されないが、具体的には、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックP(以下「ブロックP」と略記することがある。)と、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックQ(以下「ブロックQ」と略記することがある。)を有するブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体が例示される。
ここで、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体」とは、ビニル芳香族化合物を主体とする単量体を重合したものを意味し、「ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする重合体」とは、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする単量体を重合したものを意味する。また、ここで「主体とする」とは、50モル%以上であることを意味する。
ブロックPを構成する単量体のビニル芳香族化合物は特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体が好ましい。中でも、スチレンを主体とすることが好ましい。なお、ブロックPには、ビニル芳香族化合物以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
ブロックQは、より好ましくは、ブタジエン単独、イソプレン単独、ブタジエン及びイソプレンの何れかである。なお、ブロックQには、ブタジエン及びイソプレン以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
ブロックQは、重合後に有する二重結合を水素添加した水素添加誘導体であってもよい。ブロックQの水素添加率は特に限定されないが、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。ブロックQを前記範囲で水素添加することにより、本発明の樹脂組成物の熱安定性が向上する傾向にある。なお、ブロックPが、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。水素添加率は、13C−NMRにより測定することができる。
スチレン系エラストマーにおけるブロックPの割合は特に限定されないが、下限が通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、上限が通常55質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。ブロックPの割合が前記範囲であることにより、本発明の樹脂組成物の柔軟性が良好となる傾向にある。
スチレン系エラストマーとして、前記のブロックP及びブロックQを有する共重合体を用いる場合、その化学構造は直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体である場合が好ましく、柔軟性の観点から、より好ましくは下記式(1)の構造である。
さらに、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体は、水素添加誘導体(以下、「水添ブロック共重合体」と略記することがある。)が更に好ましい。下記式(1)又は(2)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、本発明の樹脂組成物の柔軟性が良好となる傾向にある。
P−(Q−P) (1)
(P−Q) (2)
(式中、Pは重合体ブロックPを示し、Qは重合体ブロックQを示し、mは1〜5の整数を示し、nは2〜5の整数を示す。)
式(1)又は(2)においてm及びnは、ゴム的高分子体としての秩序−無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。nはより好ましくは2〜4の整数である。
ブロック共重合体または水添ブロック共重合体(以下、まとめて「(水添)ブロック共重合体」ということがある。)としては、ゴム弾性に優れることから、式(2)で表される(水添)ブロック共重合体よりも式(1)で表される(水添)ブロック共重合体の方が好ましく、mが3以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体がより好ましく、mが2以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体が更に好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、例えば、水添ブロック共重合体の市販品として、シェルケミカルズジャパン社製の「KRATON−G」(商品名)、クラレ社製の「セプトン」(商品名)、「ハイブラー」(商品名)、旭化成社製の「タフテック」(商品名)等、また、非水添型のブロック共重合体の市販品として、シェルケミカルズジャパン社製の「KRATON−A」(商品名)、クラレ社製の「ハイブラー」(商品名)の一部グレード、旭化成社製の「タフプレン」(商品名)等から適宜選択して使用することができる。
<その他の成分>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分以外の添加剤等を、「その他の成分」として必要に応じて用いてもよい。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
その他の成分として用いる添加剤等としては、具体的には、オイル、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、充填剤、相溶化剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック、着色剤等が挙げられる。これら添加剤の含有量は特に限定されないが、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物中の50質量%以下の範囲で使用するのが好ましい。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、その他の成分として、金属水酸化物以外の難燃剤を併用してもよい。難燃剤はハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が好ましい。金属水酸化物以外の非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、例えば、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、オイルとして炭化水素系ゴム用軟化剤を含有することが好ましい。炭化水素系ゴム用軟化剤としては、鉱物油系又は合成樹脂系の軟化剤が好ましく、鉱物油系軟化剤がより好ましい。
鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30〜45%程度以上がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが炭素原子芳香族系オイルと各々呼ばれている。本発明において、炭化水素系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、および炭素原子芳香族系オイルから選択される何れかを用いることが好ましい。これらのうち、色相が良好であることから、パラフィン系オイルを用いることがより好ましい。合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン及び低分子量ポリブタジエン等が挙げられる。
なお、炭化水素系ゴム用軟化剤は、上述の各種軟化剤の何れか1種のみを用いても、2種以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
炭化水素系ゴム用軟化剤の40℃における動粘度は、分散性や加工性の観点では低い方が好ましいが、ブリードアウト抑制の観点からは高い方が望ましい。具体的には、下限が好ましくは20センチストークス以上、より好ましくは50センチストークス以上であり、上限が好ましくは800センチストークス以下、より好ましくは600センチストークス以下である。
炭化水素系ゴム用軟化剤の引火点(COC法)は特に限定されないが、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。
炭化水素系ゴム用軟化剤の含有量は特に限定されないが、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に対し、上限が通常25質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、下限が通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。
また、炭化水素系ゴム用軟化剤の含有量は特に限定されないが、金属水酸化物を除く全成分に対し、上限が通常35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下であり、下限が通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。
<難燃性ポリオレフィン樹脂組成物>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマー、金属水酸化物、必要に応じて用いる架橋触媒を同時に又は任意の順序で混合した後、これを架橋することによって製造することができる。
混合方法は具体的には、(1)架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーと金属水酸化物を先に混合し、架橋触媒を後に加える方法、(2)架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーと架橋触媒を先に混合し、金属水酸化物を後に加える方法、(3)全てを一括して混合する方法などがある。
また、金属水酸化物を架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーに含有させたマスターバッチと、架橋触媒を架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマー以外の樹脂に含有させたマスターバッチとを別々に製造しておき、これらを混合することによって製造してもよい。このように、難燃マスターバッチと触媒マスターバッチとを用いれば、成形する際に両者を混合することが可能となり、成形体を得る前に架橋反応が進行することを抑制することができる。
なお、その他の成分は、均一に分散させることができればどのタイミングで加えてもよい。
前記の各原料成分を混合する際の装置に限定はないが、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、一軸押出機、二軸押出機などの汎用のものを使用することができる。溶融混合時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150〜250℃で行う。
なお、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋処理前の樹脂組成物においても、230℃、21.2N荷重でのメルトフローレート(MFR)の測定が困難な場合がある。しかしながら、異形押出を含む押出成形や圧縮成形等の種々の成形に十分な程度の流動性を有している。
<架橋処理>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を水架橋によって得る場合は、通常、水分と接触させることにより樹脂組成物内に架橋構造を形成させる。水架橋処理は、常温〜200℃程度、通常は常温〜100℃程度の液状又は蒸気状の水に、通常10秒〜1週間程度、好ましくは1分〜1日程度接触させることによりなされるが、このような処理を行わなくても空気中の水分によって架橋させることができる。
上記のとおり架橋させることによって、難燃性、機械的特性、耐油性等に優れた本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を得ることができる。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率が30質量%以上である。架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率が前記下限値未満の場合は、耐油性が悪化するため好ましくない。
ここで架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率とは、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成する樹脂成分中のゲル含率を意味する。すなわち、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物から樹脂以外の成分(金属水酸化物やその他の成分等)を除外した残分である樹脂成分を100質量%とした際のゲル含率をいう。
具体的には、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物における樹脂成分を144℃の沸騰キシレン中で10時間ソックスレー抽出を行った際の、不溶分の乾燥質量を測定し、ソックスレー抽出前の質量に対する割合(質量%)として算出した値である。なお、架橋前の樹脂組成物自体がそもそも沸騰キシレンに溶解しないものである場合は、適宜他の溶媒に置き換えて測定すればよい。
架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率を前記の通り最適化することによって耐油性が好適となるが、これは熱可塑性樹脂中の主成分が分子間架橋により拘束される事により、油のような潤滑が浸透しても分子絡みが緩くならず、油浸漬前の状態を維持できるためであると考えられる。
なお、架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率は、上記のとおり、30質量%以上であるが、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。
また、架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率の上限は特に限定されず、100質量%であってもよいが、加工性の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、上記の通り、熱可塑性樹脂として、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマー、好ましくは融点ピーク温度及びo−ジクロロベンゼンへ(0℃)溶出分が特定範囲であるオレフィン系熱可塑性エラストマーを変性した架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有するとともに、架橋後の該熱可塑性樹脂のゲル含率が特定範囲にあるものである。それら要件の相乗効果により、優れた耐熱性、難燃性及び耐油性を兼ね備え、特に100℃以上の高温下での耐油性に優れたた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物とすることができる。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物において、架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマー自体の架橋後のゲル含率は特に限定されないが、下限が通常30質量%以上、好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、ゲル含率の上限も特に限定されず、100質量%であってもよいが、加工性の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。ここでゲル含率の測定方法は、前記と同様である。
架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーの架橋後のゲル含率が前記範囲内であると、加工性、耐油性が良好となる傾向にある。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の引張強度(破断強度)は、10MPa以上であることが好ましい。難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の引張強度が前記範囲であることにより、電線被覆の用途に好適に用いることができる。
また、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の引張伸度(破断伸度)は、100%以上であることが好ましい。難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の引張伸度が前記範囲であることにより、電線被覆の用途に好適に用いることができる。
ここで引張強度や引張伸度は、JIS C−3005に準拠し、3号ダンベル試験片を用い、引張速度200mm/分で試験を行った際の引張特性をいうものとする。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、121℃に調整したオイル(サンオイル社製、IRM902)に18時間浸漬後の、JIS C−3005に準拠し、3号ダンベル片にて引張速度200mm/分で測定した引張強度残率、引張伸度残率が、それぞれ35%以上、40%以上であることが好ましい。また、引張強度残率は40%以上、引張伸度残率は60%以上であることが更に好ましい。このような耐油性をもつことにより、例えば削掘、ロボットケーブル、発電用ケーブルなどの耐油性が要求される電線被覆の用途において好適に使用することが可能となる。
ここで引張強度残率、引張伸度残率とは、オイルに浸漬しない引張試験の値を基準(100%)とし、引張強度、引張伸度の各々についてその保持率を算出た値を意味する。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の難燃性は、JIS K−7201に準拠して測定した酸素指数として、30以上であることが好ましい。このような難燃性をもつことにより、例えば電線被覆の用途において好適に使用することができる。
<成形品および用途>
本発明の成型品は、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなるものであり、また本発明の電線は本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を被覆してなるものである。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形する方法は特に限定されず、押出成形、圧縮成形、射出成形などの何れの方法でも成形することができるが、樹脂組成物の溶融状態での流動性の観点から押出成形で成形することが望ましい。また成形温度は樹脂組成物の溶融温度より高温であれば特に限定されないが、150℃〜250℃が望ましい。成形温度が前記下限値より高ければ溶融した樹脂組成物の流動性が高く、目的の形状の成形体を得やすい。また成形温度が前記上限値より低ければ、金属水酸化物の分解による発泡が起こりにくい。
また、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を被覆用樹脂として電線を調製する方法も特に限定されず、それ自体既知の材料および方法を用いて行えばよい。
なお、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋処理を行った後に成形や加工してもよいが、架橋後は熱可塑性が著しく低下するため、架橋処理を行う前に予め所望の形状に成形しておき、その後に架橋処理を行うことが好ましい。本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋前の段階での成形性が良好であるので、例えば押出成形等を行った場合に、表面が平滑であり、スコーチ(焼け痕)等が無い外観が良好な成形品を得ることができる。また、この成形品を架橋処理することにより、架橋前と同様に外観が良好な難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の成形品を得ることができる。架橋後の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、前記した架橋度、引張特性、耐油性、難燃性を有するものである。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の用途は特に限定されないが、優れた難燃性、機械的特性、耐熱性を併せ持ち、外観に優れることから、絶縁体、シースとして電線・ケーブルに好適に用いることができる。特に高度の耐油性及び難燃性が望まれる用途において好適な成形品として使用することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と下記実施例の値又は実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
[架橋性樹脂の製造]
架橋性樹脂の製造には、以下の原料を使用した。
<オレフィン系熱可塑エラストマー>
オレフィン系熱可塑エラストマー−1;三菱化学社製、「ゼラス 5013」〔密度:0.88g/cm、MFR(230℃、21.2N荷重):0.8g/10分)、o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分:全溶出量に対して44質量%、融点ピーク温度:164℃〕。
オレフィン系熱可塑エラストマー−2;LyondellBasell社製、「キャタロイ Q300F」〔密度:0.89g/cm、MFR(230℃、21.2N荷重):0.8g/10分、o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分:全溶出量に対して42質量%、融点ピーク温度:141℃〕。
<ポリエチレン>
ポリエチレン:エチレン・1−ブテン共重合体;ダウケミカル社製、「エンゲージENR 7256」〔密度:0.885g/cm、MFR(190℃、21.2N荷重):2g/10分)、o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分:全溶出量に対して3質量%、融点ピーク温度:75℃〕。
<不飽和シラン化合物>
ビニルトリメトキシシラン;信越化学社製。
<ラジカル発生剤>
パーオキサイド−1:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート;日油社製、「パーブチルO」。
パーオキサイド−2:ジ−t−ブチルパーオキシド;日油社製、「パーブチルD」。
<架橋性オレフィン系熱可塑エラストマー−1>
オレフィン系熱可塑エラストマー−1 100質量部に対し、不飽和シラン化合物を4質量部、ラジカル発生剤を0.5質量部添加して配合し、これを26mmφの2軸押出機(L/D=49、フルフライトスクリュー)にて押出樹脂温度200℃で押出した。押出したストランドをペレタイザーでペレット化して「架橋性オレフィン系熱可塑エラストマー−1」を製造した。
<架橋性オレフィン系熱可塑エラストマー−2>
オレフィン系熱可塑エラストマー−1をオレフィン系熱可塑エラストマー−2に変更した以外は、架橋性オレフィン系熱可塑エラストマー−1と同様の方法で「架橋性オレフィン系熱可塑エラストマー−2」を製造した。
<架橋性ポリエチレン>
ポリエチレン100質量部に対し、不飽和シラン化合物を2質量部、ラジカル発生剤を0.044質量部添加して配合し、これを26mmφの2軸押出機(L/D=49、フルフライトスクリュー)にて押出樹脂温度200℃で押出した。押出したストランドをペレタイザーでペレット化して「架橋性ポリエチレン−1」を製造した。
[樹脂組成物の製造]
実施例及び比較例の樹脂組成物の製造には、上記の原料とともに、以下の原料を使用した。
<ポリプロピレン>
ランダム共重合ポリプロピレン;日本ポリプロピレン社製、「ノバテックPP EG6D」〔密度:0.90g/cm、MFR(230℃、21.2N荷重):1.9g/10分、o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分:全溶出量に対して3質量%、融点ピーク温度:143℃〕。
<金属水酸化物>
水酸化マグネシウム;神島化学工業社製〔平均粒径1.0μm、シランカップリング剤表面処理品〕。
〔実施例1〜2、比較例1〜4〕
表1に記載の通りの配合割合で、架橋触媒を除く全ての原料を混合したものを、バンバリー混練機(神戸製鋼所社製、BB−4(3L))を用い、回転数90rpmで樹脂温度200℃に達するまで溶融混練した後、FR押出機(モリヤマ社製)を用いペレット化して樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物100質量部に対して架橋触媒マスターバッチ3質量部を配合した後、単軸押出機を用いて200℃で押出成形し、幅50mm×厚さ1mmの押出シート(架橋前の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物)を得た。
得られた押出シートを、80℃の温水に24時間浸漬することによって水架橋処理を行い、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。得られた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の架橋シートについて、以下の方法にてゲル含率、引張試験、耐油試験を行った結果を表1に示す。なお、表1中「o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分」は変性前の値である。
<ゲル含率>
架橋処理を行った押出シートを144℃の沸騰キシレン中で10時間ソックスレー抽出を行った。次いで、溶解しなかった樹脂を乾燥後に質量を測定し、ソックスレー抽出前のサンプル質量に対する抽出されない樹脂の割合(質量%)としてゲル含率を算出した。なお、樹脂以外の成分については、原料配合割合に基づき、ゲル含率の計算から除外した。
<引張試験>
架橋処理を行った押出シート(厚さ1mm)を用い、JIS C−3005に準拠して引張強度及び引張伸度の測定を行った。試験片は3号ダンベルを用い、引張速度は200mm/分とした。
引張強度、引張伸度の何れも値が高い方が好ましいが、引張強度は10MPa以上を合格とし、引張伸度は100%以上を合格とした。
<耐油試験>
架橋処理を行った押出シート(厚さ1mm)から打ち抜き作成した3号ダンベル片を121℃に調整したオイル(サンオイル社製、IRM902)に18時間浸漬した。その後、付着した油分を拭き取り、23℃、50%RHの環境下に24時間保持した後、JIS C−3005に準拠して引張強度及び引張伸度の測定を行った。引張速度は200mm/分とした。
オイルに浸漬しない引張試験の値を基準(100%)とし、引張強度、引張伸度の各々についてその保持率を算出し、それぞれ引張強度残率、引張伸度残率とした。引張強度残率、引張伸度残率の何れも、値が高い方が好ましいが、引張強度残率は35%以上を合格とし、引張伸度残率は40%以上を合格とした。なお、引張強度残率は40%以上、引張伸度残率は60%以上であることが更に好ましい。
Figure 0006083257
表1から、実施例1、2の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、引張特性および耐油性ともに優れていることが分かる。また、o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分も適度な範囲にあり、ケーブルとしての可とう性もよい。これに対して、比較例1は、融点ピークも高くo−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分も適度な範囲にあるが、架橋していない為、耐油性が悪く、引張強度も弱い。比較例2は融点が高い為、耐油性がよいが、o−ジクロロベンゼン(0℃)溶出分が少なく剛性が高いため、引張伸度が悪くなっている。比較例3は、低結晶性の材料であるので引張特性は良いが、融点が低いため、耐油性が非常に悪い。また、その架橋品である比較例4においても、十分な耐油性が得られていない。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、
    熱可塑性樹脂が架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有し、
    該架橋性オレフィン系熱可塑性エラストマーが、オレフィン系熱可塑性エラストマーをシラン化合物でグラフト変性したものであり、該オレフィン系熱可塑性エラストマーの融点ピーク温度が120℃以上であり、架橋後の熱可塑性樹脂のゲル含率が30質量%以上であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
  2. オレフィン系熱可塑性エラストマーが、プロピレン並びにエチレンおよび/または炭素数4〜8のα−オレフィンを重合成分として含有する重合体であり、かつo−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0〜140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分が全溶出量に対して10〜60質量%である、請求項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
  3. 金属水酸化物の含有量が、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の全質量に対して40質量%以上である、請求項1又は2に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
  4. 熱可塑性樹脂が、さらにエチレン・酢酸ビニル共重合体を含有する、請求項1乃至の何れか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
  5. 請求項1乃至の何れか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
  6. 請求項1乃至の何れか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を被覆してなることを特徴とする電線。
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