JP5949138B2 - 難燃性ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、強度や伸度などの力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性及び耐油性に優れ、電線被覆用樹脂として好適な難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
ポリオレフィン系の難燃性樹脂組成物における上記の問題点を解決するために耐熱性を向上させる手法としては、樹脂組成物を電子線照射、化学架橋、水架橋などの方法で架橋させる方法が知られている(例えば特許文献2、3参照)。このうち、水架橋法は、電子線照射法や化学架橋法に比べ、特殊な架橋設備が不要であり、簡便に架橋することが可能であるため好適に用いられている。
特許文献4では、ポリオレフィン系の難燃性樹脂組成物の耐油性及び柔軟性を改良する方法として、結晶性ポリオレフィン、過酸化物架橋型のエラストマー、金属水和物等からなる樹脂組成物を有機過酸化物で架橋する方法が開示されている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、強度や伸度などの力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも耐油性、特に高温下での耐油性に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性及び耐油性に優れ、電線被覆用樹脂として好適な難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
[1] 熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、該金属水酸化物の含有量が40重量%以上であり、該熱可塑性樹脂として、密度0.860〜0.900g/cm 3 である架橋性ポリオレフィンと、密度0.920〜0.960g/cm 3 である架橋性ポリオレフィンとの混合物である密度が0.905〜0.940g/cm3の架橋性ポリオレフィン混合物を含有し、かつ架橋後の該熱可塑性樹脂のゲル含率が35重量%以上である難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[2] [1]において、該架橋性ポリオレフィンが、ポリオレフィン系樹脂を不飽和シラン化合物でグラフト変性したシラングラフトポリオレフィンである請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[3] [1]または[2]において、さらに該熱可塑性樹脂としてエチレン・酢酸ビニル共重合体を含有する難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[4] [1]〜[3]の何れかにおいて、架橋性ポリオレフィン混合物の密度が0.915〜0.940g/cm 3 である難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[5] [1]〜[4]の何れかに記載の電線被覆用難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[6] [1]〜[4]の何れかに記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなる成形品。
[7] [1]〜[4]の何れかに記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を被覆してなる電線。
[8] 熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、該金属水酸化物の含有量を40重量%以上とし、該熱可塑性樹脂として、密度0.860〜0.900g/cm 3 である架橋性ポリオレフィンと、密度0.920〜0.960g/cm 3 である架橋性ポリオレフィンとの混合物である密度が0.905〜0.940g/cm 3 の架橋性ポリオレフィン混合物を用い、かつ架橋後の該熱可塑性樹脂のゲル含率が35重量%以上とするポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
[9] [8]において、該架橋性ポリオレフィンとして、ポリオレフィン系樹脂を不飽和シラン化合物でグラフト変性したシラングラフトポリオレフィンを用いる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
[10] [8]または[9]において、さらに該熱可塑性樹脂としてエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
[11] [8]〜[10]の何れかにおいて、密度が0.915〜0.940g/cm 3 である架橋性ポリオレフィン混合物を用いる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
また、本発明によれば、力学特性、耐熱性、柔軟性、難燃性及び耐油性に優れ、電線被覆用樹脂として好適な難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなり、該熱可塑性樹脂として架橋性ポリオレフィンを含有し、少なくとも該架橋性ポリオレフィンが架橋されたものである。
本発明における熱可塑性樹脂は架橋が可能な樹脂であり、以下に詳述する架橋性ポリオレフィンを少なくとも含有する。
本発明における架橋性ポリオレフィンとは、架橋反応が可能であるが、未だ架橋されていないポリオレフィン樹脂を意味する。すなわち、架橋することによって得られる本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成する原料としての、架橋前のポリオレフィン樹脂を意味する。
ここで、架橋性ポリオレフィンの架橋度は0である必要は無く、実質的に溶融成形可能な程度の熱可塑性を有していればよい。具体的には、架橋性ポリオレフィンの架橋度は、後述する測定方法におけるゲル含率として、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下であり、下限は0重量%である。
変性する原料として用いるポリオレフィン樹脂は限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の単独重合体、それらのα−オレフィン同士あるいはそれらのα−オレフィンと3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数4〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられる。
ここで、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、1−ブテン系樹脂とは、それぞれ、エチレン、プロピレン、または1−ブテンをモノマー単位の主成分として有する樹脂を意味し、より好ましくは、それぞれのモノマー単位を50重量%以上の組成で含有する樹脂である。
離ラジカル発生剤によるグラフト反応でシラン化合物をグラフトしたものが好適であるが、原料に用いるポリオレフィン樹脂がエチレン系樹脂であれば、グラフト化が好適になされるので好ましい。また、原料に用いるポリオレフィン樹脂がエチレン系樹脂であれば、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を電線被覆用に用いた場合に、耐熱性や難燃性が良好となるので好ましい。
架橋性ポリオレフィンの原料に用いるポリオレフィン樹脂としては、エチレン系樹脂の中でも、特にエチレン単独重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
本発明においてシラングラフトポリオレフィンとしては、前記ポリオレフィン樹脂を有機過酸化物等のラジカル発生剤の存在下に不飽和シラン化合物のグラフト反応工程に付して得られた変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。なお、グラフト化ではなく共重合によって架橋性ポリオレフィンを得ることも可能であり、その場合は、前記したポリオレフィン樹脂を構成するモノマーと不飽和シラン化合物とをラジカル共重合することによって得ることができる。
ここで、不飽和シラン化合物は限定されないが、具体的には、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
式(I)中、R1はエチレン性不飽和炭化水素基、R2は炭化水素基、Yは加水分解可能な有機基を表し、nは0〜2の整数である。
ここで、R1としては炭素数3〜10のエチレン性不飽和炭化水素基が好ましく、例えば、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等が挙げられる。R2としては炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基、フェニル基等が挙げられる。Yとしては炭素数1〜10の加水分解可能な有機基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。
このような不飽和シラン化合物の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、臭気等の観点から、ビニルトリメトキシシランが好適である。
有機化酸化物は限定されないが、具体的には、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)
−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バラレート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン等のペルオキシケタール類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルペルオキシド類;アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,5−ジクロロベンゾイルペルオキシド、m−トリオイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウリレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシマレイックアシッド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシオクテート等のペルオキシエステル類;ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、等のペルオキシジカーボネート類;t−ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロペルオキシド等のハイドロペルオキシド類などを挙げることができる。これらの中では、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシドなどが好ましい。
また、アゾ化合物は限定されないが、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレ−ト等を使用することが出来る。
ここで、シラングラフトポリオレフィンのグラフト量の測定は、赤外吸収スペクトル、1H−NMR、高周波プラズマ発光分析装置(ICP)等を用いた分析法により確認することができる。
0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、更に好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは20g/10分以下であることが望ましい。
ここでMFRは、ポリオレフィン樹脂がプロピレン系樹脂である場合は230℃、21.2N(2.16kg)荷重での値を意味し、ポリオレフィン樹脂がエチレン系樹脂、1−ブテン系樹脂またはその他のポリオレフィン樹脂である場合は190℃、21.2N荷重での値を意味する。ポリオレフィン樹脂のMFRが前記下限値未満では、流動性が低すぎるため押出機への負荷が高くなり生産性が低下する傾向にあり、MFRが前記上限値を超過する場合は流動性が高すぎて押出機によるストランド化が困難となる傾向にある。
なお、架橋性ポリオレフィンの密度は、上記と同様の理由により、好ましくは0.910g/cm3以上、より好ましくは0.915g/cm3以上、更に好ましくは0.920g/cm3以上であることが望ましく、一方、好ましくは0.935g/cm3以下、より好ましくは0.930g/cm3以下であることが望ましい。
なお、架橋性ポリオレフィンとして異なる2種以上を併用する場合において、上記の密度の値は、混合した架橋ポリオレフィンの密度を実測してもよいし、各々の密度と配合割合から計算によって求めてもよい。
従来、本発明で規定する範囲の密度では、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を試行することは多くはなされてこなかった。これは、このような密度範囲は、敢えて狙った調整を行わない限り、単独の樹脂では達成困難なためである。本発明においては、このような特殊な密度範囲を敢えて選択し、更に後述する通りの特定範囲のゲル含率とすることによって耐油性の向上効果を奏することを見出したものであるが、特定の密度範囲を達成する手段としては、架橋性ポリオレフィンとして異なる2種以上を併用する態様が好適である。
密度が低い架橋性ポリオレフィンとしては、密度0.870〜0.895g/cm3で
あることが好ましく、密度が高い架橋性ポリオレフィンとしては、密度0.930〜0.950g/cm3であることが好ましい。
なお、原料として2種以上のポリオレフィン樹脂を併用して不飽和シラン化合物のグラフト化を行うことにより、1つの架橋性ポリオレフィンとすることもできる。
本発明において金属水酸化物は、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に難燃作用を付与するために用いる。
金属水酸化物の種類は限定されないが、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カリウム、ハイドロタルサイト等が挙げられ、中でも、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
また、金属水酸化物の平均粒子径は、機械的特性、分散性、難燃性の点から4μm以下のものが好適である。
が課題とするレベルの難燃性が得られない傾向にある。一方、金属水酸化物の配合量が前記上限値を超過すると、加工性や機械的強度が低下する傾向にある。
本発明において架橋触媒は、上記の架橋性ポリオレフィンを架橋するために用いる。
架橋性ポリオレフィンとしてシラングラフトポリオレフィンを用い、架橋方法として水架橋を行う場合、架橋触媒としては、触媒の存在下に水分と接触させてポリオレフィン樹脂内に架橋構造を形成させることができる化合物、いわゆるシラノール縮合触媒が選択される。
シラノール縮合触媒としては、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第1錫、カプリル酸第1錫、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト等の金属脂肪酸塩が挙げられる。架橋触媒は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
架橋触媒のマスターバッチは市販品を用いることもでき、例えば、三菱化学社製、商品名「リンクロン触媒マスターバッチ」から選択して用いることができる。
本発明では、架橋性ポリオレフィンの他に、架橋性ではないポリオレフィン樹脂(以下、「その他のポリオレフィン樹脂」という場合がある。)を併用することができる。このような「その他のポリオレフィン樹脂」も、本発明における前記熱可塑性樹脂に包含されるものである。
その他のポリオレフィン樹脂は限定されないが、前記した、架橋性ポリオレフィンの原料として用いるポリオレフィン樹脂そのものを用いることができる。更には、不飽和カルボン酸などで変性されたポリオレフィン樹脂も含む。その他のポリオレフィン樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
これらの中では、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン等を好適に用いることができる。
また、その他のポリオレフィン樹脂を用いる場合の架橋性ポリオレフィン100重量部に対する使用量は限定されないが、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、一方、通常400重量部以下、好ましくは250重量部以下である。
その他のポリオレフィン樹脂を前記範囲の使用量で用いた場合、加工性や得られる成形
品の外観、諸物性が良好となる場合があるが、前記範囲を超えて用いた場合は、耐熱性や難燃性が低下する場合がある。
エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は限定されないが、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、一方、好ましくは55重量%以下、より好ましくは45重量%以下である。ここで、酢酸ビニル含有量とは、エチレン・酢酸ビニル共重合体を構成する全単量体単位のうち、酢酸ビニル由来の単量体の重量割合を意味する。なお、本発明において酢酸ビニル含有量の測定は、フーリエ変換赤外分光光度計を用い、JIS K7192(1999)に順じて測定した値を意味する。
エチレン・酢酸ビニル共重合体としては、例えば、日本ポリエチレン社製「ノバテックEVA」、三井・デュポンポリケミカル社製「エバフレックス」、ランクセス社製「レバプレン」等から適宜選択して使用することができる。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分以外の樹脂を、「その他の樹脂」として必要に応じて用いてもよい。その他の樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
なお、前記の「その他のポリオレフィン樹脂」のみならず、このような「その他の樹脂」も、本発明における前記熱可塑性樹脂に包含されるものである。
また、その他の成分として樹脂を用いる場合の架橋性ポリオレフィン100重量部に対する使用量は限定されないが、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、一方、通常400重量部以下、好ましくは250重量部以下である。
本発明におけるスチレン系エラストマーは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、柔軟性を付与する重合体ブロックとを有するものであれば限定されないが、具体的には、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックPと、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックQを有するブロック共重合体及び/または該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体が例示される(以下、重合体ブロックPを「ブロックP」、重合体ブロックQを「ブロックQ」と略記することがある)。
ここで、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体」とは、ビニル芳香族化合物を主体とする単量体を重合したものを意味し、「ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする重合体」とは、ブタジエン及び/またはイソプレンを主体とする単量体を重合したものを意味する。また、ここで「主体とする」とは、50モル%以上であることを意味する。
ブロックQは、重合後に有する二重結合を水素添加した水素添加誘導体であってもよい。ブロックQの水素添加率は限定されないが、50〜100重量%が好ましく、80〜100%が好ましい。ブロックQを前記範囲で水素添加することにより、本発明の積層体の熱安定性が向上する傾向にある。なお、ブロックPが、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。水素添加率は、13C−NMRにより測定することができる。
さらに、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体は、水素添加誘導体(以下、水添ブロック共重合体と略記する場合がある)が更に好ましい。下記式(1)又は(2)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、本発明の積層体の接着性が良好となる傾向にある。
P−(Q−P)m (1)
(P−Q)n (2)
(式中Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ表し、mは1〜5の整数を表し、nは2〜5の整数を表す)
式(1)又は(2)においてm及びnは、ゴム的高分子体としての秩序−無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい
。本発明においてはm及びnが1〜5の整数で与えられるものが好ましく、より好ましくは2〜4である。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分以外の添加剤等を、「その他の成分」として必要に応じて用いてもよい。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバル
ーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30〜45%程度以上がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが炭素原子芳香族系オイルと各々呼ばれている。本発明における炭化水素系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、および炭素原子芳香族系オイルから選択される何れかを用いることが好ましい。これらのうち、色相が良好であることから、パラフィン系オイルを用いることがより好ましい。合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン及び低分子量ポリブタジエン等が挙げられる。
なお、炭化水素系ゴム用軟化剤は、上述の各種軟化剤の何れか1種を単独で用いても、複数種の混合物でもよい。
炭化水素系ゴム用軟化剤の引火点(COC法)は限定されないが、200℃以上であるのが好ましく、250℃以上であるのが更に好ましい。
また、炭化水素系ゴム用軟化剤を用いる場合の含有量は、金属水酸化物を除く全成分中に、通常35重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、一方、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋性ポリオレフィン、金属水酸化物、必要に応じて用いる架橋触媒を同時に又は任意の順序で混合した後、これを架橋することによって製造することができる。
混合方法は具体的には、(1)架橋性ポリオレフィンと金属水酸化物を先に混合し、架橋触媒を後に加える方法、(2)架橋性ポリオレフィンと架橋触媒を先に混合し、金属水酸化物を後に加える方法、(3)全てを一括して混合する方法などがある。
なお、その他の成分は、均一に分散させることができればどのタイミングで加えてもよ
い。
なお、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋処理前の樹脂組成物においても、230℃、21.2N荷重でのメルトフローレート(MFR)の測定が困難な場合がある。しかしながら、異形押出を含む押出成形や圧縮成形等の種々の成形に十分な程度の流動性を有している。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を水架橋によって得る場合は、通常、水分と接触させることにより樹脂組成物内に架橋構造を形成させる。水架橋処理は、常温〜200℃程度、通常は常温〜100℃程度の液状又は蒸気状の水に、10秒〜1週間程度、通常は1分〜1日程度接触させることによりなされるが、このような処理を行わなくても空気中の水分によって架橋することが可能である。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、架橋処理することによって、難燃性、機械的特性、耐油性等に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を得ることができる。
ここで架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率とは、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成する樹脂成分中のゲル含率を意味する。すなわち、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物から樹脂以外の成分(金属水酸化物やその他の成分等)を除外した残分である樹脂成分を100重量%とした際のゲル含率をいう。
なお、架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率は、前記と同様の理由により、35重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上であり、更に好ましくは45重量%以上である。
また、架橋後の熱可塑性樹脂中のゲル含率の上限は限定されず、100重量%であってもよいが、加工性の観点から85重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましい。
架橋性ポリオレフィンの架橋後のゲル含率が前記範囲内であると、加工性、耐油性が良好となる傾向にある。
また、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の引張伸度(破断伸度)は、100%以上であることが好ましい。難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の引張伸度が前記範囲であることにより、電線被覆の用途に好適に用いることができる。
ここで引張強度や引張伸度は、JIS C−3005に準拠し、3号ダンベル試験片を用い、引張速度200mm/分で試験を行った際の引張特性をいうものとする。
ここで引張強度残率、引張伸度残率とは、オイルに浸漬しない引張試験の値を基準(100%)とし、引張強度、引張伸度の各々についてその保持率を算出た値を意味する。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形する方法は、押出成形、圧縮成形、射出成形など特に限定するものではないが、樹脂組成物の溶融状態での流動性の観点から押出成形で成形することが望ましい。また成形温度は樹脂組成物の溶融温度より高温であれば限定されないが、150℃〜250℃が望ましい。成形温度が前記下限値より高ければ溶融した樹脂組成物の流動性が高く、目的の形状の成形体を得やすい。また成形温度が前記上限値より低ければ、金属水酸化物の分解による発泡が起こりにくい。
架橋性ポリエチレンの製造には、以下の原料を使用した。
<ポリエチレン>
・ポリエチレン−1: 高密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ社製、「クレオレックス K4125」、密度0.941g/cm3、MFR(190℃、21.2N荷重)2.5g/10分)。
・ポリエチレン−2: エチレン・1−ブテン共重合体(ダウケミカル社製、「エンゲージENR 7256」、密度0.885g/cm3、MFR(190℃、21.2N荷重)2g/10分)。
<不飽和シラン化合物>
・ビニルトリメトキシシラン、信越化学社製。
<ラジカル発生剤>
・ジ−t−ブチルパーオキシド:日油株式会社製、「パーブチルD」。
ポリエチレン−1 100重量部に対し、不飽和シラン化合物を2重量部、ラジカル発生剤を0.044重量部添加して配合し、これを26mmφの2軸押出機(L/D=49、フルフライトスクリュー)にて押出樹脂温度200℃で押出した。押出したストランドをペレタイザーでペレット化して「架橋ポリエチレン−1」を製造した。得られた架橋性ポリエチレンの密度は0.943g/cm3であった。
ポリエチレン−1をポリエチレン−2に変更した以外は、架橋ポリエチレン−1と同様の方法で「架橋ポリエチレン−2」を製造した。得られた架橋性ポリエチレン−2の密度は0.892g/cm3であった。
実施例及び比較例の樹脂組成物の製造には、上記の原料とともに、以下の原料を使用した。
<エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)>
・三井・デュポンポリケミカル社製、「エバフレックス EV40LX」 (密度0.970g/cm3、MFR(190℃、21.2N荷重)2g/10分、酢酸ビニル含有量41重量%)
<酸変性ポリエチレン>
・三菱化学社製、「モディック M122」 (密度0.92g/cm3、MFR(190℃、21.2N荷重)1g/10分)
<水添スチレン・ブタジエン共重合体(SEBS)>
・旭化成ケミカルズ社製、「タフテック N504」 (密度0.91g/cm3、スチレン含有率30重量%)
・出光興産社製、「ダイアナプロセスオイル PW90」(鉱物油系炭化水素)
<カラー(顔料)マスターバッチ>
・大日精化工業社製、カラーマスターバッチ(ブラック)「PC40B」
<架橋触媒マスターバッチ>
・三菱化学社製、「リンクロン触媒マスターバッチ QCM292」
(ポリエチレンに、触媒としてジオクチル錫ジラウレートを0.1重量%含有)
<金属水酸化物>
・水酸化マグネシウム: 神島化学工業株式会社製、平均粒径1.0μm、シランカップリング剤表面処理品
表−1に記載の通りの配合比率で、架橋触媒を除く全ての原料を混合したものを、バンバリー混練機(神戸製鋼所社製、BB−4(3L))を用い、回転数90rpmで樹脂温度200℃に達するまで溶融混練した後、FR押出機(モリヤマ社製)を用いペレット化して樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物100重量部に対して架橋触媒マスターバッチ3重量部を配合した後、単軸押出機を用いて200℃で押出成形し、幅50mm×厚さ1mmの押出シート(架橋前の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物)を得た。
得られた押出シートを、80℃の温水に24時間浸漬することによって水架橋処理を行い、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。得られた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の架橋シートについて、以下の方法にてゲル含率、引張試験、耐油試験を行った結果を表−1に示す。
架橋処理を行った押出シートを144℃の沸騰キシレン中で10時間ソックスレー抽出を行った。次いで、溶解しなかった樹脂を乾燥後に重量を測定し、ソックスレー抽出前のサンプル重量に対する抽出されない樹脂の割合(重量%)としてゲル含率を算出した。なお、樹脂以外の成分については、原料配合割合に基づき、ゲル含率の計算から除外した。
架橋処理を行った押出シート(厚さ1mm)を用い、JIS C−3005に準拠して引張強度及び引張伸度の測定を行った。試験片は3号ダンベルを用い、引張速度は200mm/分とした。
引張強度、引張伸度の何れも、値が高い方が好ましいが、引張強度は10MPa以上を合格とし、引張伸度は100%以上を合格とした。
架橋処理を行った押出シート(厚さ1mm)から打ち抜き作成した3号ダンベル片を121℃に調整したオイル(サンオイル社製、IRM902)に18時間浸漬した。その後、付着した油分を拭き取り、23℃、50%RHの環境下に24時間保持した後、JIS
C−3005に準拠して引張強度及び引張伸度の測定を行った。引張速度は200mm/分とした。
オイルに浸漬しない引張試験の値を基準(100%)とし、引張強度、引張伸度の各々についてその保持率を算出し、それぞれ引張強度残率、引張伸度残率とした。引張強度残率、引張伸度残率の何れも、値が高い方が好ましいが、引張強度残率は30%以上を合格とし、引張伸度残率は40%以上を合格とした。なお、引張強度残率は40%以上、引張伸度残率は60%以上であることが更に好ましい。
Claims (11)
- 熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、該金属水酸化物の含有量が40重量%以上であり、該熱可塑性樹脂として、密度0.860〜0.900g/cm 3 である架橋性ポリオレフィンと、密度0.920〜0.960g/cm 3 である架橋性ポリオレフィンとの混合物である密度が0.905〜0.940g/cm3の架橋性ポリオレフィン混合物を含有し、かつ架橋後の該熱可塑性樹脂のゲル含率が35重量%以上である難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 該架橋性ポリオレフィンが、ポリオレフィン系樹脂を不飽和シラン化合物でグラフト変性したシラングラフトポリオレフィンである請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
- さらに該熱可塑性樹脂としてエチレン・酢酸ビニル共重合体を含有する請求項1または2に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 架橋性ポリオレフィン混合物の密度が0.915〜0.940g/cm 3 である請求項1〜3の何れか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の電線被覆用難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなる成形品。
- 請求項1〜4の何れかに記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を被覆してなる電線。
- 熱可塑性樹脂及び金属水酸化物を含有する樹脂組成物を架橋してなる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、該金属水酸化物の含有量を40重量%以上とし、該熱可塑性樹脂として、密度0.860〜0.900g/cm 3 である架橋性ポリオレフィンと、密度0.920〜0.960g/cm 3 である架橋性ポリオレフィンとの混合物である密度が0.905〜0.940g/cm 3 の架橋性ポリオレフィン混合物を用い、かつ架橋後の該熱可塑性樹脂のゲル含率が35重量%以上とするポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
- 該架橋性ポリオレフィンとして、ポリオレフィン系樹脂を不飽和シラン化合物でグラフト変性したシラングラフトポリオレフィンを用いる請求項8に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
- さらに該熱可塑性樹脂としてエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いる請求項8または9に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
- 密度が0.915〜0.940g/cm 3 である架橋性ポリオレフィン混合物を用いる請求項8〜10の何れか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
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