JP5383567B2 - 電線被覆用熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

電線被覆用熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、引張特性、熱老化特性、耐熱変形性、成形加工性、耐寒性に優れる電線被覆用熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関する。本発明は、特に電力電線の絶縁性被覆層用途において有用な熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法に関する。また本組成物は、特にJISC-3605(600V電力ポリエチレンケーブル規格の絶縁体層の規格)に適合した絶縁性被覆用材料に使用される。
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される電線の被覆材料には、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したエチレン系共重合体を主成分とする樹脂組成物を使用することがよく知られている。しかし、これらを適切な処理をせずに廃棄した場合、被覆材料に配合されている可塑剤や重金属安定剤が溶出したり、またこれらを燃焼させると被覆材料に含まれるハロゲン化合物から腐食性ガスが発生することがあり、近年、この問題が議論されている。この課題を解決するために例えばスチレン・イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体およびポリプロピレンをベース樹脂とし、軟化剤として非芳香族系ゴム用軟化剤を加えたビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物を、シラン表面処理された金属水和物を介して有機パーオキサイドを用いて部分架橋ならしめることにより、高い強度を有し、耐摩耗性に優れ、しかも難燃性を有する樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。
しかし、上記に開示されたような樹脂組成物を含め、600V電力ポリエチレンケーブル規格の絶縁体層の規格に適合した従来技術の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物は、引張特性、熱老化特性、耐熱変形性、成形加工性、耐寒性について、特性バランスがとれず、改善の余地があった。
特開2000−315424号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、引張特性、熱老化特性、耐熱変形性、成形加工性、耐寒性に優れた600V電力ポリエチレンケーブル規格の絶縁体層の規格に適合する電線被覆用熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の通りである。
1.下記成分(A)100質量部に対し、(d)有機過酸化物を0.05〜1.0質量部および(e)シランカップリング剤を0.5〜3.0質量部配合してなることを特徴とする電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
成分(A):
(a)ポリエチレン系樹脂 17〜60質量%、
(b)ポリエステル系樹脂 30〜80質量%、および
(c)相容化剤 3〜20質量%
(ただし、前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)
2.前記(a)ポリエチレン系樹脂の比重が0.80〜1.00、かつメルトフローレートが0.05〜15(g/10分)(規格JIS K7210、温度190℃、2.16kg荷重)であることを特徴とする前記1に記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
3.前記(c)相容化剤が、エポキシ基含有エチレン系共重合体、マレイン酸変性スチレン系共重合体およびマレイン酸変性オレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1または2に記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
4.前記(c)相容化剤が、エポキシ基含有エチレン系共重合体であることを特徴とする前記3に記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
5.前記(b)ポリエステル系樹脂が、結晶性ポリエステル系樹脂であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
.前記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする電力電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
.下記成分(A)100質量部に対し、(d)有機過酸化物を0.05〜1.0質量部および(e)シランカップリング剤を0.5〜3.0質量部の割合で配合し、混練する工程を有することを特徴とする電線被覆用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
成分(A):
(a)ポリエチレン系樹脂 17〜60質量%、
(b)ポリエステル系樹脂 30〜80質量%、および
(c)相容化剤 3〜20質量%
(ただし、前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)
.前記成分(a),(b),(c),(d)および(e)を一括混練することを特徴とする前記に記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、(a)ポリエチレン系樹脂、(b)ポリエステル系樹脂および(c)相容化剤を特定の割合で配合し、さらに(d)有機過酸化物を前記(a)〜(c)成分の合計に対し特定の割合でもって配合したので、とくに従来技術の課題とされた引張特性および熱老化特性を改善し、さらに耐熱変形性、成形加工性、耐寒性にも優れた600V電力ポリエチレンケーブル規格の絶縁体層の規格に適合する電線被覆用熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物は、上述のように、(a)ポリエチレン系樹脂、(b)ポリエステル系樹脂および(c)相容化剤を特定の割合で配合し、さらに(d)有機過酸化物を前記(a)〜(c)成分の合計に対し特定の割合でもって配合している。これにより、とくに従来技術の大きな課題とされた引張特性および熱老化特性を改善することができた。
本発明者らの検討によれば、前記(a)〜(c)成分を単に配合しただけでは、とくに十分な引張特性および熱老化特性を得ることができず、電線被覆用途しては採用することはできなかった。そこで本発明では、前記(a)〜(c)成分に(d)有機過酸化物を特定量配合することにより、前記課題を解決したものである。一般的に、熱可塑性樹脂組成物に有機過酸化物を配合すると、伸びが劣化し、また加熱老化後の伸び残率も悪化することが知られている。しかしながら本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、前記(a)〜(c)成分に(d)有機過酸化物を特定量配合したところ、驚くべきことに、引張特性および熱老化特性を改善できることを見出した。有機過酸化物の本来有する傾向(引張特性および熱老化特性の劣化)が、特定の樹脂成分および相容化剤の混合物を対象にした場合に、全く逆の結果をもたらすことは、従来技術の常識を翻す、予測不可能な効果であると言える。
以下、本発明で使用する各成分について説明する。まず、本発明の成分(A)を構成する(a)ポリエチレン系樹脂、(b)ポリエステル系樹脂および(c)相容化剤について説明する。
(a)ポリエチレン系樹脂
本発明で用いる成分(a)はエチレン系樹脂であり、例えば、エチレンの単独重合体または共重合体が挙げられる。成分(a)は、モノマーを通常の方法によって重合することにより合成され、その際に使用される触媒としては、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒等が挙げられる。
成分(a)の好ましい例として、エチレンの単独重合体またはエチレンを主体とする共重合体が挙げられ、具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-ブテンゴム、が挙げられる。線状低密度ポリエチレンとしては、エチレン・α−オレフィン共重合体等のエチレン系共重合体が挙げられる。ここで、α−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィン、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクテン−1等が挙げられる。
また、成分(a)の別の好ましい例として、極性エチレン系共重合体が挙げられ、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したエチレン系アイオノマー樹脂等が挙げられる。
成分(a)の比重は、好ましくは0.80〜1.00の範囲であり、より好ましくは0.85〜0.95である。また、成分(a)のMFR(メルトフローレート)は、(規格JIS K7210、温度190℃、2.16kg荷重)好ましくは0.05〜15の範囲であり、より好ましくは0.3〜10である。上記、比重、MFRが範囲内では引張伸び、熱老化特性に優れる点で好ましい。
中でも成分(a)としては、引張伸び、熱老化特性の点から、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)が好ましい。
成分(a)の配合量は、成分(a)、(b)および(c)の合計に対して17〜60質量%、好ましくは25〜45質量%である。上記配合量が17質量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の引張特性が悪化する。上記配合量が60質量%を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱変形性が悪化する。
前記ポリエチレン系樹脂の市販品としては2540R((株)プライムポリマー社製、比重0.923、MFR3.4)、SP2520((株)プライムポリマー社製、比重0.925、MFR1.9)、ZF33(日本ポリエチレン(株)社製、比重0.920、MFR1.1)、UBEC530(宇部丸善ポリエチレン(株)社製、比重0.92、MFR1.2)、NUC-6510(ダウ・ケミカル日本(株)社製、比重0.930、MFR0.5)、A1150(日本ポリエチレン(株)社製、比重0.932、MFR0.8)等があり、市場から容易に入手することができる。
(b)ポリエステル系樹脂
本発明で用いる成分(b)はポリエステル系樹脂である。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、二価以上の芳香族カルボン酸と、二価以上の、アルコールおよび/またはフェノールとを公知の方法で重縮合したものが挙げられる。その中でも耐熱変形性の点から、結晶性ポリエステル系樹脂、特に融点200℃以上の結晶性ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、耐熱変形性の点で好ましいのはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートであり、耐熱変形性の点からより好ましいのはポリブチレンテレフタレートである。
成分(b)の配合量は、成分(a)、(b)および(c)の合計に対して30〜80質量%、好ましくは45〜65質量%である。上記配合量が30質量%未満では得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱変形性が悪化する。上記配合量が80質量%を超えると得られる熱可塑性樹脂組成物の引張特性が悪化する。
前記ポリエステル系樹脂の市販品としてはノバデュラン(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)、EASTAR(EASTMAN社製)などがあり、市場から容易に入手することができる。
(c)相容化剤
本発明で用いられる(c)相容化剤は、特に限定されないが、(a)ポリエチレン系樹脂と(b)ポリエステル系樹脂とをより良好に相容化させるため、エポキシ基含有エチレン系共重合体、マレイン酸変性スチレン系共重合体およびマレイン酸変性オレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
エポキシ基含有エチレン系共重合体としては、例えばエチレンとグリシジルジメタクリレートとの共重合体等が挙げられ、商業的に入手可能である。
マレイン酸変性スチレン系共重合体としては、例えば、無水マレイン酸変性SEBS等が挙げられ、商業的に入手可能である。
マレイン酸変性オレフィン系樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等が挙げられ、商業的に入手可能である。
中でも、引張伸び、熱老化特性の点から、成分(c)としてはエポキシ基含有エチレン系共重合体が好ましく、エチレンとグリシジルジメタクリレートとの共重合体を使用する場合は、グリシジルジメタクリレートの割合は、コモノマー含量として3〜20質量%、好ましくは3〜15質量%であるのが好ましい。
成分(c)の配合量は、成分(a)、(b)および(c)の合計に対して、好ましくは3〜20質量%であり、より好ましくは5〜15質量%である。上記配合量が3質量%未満では(a)ポリエチレン系樹脂 と(b)ポリエステル系樹脂との相容性が十分でなくなり、引張伸び及び熱老化特性等が悪化する。上記配合量が20質量%を超えると、(a)ポリエチレン系樹脂 と(b)ポリエステル系樹脂とのの凝集性が強くなりすぎて、熱老化特性、耐熱変形性が低下する。
前記(c)相容化剤の市販品としては、ボンドファースト(住友化学工業(株)製)、タフテックMシリーズ(旭化成ケミカルズ(株) 製)などがあり、市場から容易に入手することができる。
次に、本発明で用いられる(d)有機過酸化物について説明する。
成分(d)としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert‐ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。成分(d)は、安全性、樹脂の劣化の観点から1分間半減期温度が150℃〜260℃であることが好ましい。
(d)有機過酸化物の配合量は、成分(A)、すなわち前記成分(a)、(b)および(c)の合計100質量部に対して、0.05〜1.0質量部の範囲であり、好ましくは0.1〜0.7質量部である。配合量が0.05質量部未満であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の引張伸び、熱老化特性(伸び残率)が悪化する。上記配合量が3.0質量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂の引張特性、成形加工性が悪化する。
前記(d)有機過酸化物の市販品としては、パーヘキサ(日本油脂(株)製)、カヤクミル、トリゴノックス(化薬アクゾ(株)製)などがあり、市場から容易に入手することができる。
(e)シランカップリング
e)シランカップリング剤は熱可塑性樹脂組成物の熱老化特性、引張伸びをさらに向上させる効果を有する。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基またはエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を末端に有するシランカップリング剤、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤等の架橋性のシランカップリング剤が好ましい。またこれらのシランカップリング剤は2種以上併用してもよい。
(e)シランカップリング剤の配合量は、成分(A)、すなわち前記成分(a)、(b)および(c)の合計100質量部に対して、好ましくは0.5〜3.0質量部の範囲である。上記配合量が3.0質量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂の成形加工性が悪化する場合がある。
前記(e)シランカップリング剤の市販品としては、Z−6300、Z−6030(東レ・ダウコーニング(株)製)、KBM−1003、KBM−503(信越化学工業(株)社製)などがあり、市場から容易に入手することができる(Z-6300,KBM-1003:ビニルトリメトキシシラン、Z-6030,KBM-503:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)。
(f)架橋助剤(任意成分)
本発明は、(f)架橋助剤を配合することもできる。
この必要に応じて添加される(f)架橋助剤は、(d)有機過酸化物可溶化作用を有し、(d)有機過酸化物の分散助剤として働くため、架橋を均一かつ効果的にすることができ、さらに引張伸び及び熱老化特性を向上する。例えば、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールの繰り返し単位数が9〜14のポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、2−メチル−1 ,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレートのような多官能性メタクリレート化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレートのような多官能性アクリレート化合物、ビニルブチラートまたはビニルステアレートのような多官能性ビニル化合物を挙げることができる。これらは、単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。上記の架橋助剤のうち、多官能性アクリレート化合物または多官能性メタクリレート化合物が好ましい。
(f)架橋助剤の配合量は、成分(A)、すなわち前記成分(a)、(b)および(c)の合計100質量部に対して、0.05〜3質量部の範囲であり、上記配合量を超えると架橋が進みすぎて、架橋物の分散が悪くなる場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で他の任意成分(g)を添加することが可能である。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール製改良剤、ステアリン酸、シリコーンオイル等の可塑剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウァラステナイト、クレー)、発泡剤(有機系、無機系)などを配合することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、下記成分(A)100質量部に対し、(d)有機過酸化物を0.05〜1.0質量部の割合で配合し、混練する工程を有する。
成分(A):
(a)ポリエチレン系樹脂 17〜60質量%、
(b)ポリエステル系樹脂 30〜80質量%、および
(c)相容化剤 3〜20質量%
(ただし、前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)
好適な形態において、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記成分(a),(b),(c)および(d)を一括混練することにより製造される。
具体的には、前記成分(a),(b),(c)に成分(d)を加え、さらに成分(e)や上記任意成分を加え、室温でドライブレンドし、混練機で加熱溶融混練して動的架橋を行うことにより本発明の熱可塑性樹脂組成物が得られる。
溶融混練の温度は、架橋反応を完全に終了させる(過酸化物を完全に分解させる)ため、少なくとも過酸化物の1分半減期温度以上、好ましくは1分半減期温度+5℃以上が好ましい。溶融混練の方法は、特に制限はなく、通常公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。
また、一括混練することにより、特に引張伸び、熱老化特性に優れた組成物が得られる。
このようにして得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、引張特性、熱老化特性、耐熱変形性、成形加工性、耐寒性に優れることから、電線被覆用として有用であり、特に電力を供給するための電線(電力電線)に有用である。電力電線としては、例えば600V以下の低圧電力電線や、高圧電力電線が挙げられる。電線の被覆方法としては公知の手段を利用すればよく、例えば押出法を採用することができる。
次に本発明を実施例および比較例により更に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の例に限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した原料は以下のとおりである。
(a)ポリエチレン系樹脂
(1)ポリエチレン系樹脂A:ネオゼックス2540R((株)プライムポリマー社製、LLDPE、重合法:溶液重合)、エボリューSP2520((株)プライムポリマー社製 メタロセンLLDPE、重合法:気相重合)、ZF33(日本ポリエチレン(株)社製、HPLDPE、重合法:高圧重合)、エンゲージ8842(ダウ・ケミカル日本(株) エチレン-オクテン共重合体(メタロセンLLDPE))、スミカセン-L GA701(住友化学(株)社製 LLDPE)
(2)ポリエチレン系樹脂B:NUC-6510(ダウ・ケミカル日本(株)社製、EEA)
(b)ポリエステル系樹脂
(1)ポリエステル系樹脂A:ノバデュラン5020 MI12(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ポリブチレンテレフタレートPBT)
(2)ポリエステル系樹脂B:EASTAR EN001(EASTMAN社製、ポリエチレンテレフタレートPET)
(c)相容化剤
(1)相容化剤A:ボンドファーストE(住友化学社製、エチレン-グリシジルジメタクリレート共重合体 GMA含有量:12質量%)
(2)相容化剤B:タフテックM1913(旭化成株式会社製、無水マレイン酸変性SEBS 無水マレイン酸グラフト率:% 酸価10mgCH3ONa/g)
(d)有機過酸化物
(1)有機過酸化物A:パーヘキサ25B(日本油脂株式会社、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン)
(2)有機過酸化物B:カヤクミルD(化薬アクゾ社製、ジクミルパーオキサイド)
(e)シランカップリング剤
(1)SZ−6030(東レ・ダウコーニング、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
(f)架橋助剤
(1)NK-エステルNOD-N(新中村化学社製、1,9−ノナンジオールジメタクリレート)
(2)NK-エステル3G(新中村化学社製、トリエチレングリコールジメタクリレート)
その他成分
(1)ME140(トクヤマ社製、ブロックPP)
(2)セプトン4077(クラレ社製、SEPS)
(3)PW−90(出光興産(株)社製、パラフィンオイル)
(4)キスマ5(協和化学社製、水酸化マグネシウム)
(実施例1〜18および比較例1〜7)
1.組成物の製造
上記各成分を表1〜4に示す割合(質量部)でドライブレンドした後、溶融混練機として直径20mm2軸混練押出機を用い、温度条件を150〜250℃として溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
2.試験方法
(1)引張特性(室温):JIS C-3605に準拠し、引張強さ(MPa)および伸び(%)を測定した。電線被覆用としては、引張強さが10MPa以上、伸びが200%以上要求される。
(2)熱老化特性:JIS C-3605に準拠し、120℃で96時間の加熱処理後の引張強さ残率(%)および伸び残率(%)を測定した。電線被覆用としては、引張強さ残率が80%以上、伸び残率が80%以上要求される。
(3)耐熱変形性(ホットセット試験):JIS C−3660に準拠し、負荷時伸び(%)、負荷解放後伸び(%)を測定を行った。電線被覆用としては、負荷時伸びが175%未満、負荷解放後伸びが15%未満要求される。
(4)耐寒性:JIS C−3605に準拠し、測定を行った。電線被覆用としては、−50℃未満の耐寒性が要求される。
Figure 0005383567
Figure 0005383567
Figure 0005383567
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実施例1〜18は本願発明の例を示したものであり、良好な性質を示す。ただし、実施例1〜16は参考例である。
比較例1は、スチレン系エラストマーであるが、耐熱変形性、成形加工性、耐寒性について、物性バランスがとれていない。
比較例2は、成分(a)の配合量が上限を超え、成分(b)の配合量が下限未満であるが、耐熱変形性に問題があった。
比較例3は、成分(a)の配合量が下限未満であり、かつ成分(b)の配合量が上限を超えた場合であるが、 引張特性に問題があった。
比較例4は、成分(c)の配合量が下限未満であるが、引張伸び及び熱老化特性に問題があった。
比較例5は、成分(c)の配合量が上限を超えた場合であるが、熱老化特性及び耐熱変形性に問題があった。
比較例6は、成分(d)の配合量が下限未満であるが、引張伸び及び熱老化特性(伸び)に問題があった。
比較例7は、成分(d)の配合量が上限を超えた場合であるが、引張特性及び成形加工性に問題があった。

Claims (8)

  1. 下記成分(A)100質量部に対し、(d)有機過酸化物を0.05〜1.0質量部および(e)シランカップリング剤を0.5〜3.0質量部配合してなることを特徴とする電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
    成分(A):
    (a)ポリエチレン系樹脂 17〜60質量%、
    (b)ポリエステル系樹脂 30〜80質量%、および
    (c)相容化剤 3〜20質量%
    (ただし、前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)
  2. 前記(a)ポリエチレン系樹脂の比重が0.80〜1.00、かつメルトフローレートが0.05〜15(g/10分)(規格JIS K7210、温度190℃、2.16kg荷重)であることを特徴とする請求項1に記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記(c)相容化剤が、エポキシ基含有エチレン系共重合体、マレイン酸変性スチレン系共重合体およびマレイン酸変性オレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記(c)相容化剤が、エポキシ基含有エチレン系共重合体であることを特徴とする請求項3に記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記(b)ポリエステル系樹脂が、結晶性ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする電力電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。
  7. 下記成分(A)100質量部に対し、(d)有機過酸化物を0.05〜1.0質量部および(e)シランカップリング剤を0.5〜3.0質量部の割合で配合し、混練する工程を有することを特徴とする電線被覆用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
    成分(A):
    (a)ポリエチレン系樹脂 17〜60質量%、
    (b)ポリエステル系樹脂 30〜80質量%、および
    (c)相容化剤 3〜20質量%
    (ただし、前記成分(a)〜(c)の合計は100質量%である)
  8. 前記成分(a),(b),(c),(d)および(e)を一括混練することを特徴とする請求項に記載の電線被覆用熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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