JP4306370B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物、及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は熱可塑性樹脂組成物、特に難燃性の熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳細には、埋立、燃焼などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がなく、かつ難燃性、耐熱性、引張特性および柔軟性に優れた電線被覆用樹脂組成物に関する。
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線・ケーブル・コードや光ファイバ心線、光ファイバコードなどには、難燃性、耐熱性、機械特性(例えば、引張特性、耐摩耗性)など種々の特性が要求されている。
このため、これらの配線材に使用される被覆材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドが主として使用されていた。
しかし、これらを適切な処理をせずに廃棄し、埋立てた場合には、被覆材料に配合されている可塑剤や重金属安定剤が溶出したり、また不適切な条件で燃焼した場合には、被覆材料に含まれるハロゲン化合物から有害ガスが発生したりすることがあり、近年、この問題が議論されている。
このため、不適切な廃棄や不適切な条件における燃焼によって環境に影響をおよぼすことが懸念されている有害な可塑剤や重金属の溶出や、ハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン難燃材料で被覆した配線材の検討が行われている。
ノンハロゲン難燃材料は、ハロゲンを含有しない難燃剤を樹脂に配合することで難燃性を発現させており、例えばエチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体などのエチレン系共重合体に、難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を多量に配合した材料が挙げられる。しかし、金属水酸化物を多量に配合する結果、被覆材料の引張特性や耐摩耗性などの機械特性が著しく低下するという問題がある。この問題を解決するために、金属水酸化物の配合量を減少させ、赤リンを配合する方法がとられている。しかし、リンを含むため、廃棄後に被覆材料から放出されるリンによる環境への影響、例えば富栄養化による水資源の汚染などの問題がある。
また、上記のように赤リンを使用して金属水酸化物の配合量を少なくする代わりにパーオキサイドを配合して架橋による機械特性の改善を行う方法も知られている。例えば、ポリオレフィンとカルボン酸変性ポリオレフィンのブレンドポリマー、金属水酸化物およびパーオキサイドを含有する組成物を該パーオキサイドの分解温度以上で混練し、これを導体外周に押出成形して難燃絶縁電線を得る方法が公知である(例えば、特許文献1)。
一方、本発明者らは先に、熱可塑性樹脂および金属水和物と共に、特定の有機過酸化物を使用することにより、低温で架橋を行うことができ、その結果、架橋による物性改良効果を効率的に引き出すことができ、かつ生産性を向上させることができる架橋熱可塑性樹脂組成物を見出した(特願2003−078453号明細書)。
特許第3265760号公報
本発明者らは、埋立、燃焼などの廃棄時において重金属化合物の溶出や多量の煙、腐食性ガスの発生がなく、かつ難燃性、機械特性、特に引張特性および柔軟性に優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物を得るべく鋭意研究した結果、特定の3成分を含む熱可塑性樹脂組成物を無機難燃剤および特定の有機過酸化物と溶融混練することにより、上記目的を達成した。
本発明は、
(A)下記成分(A−1)〜(A−3)を含む熱可塑性樹脂組成物100質量部:
(A−1)親水性官能基を有する熱可塑性樹脂、ここで、該熱可塑性樹脂はα-オレフィン単位(α)ならびに炭素、水素および酸素原子から構成される親水性官能基を有するモノマー単位(β)とで構成され、MFR(190℃、21.18N)が20g/10分以下であり、かつ成分(A−1)中におけるモノマー単位(β)の含有量が15質量%以上であり、成分(A)全体におけるモノマー単位(β)の存在量は10質量%以上である;
(A−2)結晶性のオレフィン系熱可塑性樹脂、ここで、該オレフィン系熱可塑性樹脂は、DSC融解曲線におけるピーク高さの最も大きいピークトップ融点(Tm)が120℃以上であり、かつ120℃以上における融解熱量(120℃結晶化度指数:Xc)が35J/g以上であり、該オレフィン系熱可塑性樹脂の量は、成分(A)の量の1質量%〜45質量%である;および
(A−3)下記成分(A−3−1)〜(A−3−4)から選択される一以上の柔軟化成分、ここで、該柔軟化成分の量は、成分(A)の量の1質量%〜48質量%である:
(A−3−1)芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体;
(A−3−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物;
(A−3−3)非ハロゲン系未架橋ゴム;および
(A−3−4)非芳香族系ゴム用軟化剤、
(B)水酸化アルミニウム50〜300質量部、および
(C)1分間半減期温度が165℃以下である有機過酸化物0.001〜1質量部
を該有機過酸化物の1分間半減期温度以上の温度で溶融混練して得られる難燃性熱可塑性樹脂組成物である。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、成分(A)全体における成分(A−1)の量が、φ=b・X/100≧10(bは成分(A−1)中におけるモノマー単位(β)の配合割合(質量%)であり、Xは成分(A)における成分(A−1)の配合割合(質量%)である)を満たす量である事を特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、成分(B)が酸化金属化合物、水酸化金属化合物、炭酸金属化合物、珪酸金属化合物、ホウ酸金属化合物、およびそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物であることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれか1の発明において、(D)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤0.003〜2.5質量部を更に含む難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれか1の発明において、成分(A−1)がエチレン酢酸ビニル共重合体(A−1−1)及び/又はエチレン−(メタ)アクリレート共重合体(A−1−2)である難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれか1の発明において、成分(A−2)が結晶性プロピレン系重合体及び/又はその酸変性物である難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第3〜6のいずれか1の発明において、成分(B)が水酸化アルミニウムである難燃性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれか1の発明における難燃性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体が提供される。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、埋立、燃焼などの廃棄時において重金属化合物の溶出や多量の煙、腐食性ガスの発生がなく、かつ難燃性、耐熱性、引張特性および柔軟性に優れている。
本発明を構成する難燃性熱可塑性樹脂組成物、製造方法、用途について以下に詳細に説明する。
熱可塑性樹脂組成物(A)は、下記成分(A−1)〜(A−3)を含む。
(A−1)親水性官能基を有する熱可塑性樹脂
成分(A−1)は、α-オレフィン単位(α)ならびに炭素、水素および酸素原子から構成される親水性官能基を有するモノマー単位(β)とで構成される。α-オレフィン単位(α)は、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンを包含する。親水性官能基を有するモノマー単位(β)は、例えば酢酸ビニル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸およびビニルアルコールを包含する。親水性官能基としては−COOR(Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基である)を有するものが、燃焼時に脱カルボキシル反応(脱炭酸反応)を起こすという理由により、好ましい。上記単位(α)および(β)によって構成される成分(A−1)の例としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、鹸化エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVOH)、マレイン酸変性ポリオレフィン、アクリル酸変性ポリオレフィンが挙げられ、これらを単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
成分(A−1)は、成分(A−1)中におけるモノマー単位(β)の含有量(b)が15質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、最も好ましくは30〜90質量%である。15質量%未満では難燃性補助効果が不充分であり、90質量%を超えると難燃性熱可塑性樹脂組成物が非常に硬いものになる可能性がある
また、成分(A−1)は、MFR(JIS K6924−2準拠、190℃、21.18N)が20g/10分以下であり、好ましくは10g/10分以下、より好ましくは5g/10分以下、最も好ましくは0.1〜2g/10分である。20g/10分を越えると引張特性の保持が困難になり、0.1g/10分未満のものでは難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形性が不足する可能性がある。
また、成分(A)全体におけるモノマー単位(β)の存在量(φ)は、10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満では、難燃性補助効果が不充分である。したがって、成分(A−1)の量は、この条件を満たす範囲内である。例えば、単位(β)としての酢酸ビニルを30質量%含むエチレン・酢酸ビニル共重合体(A−1)を成分(A)の50質量%使用すると、成分(A)におけるモノマー単位(β)の量は15質量%となる。
上記記述を数式化すれば、成分(A)全体における成分(A−1)の量は、φ=b・X/100(bは成分(A−1)中におけるモノマー単位(β)の配合割合(質量%)であり、Xは成分(A)における成分(A−1)の配合割合(質量%)である)が10以上、好ましくは12以上、より好ましくは15以上となる量である。したがって、bが充分大きい値であってもXがはるかに小さい値の場合や、Xが充分大きい値であってもbがはるかに小さい値の場合は、φが上記範囲を満たさなくなり適さない。例えば、単位(β)としての酢酸ビニルを30質量%含むエチレン・酢酸ビニル共重合体(A−1)を成分(A)の50質量%使用すると、φ=30×50/100=15と計算される。
(A−2)結晶性のオレフィン系熱可塑性樹脂
成分(A−2)は、例えば、結晶性プロピレン系重合体、高密度および中密度ポリエチレンを包含する。中でも、結晶性プロピレン系重合体が、熱可塑性の保持の点から好ましい。また、これらを酸変性したもの、例えば、エステル基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基等から選ばれる1種以上の官能基を有しているものも、成分(A−1)との混和性向上を期待できるので、成分(A−2)として好ましく使用できる。成分(A−2)は、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
成分(A−2)は、DSC融解曲線におけるピーク高さの最も大きいピークトップ融点(Tm)が120℃以上であり、好ましくは125〜150℃未満、より好ましくは130〜140℃である。120℃未満では難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐加熱変形性、耐応力亀裂性が不充分になる。150℃以上では、下記で述べる理由により無機難燃剤(B)として水酸化アルミニウムを使用することができなくなる。また、成分(A−1)との融解温度差が大きくなるため、難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造、成形体の成形時の条件取りに熟練を要する。
DSC測定は、230℃で5分間保持した後、10℃/分で−10℃まで冷却し、次いで−10℃で5分間保持した後、10℃/分で230℃まで加熱することによって行われ、この加熱時における融解曲線を求める。
また、成分(A−2)は、120℃以上における融解熱量(120℃結晶化度指数:Xc)が≧35J/g、好ましくは45J/g以上、より好ましくは50J/g以上である。35J/g未満では難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐加熱変形性、耐応力亀裂性が不充分になる。なお、成分(A−2)として2種以上を組み合わせて使用する場合の融解熱量は、成分(A−2)全体の相加平均値を用いる。
成分(A−2)の量は、熱可塑性樹脂組成物(A)全体の1質量%〜45質量%、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、最も好ましくは7〜30質量%である。1質量%未満では難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐加熱変形性、耐応力亀裂性が不充分になる。45質量%を超えると、難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐候性が不充分になる。また造粒方法において無機難燃剤(B)を多量に含む組成物を製造する時に最も好ましいホットカット法を採用することが出来なくなる。
(A−3)柔軟化成分
(A−3−1)芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体
成分(A−3−1)としては、例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体」という)を挙げることができる。
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、好ましくは芳香族ビニル化合物のみから成るか、または芳香族ビニル化合物50質量%以上、好ましくは70質量%以上と、任意成分、例えば共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、好ましくは共役ジエン化合物のみから成るか、または共役ジエン化合物50質量%以上、好ましくは70質量%以上と、任意成分、例えば芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックである。
なお、上記水添ブロック共重合体は、例えば、芳香族ビニル化合物を5〜60質量%、好ましくは、20〜50質量%含む。
これらの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、分子鎖中の共役ジエン化合物又は芳香族ビニル化合物由来の単位の分布は、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの任意の組合せでなっていてもよい。芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA又は共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBがそれぞれ2個以上ある場合には、各重合体ブロックはそれぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
水添ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、なかでもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、なかでもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せが好ましい。
水添ブロック共重合体にあって、その水添率は任意であるが、好ましくは共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて50モル%以上、より好ましくは55モル%以上、更に好ましくは60モル%以上である。そのミクロ構造は任意である。
水添ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000〜1,500,000、より好ましくは、10,000〜550,000、更に好ましくは90,000〜400,000の範囲であり、分子量分布は10以下である。水添ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
水添ブロック共重合体の例としては、例えば、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体(SEBC)を挙げることができる。具体的には、セプトン4077、4055、4033(クラレ株式会社製)として市販されているSEPS;クレイトン6933MD(クレイトンポリマージャパン社製)、ダイナロン8601P(ジェイエスアール社製)として市販されているSEBS;ダイナロン4600P(ジェイエスアール社製)として市販されているSEBC;およびスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)(鐘淵化学社製)が挙げられる。
また、上記水添ブロック共重合体を酸変性したものも本発明の成分(A−3−1)として使用することができる。酸変性物は、成分(A−1)との混和性向上が期待できる。上記酸変性物の具体例としてはダイナロン4630P、8630P(ジェイエスアール社製)が挙げられる。
(A−3−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物
成分(A−3−2)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物(以下、「水添ランダム共重合体」という)であって、数平均分子量が好ましくは5,000〜1,000,000であり、より好ましくは10,000〜350,000であり、多分散度(Mw/Mn)の値が10以下である。
また、上記水添ランダム共重合体における芳香族ビニル化合物の含有量は、50質量%以下、好ましくは、3〜35質量%である。50質量%を超えると得られる成形品の感触が硬くなり、本発明の目的に添わない。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。
共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
上記水添ランダム共重合体は、共役ジエン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90モル%が水素添加されたものが好ましい。
水添ランダム共重合体の具体例としては、ダイナロン1320P(ジェイエスアール社 製、水添スチレン・ブタジエンゴム(HSBR、重量平均分子量=30万、Mw/Mn=1.1)等を挙げることができる。
また、上記水添ランダム共重合体を酸変性したものも本発明の成分(A−3−2)として使用することができる。酸変性物は、成分(A−1)との混和性向上が期待できる。酸変性物としては、例えば、エステル基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基等から選ばれる1種以上の官能基を有しているものが挙げられる。
(A−3−3)非ハロゲン系未架橋ゴム
成分(A−3−3)の例としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(EBR、EHR、EORなど)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)が挙げられる。また、これらを酸変性したものも本発明の成分(A−3−3)として使用することができる。酸変性物は、成分(A−1)との混和性向上が期待できる。酸変性物としては、例えば、エステル基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基等から選ばれる1種以上の官能基を有しているものが挙げられる。
(A−3−4)非芳香族系ゴム用軟化剤
成分(A−3−4)としては、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を挙げることができる。ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものはパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
本発明で非芳香族系ゴム用軟化剤として用いられる鉱物油系ゴム用軟化剤は、区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。芳香族系の軟化剤は、その使用により熱可塑性樹脂が可溶となり、架橋反応を阻害し、得られる組成物の物性の向上が図れないので好ましくない。本発明の非芳香族系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系のものが好ましく、更にパラフィン系の中でも芳香族環成分の少ないものが特に適している。
これらの非芳香族系ゴム用軟化剤の性状は、37.8℃における動的粘度が20〜50,000cSt、好ましくは20〜1,000cSt、100℃における動的粘度が5〜1,500cSt、好ましくは5〜100cSt、流動点が−10〜−25℃、引火点(COC)が170〜350℃を示すのが好ましい。さらに、重量平均分子量が100〜2,000のものが好ましい。
成分(A−3−4)の例としては、PW−90、PW−380(出光興産社製、パラフィン系オイル)が挙げられる。また、上記非芳香族系ゴム用軟化剤を酸変性したものも本発明の成分(A−3−4)として使用することができる。酸変性物は、成分(A−1)との混和性向上が期待できる。
柔軟化成分(A−3)は、上記(A−3−1)〜(A−3−4)の1種を、または2種以上を組み合わせて使用することができる。柔軟化成分(A−3)の量は、熱可塑性樹脂組成物(A)全体の1質量%〜48質量%、好ましくは5〜45質量%である。1質量%より少ないと柔軟性改良効果が得られず、48質量%より多いと難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐加熱変形性が不充分になる。
(B)無機難燃剤
成分(B)は、無機系難燃剤であり、好ましくは、酸化金属化合物、水酸化金属化合物、炭酸金属化合物、珪酸金属化合物、ホウ酸金属化合物、およびそれらの水和物から選択される。具体的には、水酸化アルミニウムおよびその水和物、水酸化マグネシウムおよびその水和物、水酸化ジルコニウムおよびその水和物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、オルト珪酸アルミニウム、ドロマイト、ハイドロマグネサイト、ハイドロタルサイト、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、錫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化スズの水和物、硼砂などの無機金属化合物の水和物が挙げられ、これらを単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよびそれらの水和物が好ましい。また、これらの中でも、水酸化アルミニウムが価格と難燃効果のバランスの点から最も好ましい。
なお、水酸化アルミニウムは、無機難燃剤の中でも特に低温で分解する。また工業的に使用される水酸化アルミニウムには酸化ナトリウムなどの不純物が含まれ、純品よりもさらに低い温度で分解が始まる。更に、金属水和物は分解前に結晶水を放出する。このような分解や結晶水の放出は発泡トラブルに繋がり、工業的に許容できないものである。したがって、このようなトラブルを回避すべく、難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造における混練温度をより低くすることが必要であり、そのために、以下に述べる成分(C)を使用することが特に重要である。
上記無機難燃剤は、各種カップリング剤(シラン、チタン等)および各種表面処理剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩等)で処理されたものを用いても良い。
成分(B)の量は、成分(A)100質量部に対して50〜300質量部、好ましくは100〜280質量部である。上限を超えると力学的強度や伸び、耐傷付き性、押出特性が著しく低下する。下限未満では充分な難燃性が得られない。
(C)1分間半減期温度が165℃以下の有機過酸化物
成分(C)は、低温でラジカルを発生せしめ、そのラジカルを連鎖的に反応させて、熱可塑性樹脂を動的架橋せしめ、難燃性、耐油性、耐熱性を向上させる機能を果たす。
1分間半減期温度が低い有機過酸化物ほど、低い混練温度で動的架橋を行うことができるが、低すぎると消防法に定められた危険物としての取り扱いがより難しくなること、及び低い温度では、樹脂の粘度が高すぎるため、せん断発熱が大きくなることから、1分間半減期温度が165℃以下、好ましくは160℃以下、特に好ましくは140〜155℃の有機過酸化物が好ましい。
また、上記したように、1分間半減期温度が低い有機過酸化物は、低い混練温度で動的架橋を行うことができるため、難燃剤の中でも特に低温で分解する水酸化アルミニウムの分解や金属水和物の結晶水の放出を生じることなく熱可塑性樹脂を充分に動的架橋させる事を可能にする。
1分間半減期温度が165℃以下の有機過酸化物の具体例としては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(1分間半減期温度147.1℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(1分間半減期温度149.0℃)、ベンゾイルパーオキシド+ベンゾイルm−メチルベンゾイルパーオキシド+m−トルオイルパーオキシド(1分間半減期温度131.1℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(1分間半減期温度160.3℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン(1分間半減期温度142.1℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度149.2℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度153.8℃)、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(1分間半減期温度153.8℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン(1分間半減期温度152.9℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1分間半減期温度155.0℃)、Succinic peroxide(1分間半減期温度131.8℃)、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度137.7℃)、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度132.6℃)、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度134.0℃)、m−トルオイルおよびベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度131.1℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度136.1℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(1分間半減期温度159.4℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン(1分間半減期温度156.0℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1分間半減期温度158.8℃)、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート(1分間半減期温度161.4℃)、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(1分間半減期温度158.2℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(1分間半減期温度159.9℃)、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン(1分間半減期温度159.9℃)が挙げられるが、これらのうちで1分間半減期温度140〜155℃のものが特に好ましい。
上記化合物を使用した製品名としては、例えば、日本油脂株式会社からパーヘキサTMH(1分間半減期温度147.1℃)、パーヘキサ3M(1分間半減期温度149.0℃)、ナイパーBMT(1分間半減期温度131.1℃)、パーヘキシルZ(1分間半減期温度160.3℃)、パーヘキサMC(1分間半減期温度142.1℃)、パーヘキサHC(1分間半減期温度149.2℃)、パーヘキサC(1分間半減期温度153.8℃)、パーテトラA(1分間半減期温度153.8℃)、パーヘキサCD(1分間半減期温度152.9℃)、パーヘキシルI(1分間半減期温度155.0℃)、パーヘキシルI(C)(1分間半減期温度155.0℃)、パーロイルSA(1分間半減期温度131.8℃)、パーシクロ0(1分間半減期温度137.7℃)、パーヘキシル0(1分間半減期温度132.6℃)、パーブチル0(1分間半減期温度134.0℃)、ナイパーBMT(1分間半減期温度131.1℃)、パーブチルIB(1分間半減期温度136.1℃)、パーブチルL(1分間半減期温度159.4℃)、パーヘキサ25MT(1分間半減期温度156.0℃)、パーブチルI(1分間半減期温度158.8℃)、パーブチルE(1分間半減期温度161.4℃)、パーヘキサ25Z(1分間半減期温度158.2℃)、パーブチルA(1分間半減期温度159.9℃)、パーヘキサ22(1分間半減期温度159.9℃)が挙げられる。また、化薬アクゾ株式会社からも同等な製品が市販されている。
1分間半減期温度165℃以下の有機過酸化物(C)の配合量は、熱可塑性樹脂組成物(A)100質量部に対して、0.001〜1質量部であり、好ましくは0.01〜0.5質量部である。配合量が0.001質量部未満では、架橋を十分達成できず、1質量部を超えると架橋が進み過ぎて熱可塑性を失う。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、任意成分として、以下に記載する(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤を含むことができる。
(D)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤
架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールの繰り返し単位数が9〜14のポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレートのような多官能性メタクリレート化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレートのような多官能性アクリレート化合物、ビニルブチラート又はビニルステアレートのような多官能性ビニル化合物を挙げることができる。これらは、単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。上記の架橋助剤のうち、多官能性アクリレート化合物または多官能性メタクリレート化合物が好ましく、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートが特に好ましい。これらの化合物は、取り扱いが容易であると共に、有機パーオキサイド可溶化作用を有し、有機パーオキサイドの分散助剤として働くため、架橋を均一かつ効果的にすることができる。
成分(D)の配合量は、熱可塑性樹脂組成物(A)100質量部に対して、0.003〜2.5質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1.6質量部である。前記下限値未満では、架橋反応が充分でない。一方、前記上限値を超えると架橋が進みすぎて、架橋物の分散が悪くなる。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、上記成分(A−1)、(A−2)、(A−3)以外の熱可塑性樹脂、リン系、フェノール系、硫黄系など各種の酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤など各種の耐候剤、銅害防止剤、変性シリコーンオイル、シリコーンオイル、ワックス、酸アミド、脂肪酸、脂肪酸金属塩など各種の滑剤、芳香族リン酸金属塩系、ゲルオール系など各種の造核剤、グリセリン脂肪酸エステル系、脂肪族パラフィンオイル、芳香族系パラフィンオイル、フタル酸系、エステル系など各種の可塑剤、タルク、クレーなど各種のフィラー、各種の着色剤などの添加剤等を必要に応じてさらに添加することができる。なお成形品表面にブリードアウトするなどのトラブルを防止するため、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物との混和性、相溶性の高いものが好ましい。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、上記成分を溶融混練することにより得られる。溶融混練の方法は特に制限がなく、通常公知の方法を使用することができる。例えば単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーまたは各種ニーダー等を使用することができる。ここで溶融混練の温度は、使用する樹脂、及び有機過酸化物の種類によって異なるが、該有機過酸化物の1分間半減期温度以上であり、好ましくは1分間半減期温度に対して+5℃〜+20℃である。
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、引張特性、柔軟性に優れており、電気・電子機器の内部および外部配線に使用される配線材の被覆材、および光ファイバ心線、光ファイバコードなどの被覆材として有用である。上記被覆材は、好ましくは、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を、汎用の押出被覆装置を用いて、導体周囲や絶縁電線周囲に押出被覆することにより製造することができる。
本発明を以下の実施例、比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用いた物性の測定法及び試料を以下に示す。
1.物性測方法
(1)比重:JIS K 7112に準拠し、測定を行なった。
(2)硬度:JIS K 7215に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用いた。
(3)MFR:ASTM−D1238に準拠して測定した。
(4)引張最大応力、引張最大伸び、100%伸び時の応力:JIS K 6723に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、2号ダンベル型試験片に打抜いて使用した。引張速度は200mm/分とした(室温)。
(5)加熱処理後の引張最大応力残率、引張最大伸び残率、100%伸び時の応力:JIS K 6723に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、2号ダンベル型試験片に打抜いて使用した。120℃、96時間の加熱処理を行った後に引張速度200mm/分で引張試験を行った。
(6)加熱変形:JIS K 6723に準拠し、測定を行った(120℃、1000g、1時間)。
(7)60°傾斜難燃特性:難燃性熱可塑性樹脂組成物を絶縁電線周囲に押出被覆したものを試験片として、JIS C 3005に規定される60゜傾斜燃焼試験をおこない、30秒以内で自消したものを合格とした。
2.実施例及び比較例において用いた試料
成分(A−1):
(1) EV180:エチレン−酢酸ビニル共重合体、三井デュポンポリケミカル社製、酢酸ビニル含量33質量%、MFR(190℃、21.18N)0.2g/10分、
(2) EV170:エチレン−酢酸ビニル共重合体、三井デュポンポリケミカル社製、酢酸ビニル含量33質量%、MFR(190℃、21.18N)1.0g/10分、
(3) V−220:エチレン−酢酸ビニル共重合体、宇部興産社製、酢酸ビニル含量20質量%、MFR(190℃、21.18N)2.0g/10分、
(4) LOTRYL24MA005:エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アトフィナ製、アクリル酸メチル含量24質量%、MFR(190℃、21.18N)0.5g/10分、
(5) NUC6510:エチレン−アクリル酸エチル共重合体、日本ユニカー社製、アクリル酸エチル含量23質量%、MFR(190℃、21.18N)0.5g/10分、
成分(A−2):
(6) FW3E:ランダムPP、日本ポリケム製、Tm=139℃、Xc=58J/g、MFR(230℃、21.18N)7.0g/10分、
成分(A−2)の比較物質:
(7) SP2040:メタロセン触媒使用直鎖状低密度ポリエチレン(MeLLDPE)、三井住友ポリオレフィン社製、Tm=117℃、Xc=15J/g、MFR(190℃、21.18N)4.0g/10分、
(8) KF360:メタロセン触媒使用直鎖状低密度ポリエチレン(MeLLDPE)、日本ポリケム社製、Tm=84℃、Xc=0J/g、MFR(190℃、21.18N)3.5g/10分、
(9) アドマーXE070:マレイン酸変性ポリエチレン、三井化学株式会社製、Tmを有しない、Xc=0J/g、MFR(190℃、21.18N)3.0g/10分、
成分(A−3−1):
(10)ダイナロン4630P:水添ブロック共重合体(酸変性されたSEBC)、 JSR製、MFR2g/10分(230℃、21.18N)、スチレン含量5質量%
(11)セプトン4055:水添ブロック共重合体(SEEPS)、クラレ株式会社製、スチレンの含有量:30質量%、イソプレンの含有量:70質量%、質量平均分子量:260,000、数平均分子量:200,000、分子量分布(Mw/Mn):1.3、水素添加率:90モル%以上
成分(A−3−4):
(12)ダイアナプロセスオイルPW−90:パラフィン系オイル、出光興産株式会社製、動的粘度(40℃)95.54cSt、動的粘度(100℃)11.25cSt、COC 270℃、数平均分子量:540、流動点−15.0℃
成分(B):
(13)ハイジライトH−42M:水酸化アルミニウム、昭和電工社製
(14)キスマ5L:シランカップリング処理された水酸化マグネシウム、協和化学社製
成分(C):
(15)パーヘキサC−40:1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、不活性固体による希釈物(純度40%)、日本油脂株式会社製、1分間半減期温度154℃
成分(C)の比較物質:
(16)パークミルD:ジクミルパーオキサイド、日本油脂株式会社製、1分間半減期温度175℃
成分(D):
(17)NKエステルIND:2−メチル−1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、新中村化学社製
表1〜3に示す量(質量部)の各成分を用い、室温ですべての成分をドライブレンドし、モリヤマ社製の20L加圧ニーダーを用いて、溶融混練して動的架橋を行い、排出し、実施例1〜5および比較例1〜5の難燃性熱可塑性樹脂組成物を得た。なお、溶融混練温度は、成分(C)の1分間半減期温度に対して+5〜20℃の排出時樹脂温度を目標とし、実測値を排出時樹脂温度測定値として表1〜3に示した。
次に、ナカタニ社製の2軸押出機を用い、排出時樹脂温度相当のダイス温度で、ホットカット方式の造粒を行い、得られたペレットをロールによりシート化し、さらに、それを熱プレスして試験片を作成し、夫々の試験に供した。評価結果を表1〜3に示す。
Figure 0004306370
Figure 0004306370
Figure 0004306370
表1に示すように、本発明に従う組成物は、難燃性、耐熱性、引張特性および柔軟性の全てにおいて優れている。一方、表2に示すように、成分(A−1)を含まない組成物は難燃性に劣る(比較例1および4)。また、成分(A−2)として120℃結晶化度指数(Xc)が35J/g未満のものを使用した比較例2および4の組成物は、加熱処理後の引張特性において融解落下し、耐熱性が不十分であった。また、成分(A−3)を含まない組成物は柔軟性において不十分であった(比較例3および4)。
また、成分(B)として水酸化アルミニウムを使用する場合に、表3の実施例5に示すように、成分(C)として1分間半減期温度が165℃以下の有機過酸化物を用いると、水酸化アルミニウムが分解する温度より低い温度で混練架橋することができるため、良好な組成物が得られた。一方、比較例5に示すように、成分(C)として1分間半減期温度が165℃を超える有機過酸化物を用いた場合は、混練架橋温度が水酸化アルミニウムの分解温度より高くなり、その結果、発泡(水酸化アルミニウムの分解)が起こり、良好な組成物を得ることができなかった。

Claims (5)

  1. (A)下記成分(A−1)〜(A−3)を含む熱可塑性樹脂組成物100質量部:
    (A−1)親水性官能基を有する熱可塑性樹脂、ここで、該熱可塑性樹脂はα-オレフィン単位(α)ならびに炭素、水素および酸素原子から構成される親水性官能基を有するモノマー単位(β)とで構成され、MFR(190℃、21.18N)が20g/10分以下であり、かつ成分(A−1)中におけるモノマー単位(β)の含有量が15質量%以上であり、成分(A)全体におけるモノマー単位(β)の存在量は10質量%以上である;
    (A−2)結晶性のオレフィン系熱可塑性樹脂、ここで、該オレフィン系熱可塑性樹脂は、DSC融解曲線におけるピーク高さの最も大きいピークトップ融点(Tm)が120℃以上であり、かつ120℃以上における融解熱量(120℃結晶化度指数:Xc)が35J/g以上であり、該オレフィン系熱可塑性樹脂の量は、成分(A)の量の1質量%〜45質量%である;および
    (A−3)下記成分(A−3−1)〜(A−3−4)から選択される一以上の柔軟化成分、ここで、該柔軟化成分の量は、成分(A)の量の1質量%〜48質量%である:
    (A−3−1)芳香族ビニル化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物をその構成成分の主体とした少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体;
    (A−3−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物;
    (A−3−3)非ハロゲン系未架橋ゴム;および
    (A−3−4)非芳香族系ゴム用軟化剤、
    (B)水酸化アルミニウム50〜300質量部、および
    (C)1分間半減期温度が165℃以下である有機過酸化物0.001〜1質量部
    を該有機過酸化物の1分間半減期温度以上の温度で溶融混練して得られる難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  2. (D)(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤0.003〜2.5質量部を更に含む請求項1記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 成分(A−1)がエチレン酢酸ビニル共重合体(A−1−1)及び/又はエチレン−(メタ)アクリレート共重合体(A−1−2)である請求項1〜の何れか1項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 成分(A−2)が結晶性プロピレン系重合体及び/又はその酸変性物である請求項1〜の何れか1項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
  5. 上記の請求項1〜の何れか1項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
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