JP2011057906A - 難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形物品 - Google Patents

難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形物品 Download PDF

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Abstract

【課題】難燃性、機械特性、耐摩耗性、圧接性に優れ、耐熱性、特に熱老化後の機械特性の低下が著しく少ない難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形物品を提供する。
【解決手段】(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂10〜85質量%、(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、(c)ポリプロピレン系樹脂0〜65質量%、(d)エチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、及び(e)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有し、(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体と(d)エチレン−α−オレフィン共重合体の合計が5質量%以上である樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有する難燃性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、成形加工時において架橋設備等の特殊な設備を必要としない、機械特性、耐摩耗性、および耐熱性に優れた難燃性樹脂組成物に関する。またそれを用いた、難燃性に優れた成形物品、例えば、シート、チューブ、配線材、光ファイバコード、およびその他の成形物品に関する。
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線・ケーブル・コードや光ファイバ心線、光ファイバコードなどには、難燃性、耐熱性、機械特性(例えば、引張特性、耐摩耗性)など種々の特性が要求されている。
またシート材料には耐熱性や耐外傷性、さらに、チューブについては耐熱性、耐外傷性、耐摩耗性、耐油性、および難燃性が要求されている。
現在前記用途として、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドに代わり、ハロゲンを含有しない難燃剤(ノンハロゲン系難燃剤)が配合された樹脂組成物が提案されている。例えばエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体などのエチレン系共重合体に、難燃剤として水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水和物が多量に配合された難燃性樹脂組成物が提案されている。そしてこの難燃性樹脂組成物層で被覆された配線材などが使用され始めている。
一方、電気・電子機器の配線材に求められる難燃性、耐熱性、機械特性(例えば引張特性、耐摩耗性)などの規格は、UL、JISなどで要求水準に応じて定められている。特に、難燃性に関しては、さらに用途に応じてその試験方法が定められている。したがって実際は、少なくともこの試験に合格する難燃性を有すればよい。例えば、UL1581(電線、ケーブルおよびフレキシブルコードのための関連規格(Reference Standard for Electrical Wires,Cables and Flexible Cords))に規定される垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)(VW−1)や、JIS C 3005(ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法)に規定される水平試験や傾斜試験などがそれぞれ挙げられる。
これまで、VW−1や傾斜試験に合格するような高度のノンハロゲン系難燃性樹脂組成物を得ようとすると、樹脂成分100質量部に対して、難燃剤である金属水和物を150〜200質量部配合する必要があった(例えば特許文献1参照)。このため、当該難燃性樹脂組成物を配線材の被覆材料として使用する場合には、引張特性や耐摩耗性などの機械特性、耐摩耗性が著しく低下するという問題があった。
また、高度の難燃性を維持しながら耐摩耗性を向上させようとすると、熱老化特性が十分でないことがあり、高温で使用することが困難な場合があった(例えば特許文献2参照)。
特開2001−135142号公報 特開2007−146054号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、難燃性、機械特性、および耐摩耗性に優れるとともに、耐熱性、特に熱老化後の機械特性の低下が著しく少ない難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形物品を提供することを課題とする。
さらにくわしくは、本発明は、高度の難燃性および耐摩耗性を損なうことなく、十分な熱老化特性を有し、折り曲げても白化することなく、また傷つきにくい難燃性樹脂組成物を提供することを課題とする。また本発明は、高度の難燃性および耐摩耗性を有するとともに、十分な耐熱性を有し、機械特性や圧接性に優れた配線材、光ファイバ心線、光ファイバコード、シート、チューブ等の成形物品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定のカルボン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂と、エチレン−α−オレフィン共重合体を必須成分とする樹脂成分に対して、水酸化マグネシウムを特定量配合した難燃性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、
<1>(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂10〜85質量%、(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、(c)ポリプロピレン系樹脂0〜65質量%、(d)エチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、及び(e)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体0〜40質量%を含有し、かつ(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体と(d)エチレン−α−オレフィン共重合体の合計が5質量%以上である樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物、
<2>(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂と(c)ポリプロピレン系樹脂の合計が、樹脂成分(A)中、20〜80質量%であることを特徴とする<1>記載の難燃性樹脂組成物、
<3>前記(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂がプロピレン単独重合体であることを特徴とする<1>又は<2>記載の難燃性樹脂組成物、
<4>前記(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又は(d)エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が910kg/m以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物、
<5>前記(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂と(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体の合計が樹脂成分(A)中、15〜85質量%であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物、
<6>前記水酸化マグネシウム(B)が、無処理の水酸化マグネシウムおよび/またはシランカップリング剤によって表面処理がされた水酸化マグネシウムであることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物、
<7><1>〜<6>のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物を導体、光ファイバ素線または光ファイバ心線の外側に被覆層として有することを特徴とする成形物品、および
<8><1>〜<6>のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形物品、
を提供するものである。
本発明の難燃性樹脂組成物は、柔軟性を有し、難燃性、耐熱性、熱老化性、機械特性、耐油性、耐摩耗性、圧接性に優れる。したがって、圧接性に優れた配線材や、光ファイバ心線、光ファイバコード、シート、チューブ等の成形物品に好適である。
また、本発明の難燃性樹脂組成物を用いた成形物品は、折り曲げても白化することがなく、傷つきにくい。また本発明の難燃性樹脂組成物を用いた成形物品は、柔軟性を保持しつつ、難燃性や耐摩耗性、耐熱老化特性を併せ持つ。
以下、本発明の樹脂成分(A)と水酸化マグネシウム(B)を含有する難燃性樹脂組成物について詳細に説明する。
まず、本発明の難燃性樹脂組成物のうち、その樹脂成分(A)を構成する各成分について説明する。
(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂
本発明においては、不飽和カルボン酸のうちでも特に無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂が使用される。(a)成分として無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂を使用した難燃性樹脂組成物が、非常に強度が高く、熱老化後の機械特性にきわだって優れることを本発明者等は見出した。その機構はまだ定かではないが、無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂中の変性部分が水酸化マグネシウムとイオン的に結合することにより、水酸化マグネシウムとの界面近傍の強度が非常に高くなる。しかも結晶性の高いポリプロピレンを使用した場合に、無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂中の変性部分と水酸化マグネシウムとのイオン的な結合が、強固に形成されるものと思われる。
本発明の樹脂成分(A)における無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂は、無水マレイン酸がプロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体にグラフトされた樹脂である。不飽和カルボン酸による変性量は、通常ポリプロピレン系樹脂に対して0.2〜2質量%である。好ましい変性量は0.6〜1.2質量%である。
ここでエチレン−プロピレンランダム共重合体はエチレン成分含量が1〜5質量%程度のものをいい、エチレン成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。またエチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜15質量%程度のものをいい、エチレン成分とプロピレン成分が独立した成分として存在するものをいう。
無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略称で示す。本明細書において、MFRは、ASTM‐D‐1238で規定されている値をいうものとする。)は、十分な耐熱老化特性と耐低温性を確保するため、1〜50g/10分のものが好ましい。さらに好ましくは、1〜25g/10分、さらに好ましくは1〜10g/10分である。
無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂としては、具体的には例えば、アドマーQE510、アドマーQF500、アドマーQE800、アドマーQE810、アドマーQE840(いずれも商品名、三井化学(株)製)、アドテックスER313E(商品名、日本ポリエチレン(株)製)等が挙げられる。
(a)成分として、結晶性の高いプロピレン単独重合体を使用することが好ましい。この場合には、耐外傷性や耐摩耗性、機械強度のみならず、難燃性も向上する。さらに圧接用電線に使用される場合、圧接刃での割れやストレインリリーフの盛り上がりがほとんどなく、優れた圧接加工用の電線を得ることができる。
本発明において、(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂は、樹脂成分(A)中10〜85質量%、好ましくは25〜60質量%、さらに好ましくは20〜45質量%である。この量が少なすぎると、耐外傷性、耐摩耗性、圧壊特性、圧接性に問題が生じ、これが多すぎると伸び特性、熱老化特性、外観が著しく低下する。特にこの量が25〜45質量%の場合、機械強度、熱老化特性、耐油性、耐外傷性、耐摩耗性、圧壊特性、圧接性の点で非常にバランスのとれた難燃性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物には、(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂とともに、好ましくは、後述の(c)ポリプロピレン系樹脂を配合することができる。さらに好ましくは、(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂と(c)ポリプロピレン系樹脂との合計量を、樹脂成分(A)中の20〜80質量%とすることにより、耐磨耗性と耐外傷性に優れた難燃性樹脂組成物を得ることができる。
(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体
本発明の(b)成分の無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体は、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン−α−オレフィン共重合体である。無水マレイン酸による変性量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の0.2〜2質量%である。好ましい変性量は0.6〜1.2質量%である。
本発明の(b)成分におけるエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えばエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体として具体的には、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、EPR(エチレンプロピレンゴム)、EBR(エチレン−1‐ブテンゴム)、及びメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は特に制限されないが、熱老化特性の点から、910kg/m以下が好ましく、さらに好ましくは906kg/m以下である。この密度の下限は863kg/mが好ましい。また、無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体としては、MFRは0.5〜50g/10分(ASTM‐D‐1238)のものが好ましい。一例として、「アドテックス」(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、「アドマー」(商品名、三井化学(株)製)、「モディック」(商品名、三菱化学(株)製)を挙げることができる。
本発明において、無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は、樹脂成分(A)中、0〜60質量%、好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。含有量が多すぎると伸び特性や成形性が低下する。
無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体と後述の(d)エチレン−α−オレフィン共重合体との合計が、5質量%以上であることが必要である。この合計が少なすぎると熱老化特性が低下する。無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体と後述の(d)エチレン−α−オレフィン共重合体との合計は60質量%以下であることが好ましい。この合計が多すぎると耐摩耗性や圧接加工性が低下する。
(a)成分の無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂と(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体の合計は、樹脂成分(A)中、15〜85質量%であることが好ましい。この範囲内とすることにより、耐摩耗性、圧接加工性、および熱老化特性を両立することができる。
(c)ポリプロピレン系樹脂
(c)成分のポリプロピレン系樹脂として、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン樹脂)や、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などを使用することができる。(a)成分の無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂として、結晶性の高いプロピレン単独重合体を使用した場合には、耐外傷性や耐摩耗性、機械強度を向上させることができるが、同時に(c)成分として、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などを併用することにより、さらに成形性も向上させることができる。本発明において、(c)成分のポリプロピレン系樹脂には、(a)成分の無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂のほか、その他の不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂は含まれない。また、EPR(エチレンプロピレンゴム)は(c)成分のポリプロピレン系樹脂には含まれない。
ここでエチレン−プロピレンランダム共重合体はエチレン成分含量が1〜5質量%程度のものをいい、エチレン成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。またエチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜15質量%程度のものをいい、エチレン成分とプロピレン成分が独立した成分として存在するものをいう。
混合するポリプロピレンのMFR(ASTM‐D‐1238)は、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜25g/10分、さらに好ましくは0.3〜15g/10分である。
本発明において、(c)ポリプロピレン系樹脂を配合することにより、耐熱性と強度を維持することができる。ポリプロピレン系樹脂の含有量は樹脂成分(A)中、0〜65質量%であり、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜55質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。このポリプロピレンの含有量が多すぎると成形体の柔軟性が著しく損なわれたり、耐摩耗性が低下する。
(d)エチレン−α−オレフィン共重合体
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、例えばエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体として具体的には、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、EPR(エチレンプロピレンゴム)、EBR(エチレン−1‐ブテンゴム)、及びメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。このなかでも、メタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は特に制限されないが、熱老化特性の点で、930kg/m以下が好ましく、さらに好ましくは910kg/m以下、さらに好ましくは906kg/m以下である。この密度の下限は863kg/mが好ましい。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、MFR(ASTM−D−1238)が0.5〜50g/10分のものが好ましい。
本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒の存在下に合成されたものや通常の直鎖型低密度ポリエチレンや超低密度ポリエチレン等が挙げられるが、中でもメタロセン触媒の存在下に合成されるものが好ましい。その一例として、「カーネル」(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、「エボリュー」(商品名、三井化学(株)製)、「タフマー」(商品名、三井化学(株)製)、「ユメリット」(商品名、宇部丸善石油化学(株)製)を挙げることができる。
エチレン−α−オレフィン共重合体を配合することにより、熱老化特性を大幅に向上させることができる。
本発明において、樹脂成分中におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は、樹脂成分(A)中0〜60質量%、好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が多すぎると著しく摩耗性や圧接性、強度が低下する場合がある。
(e)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体とは、不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がスチレン系共重合体にグラフトされた共重合体のことである。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを挙げることができる。
スチレン系共重合体とは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及びランダム構造を主体とする共重合体およびその水素添加物である。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどが挙げられる。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどを挙げることができる。
スチレン系共重合体の変性は、例えば、スチレン系共重合体と不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸による変性量は、通常0.5〜15質量%である。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体としては、たとえば、クレイトン1901FG(商品名、JSRクレイトン(株)製)、タフテック(商品名、旭化成(株)製)等をあげることができる。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体の含有量は、樹脂成分(A)中0〜40質量%である。不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体の含有量が多すぎると耐油性が低下するのみならず、外観も大幅に悪化する。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体を配合することにより、強度を高くし、耐摩耗性を向上させ、柔軟性を発揮することができる。その機構については定かではないが、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体を水酸化マグネシウムと混合することにより、スチレン系共重合体の変性部分が水酸化マグネシウムと強くイオン結合により結合すると思われる。また不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体は、(a)成分の無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂や(c)成分のポリプロピレン系樹脂とよく相溶する。これにより、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体と無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂との相乗作用で、強度を高くし、耐摩耗性を向上させ、柔軟性を発揮することができる。
本発明においては、(a)成分を必須成分とし、場合により、(b)、(c)、(d)、(e)成分を特定量含有し、かつ(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体と(d)エチレン−α−オレフィンの共重合体の合計を特定量含有する樹脂成分(A)をベース材料とする。このベース材料に水酸化マグネシウムを特定量配合することより、架橋せずに耐熱性を有し、優れた熱老化特性および高い難燃性を有し、しかも機械特性、耐摩耗性、耐油性に非常に優れた難燃性樹脂組成物を得ることができる。この難燃性樹脂組成物を用いて、耐熱性、熱老化特性、難燃性、機械特性、耐磨耗性、および耐油性に優れた成形物品を得ることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は樹脂成分(A)と水酸化マグネシウム(B)とを含有するものである。
一般に、樹脂成分に対して水酸化マグネシウムなどの金属水和物を添加してゆくと、耐摩耗性が著しく低下する。しかし、本発明においては、金属水和物である水酸化マグネシウムを本発明の樹脂成分に対して多く添加しても耐摩耗性が低下することはなく、むしろ耐摩耗性が向上する。従って難燃性と耐摩耗性を両立させることができる。
またさらに、柔軟性の確保も可能であり、成形性、加工性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。
さらに、その樹脂組成物を電線に使用した場合は、非常に圧接性に優れた物性を有しており、ストレインリリーフの盛り上がり等の現象も生じず、優れた圧接性を示す。
本発明における、特定の成分とその組成に基づく樹脂成分に水酸化マグネシウムを大量に加えた場合、摩耗性が低下せずむしろ向上するメカニズムについては、定かではないが、以下のように考えられる。
水酸化マグネシウムと(a)成分が強いイオン性結合を有し、水酸化マグネシウムとポリマー全体がナノ−ミクロ状態で微細にしかも強固に結合する。水酸化マグネシウムが樹脂成分と一体化することで、水酸化マグネシウムが本来有している硬質性、強度、補強性が発揮され、樹脂組成物の耐摩耗性が格段に向上するものと思われる。この作用により、本発明の難燃性樹脂組成物の成形体表面をこすっても白化現象は生じず、非常に高強度の成形体を得ることができる。
また水酸化マグネシウムの界面近傍に結晶性の高い(a)成分を存在させることにより、強度、耐摩耗性、耐外傷性、圧接性に優れた難燃性樹脂組成物を得ることができると考えられる。さらに(a)成分と相溶する形で柔軟性を有する(b)成分を存在させることにより、柔軟性を確保し、耐摩耗性、耐外傷性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
一方耐熱性という点からみれば、(a)成分の無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂および(c)成分のポリプロピレン系樹脂は、高温で結晶化しやすく、単独で使用した場合には、加熱後の大幅な伸びの低下を招きやすい。ところが(b)成分および(d)成分のエチレン−α−オレフィン共重合体は加熱時の(a)成分や(c)成分の結晶化を抑える働きがあり、特に密度が910kg/m以下のエチレン−α−オレフィン共重合体を加えることにより、加熱後の大幅な伸びの低下、すなわち高温下の熱老化特性が格段に改善される。その効果は、他の不飽和カルボン酸変性ポリプロピレン系樹脂を使用した場合と比較して、(a)成分として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂を使用した場合に顕著に現れる。
また(b)成分の無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体を加えることにより、(b)成分の一部が(a)成分や(c)成分の高温下で結晶化を引き起こしやすい樹脂と相溶化し、さらに高温下における熱老化特性が良好になる。さらに(b)成分の樹脂は水酸化マグネシウムと強い結合を有するため、強度に優れ、耐摩耗性も向上する。
(A)成分には本発明の趣旨に反しない範囲で、その他の樹脂成分等を加えることができる。例えば、不飽和カルボン酸で変性された以外のスチレン系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ゴム柔軟化剤、プロピレンとエチレン−α−オレフィンとのブロック共重合体などがあげられる。
(B)水酸化マグネシウム
本発明においては、通常市販されている水酸化マグネシウムを使用することが可能である。本発明において、水酸化マグネシウムは、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理としてはたとえば、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理、シランカップリング剤による処理などがあげられる。樹脂成分(A)との作用の点から、本発明においては、無処理のものか、シランカップリング剤により表面処理したものを使用するのが好ましい。
さらに、本発明においては、無処理の水酸化マグネシウムや、表面処理を行った水酸化マグネシウムをそれぞれ単独で使用するのは勿論、両者を併用してもよい。さらに、異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムを併用することも可能である。
本発明におけるシランカップリング剤は末端にビニル基、メタクリロキシ基、グリシジル基、アミノ基を有するものが好ましい。具体的にはたとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましい。
水酸化マグネシウムをシランカップリング剤で表面処理をする場合には、いずれか1種のシランカップリング剤のみでも、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤による表面処理の方法としては、通常使用される方法で処理を行うことが可能であるが、たとえば、表面処理をしていない水酸化マグネシウムをあらかじめドライブレンドしたり、湿式処理を行ったり、混練時にシランカップリング剤をブレンドすることなどにより得ることが可能である。使用するシランカップリング剤の含有量は、表面処理をするのに十分な量が適宜加えられるが、具体的には水酸化マグネシウムに対し0.1〜2.5質量%、好ましくは0.2〜1.8質量%、さらに好ましくは0.3〜1.0質量%である。
すでにシランカップリング剤により表面処理が施された水酸化マグネシウムを入手することも可能である。シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとしては、具体的には、キスマ5L、キスマ5N、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学(株)製)や、マグシーズS4(商品名、神島化学(株)製)などがあげられる。
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、たとえばキスマ5(商品名、協和化学(株)製)、マグニフィンH5(商品名、アルベマール(株)製)などがあげられる。
本発明の難燃性樹脂組成物では、水酸化マグネシウムの含有量は、樹脂成分(A)100質量部に対し50〜300質量部であり、好ましくは100〜260質量部、さらに好ましくは120〜250質量部である。含有量が少なすぎると、難燃性に問題があり、多すぎると機械特性が著しく低下したり、耐低温性が悪化する問題がある。
その他難燃性を向上させるためにメラミンシアヌレート化合物を加えることもできる。メラミンシアヌレート化合物は、粒径が細かい物が好ましい。本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物の平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。ここで平均粒径とは、レーザー回折法による粒度分布測定によって得られた値をいう。
また、分散性の面から表面処理されたメラミンシアヌレート化合物が好ましく用いられる。本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、MC6000(商品名、日産化学(株)製)、メラプアMF15(商品名、(株)チバ製)、スタビエースMC15(商品名、堺化学製)などがある。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物として、例えば以下のような構造のメラミンシアヌレートがある。
Figure 2011057906
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じスズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛及びホウ酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種を含有することができ、さらに難燃性を向上させることができる。これらの化合物を用いることにより、燃焼時の殻形成の速度が増大し、殻形成がより強固になる。従って、燃焼時に内部よりガスを発生するメラミンシアヌレート化合物とともに、難燃性を飛躍的に向上させることができる。
本発明で用いるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛は平均粒径が5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。ここで、ここで平均粒径とは、レーザー回折法による粒度分布測定によって得られた値をいう。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B
・3.5HO)、アルカネックスFRC−600(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。また、スズ酸亜鉛(ZnSnO)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH))として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。
本発明の難燃性樹脂組成物には、成形物品において、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜、配合することができる。
酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などがあげられる。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系などがあげられ、なかでも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物は、上記の各成分を、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置で、好ましくは150℃〜240℃で溶融混練して得ることができる。
次に本発明の絶縁電線、ケーブル、光コード等の成形物品について説明する。
本発明の成形物品としては例えば、導体や光ファイバやその他成形体の周りに上記の本発明の難燃性樹脂組成物が被覆された絶縁電線やケーブルなどがある。この絶縁電線やケーブルは、本発明の難燃性樹脂組成物を通常の押出成形機を用いて導体、光ファイバ、集合絶縁電線やその他成形体の周囲に押出被覆することにより製造することができる。またチューブについても同様な方式で製造することができる。
例えば、絶縁電線に使用される場合、導体の周りに形成される絶縁樹脂組成物の被覆層の肉厚も特に制限はないが、0.15〜3mmが好ましい。また、絶縁層が多層構造であってもよく、本発明の難燃性の絶縁樹脂組成物で形成した被覆層のほかに中間層などを有するものでもよい。
また、本発明の成形物品を配線材に使用する場合には、本発明の樹脂組成物を押出被覆してそのまま被覆層を形成することが好ましいが、さらに耐熱性を向上させることを目的として、押出後の被覆層を架橋させることも可能である。但し、この架橋処理を施すと、被覆層の押出材料としての再利用は困難になる。
架橋を行う場合の方法として、常法による電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。
電子線架橋法の場合は、樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有してもよい。
化学架橋法の場合は、樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として含有し、押出成形して被覆層とした後に常法により加熱処理により架橋をおこなう。
本発明の成形物品としては、その大きさや形状については特に制限されるものではなく、例えば、電源プラグ、コネクタ、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、等を挙げることができる。本発明の成形物品は、通常の射出成形等の成形方法により、本発明の難燃性樹脂組成物から成形される。また、シートやチューブ等についても電線被覆と同様な方式で製造することができ、必要であれば、配線材と同様架橋を行うこともできる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例
表1に実施例1〜12および表2に比較例1〜10の樹脂組成物の各成分の含有量(表中の数値は質量部である)を示す。表に示された各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて195〜205℃で溶融混練して、各難燃性樹脂組成物を製造した。
各成分材料としては、下記のものを使用した。各成分材料には、前記材料の説明で使用した記号も併せて示す。樹脂成分中の密度は、ASTM D−1505で測定した値である。またMFRは、ASTM‐D‐1238で規定されている条件で測定した値である。
(1)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂(a)
(無水マレイン酸で変性されたプロピレン単独重合体)
商品名:アドマーQE810(三井化学(株)製)
MFR:70g/10分
(2)アクリル酸で変性されたポリプロピレン系樹脂
(アクリル酸で変性されたプロピレン単独重合体)
商品名:ポリボンドP1002(ケムチュラ(株)製)
MFR:20g/10分
(3)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体(b)
商品名:アドマーXE070(三井化学(株)製)
密度 :893kg/m
MFR:3g/10分
(4)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体(b)
商品名:アドテックスL6100M(日本ポリエチレン(株)製)
密度 :920kg/m
MFR:1g/10分
(5)ポリプロピレン系樹脂(c)
エチレン−プロピレンブロック共重合体
商品名:150GK(プライムポリマー(株)製)
MFR:0.6g/10分
(6)ポリプロピレン系樹脂(c)
エチレン−プロピレンランダム共重合体
商品名:BC6DR(日本ポリプロピレン(株)製)
MFR:2.5g/10分
(7)エチレン−α−オレフィン共重合体(d)
メタロセン触媒で合成されたポリエチレン
商品名:カーネルKS−240T(日本ポリエチレン(株)製)
密度 :880kg/m
MFR:2.2g/10分
(8)エチレン−α−オレフィン共重合体(d)
メタロセン触媒で合成されたポリエチレン
商品名:ユメリット0540F(宇部丸善石油化学(株)製)
密度 :905kg/m
MFR:4g/10分
(9)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体(e)
無水マレイン酸で変性されたスチレン系共重合体(MAH−SBC)
商品名:クレイトン1901FG(クレイトンポリマー(株)製)(変性量1.7%)
MFR:22g/10分
(10)プロピレンとエチレンプロピレンゴムのブロック共重合体
商品名:キャタロイQ300F(サンアロマー(株)製)
MFR:0.9g/10分
(11)水酸化マグネシウム(B)
シランカップリング剤で表面処理がされた水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5L(協和化学(株)製)
(12)水酸化マグネシウム(B)
無処理の水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5(協和化学(株)製)
(13)滑剤
ポリエチレンワックス
商品名:ACポリエチレンNO.6(ヘキスト社製)
(14)ヒンダートフェノール系酸化防止剤
イルガノックス1010((株)チバ製)
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径0.48mmφの錫メッキ軟銅撚線構成:7本/0.16mmφ)上に、予め溶融混練した上記各実施例1〜11および比較例1〜10の難燃性樹脂組成物を押し出し法により被覆して、各々、絶縁電線を製造した。外径は0.98mm、絶縁層の肉厚0.25mmとした。
得られた各々の絶縁電線に対して、以下の(1)〜(7)の評価を行い、得られた結果をそれぞれ表1および表2に示した。
また、押出機を用いて、実施例1の難燃性樹脂組成物のチューブを製造した。チューブの外径は2.0mm、内径は1.5mmとした。得られたチューブに対して、以下の(1)、(2)、および(4)の評価を行った。いずれの評価においても、チューブをそのまま用いた以外は、絶縁電線の評価と同様に行った。得られた結果を実施例12として、表1に示した。
(1)引張試験
電線より管状片を作成し引張試験を行った。標線間25mm、引張速度50mm/分で試験を行い、引張り強さおよび伸びを測定した。伸び100%以上、引張り強さ18MPa以上が必要である。
(2)長期耐熱試験
電線より管状片を作成し、136℃のギアー付き恒温槽に168hr放置した。取り出し後、上記条件で引張試験を行った。
引張強さ残率70%以上、伸び残率60%以上で合格である。前記の引張試験で伸び100%未満のものはこの試験は行わず、表中「−」で示した。
(3)耐摩耗性試験
R=0.225のブレードを用い、JASO D608に基づきブレード往復法により試験を行った。加重は7Nとした。
回数800回以上で合格であるが、1000回以上がより好ましい。表中、「−」は、回数が300に満たず、数値を求めなかった。
(4)難燃性
JASO D608に基づき、水平燃焼試験を行った。60秒以上延焼したものを不合格とした。
(5)耐外傷性
JASO D 608に基づく耐摩耗試験のブレード往復法の試験方法で、R=0.125mmのブレードを使用し、荷重5Nで4往復摩耗を行った。その後のサンプルを観察した。外傷がない又は白化が無いものを「○」、外傷がある又は白化が著しいものを「×」で示した。
(6)外観
外観は、絶縁電線の外径の変動の有無や表面の状態を目視で調査し、これらが良好であったものを「○」、外径が変動しており不安定なもの、表面に肌荒れが発生したもの、ブリードが発生したものを「×」で示した。
(7)電線の圧接性
絶縁電線にモレックスMi−IIコネクタ(商品名、日本モレックス(株)製)を装着して、ハンドプレス機で圧接を行った後の絶縁電線について外観観察を行った。圧接刃の部分で1か所でも割れが発生したもの又はストレインリリーフ部分で電線被覆部の盛り上がりがコネクタの矢尻部分を超えたものを不合格とし、「×」で示した。
Figure 2011057906
Figure 2011057906
表1、2の結果が示すように、本発明の実施例1〜12は、難燃性、機械特性、耐摩耗性、および圧接性に優れ、耐熱性、特に熱老化後の機械特性の低下が著しく少ない。
これに対し、水平難燃、耐外傷性、外観および圧接性のすべてに合格する比較例は1、2、6および8のみであった。しかしこれらはいずれも、加熱後の伸び残率は大きく低下し、長期耐熱試験の伸び残率は不合格となった。

Claims (8)

  1. (a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂10〜85質量%、(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、(c)ポリプロピレン系樹脂0〜65質量%、(d)エチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、及び(e)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系共重合体0〜40質量%を含有し、かつ(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体と(d)エチレン−α−オレフィン共重合体の合計が5質量%以上である樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  2. (a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂と(c)ポリプロピレン系樹脂の合計が、樹脂成分(A)中、20〜80質量%であることを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  3. 前記(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂がプロピレン単独重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
  4. 前記(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体及び/又は(d)エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が910kg/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物。
  5. 前記(a)無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂と(b)無水マレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体の合計が樹脂成分(A)中、15〜85質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物。
  6. 前記水酸化マグネシウム(B)が、無処理の水酸化マグネシウムおよび/またはシランカップリング剤によって表面処理がされた水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物を導体、光ファイバ素線または光ファイバ心線の外側に被覆層として有することを特徴とする成形物品。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形物品。
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