JP2008174596A - 難燃性樹脂組成物およびそれを用いた成形物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)スチレンおよび不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン樹脂22〜85質量%、(b)ポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体との反応物15〜78質量%、(c)ポリプロピレン0〜63質量%、〔但し、(b)成分中のポリプロピレンを除く〕及び(d)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
シート材料には耐熱性や耐外傷性、またチューブについては耐熱性、耐外傷性、耐摩耗性、耐油性、難燃性が要求されている。
現在、前記用途には、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドが主として使用されている。
このため、環境に影響をおよぼすことが懸念されている有害な可塑剤や重金属の溶出や、ハロゲン系ガスなどの発生の恐れがないノンハロゲン材料で成形を行った成形物品、配線材、ケーブル、シート、チューブの検討が行われている。
Inc.)、JIS(日本工業規格)などで規定されている。特に、難燃性に関しては、要求水準(その用途)に応じてその試験方法が変わってくる。したがって実際は、少なくとも要求水準に応じた難燃性を有すればよい。例えば、UL1581[電線、ケーブルおよびフレキシブルコードのための関連規格(Reference Standard for Electrical Wires,Cables and Flexible
Cords)〕に規定される垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)(VW−1)や、JIS C 3005(ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法)に規定される水平試験や傾斜試験に合格する難燃性などがそれぞれ挙げられる。
特に金属水和物を大量に加えると、耐摩耗性、圧壊特性、耐外傷性の低下が顕著であり、これを防止するために、例えば架橋を施す方法やポリプロピレンをベース材料として使用する方法が提案されてきた。しかしこれらの方法では難燃性を向上させると、著しく耐摩耗性や強度、圧壊特性、圧接特性が低下する等の問題があった。
さらに、この樹脂成分に金属水和物を大量に加えると耐油性が著しく低下し、油のかかる部分では使用することができなかった。
さらに本発明は、これらの特性を満足しながら、成形物品の再溶融が可能なためにリサイクル処理に適し、再利用でき、折り曲げても白化することなく、また傷つきにくく、特に難燃性や耐摩耗性、耐油性を併せ持った樹脂組成物および圧接性に優れた配線材、光ファイバ心線、光ファイバコード、シート、チューブ等の成形物品を提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(8)の難燃性樹脂組成物と下記(9),(10)の成形物品を提供するものである。
(1)(a)スチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂22〜85質量%、(b)ポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体との反応物15〜78質量%、(c)ポリプロピレン0〜63質量%、〔但し、(b)成分中のポリプロピレンを除く〕及び(d)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物、
(2)前記(a)成分であるスチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂はポリプロピレン樹脂にスチレンをグラフト重合した後に不飽和カルボン酸をスチレン部分にグラフト重合したことを特徴とする(1)記載の難燃性樹脂組成物、
(3)前記(a)成分であるスチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂のグラフト割合が重量比で3〜10%であることを特徴とする(1)記載の難燃性樹脂組成物、
(4)前記(a)成分の不飽和カルボン酸がアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸のうちいずれかであることを特徴とする(1)記載の難燃性樹脂組成物、
(5)前記(a)成分であるスチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂がホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする(1)記載の難燃性樹脂組成物。
(6)前記樹脂成分(A)は、(e−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン、(e−2)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、(e−3)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(e−4)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体および(e−5)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を0〜63質量%さらに含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(7)前記樹脂成分(A)は、(f)エチレン−αオレフィン共重合体0〜63質量%、(g−1)エチレン−酢酸ビニル共重合体および/または(g−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体0〜40質量%、(h)スチレン系エラストマー0〜40質量%、並びに(j)ゴム用軟化剤0〜20質量%のいずれか1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(8) 前記水酸化マグネシウム(B)が、無処理の水酸化マグネシウムおよび/またはシラン処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を、導体あるいは光ファイバ素線および/または光ファイバ心線の外側に、被覆層として有することを特徴とする成形物品。
(10)(1)〜(8)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形物品。
上記効果は、該難燃性樹脂組成物が水酸化マグネシウムとして、無処理の水酸化マグネシウムおよび/またはシラン処理された水酸化マグネシウムを使用したときに、特に効果がある。
また、本発明の成形物品は、上記全ての特性を満足しながら、成形物品の再溶融が可能なために再利用でき、折り曲げても白化することなく、また傷つきにくく、柔軟性を保持しつつ、難燃性や耐摩耗性、耐油性を併せ持った成形物品である。
まず、本発明の難燃性樹脂組成物のうち、その樹脂成分(A)を構成する各成分について説明する。
本発明の樹脂成分(A)におけるスチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂は、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンにスチレンおよび/またはポリスチレンをグラフト重合した樹脂に不飽和カルボン酸をグラフトした(つまりスチレンをグラフト重合した後に不飽和カルボン酸をスチレン部分にグラフト重合した)樹脂のことである。その変性量(つまりグラフト部分の割合)はグラフト重合したポリプロピレン樹脂全量に対して重量比で3〜10%が好ましい。この際のグラフト部分中のスチレン成分と不飽和カルボン酸成分との重量比は特に制限はないが、好ましくは2:1〜1:1.5である。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを挙げることができる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
ここで言うランダムポリプロピレンはエチレン成分含量が5質量%以下、ブロックポリプロピレンはエチレン成分含量が15質量%以下程度のものをいう。
これらの特性は不飽和カルボン酸で変性された他のポリオレフィン樹脂を使用した場合よりも非常に顕著であり、特に(a)成分の中でもスチレンおよび不飽和カルボン酸で変性されたホモポリプロピレン樹脂を使用した場合が大きな効果を奏する。
特に(a)成分の中でもスチレン及び不飽和カルボン酸でグラフト変性されたホモポリプロピレン樹脂を使用することにより、優れた耐外傷性、耐摩耗性、圧壊特性、圧接性を有する材料を得ることができる。
本発明で使用するポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体の反応物は、プロピレンブロックとエチレン−α−プロピレンブロックの共重合体等とが反応したポリマーである。
このポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体との反応物には、ポリプロピレンが含まれている場合がある。
本発明で使用するポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体の反応物は、プロピレン成分の含有量が5〜85質量%、通常20〜70質量%である。このプロピレン成分の含有量が小さいと耐油性や耐摩耗性、圧接性に乏しくなり、またプロピレン成分の含有量が多いと伸び特性が低下したり、耐熱老化特性が著しく低下したりする。
ポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体としては、キャタロイ〔商品名、サンアロマー(株)製〕、ニューコン〔商品名、三菱化学(株)製〕などが挙げられる。
本発明において樹脂成分(A)100質量%中、ポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体は15〜78質量%、好ましくは15〜60質量%、さらに好ましくは20〜50質量%である。このポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体が少な過ぎると柔軟性が大幅に低下し、多過ぎると強度が低下したり、耐油性、耐摩耗性、圧接特性が低下する。
この成分(b)としてのポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体との反応物は、(a)成分であるスチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂と非常に良く相溶する。柔軟性を有するポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体が水酸化マグネシウムとイオン的に結合した不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン樹脂と一体化することにより、比較的柔軟性を有し、しかも強度、耐油性、耐摩耗性、圧接性、圧壊特性を確保することが可能となる。
本発明に用いることのできるポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などがある。
ここでいうエチレン−プロピレンランダム共重合体は、エチレン成分含量が1〜5質量%程度のものをいい、エチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜15質量%程度のものをいう。
上記のポリプロピレンとしてはMFR(ASTM‐D‐1238、L条件、230℃)が、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜25g/10分、さらに好ましくは0.3〜15g/10分のものを用いる。
但し、本発明の(c)成分であるポリプロピレンの量には、上記(b)成分であるポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体に含まれているポリプロピレンは含まないものとする。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーとは、スチレン系共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がスチレン系共重合体にグラフト重合したエラストマーのことである。
不飽和カルボン酸としては、上記した(a)不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン樹脂で使用されたものと同様のものを使用することが可能である。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーとしては、たとえば、クレイトン1901FG〔JSR クレイトン(株)製〕、タフテック〔旭化成(株)製〕等をあげることができる。
本発明における不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンとは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がポリオレフィンにグラフト重合した樹脂のことである。
この不飽和カルボン酸としては、(a)成分の場合と同様、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを挙げることができる。
ポリオレフィンの変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸による変性量は、(e−1)成分全量に対して通常0.5〜15質量%である。
不飽和カルボン酸等により変性されたポリオレフィンとしては、具体的には、例えば、ポリボンドP−1009等〔商品名、クロンプトン(株)製〕、アドテックスL−6100M等〔商品名、日本ポリエチレン(株)製〕、アドマーXE070、NE070等〔商品名、三井化学(株)製〕などが市販されている。
本発明における不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を不飽和カルボン酸で変性したものであり、不飽和カルボン酸がエチレン−酢酸ビニル共重合体にグラフト重合した樹脂のことである。
不飽和カルボン酸としては、(e−1)の場合に使用されたものと同様のものを使用することができる。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンに酢酸ビニルを共重合させたものである。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、たとえば、アドマーVF600,VF500〔いずれも商品名、三井化学(株)製〕をあげることができる。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を不飽和カルボン酸で変性したものであり、不飽和カルボン酸がエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体にグラフト重合した樹脂のことである。
不飽和カルボン酸としては、(e−1)で使用されたものと同様のものを使用することができる。
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、たとえば、モディパーA−5200、A−8200〔いずれも商品名、日本油脂(株)製〕をあげることができる。
本発明においては、前記(e−1)〜(e−3)の共重合体と共にまたはこれらの代わりにエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体を使用しても良い。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられ、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
具体的には、例えば、ニュクレル、ベイマック〔いずれも商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製〕などを挙げることができる。
本発明においては、(e)成分として、(e−1)〜(e−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を使用する。本発明において(e−1)〜(e−5)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂は、樹脂成分(A)100質量%中、0〜63質量%含有されるのが好ましい。
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、例えばエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体として、具体的には、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、EPR(エチレンプロピレンゴム)、EBR(エチレン−1‐ブテンゴム)、及びメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。このなかでも、メタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、メルトフローレート(以下、MFRと記す)(ASTM D−1238)が0.5〜50g/10分のものが好ましい。
本発明において、樹脂成分としてエチレン−αオレフィン共重合体は含有してもしなくてもよいが、その含有量は、樹脂成分(A)100質量%中、0〜63質量%、好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは0〜40質量%である。含有量が多すぎると著しく摩耗性や圧接性、強度が低下する場合がある。
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンと酢酸ビニルが共重合した樹脂であり、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体が挙げられる。
具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、エバフレックス〔商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製〕等が、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、エバルロイAC〔商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製〕などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
本発明では、(g−1)および/または(g−2)成分は含有しても含有しなくてもよいが、その樹脂成分(A)100質量%中の含有量は、0〜40質量%であり、好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜15質量%である。含有量が多すぎると、摩耗性、強度が低下する恐れがある。
本発明のスチレン系エラストマーは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及びランダム構造を主体とする共重合体もしくはその水素添加物である。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエンが好ましい。
前記スチレン系エラストマーとして具体的には、例えば、セプトン4077、セプトン4055、セプトン8105〔商品名、(株)クラレ製〕、ダイナロン1320P〔商品名、JSR(株)製〕等が挙げられる。
本発明において、スチレン系エラストマーは、含有しても含有しなくてもよいが、その樹脂成分(A)100質量%中の含有量は0〜40質量%であり、好ましくは0〜35質量%、さらに好ましくは0〜20質量%である。含有量が多すぎると耐摩耗性、強度、耐油性が低下する恐れがある。
一般に、ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
本発明のゴム用軟化剤としては、液状もしくは低分子量の合成軟化剤またはパラフィン系およびナフテン系の鉱物油を用いることができる。
前記ゴム用軟化剤として具体的には、ダイアナプロセスオイルPW90、PW380〔商品名、出光興産(株)製〕等がある。
本発明において、ゴム用軟化剤は含有してもしなくてもよいが、その含有量は樹脂成分(A)100質量%中0〜20質量%であり、好ましくは0〜10質量%である。含有量が多すぎると、耐磨耗性、強度、耐油性が低下する場合がある。
通常樹脂成分に対して水酸化マグネシウムなどの金属水和物を添加してゆくと、耐摩耗性が著しく低下する。しかし、本発明においては、金属水和物である水酸化マグネシウムを本発明の樹脂成分に対して多く添加しても耐摩耗性が低下することはなく、むしろ耐摩耗性が向上する。従って難燃性と耐摩耗性を両立させることができる。
同様に圧壊特性についても水酸化マグネシウムの大量の添加にもかかわらず高い強度を維持している。水酸化マグネシウム等の無機物を配合することで一般的には樹脂の粘性が失われ圧壊強度の低下をもたらすが本発明の材料では低下することはない。
またさらに、通常水酸化マグネシウムを大量に含有すると耐油性は大幅に低下するが、本発明の材料は水酸化マグネシウムを大量に含有しても耐油性の低下がなく、バランスの良い優れた物性を維持することができる。また、比較的柔軟性の確保も可能であり、成形性、加工性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。
さらに、その樹脂組成物を電線に使用した場合は、非常に圧接性に優れた物性を有しており、ストレインリリーフの盛り上がり等の現象も生じず、優れた圧接性を示す。
不飽和カルボン酸成分とは、例えば、(a)、(d)、(e−1)〜(e−3)成分の不飽和カルボン酸による変性に用いられた不飽和カルボン酸成分であり、また(e−4)、(e−5)成分の酸共重合成分であるアクリル酸やメタクリル酸のことである。不飽和カルボン酸成分の含有量が特定の範囲内であることにより、特に優れた強度、耐摩耗性、耐油性、電線の圧接性を保持しつつ、優れた伸び、難燃性を有することが可能となる。
本発明においては、通常市販されている水酸化マグネシウムを使用することが可能である。本発明において、水酸化マグネシウムは、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理としては、たとえば、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理、シランカップリング剤による処理などがあげられる。樹脂成分(A)との結合特性の点から、本発明においては、無処理のものか、シランカップリング剤を用いたものを使用するのが好ましい。
さらに、本発明においては、無処理の水酸化マグネシウムや、表面処理を行った水酸化マグネシウムをそれぞれ単独で使用するのは勿論、両者を併用してもよい。さらに、異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムを併用することも可能である。
水酸化マグネシウムをシランカップリング剤で処理をする場合には、いずれか1種のシランカップリング剤のみでも、2種以上を併用してもよい。
使用するシランカップリング剤の含有量は、表面処理をするのに十分な量が適宜加えられるが、具体的には水酸化マグネシウムに対し0.1〜2.5重量%、好ましくは0.2〜1.8重量%、さらに好ましくは0.3〜1.0重量%である。
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、たとえばキスマ5〔商品名、協和化学(株)〕、マグニフィンH5〔商品名、アルベマール(株)〕などがあげられる。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、例えばMCA−0、MCA−1〔いずれも商品名、三菱化学(株)製〕や、Chemie Linz Gmbhより上市されているものがある。また、脂肪酸で表面処理したメラミンシアヌレート化合物、シラン表面処理したメラミンシアヌレート化合物としては、MC640、MC6000〔いずれも商品名、日産化学(株)製〕などがある。
本発明で用いるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛は平均粒子径が5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には、例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B2O3・3.5H2O)、アルカネックスFRC−600〔いずれも商品名、水澤化学(株)製〕などがある。また、スズ酸亜鉛(ZnSnO3)、ヒドロキシスズ酸亜鉛〔ZnSn(OH)6〕として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS〔いずれも商品名、水澤化学(株)製〕などがある。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系などがあげられ、なかでも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
本発明の成形物品としては、例えば、導体や光ファイバやその他成形体の周りに上記の本発明の難燃性樹脂組成物が被覆された絶縁電線やケーブルなどがある。この絶縁電線やケーブルは、本発明の難燃性樹脂組成物を通常の押出成形機を用いて導体、光ファイバ、集合絶縁電線やその他成形体の周囲に押出被覆することにより製造することができる。またチューブについても同様な方式で製造することができる。
例えば、絶縁電線に使用される場合、導体の周りに形成される絶縁樹脂組成物の被覆層の肉厚も特に制限はないが、0.15〜3mmが好ましい。また、絶縁層が多層構造であってもよく、本発明の難燃性の絶縁樹脂組成物で形成した被覆層のほかに中間層などを有するものでもよい。
また、本発明の配線材においては、本発明の樹脂組成物を押出被覆してそのまま被覆層を形成することが好ましいが、さらに耐熱性を向上させることを目的として、押出後の被覆層を架橋させることも可能である。但し、この架橋処理を施すと、被覆層の押出材料としての再利用は困難になる。
電子線架橋法の場合は、樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋を行う。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋を行うために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有してもよい。
化学架橋法の場合は、樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として含有し、押出成形して被覆層とした後に常法により加熱処理により架橋を行う。
本発明の成形物品は、通常の射出成形等の成形方法により、本発明の難燃性樹脂組成物から成形される。また、シートやチューブ等についても電線被覆と同様な方式で製造することができ、必要であれば、配線材と同様架橋を行うこともできる。
実施例1〜9、比較例1〜5
表1に実施例1〜9および表2に比較例1〜5それぞれの樹脂組成物の各成分の含有量(表中の数値は質量部である)を示す。
表に示された各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて195〜205℃で溶融混練して、各難燃性樹脂組成物を製造した。
(a)スチレンおよび不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレン樹脂
イ.変性率4%品
ロ.変性率7%品
(b)ポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体との反応物(PP−EP共重合体)
イ.商品名:キャタロイQ300F〔製造元:サンアロマー(株)〕
(c)ポリプロピレン
ブロックポリプロピレン
商品名:150GK〔製造元:プライムポリマー(株)〕
ランダムポリプロピレン
商品名:BC6DR〔製造元:日本ポリプロピレン(株)〕
商品名:クレイトンFG1901X〔製造元:クレイトンポリマー(株)〕
マレイン酸変性量:1質量%
(f)エチレン−αオレフィン共重合体(ME−PE)
メタロセン触媒ポリエチレン(密度:898kg/m3 )
商品名:カーネルKF−360〔製造元:日本ポリエチレン(株)〕
(g−1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
商品名:エバフレックスV−527−4
〔製造元:三井デュポンポリケミカル(株)〕
酢酸ビニル含有量:17質量%
SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体)
商品名:セプトン4077〔製造元:(株)クラレ〕
(j)ゴム用軟化剤
パラフィンオイル
商品名:ダイアナプロセスオイルPW−90〔製造元:出光興産(株)〕
(B)水酸化マグネシウム
シラン処理水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5L〔製造元:協和化学工業(株)〕
無処理水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5〔製造元:協和化学工業(株)〕
酸化防止剤
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
商品名:イルガノックス1010〔製造元:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社〕
滑剤
ポリエチレンワックス
商品名:ACポリエチレンNO.6〔製造元:ヘキスト社〕
得られた各々の絶縁電線に対して、以下の評価を行い、得られた結果をそれぞれ表1および表2に示した。
電線より管状片を作成し引張試験を行った。標線間25mm、引張速度500mm/分で試験を行い、引張り強さおよび伸びを測定した。
伸び150%以上、引張り強さ10.3MPa以上が必要である。
○長期耐熱試験
電線より管状片を作成し、136℃のギアー付き恒温槽に168時間放置した。取り出し後、上記条件で引張試験を行った。
引張強さ残率50%以上、伸び残率45%以上で合格である。
○耐摩耗性試験
R=0.125のブレードを用い、ブレード往復法により試験を行った。
加重は10Nとした。
回数10回以上で合格であるが、20回以上がより好ましい。
UL1581に規定されるVW−1(垂直検体)燃焼試験方法に従って行う。
60秒以上の残炎または250mm以上の延焼、垂れ落ちによる脱脂綿の着火を不合格とする。試験本数は5本で行いその合格数を示した。
○耐外傷性
JASO D 608に基づく耐摩耗試験のブレード往復法の試験方法で、R=0.125mmのブレードを使用し、荷重5Nで4往復摩耗を行った。
その後のサンプルを観察した。外傷がない又は白化が無いものを「○」、外傷がある又は白化が著しいものを「×」で示した。
○外観
外観は、絶縁電線の外径の変動の有無や表面の状態を目視で調査し、これらが良好であったものを「○」、外径が変動しており不安定なもの、表面に肌荒れが発生したもの、ブリードが発生したものを「×」で示した。
試験方法はJIS C3005に基づきJIS2号試験油を用い85℃で24時間浸せきを行った後に引張試験を行った。
引張り強さ残率60%以上、伸び残率80%以上が合格である。前記の引張試験で伸び100%未満のものはこの試験は行わず、表中「−」で示した。
○圧壊特性
R=0.125のエッジを持つブレードをワイヤーにブレードが垂直に交差する方向で押し当てブレードが導体に達するまでの最大力を測定し圧壊強度とする。
終点はブレードと導体間に電圧をかけその通電をもって検知する。試験はN=10で行い、平均値をとる。
○電線の圧接性
ハンドプレス機を用い、モレックスMi−コネクタを用い圧接を行った後に、観察を行った。圧接刃の部分で1カ所でも割れがあるサンプル及びストレインリリーフ部分で電線被覆部の盛り上がりが矢尻部分を超えたものが発生したものを不合格とし、「×」で示した。
これに対し、本発明とは異なる難燃性樹脂組成物を用いた比較例1〜5、つまり、樹脂成分(A)を構成する(a)成分および/または(b)成分の使用量が本発明の範囲外となる比較例1および3〜5、水酸化マグネシウム(B)の使用量が多すぎる比較例2のものは、上記いずれかの特性に劣っていることが明らかである。
Claims (10)
- (a)スチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂22〜85質量%、(b)ポリプロピレンとエチレンプロピレンの共重合体との反応物15〜78質量%、(c)ポリプロピレン0〜63質量%、〔但し、(b)成分中のポリプロピレンを除く〕及び(d)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- 前記(a)成分であるスチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂はポリプロピレン樹脂にスチレンをグラフト重合した後に不飽和カルボン酸をスチレン部分にグラフト重合したことを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(a)成分であるスチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂のグラフト割合が重量比で3〜10%であることを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(a)成分の不飽和カルボン酸がアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸のうちいずれかであることを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(a)成分であるスチレン及び不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリプロピレン樹脂がホモポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記樹脂成分(A)は、(e−1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン、(e−2)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、(e−3)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(e−4)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体および(e−5)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を0〜63質量さらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記樹脂成分(A)は、(f)エチレン−αオレフィン共重合体0〜63質量%、(g−1)エチレン−酢酸ビニル共重合体および/または(g−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体0〜40質量%、(h)スチレン系エラストマー0〜40質量%、並びに(j)ゴム用軟化剤0〜20質量%のいずれか1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記水酸化マグネシウム(B)が、無処理の水酸化マグネシウムおよび/またはシラン処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を、導体あるいは光ファイバ素線および/または光ファイバ心線の外側に、被覆層として有することを特徴とする成形物品。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形物品。
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