JP2014024786A - パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法及びパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩、これを利用したリチウムイオン電池用の電解質並びに樹脂用の導電性付与剤 - Google Patents
パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法及びパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩、これを利用したリチウムイオン電池用の電解質並びに樹脂用の導電性付与剤 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】不純物が非常に少なく高純度のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を安全且つ簡便に生成することが可能なパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法を提供する。
【解決手段】化学式(CnF2n+1SO3)m・M1で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩と塩酸とを有機溶媒中で混合し、析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去しパーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を得る工程と、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液と金属水酸化物又は炭酸金属塩とを反応させて、化学式(CnF2n+1SO3)l・M2(但し、M2≠M1)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程と、を含むことを特徴とするパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法を選択する。
【選択図】なし
【解決手段】化学式(CnF2n+1SO3)m・M1で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩と塩酸とを有機溶媒中で混合し、析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去しパーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を得る工程と、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液と金属水酸化物又は炭酸金属塩とを反応させて、化学式(CnF2n+1SO3)l・M2(但し、M2≠M1)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程と、を含むことを特徴とするパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法を選択する。
【選択図】なし
Description
本発明は、パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法及びパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩、これを利用したリチウムイオン電池用の電解質並びに樹脂用の導電性付与剤に関する。
トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)をはじめとする、化学式[(CnF2n+1)SO3]m・M(Mは、Li,Na,K等のアルカリ金属及びCa,Mg等のアルカリ土類金属)で示されるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩は、リチウムイオン電池の電解質や帯電防止樹脂の導電性付与剤などとして有用である。
ところで、特許文献1及び特許文献2には、パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法の一例であるパーフルオロアルキルスルホン酸リチウムの製造方法が開示されている。ここで、従来のパーフルオロアルキルスルホン酸リチウムの製造方法では、先ず、下記式(A)に示すように、原料であるパーフルオロアルキルスルホン酸カリウム(CnF2n+1SO3K)に硫酸(H2SO4)を加えて酸分解した後、加熱減圧蒸留する。これにより、パーフルオロアルキルスルホン酸(CnF2n+1SO3H)を得る。
次に、下記式(B)に示すように、上記式(A)で得られたパーフルオロアルキルスルホン酸に、炭酸リチウム(Li2CO3)又は水酸化リチウム(LiOH)を加えて中和する。これにより、パーフルオロアルキルスルホン酸リチウム(CnF2n+1SO3Li)を得る。
また、特許文献3には、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムの製造方法が開示されている。ここで、特許文献3に記載されたトリフルオロメタンスルホン酸リチウムの製造方法は、メタンスルホニルハライドの電解フッ素化によってガス状のトリフルオロメタンスルホニルフロライドを合成し、このトリフルオロメタンスルホニルフロライドのガスと水酸化リチウム又は炭酸リチウム水溶液とを反応させてトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを得るものある。
しかしながら、特許文献1及び2に記載された方法では、上記式(A)に示すように、原料であるパーフルオロアルキルスルホン酸カリウムから腐食性を有する強い酸であるパーフルオロアルキルスルホン酸に変換する必要があり、安全なプロセスの構築にコストがかかるという問題があった。
また、特許文献1及び2に記載された方法では、上記式(A)に示すように、パーフルオロアルキルスルホン酸の生成の際に、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウムに対し、100%硫酸を過剰に用いて酸分解を行うため、硫酸中からの減圧蒸留等の精製工程を設ける必要があった。
また、精製工程での精製が不十分であると、酸分解で用いた硫酸に由来する硫酸根がパーフルオロアルキルスルホン酸に混入するため、特に電池用途として用いる場合では電解質としての特性に悪影響を与えるおそれがあった。
さらに、硫酸根が混入していると、上記式(B)に示す中和工程の際に、溶媒に溶けにくい硫酸リチウム(Li2SO4)等が生成するため、帯電防止剤用途において樹脂に混ぜた際に透明性を損なうおそれがあった。
更にまた、原料であるパーフルオロアルキルスルホン酸カリウムも電解プロセスによって合成するため、パーフルオロアルキルスルホン酸リチウムを得るための工程は長くなり、製造コストが高いという問題があった。
一方、特許文献3に記載された製造方法によれば、比較的安価にトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを得ることができる。しかしながら、当該製造方法を用いてトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを合成するためには、特殊な装置が必要となりコストが高くなるという問題があった。また、反応時に析出するフッ化リチウムが装置のつまりを引き起こすため、重大な事故につながる危険性があるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、不純物が非常に少なく、高純度のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を安全且つ簡便に生成することが可能なパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、硫酸根を含まない、不純物が非常に少なく高純度のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、硫酸根を含まないリチウムイオン電池用の電解質及び樹脂用の導電性付与剤を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 下記化学式(1)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩と塩酸とを有機溶媒中で混合し、析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去し、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を得る工程と、
前記パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液と化学式[M2(OH)l(lは1又は2の整数)]で示す金属水酸化物又は化学式[(M2)kCO3(kは1又は2の整数)]で示す炭酸金属塩とを反応させて、下記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程と、を含むことを特徴とするパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
上記化学式(1)において、nは1〜4の整数、mは1又は2の整数、M1はナトリウム、カリウム及びリチウムから選ばれるアルカリ金属又はカルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属である。
上記化学式(2)において、nは1〜4の整数、lは1又は2の整数、M2はナトリウム、カリウム及びリチウムから選ばれるアルカリ金属又はカルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属(但し、M2≠M1)である。
[2] 前記有機溶媒は、当該有機溶媒と水とを相溶させたときの化学式[M1(Cl)m]で示す金属塩化物の溶解度が0.05%以下であることを特徴とする前項1に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[3] 前記有機溶媒が、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒のいずれかであることを特徴とする前項1又は2に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[4] 前記パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程で得られた上記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含む水溶液に、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を加えて中和する工程、をさらに含むことを特徴とする前項1乃至3のいずれか一項に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[5] 得られた上記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を溶媒に溶解させた溶解液にアルミナを添加して塩素成分を除去する工程、をさらに含むことを特徴とする前項1乃至4のいずれか一項に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[1] 下記化学式(1)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩と塩酸とを有機溶媒中で混合し、析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去し、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を得る工程と、
前記パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液と化学式[M2(OH)l(lは1又は2の整数)]で示す金属水酸化物又は化学式[(M2)kCO3(kは1又は2の整数)]で示す炭酸金属塩とを反応させて、下記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程と、を含むことを特徴とするパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[2] 前記有機溶媒は、当該有機溶媒と水とを相溶させたときの化学式[M1(Cl)m]で示す金属塩化物の溶解度が0.05%以下であることを特徴とする前項1に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[3] 前記有機溶媒が、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒のいずれかであることを特徴とする前項1又は2に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[4] 前記パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程で得られた上記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含む水溶液に、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を加えて中和する工程、をさらに含むことを特徴とする前項1乃至3のいずれか一項に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[5] 得られた上記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を溶媒に溶解させた溶解液にアルミナを添加して塩素成分を除去する工程、をさらに含むことを特徴とする前項1乃至4のいずれか一項に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
[6] 生成物に含まれる不純物中の硫酸濃度が1ppm以下であることを特徴とするパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩。
[7] 生成物中に含まれる塩素濃度が0.01%以下であり、カリウム濃度が0.05%以下であることを特徴とする前項6に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩。
[7] 生成物中に含まれる塩素濃度が0.01%以下であり、カリウム濃度が0.05%以下であることを特徴とする前項6に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩。
[8] 前項6に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用の電解質。
[9] 前項6に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含むことを特徴とする樹脂用の導電性付与剤。
[9] 前項6に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含むことを特徴とする樹脂用の導電性付与剤。
本発明のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法は、ナトリウム、カリウム及びリチウムから選ばれるアルカリ金属又はカルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属のうち、一の金属のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を、塩酸と有機溶媒との混合系で酸分解して析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去しパーフルオロアルキルスルホン酸の水溶液を得るとともに、このパーフルオロアルキルスルホン酸の水溶液と、上記一の金属とは異なる他の金属の水酸化物又は炭酸塩とを反応させて上記他の金属のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る構成となっている。このように、パーフルオロアルキルスルホン酸の蒸留工程を含まないため、プロセスの簡略化および低コスト化が可能となる。また、一の金属のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を、塩酸と有機溶媒との混合系で酸分解すると、パーフルオロアルキルスルホン酸の水溶液が生成するため、腐食性の強いパーフルオロアルキルスルホン酸を直接扱わなくて済むことから、安全なプロセスを提供することができる。
本発明のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩によれば、生成物に含まれる不純物中の硫酸濃度が1ppm以下であり、不純物が非常に少ない高純度のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を提供することができる。
本発明のリチウムイオン電池用の電解質によれば、生成物に含まれる不純物中の硫酸濃度が1ppm以下であるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含む構成を有しているため、硫酸根に由来する電池特性への影響を抑制することができる。
本発明の樹脂用の導電性付与剤によれば、生成物に含まれる不純物中の硫酸濃度が1ppm以下であるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含む構成を有しているため、樹脂に混ぜた際に透明性を損なうおそれがない。
以下、本発明のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法を適用した実施の形態について、得られるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩及びこれを利用したリチウムイオン電池用の電解質並びに樹脂用の導電性付与剤と併せて、以下に詳細に説明する。
本実施形態のトリフルオロメタンスルホン酸金属塩の製造方法(以下、単に「製造方法」という)は、ナトリウム、カリウム及びリチウムから選ばれるアルカリ金属又はカルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属のうち、一の金属からなるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を原料として、上記一の金属とは異なる他の金属からなるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を生成物として得る方法である。
具体的には、本実施形態の製造方法は、下記化学式(3)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩と塩酸とを有機溶媒中で混合し、析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去しパーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を得る工程(酸分解工程)と、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液と化学式[M2(OH)l(lは1又は2の整数)]で示す金属水酸化物又は化学式[(M2)kCO3(kは1又は2の整数)]で示す炭酸金属塩とを反応させて、下記化学式(4)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程(金属塩の生成工程)と、を含んで概略構成されている。以下に、各工程について、詳細に説明する。
先ず、上述した酸分解工程では、下記式(5)に示すように、原料である上記化学式(3)に示す一の金属(M1)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩[(CnF2n+1SO3)m・M1]を、塩酸と有機溶媒との混合系で酸分解し、析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去し、トリフルオロメタンスルホン酸(CnF2n+1SO3H)の水溶液と、一の金属の塩化物(M1Clm)とを生成する。
原料である上記化学式(3)に示す一の金属のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩は、具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(CF3SO3・Na)、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)、ビストリフルオロメタンスルホン酸カルシウム[(CF3SO3)2・Ca]、ビストリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム[(CF3SO3)2・Mg];
ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(C2F5SO3・Na)、ペンタフルオロエタンスルホン酸カリウム(C2F5SO3・K)、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム(C2F5SO3・Li)、ビスペンタオロエタンスルホン酸カルシウム[(C2F5SO3)2・Ca]、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸マグネシウム[(C2F5SO3)2・Mg];
ヘプタフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム(C3F7SO3・Na)、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸カリウム(C3F7SO3・K)、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸リチウム(C3F7SO3・Li)、ビスヘプタフルオロプロパンスルホン酸カルシウム[(C3F7SO3)2・Ca]、ビスヘプタフルオロプロパンスルホン酸マグネシウム[(C3F7SO3)2・Mg];
ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム(C4F9SO3・Na)、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム(C4F9SO3・K)、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム(C4F9SO3・Li)、ビスノナフルオロブタンスルホン酸カルシウム[(C4F9SO3)2・Ca]、ビスノナフルオロブタンスルホン酸マグネシウム[(C4F9SO3)2・Mg]のいずれかである。
ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム(C2F5SO3・Na)、ペンタフルオロエタンスルホン酸カリウム(C2F5SO3・K)、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム(C2F5SO3・Li)、ビスペンタオロエタンスルホン酸カルシウム[(C2F5SO3)2・Ca]、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸マグネシウム[(C2F5SO3)2・Mg];
ヘプタフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム(C3F7SO3・Na)、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸カリウム(C3F7SO3・K)、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸リチウム(C3F7SO3・Li)、ビスヘプタフルオロプロパンスルホン酸カルシウム[(C3F7SO3)2・Ca]、ビスヘプタフルオロプロパンスルホン酸マグネシウム[(C3F7SO3)2・Mg];
ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム(C4F9SO3・Na)、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム(C4F9SO3・K)、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム(C4F9SO3・Li)、ビスノナフルオロブタンスルホン酸カルシウム[(C4F9SO3)2・Ca]、ビスノナフルオロブタンスルホン酸マグネシウム[(C4F9SO3)2・Mg]のいずれかである。
上記塩酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、35〜37%の塩酸水溶液を用いることができる。なお、塩酸水溶液としては、市販品を用いることができる。
本実施形態の製造方法で適用可能な有機溶媒としては、上記一の金属の塩化物(M1Clm)の貧溶媒として作用し、当該一の金属の塩化物を析出させることができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、上記有機溶媒としては、当該有機溶媒と水(上記塩酸水溶液に含まれるもの)とを相溶させたときの上記第1の金属の塩化物の溶解度が0.05%以下であるものが好ましい。
ここで、反応系における有機溶媒と水との割合は、有機溶媒:水=10:1〜1:1の範囲とすることが好ましく、5:1〜3:1の範囲とすることがより好ましい。
このような有機溶媒として、本実施形態では、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
ところで、上述した特許文献1及び特許文献2に示す従来のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法では、パーフルオロアルキルスルホン酸リチウム(CnF2n+1SO3Li)の原料となるパーフルオロアルキルスルホン酸(CnF2n+1SO3H)を得るためには、上記式(A)に示すように、原料であるパーフルオロアルキルスルホン酸カリウム(CnF2n+1SO3K)に対して過剰の硫酸(H2SO4)を加えて酸分解を行うため、精製工程として硫酸中からの減圧蒸留が必要であった。ここで、上記蒸留精製が不十分であると、酸分解で用いた硫酸由来の硫酸根が生成物であるパーフルオロアルキルスルホン酸に不純物として混入してしまうという問題があった。また、生成するパーフルオロアルキルスルホン酸は腐食性の強い酸であるため、プロセス中の安全の確保に注意する必要があった。
これに対して、本実施形態の製造方法によれば、上記式(5)に示すように、原料である上記化学式(3)に示す一の金属(M1)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩[(CnF2n+1SO3)m・M1]を、塩酸と有機溶媒との混合系で酸分解するため、減圧蒸留の精製工程を設ける必要がない。また、生成物としてパーフルオロアルキルスルホン酸(CnF2n+1SO3H)の水溶液が得られるため、腐食性の強いパーフルオロアルキルスルホン酸を直接扱わなくて良く、安全な製造プロセスを設計することが可能となる。さらに、酸分解において硫酸を用いないため、パーフルオロアルキルスルホン酸水和物中に不純物である硫酸根の混入を防ぐことができる。
しかしながら、原料であるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を塩酸で酸分解を行うことにより、上記式(5)に示すように、一の金属の塩化物(M1Clm)が析出するため、これを除去する必要が生じる。そこで、本実施形態の製造方法では、塩酸での酸分解の際、反応系に有機溶媒を適量共存させることによって、有機溶媒が一の金属の塩化物の貧溶媒として作用するため、当該一の金属の塩化物が析出する。本実施形態では、酸分解工程の際に、この金属塩化物を濾過によって分離・除去することが好ましい。
また、塩酸は気体であるため、過剰に使用した場合であっても、金属塩化物を濾過する際に得られる濾液を濃縮する際に未反応の塩酸を除去することができる。なお、下表1に、従来のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法と本実施形態の製造方法との酸分解工程の比較を示す。
次に、上述した金属塩の生成工程では、下記式(6)〜(8)に示すように、上述の酸分解工程で得られたパーフルオロアルキルスルホン酸の水溶液と、上記一の金属(M1)とは異なる他の金属(M2)からなる金属水酸化物[化学式M2(OH)l(lは1又は2の整数)]又は炭酸金属塩[化学式(M2)kCO3(kは1又は2の整数)]とを反応させて、上記化学式(4)で示した目的物となる他の金属(M2)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を生成する。
上記式(6)に示す金属水酸化物[M2(OH)l]としては、具体的には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)及び水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)である。
また、上記式(7)に示す炭酸金属塩[(M2)kCO3]としては、具体的には、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)である。
生成物である上記化学式(4)に示す他の金属(M2)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の具体例としては、上述した上記化学式(3)に示す一の金属(M1)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩で示した通りである。
なお、金属塩の生成工程において、パーフルオロアルキルスルホン酸の水溶液に対して、他の金属(M2)からなる金属水酸化物又は炭酸金属塩を過剰に加えた場合には、当該金属塩の生成工程で得られた他の金属(M2)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含む水溶液に、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を加えて中和する工程をさらに設けても良い。
これにより、本実施形態の製造方法によれば、一の金属(M1)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を原料として、生成物に含まれる不純物中に硫酸根がない他の金属(M2)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得ることができる。具体的には、生成物中に含まれる硫酸濃度が1ppm以下であるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩が得られる。
さらに、本実施形態の製造方法は、得られた上記化学式(4)に示す他の金属(M2)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を溶媒に溶解させた溶解液にアルミナを添加して、酸分解工程で用いた塩酸由来の塩素成分を除去する工程(精製工程)を設けても良い。溶解液中の不純物である塩素成分をアルミナに吸着させて除去することにより、さらに高純度のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得ることができる。具体的には、生成物中に含まれる塩素濃度が0.01%以下であり、カリウム濃度が0.05%以下であるパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩が得られる。
精製工程に適用可能な上記溶媒としては、上述した有機溶媒が挙げられる。また、その他としては、具体的には、アセトニトリルを挙げることができる。
なお、生成物中に含まれる上記塩素濃度及び上記カリウム濃度は、具体的には例えば、イオンクロマト法及び原子吸光法によって測定することが可能である。また、生成物中に含まれる上記硫酸濃度は、具体的には例えば、イオンクロマト法によって測定することが可能である。本実施形態の製造方法によれば、生成物に含まれる上記塩素濃度、上記カリウム濃度及び上記硫酸濃度の下限値は、それぞれ上述したイオンクロマト法及び原子吸光法の検出限界値以下とすることができる。
本実施形態のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法によれば、ナトリウム、カリウム及びリチウムから選ばれるアルカリ金属又はカルシウム及びマグネシウムから選ばれるアルカリ土類金属のうち、一の金属(M1)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を原料として、この原料を塩酸と有機溶媒との混合系で酸分解して、析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去しパーフルオロアルキルスルホン酸の水溶液を得るとともに、このパーフルオロアルキルスルホン酸の水溶液と、上記一の金属(M1)とは異なる他の金属(M2)の水酸化物又は炭酸塩と、を反応させることによって、上記他の金属(M2)のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を生成物として得ることができる。
具体的には、例えば、電解フッ素化によって得られたトリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)を原料として、本実施形態の製造方法により、リチウムイオン電池の電解質や帯電防止樹脂の導電性付与剤などとして有用なトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)を生成物として得ることができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、酸分解の際に硫酸ではなく塩酸を用いるため、パーフルオロアルキルスルホン酸の蒸留工程を設ける必要がない。これにより、プロセスの簡略化および低コスト化が可能となる。また、一の金属のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を、塩酸と有機溶媒との混合系で酸分解することにより、パーフルオロアルキルスルホン酸の水溶液が生成するため、腐食性の強いパーフルオロアルキルスルホン酸を直接扱わなくて済む。これにより、安全なプロセスを提供することができる。
更にまた、本実施形態の製造方法によれば、得られた他の金属のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を溶媒に溶解させた溶解液にアルミナを添加する精製工程を設けることにより、酸分解工程で用いた塩酸由来の塩素成分を除去することができる。これにより、さらに高純度のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得ることができる。
以上、説明したように、本実施形態の製造方法によれば、不純物が非常に少なく、高純度のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を安全且つ簡便に生成することができる。
(リチウムイオン電池用の電解質)
本実施形態のリチウムイオン電池用の電解質によれば、上述したように生成物に含まれる不純物中に硫酸根がない(具体的には、生成物中に含まれる硫酸濃度が1ppm以下である)、上記化学式(4)に示すトリフルオロメタンスルホン酸金属塩を含む構成となっている。したがって、酸化還元特性といった電池特性に優れたリチウムイオン電池用の電解質を提供することができる。
本実施形態のリチウムイオン電池用の電解質によれば、上述したように生成物に含まれる不純物中に硫酸根がない(具体的には、生成物中に含まれる硫酸濃度が1ppm以下である)、上記化学式(4)に示すトリフルオロメタンスルホン酸金属塩を含む構成となっている。したがって、酸化還元特性といった電池特性に優れたリチウムイオン電池用の電解質を提供することができる。
(樹脂用の導電性付与剤)
本実施形態の樹脂用の導電性付与剤によれば、上述したように生成物に含まれる不純物中に硫酸根がない(具体的には、生成物中に含まれる硫酸濃度が1ppm以下である)、上記化学式(4)に示すトリフルオロメタンスルホン酸金属塩を含む構成となっている。したがって、樹脂に混ぜた際にも透明性を損なうおそれがなく、透明性に優れた樹脂用の導電性付与剤を提供することができる。
本実施形態の樹脂用の導電性付与剤によれば、上述したように生成物に含まれる不純物中に硫酸根がない(具体的には、生成物中に含まれる硫酸濃度が1ppm以下である)、上記化学式(4)に示すトリフルオロメタンスルホン酸金属塩を含む構成となっている。したがって、樹脂に混ぜた際にも透明性を損なうおそれがなく、透明性に優れた樹脂用の導電性付与剤を提供することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
(実施例1)
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)20.0gを35%塩酸水溶液16.9gに溶解させ、この溶解液にジイソプロピルエーテル(IPE)50gを滴下した。IPEの滴下終了後、50℃で3時間攪拌した後、析出した塩化カリウムを濾過によって除去した。次いで、得られた濾液を濃縮して過剰に用いた塩酸を除去し、トリフルオロメタンスルホン酸の水溶液を得た。得られた水溶液中の不純物濃度を、イオンクロマト法及び原子吸光法によって測定した結果、塩素(Cl)濃度は33ppm、カリウム(K)濃度は196ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)20.0gを35%塩酸水溶液16.9gに溶解させ、この溶解液にジイソプロピルエーテル(IPE)50gを滴下した。IPEの滴下終了後、50℃で3時間攪拌した後、析出した塩化カリウムを濾過によって除去した。次いで、得られた濾液を濃縮して過剰に用いた塩酸を除去し、トリフルオロメタンスルホン酸の水溶液を得た。得られた水溶液中の不純物濃度を、イオンクロマト法及び原子吸光法によって測定した結果、塩素(Cl)濃度は33ppm、カリウム(K)濃度は196ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
次に、得られたトリフルオロメタンスルホン酸水溶液に11.1%水酸化リチウム水溶液44.2gを滴下し、40℃で4時間攪拌した。次いで、44.3%トリフルオロメタンスルホン酸水溶液で中和した後、濃縮・乾固することによって、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)18.3gを得た。また、収率は、99%であった。
次に、得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウムをジイソプロピルエーテル(IPE)に溶解させ、この溶解液にアルミナ1.5gを添加した後、室温で1.5時間攪拌した。その後、アルミナを濾過し、濾液を濃縮・乾固することによって、高純度のトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを得た。得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウム中の塩素(Cl)濃度は8ppm、カリウム(K)濃度は190ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
(実施例2)
ジイソプロピルエーテルの代わりにエタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)18.2gを得た。収率は、99%であった。また、実施例1と同様にして、得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウム中の不純物濃度を測定したところ、塩素(Cl)濃度は10ppm、カリウム(K)濃度は153ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
ジイソプロピルエーテルの代わりにエタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)18.2gを得た。収率は、99%であった。また、実施例1と同様にして、得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウム中の不純物濃度を測定したところ、塩素(Cl)濃度は10ppm、カリウム(K)濃度は153ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
(実施例3)
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)20.0gを35%塩酸水溶液16.9gに溶解させ、この溶解液にジイソプロピルエーテル(IPE)50gを滴下した。IPEの滴下終了後、50℃で3時間攪拌した後、析出した塩化カリウムを濾過によって除去した。次いで、得られた濾液を濃縮して過剰に用いた塩酸を除去し、トリフルオロメタンスルホン酸の水溶液を得た。得られた水溶液中の不純物濃度を、イオンクロマト法及び原子吸光法によって測定した結果、塩素(Cl)濃度は40ppm、カリウム(K)濃度は205ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)20.0gを35%塩酸水溶液16.9gに溶解させ、この溶解液にジイソプロピルエーテル(IPE)50gを滴下した。IPEの滴下終了後、50℃で3時間攪拌した後、析出した塩化カリウムを濾過によって除去した。次いで、得られた濾液を濃縮して過剰に用いた塩酸を除去し、トリフルオロメタンスルホン酸の水溶液を得た。得られた水溶液中の不純物濃度を、イオンクロマト法及び原子吸光法によって測定した結果、塩素(Cl)濃度は40ppm、カリウム(K)濃度は205ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
次に、得られたトリフルオロメタンスルホン酸水溶液に1.0%炭酸リチウム水溶液763.6gを滴下し、40℃で4時間攪拌した。次いで、44.3%トリフルオロメタンスルホン酸水溶液で中和した後、濃縮・乾固することによって、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)15.5gを得た。また、収率は、97%であった。
次に、得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウムをジイソプロピルエーテル(IPE)に溶解させ、この溶解液にアルミナ1.6gを添加した後、室温で1.5時間攪拌した。その後、アルミナを濾過し、濾液を濃縮・乾固することによって、高純度のトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを得た。得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウム中の塩素(Cl)濃度は9ppm、カリウム(K)濃度は200ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
(実施例4)
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)の代わりにノナフルオロブタンスルホン酸カリウム(C4F9SO3・K)を、中和工程でトリフルオロメタンスルホン酸水溶液の代わりにノナフルオロブタンスルホン酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム(C4F9SO3・Li)18.2gを得た。収率は、99%であった。また、実施例1と同様にして、得られたノナフルオロブタンスルホン酸リチウム中の不純物濃度を測定したところ、塩素(Cl)濃度は5ppm、カリウム(K)濃度は115ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)の代わりにノナフルオロブタンスルホン酸カリウム(C4F9SO3・K)を、中和工程でトリフルオロメタンスルホン酸水溶液の代わりにノナフルオロブタンスルホン酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム(C4F9SO3・Li)18.2gを得た。収率は、99%であった。また、実施例1と同様にして、得られたノナフルオロブタンスルホン酸リチウム中の不純物濃度を測定したところ、塩素(Cl)濃度は5ppm、カリウム(K)濃度は115ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
(実施例5)
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)の代わりにトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(CF3SO3・Na)を、水酸化リチウム水溶液の代わりに水酸化カルシウム水溶液用いた以外は実施例1と同様にして、ビストリフルオロメタンスルホン酸カルシウム[(CF3SO3)2・Ca]18.1gを得た。収率は、98%であった。また、実施例1と同様にして、得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウム中の不純物濃度を測定したところ、塩素(Cl)濃度は12ppm、ナトリウム(Na)濃度は99ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)の代わりにトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(CF3SO3・Na)を、水酸化リチウム水溶液の代わりに水酸化カルシウム水溶液用いた以外は実施例1と同様にして、ビストリフルオロメタンスルホン酸カルシウム[(CF3SO3)2・Ca]18.1gを得た。収率は、98%であった。また、実施例1と同様にして、得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウム中の不純物濃度を測定したところ、塩素(Cl)濃度は12ppm、ナトリウム(Na)濃度は99ppmであった。また、硫酸(SO4)濃度は1ppm以下であった。
(比較例1)
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)100.0gに100%硫酸156.3gを加えて酸分解した後、加熱減圧蒸留することによってトリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3H)を得る。次いで、得られたパーフルオロアルキルスルホン酸に、11.1%水酸化リチウム水溶液170.8gを滴下し、40℃で4時間攪拌した後、濃縮・乾固することによって、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)70.4gを得た。また、収率は、85%であった。実施例1と同様にして、得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウム中の不純物濃度を測定したところ、硫酸(SO4)濃度は240ppmであった。
トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3・K)100.0gに100%硫酸156.3gを加えて酸分解した後、加熱減圧蒸留することによってトリフルオロメタンスルホン酸カリウム(CF3SO3H)を得る。次いで、得られたパーフルオロアルキルスルホン酸に、11.1%水酸化リチウム水溶液170.8gを滴下し、40℃で4時間攪拌した後、濃縮・乾固することによって、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3・Li)70.4gを得た。また、収率は、85%であった。実施例1と同様にして、得られたトリフルオロメタンスルホン酸リチウム中の不純物濃度を測定したところ、硫酸(SO4)濃度は240ppmであった。
本発明のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法によって製造されたパーフルオロアルキルスルホン酸リチウムの一例であるトリフルオロメタンスルホン酸リチウムは、リチウムイオン電池の電解質や樹脂に帯電防止性能または導電性を付与する添加剤として有用である。
Claims (9)
- 下記化学式(1)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩と塩酸とを有機溶媒中で混合し、析出する金属塩化物M1Clを濾過により分離・除去するとともに、得られた濾液を濃縮し有機溶媒と未反応の塩酸を除去し、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を得る工程と、
前記パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液と化学式[M2(OH)l(lは1又は2の整数)]で示す金属水酸化物又は化学式[(M2)kCO3(kは1又は2の整数)]で示す炭酸金属塩とを反応させて、下記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程と、を含むことを特徴とするパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
- 前記有機溶媒は、当該有機溶媒と水とを相溶させたときの化学式[M1(Cl)m]で示す金属塩化物の溶解度が0.05%以下であることを特徴とする請求項1に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
- 前記有機溶媒が、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒及びエステル系溶媒のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
- 前記パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を得る工程で得られた上記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含む水溶液に、パーフルオロアルキルスルホン酸水溶液を加えて中和する工程、をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
- 得られた上記化学式(2)で示すパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を溶媒に溶解させた溶解液にアルミナを添加して塩素成分を除去する工程、をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の製造方法。
- 生成物に含まれる不純物中の硫酸濃度が1ppm以下であることを特徴とするパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩。
- 生成物中に含まれる塩素濃度が0.01%以下であり、カリウム濃度が0.05%以下であることを特徴とする請求項6に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩。
- 請求項6に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用の電解質。
- 請求項6に記載のパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩を含むことを特徴とする樹脂用の導電性付与剤。
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