JP2014020937A - バイオチップの製造方法及びバイオチップ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基体表面に蛋白質を固定化してなるバイオチップの製造方法であって、(1)基体表面に蛋白質固定用水溶液を点着または塗布し蛋白質を固定化する工程、(2)親水性高分子物質を含む水溶液で蛋白質を被覆する工程、を含む製造方法。
【選択図】図1
Description
ば非特許文献1参照) 。
このため通常は、蛋白質、またはそれを捕捉する分子を固定化した後に、これらの分子が固定されていない部分で他の蛋白質が非特異的に吸着するのを防止するため、吸着防止剤のコーティングが行われるが、これらの非特異吸着防止能は十分でない。また、蛋白質、またはそれを捕捉する分子を固定化した後に吸着防止剤をコーティングするため、固定化した蛋白質、またはそれを捕捉する分子の上に吸着防止剤がコーティングされてしまう場合があり、続く反応、即ち他の蛋白質( 例えば抗原抗体反応では、蛋白質に対してはそ
の抗体、また蛋白質を捕捉する分子に対してはその蛋白質)との反応において、反応性が低下するという問題があった。このため、一次抗体固定化後の吸着防止剤コーティング工程がなく、かつ蛋白質、またはそれを捕捉する分子が固定されていない部分での非特異吸着量の少ないバイオチップが求められている。
しかしながら、親水性を高めることは、基体表面に水を落とした時の前進接触角を低くすることでもあり、その結果、生理活性物質を含む水溶液を基体表面にスポットした場合に、スポット面積が広がり、さらにスポット外周部がにじんで真円のスポットにならないなどの問題が生じた。このようにスポットの形状が安定しないと、定量測定は困難である。
(2)前記(2)工程の親水性高分子物質が、生体高分子である(1)記載のバイオチップの製造方法。
(3)前記生体高分子が、アルブミン、スキムミルク、カゼインおよび免疫グロブリンを含む群より選択される1種以上の親水性高分子物質である(2)記載のバイオチップの製造方法。
(4)(1)記載の被覆する温度が42℃以下である(1)乃至(3)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
(5)(1)記載の蛋白質の点着が基体表面にスポット状に固定化されている(1)乃至(4)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
(6)複数種の蛋白質のスポットが基体表面の同一区画中に存在している(5)記載のバイオチップの製造方法。
(7)前記(1)工程の固定化が化学結合または物理吸着により蛋白質が固定化されている(1)乃至(6)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
(8)前記蛋白質を固定化する基体にポリマーを塗布する(1)乃至(7)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
(9)前記ポリマーがホスホリルコリン基を有する単量体とブチルメタクリレート基を有する単量体と蛋白質を固定化する官能基を有する単量体との共重合体である(1)乃至(8)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
(10)前記ホスホリルコリン基が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基である(1)乃至(9)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
(11)前記の蛋白質を固定化する官能基が活性エステル基である(9)記載のバイオチップの製造方法。
(12)前記活性エステル基がp−ニトロフェニルエステル又はN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである(11)記載のバイオチップの製造方法。
(13)基体の形状がスライドガラス状である(1)乃至(12)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
(14)基体の材質がプラスチックである(1)乃至(13)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
(15)プラスチックがポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和環状ポリオレフィン、ポリペンテン、ポリアミド及びそれらの共重合体よりなる群より少なくとも1種である(14)記載のバイオチップの製造方法。
(16)前記蛋白質が、抗体である(1)乃至(15)いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法
(17)(1)乃至(16)いずれか1項に記載の製造方法で作製したことを特徴とするバイオチップ。
(1)基体表面に蛋白質固定用水溶液を点着または塗布し蛋白質を固定化する工程、
(2)親水性高分子物質を含む水溶液で蛋白質を被覆する工程、
工程(1)は、基体表面への蛋白質の固定化に関する工程である。
蛋白質は基体表面にスポット状に固定化されていることが好ましい。蛋白質をスポット状に点着させる方法としては、市販のスポッター(例えばAmersham Pharmacia Biotech社製
Microrray system Generation III spotter)を使用することができるが、特にこれに
こだわるものではない。市販のスポッターを用いた場合のスポットのサイズは、直径0.2〜0.5mmである。
タンパク質を共有結合によって固定化する方法としては、チップ表面に官能基を導入し蛋白質と当該官能基とを反応させる方法が一般的である。
工程(2)は、工程(1)において作製した蛋白質固定化基板を、親水性高分子物質を含む水溶液で被覆する工程になる。
親水性高分子物質は、生体高分子であることが好ましい。生体高分子であれば基板を被覆することで表面が親水性になるため、固定化した蛋白質の安定化に寄与すると考えられる。前記生体高分子は、他の生体高分子物質に不活性なアルブミン、スキムミルク、またはカゼインを含む群より選択される1種以上を用いることが好ましい。また、免疫グロブリンを用いても良いが、この場合、チップを免疫分析に用いる場合には、測定に用いる抗原等と交差反応を惹起しない免疫グロブリンを選択することが重要であるである。
親水性高分子物質の被覆方法として、具体的には、親水性高分子物質を含む溶液を基体表面に塗布することにより親水高分子を被覆することができる。
塗布方法に関しては、チップを親水性高分子物質を含む溶液に浸漬する、親水性高分子物質を含む溶液をチップの蛋白質固定箇所に盛ることにより塗布する方法があり、どちらを用いても良い。
また、塗布後は、そのまま乾燥させても良いし、一定時間溶液に曝露した後、塗布溶液を除去し、遠心乾燥させる。遠心乾燥は、高速回転による遠心力と熱風で部品などを乾燥させるもので、様々な専用機が市販されており、メーカーによって「遠心分離乾燥機」「脱水乾燥機」「スピンドライヤー」と呼ばれている。
または、単純にチップ表面に存在する溶液を遠心操作で除去した後、乾燥させることで遠心乾燥と同じ効果を得ることができる。具体的には、1時間40℃で処理し、チップ表面
に存在する溶液を除去、その後乾燥させる。
本発明によるバイオチップ基板は、基体とその前述のように表面に固定化した蛋白質及び被覆親水性高分子物質を含む。
基体の材質に関しては後述するが、基体は蛋白質を固定化するための表面処理、および非特異吸着を抑制するための表面処理がなされていることが好ましい。
表面処理方法は特に限定しないが、固定化に必要な官能基と非特異吸着を抑制する親水基の導入が同時に実施できれば、性能及び有利である。このためには、官能基と親水性を同時に有するポリマーを基体表面に構築する方法が好適である。
親水性を有するポリマーとしては、例えばポリマー側鎖にホスホリルコリン基を有するポリマーを挙げることができる。
具体的なポリマーの構造は以下に示す。
ホスホリルコリン基を有するポリマーは、生体膜(リン脂質二重層膜)類似の構造を有しているポリマーであって、生理活性物質の吸着を抑制する効果を有する( 例えばI s h i
h a r a K , T s u j i T , K u r o s a k i T , N a k a b a y a s h i N ,J o u r n a l o f B i o m e d i c a l M a t e r i a l s R e s e a r c h , 2 8 ( 2 ) , p p . 2 2 5 - 2 3 2 , ( 1 9 9 4 )4 など) 。
とが好ましい。本発明に用いる生理活性物質を固定化する官能基をとしては、化学的に活性な基、受容体基、リガンド基などがあるが、これらに限定されない。具体的な例としては、アルデヒド基、活性エステル基、エポキシ基、ビニルスルホン基チオール基、アミノ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ヒドロキシル基、アクリレート基、マレイミド基、ヒドラジド基、アジド基、アミド基、スルホネート基などがあるがこれらに限定されない。これらの中でも生理活性物質に多く含まれるアミノ基との反応性の点からアルデヒド基、活性エステル基、エポキシ基、ビニルスルホン基が好ましい。特に、活性エステル基が生理活性物質との結合において良く用いられ、実績もあることから最も好ましい。
また、本発明に使用するポリマーは、ホスホリルコリン基以外に他の基を含んでもよく、ホスホリルコリン基を有する単量体、活性エステル基を有する単量体とブチルメタクリレート基を有する単量体との三元共重合体が好ましい。
本発明のバイオチップは、基体表面を該ポリマーでコーティングすることにより、生理活性物質の非特異的吸着を抑制する性質、特定の生理活性物質を固定化する性質を容易に付与することが可能である。
基体へのポリマーのコーティングは、例えば有機溶剤に高分子化合物を0.05〜10重量%濃度になるように溶解した高分子溶液を調製し、浸漬、吹きつけなどの公知の方法で基材表面に塗布した後、室温下ないしは加温下にて乾燥させることにより行われる。
本発明の高分子化合物を溶解した溶液を基材表面に塗布した後、溶液を除去し、有機溶媒で洗浄したのち、遠心乾燥するのが好ましい。
本発明に使用する基体の形状は、特に限定しないが、スライドガラス状の基板、マルチウェルプレート、ビーズ状の球体等が挙げられる。これらの基体表面に微細な流路を有していてもよく、流路内に抗体を固定化させることも可能である。
特に一般的なスライドガラス状での場合、市販のチップ測定装置(例えばFigen社製GenePix4000B)で測定できるメリットがあり好適である。
前記基体の材質は、例えばガラス、プラスチック、金属を用いることが可能である。これらの中で、プラスチック製の基体は、加工性、使用後の焼却処理等の点で最も好適である。
基体に用いるプラスチックの素材は特に限定するものではないが、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和環状ポリオレフィン、ポリペンテン、ポリアミド、及びそれらの共重合体よりなる群より選ばれる少なくとも1種であることが
好ましい。特に、透明性に優れたポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィンや、自家蛍光発色の少ない環状ポリオレフィンが好適に用いることができる。
(1)ポリマーの合成
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、「MPC」と記載)、n−
ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と記載)、p−ニトロフェニルオキシカルボニル−ポリエチレングリコールメタクリレート(以下、「MEONP」と記載。)を脱水エタノールに溶解させた。
そこに、さらに2、2−アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と記載、和光純薬工業社製)を添加し、均一になるまで撹拌することで、モノマー混合溶液を作製した。
なお、モノマー混合溶液中における、それぞれのモル比は、MPC、BMA、MEONPの順に70:27:3である。
なお、上述したMEONPについては、以下の(2)に示すようにして合成した。
0.01molのポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂製、「Blenmer PE−200」)を20mLのクロロホルムに溶解させた後、−30℃まで冷却した。
[実施例1](BSAを含む溶液での被覆)
まず、RAT ALBUMINの検出のために、以下の部材および原材料等を用意した。基材:穴部を備えるポリエチレン樹脂基板を用意した。
特異抗体(一次抗体):RABBIT IGG FRACTION TO RAT ALBUMIN(Cappel社製)を用意した。
標識化特異抗体(二次抗体):ビオチン標識 SHEEP IGG FRACTION TO RAT ALBUMIN(Cappel社製)を用意した。
抗原:Albumin ,Rat (-)(Cappel社製)を用意した。
洗浄液:0.05% triton X100 /PBS を用意した。
れを穴部に点着したのち、37℃の環境下に1時間静置して、抗原抗体反応を実施し、洗浄液を用いて3回洗浄を行った。
次に、Cy3標識されたストレプトアビジンのPBS溶液(0.05% triton X100)を調製し、これを穴部に点着したのち、37℃の環境下に0.5時間静置し、洗浄液を用いて3回洗浄を行った。
その後、穴部について、それぞれ、蛍光測定(励起波長:550nm蛍光波長:570nm)を行った。
実施例1と同様にしてポリエチレン樹脂基板にポリマーを導入した。
次に、標識化特異抗体の1ug/mL PBS溶液(0.05% triton X100)を調製し、こ
れを穴部に点着したのち、37℃の環境下に1時間静置して、抗原抗体反応を実施し、洗浄液を用いて3回洗浄を行った。
その後、穴部について、それぞれ、蛍光測定(励起波長:550nm蛍光波長:570nm)を行った。
Claims (17)
- 基体表面に蛋白質を固定化したバイオチップの製造方法であって、
(1)基体表面に蛋白質固定用水溶液を点着または塗布し蛋白質を固定化する工程、
(2)親水性高分子物質を含む水溶液で蛋白質を被覆する工程、
を含むことを特徴とするバイオチップの製造方法。 - 前記(2)工程の親水性高分子物質が、生体高分子である請求項1記載のバイオチップの製造方法。
- 前記生体高分子が、アルブミン、スキムミルク、カゼインおよび免疫グロブリンを含む群より選択される1種以上の親水性高分子物質である請求項2記載のバイオチップの製造方法。
- 請求項1記載の被覆する温度が42℃以下である請求項1乃至3いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
- 請求項1記載の蛋白質の点着が基体表面にスポット状に固定化されている請求項1乃至4いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
- 複数種の蛋白質のスポットが基体表面の同一区画中に存在している請求項5記載のバイオチップの製造方法。
- 前記(1)工程の固定化が化学結合または物理吸着により蛋白質が固定化されている請求項1乃至6いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
- 前記蛋白質を固定化する基体にポリマーを塗布する請求項1乃至7いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
- 前記ポリマーがホスホリルコリン基を有する単量体とブチルメタクリレート基を有する単量体と蛋白質を固定化する官能基を有する単量体との共重合体である請求項1乃至8いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
- 前記ホスホリルコリン基が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基である請求項1乃至9いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
- 前記の蛋白質を固定化する官能基が活性エステル基である請求項9記載のバイオチップの製造方法。
- 前記活性エステル基がp−ニトロフェニルエステル又はN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである請求項11記載のバイオチップの製造方法。
- 基体の形状がスライドガラス状である請求項1乃至12いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
- 基体の材質がプラスチックである請求項1乃至13いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
- プラスチックがポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和環状ポリオレフィン、ポリペンテン、ポリアミド及びそれらの共重合体よりなる群より
少なくとも1種である請求項14記載のバイオチップの製造方法。 - 前記蛋白質が、抗体である請求項1乃至15いずれか1項に記載のバイオチップの製造方法
- 請求項1乃至16いずれか1項に記載の製造方法で作製したことを特徴とするバイオチップ。
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