JP2015179069A - バイオチップ - Google Patents

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Abstract

【課題】生体試料中の多数の蛋白質の検出および分析に用いられるバイオチップの多検体同時蛍光測定において、エバネッセント場を用いて測定する際に、認識物質を備えた多検体の高感度同時測定を可能とするバイオチップを提供する。
【解決手段】生体物質を固定化するバイオチップであって、透明基体1と、少なくとも一つの開口部4を有するフレーム構造体2と、接着層3または粘着層を有し、該接着層または粘着層の589nmにおける屈折率と、透明基体の589nmにおける屈折率が異なることを特徴とするバイオチップ。
【選択図】図1

Description

本発明は、生体試料中の多数の蛋白質の検出および分析に用いられるバイオチップの構造に関する技術であり、さらに詳しくは、抗原抗体反応を用いた免疫分析、プロテオミクス、ならびに遺伝子活性の細胞内蛋白質レベルでの測定に用いられるバイオチップの構造に関するものである。
現状のバイオチップは一般にDNAチップの延長線上に位置付けられて開発がなされているため、ガラス基板上に蛋白質、またはそれを捕捉する分子をチップ表面に固定化する検討がなされている(例えば特許文献1参照)。
蛋白質、またはそれを捕捉する分子を基板上に固定化した後、該表面上で他の蛋白質(例えば抗原抗体反応では、蛋白質に対してはその抗体、また蛋白質を捕捉する分子に対してはその蛋白質)と反応させて検出機等で検出する場合、蛋白質、またはそれを捕捉する分子が固定されていない部分に該分子以外の蛋白質が固定されると、検出時にノイズとなり信号対雑音比(S/N 比) を低下させる原因となり、検出精度を低下させる(例えば非特許文献1参照) 。
例えば、特許文献2や3の発明においては、生理活性物質固定のためのアミノ基含有ポリマーと親水性ポリマーを組み合わせることで、この目的を達成しようとした。基体の親水性を高めることで非特異吸着を抑制することが可能になった。
しかしながら、親水性を高めることは、基体表面に水を落とした時の前進接触角を低くすることでもあり、その結果、生理活性物質を含む水溶液を基体表面にスポットした場合に、スポット面積が広がり、さらにスポット外周部がにじんで真円のスポットにならないなどの問題が生じた。このようにスポットの形状が安定しないと、定量測定は困難である。
近年、バイオセンサーのチャネル数を増やし、集積型にすることが望まれている。バイオセンサーのチャネル数を増やすことにより、種々の酵素基質、抗原、DNAなどを同時に測定可能とすることができるからである。
チャンネル数を増やしたバイオセンサーの2つめの利点は、測定対象が分からない場合に測定対象を検出し得ることである。これは、種類の異なるチャンネルの数を多くし、測定対象が検出できる確率を上げることにより、測定対象を検出し得ることを可能とする。
多項目を同時に測定し得るバイオセンサーに関する研究が行なわれている。バイオセンサーの例として、アフィメトリックス社によりDNAチップが開発されている。これはシリコン基板上でオリゴヌクレオチドを直接合成し、DNA分子を多数配列させたチップである。このチップを用いて測定することにより、対象の発現遺伝子を標識し、DNAチップにハイブリダイゼーションさせ固定化位置を確認することにより特定できる。このチップの特徴は、ゲルやキャピラリーを用いたものより測定時間が早く、標識の種類を変えれば同時にいくつものサンプルを測定できる点である。
また、DNAチップやプロテインチップを作製する方法として、幾つかの技術が現在用いられている。そのうち、幾何級数的種類の生体高分子オリゴマーの全種類を高密度に合成、配列できるフォトリソグラフィを利用した固相合成法が知られている。
また、あらかじめ用意した多種類の材料をチップ上に並べていく技術であるスタンプ法が知られている。
一方、測定方法に関して、特許文献4のバイオチップは、溶液の屈折率より高い一定の屈折率を有する媒体を含む微小担体と、前記微小担体の一の面に形成した疎水性部分と、前記微小担体の他の一の面に固定化した認識物質とからなるバイオチップであって、前記一定の屈折率を有する媒体側から溶液側へ入射した電磁波を全反射させた場合に、前記溶液側にエバネッセント場を生じさせることが可能であることが記載されている。前記エバネッセント場が生じる範囲内に、前記認識物質を備えることで、多検体の高感度同時測定を可能とすることが記載されている。
特開2001−116750号公報 特開2005−091245号公報 特表2010−008378号広報 特開2001−356971号公報
「DNAマイクロアレイ実戦マニュアル」、林崎良英、岡崎康司編、羊土社、2000年、p.57
生体試料中の多数の蛋白質の検出および分析に用いられるバイオチップの多検体同時蛍光測定において、エバネッセント場を用いて測定する際に、前記認識物質を備えた多検体の高感度同時測定を可能とするバイオチップを提供する。
本発明は、以下の(1)〜(12)に示す通りである。
(1)生体物質を固定化するバイオチップであって、透明基体と、少なくとも一つの開口部を有するフレーム構造体と、接着層または粘着層を有し、該接着層または粘着層の589nmにおける屈折率と、透明基体の589nmにおける屈折率が異なることを特徴とするバイオチップ。
(2)前記接着層または粘着層の589nmにおける屈折率と、透明基体の589nmにおける屈折率の差が0.01以上であることを特徴とする(1)に記載のバイオチップ。
(3)前記接着層または粘着層の材質が、透明基体の材質と異なることを特徴とする(1)または(2)に記載のバイオチップ。
(4)前記透明基体上に生体物質を固定化するための官能基を有する(1)ないし(3)に記載のバイオチップ。
(5)前記官能基がアミノ基、カルボキシル基、または活性エステル基である(4)に記載のバイオチップ。
(6)前記活性エステル基がp−ニトロフェニルエステル又はN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである(5)に記載のバイオチップ。
(7)前記透明基体が、前記官能基を有する親水性ポリマーを含む、(1)ないし(6)に記載のバイオチップ。
(8)形状がスライドガラス状である、(1)ないし(7)に記載のバイオチップ。
(9)透明基体およびフレーム構造体の材質が高分子化合物である、(1)ないし(8)に記載のバイオチップ。
(10)前記高分子化合物がポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和環状ポリオレフィン、ポリペンテン、ポリアミド及びそれらの共重合体よりなる群より少なくとも1種を使用する、(9)に記載のバイオチップ。
(11)前記接着層または粘着層が、樹脂性粘着材である、(1)ないし(10)に記載のバイオチップ。
(12)(1)ないし(11)に記載のバイオチップの開口部中の透明基体表面に、前記生体物質が固定化された、生体物質固定化バイオチップ。
(13)前記生体物質が、蛋白質、糖蛋白質、ペプチド、糖ペプチド、またはそれらの誘導体の中から選ばれる少なくとも1種以上を含む、(12)に記載の生体物質固定化バイオチップ。
(14)2種以上の前記生体物質が、同一の開口部中の透明基体表面上に固定化された、(13)に記載の生体物質固定化バイオチップ。
生体試料中の多数の蛋白質の検出および分析に用いられるバイオチップの多検体同時蛍光測定において、エバネッセント場を用いて測定する際に、前記認識物質を備えた多検体の高感度同時測定を可能とするバイオチップを提供できた。
本発明のバイオチップの構造を示す図。 本発明の実施例のバイオチップの測定結果を示す図。 本発明の比較例のバイオチップの測定結果を示す図。
まず、本発明のバイオチップについて説明する。
本発明は、生体物質を固定化するバイオチップであって、透明基体と、少なくとも一つの開口部を有するフレーム構造体と、接着層または粘着層を有し、該接着層または粘着層の589nmにおける屈折率と、透明基体の589nmにおける屈折率が異なることを特徴とする。屈折率差を設けることで、後述するエバネッセント光を透明基体中に全反射させることができる。具体的には、屈折率差が0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.08以上であることがさらにより好ましい。
また、本発明は、生体物質を固定化するバイオチップであって、透明基体と、少なくとも一つの開口部を有するフレーム構造体と、接着層または粘着層を有し、該接着層または粘着層の材質が、透明基体の材質と異なることを特徴とする。それぞれの材質を変えることで、容易に前述の屈折率差を設けることができる。具体例として、透明基体、接着層または粘着層、フレーム構造体がこの順に重ねられ、接着層を介して透明基体とフレーム構造体を接着または粘着させたものが挙げられる。
透明基体は、その上に生体物質を固定化し、その生体物質を用いた抗原抗体反応、レセプターリガンド反応、酵素−基質反応を行うためのものである。その反応の検出には、発色、蛍光、発光を用いる場合が多く、そのため光透過性を有することが必要である。
透明基体の形状は、適時最適な形状のものを使用可能であるが、具体例として一般的なスライドガラスの形状である長方形状のものを好適に用いることができる。具体的には、長方形状のバイオチップを測定する装置が多く市販されていることから、縦74mm以上76mm以下、横24mm以上26mm以下、厚み0.8mm以上1.5mm以下のものが好適である。
次にフレーム構造体について述べる。
フレーム構造体は透明基体上に搭載して使用する。フレーム構造体は、フレーム構造体の上下を貫通する開口部を有しており、該開口部から見える透明基体上に生体物質である検体をスポットすることができる構造になっている。
さらに、フレーム構造体は、厚みを有する。具体的には、透明基体がスライドガラス形状の場合は、0.2mm以上3mm以下の厚みが好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上、1.5mm以下であり、最も好ましくは0.8mm以上、1.2mm以下である。
前記厚みを有することで、フレーム構造体はその開口部に、溶液を蓄えることができ、バイオチップを用いた反応を行うことが可能となる。
フレーム構造体が有する開口部は、適時最適な形状のものを使用できるが、一般的にウェルを有するバイオチップにおいて良く使用される長方形や円を用いることが好ましい。
フレーム構造体の色は、適時最適な色のものを使用できるが、バイオチップの測定において蛍光測定を用いる場合が多いことから、発光蛍光が隣の開口部に影響を与えないように着色されていることが好ましく、特に黒色であることが特に好ましい。
透明基体及びフレーム構造体の素材は、材質が高分子化合物であることが好ましい。
具体的には、成形性、単価、さらに最終的な廃棄時の焼却を考えて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和環状ポリオレフィン、ポリペンテン、ポリアミド及びそれらの共重合体よりなる群より少なくとも1種であることが好ましい。
特に、ポリエチレン、飽和環状ポリオレフィン樹脂は、自家蛍光発光が少ないことから、蛍光測定系での使用に好適である。
また、本発明のバイオチップは、接着層または粘着層を有するが、これは一般的な熱溶着では、後述する接着面での基材の屈折率差が発生しづらいという理由による。
接着層または粘着層の材質は、透明基体と異なる材質であれば適時最適な材質のものを使用できるが、具体例としてシリコン系、またはアクリル系の樹脂製接着剤または粘着剤を好適に用いることができる。透明基体と異なる材質とすることで、前述の屈折率に差を設け、全反射照明顕微鏡において透明基体中の表面の近傍のごく限定された領域にのみ発生させたエバネッセント光を、透明基体中に全反射させることが容易に可能となる。
生体物質を簡便に固定化するために、透明基体上に生体物質を固定化するための官能基を有していてもよい。ここで官能基とは、具体的には、アミノ基、カルボキシル基、活性エステル基などがある。
これらの中で、活性エステル基は、生体物質との結合において、他に縮合剤を用いる必要がないことから、好適に用いることができる。活性エステル基としては、活性エステル基がp−ニトロフェニルエステル又はN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを好適に用いることができる。
透明基体表面への前記官能基の導入は、一例として、前記官能基を有する親水性ポリマーを透明基体表面に含有させることが挙げられる。具体例としては、透明基体表面に当該親水性ポリマーを積層することが挙げられ、例えば塗布することで達成される。
活性エステル基を有する前記親水性ポリマーの一形態として、親水性を保持するためのユニットを含むことが挙げられる。この形態においては、親水性を保持するためのユニットが検出対象物質の基材への物理的吸着(非特異的吸着)を抑制する役割を、それぞれ果たす。
また、前記親水性ポリマーは、疎水性基を有するユニットを有してもよい、これは疎水性基が高分子化合物といわゆる疎水性相互作用により吸着させる役割を果たす。
以上の点から親水性ポリマーの構造は、当該ユニットを有するものであれば適時最適な構造のものを使用可能であるが、具体例として以下の式[1]の親水性ポリマーを好適に用いることができる。
式[1]中R1、R2、R3は水素原子またはメチル基を、R4は疎水性基を示す。Xは親水性基を、Zは活性エステル基を含む基を示す。l、m、nは本来自然数であるが、各構成成分の組成割合として表記される場合がある。
Xは親水性基であれば、適時最適な構造のものを使用可能であるが、以下の式[2]および[3]に示すホスホリルコリン基を含む基またはアルキレングルコールを含む基であるとタンパク質の非特異的な吸着を抑制できるので好ましい。
式[2]中のY1はアルキレングリコール残基を示し、その炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは2〜4であり、更に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。アルキレングリコール残基Y1の繰り返し数pは1〜20の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。繰り返し数pが2以上20以下の場合は、繰り返されるアルキレングリコール残基Y1の炭素数は同一であっても、異なっていてもよい。
式[3]中のY2はアルキレングリコール残基を示し、その炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは2〜4であり、更に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。アルキレングリコール残基Y2の繰り返し数qは、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜100の整数であり、より好ましくは2〜100の整数であり、更に好ましくは2〜95の整数であり、最も好ましくは3〜90の整数である。繰り返し数qが2以上100以下の場合は、繰り返されるアルキレングリコール残基Y2の炭素数は同一であっても、異なっていてもよい。R5は水素原子、メチル基またはエチル基である。
式[1]中の疎水性基R4は、適時最適な構造のものを使用できるが、アルキル基や芳香族類が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基である。アルキル基は特に構造を限定されるものではなく、直鎖であっても、分岐していても、環状になっていてもよい。
式[1]中のZは、活性エステル基を含む基であれば適時最適なものを使用可能であるが、下記の式[4]で表されるように、活性エステル基が炭素数1〜10のアルキレングリコール残基の連鎖またはアルキル基を介して結合した化合物であることが好ましい。
式[4]で、Y3がアルキレングリコール残基である場合、Y3の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは2〜4であり、更に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。アルキレングリコール残基Y3の繰り返し数rは1〜100の整数であり、より好ましくは2〜90の整数であり、最も好ましくは2〜80の整数である。繰り返し数2以上100以下の場合は、繰り返されるアルキレングリコール残基の炭素数は同一であっても、異なっていてもよい。Y3がアルキル基である場合、特に構造を限定しないが、直鎖であっても、分岐していても、環状になっていてもよい。Wは、活性エステル基である。
本発明にかかる親水性ポリマーに含まれる親水性基を有するユニットの組成割合(l、m、nの和に対するlの比率)は適時最適な割合のものを使用可能であるが、親水性ポリマーの全ユニットに対して5〜98mol%が好ましく、より好ましくは10〜90mol%、最も好ましくは10〜80mol%である。組成比が下限値を下回ると、非特異的吸着が多くなる。一方、上限値を上回ると水溶性が高まり、アッセイ中高分子化合物が溶出してしまう恐れが出てくる。ただし、高分子化合物のいずれかの部分に、基材と共有結合できる官能基類を導入し、基材と化学的に結合させる場合はこの限りではない。たとえば、高分子化合物中にシランカップリング剤を導入しておく方法などが簡便で好ましい。
本発明にかかる親水性ポリマーに含まれる疎水性基を有するユニットの組成割合(l、m、nの和に対するmの比率)は適時最適な割合のものを使用可能であるが、高分子化合物の全ユニットに対して、1〜90mol%が好ましく、より好ましくは10〜80mol%、最も好ましくは20〜80mol%である。上限値を上回ると非特異的吸着が増加する恐れが出てくる。
本発明にかかる親水性ポリマーに含まれる活性エステル基を有するユニットの組成割合(l、m、nの和に対するnの比率)は適時最適な割合のものを使用可能であるが、高分子化合物の全ユニットに対して、1〜94mol%が好ましく、より好ましくは2〜90mol%、最も好ましくは3〜80mol%である。組成比が下限値を下回ると、生体物質を十分に固定化できなくなる。一方、上限値を上回ると非特異的吸着が増加する恐れが出てくる。
本発明にかかる親水性ポリマーの化学構造は、少なくとも親水性基を有するユニット、疎水性基を有するユニット及び活性エステル基を有するユニットを含む構造であれば、その結合方式がランダム、ブロック、グラフト等いずれの形態をなしていてもかまわない。
本発明のバイオチップは、透明基体表面を該親水性ポリマーで被覆することにより、生体物質の非特異的吸着を抑制する性質、特定の生体物質を固定化する性質を容易に付与することが可能である。
透明基体への親水性ポリマーの被覆は、例えば有機溶剤に親水性ポリマーを0.05〜10重量%濃度になるように溶解したポリマー溶液を調製し、浸漬、吹きつけなどの公知の方法で透明基材表面に塗布した後、室温下ないしは加温下にて乾燥させることにより行われる。形状がウェルの場合、溶液状態にしてウェルに分注し、一定時間静置して吸着させた後、洗浄することが挙げられる。
有機溶剤としては、2−ブタノン、エタノール、メタノール、t−ブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトンなどの単独溶媒またはこれらの混合溶剤が使用される。中でも、エタノール、メタノールが前記透明基体を変性させず、乾燥させやすいため好ましい。
本発明にかかる親水性ポリマーを溶解した溶液を透明基体表面に塗布した後、溶液を除去し、有機溶媒で洗浄したのち、遠心乾燥するのが好ましい。遠心乾燥は、高速回転による遠心力と熱風で部品などを乾燥させるもので、様々な専用機が市販されており、メーカーによって「遠心分離乾燥機」「脱水乾燥機」「スピンドライヤー」と呼ばれている。または、単純にチップ表面に存在する溶液を遠心操作で除去した後、乾燥させることで遠心乾燥と同じ効果を得ることができる。具体的には、1時間40℃で処理し、チップ表面に存在する溶液を除去、その後乾燥させる。
次に、透明基体表面への生体物質の固定化について述べる。
生体物質は、前述の透明基体とフレーム構造体を接着層または粘着層で接合したものの開口部から透明基体上に生体物質を塗布、またはスポットすること等により固定化する。このうち、生体物質を塗布する方法により、開口部中の透明基体全体に生体物質を固定化することができる。一方、開口部中の透明基体中にスポットで生体物質を固定化すると、複数種の生体物質を同一の開口部中の透明基体表面上に、固定化でき、各々の生体物質が独立した判定領域を持っていることで、多数検体の同時測定を実施することができる。
透明基体表面への生体物質の固定化方法の一つとして、下記記載の(1)、(2)の工程を含む方法で固定化することが挙げられる。
(1)親水性高分子物質を含有する水溶液に該生体物質を溶解し、生体物質固定用水溶液を作製する工程。
(2)透明基体表面に生体物質固定用水溶液を点着または塗布し生体物質を固定化する工程。
まず工程(1)について詳細に説明する。
工程(1)は、透明基体表面に固定化するための生体物質を含む溶液の調製に関する工程である。
(溶液の組成)
溶媒としては、特に限定するものではないが、生体物質溶液であるので、生体物質の変性を防ぐ意味から水溶性の溶液であることが好ましい。水溶性溶液の溶媒としては、一般的な緩衝液を用いることができる。例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、生理食塩水等が挙げられ、適時最適なものを使用可能であるが、一例として免疫分析の分野で良く使用される、リン酸緩衝液が挙げられる。
本発明の特徴としては、前記生体物質溶液に親水性高分子物質を含有させることにある。親水性高分子物質としては、合成高分子材料や生体由来高分子材料を用いることができる。特に生体高分子材料を用いることが好ましい。生体高分子であれば、溶液中での全体的な生体物質濃度を増やし、固定化対象である蛋白質の安定化に寄与すると考えられる。前記生体高分子は、他の生体高分子物質に不活性なアルブミン、スキムミルク、またはカゼインを含む群より選択される1種以上を用いることが好ましい。また、免疫グロブリンを用いても良いが、この場合、チップを免疫分析に用いる場合には、交差反応を惹起しない免疫グロブリンを選択することが重要であるである。
次に工程(2)について説明する。
工程(2)は、工程(1)において作製した生体物質固定化用水溶液を、透明基体表面に固定化する工程になる。透明基体表面への固定化は、化学結合でも、物理化学的結合でもよい。
生体物質は透明基体表面にスポット状に固定化されていることが好ましい。スポット状に点着させる方法としては、市販のスポッター(例えばAmersham Pharmacia Biotech社製 Microrraysystem Generation III spotter)を使用することができるが、特にこれにこだわるものではない。市販のスポッターを用いた場合のスポットのサイズは、直径0.2〜0.5mmである。
また、透明基体表面への生体物質の固定化方法について、前記とは別の方法として、下記(1)’、(2)’の工程を含む方法が挙げられる。
(1)’透明基体表面に生体物質固定用水溶液を点着または塗布し生体物質を固定化する工程。
(2)’親水性高分子物質を含む水溶液で生体物質を被覆する工程。
まず工程(1)’について詳細に説明する。
工程(1)’は、透明基体表面への生体物質の固定化に関する工程である。
生体物質は透明基体表面にスポット状に固定化されていることが好ましい。生体物質をスポット状に点着させる方法としては、市販のスポッター(例えばAmersham Pharmacia Biotech社製Microarray system Generation III spotter)を使用することができるが、特にこれにこだわるものではない。市販のスポッターを用いた場合のスポットのサイズは、直径0.2〜0.5mmである。
用いる生体物質の種類は1種類以上であればよく、マイクロチップの特性状、複数種の生体物質のスポットを有する方が、一度に複数の検出が可能であるので効果的である。複数種の生体物質のスポットが透明基体表面の同一区画中に存在していても良い。
生体物質の固定化に関しては、表面に固定化され分析の際の洗浄工程によって生体物質が表面から脱離しなければ特に限定しない。具体的な固定化の方法としては、共有結合または物理吸着であることが好ましい。
生体物質を共有結合によって固定化する方法としては、チップ表面に官能基を導入し生体物質と当該官能基とを反応させる方法が一般的である。
次に工程(2)’について説明する。
工程(2)’は、工程(1)’において作製した生体物質固定化バイオチップを、親水性高分子物質を含む水溶液で被覆する工程になる。
(親水性高分子物質)
親水性高分子物質は、生体高分子であることが好ましい。生体高分子であれば基板を被覆することで表面が親水性になるため、固定化した生体物質の安定化に寄与すると考えられる。前記生体高分子は、他の生体高分子物質に不活性なアルブミン、スキムミルク、またはカゼインを含む群より選択される1種以上を用いることが好ましい。また、免疫グロブリンを用いても良いが、この場合、チップを免疫分析に用いる場合には、測定に用いる抗原等と交差反応を惹起しない免疫グロブリンを選択することが重要であるである。
(親水性高分子物質の塗布)
親水性高分子物質の被覆方法として、具体的には、親水性高分子物質を含む溶液を透明基体表面に塗布することにより親水高分子を被覆することができる。
塗布方法に関しては、チップを親水性高分子物質を含む溶液に浸漬する、親水性高分子物質を含む溶液をチップの生体物質固定箇所に盛ることにより塗布する方法があり、どちらを用いても良い。
また、塗布後は、そのまま乾燥させても良いし、一定時間溶液に曝露した後、塗布溶液を除去し、遠心乾燥させる。遠心乾燥は、高速回転による遠心力と熱風で部品などを乾燥させるもので、様々な専用機が市販されており、メーカーによって「遠心分離乾燥機」「脱水乾燥機」「スピンドライヤー」と呼ばれている。
または、単純にチップ表面に存在する溶液を遠心操作で除去した後、乾燥させることで遠心乾燥と同じ効果を得ることができる。具体的には、1時間40℃で処理し、チップ表面に存在する溶液を除去、その後乾燥させる。
親水性高分子物質を含む溶液は、特に限定するものではないが、水性溶媒、特にリン酸緩衝液に代表される水性緩衝液が好ましい。水溶性溶液の溶媒としては、一般的な緩衝液を用いることができる。例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、生理食塩水等が挙げられ、特に限定するものではないが、免疫分析の分野で良く使用される、リン酸緩衝液を好適に使用することができる。
被覆する条件としては、被覆時の溶液温度により固定化した生体物質が変性してはいけないので、42℃以下、好ましくは40℃以下で処理することが好ましい。
なお、本発明において、生体物質とは、蛋白質、糖蛋白質、ペプチド、または糖ペプチドであり、それらの誘導体の中から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。特に、前記生体物質であって、抗体や抗原に相当する生体物質を用いることで、通常の免疫分析工程を経て、物質同定に用いることができ、その結果、臨床診断等に役立てることができる。
本発明においては、2種以上の生体物質が、同一の開口部中の透明基体表面上に、各々の生体物質が独立した判定領域を持って固定化されてもよい。これは同一開口部中に複数種の生体物質を、それぞれ個別の状態でスポットされ、一連の検出測定においてそれぞれの生体物質の反応を調べることができるようにしたものである。
全反射照明顕微鏡のようにエバネッセント場を利用した局所的な励起光を利用して、蛍光測定をする場合、透明基体側から入射した電磁波を界面にて全反射させて、エバネッセント場を生じさせることが可能である。エバネッセント場を生じさせるには、入射する電磁波を全反射させる必要がある。全反射させるには、一般に入射角θをθ>42°に設定する。全反射させると、溶液などの媒体より低い屈折率を有する側にエバネッセント場と呼ばれる近接場の一種がしみだしてくる。このエバネッセント場は、全反射を起こした界面の面内方向に伝搬するが、垂直方向には伝搬せず、界面付近に局在する。よって、エバネッセント場の生じた領域にのみ励起光が生じ、この場に蛍光標識があれば、この局所的なエバネッセント場でのみ蛍光を放出させることができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.親水性ポリマーの調製
(1)親水性ポリマーの合成
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、「MPC」と記載)、n−ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と記載)、p−ニトロフェニルオキシカルボニル−ポリエチレングリコールメタクリレート(以下、「MEONP」と記載。)を脱水エタノールに溶解させた。そこに、さらに2、2−アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と記載、和光純薬工業社製)を添加し、均一になるまで撹拌することで、モノマー混合溶液を作製した。なお、モノマー混合溶液中における、それぞれのモル比は、MPC、BMA、MEONPの順に25:70:5である。その後、アルゴンガス雰囲気下、60℃で6時間反応させた後、反応溶液をジエチルエーテル中に滴下し、沈殿を収集することにより第1のポリマーを得た。なお、上述したMEONPについては、以下の(2)に示すようにして合成した。
(2)p−ニトロフェニルオキシカルボニル−ポリエチレングリコールメタクリレート(MEONP)の合成
0.01molのポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂製、「Blenmer PE−200」)を20mLのクロロホルムに溶解させた後、−30℃まで冷却した。−30℃に保ちながらこの溶液に、予め作製しておいた0.01molのp−ニトロフェニルクロロフォーメート(Aldrich社製)と0.01molのトリエチルアミン(和光純薬工業社製)およびクロロホルム20mLの均一溶液をゆっくりと滴下した。−30℃にて1時間反応させた後、室温でさらに2時間溶液を攪拌した。その後反応液から塩をろ過により除去し、溶媒を留去してMEONPを得た。
2.蛍光標識アビジンの検出
[実施例1](シクロオレフィンポリマー(以下COP)を使用したフレーム構造体とCOPを使用した透明基体を両面テープで貼付した場合)
(1)まず、蛍光標識アビジンの検出のために、以下の部材および原材料等を用意した。<1>透明基体:COP基板(589nmの屈折率:1.525)を透明基体として準備した。
<2>フレーム構造体:穴部を備えるCOP黒基板をフレーム構造体として準備した。
<3>両面テープ:両面テープ(589nmの屈折率:1.420)を粘着層として用意した。
<4> 蛍光標識アビジン:Alexa647標識ストレプトアビジン(Life technologies社製)
(2)透明基体とフレーム構造体を両面テープで貼り合わせした。
(3)次に、親水性ポリマーの0.5wt%エタノール溶液を調整し、これを成型品の穴部に点着したのち乾燥させることで、底面に、親水性ポリマーを導入した。
(4)次に、エタノールを用いて洗浄を行った。
(5)次に、リン酸バッファー溶液で500μug/mLに調整した蛍光標識アビジンを穴部に点着したのち、50%以下の乾燥状態、室温下で一晩静置した。
(6)次に、洗浄液を用いて3回洗浄を行った。
(7)その後、穴部について、それぞれ、蛍光測定(励起波長:550nm蛍光波長:570nm)を行った。
測定は、エバネッセント波を用いた蛍光測定装置であるレクザム社製ビオレックススキャン2000を用いて行った。その結果、蛍光由来のシグナルが得られた。(図2)
[比較例](COPを使用したフレーム構造体とCOPを使用した透明基体を熱圧着した場合)
透明基体とフレーム構造体を熱溶着した以外は、実施例1と同じで実施した。その結果、蛍光由来のシグナルは観測されなかった。(図3)
以上より、フレーム構造体と透明基体を透明基体と屈折率の異なる接着層または粘着層で貼り合わせることで、前記のとおり屈折率差による反射を利用してシグナルが観察可能となることが確認された。
1 透明基体
2 フレーム構造体
3 接着層
4 開口部

Claims (14)

  1. 生体物質を固定化するバイオチップであって、
    透明基体と、
    少なくとも一つの開口部を有するフレーム構造体と、
    接着層または粘着層を有し、
    該接着層または粘着層の589nmにおける屈折率と、透明基体の589nmにおける屈折率が異なることを特徴とするバイオチップ。
  2. 前記接着層または粘着層の589nmにおける屈折率と、透明基体の589nmにおける屈折率の差が0.01以上であることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
  3. 前記接着層または粘着層の材質が、透明基体の材質と異なることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオチップ。
  4. 前記透明基体上に生体物質を固定化するための官能基を有する請求項1ないし3に記載のバイオチップ。
  5. 前記官能基がアミノ基、カルボキシル基、または活性エステル基である請求項4に記載のバイオチップ。
  6. 前記活性エステル基がp−ニトロフェニルエステル又はN−ヒドロキシスクシンイミドエステルである請求項5に記載のバイオチップ。
  7. 前記透明基体が、前記官能基を有する親水性ポリマーを含む、請求項1ないし6に記載のバイオチップ。
  8. 形状が長方形状である、請求項1ないし7に記載のバイオチップ。
  9. 透明基体およびフレーム構造体の材質が高分子化合物である、請求項1ないし8に記載のバイオチップ。
  10. 前記高分子化合物がポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和環状ポリオレフィン、ポリペンテン、ポリアミド及びそれらの共重合体よりなる群より少なくとも1種を使用する、請求項9に記載のバイオチップ。
  11. 前記接着層または粘着層が、樹脂製接着剤または粘着剤である、請求項1ないし10に記載のバイオチップ。
  12. 請求項1ないし11に記載のバイオチップの開口部中の透明基体表面に、前記生体物質が固定化された、生体物質固定化バイオチップ。
  13. 前記生体物質が、蛋白質、糖蛋白質、ペプチド、糖ペプチド、またはそれらの誘導体の中から選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項12に記載の生体物質固定化バイオチップ。
  14. 2種以上の前記生体物質が、同一の開口部中の透明基体表面上に固定化された、請求項13に記載の生体物質固定化バイオチップ。
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