JP4411926B2 - マイクロアレイ及びその製造方法 - Google Patents
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「DNAマイクロアレイ実戦マニュアル」、林崎良英、岡崎康司編、羊土社、2000年、p.57 「細胞工学別冊 DNAマイクロアレイと最新PCR法」、P.22、秀潤社、2000年 「DNAチップ技術とその応用」、「蛋白質 核酸 酵素 43(13)」、君塚房夫、加藤郁之進著、共立出版、1998年、pp.2004〜2011
および、生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液の基板上への点着工程(工程C)
を含み、工程Cで点着部において層Bを形成する物質の少なくとも一部を除去し、生理活性物質の少なくとも一部を層Aに達するまで浸透させることを特徴とするマイクロアレイの製造方法。
(2)工程Cの生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液が、層Bを形成する物質に
対して溶解性を示す(1)記載のマイクロアレイの製造方法。
(3)工程Cの生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液がアルコールを含む(2)
記載のマイクロアレイの製造方法。
(4)生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液が界面活性剤を含む(2)記載のマ
イクロアレイの製造方法。
(5)層Bがホスホリルコリン基を有する高分子物質から形成される(1)〜(4)いず
れか記載のマイクロアレイの製造方法。
(6)ホスホリルコリン基を有する高分子物質が、2-メタクリロイルオキシエチルホス
ホリルコリンを含む共重合体である(5)記載のマイクロアレイの製造方法。
(7)基板がプラスチック製である(1)〜(6)いずれか記載のマイクロアレイの製造
方法。
(8)プラスチックが飽和環状ポリオレフィン製である(7)記載のマイクロアレイの製
造方法。
(9)基板がガラス製である(1)〜(6)いずれか記載のマイクロアレイの製造方法。
(10)生理活性物質が核酸、アプタマー、タンパク質、抗体、オリゴペプチド、ペプチ
ド核酸、糖鎖、糖タンパク質の内、少なくとも一つである(1)〜(9)いずれか記載の
マイクロアレイの製造方法。
(11)生理活性物質がオリゴヌクレオチドである(1)〜(9)いずれか記載のマイク
ロアレイの製造方法。
(12)生理活性物質がアプタマーである(1)〜(9)いずれか記載のマイクロアレイの製造方法。
層Aの目的はマイクロアレイ作製時に生理活性物質を効率よく固定化することであり、層Bの目的はマイクロアレイ使用時に生理活性物質の基板への非特異的吸着を抑制し、信号対雑音比を向上させることである。層Bの存在は、マイクロアレイ作製時に生理活性物質固定化をも妨げるため、生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液(以下、液体Cと略記)には、層Bを形成する物質を無効化する性質が必要である。
層Aは生理活性物質との結合性を有する官能基を含む。官能基として、アルデヒド基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、酸無水物、カルボジイミド基、ビニル基、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル、スクシンイミド基、マレイミド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、ヒドラジド基、アジド基、ビオチン誘導体、アビジン誘導体、リン酸基、アズラクトン基、ニトリル基、アミド基、イミノ基、ニトレン基、アセチル基などを用いることができ、好ましくはアルデヒド基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、カルボジイミド基、酸無水物であり、より好ましくはアルデヒド基、アミノ基である。
固定化する生理活性物質が核酸の場合は、アミノ基およびアルデヒド基が多用されている。基板表面へのアミノ基の導入には、アミノアルキルシラン処理、窒素雰囲気下でのプラズマ処理、アミノ基含有高分子物質のコーティングなどの方法を用いることができるが、処理の簡便性、均一性の観点から、アミノアルキルシラン処理が好ましい。アミノアルキルシラン処理は、アミノアルキルシラン溶液への基板の浸漬および熱処理によることが好ましい。アミノアルキルシラン溶液の濃度は0.1〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましく、さらに好ましくは1〜5重量%である。
基板表面へのアルデヒド基の導入方法として好適に用いられるのは、アミノ基導入の後に多官能性アルデヒドを反応させる方法である。アミノ基導入には、上記の手法を用いることができる。多官能性アルデヒドとしてはグルタルアルデヒドが好ましい。
層Bは生理活性物質の吸着を抑制する物質からなる。生理活性物質の吸着を抑制する物質として、高分子物質を好適に用いる事ができる。高分子物質はホスホリルコリン基を含むことが好ましく、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含む共重合体(MPCポリマー)を好適に用いることができる。MPCポリマーは生体膜(リン脂質二重層膜)類似の構造を有し、生理活性物質の吸着を抑制する効果を有する(たとえば、Ishihara K、 Tsuji T、 Kurosaki T、 Nakabayashi N、 Journal of Biomedical Materials Research、 28(2)、 pp.225-232、 (1994) 参照)。MPCポリマー層を形成する方法としては、ディップコート法を用いることができる。すなわち、MPCポリマー溶液に基板を浸漬した後、溶媒を揮発させることにより表面にMPCポリマー層を形成する。MPCポリマーの濃度は、0.01〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%がより好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましい。
検出対象が核酸の場合には、核酸は負電荷を有することから、負電荷をもつ高分子物質を用いて層Bを形成することで、静電的反発により核酸の吸着を抑制することができる。負電荷をもつ高分子物質の代表として、ポリアクリル酸およびその塩、ポリスチレンスルホン酸およびその塩、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
生理活性物質をマイクロアレイ基板上に固定化する際には、生理活性物質を溶解又は分散した液体(液体C)を点着する方法が一般的である。しかしながら、本発明の基板を用いる場合、層Bはマイクロアレイ作製時においても生理活性物質の固定化を妨げてしまうため、生理活性物質を固定化する部分(スポット)において層Bを無効化する必要がある。層Bを無効化する方法としては、液体Cの接触により層Bを形成する物質を溶解する方法が好ましい。この方法では、スポット以外の部分の層Bは全く影響を受けないまま存在するため、スポット以外の部位への検出対象物質の吸着・結合は抑制される。液体Cは層Bを形成する物質に対する溶解性を示せばよい。層Bを形成する物質がMPCポリマーである場合には、液体Cはアルコール、およびまたは、界面活性剤を含むことが好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、グリセリンなどを好ましく用いることができ、エタノールが最も好ましい。界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。液体Cとしてはアルコール以外にも、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、その他の溶媒を用いることができる。液体Cは2種類以上の液体の混合物であってもよい。
液体Cの点着後、固定化されなかった物質を除去するため、純水や緩衝液で洗浄することが好ましい。既存のマイクロアレイ用基板を用いる場合には、未反応の官能基のブロッキング処理が必要であるが、本発明では未反応の官能基は層Bに被覆されているため、ブロッキング処理は不要である。
固定化する生理活性物質としては、他の物質を特異的に捕捉する性質を有することが好ましい。具体的には、たとえば核酸、アプタマー、タンパク質、抗体、オリゴペプチド、ペプチド核酸、糖鎖、糖タンパク質などを用いることができる。
固定化する生理活性物質には、層Aの官能基との反応性を高めるため、予め官能基を導入することが好ましい。層Aの官能基がアルデヒド基の場合、生理活性物質にはアミノ基を導入しておくことが好ましい。アミノ基の導入位置は生理活性物質の分子鎖末端あるいは側鎖であってもよいが、生理活性物質の本来の機能を保持したまま固定化するために、分子鎖末端に導入されていることが好ましい。生理活性物質の本来の機能とは、たとえば核酸の場合はハイブリダイゼーション、抗体やアプタマーの場合は抗原認識能などである。
マイクロアレイ用基板の素材は、ガラス、プラスチック、金属その他を用いることができるが、表面処理の容易性、量産性の観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、蛍光発生量の少ないものが好ましく、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン等の直鎖状ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、含フッ素樹脂等を用いることが好ましく、耐熱性、耐薬品性、低蛍光性、成形性に特に優れる飽和環状ポリオレフィンを用いることがより好ましい。ここで飽和環状ポリオレフィンとは、環状オレフィン構造を有する重合体単独または環状オレフィンとα−オレフィンとの共重合体を水素添加した飽和重合体をさす。
飽和環状ポリオレフィン製の基板を親水化処理したのち、1重量%の3−アミノプロピルトリメトキシシランの水溶液に浸漬し、熱処理を施すことにより表面にアミノ基を導入した。続いて基板を1重量%グルタルアルデヒドの水溶液に浸漬し、基板表面にアミノ基を介してアルデヒド基を導入することで層Aを形成した。さらに、基板を2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート共重合体の0.5重量%エタノール溶液に浸漬後、乾燥することで層Bを形成した。
評価1: 末端にアミノ基を導入したオリゴヌクレオチド(オリゴ1)(24mer)の水溶液(0.1μg/μl)とエタノールを1:1で混合した溶液を基板上に点着した。80℃で1時間熱処理を施したのち、純水で洗浄した。オリゴ1と相補的な配列で、末端にローダミン修飾を施したオリゴヌクレオチド(オリゴ2)を20ng/μlの濃度に調製した溶液を基板上に展開し、65℃で3時間静置することでハイブリダイゼーション反応を進行させたのち、洗浄した。ハイブリダイゼーションによりスポットに結合したオリゴ2の蛍光量を測定することで、ハイブリダイゼーション効率を評価した。
評価2: オリゴ2を20ng/μlの濃度で溶解した溶液を基板上に点着し、洗浄した。基板上に残存したオリゴ2の蛍光量を測定することで、オリゴヌクレオチドの非特異的な吸着量を評価した。
実施例と同様の方法で基板にアミノ基を導入し、引き続きアルデヒド基を導入することで層Aを形成した。層Bは形成させなかった。
評価1: 実施例と同様の方法でハイブリダイゼーション効率を評価した。
評価2: 実施例と同様の方法でオリゴヌクレオチドの非特異的な吸着量を評価した。
評価1の結果を表1に示す。実施例と比較例で同等の蛍光量となり、本発明のマイクロアレイを用いてハイブリダイゼーション反応が検出可能であることが示された。
評価2の結果を表2に示す。実施例において蛍光量を検出することができず、本発明のマイクロアレイが核酸の非特異的吸着の抑制効果を有することが示された。
Claims (12)
- 基板表面への生理活性物質固定化用の表面処理層(層A)の形成工程(工程A)、層Aの
上部への生理活性物質の吸着を抑制する物質からなる層(層B)の形成工程(工程B)、
および、生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液の基板上への点着工程(工程C)
を含み、工程Cで点着部において層Bを形成する物質の少なくとも一部を除去し、生理活性物質の少なくとも一部を層Aに達するまで浸透させることを特徴とするマイクロアレイの製造方法。
- 工程Cの生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液が、層Bを形成する物質に対して溶解性を示す請求項1記載のマイクロアレイの製造方法。
- 工程Cの生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液がアルコールを含む請求項2記載のマイクロアレイの製造方法。
- 生理活性物質溶液あるいは生理活性物質分散液が界面活性剤を含む請求項2記載のマイクロアレイの製造方法。
- 層Bがホスホリルコリン基を有する高分子物質から形成される請求項1〜4いずれか記載のマイクロアレイの製造方法。
- ホスホリルコリン基を有する高分子物質が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含む共重合体である請求項5記載のマイクロアレイの製造方法。
- 基板がプラスチック製である請求項1〜6いずれか記載のマイクロアレイの製造方法。
- プラスチックが飽和環状ポリオレフィン製である請求項7記載のマイクロアレイの製造方法。
- 基板がガラス製である請求項1〜6いずれか記載のマイクロアレイの製造方法。
- 生理活性物質が核酸、アプタマー、タンパク質、抗体、オリゴペプチド、ペプチド核酸、糖鎖、糖タンパク質の内、少なくとも一つである請求項1〜9いずれか記載のマイクロアレイの製造方法。
- 生理活性物質がオリゴヌクレオチドである請求項1〜9いずれか記載のマイクロアレイの製造方法。
- 生理活性物質がアプタマーである請求項1〜9いずれか記載のマイクロアレイの製造方法。
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