以下、本発明を実施するための実施形態を図1乃至図9を用いて説明する。図1は本発明のドリルの全体を示した側面図である。本発明のドリル1において、ドリルの先端から始まりドリルのシャンク側に至る部分には、溝2が設けられており、二番取り面3の切れ刃側とヒール側には第一マージン4と第二マージン5が設けられている。本発明のドリル1において、少なくとも切れ刃6を含む部分がWC基超硬合金、CBNまたはサーメットなどの硬質材料からなり、工具軸Oを中心としたシャンク径Dの略円筒状に形成されている。前記硬質皮膜材料のうち、Co含有量が3〜13質量%のWC基超硬合金が本発明のドリルの高性能化のために望ましい。ドリルの先端すなわち刃先部8には切れ刃6が設けられており、切れ刃6と第一マージン4の接続部である外周コーナ7には面取り部が設けられている。
図1には、シャンク部9の直径であるシャンク径Dと、刃先部8の直径である刃径dとが同じであるストレートシャンクドリルを示しているが、シャンク径Dよりも刃径dを小さく設けた場合においても、本発明の有利な効果を奏する。
図2は本発明のドリルを軸線方向先端視で見たときの正面図である。本発明のドリルは中心部から外周部にかけてシンニング切れ刃10、第一切れ刃11、第二切れ刃12が連接してなる切れ刃6を2つ以上有し、第一逃げ面13と第一マージン4が接続するすべての外周コーナ7に面取り部14が設けられている。本発明のドリルは、第一逃げ面13の回転方向後方側には第二逃げ面15が接続され、第二逃げ面15の回転方向後方側には、ある切れ刃6に対し回転方向後方側に位置する切れ刃6におけるシンニング切れ刃10を設けるためのシンニング16が接続されている。
また、図2にはクーラントホール17を設けた本発明のドリルを示している。クーラントホール17を設けることにより、切削加工において、切削温度の上昇を抑え、切れ刃の摩耗の進行を遅らせることが可能となるが、クーラントホール17を設けない場合にも、本発明の有利な効果を奏する。また、シンニング切れ刃10はシンニング16により形成されており、これにより、被削材とドリルが接触したときの振動を抑制しスラスト抵抗が軽減され、安定した切削加工が可能となるが、シンニング16を設けない場合にも、本発明の有利な効果を奏する。
また、図1及び図2には、第一マージン4、第二マージン5及び二番取り面3からなるランドを有するダブルマージンドリルを示しているが、本発明のドリルにおけるランドは、第二マージン5を有さなくともよい。また、第一マージン4、第二マージン5の間にこれらとは異なる別の第三マージンを設けたランドにおいても、本発明の効果を奏する。すなわち、本発明の面取り部14は、シングルマージンドリル及びトリプルマージンドリルにおいても有利な効果を奏する。
図3は本発明のドリルにおける外周コーナを拡大した図である。本発明のドリルの外周コーナ7付近すなわち第一逃げ面13と第一マージン4との接続部には微小な幅の面取り部14を設けている。言い換えると、第一逃げ面13と第一マージン4は、微小な幅を有する面取り部14により接続されている。本発明のドリルは、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されていることが大きな特徴である。
また、図3には第一切れ刃11、第二切れ刃12に対し、それぞれの切れ刃の剛性を向上させるために第一切れ刃のホーニング20、及び第二切れ刃のホーニング21を設けている。しかし、第一切れ刃のホーニング20、及び第二切れ刃のホーニング21を設けず、第一逃げ面13と溝2を接続させて第一切れ刃11、第二切れ刃12を形成させた場合においても、本発明の有利な効果を奏する。
図4は本発明のドリルにおける面取り部を斜め方向から見たときの図である。本発明のドリルの外周コーナ7には微小な幅の面取り部14を有しており、面取り部14の回転方向前方側の端部には、切れ刃6とリーディングエッジ22を接続させる面取り刃23が形成されている。さらに、第一逃げ面と面取り部の接続面18および面取り部と第一マージン部の接続部19には微小な曲率半径を有する曲面が設けられている。第一逃げ面と面取り部の接続面18および面取り部とマージン部の接続部19に微小な曲率半径を有する曲面が設けられていることにより、従来のドリルと比較して、切れ刃6とリーディングエッジ22の交点付近であるドリルの肩部すなわち第一逃げ面と第一マージンの接続部付近の摩耗の進行が抑制でき、工具寿命を大幅に改善することができる。
図5は図4に示す本発明のドリルにおける面取り部をA−A線に沿って切断したときの断面図である。A−A線は第一マージン4の中央部で切断するための断面線である。また、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19の中央を切断するための断面線ともいえる。図5に示すように、第一逃げ面と面取り部の接続面18および面取り部と第一マージンの接続部19には微小な曲率半径R1a、R2aを有する曲面が設けられている。
図4及び図5に示した本発明のドリルは、面取り部と第一逃げ面の接続部18の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aと、面取り部と第一マージンの接続部19の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aとが同じ値になるように形成され、面取り部と第一逃げ面の接続部18の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aと、面取り部と第一マージンの接続部19の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aとが、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19においてどの位置を切断しても同じ値となるように形成されたものである。すなわち、面取り部と第一逃げ面の接続部18の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aと、面取り部と第一マージンの接続部19の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aとを、それぞれの前記接続部18、19において一定の値になるように形成させたドリルである。
本発明が目的としている、金属加工において従来のドリルに対し大幅に工具寿命を向上させることを達成させるには、ドリルの肩部すなわち第一逃げ面と第一マージンとの接続部付近の剛性を高め、摩耗の進行を抑制することが極めて重要である。図2に示すように、切れ刃の第一逃げ面13と第一マージン4との接続部付近は、ドリルにおいて最外周に位置し、切削速度が最も高くなる場所であると同時に、常に加工穴の壁面と接触する場所でもある。ドリルにおいて最外周に位置する、切れ刃の第一逃げ面と第一マージンとの接続部付近が早期に摩耗した場合、切削抵抗が大幅に上昇し、ビビり振動が生じやすくなる。また、切屑の分断効果が小さくなるため切屑が長く伸び切屑排出性が悪くなる。その結果、切れ刃の欠損やドリルの折損が発生し、工具寿命が短くなることから、ドリルの早期交換が必要となり、ドリルを用いる部品加工の分野における原価低減が達成できなくなる。
従って、本発明のドリルのように、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19に微小な曲率半径を有する曲面が設けられていることにより、従来から問題となっていたドリルの肩部すなわち第一逃げ面と第一マージンとの接続部付近の摩耗の進行が抑制されるため、加工穴数の上昇による切削抵抗の増加も小さくなり、穴明け加工における工具寿命を向上させることが可能となる。
本発明においては、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1a及び、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aが、それぞれ刃径の0.01%以上1.0%以下の範囲に設けられることが望ましい。これにより、より安定した面性状の面取り部と第一逃げ面との接続部18、及び面取り部と第一マージンの接続部19を形成することが可能となる。
図6は本発明の別の実施例のドリルにおける面取り部を斜め方向から見たときの図である。図7は図6に示す本発明の別の実施例のドリルにおける面取り部を拡大した図である。図6及び図7に示すように、本発明の別の実施例のドリルにおいては、面取り部と第一逃げ面の接続部18における面取り刃側の端部から、面取り部と第一逃げ面の接続部18の中央までにかけて、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aが徐々に小さくなるように設け、さらに、面取り部とマージンの接続部19における面取り刃側の端部から、面取り部とマージンの接続部19の中央までにかけて、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aが徐々に小さくなるように設けている。
また、図6及び図7に示す本発明の別の実施例のドリルにおいては、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aよりも、面取り部と第一逃げ面の接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における切れ刃側の曲率半径R1bが大きく、なおかつ、面取り部とマージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aよりも、面取り部とマージンの接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における切れ刃側の曲率半径R2bが大きく設けられている。
ここで、本発明のドリルにおける「面取り部と第一逃げ面の接続部の中央」とは、面取り部と第一逃げ面の接続部18を回転方向で見たときにおいて中央となる位置を基準として、回転方向前方側に面取り部と第一逃げ面の接続部18を円周方向で測定したときの幅の10%分だけ移動した位置から、回転方向後方側に面取り部と第一逃げ面の接続部18を円周方向で測定したときの幅の10%分だけ移動した位置の間を示す。本発明のドリルにおける「面取り部と第一マージンの接続部の中央」に関しても同様の考え方で定義される。また、本発明のドリルにおける「面取り部と第一逃げ面の接続部の面取り刃側」とは、面取り部と第一逃げ面の接続部18を回転方向で見たときにおいて回転方向前方側となる端部から、回転方向後方側に面取り部と第一逃げ面の接続部18を円周方向で測定したときの幅の20%分だけ移動した位置の間を示す。本発明のドリルにおける「面取り部と第一マージンの接続部の面取り刃側」に関しても同様の考え方で定義される。
前記したように、本発明においては、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aよりも、面取り部と第一逃げ面の接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における切れ刃側の曲率半径R1bが大きく、なおかつ、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aよりも、面取り部と第一マージンの接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における切れ刃側の曲率半径R2bが大きく設けられていることが望ましい。これにより、それぞれの切れ刃の位置の差であるリップハイトが増大することから生じるドリルの寸法精度の低下を防ぎながら、面取り部と第一逃げ面の接続部、及び面取り部とマージンの接続部における剛性を確保できる。
また、図6及び図7に示すように、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面との接続部における曲率半径R1aよりも、面取り部と第一逃げ面の接続部の二番取り面側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における切れ刃側の曲率半径が大きく、なおかつ、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aよりも、面取り部と第一マージンの接続部の二番取り面側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における切れ刃側の曲率半径が大きく設けられていても良い。ここで、本発明のドリルにおける「面取り部と第一逃げ面の接続部の二番取り面側」とは、面取り部と第一逃げ面の接続部18を回転方向で見たときにおいて回転方向後方側となる端部から、回転方向前方側に面取り部と第一逃げ面の接続部18を円周方向で測定したときの幅の20%分だけ移動した位置の間を示す。本発明のドリルにおける「面取り部と第一マージンの接続部の二番取り面側」に関しても同様の考え方で定義される。
図8は図7に示す本発明のドリルにおける面取り部をB−B線に沿って切断したときの断面図である。B−B線は第1マージン4の中央部で切断するための断面線である。また、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19の中央を切断するための断面線ともいえる。図4及び図5に示した本発明のドリルと同様に、本発明の別の実施例のドリルにおいても、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19には微小な曲率半径R1a、R2aを有する曲面が設けられている。
図8に示すように、本発明の別の実施例のドリルは、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面と接続部における曲率半径R1aよりも、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aが大きくなるように形成されたものである。これにより、外周側に位置する面取り部とマージンの接続部19の剛性が一層向上する。
さらに、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aの1.0倍を超え1.5倍以下となる範囲に設けることが望ましい。これにより、ドリルの肩部の摩耗の進行を抑制する効果が向上する。
図9は図7に示す本発明のドリルにおける面取り部をC−C線に沿って切断したときの断面図である。C−C線は第1マージン4の面取り刃側で切断するための断面線である。また、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19の面取り刃側を切断するための断面線ともいえる。図4及び図5に示した本発明のドリルと同様に、本発明の別の実施例のドリルにおいても、第一逃げ面と面取り部の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19には微小な曲率半径R1b、R2bを有する曲面が設けられている。
図9に示すように、本発明の別の実施例のドリルは、面取り部と第一逃げ面の接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bよりも、面取り部と第一マージンの接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bが大きくなるように形成されたものである。これにより、外周側に位置する面取り部と第一マージンの接続部19の剛性がより一層向上する。
さらに、面取り部と第一マージンの接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bは、面取り部と第一逃げ面の接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bの1.0倍を超え1.5倍以下となる範囲に設けることが望ましい。これにより、ドリルの肩部の摩耗の進行を抑制する効果が向上する。
本発明のドリルにおいては、面取り部14を工具軸Oに垂直な方向で測定したときの幅が、刃径dの0.3%以上2.5%以下の範囲であることが望ましい。これにより、切削性を低下させずに外周コーナ7の欠けを防止することが可能となる。また、面取り部を設ける角度としては特に限定はしないが、工具軸Oに対し30°以上60°以下の範囲となるように面取り部を設けることが特に望ましい。
本発明のドリルにおいて大きな特徴である、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部に設けたそれぞれの曲率半径R1a、R1b、R2a、R2bの測定方法としては、接触式の測定器、または非接触式(例えばレーザー顕微鏡等)を用いて、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部の形状をトレースし、曲率半径を測定する方法がある。
図10は切れ刃と第一マージンの接続部に面取り部を設けた従来のドリルの外周コーナを拡大した図である。従来のドリルにおいては、面取り加工のみ施した状態であるため、第一逃げ面13と第一マージン4は、微小な幅の面取り部14で接続されている。
図11は従来のドリルにおける面取り部を斜め方向から見たときの図である。図12は図11に示す従来のドリルにおける面取り部を拡大した図である。図11及び図12に示すように、従来のドリル24においては、面取り加工のみ施した状態であるため、面取り部と第一逃げ面の接続部18および面取り部14と第一マージンの接続部19は角張ったまま接続されている。
図13は図11に示す従来のドリルにおける面取り部をD−D線に沿って切断したときの断面図である。D−D線は第一マージン4の中央部で切断するための断面線である。従来のドリルは本発明のドリルと異なり、面取り部と第一逃げ面の接続部18および面取り部とマージン部の接続部19において微小な曲率半径R1a、R2aを有する曲面が設けられておらず、角が形成されている。
図14は図11に示す従来のドリルにおける面取り部をE−E線に沿って切断したときの断面図である。E−E線は第一マージン4の面取り刃側で切断するための断面線である。このときも前記した内容と同様に、面取り部と第一逃げ面の接続部18および面取り部とマージン部の接続部19において微小な曲率半径R1a、R2aを有する曲面が設けられておらず、角が形成されている。さらに、従来のドリルにおいては、面取り部をD−D線に沿って切断したときの断面図と、面取り部をE−E線に沿って切断したときの断面図は同じ形状であり、面取り刃側とマージンの中央での形状的な差異はほとんど無いように設定されている。
本発明のドリルは、ドリルの刃先部に対し刃先処理を施すことにより、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部を、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成させたことが大きな特徴である。以下、本発明のドリルの刃先部を製造する方法について説明する。図15は本発明のドリルの刃先部に関する製造工程を示す図である。本発明のドリルの刃先部に関する製造工程は大きく分けて、溝形成工程、逃げ面形成工程、先端刃付け工程、面取り部形成工程、刃先処理工程、及び被覆工程に分けることが出来る。本発明はドリルの先端刃付け工程の後に面取り部形成工程があり、その後刃先処理工程がある。面取り部の形成の後に刃先処理を行うことで本発明の面取り部と第一逃げ面の接続部および面取り部とマージンの接続部に対し容易に曲面を設けることができ、また刃先の処理方法の手段も様々な手法が選定できる。
図15に示す溝形成工程は、円筒状に研磨した本発明のドリルの素材に対し、砥石を用いた研削加工により刃溝を形成する工程である。必要に応じ、砥石を用いて刃先部をバックテーパ状に設け、刃先部8とシャンク部9とを明確に区別させる。
図15に示す逃げ面形成工程は、刃溝を形成した本発明のドリルの素材に対し、砥石を用いた研削加工により、二番取り面3、第一逃げ面13、第二逃げ面15及びシンニング16を形成する工程である。
図15に示す先端刃付け工程は、砥石を用いた研削加工により、第一切れ刃11及び第二切れ刃12を形成する工程である。また、第一切れ刃11及び第二切れ刃12に対し、砥石を用いてホーニング20、21を形成する場合もある。
図15に示す面取り部形成工程は、砥石を用いた研削加工により、第一切れ刃11及び面取り部14及び面取り刃23を形成する工程である。先端刃付け工程の後に面取り部14及び面取り刃23を形成することにより、面取り部形成工程を追加するだけでその他の加工を変えることなく容易に面取り部14及び面取り刃23の形成ができる。なお、面取り部14は、面取り部14を工具軸に垂直な方向で測定したときの幅が、刃径の0.3%以上2.5%以下の範囲となるように形成することが望ましい。
図15に示す刃先処理工程は、刃先部8に対し刃先処理を行い、切れ刃6、面取り刃23、面取り部と第一逃げ面との接続部18、及び面取り部とマージンの接続部19に刃先処理を施すことにより、切れ刃6、面取り刃23、面取り部と第一逃げ面の接続部18、及び面取り部とマージンの接続部19に微小な曲率半径を有した曲面を設けるための工程である。面取り部形成工程の後に刃先処理を行うことで本発明のドリルにおける面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部とマージンの接続部19に対し、容易に曲面を設けることができ、また刃先部の処理方法の手段も様々な手法が選定できる。
本発明のドリルにおける刃先部8の製造に用いるための、刃先部の処理方法の手段としては、種々の公知の方法を用いることが可能である。具体的には磁気研磨、ショットブラスト、バレル研磨が挙げられるが、特にバレル研磨の方法を用いることが望ましい。また、バレル研磨の方法を用いるための研磨材としては、粒径が0.1mm以上3mm未満のクルミやココナッツ、コーンなどの樹脂系弾性材に粒径0.5μm以上5μm以下のダイヤモンドパウダーを油脂により付着させたもの、または5μm以上50μm以下炭化ケイ素を樹脂系弾性材で結合させたもので刃先処理を行うことにより、微小な曲率半径を有した曲面を設けることが可能となり、さらに刃先処理の条件によっては場所によって稜線の曲率半径が異なる形状にすることが出来る。
本発明のドリルにおける刃先部8の製造に用いるための、刃先部の処理方法を行う処理時間としては、20秒以上10分以下の範囲が望ましい。これにより、より安定した面性状の面取り部と第一逃げ面の接続部18、及び面取り部とマージンの接続部19を形成することが可能となる。処理時間が20秒未満であれば、面取り部と第一逃げ面の接続部18、及び面取り部とマージンの接続部19の曲率半径が極めて微小となるため、ドリルの肩部の剛性の向上がわずかとなり、ドリルの肩部の摩耗の進行を抑制する働きが低下する傾向にある。また、10分を超えた場合は、刃先処理工程に用いるための研磨材が早期に劣化し、生産性に劣る傾向がある。また、特に望ましい処理時間は、2分以上8分以下の範囲である。
図15に示す被覆工程は、切れ刃6、面取り刃23、第一逃げ面13、第二逃げ面15、マージン(ランド)及び溝2にコーティングを施す工程である。このときに用いるコーティング用硬質皮膜の種類としては、TiSiN皮膜、CrSiN皮膜、AlCrSiN皮膜、AlCrN皮膜、AlTiN皮膜、DLC皮膜またはダイヤモンド皮膜を用いることが望ましい。これらのうち、TiSiN皮膜、CrSiN皮膜、AlCrSiN皮膜、AlCrN皮膜及びAlTiN皮膜のうちの単層皮膜または2種以上の積層皮膜がより望ましい。硬質皮膜の平均膜厚は1μm以上4μm以下が望ましい。
図16は従来のドリルの刃先部に関する製造工程を示す図である。従来のドリルの刃先部に関する製造工程は、刃先処理工程を有しないため、面取り部14及び面取り刃23のみが施された図10〜図14に示すような従来のドリルの刃先部が完成する。しかし、本発明のドリルのように、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部とマージンの接続部19が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されていないため、ドリルの肩部における剛性が低く、面取り部14及び面取り刃23のチッピングや欠損が発生しやすい。また、刃先処理工程を有しているが、面取り部形成工程を有していない製造工程や、刃先処理工程と面取り部形成工程の両方を有していない製造工程にてドリルの刃先部を製造した場合にも同様に、面取り部14及び面取り刃23のチッピングや欠損が発生しやすくなる。
以下、本発明を下記の実施例により詳細に説明するが、それらにより本発明が限定されるものではない。
以下の表中にある各実施例では、本発明例、従来例、比較例を区分として示し、試料番号は全て連続の通し番号で記載した。
(実施例1)
本発明のドリルの特徴である、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されている本発明例と、従来のドリルとで切削寿命の比較テストを行った。
実施例1には、本発明のドリルである本発明例1と、従来のドリルである従来例2〜3を用いた。実施例1で使用した全てのドリルは母材がWC基超硬合金(日立ツール株式会社製、材種名:EF20N)であり、硬質皮膜は3層構造とし、母材側の硬質皮膜の組成は原子比で(55Al−45Ti)Nで表され、表面側の硬質皮膜の組成は原子比で(75Ti−25Si)Nで表され、母材側の硬質皮膜と表面側の硬質皮膜の間には中間層があり、中間層の組成は原子比で(57.5Al−18.5Cr−1.5Si−22.5Ti)Nとした。硬質皮膜の平均膜厚は4μmであり、刃数が2枚刃、刃径dが6mm、溝長が50mm、シャンク径Dが6mm、オイルホールが設けられたタイプとし、肩部の形状以外の緒元は本発明例1及び従来例2〜3にて仕様を統一した。それぞれの工具の仕様を以下に示す。
本発明例1は、溝形成工程、逃げ面形成工程、先端刃付け工程、面取り部形成工程、刃先処理形成工程、及び被覆工程を経て刃先部を製造したドリルである。従って、図4に示すように、第一逃げ面とマージンとの間に面取り部14が設けられ、面取り部と第一逃げ面の接続部18及び面取り部と第一マージンの接続部19にはそれぞれ曲率半径が設けられている。
本発明例1において、面取り部14の幅は刃径dの0.67%である0.04mm、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.4%である0.024mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.4%である0.024mmとし、図4及び図5に示すように、面取り部と第一逃げ面の接続部18の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aと、面取り部と第一マージンの接続部19の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aとを、それぞれの接続部18、19において一定の値になるように形成させた。
従来例2は、溝形成工程、逃げ面形成工程、先端刃付け工程、刃先処理形成工程、及び被覆工程を経て刃先部を製造したドリルである。従って、本発明例1とは異なり、第一逃げ面とマージンとの間に面取り部14が設けられていない。参考値として測定した結果としては、第一逃げ面とマージンの接続部における曲率半径は、刃径dの0.25%である0.015mmであった。
従来例3は、溝形成工程、逃げ面形成工程、先端刃付け工程、及び被覆工程を経て刃先部を製造したドリルである。従って、第一逃げ面とマージンとの間に面取り部14が設けられておらず、なおかつ、第一逃げ面とマージンとは角張ったまま接続されている。
実施例に用いた被削材はS50Cの焼鈍し材である。試験方法として、切削速度は80m/min、1刃送りは0.18mm/rev、加工穴深さは30mmの切削条件で、クーラントは水溶性切削液をドリルのオイルホールから出す内部給油にて切削を行った。なお、加工穴数は1000穴とした。
評価方法として、本発明例1は面取り部とマージンの接続部19の逃げ面摩耗幅を測定し、従来例2及び従来例3は第一逃げ面とマージンの接続部において逃げ面摩耗幅を測定した。評価基準としては、1000穴切削した時点で折損しておらず、ドリルの肩部を光学式顕微鏡で観察したときに欠けやチッピングが確認されず、それぞれの逃げ面摩耗幅が0.18mm以下であるものを良好とした。試験結果を表1に示す。
表1に示す通り、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されている本発明例1は、1000穴切削した時点において折損、欠け及びチッピングが確認されず、逃げ面摩耗幅が0.18mm以下であったため良好な結果を示した。これに対し、従来例2は、面取り部が形成されていない状態で刃先処理が施されているドリルであるため、第一逃げ面とマージンの接続部の剛性が向上せず、逃げ面摩耗幅が0.25mmであり、不良であった。従来例3は、第一逃げ面とマージンの接続部において欠けが発生したため、逃げ面摩耗幅が0.42mmであり、不良であった。
(実施例2)
図4及び図5に示すような、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aと、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aとを、それぞれの接続部において一定の値になるように形成させた本発明のドリルにおいて、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1a及び、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを変化させた本発明例4〜本発明例13を用いて、切削寿命の比較テストを行った。
実施例2で使用した全てのドリルは母材が実施例1と同一組成のWC基超硬合金であり、硬質皮膜は実施例1と同一組成の皮膜であり、刃数が2枚刃、刃径dが6mm、溝長が50mm、シャンク径Dが6mm、面取り部14の幅は刃径dの1.0%である0.06mm、オイルホールが設けられたタイプとし、本発明例4〜本発明例13にて仕様を統一した。上記仕様以外のそれぞれの工具における仕様を以下に示す。
本発明例4は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.005%である0.0003mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.005%である0.0003mmとしたドリルである。
本発明例5は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.01%である0.0006mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.01%である0.0006mmとしたドリルである。
本発明例6は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.02%である0.0012mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.02%である0.0012mmとしたドリルである。
本発明例7は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.05%である0.003mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.05%である0.003mmとしたドリルである。
本発明例8は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.10%である0.0060mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.10%である0.0060mmとしたドリルである。
本発明例9は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.20%である0.0120mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.20%である0.0120mmとしたドリルである。
本発明例10は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.50%である0.0300mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.50%である0.0300mmとしたドリルである。
本発明例11は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの0.75%である0.0450mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの0.75%である0.0450mmとしたドリルである。
本発明例12は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの1.00%である0.0600mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの1.00%である0.0600mmとしたドリルである。
本発明例13は、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aは刃径dの1.10%である0.0660mm、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aは刃径dの1.10%である0.0660mmとしたドリルである。
試験方法、切削条件、評価方法及び評価基準は実施例1と同様とした。試験結果を表2に示す。
表2に示す通り、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されている本発明例4〜本発明例13は、1000穴切削した時点で折損しておらず、ドリルの肩部を光学式顕微鏡で観察したときに折損、欠け及びチッピングが確認されず、逃げ面摩耗幅が0.18mm以下であったため良好な結果を示した。特に、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aと、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aが刃径の0.01%以上1.0%以下の範囲である本発明例6〜本発明例13は、1000穴切削した時点において欠けやチッピングが確認されず、且つ、逃げ面摩耗幅が0.16mm以下であったため特に良好な結果を示した。
(実施例3)
面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aに対する、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aの大きさ、及び、面取り部と第一逃げ面の接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bに対する、面取り部と第一マージンの接続部の面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bの大きさを異ならせたドリルである本発明例14〜本発明例18を用いて、切削寿命の比較テストを行った。
実施例3で使用した全てのドリルは母材が実施例1と同一組成のWC基超硬合金であり、硬質皮膜は実施例1と同一組成であり、刃数が2枚刃、刃径dが6mm、溝長が50mm、シャンク径Dが6mm、面取り部14の幅は刃径dの1.0%である0.06mm、オイルホールが設けられたタイプとし、本発明例14〜本発明例18にて仕様を統一した。上記仕様以外のそれぞれの工具における仕様を以下に示す。
本発明例14については、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bを刃径dの0.4%である0.024mmとし、前記R1aに対する前記R1bの大きさを1.0倍とした。さらに、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.4%である0.024mmとし、前記R2aに対する前記R2bの大きさを1.0倍とした。
本発明例15については、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bを刃径dの0.44%である0.0264mmとし、前記R1aに対する前記R1bの大きさを1.1倍とした。さらに、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.44%である0.0264mmとし、前記R2aに対する前記R2bの大きさを1.1倍とした。
本発明例16については、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bを刃径dの0.52%である0.0312mmとし、前記R1aに対する前記R1bの大きさを1.3倍とした。さらに、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.52%である0.0312mmとし、前記R2aに対する前記R2bの大きさを1.3倍とした。
本発明例17については、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bを刃径dの0.6%である0.036mmとし、前記R1aに対する前記R1bの大きさを1.5倍とした。さらに、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.6%である0.036mmとし、前記R2aに対する前記R2bの大きさを1.5倍とした。
本発明例18については、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bを刃径dの0.64%である0.0384mmとし、前記R1aに対する前記R1bの大きさを1.6倍とした。さらに、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.64%である0.0384mmとし、前記R2aに対する前記R2bの大きさを1.6倍とした。
試験方法、切削条件、評価方法及び評価基準は実施例1と同様とした。試験結果を表3に示す。
表3に示す通り、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されている本発明例14〜本発明例18は、1000穴切削した時点で折損しておらず、ドリルの肩部を光学式顕微鏡で観察したときに折損、欠け及びチッピングが確認されず、逃げ面摩耗幅が0.18mm以下であったため良好な結果を示した。
特に、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aよりも、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bが大きく、なおかつ、面取り部とマージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aよりも、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bが大きく設けられている本発明例15〜本発明例18は逃げ面摩耗幅が0.14mm以下であったため良好な結果を示した。
さらに、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bを、面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aの1.0倍を超え1.5倍以下となる範囲に設け、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを、面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aの1.0倍を超え1.5倍以下となる範囲に設けた本発明例15〜本発明例17は逃げ面摩耗幅が0.13mm以下であったため一層良好な結果を示した。
(実施例4)
面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aに対する、面取り部とマージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aの値の大きさを異ならせたドリルである本発明例19〜本発明例23を用いて、切削寿命の比較テストを行った。
実施例4で使用した全てのドリルは母材が実施例1と同一組成のWC基超硬合金であり、硬質皮膜は実施例1と同一組成であり、刃数が2枚刃、刃径dが6mm、溝長が50mm、シャンク径Dが6mm、面取り部14の幅は刃径dの1.0%である0.06mm、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bを刃径dの0.4%である0.024mm、オイルホールが設けられたタイプとし、本発明例19〜本発明例23にて仕様を統一した。上記仕様以外のそれぞれの工具における仕様を以下に示す。
本発明例19は、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.4%である0.024mmとし、前記R1aに対する前記R2aの大きさを1.0倍としたドリルである。
本発明例20は、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.44%である0.0264mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.44%である0.0264mmとし、前記R1aに対する前記R2aの大きさを1.1倍としたドリルである。
本発明例21は、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.52%である0.0312mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.52%である0.0312mmとし、前記R1aに対する前記R2aの大きさを1.3倍としたドリルである。
本発明例22は、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.6%である0.036mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.6%である0.036mmとし、前記R1aに対する前記R2aの大きさを1.5倍としたドリルである。
本発明例23は、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.64%である0.0384mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.64%である0.0384mmとし、前記R1aに対する前記R2aの大きさを1.6倍としたドリルである。
試験方法、切削条件、評価方法及び評価基準は実施例1と同様とした。試験結果を表4に示す。
表4に示す通り、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されている本発明例19〜本発明例23は、1000穴切削した時点で折損しておらず、ドリルの肩部を光学式顕微鏡で観察したときに折損、欠け及びチッピングが確認されず、逃げ面摩耗幅が0.18mm以下であったため良好な結果を示した。
特に、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aの大きさを、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aの1.0倍を超え1.5倍以下の範囲とした本発明例20〜本発明例22は、1000穴切削した時点において欠けやチッピングが確認されず、且つ、逃げ面摩耗幅が0.13mm以下であったため特に良好な結果を示した。
(実施例5)
面取り部を工具軸に垂直な方向で測定したときの幅を異ならせたドリルである本発明例24〜本発明例31を用いて、切削寿命の比較テストを行った。
実施例5で使用した全てのドリルは母材が実施例1と同一組成のWC基超硬合金であり、硬質皮膜は実施例1と同一組成であり、刃数が2枚刃、刃径dが6mm、溝長が50mm、シャンク径Dが6mm、面取り部と第一逃げ面の接続部の中央において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部と第一逃げ面の接続部における曲率半径R1bを刃径dの0.52%である0.0312mm、面取り部と第一マージンの接続部の中央において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2aを刃径dの0.4%である0.024mm、面取り刃側において測定したときの面取り部とマージンの接続部における曲率半径R2bを刃径dの0.52%である0.0312mm、オイルホールが設けられたタイプとし、本発明例24〜本発明例31にて仕様を統一した。上記仕様以外のそれぞれの工具における仕様を以下に示す。
本発明例24は、面取り部14の幅を刃径dの0.2%である0.012mmとしたドリルである。
本発明例25は、面取り部14の幅を刃径dの0.3%である0.018mmとしたドリルである。
本発明例26は、面取り部14の幅を刃径dの0.5%である0.030mmとしたドリルである。
本発明例27は、面取り部14の幅を刃径dの1.0%である0.060mmとしたドリルである。
本発明例28は、面取り部14の幅を刃径dの1.5%である0.090mmとしたドリルである。
本発明例29は、面取り部14の幅を刃径dの2.0%である0.120mmとしたドリルである。
本発明例30は、面取り部14の幅を刃径dの2.5%である0.150mmとしたドリルである。
本発明例31は、面取り部14の幅を刃径dの3.0%である0.180mmとしたドリルである。
試験方法、切削条件、評価方法及び評価基準は実施例1と同様とした。試験結果を表5に示す。
表5に示す通り、微小な幅を有する面取り部を設けられ、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されている本発明例24〜本発明例31は、1000穴切削した時点で折損しておらず、ドリルの肩部を光学式顕微鏡で観察したときに折損、欠け及びチッピングが確認されず、逃げ面摩耗幅が0.18mm以下であったため良好な結果を示した。
特に、面取り部を工具軸に垂直な方向で測定したときの幅を、刃径の0.3%以上2.5%以下の範囲とした本発明例25〜本発明例30は、逃げ面摩耗幅が0.13mm以下であったため、より一層良好な結果を示した。
(実施例6)
切削条件を変更し、さらに長時間の切削加工を行ったときにおける、本発明例と従来のドリルによる切削寿命の比較テストを行った。
実施例6には、実施例4に用いたドリルと同仕様の本発明のドリルである本発明例19と、実施例1に用いたドリルと同仕様の従来のドリルである従来例2〜3を用いた。
実施例に用いた被削材はS50Cである。試験方法として、切削速度は120m/min、1刃送りは0.18mm/rev、加工穴深さは30mmの切削条件で、クーラントは水溶性切削液をドリルのオイルホールから出す内部給油にて切削を行った。なお、加工穴数は2000穴とした。
評価方法として、本発明例19は面取り部とマージンの接続部19の逃げ面摩耗幅を測定し、従来例2及び従来例3は第一逃げ面とマージンの接続部において逃げ面摩耗幅を測定した。評価基準としては、2000穴切削した時点で折損しておらず、ドリルの肩部を光学式顕微鏡で観察したときに欠損やチッピングが確認されず、それぞれの逃げ面摩耗幅が0.30mm以下であるものを良好とした。試験結果を表6に示す。
表6に示す通り、面取り部と第一逃げ面の接続部及び面取り部とマージンの接続部が、微小な曲率半径が設けられた曲面により形成されている本発明例19は、2000穴切削した時点において折損、欠損及びチッピングが確認されず、逃げ面摩耗幅が0.30mm以下であったため良好な結果を示した。
これに対し、従来例2は、面取り部が形成されていない状態で刃先処理が施されているドリルであるため、第一逃げ面とマージンの接続部の剛性が向上せず、2000穴切削した時点において欠損が発生した。従来例3も従来例2と同様に、第一逃げ面とマージンの接続部において欠けが発生したため、2000穴切削した時点において欠損が発生した。
なお、実施例1に記載の切削速度が80m/minの場合における第一逃げ面の摩耗幅よりも、本実施例の従来例2及び従来例3の第一逃げ面の摩耗幅が小さくなっている理由としては、従来例2及び従来例3は本発明例1と比べドリルの肩部の剛性が低いため、切削速度が高くなったことから生じる加工時間及び被削材との擦過時間の短縮による逃げ面摩耗幅への影響が大きかったためだと考えられる。
図17は実施例6の結果を示す工具撮影写真である。本発明例19は1000穴加工後及び2000穴加工後において、正常な摩耗形態を示していることが確認できた。従来例2及び従来例3は、1000穴加工後においては正常な摩耗形態を示しているが、2000穴加工後においてはドリルの肩部に欠損が発生していることが確認できた。