JP2014018185A - 領域選択的な細胞剥離方法並びにそれを利用した細胞の培養方法および継代方法 - Google Patents

領域選択的な細胞剥離方法並びにそれを利用した細胞の培養方法および継代方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、培養容器の接着面から領域選択的に、かつ、非接触的な手段で細胞を剥離させる方法と、その方法を利用した細胞の培養方法および継代方法を提供することを目的とする。
【解決手段】高周波振動により、接着面から領域選択的に細胞を剥離させる方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、培養容器、特に閉鎖系培養容器の接着面から細胞を領域選択的に剥離させる方法に関する。本発明はまた、この細胞剥離方法を利用した細胞の培養方法および細胞の継代方法に関する。
細胞培養には、開放系培養と閉鎖系培養の2種類が存在する。開放系培養は、培地交換や継代はディッシュの蓋を開けて行う、通常のディッシュを用いた培養である。開放系培養は、安価で操作が簡便なため研究用の細胞培養にはよく用いられているが、細菌や細胞等のコンタミネーションの可能性が高く、また、ウイルスベクターなどを用いる場合には培養作業者の感染リスクが高いなど、安全性の面において多くの問題を抱えており、治療用の細胞培養に用いる器材としては万全とは言い難い。
このような問題に対応するため、閉鎖系培養が試みられている。閉鎖系培養では、最小限の開口部を備えた閉鎖系培養容器が用いられ、コンタミネーションの発生率や感染リスクを大きく低減する工夫がなされている。また、培養可能な細胞数を減らさずに培地量を低減するための工夫が施された閉鎖系培養容器などが市販されており、高価な試薬や希少サンプルを用いるときに有用である。
ところで、胚性幹細胞(ES細胞)や誘導性多能性幹細胞(iPS細胞)などの多能性幹細胞の培養では、培養途中で分化を開始した細胞は、周囲の細胞に悪影響を及ぼすと考えられており、速やかに培養容器内から取り除くべきであるとされている。また、分化を開始した細胞は、未分化細胞の収率や純度を上げるためにも速やかに取り除くべきである。分化を開始した細胞の除去は、開放系培養では、例えば、ディッシュの蓋を開けてアスピレータやマイクロピペットをディッシュに挿入し、分化を開始した細胞を吸引除去することにより行われている(非特許文献1)。しかし、培養系が外界と接するため開放系培養ではコンタミネーションの発生が懸念される。また、閉鎖系培養ではコンタミネーションの発生可能性は低いが、培養容器内にアスピレータを挿入することはできず、培養途中に分化を開始した細胞を選択的に除去することは困難である。
"Bulk passaging of hESC"、Human Embryonic Stem Cell Protocols 2004、オーストラリア、BresaGen社発行、p. 12-13
本発明は、開放系または閉鎖系の培養容器の接着面から領域選択的に、かつ、非接触的な手段で細胞を剥離させる方法と、その方法を利用した細胞の培養方法および継代方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、培養容器の外部から高周波振動を与えることにより、培養容器内部の接着面から領域選択的に細胞を剥離させることができることを見出した。本発明者らはまた、高周波振動により分化を開始した細胞を領域選択的に除去することにより、閉鎖系培養においても多能性幹細胞を良好に培養することができることを見出した。本発明者らはさらに、高周波振動により、細胞が細胞間接着を維持した状態でシート状に剥離することを見出した。本発明者らはさらにまた、シート状に剥離した未分化の多能性幹細胞は、継代後も、未分化状態で良好に培養できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされた発明である。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)高周波振動により接着面から領域選択的に細胞を剥離させる方法。
(2)接着面が、閉鎖系培養容器の接着面である、上記(1)に記載の方法。
(3)剥離させる細胞が、培養および/または継代に不要な細胞である、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)剥離させる細胞が、継代に必要な細胞である、上記(1)または(2)に記載の方法。
(5)培養および/または継代に不要な細胞を除去する工程を含んでなる、細胞の培養方法であって、細胞を除去する工程を上記(3)に記載の方法により行う、培養方法。
(6)継代に必要な細胞を回収する工程を含んでなる、細胞の継代方法であって、細胞を回収する工程を上記(4)に記載の方法により行う、継代方法。
(7)培養および/または継代に不要な細胞を除去する工程と、継代に必要な細胞を回収する工程とを含んでなる、細胞の継代培養方法であって、細胞を除去する工程を上記(3)に記載の方法により行い、かつ、細胞を回収する工程を上記(4)に記載の方法により行う、細胞の継代培養方法。
(8)培養および/または継代に不要な細胞が、分化を開始した細胞または適切に分化しなかった細胞である、上記(3)、(5)または(7)に記載の方法。
(9)継代に必要な細胞が、未分化な細胞または適切に分化した細胞である、上記(4)、(6)または(7)に記載の方法。
(10)細胞が、多能性幹細胞である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)細胞が、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞である、上記(10)に記載の方法。
(12)剥離させる前に、細胞と接着面との間の接着を弱めるための酵素処理を行う、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)接着面から細胞を剥離させる工程を含んでなる、細胞シートの調製方法であって、細胞を剥離させる工程を上記(1)または(2)に記載の方法により行う、細胞シートの調製方法。
本発明によれば、培養容器の外部から接着面に向けて高周波振動を与えることにより、接着面から簡便かつ領域選択的に細胞を剥離させることができる。本発明によれば、開放系および閉鎖系培養の双方においてコンタミネーションのリスクを低減することができ、特に閉鎖系培養において、細胞を選択的かつ簡便に剥離させることができる点で有利である。また、本発明によれば手作業ではなく、機械的な操作により領域選択的に細胞を剥離させることが可能な点でも有利である。
本発明によればまた、本発明の方法により分化を開始した細胞を適宜除去することにより、閉鎖系培養でも、簡便に未分化な多能性幹細胞の培養を行うことができる点で有利である。本発明によればさらに、細胞間接着を維持させたまま接着面からシート状に未分化の多能性細胞を剥離させることができる。剥離したシート状の未分化の多能性幹細胞は、未分化状態で良好に培養できる点で有利である。
本発明によればさらにまた、特別な表面加工が施された高価な培養機材等を使用することなく、細胞を接着面からシート状に剥離させることができる点で有利である。剥離した細胞シートは、移植などの医療用途に有利に用いられ得る。多能性幹細胞シートの場合は、その後、適当な大きさの細胞塊に分離して、継代、分化誘導および/または遺伝子改変動物の作製に好適に用いることができる点で有利である。
図1Aは、細胞の剥離を酵素処理により行った場合の剥離後の接着面を示す図である。図1Bは、細胞の剥離を超音波洗浄機を用いて行った場合の剥離後の接着面を示す図である。図1Cは、超音波破砕機を用いて、分化を開始したiPS細胞コロニーを選択的に剥離した際の接着面を示す図である。図1Dは、超音波破砕機を用いて、未分化のiPS細胞コロニーを選択的に剥離した際の接着面を示す図である。 図2Aは、超音波破砕機を用いると細胞がシート状に剥離することを示す図である。図2Bは、超音波破砕機を用いてシート状に剥離した細胞を用いて継代培養を行った後のiPS細胞の位相差顕微鏡像を示す図である。図2C〜Gはそれぞれ、フィーダーレス条件で継代培養を10回行った後のiPS細胞におけるアルカリ性フォスファターゼ染色による染色像(図2C)、Oct3/4(図2D)、Nanog(図2E)、SSEA3(図2F)、および、TRA−1−60(図2G)の発現を示す免疫染色像である。
発明の具体的な説明
本発明で用いられる「細胞」は、接着培養に適用できる細胞であれば特に制限はなく、霊長類細胞や齧歯類細胞などの哺乳類細胞とすることができ、好ましくは、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ若しくはヤギの細胞またはこれらに由来する細胞とすることができる。本発明で用いられる細胞はまた、由来する臓器や組織によらず特に制限無く用いることができるが、例えば、神経細胞、筋細胞、心細胞、肺細胞、腎臓細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞若しくは繊維芽細胞などの体細胞、これらの幹細胞、生殖細胞または多能性幹細胞とすることができ、好ましくは、多能性幹細胞とすることができる。本発明で用いられる多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導性多能性幹細胞(iPS細胞または人工多能性幹細胞)、Muse細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring Cell)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)または、胚性生殖幹細胞(EG細胞)などの多能性幹細胞が挙げられ、好ましくは、ES細胞またはiPS細胞である。本発明に用いる多能性幹細胞は、より好ましくは、霊長類または齧歯類などの哺乳類の多能性幹細胞であり、さらにより好ましくは、霊長類または齧歯類などの哺乳類のES細胞またはiPS細胞であり、最も好ましくは、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞である。本発明では、接着面上で単層を形成して増殖する細胞または複層を形成して増殖する細胞のいずれを用いてもよい。
本発明で用いられる「接着面」は、細胞が接着している培養容器の表面を意味し、開放系培養容器の接着面または閉鎖系培養容器の接着面である。本発明で用いられる「接着面」は、特に限定されないが、細胞培養に適した表面であり、好ましくは、細胞培養に適した高周波振動伝導性の表面である。細胞培養に適した高周波振動伝導性の表面は、好ましくは、細胞培養用の膜の表面であり、より好ましくは細胞培養用のガス透過性膜の表面である。細胞培養のためのガス透過性膜としては、特に限定されないが、酸素および/または二酸化炭素に対して透過性を有する膜を用いることができ、例えば、ポリスチレン製の膜、コラーゲン製の膜またはエチレン酢酸ビニル製の膜を用いることができる。細胞培養用のガス透過性膜を備えた培養容器としては、例えば、OptiCell(商標)(ヌンク社製)、CultiLife(商標)(タカラバイオ社製)および細胞培養バッグ(商標)(ASTEC社製)などが挙げられ、既に市販されている。本発明で用いられる「接着面」は、必ずしもコーティング処理が施されている必要はないが、細胞の接着効率を向上させる観点で、細胞接着用のコーティングが施されていることが好ましい。細胞接着用のコーティングとしては、特に限定されないが、例えば、ゼラチン、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、ヒアルロン酸、Matrigel(商標)(BD社製)、CELLstart(商標)(インビトロジェン社製)、プロネクチン(商標)(和光純薬社製)、接着性オリゴペプチド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリリジン若しくはポリオルニチンなどの細胞外基質(ECM)コーティングまたはポリマーコーティングなどのコーティングを挙げることができる。特に、多能性幹細胞の接着用のコーティングとしては、ゼラチン、コラーゲン、Matrigel(商標)(BD社製)、CELLstart(商標)(インビトロジェン社製)またはプロネクチン(商標)(和光純薬社製)による表面コーティングが好ましく用いられる。また、ECMコーティングの際には、ECMのディッシュ表面への接着性向上の観点から、ディッシュ表面に予め電荷を付与する処理を行うことが好ましく、例えば、ディッシュ表面を予めプラズマやコロナ放電等により処理しておくことが好ましい。細胞接着用のコーティングは、製造業者による取扱説明書に記載の方法やその他の周知の方法を用いて行うことができる。本発明によれば、フィーダー細胞は用いても用いなくてもよい。
本発明によれば、高周波振動を与えることにより、培養容器の細胞接着面から細胞を剥離させることができる。特に、培養容器の細胞接着面からの細胞の剥離は、細胞接着面に対して培養容器の外部(細胞接着面の裏側)から高周波振動を与えることにより行うことができる。すなわち、本発明によれば、細胞そのものには直接触れることなく(すなわち、非接触的に)、培養容器の外部から高周波振動を与えることにより細胞を剥離させることができる。このように、本発明によれば、培養容器の内部にアクセスすることなく細胞の剥離が可能なため、培養系でのコンタミネーション発生のリスクが極めて低い。また、培養容器の外部から高周波振動を与える処置は手作業ではなく機械的な操作により行うことが可能であることから、本発明によれば培養容器の細胞接着面から細胞を剥離させる処置を自動化することも可能である。しかも、本発明によれば、高周波振動を領域選択的に与えることにより、細胞を接着面から領域選択的に剥離させることができる。細胞の剥離は、高周波振動伝導性の細胞培養容器を用いれば、開放系であるか閉鎖系であるかを問わず行うことができるので、本発明によれば、開放系培養または閉鎖系培養において、高周波振動により接着面から領域選択的に細胞を剥離させる方法が提供される。なお、本明細書において、「高周波振動を領域選択的に与える」とは、目的とする領域のみに細胞剥離に必要とされる程度の強度の高周波振動を与えることを意味し、細胞が剥離しない程度の振動がその領域外に伝わることは許容される。また、本明細書において、「領域選択的に細胞を剥離させる」とは、目的とする領域に接着した細胞のみを選択的に剥離させることを意味し、目的とする領域は培養容器の細胞接着面の一部であっても細胞接着面全域に及んでもよい。
本発明による細胞の剥離のための「高周波振動」の周波数およびエネルギーは、細胞が接着面から剥離する限りどのような範囲のものであってもよい。本発明によれば、細胞の剥離に必要な時間(剥離速度)は、主に高周波振動の周波数およびエネルギーに関係しているので、当業者であれば、所望の剥離速度に応じて、高周波振動の周波数およびエネルギーを容易に決定することができる。例えば、本発明による細胞の剥離のための高周波振動の振動周波数は、特に限定されないが、音波または超音波領域の周波数であることが好ましく、例えば、20Hz〜10GHzであることが好ましく、16kHz〜10GHzであることがより好ましく、16kHz〜1GHzであることがさらに好ましく、20kHz〜40kHHzであることが最も好ましい。また、高周波振動の振動エネルギーは、特に限定されないが、1W〜100Wであることが好ましく、4W〜65Wであることがより好ましく、20W〜40Wであることが最も好ましい。
本発明により接着面からの細胞の剥離は、特に限定されないが、高周波振動発生装置を用いて行うことができる。特に領域選択的に細胞を剥離させるためには、接着面に対して領域選択的に高周波振動を与えることができる高周波振動発生装置を用いることが好ましい。接着面に対して領域選択的に高周波振動を与えることができる高周波振動発生装置としては、例えば、高周波振動発生部(対象物に高周波振動を伝達する部分)がホーンやチップ等の凸形状の先端部に存在する高周波振動発生装置が挙げられる。高周波振動発生装置の高周波振動発生部は、剥離させたい細胞の接着面の大きさや形状により適宜選択することができるが、例えば、高周波振動発生部を円形とすることができ、特に多能性幹細胞コロニー(例えば、ES細胞コロニーやiPS細胞コロニー)の剥離に用いる場合には、例えば、その直径は0.1mm〜5mmとすることができ、好ましくは、0.1mm〜2mmとすることができ、より好ましくは、0.1mm〜0.5mmとすることができ、直径は、剥離させたい細胞の領域の大きさに応じて自由に選択することができる。また、高周波振動発生部が円形以外の形状の場合は、円形である場合と同等の面積を有するものを選択することができる。本発明で用いられる高周波振動発生装置としては、特に限定されないが、例えば、高速回転刃型、ランジュバン型、圧電型および磁歪型の振動子を備えた超音波発生装置が挙げられる。このような高周波振動発生装置としては、例えば、超音波破砕機(超音波式ホモジェナイザー)が挙げられ、例えば、UD−211、UR−20P、UR−21P(TOMY社製)、VP−050(タイテック社製)、NR−50M(マイクロテック・ニチオン社製)およびソニファイアー(BRANSON社製)などの超音波破砕機が市販されている。
本発明によれば、高周波振動は以下の通り与えることができる。すなわち、まず、高周波振動発生装置の高周波振動発生部(マイクロチップの先端部など)を、剥離したい細胞の接着面に対し、培養容器の外部から接触させる。すると、高周波振動発生部から発生した高周波振動が培養容器(例えば、膜)を介して容器内部の接着面に伝わり、接着面から領域選択的に細胞が剥離する。細胞をより広範な領域で剥離したい場合には、高周波振動発生部を容器の外部表面上で上下左右に動かせばよく、動かした範囲で細胞を剥離させることができる。本発明によれば、細胞の剥離は、高周波振動発生部を接着面の外部に接触させなくても可能である。しかし、剥離させる細胞の領域選択性を高める観点では、高周波振動発生部を接着面の外部に接触させるか、可能な限り近接させることが好ましい。なお、発生させた高周波振動は、高周波振動発生部が接触した領域よりも広範に伝わる場合があるが、本発明によれば、このような場合でも、高周波振動発生部を直接接触させた箇所とその近傍においてのみ領域選択的に細胞を剥離させることができる。
本発明によれば、高周波振動を与えることにより接着面から剥離した細胞は、除去してもよいし、回収してもよい。従って、本発明によれば、高周波振動を与えることにより、接着面上の特定の領域の細胞を領域選択的に除去することまたは領域選択的に回収することができる。従って、本発明の方法は、細胞を領域選択的に剥離させることが困難であった閉鎖系培養における細胞の除去および/または回収の際に特に有用である。例えば、本発明の細胞の剥離方法を用いれば、複数種類の細胞群から特定の細胞群のみを選択的に剥離して除去または回収することができる。より具体的には、例えば、未分化細胞の維持を目的として継代培養を行う際には、分化を開始した細胞を領域選択的に除去してもよいし、未分化細胞を領域選択的に回収してもよい。また、細胞の分化誘導を目的として培養を行う際には、未分化細胞または適切に分化しない細胞を領域選択的に除去してもよいし、適切に分化した細胞(例えば、目的の機能または性質を獲得した細胞)を領域選択的に回収し、後の応用、例えば、遺伝子導入実験、生化学実験若しくは分化誘導実験等の実験、薬物若しくは毒物のスクリーニング、または、医薬若しくは移植用細胞として医療用途に用いてもよい。
本発明のある態様では、領域選択的に剥離する細胞は、培養および/または継代に不要な細胞、または、継代に必要な細胞である。従って、本発明では、本発明の細胞の剥離方法を用いて培養および/または継代に不要な細胞を除去する方法、および本発明の細胞の剥離方法を用いて継代に必要な細胞を回収する方法が提供される。
本発明によれば、培養および/または継代に不要な細胞は、未分化細胞の維持を目的とする場合には、分化を開始した細胞であり、細胞をある特定の組織や細胞に分化させて継代することを目的とする場合には、未分化細胞または適切に分化しなかった細胞である。また、本発明によれば、継代に必要な細胞は、未分化細胞の維持を目的とする場合には、未分化細胞であり、細胞をある特定の組織や細胞に分化させて継代することを目的とする場合には、適切に分化した細胞(例えば、分化して目的の機能または性質を獲得した細胞)である。上記は、細胞の分化状態に基づく細胞の要否の一例であるが、細胞の要否は、特に限定されないが、細胞の生理状態や細胞の形態に基づいて当業者が適宜決めてもよい。
本発明によれば、培養および/または継代に不要な細胞の除去は、ある所定の時期に1回(例えば、継代直前に1回)のみ行ってもよいし、定期的に(例えば、3時間毎、6時間毎、12時間毎、1日毎、2日毎)または不定期に複数回行ってもよい。
本発明のある態様では、培養および/または継代に不要な細胞は、高周波振動により接着面から領域選択的に剥離され、培養容器中から除去される。本発明によれば、不要な細胞の除去は、培養中に行うか、または、継代の際に行うことにより、培養および/または継代に不要な細胞が培養細胞や継代する細胞に混入することを防ぐことができる。
また、本発明の別の態様では、継代に必要な細胞が、高周波振動により接着面から領域選択的に剥離され、回収される。このようにして回収された細胞は、剥離の際のダメージをほとんど受けておらず、その後の継代培養に用いることができる。
本発明のある態様では、培養および/または継代に不要な細胞を高周波振動により接着面から領域選択的に除去し、かつ、継代に必要な細胞を高周波振動により接着面から領域選択的に回収することができる。
本発明の細胞の剥離方法は、多能性幹細胞(例えば、ES細胞またはiPS細胞)の培養において有用である。すなわち、本発明によれば、例えば、高周波振動を与えることにより分化を開始した多能性幹細胞(すなわち、培養および/または継代に不要な多能性幹細胞)を除去することができる。しかも、本発明によれば、高周波振動により、コロニー1つ1つの単位で分化を開始した多能性幹細胞を含むコロニーだけを簡便かつ選択的に除去することができる。このため、本発明の細胞の剥離方法は、培養および/または継代に不要な多能性幹細胞の除去において特に有用である。また、本発明によれば、高周波振動は、培養容器の外部から与えることができる。従って、本発明の細胞の剥離方法は、閉鎖系培養において特に有用である。さらに、本発明によれば、高周波振動を与えて不要な細胞を除去した後に培養容器に残された未分化の多能性幹細胞は未分化状態で好適に培養することができる。従って、本発明の細胞の剥離方法は、分化を開始した多能性幹細胞の除去、および、多能性幹細胞の培養、特に閉鎖系培養における多能性幹細胞の培養に有利に用いられ得る。
本発明によればさらに、高周波振動を与えて未分化な多能性幹細胞などの未分化細胞(すなわち、継代に必要な細胞)を回収することができる。一般的に、多能性幹細胞の継代の際には、細胞を単一細胞レベルにまで解離させることは好ましくないとされているが、本発明の方法により高周波振動を与えて剥離させた細胞は、驚くべきことに、細胞間の接着を保ち、単一細胞レベルにまで解離することがない。そのため、本発明の方法を用いて回収した細胞は、その後の様々な応用や継代培養に好適に用いることができる。従って、本発明の細胞の剥離方法は、多能性幹細胞の回収において特に有用である。また、本発明によれば、高周波振動は、培養容器の外部から与えることができる。従って、本発明の細胞の剥離方法は、閉鎖系培養において特に有用である。また、本発明を用いて回収して継代した未分化の多能性幹細胞は、未分化状態で好適に培養することができる。従って、本発明の細胞の剥離方法は、未分化の多能性幹細胞の接着面からの回収、および、多能性幹細胞の継代、特に閉鎖系培養における多能性幹細胞の継代に有利に用いられ得る。本発明では、必要に応じて、継代に必要な細胞の一部のみを選択的に剥離して回収してもよいし、継代に必要な細胞のすべてを剥離して回収してもよい。本発明の方法により回収した細胞は、ピペティングによる水流等により、適宜好ましい大きさの細胞塊に分けてから、継代することができる。
また、本発明によれば、細胞は接着面からシート状に剥離させることができる。本発明により接着面から剥離したシート状の細胞(細胞シート)は、例えば、通常のディスポーザブルのシリンジ等により除去または回収することができる。本発明により得られる細胞シートは、培養容器の下部に素早く沈降する性質を有するため、培養容器を傾けることで容易に除去または回収することができる。具体的には、例えば、培養容器を接着面に対して垂直に立てた状態で細胞を剥離し、剥離した細胞を培養容器の下部に沈降させて回収することができる。また、細胞を剥離した後に接着面に対して垂直に立てて、剥離した細胞を培養容器の下部に沈降させて回収してもよい。あるいは、培養容器を振とうしながら、細胞を培養容器の下部に沈降させてもよい。
従って、本発明によれば、本発明により接着面から細胞を剥離させることを含んでなる細胞シートの調製方法および調製された細胞シートが提供される。本方法では、細胞をシート状に培養した後に、本発明により細胞を接着面からシート状に剥離させる工程を行うことができる。また、本方法によれば、シートを作製するために特別な培養容器を用いる必要はなく、高周波振動伝達性の表面を備えた培養容器である限り、通常の容器を用いることができる。しかも、本発明によれば、超音波プローブ等の高周波振動の発信源を培養容器の内部に挿入する必要がないため、開放系培養においてもコンタミネーション等のリスクを軽減できる点で有利である。本発明はまた、閉鎖系培養容器を用いた場合には、コンタミネーション等のリスクの軽減をさらに大きく軽減できる点でさらに有利である。
本発明の方法により得られる細胞シートは、細胞間接着を保持しているので、組織等への移植後の生着率が高く、生体材料として培養皮膚などの医療用途に好適に用いることができると期待される。細胞シートが多能性幹細胞シートである場合は、その後、適当な大きさの細胞塊に分離して、継代、分化誘導および/または遺伝子改変動物の作製に好適に用いることができる。
本発明によれば、接着面から細胞を剥離させる前に、細胞と接着面との間の接着を弱めるための酵素処理を行ってもよい。このような酵素処理としては、トリプシンまたはディスパーゼなどの酵素による処理が周知であり、当業者であれば適宜行うことができる。
以下に、具体的な実施例に則して本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例の特定の態様により制限されると理解されるべきではない。本発明には、実施例に開示された発明のあらゆる改変や変更が含まれると理解されるべきである。
実施例1:閉鎖系培養における領域選択的な細胞剥離
本実施例では、閉鎖系培養において細胞を領域選択的に剥離させる方法を検討した。
(材料)
本実施例では、細胞としては、ヒトiPS細胞(公益財団法人 先端医療振興財団 細胞評価グループ 川真田研究室による樹立株)を用いた。培養は、フィーダーを用いるオンフィーダー条件およびフィーダーレス条件の2条件で行った。フィーダー細胞は、SNL細胞(DSファーマバイオメディカル社製、製品番号:EC07032801)を使用した。培地は、オンフィーダー条件では、ヒトES細胞培養用培地(ダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F−12ハム(シグマアルドリッチ社製、製品番号:D6421)500mL、ノックアウト血清代替物(インビトロジェン社製、製品番号:10828−028)125mL、非必須アミノ酸溶液(シグマアルドリッチ社製、製品番号:M7145)5mL、200mM L−グルタミン(インビトロジェン社製、製品番号:25030−081)6.25mL、0.1M 2−メルカプトエタノールを添加したPBS(インビトロジェン社製、製品番号:21985)500μL、bFGF(和光純薬工業社製、製品番号:064−04541)最終濃度5ng/mLを用い、フィーダーレス条件では、ReproFF2培地(ReproCell社製、製品番号:RCHEMD006)にbFGF(和光純薬工業社製、製品番号:064−04541)最終濃度5ng/mLを添加した培地を用いた。また、閉鎖系培養としては、OptiCell(商標)(BioCrystal社製、製品番号:155331)を用い、iPS細胞の培養容器への接着性を担保するため、製造業者の取扱説明書に記載の方法に従って、培養前に培養容器内をECMでコーティングした。ECMは、オンフィーダー条件では、ゼラチン(シグマアルドリッチ社製、製品番号:G1890)を用い、フィーダーレス条件では、BDマトリゲル(BD社製、製品番号:356234)を用いた。BioCrystal社(現ヌンク社)製のOptiCellは、カートリッジ式の閉鎖培養容器として知られ、75μm厚のポリスチレン製ガス透過膜を備える。
(播種)
細胞の播種は、iPS細胞を10mLの培地に懸濁し、OptiCell Tip(商標)を用いてOptiCell内に導入することにより行った。
(剥離方法)
剥離方法としては、通常行われる酵素処理による剥離方法の他に、超音波洗浄機を用いた剥離方法および超音波破砕機を用いた剥離方法を試した。
酵素処理による剥離は、培養容器内にトリプシン−EDTA(0.25%トリプシン、1mM EDTA・4Na)(Life technologies社製、製品番号:25200−056)10mLを注入し、5%COインキュベータ中で37℃で5分処理して行った。超音波洗浄機を用いた剥離は、超音波洗浄機としてUS CLEANER(アズワン社製、製品番号:US−2A)を用いて、超音波洗浄機の水浴中で目視にて細胞が接着面から剥がれるまで超音波処理することにより行った。超音波洗浄機の超音波発生条件は、出力80Wおよび周波数40kHzとした。また、超音波破砕機を用いた剥離は、直径2mmの先端を有する超音波発生部を備えたTOMY社製超音波プローブ(UR−21P)を用いて、水浴中でプローブの先端を培養容器の外部から接触させることにより行った。超音波プローブは、出力を32Wとし、周波数を28kHzとして発振させた。
(剥離の結果)
酵素処理による剥離、超音波洗浄機を用いた剥離、および超音波破砕機を用いた剥離のいずれの方法を採用した場合でも、細胞を接着面から剥がすことが可能であった。しかしながら、酵素処理による細胞の剥離または超音波洗浄機を用いた剥離では、細胞を領域選択的に剥離させることはできず、かつ、剥離した細胞は細胞単位で解離した(図1AおよびB)。また、酵素処理による細胞の剥離または超音波洗浄機を用いた剥離では、コロニー毎に剥離するまでの時間にばらつきが生じていた。一方で、超音波破砕機を用いた剥離では、プローブを接触させた箇所またはその極近傍の細胞だけを接着面から領域選択的に剥がすことが可能であった(図1C)。領域選択的な剥離は、分化を開始したiPS細胞コロニーおよび未分化のiPS細胞コロニーのいずれにおいても確認できた(図1CおよびD)。しかも、驚くべきことに、超音波破砕機を用いた剥離では、細胞は細胞間接着を維持したままシート状に剥がれた。さらに、剥離した細胞シートは、培養容器を傾けると速やかに容器下部に沈降し、その除去や回収が容易であった。なお、プローブを接触した箇所の周辺部の細胞に対する視覚的ダメージはほとんど確認できなかった(図1C)。また、剥離はフィーダー細胞の有無により影響を受けることは無かった(図1C)。
超音波破砕機を用いた剥離では、高周波振動は、超音波発生部を接触させた領域よりも広範に伝わっていたが、細胞は、超音波発生部を直接接触させた箇所とその近傍においてのみ領域選択的に剥離した。超音波発生部を接触させずに高周波振動を与えた場合にも、領域選択的に細胞を剥離させることができたが、接触させて剥離した場合と比較すると、剥離する細胞の領域選択性が低下する傾向が見られた(データ省略)。このことから、剥離する細胞の領域選択性を高める観点では、超音波発生部は培養容器に接触させて用いた方がよいことが明らかになった。
これらの結果から、超音波破砕機を用いて培養容器の外部から高周波振動を与えることにより、領域選択的に細胞を剥離させることが可能であること、および、剥離した細胞は、細胞間接着を維持したままシート状の形状で剥離させることが可能であることが明らかとなった。特に、閉鎖系培養であっても、分化を開始した多能性幹細胞や未分化の多能性幹細胞を領域選択的に除去または回収できることが明らかになった。
また、酵素処理や超音波洗浄機を用いる方法では、細胞の回収率を向上させるために必要以上の強度の酵素処理や超音波処理が求められることが多く、その結果、細胞に必要以上の損傷を与える可能性があるが、超音波破砕機を用いて細胞を剥離した場合には、細胞を個別に剥離することが可能であるため剥離の際の細胞へのダメージを必要最小限とすることができる。加えて、剥離した細胞を振動部分から遠ざけることにより、剥離した細胞に対してさらなる過剰の高周波振動と必要以上の損傷を与える可能性が低減できた。
実施例2:高周波振動を与えることにより剥離したiPS細胞の継代培養
本実施例では、超音波破砕機を用いて培養に悪影響を与える分化を開始したiPS細胞コロニーを除去し、かつ、剥離した未分化のiPS細胞コロニーの回収も超音波破砕機を用いて行ってその後の継代培養に用いた場合に、細胞を良好な未分化状態を維持させたまま好適に用いることができるか否かを確認した。
培養容器、iPS細胞、培地および超音波破砕機は、実施例1と同様とした。細胞をOptiCell内に播種した後、分化を開始したiPS細胞コロニーは、発見し次第、迅速に超音波破砕機により適宜領域選択的に除去した。その後、iPS細胞が培養容器内でコンフルエントになったら、超音波破砕機により未分化のiPS細胞を剥離して、継代した。iPS細胞は、ガス透過膜に超音波破砕機のプローブを接触させたまま、上下左右に動かすことにより簡便かつ迅速に剥離させることができた。また、このようにして剥離したiPS細胞は、シート形状であった(図2A)。シート形状のiPS細胞は、ピペッティングにより、簡単に、継代に適した大きさの細胞塊にすることができた。その後、iPS細胞塊は、新鮮な培地に懸濁して、OptiCell内に播種した。
その結果、iPS細胞は超音波破砕機を用いて剥離して継代した後も、好適に培養することが可能であった(図2B)。
高周波振動を用いた剥離方法の安全性や安定性を確認するため、長期の継代試験を実施した。具体的には、10回継代後のiPS細胞の分化状態を確認するため、フィーダーレス条件下で10回継代したiPS細胞を用いて、アルカリフォスファターゼ染色を行い(図2C)、あるいは、iPS細胞の未分化マーカーとして知られるOct3/4(図2D)、Nanog(図2E)、SSEA3(図2F)、TRA−1−60(図2G)の発現を免疫染色により確認した。抗体は、抗Oct3/4抗体(Santa Cruz Biotechnology社製、製品番号:sc−5279)、抗Nanog抗体(ReproCell社製、製品番号:RCAB0003P)、抗SSEA3抗体(Chemicon社製、製品番号:MAB4303)および抗TRA−1−60抗体(Chemicon社製、製品番号:MAB4306)を用い、常法に従って免疫染色を行った。その結果、10回継代後のiPS細胞では、図2Cに示されるように、細胞がアルカリフォスファターゼ染色で良好に染色され、かつ、図2D〜Gに示されるように、すべての未分化マーカーが良好に発現していた。
実施例2の結果から、分化を開始したiPS細胞コロニーを高周波振動を与えて除去した場合でも、接着面に残された他の細胞に悪影響を与えることがないこと、および、高周波振動を与えて剥離した細胞自体も未分化状態を維持させたまま良好にその後の継代培養に用いることができることが明らかとなった。特に、超音波破砕機を用いると、細胞間接着を破壊することなくシート状に細胞を剥離し、回収することができること、および、回収した細胞は、ピペッティング等により適当な大きさの細胞塊にすることで、その後の継代培養に好適に用いることができることが明らかとなった。
これらの結果から、高周波振動を与えて細胞を除去および/または回収することにより、閉鎖系培養においても多能性幹細胞を未分化状態で良好に培養することができることが明らかとなった。高周波振動は、多能性幹細胞以外の細胞の剥離にも用いることが可能であると考えられ、接着細胞全般において、必要な細胞の回収や不要な細胞の除去に好適に用いられ得ることが明らかとなった。

Claims (13)

  1. 高周波振動により接着面から領域選択的に細胞を剥離させる方法。
  2. 接着面が、閉鎖系培養容器の接着面である、請求項1に記載の方法。
  3. 剥離させる細胞が、培養および/または継代に不要な細胞である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 剥離させる細胞が、継代に必要な細胞である、請求項1または2に記載の方法。
  5. 培養および/または継代に不要な細胞を除去する工程を含んでなる、細胞の培養方法であって、細胞を除去する工程を請求項3に記載の方法により行う、培養方法。
  6. 継代に必要な細胞を回収する工程を含んでなる、細胞の継代方法であって、細胞を回収する工程を請求項4に記載の方法により行う、継代方法。
  7. 培養および/または継代に不要な細胞を除去する工程と、継代に必要な細胞を回収する工程とを含んでなる、細胞の継代培養方法であって、細胞を除去する工程を請求項3に記載の方法により行い、かつ、細胞を回収する工程を請求項4に記載の方法により行う、細胞の継代培養方法。
  8. 培養および/または継代に不要な細胞が、分化を開始した細胞または適切に分化しなかった細胞である、請求項3、5または7に記載の方法。
  9. 継代に必要な細胞が、未分化な細胞または適切に分化した細胞である、請求項4、6または7に記載の方法。
  10. 細胞が、多能性幹細胞である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 細胞が、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞である、請求項10に記載の方法。
  12. 剥離させる前に、細胞と接着面との間の接着を弱めるための酵素処理を行う、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 接着面から細胞を剥離させる工程を含んでなる、細胞シートの調製方法であって、細胞を剥離させる工程を請求項1または2に記載の方法により行う、細胞シートの調製方法。
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