JP4775218B2 - 閉鎖系の細胞回収装置及び細胞培養装置並びに細胞の回収方法及び培養方法 - Google Patents
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Description
そこで、培養細胞の回収は、閉鎖系の装置によって、簡易的に行えるよう自動化することが望まれているものの、ピペッティングや遠心操作が必要になる等、作業工程が複雑であるため、自動化することが困難とされてきた。
次いで、剥離された培養細胞群が剥離液とともに、一定の流速を有して処理容器に供給され、培養細胞群のみがフィルタを通過できずに蓄積され、剥離液等が処理容器から排出されると、培地供給手段によって処理容器の底部から培地が供給され、この培地とともにフィルタ上の培養細胞群が上記複数の培養容器に再供給される。
このように、培養細胞群を培養容器から剥離する際に、ピペッティングや遠心操作が不要であるため、自動化することが可能となり、培養細胞群の回収を簡易的に行うことができる。
さらに、この回収した培養細胞群は、フィルタに補足されてしまい、再度、新たな培養容器に供給しても、継代培養による細胞の回収率が著しく低くなってしまうという問題がある。これに加えて、細胞同士の接着を解く手段がなく、多くの細胞同士が互いに接着したままでの状態で細胞密度が高く、細胞分裂を行えない状態である上に、細胞が底部から供給された培地に均等に分散されないため、培養容器に均等に分配できず、効率的に継代培養を行うことができないという問題がある。
加えて、上述のように、培養細胞群をピペット等によって回収する必要がないため、装置全体を自動化することができる。
加えて、上述の接着が解かれた培養細胞を細胞回収容器に播種することによって、細胞回収容器内において効率的に増殖させることができる。
その結果、簡易的に継代培養を行うことができるとともに、細胞回収容器に植える培養細胞の生存率を高めて、継代培養による細胞の回収率を高めることができる。
次いで、剥離された培養細胞群を、培養容器の排出口に接続されている流通手段に排出することにより、流通手段の下流端部から培養細胞群を回収することができる。
このため、剥離液としては、上述のように、培養細胞群が剥離工程において剥離可能であるとともに、細管によって細胞同士の接着を解くことが可能なものであればよく、請求項9に記載の発明のように2価のキレート剤を好適に用いることができる。その結果、剥離液との反応によって培養細胞に悪影響を与えることを抑制できる。
加えて、流体収容物に均一に分散された培養細胞を細胞回収容器に播種することによって、細胞の増殖を効率的に行うことができる。
本実施形態の細胞培養装置は、図1に示すように、培養細胞群が収容された培養容器1を載置する載置台(加振装置)2と、培養容器1に試薬を供給する試薬供給手段3と、培養容器1から培養細胞群を排出する流通手段4と、この流通手段4の下流端部に接続可能に設けられた細胞回収容器5と、流通手段4と並列的に培養容器1に接続されている廃液回収手段6とによって概略構成されている。そして、これらの培養容器1、載置台2、試薬供給手段3、流通手段4、細胞回収容器5、廃液回収手段6は、全て炭酸ガスインキュベータ(図示を略す)内に収容されているとともに、これらの装置全体を作動させる制御システム(図示を略す)によって作動するようになっている。
このモータ24は、その上部に水平に配設された円板状のホイール25を回転させ、このホイール25と偏心カム23における下部の水平円板との外周周りに配設された無端ベルト26を周方向に移動させることにより、偏心カム23を培養容器1内の培養細胞群の剥離のために回転数2000rpm以上で回転させるようになっている。すると、この偏心カム23は、上部の水平円板の中心外方に一体的に設けられた垂直棒22を回転中心周りに移動させることにより、支持枠体27上において載置板21を水平移動させるようになっている。
また、図示していない傾斜機構によって、載置板21は、培養容器1の流路12と流路13間の中央部を軸として、容器1の底部を45度に傾斜させるように流路13側が上方に移動可能に設けられている。
ここで、カルシウム含有溶液には、培地や塩化カルシウム溶液が用いられ、好ましくは0.01〜40mMの塩化カルシウム溶液、さらに好ましくは1〜4mMの塩化カルシウム溶液が用いられる。
洗浄液としては、カルシウムを含まず、かつ培養細胞に悪影響を与えないものが用いられており、例えば、PBS、HEPES、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(Tris)等の等張緩衝液や培養細胞と浸透圧が同一となる濃度のショ糖溶液、食塩水、塩化カリウム水溶液等の等張液が用いられる。
このシリンジポンプ44は、チューブ41及び配管接続具42とともに吸引機構を構成している。
このシリンジポンプ44、45は、このピンチバルブ41a、43a及び接続具42とともに、希釈機構を構成しており、上記細管10からチューブ37の一部、配管接続具38、チューブ41、シリンジポンプ44、45及び及びチューブ43は、上記流通手段4を構成している。
そして、上記制御システムによって、ピンチバルブ43aを開き、シリンジポンプ45のプランジャーを押すことにより、所定の速度で所定量の細胞液が各容器5に播種される。
そして、上記制御システムによって、ポンプ33aが作動している際に、培養容器1内の剥離液がチューブ61を通じて回収瓶62に排出されるようになっている。なお、上記制御システムは、上述の温度、回数等の各所定値を入力するインターフェースを備えている。
上記載置台2に換えて、上記廃液回収手段6を含む空気供給機構及び揺動機構(図示を略す)を用いて培養細胞群を培養容器1の内壁面から剥離させることができる。
廃液回収手段6は、シリンジポンプ44を引くことにより、無菌フィルタ63aを介して外気供給管63によって供給された回収瓶62内の外部の空気がチューブ61を介して流路13から培養容器1内に供給されるようになっており、シリンジポンプ44とともに空気供給機構を構成している。
本実施形態の細胞の培養方法は、培養容器1内にEDTA等の剥離液を供給し、培養細胞群と反応させる反応工程の後に、培養容器1内にPBS等の洗浄液を供給する洗浄工程と、この洗浄液の一部をカルシウム含有溶液に置換する置換工程と、培養容器1を水平方向に振動させ、培養細胞群を培養容器1から剥離させる剥離工程と、この剥離された培養細胞群を細管に供給することにより、培養細胞同士の接着を解き、上記培養細胞をカルシウム含有溶液等と分散させる細胞分散工程と、この接着が解かれた培養細胞を培地に希釈分散させる希釈工程と、この希釈分散された細胞液を細胞回収容器に供給する播種工程と、細胞回収容器内において上記培養細胞を培養させる培養工程とを有している。
ここで、剥離液、洗浄液及びカルシウム含有溶液は、上述の細胞培養装置において説明したものと同様のものが用いられる。
そして、炭酸ガスインキュベータによって所定時間、温度及び二酸化炭素濃度を一定に保ち、培養細胞群と剥離液とを反応させることにより、培養細胞群の細胞接着性を低下させる。
これにより、剥離液によって、接着因子以外の細胞表面マーカ等までが破壊されることを防止し、培養細胞群に悪影響が及ぶことを阻止する。
その後、この細胞混濁液は、シリンジポンプ44のプランジャーを引くことにより、垂直方向下方に配設されている配管接続具38からチューブ41、配管接続具42を経てシリンジポンプ44のシリンジ内に充填される。
なお、上述の剥離工程におけるカルシウム含有溶液の供給から希釈工程までを5分以内に終了させる。
まず、HepG2細胞を、12.8×104個/mlとなるように培地で希釈し、底面にプラズマ処理を行った培養容器中に、4.5ml播種し、3日間培養した。その後、この培養容器1を載置台2の載置板21上に載置した。
なお、チューブポンプ31a、32a、33aとしてペリスタポンプを用い、全て送液速度を3ml/分に設定するとともに、シリンジ31及びシリンジポンプ45のシリンジには1.8mM塩化カルシウム含有の培地、シリンジ32にはリン酸緩衝食塩液(PBS)で希釈した4mMのエデト酸ナトリウム(EDTA)、シリンジ33にはPBSをそれぞれ50mlずつ充填した。
次ぎに、HIT−T15細胞を5×104個/mlとなるように培地で希釈し、底面にプラズマ処理を行った培養容器中に、4.5ml播種し、6日間培養した後、この培養容器を載置台2の載置板21上に載置した。また、チューブポンプ31a、32a、33aの種類及びその送液速度並びにシリンジ31、32、33、シリンジポンプ45のシリンジ内の充填剤は、実施例1と同一とした。
まず、HepG2細胞を12.8×104個/mlとなるように培地で希釈し、実施例1と同様に、3日間培養した後、細胞が収容されている培養容器1を載置板21上に載置した。また、チューブポンプ31a、32a、33aの種類及びその送液速度並びにシリンジ31、32、33シリンジポンプ45のシリンジ内の充填剤は、実施例1と同一とした。
その後、シリンジ32からPBS希釈のEDTAを送液後、37℃で20分間インキュベートさせた。
実施例1と同様に、HepG2細胞を、12.8×104個/mlとなるように培地で希釈し、底面にプラズマ処理を施した密閉容器に、4.5ml播種し、3日間培養した。
次いで、シリンジを用いてHepG2細胞の培地を捨て、密閉容器を分解後、底面部だけを取りだし、PBSで1回洗浄し、0.25%トリプシン、1mMのEDTAを溶液を1ml加え、37℃で10分間反応させた。
細胞が剥離していることを確認し、ピペッティングで細胞を底面から完全に剥離し、10ml遠沈管に採取し、1500rpmで3分遠心後、上清を捨て、ピペッティングで細胞を分散させた。この細胞混濁液に培地を2ml加え、培養細胞を計数したところ、2.86×106個の細胞が回収された。
実施例2と同様に、HIT−T15細胞を、5×104個/mlとなるように培地で希釈し、底面にプラズマ処理を施した密閉容器に、4.5ml播種し、6日間培養した。
次いで、シリンジを用いてHIT−T15細胞の培地を捨て、密閉容器を分解後、底面部だけ取りだし、参考例1と同様に、HIT−T15細胞をトリプシン及びEDTAを含有する剥離液と反応させ、密閉容器の底面部から剥離させ、ピペッティングで細胞を底面から完全に剥離し、10ml遠沈管に採取し、1500rpmで3分遠心後、上清を捨て、ピペッティングで細胞を分散させた。次いで、この細胞混濁液に培地を2ml加え、培養細胞を計数したところ、1.07×106個の細胞が回収された。
実施例3と同様に、HepG2細胞を12.8×104個/mlとなるように培地で希釈し、底面にプラズマ処理を施した密閉容器に、4.5ml播種し、6日間培養した。
次いで、シリンジを用いてHepG2細胞の培地を捨て、密閉容器を分解後、底面部だけ取りだし、参考例1と同様に、HepG2細胞をトリプシン及びEDTAを含有する剥離液と反応させ、密閉容器の底面部から剥離させ、ピペッティングで細胞を底面から完全に剥離し、10ml遠沈管に採取し、1500rpmで3分遠心後、上清を捨て、ピペッティングで細胞を分散させた。次いで、この細胞混濁液に培地を2ml加え、培養細胞を計数したところ、2.95×106個の細胞が回収された。
このため、培養細胞群を細管に一度流通させ、分散する場合と比較して、細管の内径を大きくし、細管の長さを短くし、流通速度を遅くしても、細胞同士の接着を解くとともに、カルシウム含有溶液等に分散させることができる。その結果、培養細胞の生存率を高め、継代培養による細胞の回収率を著しく高めることができる。
さらに、試薬供給手段3、流通手段4及び廃液回収手段6におけるシリンジ31、32、33やチューブポンプ31a、32a、33a等の機器類が全て使い捨て可能なチューブ34、37、41、43、61、ピンチバルブ41a、43a及び配管接続具36、38、42によって接続されているため、繰り返し使用することによる汚染物の混入を防止することができる。
2 載置台(加振装置)
3 試薬供給手段
4 流通手段
5 細胞回収容器
Claims (15)
- 培養細胞群が収容された培養容器と、この培養容器に接続され、少なくとも上記培養細胞群の細胞接着性を低下させる剥離液を上記培養容器に供給する試薬供給手段と、上記培養容器内の上記剥離液等の流体収容物を面方向に流動させ、上記培養容器の内壁面に付着している上記培養細胞群を上記内壁面から剥離させる剥離手段と、上記培養容器に接続された上記培養細胞群の流通手段とを有し、かつ上記流通手段は、上記培養細胞群の細胞同士の接着を解く細管が介装されているとともに、この細管に上記培養細胞群を通過させる吸引機構が設けられていることを特徴とする閉鎖系の細胞回収装置。
- 上記剥離手段は、上記培養容器を水平方向に振動させる加振装置であることを特徴とする請求項1に記載の閉鎖系の細胞回収装置。
- 上記剥離手段は、上記培養容器内に空気を供給する空気供給機構と、上記培養容器を上記流体収容物が面方向に流動するようにシーソー運動させる揺動機構とを有することを特徴とする請求項1に記載の閉鎖系の細胞回収装置。
- 上記細管は、内径が0.2mm以上であって、かつ1.0mm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の閉鎖系の細胞回収装置。
- 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の閉鎖系の細胞回収装置を用いて、上記培養細胞を再培養する細胞培養装置であって、
上記流通手段と並列的に上記培養容器に接続されるとともに、上記試薬供給手段と直列的に上記培養容器に接続された廃液回収手段と、上記流通手段の下流端部に接続可能に設けられ、上記培養細胞を再培養する細胞回収容器とが備えられていることを特徴とする細胞培養装置。 - 上記流通手段には、上記培養細胞を培地に希釈分散させる希釈機構が設けられており、かつ上記細胞回収容器は、複数設けられ、各々が上記流通手段の下流端部に並列的に接続可能に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の細胞培養装置。
- 上記培養容器、上記試薬供給手段、上記剥離手段、上記流通手段、上記廃液回収手段及び上記細胞回収容器は、インキュベータ内に収容されていることを特徴とする請求項6に記載の細胞培養装置。
- 培養細胞群が収容されている培養容器内に、上記培養細胞群の細胞接着性を低下させる剥離液を供給し、この剥離液と上記培養細胞群とを反応させる反応工程と、
この反応工程の後に、上記培養容器内に洗浄液を供給し、上記培養細胞群を上記培養容器の内壁面に付着させたまま上記剥離液を洗い流すことにより、上記剥離液と上記洗浄液とを置換させる洗浄工程と、
上記培養容器内に収容されている上記洗浄液等の流体収容物を面方向に流動させることにより、上記培養細胞群を上記培養容器の内壁面から剥離させる剥離工程と、
この剥離工程の後に、上記培養容器の内壁面から剥離された培養細胞群を、上記培養容器の排出口に接続されている流通手段に介装された細管に流通させることにより、上記培養細胞群の細胞同士の接着を解き、上記培養細胞を上記流体収容物に分散させる細胞分散工程を有し、
上記流体収容物に分散させた培養細胞群を、上記流通手段に排出することを特徴とする細胞の回収方法。 - 上記剥離液は、2価金属のキレート剤であることを特徴とする請求項8に記載の細胞の回収方法。
- 上記洗浄工程の後に、上記培養容器内に培地等のカルシウム含有溶液を供給し、上記培養容器内の上記洗浄液の一部を外部に流出させ、上記培養容器内の上記洗浄液の一部を上記カルシウム含有溶液に置換する置換工程が設けられており、上記培養容器内の上記カルシウム含有溶液及び上記洗浄液等の流体収容物を、上記剥離工程において面方向に流動させることを特徴とする請求項8又は9に記載の細胞の回収方法。
- 上記剥離工程においては、上記培養容器を水平方向に振動させることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載の細胞の回収方法。
- 上記剥離工程においては、上記培養容器内に空気を供給するとともに、上記培養容器を上記流体収容物が面方向に流動するようにシーソー運動させることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載の細胞の回収方法。
- 上記培養細胞群を上記細管に複数回通過させることにより、上記培養細胞を流体収容物に分散させることを特徴とする請求項8ないし12のいずれか一項に記載の細胞の回収方法。
- 請求項8ないし13のいずれか一項に記載の細胞の回収方法を用いて、培養細胞を再培養する細胞の培養方法であって、
上記細胞分散工程の後に、上記培養細胞群の細胞同士の接着が解かれた培養細胞を複数の細胞回収容器に供給する播種工程と、
上記細胞回収容器内において上記培養細胞を再培養させる培養工程とを有することを特徴とする細胞の培養方法。 - 上記細胞分散工程の後に、上記培養細胞を培地に希釈分散させる希釈工程が設けられており、この希釈分散された細胞液を、上記播種工程において、上記細胞回収容器に供給することを特徴とする請求項14に記載の細胞の培養方法。
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